説明

天然系充填材を含有する樹脂組成物の製造方法およびそれにより製造された樹脂組成物

【課題】 高い温度で混練しても、天然系充填材の黒化が防止可能な、天然系充填材含有樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂と、天然系充填材とを混練して天然系充填材含有樹脂組成物を製造する方法において、ホウ素化合物の存在下に混練を行う。この混練の前に、予め、天然系充填材に、ホウ素化合物で処理してもよい。この高温で混練しても、黒化が防止可能な天然系充填材含有樹脂組成物は、成形加工することにより、天然物的質感に優れた樹脂製品を得ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然系充填材を含有する樹脂組成物の製造方法およびそれにより得られた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題の高まりに連れ、天然系充填材を含む各種樹脂組成物が、注目を集めている。そのような樹脂組成物としては、例えば、従来の各種熱可塑性樹脂(生分解性樹脂、リサイクル(再生)樹脂等を含む)等をベースに、木片、木粉、竹粉、古紙や古雑誌から生ずるパルプ等の天然系充填材を混練した樹脂組成物が挙げられる。これらの樹脂組成物から形成された樹脂製品は、その風合い、外観、触感等が、木材、竹材、植物性繊維などに近いことから、天然物質的質感に優れるという利点を有している。また、そのような樹脂製品は、一定水準の成形性や強度も保持し、量産も可能である上に、資源の節約、廃棄容易性、リサイクル性等にも優れるという利点も有している。
【0003】
このような樹脂組成物は、従来から、各種樹脂と天然系充填材と、必要に応じて添加剤とを、高温で混練して、ストランドに成形し、それをカットしてペレットにして製造されている。しかし、この高温での混練時に、天然系充填材の黒化(いわゆる焼け)および、それに伴う異臭が発生し易いことが知られていた。この天然系充填材の黒化が起こると、その樹脂組成物から形成された樹脂製品の色が黒くなり、外観、触感等が悪くなるという問題、混練時にストランドを形成するのが困難になるという問題、および、その樹脂組成物から形成された樹脂製品の強度が低下するという問題等があった。
【0004】
前記黒化の発生を抑制する方法としては、前記混練温度を下げる方法がある。しかし、混練温度を下げると、使用する樹脂の種類によっては樹脂が充分に溶融せず、その結果、混練が困難になったり、また、混練機のスクリュー回転数が上げられないために、混練速度が著しく低下するという問題が生じていた。
【0005】
そこで、混練温度を下げずに、前記黒化の発生を抑制する方法として、特殊な混練装置を必要とする方法(例えば特許文献1および2参照)が提案されている。
【0006】
しかし、これらの方法では、220〜230℃程度の比較的低い温度域の混練温度しか使用できないという問題があった。
【0007】
また、混練温度を下げない方法として、木質材と、熱可塑性樹脂と、水性造膜性無機化合物とを含む樹脂組成物を用いる方法(例えば特許文献3参照)、セルロース粉に難燃剤を含浸させて得られた耐熱セルロース粉と、ペット樹脂と滑剤とを混練した混練物を用いる方法(例えば特許文献4参照)等が提案されている。
【0008】
しかし、これらの方法では、天然系充填材の黒化を抑制する効果が低いという問題があった。
【特許文献1】特開平10−166355号公報
【特許文献2】特開2003−80584号公報
【特許文献3】特開平9−104010号公報
【特許文献4】特開平9−183121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、高い温度で混練しても、天然系充填材の黒化が防止可能な樹脂組成物であって、得られる樹脂製品の黒化を防止、抑制でき、強度の低下を防止できる、天然系充填材含有樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の製造方法は、天然系充填材を含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記樹脂および前記天然系充填材とを混練する混練工程を有し、前記混練工程が、前記天然系充填材の黒化防止のために、ホウ素化合物の存在下で実施される製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、高い温度で混練しても、天然系充填材の黒化が防止可能な樹脂組成物であって、得られる樹脂製品の黒化を防止、抑制でき、強度の低下を防止できる、天然系充填材含有樹脂組成物を製造することができる。なお、本発明においては、低温で混練してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、ホウ素含有化合物に黒化防止作用を見出し、この知見を元に本発明を完成した。この黒化防止作用は、従来の難燃作用とは、異なるメカニズムに基づくものと考えられる。
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこの実施形態には限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りあらゆる変更が可能である。以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
【0014】
まず、前記ホウ素化合物について説明する。本発明に用いるホウ素化合物は、ホウ素を含有する限り特に限定されない。前記ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、テトラヒドロホウ酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、シアノトリヒドロホウ酸塩、酸化ホウ素等が挙げられる。ホウ酸としては、例えば、メタホウ酸(HBO2)、オルトホウ酸(H3BO3)、4ホウ酸等が挙げられる。ホウ酸塩としては、例えば、ホウ酸のオキソ酸の塩類が挙げられ、例えば、メタホウ酸ナトリウム4水和物、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム水和物、4ホウ酸ナトリウム無水物、4ホウ酸ナトリウム8水和物、4ホウ酸ナトリウム10水和物(ホウ砂、Na2[B25(OH)4]・8H2O)、4ホウ酸ナトリウム5水和物、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム8水和物、4ホウ酸アンモニウム4水和物、4ホウ酸2カリウム4水和物、4ホウ酸リチウム5水和物、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。テトラヒドロホウ酸塩としては、例えば、テトラヒドロホウ酸カリウム、テトラヒドロホウ酸ナトリウム等が挙げられる。テトラフルオロホウ酸塩としては、例えば、ホウフッ化アンモニア、テトラフルオロホウ酸、テトラフルオロホウ酸ニッケル(II)、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸リチウム(無水)等が挙げられる。シアノトリヒドロホウ酸塩としては、例えば、シアノホウ水素化ナトリウム等が挙げられる。前記ホウ素化合物としては、単独または2以上を組み合わせて用いてもよい。前記ホウ素化合物としては、前記のように、無水物および水和物を含んでもよい。
【0015】
前記ホウ素化合物としては、中でもホウ酸と4ホウ酸ナトリウム類(4ホウ酸ナトリウム無水物、4ホウ酸ナトリウム8水和物、4ホウ酸ナトリウム10水和物(ホウ砂)、4ホウ酸ナトリウム5水和物等を含む)およびメタホウ酸ナトリウム4水和物との組み合わせが好ましい。この際、使用するホウ酸と4ホウ酸ナトリウム類またはメタホウ酸ナトリウム4水和物との重量比は、特に限定されないが、4ホウ酸ナトリウム類またはメタホウ酸ナトリウム4水和物の重量比は、ホウ酸の例えば0.1倍以上、好ましくは0.3〜9.0倍である。前記組み合わせにおいて、ホウ酸としてはオルトホウ酸が、4ホウ酸ナトリウム類としては4ホウ酸ナトリウム無水物および4ホウ酸ナトリウム10水和物がより好ましい。前記組み合わせとしては、4ホウ酸ナトリウム無水物、4ホウ酸ナトリウム10水和物(ホウ砂)およびメタホウ酸ナトリウム4水和物からなる群から選択される少なくとも1つと、オルトホウ酸との組み合わせが好ましく、オルトホウ酸と4ホウ酸ナトリウム無水物との組み合わせまたはオルトホウ酸と4ホウ酸ナトリウム10水和物との組み合わせがさらに好ましい。
【0016】
次に、前記天然系充填材について説明する。本発明に用いる天然系充填材としては、例えば、竹粉砕物、茶葉粉砕物、ワサビ粉砕物、大豆かす粉砕物、唐辛子粉砕物、コショウ粉砕物、松茸粉砕物、椎茸粉砕物、木粉、紙粉砕物、茶殻粉砕物、コーヒーかす粉砕物、カーボンブラック、タルク、木炭粉砕物、竹炭粉砕物、カカオ豆殻粉砕物等が挙げられる。前記天然系充填材は、粉砕加工していないものも含む。
【0017】
前記天然系充填材としては、例えば、高い木質感を有する樹脂製品を得るためには、木粉を用いるのが好ましい。前記天然系充填材の平均粒径は、例えば、10〜500μmであり、好ましくは30〜300μmであり、より好ましくは30〜200μmである。前記平均粒径が10μm以上であると、嵩比重が大きくなり、樹脂組成物を製造するときの混合性が向上するからである。前記平均粒径が500μm以下であると、本発明の製造方法により得られた樹脂組成物から製造される樹脂製品の外観が向上するからである。なお、前記平均粒径とは、粉末を篩により分級して目開きに対する累積重量%曲線を作成し、その50重量%に該当する目開きの値を意味する。
【0018】
本発明で用いる樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂が好ましい。前記熱可塑性樹脂の融点や、軟化温度(可塑性が得られ始める温度)は、例えば100〜350℃である。また、前記熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46等の脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどのポリエステル、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン系アロイ樹脂などのポリエチレンテレフタレート系アロイ樹脂、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)などのポリアセタール、スチレンの単独重合体、スチレンとアクリロニトリルなどのポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(ポリフェニレンエーテルフェニレンエーテルフェニレンケトン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリルゴム、エチレン−α・オレフィン系共重合ゴム、ブタジエン−スチレンゴム(SBS)、SEPS、SEBSなどの各種ゴム系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましい。前記樹脂は、変性されていてもよい。
【0019】
本発明の製造方法では、高い温度でも混練できるので、前記樹脂としては、例えばいわゆるエンジニアリング樹脂(例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂等)、スーパーエンジニアリング樹脂(例えば、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等)、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン系アロイ樹脂等の、高い融点や軟化温度を有する樹脂を用いることが可能である。
【0020】
前記樹脂の形態は特に限定されず、どのような形態でも良い。例えばPETであれば、ボトル用、射出成形用、繊維用、フィルム用、シート用などとして通常市販されているものを用いることができる。その他、未使用のペレット状製品はもちろん、PETボトルからのものに代表される、フレーク状、ペレット状、パウダー状等のリサイクル(再生)品、ケミカルリサイクル品など、形状や使用・再生経緯を限定されない。
【0021】
なお、前記樹脂に生分解性が要求される場合は生分解性樹脂を使用することが好ましい。生分解性樹脂としては、例えばポリエステル系生分解性樹脂が好ましく、より好ましくはポリ乳酸系生分解性樹脂、特に好ましくはポリ乳酸およびポリヒドロキシブチレートである。
【0022】
本発明の製造方法に用いる樹脂は、前記のとおり未使用品でも良いが、例えば、リサイクル(再生)材由来の樹脂を含むことが、製造コスト低減および資源の有効利用等の観点から好ましい。前記リサイクル材由来の樹脂としては、例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、さらには、ポリエチレンテレフタレート系やポリオレフィン系樹脂のリサイクル品、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン系アロイ樹脂などのポリエチレンテレフタレート系アロイ樹脂のリサイクル品、ポリ乳酸などの生分解性樹脂のリサイクル品などが挙げられる。
【0023】
前記生分解性樹脂およびリサイクル材由来の樹脂の形態も特に限定されず、どのような形態でも良い。例えばPETであれば、ボトル用、射出成形用、繊維用、フィルム用、シート用などとして通常市販されているものを用いることができる。その他、未使用のペレット状製品はもちろん、PETボトルからのものに代表される、フレーク状、ペレット状、パウダー状等のリサイクル(再生)品、ケミカルリサイクル品など、形状や使用・再生経緯を限定されない。
【0024】
本発明の製造方法では、前記樹脂および前記天然系充填材との混練工程において、リン酸、リン酸塩、二酸化ケイ素類、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一つの物質が更に添加されるのが好ましい。これらの物質は、天然系充填材のホウ素化合物による処理の作業性や黒化防止等の本発明の効果を向上させるからである。リン酸塩としては、例えば、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。二酸化ケイ素類としては、例えば、シリカ、シリカゲル等が挙げられる。セラミックスとしては、例えば、炭化物、窒化物、ホウ化物等の無機化合物の成形体等が挙げられ、具体的には、例えば、マグネシウム系有機リン含有物が挙げられる。リン酸、リン酸塩、二酸化ケイ素類、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一つの物質としては、水溶解性なものが好ましく、例えばリン酸が好ましい。
【0025】
本発明の製造方法において、例えば、前記樹脂と、前記天然系充填材と、ホウ酸と4ホウ酸ナトリウム類(4ホウ酸ナトリウム無水物、4ホウ酸ナトリウム8水和物、4ホウ酸ナトリウム10水和物(ホウ砂)、4ホウ酸ナトリウム5水和物等を含む)またはメタホウ酸ナトリウム4水和物と、リン酸とを混練するのが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法では、前記樹脂と、前記天然系充填材と、前記ホウ素化合物以外の成分を適宜用いても良いが、例えば、目的に応じた添加剤をさらに含むことが好ましく、前記添加剤は、例えば、無機フィラーを含むことがより好ましい。前記添加剤により、場合によっては、本発明の樹脂組成物の機械的物性をさらに向上させたり、その成形体の外観や寸法精度の向上などを図ることもできる。さらに、塗装性、難燃性や導電性などの新たな機能性などを付与することも可能である。以下、前記添加剤についてより具体的に説明する。
【0027】
前記添加剤に使用可能な無機フィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)、グラファイト、シリカ、シリカ繊維、ケイ醗カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、グラファイト繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、金属粉、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、石膏繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、酸化ジルコニウム、酸化鉄、チタン酸バリウム、白土などが挙げられ、単独で用いても二種類以上併用しても良い。例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等は樹脂組成物に難燃性を付与する目的に適しており、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)、炭素繊維等は、導電性を付与する目的に適している。
【0028】
前記無機フィラーの使用にあたっては、必要に応じて集束剤、表面処理剤等を併用することが好ましい。前記集束剤および表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物が挙げられる。これらの化合物は、あらかじめ無機フィラーに表面処理、集束処理等を施すことで用いるか、または混練の際同時に添加してもよい。
【0029】
その他、前記添加剤としては、目的に応じた所望の特性を樹脂組成物に付与するために、一般に樹脂に添加される公知の添加剤を適宜用いても良い。このような添加剤として、例えば、酸化防止剤、加工安定剤、光安定剤や紫外線吸収剤等の各種安定剤、難燃剤、可塑剤、軟化剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃改良剤、染料や顔料などの着色剤、結晶化促進剤、結晶核剤、防腐剤、防カビ剤、防蟻剤等を配合することができる。前記着色剤は特に限定されないが、例えば二酸化チタン、酸化コバルト、群青、紺青、弁柄、銀朱、鉛白、鉛丹、黄鉛、ストロンチウムクロメート、チタニウムイエロー、チタンブラック、ジンククロメート、鉄黒、モリブデン赤、モリブデンホワイト、リサージ、リトポン、カーポンブラック、エメラルドグリーン、ギネー緑、カドミウム黄、カドミウム赤、コバルト青、アゾ顔料、フタロシアニンブルー、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノンペリレン等が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、天然の木質感を出すためには黄色酸化チタン、弁柄(酸化鉄)等が好ましい。
【0030】
次に、本発明の製造方法について、例を挙げて説明する。
【0031】
本発明の天然系充填材を含有する樹脂組成物の製造方法は、前記のように、前記樹脂および前記天然系充填材とを混練する混練工程を有する製造方法において、前記混練工程が、前記天然系充填材の黒化防止のために、ホウ素化合物の存在下で実施されることを特徴とする。本発明の製造方法は、例えば以下のようにして実施することができる。
【0032】
すなわち、前記樹脂、前記天然系充填材および前記ホウ素化合物を準備し、前記ホウ素化合物の存在下に、前記樹脂と前記天然系充填材とを混練する。この際、前記ホウ素化合物の配合割合は、前記天然系充填材100重量部に対し、例えば0.1〜500重量部、好ましくは1〜300重量部、より好ましくは5〜200重量部である。
【0033】
また、前記樹脂の配合量は特に限定されないが、前記天然系充填材100重量部に対し、例えば10〜1000重量部、好ましくは20〜900重量部、より好ましくは30〜200重量部である。前記樹脂の配合量が20〜900重量部の範囲内であれば、成形加工性および樹脂組成物の機械的物性等の観点から好ましい。
【0034】
本発明の製造方法において、混練工程で、リン酸、リン酸エステル、リン酸塩、二酸化ケイ素類、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一つの物質が添加される場合、その添加量は、前記ホウ素化合物100重量部に対し、例えば1〜100重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
【0035】
混練温度は特に限定されず、例えば、各成分の溶融や混練がスムーズに行なわれるように適宜設定すれば良い。温度設定は、混練時において、混練装置のシリンダー等の内部温度は、例えば100℃以上、好ましくは100〜350℃、より好ましくは180℃〜350℃の範囲、さらに好ましくは240℃〜350℃の範囲である。従って、混練は、例えば100℃以上、好ましくは180〜350℃、より好ましくは180℃〜350℃の範囲、さらに好ましくは240℃〜350℃の範囲で行うことができる。
【0036】
本発明の製造方法における混練に用いる装置は、特に限定されないが、例えば、ロールニーダー、バンバリーミキサー、インターミックス、一軸押出機、二軸押出機、ヘンシェルミキサーなどの高速撹拌型のミキサー等が挙げられ、中でも二軸押出機が好ましく、ベント(脱気口)などの孔部を一つ以上備える二軸押出機がより好ましい。前記装置は1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。また、混練装置が二軸押出機などの連続押出機の場合のスクリュー回転数は、各成分を充分混練出来るレベルであれば良いが、例えば20〜1200rpmの範囲、好ましくは30〜1000rpmの範囲、より好ましくは50〜1000rpmの範囲である。
【0037】
本発明の製造方法においては、前記混練工程の前に、前記天然系充填材の前記ホウ素化合物による処理工程が実施されるのが好ましい。この製造方法により得られる樹脂組成物の黒化防止効果が向上するからである。
【0038】
前記処理工程としては、前記天然系充填材に前記ホウ素化合物溶液を含浸させる含浸工程であってもよい。前記含浸工程は、例えば、前記ホウ素化合物の溶液に、前記天然系充填材を注ぎ入れながら攪拌し、含浸させる方法、前記ホウ素化合物の溶液に、前記天然系充填材を加えて攪拌し、含浸させる方法、前記ホウ素化合物の溶液に、前記天然系充填材を加え、その粉末を前記溶液に充分浸した状態で、加圧(例えば1MPa下)して含浸させる方法等が挙げられる。
【0039】
前記含浸工程は、例えば特開2003−211412号に記載の方法を用いて行ってもよい。この方法によれば、例えば木材(天然系充填材)(含水率7%)を、密閉加減圧用容器中で減圧にし(減圧処理)、その容器内に、前記ホウ素化合物(例えばホウ砂およびホウ酸)ならびに任意にリン酸および添加剤を含む水溶液(例えば80℃に加熱)を導入して、加熱および加圧下に維持して前記ホウ素化合物を前記木材に含浸させ(含浸処理)、その後、乾燥処理、減圧処理および含浸処理を、所望回数繰り返すことにより、前記天然系充填材に前記ホウ素化合物を含浸させることができる。または、前記含浸工程を行う代わりに、前記ホウ素化合物が含浸された天然系充填材を、市販で購入してもよい。
【0040】
前記含浸工程後、前記天然系充填材を乾燥し粉砕する乾燥粉砕工程を実施してもよい。混練工程の効率が向上するからである。前記乾燥粉砕工程は、特に限定はないが、例えば、当該分野で従来知られている方法により、行ってもよい。
【0041】
前記処理工程としては、前記天然系充填材に前記ホウ素化合物を、付着させる工程、塗布する工程または添加混合する工程であってもよい。前記付着工程としては、例えば、前記ホウ素化合物の溶液を、前記天然系充填材に噴霧して付着させる工程等が挙げられる。前記添加混合工程としては、例えば、前記天然系充填材と、前記樹脂と、前記ホウ素化合物と、溶媒とを混合する工程等が挙げられる。前記付着工程、前記塗布工程、前記添加混合の後、前記天然系充填材を乾燥させるのが好ましい。
【0042】
前記処理工程で用いる前記ホウ素化合物溶液の溶媒は、特に限定されないが、例えば、有機溶媒、水およびこれらの混合溶媒がある。前記有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エーテル類(ジエチルエーテル等)、ケトン類(アセトン等)、エステル類(酢酸エチル等)、脂肪族炭化水素類(n−ヘキサン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン等)等が挙げられる。前記溶媒としては、親水性のものが好ましく、例えば、水、アルコール類およびケトン類が好ましい。前記水は、その成分内容や温度の制限は特になく、例えば、水道水、井戸水、工業用水、蒸留水、飲料専用水、自然・天然水、河川・湖水、湧出水、水蒸気などが挙げられるが、いずれも不純物の極力少ないものが好ましい。前記溶媒は、単独または混合して用いてもよい。前記溶媒としては、例えば、アルコール類と水とを混合して用いるのが好ましい。
【0043】
前記ホウ素化合物溶液を調製する際の、前記ホウ素化合物と前記溶媒の配合量は特に限定されないが、前記ホウ素化合物の100重量部に対し、前記溶媒の配合量は、例えば50重量部〜5000重量部、好ましくは100重量部〜3000重量部、より好ましくは200重量部〜1000重量部である。
【0044】
前記ホウ素化合物の溶液には、前記のような、リン酸、リン酸塩、二酸化ケイ素類、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一つの物質、前記のような添加剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の界面活性剤、浸透液等を含んでもよい。このような界面活性剤等を含む前記ホウ素化合物溶液を用いると、前記処理が促進されるので、好ましい。
【0045】
前記ホウ素化合物溶液のpHは、特に限定されないが、好ましくは6〜9の範囲、より好ましくは7〜8の範囲である。前記pHが6〜9の範囲であれば、得られる樹脂組成物の、天然系充填材の黒化をより抑制できるからである。また、前記pHが6〜9の範囲であれば、混練の際用いる装置が腐食するのを抑制できるからである。前記pHは、アルカリ性物質または酸性物質を添加して、所望の値に調整してもよい。そのような酸性物質としては、リン酸が好ましい。
【0046】
前記処理において、前記ホウ素化合物溶液の温度は、特に限定されないが、好ましくは常温〜高温であり、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。前記温度が常温〜高温であると、前記処理が促進されるからである。
【0047】
本発明の製造方法における前記処理工程は、より具体的には、例えば、
I)撹拌混合槽へ、ホウ素化合物と温水を投入し、充分撹拌混合してホウ素化合物水溶液を調製し、次いで、そこへ(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材を、注ぎ込みながら撹拌して含浸させ、前記ホウ素化合物水溶液が、充分浸透、含浸した後、前記粉末を除湿乾燥機や熱風乾燥機で充分乾燥する工程、
II)撹拌混合槽へ、ホウ素化合物と、温水と、(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材を投入し、充分撹拌混合し、前記ホウ素化合物が、充分浸透、含浸した後、前記粉末を除湿乾燥機や熱風乾燥機で充分乾燥する工程、
III)ヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機器へ、ホウ素化合物と、温水と、(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材を順次または同時に投入し、次いで充分撹拌混合し、前記ホウ素化合物が、充分浸透、含浸した後、前記粉末を除湿乾燥機や熱風乾燥機で充分乾燥する工程、
IV)撹拌混合槽へ、ホウ素化合物と、温水とを投入し、充分撹拌混合してホウ素化合物水溶液を調製し、次いで、このホウ素化合物水溶液を噴霧容器により、(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材の表面に行き渡る様に霧状に吹きつけ、付着させ、次いで、除湿乾燥機や熱風乾燥機で充分乾燥する工程、
V)撹拌混合槽へ、ホウ素化合物と、(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材と、アルコール類とを投入し、前記粉末がゲル状になるまで充分撹拌混合し、前記ホウ素化合物と前記粉末とが充分混合した後、前記粉末を除湿乾燥機や熱風乾燥機で充分乾燥する工程、
VI)撹拌混合槽へ、ホウ素化合物と、温水とを投入し、充分撹拌混合してホウ素化合物水溶液を調製し、次いで、別の圧力容器へ、(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材と、前記水溶液を入れ、前記粉末を前記水溶液に充分浸した状態で、1MPa程度の圧力で圧力容器全体を加圧させて含浸させ、前記ホウ素化合物が、充分浸透、含浸した後、前記粉末を取り出し、除湿乾燥機や熱風乾燥機で充分乾燥する工程、
VII)一貫混練装置(ライン)を構成するヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機器へ、ホウ素化合物と、温水と、(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材とを投入し、充分撹拌混合して前記ホウ素化合物を前記粉末ヘ浸透、含浸させ、その後、添加剤等などを投入して一括混合する工程、
VIII)別途設置したヘンシェルミキサー、タンブラーなどの混合機器で、ホウ素化合物と、温水と、(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材とを順次または同時に投入し、充分撹拌混合して前記ホウ素化合物を前記粉末に充分浸透、含浸させ、その粉末を、押出機材料供給口以外の、1ヶ所以上のベント等の孔部から、所定の割合で一定量ずつ供給する工程、
IX)ホウ素化合物と、温水と、(必要に応じて予備乾燥した)天然系充填材を、(自動)計量装置で個別に、混練装置の材料供給口以外の1ヶ所以上のベント等の孔部から、順次投入し、押出機加熱筒の内部で、混練により、前記ホウ素化合物を前記粉末に充分浸透、含浸させる工程等により、行うことができる。
【0048】
本発明の製造方法で、前記処理工程が実施された天然系充填材のかさ密度は、前記処理工程が実施される前の天然系充填材に比べ、好ましくは大きく、より好ましくは1.2倍以上であり、さらに好ましくは2倍以上である。例えば、前記処理された天然系充填材と、前記樹脂とを混練する場合、混練装置の運転効率および混合効率が向上するため、前記処理後の天然系充填材のかさ密度は、処理前より大きいのが好ましい。また、本発明の製造方法において、前記処理工程が実施された天然系充填材と、前記処理工程が実施されていない、無処理の天然系充填材とを必要に応じて併用してもよい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、本発明の製造方法により製造される樹脂組成物である。前記のように、この樹脂組成物は、高い温度で混練しても、天然系充填材の黒化が防止できる。本発明の樹脂組成物の用途は特に限定されず、各種樹脂製品に幅広く使用できる。
【0050】
本発明の製造方法は、さらに成形加工工程を有していてもよい。そのような成形加工工程としては、例えば押出成形、射出成形、中空成形、フィルム成形、圧縮成形、真空成形等の工程が挙げられる。なかでも、成形加工工程としては、異型成形体などを成形加工する押出成形および射出成形の工程が、好ましい。このような成形加工工程により得られた成形体、すなわち樹脂製品は、例えば、枠材などの建材、家具、生活用品、自動車部品用等へ適用することが出来る。この成形加工工程により、シート状、管状等、所望の形態に成形した、成形体を得ることができる。
【0051】
さらに、本発明は、天然系充填材の黒化防止剤であって、前記ホウ素化合物を含む黒化防止剤を提供する。このホウ素化合物としては、前記と同様のものを用いることができるが、中でも、ホウ酸、ホウ酸塩、テトラヒドロホウ酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、シアノトリヒドロホウ酸塩および酸化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一つであるのが好ましい。
【0052】
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法およびそれにより得られる樹脂組成物の実施例について説明する。
【実施例1】
【0053】
[I]原材料
本実施例で製造した樹脂組成物の原材料は、以下に示すとおりである。
(1)樹脂(成分A)
A−1:ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン系アロイ樹脂
前記アロイ樹脂は、次のようにして製造した。三菱レイヨン製PET樹脂(商品名ダイヤナイト「KR582」、固有粘度=0.65(25℃、オルソクロロフェノール中)、未使用ペレット)(配合量67重量部)と、日本ポリエチレン製、直鎖状ポリエチレン(商品名「UF440」、MFR(190℃)=1.7g/min.、未使用ペレット)(配合量30重量部)と、相溶化剤(エチレン−グリシジルメタクリレート(配合量3重量部)(共重合体、ペレット)とを、予めタンブラーミキサーで充分混合した。室温の水を時間当たり2重量部の割合で材料供給口へ注入しながら、この混合物を、二軸押出機(BT30(商品名):プラスチック工学研究所製、スクリュー径30mm)中に一定量ずつ添加しながら溶融および混練(260℃)し、さらに造粒し、目的とする前記アロイ樹脂をペレットとして得た(融点=247℃)。
なお、前記融点は、島津製作所製示差走査熱量計「DSC−60」にて測定した値から算出した。前記示差走査熱量計により得られたDSC曲線がベースラインから外れ始める点と、ピークへの立ち上がりの傾きが落ち着いた点を、夫々接点とする接線を引いた時の両者の交点を、前記融点とした。
MFR(280℃、2.16kg)=2g/10分。
【0054】
A−2:ポリエチレンテレフタレート(商品名「ダイヤナイト」、三菱レイヨン製)
融点=246℃、固有粘度=0.71(25℃、オルソクロロフェノール中)。
A−3:ポリフェニレンエーテル系変性樹脂(商品名「ザイロン」、旭化成製)
融点=253℃、MFR(300℃、10kg)=33g/10分。
A−4:ポリプロピレン(商品名「ノバテック」、日本ポリプロ製)
融点=156℃、MFR(230℃、2.16kg)=3g/10分。
A−5:ポリ乳酸(カーギルダウ製)
融点=164℃、MFR(230℃、2.16kg)=3g/10分。
【0055】
(2)ホウ素化合物で含浸された天然系充填材(成分B)
B−1:先ず、撹拌混合槽に、60℃の温水(88.1重量部)、4ホウ酸ナトリウム無水物(6.5重量部)およびオルトホウ酸(5.4重量部)を投入した後、充分混合してホウ素化合物の水溶液を調製した。この水溶液のpH値は7.8であった。
【0056】
次いで、前記水溶液中に、米国産松の木粉(平均粒径=78μm、かさ密度=0.27g/cm3)(天然系充填材)(前記水溶液の100重量部に対し11重量部)を注入しながら撹拌して、前記木粉中に前記ホウ素化合物を充分含浸させ、その後、熱風乾燥機で充分乾燥させ、ホウ素化合物で含浸された天然系充填材を得た。この場合、得られた天然系充填材における、ホウ素化合物と天然系充填材の実質的な配合量は、天然系充填材100重量部に対し、ホウ素化合物(4ホウ酸ナトリウム無水物およびオルトホウ酸)は108重量部であった。この粉末のかさ密度は、0.59g/cm3であった。
【0057】
B−2:撹拌混合槽に、60℃の温水(88.1重量部)、4ホウ酸ナトリウム無水物(7.5重量部)、オルトホウ酸(4.0重量部)および燐酸(0.4重量部)の割合で投入した後、充分混合してホウ素化合物の水溶液(リン酸を含む)を調製した。この水溶液のpH値は6.9であった。
【0058】
次いで、前記水溶液中に、国産杉の木粉(平均粒径=61μm)(前記水溶液の100重量部に対し13重量部)を注入しながら撹拌して、前記木粉中に前記ホウ素化合物等を充分含浸させ、その後、熱風乾燥機で充分乾燥させ、ホウ素化合物で含浸された天然系充填材を得た。この場合、得られた天然系充填材における、ホウ素化合物(4ホウ酸ナトリウム無水物およびオルトホウ酸)と天然系充填材の実質的な配合量は、天然系充填材100重量部に対し、ホウ素化合物(4ホウ酸ナトリウム無水物およびオルトホウ酸)は88重量部であった。
【0059】
B−3:米国産松の木粉の代わりに、国産竹粉(平均粒径=69μm)を用いた以外は、B−1と同様にして、ホウ素化合物で含浸された天然系充填材を得た。
【0060】
B−4:米国産松の木粉の代わりに、事務用紙を粉砕した紙粉(平均粒径=47μm)を用いた以外は、B−1と同様にして、ホウ素化合物で含浸された天然系充填材を得た。
【0061】
B−5:米国産松の木粉(平均粒径=78μm)、無処理。この粉末のかさ密度は、0.27g/cm3であった。
【0062】
B−6:事務用紙を粉砕した紙粉(平均粒径=47μm)、無処理。
【0063】
[II]混練装置
本実施例で用いた混練装置は、以下に示すとおりである。
C2(商品名):東洋精機製作所製、ラボプラストミル
BT30(商品名):プラスチック工学研究所製、二軸押出機(スクリュー径30mm)。
【0064】
[III]混練時における、天然系充填材の黒化(焼け)と、異臭の発生度合の評価方法
本実施例で製造した樹脂組成物の評価は、次に示すとおりの評価方法で行った。
【0065】
ラボプラストミル(c2(商品名))(ローター回転数=50rpm)での混練後の樹脂組成物の外観を、目視で観察するとともに、混練過程での異臭を嗅いで、次の様に評価した。この際の混練条件(温度および時間)は、表1に示した。混練量は50gであった。
【0066】
◎:ほとんど天然系充填材の変色が認められず、樹脂組成物全体の色もほとんど変化が認められない。また、異臭もほとんど感じられない。
○:わずかに天然系充填材の黒化(焼け)が認められ、樹脂組成物全体も若干変色しているが、実用上問題無い水準と判断される。また、異臭はわずかに感じられるが、作業性や環境的にも、問題ない水準と判断される。
△:かなりの程度、天然系充填材の黒化(焼け)が認められ、樹脂組成物全体も明らかに黒っぽく変色しており、実用性に欠ける。また、異臭もかなり感じられ、作業性や環境的には、改善が必要と判断される水準である。
×:著しく、天然系充填材の黒化(焼け)が認められ、樹脂組成物全体が真黒状に変化し、全く実用性に欠ける。異臭もひどく、作業性や環境的には、早急な改善が必要と判断される水準である。
【0067】
(樹脂組成物の製造)
以下のようにして18種類の樹脂組成物を製造した。それぞれを実施例1−1〜1−11および比較例1〜7とする。すなわち、まず、各組成物製造用の原料成分を、下記表1に示す比率で準備した。表1中、成分AおよびBの各成分の配合量は、成分Aおよび成分Bの重量合計に対する重量%で示している。なお、比較例において、成分B−5およびB−6は20重量%用いているが、これは、実施例における成分B−1〜B−4の配合量30重量%の2/3である。これは、成分B−5およびB−6中の実際の天然系充填材の重量と、成分B−1〜B−4中の実際の天然系充填材の重量が、容量的にほぼ同一になるように換算したためである。
【0068】
【表1】

【0069】
前記表1に示すように、実施例1−1〜1−11の結果から、本発明の製造方法により製造された樹脂組成物は、高温で混練しても、樹脂組成物の黒化を抑制できることが確認できた。
【0070】
[IV]樹脂組成物の機械強度
(実施例1−12)
(i)試験片調製:実施例1−1と同じ組成の成分A−1および成分B−1を、二軸押出機(BT30(商品名))で混練し、造粒した(シリンダー温度260℃、スクリュー回転数160rpm)。この際、原料の成分A−1および成分B−1は、別々の供給口から、自動供給装置により、所定量を同時供給した。そのようにして製造した樹脂組成物を、JIS標準試験片(JIS−K7162の1A型、t=4mm)に成形し、それを用いて物性評価を行なった。前記試験片は、新潟鉄工製射出成形機AN100型(商品名)を用いて成形(成形温度260℃、金型温度150℃)することにより調製した。得られた試験片を用いて、以下の試験を行った。その結果は、引張強度30Mpa、引張り伸び4%、曲げ強度45MPa、曲げ弾性率2400MPa、アイゾット衝撃強度31J/mおよび荷重たわみ温度155℃であった(0.45MPa)。
【0071】
(ii)引張強度・伸び:東洋精機製ストログラフVE10D型(商品名)で測定した。測定条件はJIS−K7161、K7162に準拠し、引張速度=50mm/分、気温23℃および相対湿度50%条件下で測定した。
(iii)曲げ弾性率および曲げ強度:東洋精機製ストログラフVElOD型(商品名)で測定した。測定条件はJIS−K7171に準拠し、曲げ速度=2mm/分、気温23℃および相対湿度50%条件下で測定した。
(iv)アイゾット衝撃強度:東洋精機製デジタル衝撃試験機DG−UB型(商品名)で測定した。測定条件はJIS−K7110に準拠し、ノッチ付、気温23℃および相対湿度50%条件下で測定した。
(v)荷重たわみ温度:東洋精機製HDT試験装置3M−2型(商品名)で測定した。測定条件はJIS−K7191に準拠した。
【0072】
(実施例1−13)
実施例11−と同じ組成の成分A−1および成分B−1を、二軸押出機(BT30(商品名))で混練し、造粒した(シリンダー温度260℃、スクリュー回転数160rpm)。この際、原料の成分A−1および成分B−1は、別々の供給口から、自動供給装置により、所定量を同時供給した。そのようにして製造した樹脂組成物を、塩化ビニール用異型押出機で成形して建材用モデル長尺板(概略寸法:幅120mm×平均厚み2mm)を得た。成形性は良好であり、得られた長尺板は、良好な木質外観、強度および寸法精度を発現した。このように、本発明の製造方法によれば、良好な成形性を有する樹脂生成物を提供することもできる。
【0073】
(比較例8)
比較例1と同じ組成の成分A−1と成分B−5を、二軸押出機(BT30(商品名))で混練し、造粒しようと試みたが(シリンダー温度260℃、スクリュー回転数160rpm)、ダイス部分での天然系充填材の黒化(焼け)が著しく、押し出されたストランドを連続して引くことができず、造粒できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の製造方法によれば、高い温度で樹脂と天然系充填材とを混練しても、天然系充填材の黒化を防止できる。従って、この樹脂組成物には、例えば、天然系充填材が本来有する自然な質感等をそのまま反映されており、かつその樹脂製品の強度も劣化していない。このように、本発明によれば、優れた樹脂製品を提供することが可能であり、この樹脂組成物は、様々な用途の樹脂製品に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然系充填材を含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記樹脂および前記天然系充填材とを混練する混練工程を有し、前記混練工程が、前記天然系充填材の黒化防止のために、ホウ素化合物の存在下で実施される製造方法。
【請求項2】
前記混練工程に先立ち、前記天然系充填材の前記ホウ素化合物による処理工程が実施される請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記処理工程は、前記天然系充填材に前記ホウ素化合物溶液を含浸させる含浸工程である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記含浸工程後、前記天然系充填材を乾燥し粉砕する乾燥粉砕工程を実施する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記処理工程は、前記天然系充填材に前記ホウ素化合物を、付着させる工程、塗布する工程または添加混合する工程である請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記混練工程における混練温度が、100℃以上である請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記ホウ素化合物の割合が、前記天然系充填材100重量部に対し、
0.1〜500重量部の範囲である請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記ホウ素化合物が、ホウ酸、ホウ酸塩、テトラヒドロホウ酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、シアノトリヒドロホウ酸塩および酸化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記ホウ素化合物が、4ホウ酸ナトリウム無水物、4ホウ酸ナトリウム10水和物(ホウ砂)およびメタホウ酸ナトリウム4水和物からなる群から選択される少なくとも1つと、オルトホウ酸との組み合わせである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記天然系充填材が、竹粉砕物、茶葉粉砕物、ワサビ粉砕物、大豆かす粉砕物、唐辛子粉砕物、コショウ粉砕物、松茸粉砕物、椎茸粉砕物、木粉、紙粉砕物、茶殻粉砕物、コーヒーかす粉砕物、木炭粉砕物、竹炭粉砕物およびカカオ豆殻粉砕物からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂が、熱可塑性樹脂である請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記混練工程において、さらに、リン酸、リン酸塩、二酸化ケイ素類およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一つの物質を添加する請求項1から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
さらに成形加工工程を含む請求項1から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
天然系充填材含有樹脂組成物であって、請求項1から12のいずれかに記載の方法により製造された樹脂組成物。
【請求項15】
天然系充填材含有樹脂組成物の成形体であって、請求項13に記載の方法により製造された成形体。
【請求項16】
天然系充填材の黒化防止剤であって、前記ホウ素化合物を含む黒化防止剤。
【請求項17】
前記ホウ素化合物が、ホウ酸、ホウ酸塩、テトラヒドロホウ酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、シアノトリヒドロホウ酸塩および酸化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一つである請求項16に記載の黒化防止剤。

【公開番号】特開2006−16461(P2006−16461A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194373(P2004−194373)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(592248455)fA.M株式会社 (3)
【Fターム(参考)】