説明

太陽光の建屋の無動力蓄熱構造

【課題】 太陽熱を利用した建屋おける取付け容易な無動力蓄熱構造の提供。
【解決手段】 建屋の壁面または屋根に、非結像型のリニアフレネルレンズ1を設け、そのリニアフレネルレンズ1に第1導光ダクト2の一端を接続すると共に、その他端にL字状に下方へ第2導光ダクト4を接続し、第1導光ダクト2と第2導光ダクト4とのコーナーにミラー3を設ける。そして、第2導光ダクト4の下端に止水機能を有する受熱体5を設け、その受熱体5に蓄熱媒体を介して蓄熱槽6を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を利用した家屋等における建屋の無動力蓄熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラーシステムの集光装置を利用し、暖房の熱源を得るものが下記特許文献1に記載されている。これは、屋根等の外壁材の上面に断熱層を設け、その断熱層の上方に通風路を介して集熱体を配置し、集熱体の上方を密閉空間とした断熱空気層を介してリニアフレネルレンズからなる採光板を取付けたものである。そして集光部に複数の集熱板と集熱管とを形成させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−90263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄熱容量の大きな集熱板と集熱管とを屋根に設置するには、ある程度の困難を伴うと共に、そのメンテナンスが面倒である欠点がある。さらには、熱輸送にファンや循環ポンプを要し、電気エネルギーの消費を伴う。
また、耐震性の点からも屋根に重量が加わることは好ましくない。
そこで本発明は係る問題点を解決し、大きなスペースを要することなく太陽光を利用した建屋の無動力蓄熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、建屋の壁面または屋根に露出して、偏平な光束に集光する非結像型のリニアフレネルレンズ(1)と、
そのリニアフレネルレンズ(1)の光放出側に一端が接続され、その建屋内を横方向に向けて配置された偏平な第1導光ダクト(2)と、その第1導光ダクト(2)の他端に反射用のミラー(3)を介して下方に向けて配置された偏平な第2導光ダクト(4)と、
その第2導光ダクト(4)の下端に設けられ、止水機能を有し、光束が照射される受熱体(5)と、
その受熱体(5)に、蓄熱媒体を介して接続する蓄熱槽(6)と、を具備する太陽光の建屋の無動力蓄熱構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、建屋の屋根に露出して、その光放出側が下方に向けられ、偏平な光束に集光する非結像型のリニアフレネルレンズ(1)と、
そのリニアフレネルレンズ(1)の光放出側に上端が接続され、その建屋内を下方に向けて配置され偏平な第2導光ダクト(4)と、
その第2導光ダクト(4)の下端に設けられ、止水機能を有し、光束が照射される受熱体(5)と、
その受熱体(5)に、蓄熱媒体を介して接続する蓄熱槽(6)と、を具備する太陽光の建屋の無動力蓄熱構造である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
前記第1導光ダクト(2)および第2導光ダクト(4)は、内面に光反射面を有する金属板からなり、前記蓄熱槽(6)が地下に配置された太陽光の建屋の無動力蓄熱構造である。
請求項4に記載の本発明は、請求項3において、
導光ダクトに採光用のスリット(7)または孔が設けられて、ダクト中の一部の光を室内に導くように構成した太陽光の建屋の無動力蓄熱構造である。
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
導光ダクトの外周に空気流が流通するように構成した太陽光の建屋の無動力蓄熱構造である。
【発明の効果】
【0008】
建屋の下方に延びる第2ダクトが偏平であるため、壁面等に沿った偏平な空間を利用してコンパクトに光束を建屋下部に導き、光エネルギーを蓄熱槽に蓄熱できる。しかも、これに動力エネルギーを必要としない。そして比較的容量の大きな蓄熱槽を建屋下部に配置し、耐震性の強い太陽光の建屋の無動力蓄熱構造を提供できる。
第2ダクトの下端の受熱体が蓄熱槽と蓄熱媒体を介して接続するので、蓄熱槽内部に高温部を容易に形成できる。そのため、その高温部から熱エネルギーを効率よく取り出すことができる。また、受熱体は止水機能を有するので、熱媒体がダクト内に流入することを防止し、ダクト内部の温度上昇や熱媒体の蒸発を抑制できる。
さらに偏平な光束に集光するリニアフレネルレンズは、非結像型であるので、結像に伴う導光ダクト内に部分的加熱が生じることを防止し、安全な太陽光の建屋の無動力蓄熱構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の太陽光の建屋の無重力蓄熱構造の原理図。
【図2】同蓄熱構造の要部斜視図。
【図3】本発明の太陽光の建屋の無重力蓄熱構造の他の例を示す説明図。
【図4】図3のA−A矢視略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1及び図2は本発明の太陽光の建屋の無重力蓄熱構造を示し、この例では建屋9の屋根10の下部に非結像型のリニアフレネルレンズ1を配置し、その出力側に水平な第1導光ダクト2の一端を配置すると共に、その第1導光ダクト2の他端に、それに直交して第2導光ダクト4を下方に設け、第1導光ダクト2と第2導光ダクト4のコーナーにミラー3が配置されている。そして第2導光ダクト4の下端に受熱体5が設けられ、その受熱体5が蓄熱槽6(長期蓄熱槽)に連結されている。
この蓄熱槽6内には、水等の蓄熱媒体が収納されている。そしてこの蓄熱槽6にヒートパイプ17を介し熱交換器18が連結され、その熱交換器18により給湯又は暖気が室内に供給される。この過程においても動力エネルギーは必要としない。
【0011】
蓄熱槽6及び受熱体5は建屋9の地下に配置され、それと1階の床面との間に短期蓄熱槽19が形成されている。
第1導光ダクト2は、屋根10と天井との間に配置することができる。ミラー3は、一方向に湾曲する曲面形状のもの又は、平板を一方向に多角に形成したものからなる。第1導光ダクト2及び第2導光ダクト4は、アルミニウム等の反射板を用いることができる。その第2導光ダクト4は、壁の間に配置することができる。
非結像型のリニアフレネルレンズ1により集光された光束は、偏平状に形成され、第1導光ダクト2内を進行し、ミラー3で反射されて、第2導光ダクト4内を下方に進行し、受熱体5を加温する。そして受熱体5により、蓄熱槽6内に連通する蓄熱材を加温し、蓄熱槽6内の蓄熱材に蓄熱する。そして、その熱をヒートパイプ17,熱交換器18を介して取り出し、給湯や暖気の供給等に利用する。この全過程で無動力である。
【0012】
なお、この例ではリニアフレネルレンズ1を屋根10の下部に設けたが、それを屋根の頂部に設けてもよい。
屋根10の頂部に設けた場合には、第1導光ダクト2,ミラー3を要さずに、光束を直接第2導光ダクトから受熱体5に導くことができる。
また、建屋の壁面にそのリニアフレネルレンズ1を配置し、図1と同様に光束を第1導光ダクト2,ミラー3,第2導光ダクト4を介して地下に導くこともできる。
【0013】
次に、図3は本発明の他の実施例を示し、この例は地下にコンクリート壁で囲まれた蓄熱槽6が設けられ、屋根10の一側面に調光シャッター20及び透明ガラスからなる採光体が設けられ、その採光体の内側に非結像型のリニアフレネルレンズ1が配置されている。そして金属板からなる第1導光ダクト2が、天井裏内に水平に配置され、それに第2導光ダクト4がL字状に連結され、そのコーナー部にミラー3が配置されている。この例では、第2導光ダクト4が建屋9の壁面に沿って又は壁内に配置されている。
第1導光ダクト2及び第2導光ダクト4には多数のスリット7が設けられ、両導光ダクト2,4の内面を反射しつつ進行する光束の一部を、各スリット7を介して室内に取り入れ、室内を明るくするものである。
【0014】
第2導光ダクト4の下端には、止水機能を有する受熱体5が設けられ、その受熱体5と地下の蓄熱槽6との間に導水管21が設けられている。また、蓄熱槽6の底面と導水管21の端部との間に戻り管16が配置されている。
蓄熱槽6内には水等の蓄熱材が収納され、その内部に給湯用熱交換器12及び給気用熱交換器13が配置されている。給湯用熱交換器12には給水管が連結され、止水栓8を介しその出力側に給湯設備11が設けられている。また、蓄熱槽6内には給気管22が配置され、その外周にフィン等が設けられて、給気用熱交換器13を構成する。
給気管22の入口側には、給気ダンパ14を介し、空気取り入れ口が設けられ、その出口が床下に配置され、そこから各室内に暖房用の空気が供給される。そしてその空気は、各導光ダクトの外周を流通して、天井裏に設けた排気管23及び排気ファン24を介し野外に放出される。
【0015】
図3において浴室の床面には、排水管15の一端が開口し、それがトラップを介して蓄熱槽6と床面との間に配置され、その排水管15内を流通する温水の廃熱を利用して、床の下部を暖める。
なお、調光シャッター20は蓄熱槽6内が余りにも高温になることを防止するときに、半開き又は閉塞される。また、蓄熱槽6に収納される蓄熱材は水に限らず、各種公知のものを1種又は2種以上用いることができる。
【符号の説明】
【0016】
1 リニアフレネルレンズ
2 第1導光ダクト
3 ミラー
4 第2導光ダクト
5 受熱体
6 蓄熱槽
7 スリット
8 止水栓
【0017】
9 建屋
10 屋根
11 給湯設備
12 給湯用熱交換器
13 給気用熱交換器
14 給気ダンパ
15 排水管
16 戻り管
【0018】
17 ヒートパイプ
18 熱交換器
19 短期蓄熱槽
20 調光シャッター
21 導水管
22 給気管
23 排気管
24 排気ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の壁面または屋根に露出して、偏平な光束に集光する非結像型のリニアフレネルレンズ(1)と、
そのリニアフレネルレンズ(1)の光放出側に一端が接続され、その建屋内を横方向に向けて配置された偏平な第1導光ダクト(2)と、その第1導光ダクト(2)の他端に反射用のミラー(3)を介して下方に向けて配置された偏平な第2導光ダクト(4)と、
その第2導光ダクト(4)の下端に設けられ、止水機能を有し、光束が照射される受熱体(5)と、
その受熱体(5)に、蓄熱媒体を介して接続される蓄熱槽(6)と、を具備する太陽光の建屋の無動力蓄熱構造。
【請求項2】
建屋の屋根に露出して、その光放出側が下方に向けられ、偏平な光束に集光する非結像型のリニアフレネルレンズ(1)と、
そのリニアフレネルレンズ(1)の光放出側に上端が接続され、その建屋内を下方に向けて配置され偏平な第2導光ダクト(4)と、
その第2導光ダクト(4)の下端に設けられ、止水機能を有し、光束が照射される受熱体(5)と、
その受熱体(5)に、蓄熱媒体を介して接続される蓄熱槽(6)と、を具備する太陽光の建屋の無動力蓄熱構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1導光ダクト(2)および第2導光ダクト(4)は、内面に光反射面を有する金属板からなり、前記蓄熱槽(6)が地下に配置された太陽光の建屋の無動力蓄熱構造。
【請求項4】
請求項3において、
導光ダクトに採光用のスリット(7)または孔が設けられて、ダクト中の一部の光を室内に導くように構成した太陽光の建屋の無動力蓄熱構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
導光ダクトの外周に空気流が流通するように構成した太陽光の建屋の無動力蓄熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−64376(P2011−64376A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214132(P2009−214132)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(507175784)株式会社NERC (5)
【Fターム(参考)】