説明

太陽光発電集熱システム

【課題】蓄熱手段に蓄熱された熱を効率よく使用できる太陽光発電集熱システムを提供する。
【解決手段】建物の屋根面42に、太陽電池モジュール8が屋根面42との間に空気流通層Sを介在させた状態で設けられ、空気流通層Sに伝熱手段13が接続され、伝熱手段13は、中間床15とこの中間床15の直下に設けられた天井20との間の天井裏空間21に接続され、天井裏空間21に、熱を蓄える蓄熱手段12が設けられ、天井20に、この天井20より断熱効果の高い断熱材24が設けられているので、蓄熱手段12に蓄熱された熱を床暖房として効率よく使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、太陽エネルギーを利用して、発電と集熱の両方を行うことのできる太陽光発電集熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーを利用して、発電と集熱の両方を行うことのできる太陽光発電集熱システムの一例として、特許文献1に記載のものが知られている。
この太陽光発電集熱システムは、屋根面に複数の太陽電池モジュールが配設され、これら太陽電池モジュールの上方に透光性部材が少なくとも前記太陽電池モジュールの上方を覆うようにして設けられ、前記透光性部材と前記屋根面との間に、空気流通層が形成され、この空気流通層に、床下に配置されて熱を蓄える蓄熱手段に連結する伝熱手段が接続されているものである。
【0003】
このような太陽光発電集熱システムでは、屋根面に配設された太陽電池モジュールによって、太陽光を電気(電力)に変換することができ、建物で消費する電力を賄うことができるため、電力の自給自足を行うことができる。
また、太陽電池モジュールの上方に透光性部材が少なくとも太陽電池モジュールの上方を覆うようにして設けられ、透光性部材と屋根面との間に空気流通層が形成され、さらに、空気流通層には床下の蓄熱手段に連結する伝熱手段が接続されているので、太陽熱が透光性部材を透光して空気流通層内の空気に伝達されることによって、その空気が加熱されて、さらに伝熱手段を介して蓄熱手段で蓄熱される。その結果、蓄熱手段に蓄熱された熱を床暖房に利用できるとともに、暖房機器等に使用される電力を削減することが可能となる。
したがって、このように発電と集熱とを同時に行うことができるため、太陽エネルギーの利用効率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−226978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の太陽光発電集熱システムでは、1階の床下に蓄熱手段を設置し、1階の床暖房としていたが、2階以上の床と、その直下にある天井板との間に蓄熱手段を設置することによって、2階以上の床の床暖房とすることができる。
しかし、蓄熱手段からの熱は、上方のみならず下方にも放出される。したがって、蓄熱手段を2階以上の床と、その直下にある天井との間に設置すると、蓄熱手段から放出される熱の一部が天井を加熱するので、蓄熱手段から放出された熱の一部が無駄となってしまい、よって、蓄熱手段に蓄熱された熱を効率よく使用できなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、蓄熱手段に蓄熱された熱を効率よく使用できる太陽光発電集熱システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図6に示すように、建物の屋根面42に、太陽電池モジュール8が前記屋根面42との間に空気流通層Sを介在させた状態で設けられており、
前記空気流通層Sに伝熱手段13が接続されており、
この伝熱手段13は、前記建物の1階床30より上方にある床(例えば中間床15)とこの床15の直下に設けられた天井20との間の天井裏空間21に接続されており、
前記天井裏空間21に、熱を蓄える蓄熱手段12が設けられており、
前記天井20に、この天井20より断熱効果の高い断熱材24が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、太陽熱が太陽電池モジュール8を透過して空気流通層S内の空気に伝達されることによって、その空気が加熱され、加熱された空気が伝熱手段13を介して、建物の1階床30より上方にある床15とこの床15の直下に設けられた天井20との間の天井裏空間21に流入し、加熱された空気の熱が天井裏空間21に設けられた蓄熱手段12に蓄熱される。
その結果、蓄熱手段12に蓄熱された熱を床暖房に利用できるとともに、天井20に、この天井20より断熱効果の高い断熱材24が設けられているので、蓄熱手段12から下方に向けて放出された熱は断熱材24でその大部分が断熱される。したがって、蓄熱手段12に蓄熱された熱を床暖房として効率よく使用できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の太陽光発電集熱システムにおいて、
前記1階床30より上方にある床は、ある特定階(例えば2階)の中間位置にある中間床15であり、
この中間床15と特定階床(2階床16)との間が収納空間17となっており、
前記中間床15とその直下に設けられた天井20との間の天井裏空間21に前記蓄熱手段12が設けられていることを特徴とする
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、蓄熱手段12から下方に向けて放出された熱は断熱材24でその大部分が断熱されるので、蓄熱手段12に蓄熱された熱を効率よく使用できるとともに、断熱材24を透過した一部の熱によって天井20が加熱され、その下の収納空間17の暖房として使用できる。つまり、収納空間17は居室に比べて床面から天井までの高さが低いので、加熱された天井20によってある程度収納空間17を暖めることができる。収納空間17は、冬場は居室ほど暖める必要がないが、ある程度暖めて一定の温度に保持しておくことによって、収納物の維持管理に役立つ。
また、断熱材24の性能を変えることで、上方に流れる熱と下方に流れる熱の割合を変えることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の太陽光発電集熱システムにおいて、
前記特定階(例えば2階)床16上の部屋18aが、前記収納空間17と隣接しており、
前記中間床15の前記部屋18a側の端部と、前記天井20の前記部屋18a側の端部との間に吹出口25が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、中間床15の部屋18a側の端部と、天井20の部屋18a側の端部との間に吹出口25が設けられているので、蓄熱手段12から放出された熱によって暖められた暖気が吹出口25から放出され、特定階床上の部屋18aの暖房として利用できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽光発電集熱システムにおいて、
前記蓄熱手段12と前記天井20との間に空気流通路23が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、蓄熱手段12と天井20との間に空気流通路23が形成されているので、蓄熱手段12から下方に向けて放出される熱によって暖められた暖気が空気流通路23を通って天井裏空間21に行き渡るので、床暖房として有効利用できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽光発電集熱システムにおいて、
前記蓄熱手段12は、潜熱を利用して蓄熱する潜熱蓄熱材であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、蓄熱手段12が潜熱蓄熱材であるので、蓄熱容量を比較的大きくすることができ、また、蓄熱温度が安定するので蓄熱効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄熱手段に蓄熱された熱を床暖房に利用できるとともに、天井に、この天井より断熱効果の高い断熱材が設けられているので、蓄熱手段から下方に向けて放出された熱は断熱材でその大部分が断熱されるので、蓄熱手段に蓄熱された熱を効率よく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る太陽光発電集熱システムを備えた建物の一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る太陽光発電集熱システムの概略構成を示す図である。
【図3】本発明に係る太陽光発電集熱システムを備えた建物の一例を示す要部の縦断面図である。
【図4】本発明に係る太陽光発電集熱システムを備えた建物の屋根を示すもので、棟と平行な鉛直面で切断した要部断面図である。
【図5】同、棟と直交する鉛直面で切断した要部断面図である。
【図6】同、図5の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る太陽光発電集熱システムを備えた建物の一例を示す分解斜視図、図2は太陽光発電集熱システムの概略構成を示す図、図3は、太陽光発電集熱システムを備えた建物の一例を示す要部の縦断面図である。
【0020】
図1〜図3に示す建物1は、基礎2上に構築された建物本体3と、この建物本体3の上に形成された屋根4とを備えたものである。屋根4は、複数の屋根パネル41が桁方向に配列されてなり、屋根パネル41は、図4に示すように框材を矩形枠状に組み立てるとともに、この矩形枠の内部に補強用の桟材を縦横に組み付けて枠体41aを構成し、枠体41aの上面に野地板等の面材41bが設けられてなる。そして、屋根パネル41が複数配列されることによって、棟5の両側に棟5から軒先に向かって下り勾配を有する屋根面42が形成されている。
【0021】
これら棟5の両側に形成された屋根面42のうちの片側の屋根面42には、複数のシースルー型太陽電池モジュール8が前記屋根面42との間に空気流通層Sを介在させた状態で設けられている。
シースルー型太陽電池モジュール8は、矩形薄板状をなすものであり、単結晶シリコンのPVセルを強化ガラス(上面)と透明バックシート(下面)との間に、EVA樹脂を使って封入したものであり、PVセルとPVセルとの間に照射された太陽光が透明バックシートを透過することによって、採光性を確保するようになっている。
【0022】
図4〜図6に示すように、上記のようなシースルー型太陽電池モジュール8(以下、太陽電池モジュール8と略称する。)の周縁部には、該周縁部を囲む四角枠状のフレーム9が設けられている。
フレーム9は、屋根4の傾斜方向に沿って左右に配置される一対の縦枠部9Aと、これら縦枠部9Aの上下端部を接続し、かつ、屋根4の桁方向に沿って配置される上枠部9B及び下枠部9Cとを備えている。これら縦枠部9A、上枠部9B及び下枠部9Cによって太陽電池モジュール8の防水及び補強がなされている。
【0023】
上枠部9Bは、図6に示すように、アルミニウムの押出成形等により一体成形された長尺部材であって、断面四角筒状の枠本体91Bと、この枠本体91Bの上部から屋根4の傾斜方向に沿って斜め上方に設けられた断面略L字型の当接片92B(なお、図6では図面の関係上、当接片92Bは左方向に延びている)とを備えている。また、枠本体91Bの下部には、太陽電池モジュール8が嵌め込まれる一対の突出片93Bが設けられている。
【0024】
下枠部9Cは、図6に示すように、アルミニウムの押出成形等により一体成形された長尺部材であって、断面L字型の筒状の枠本体91Cと、この枠本体91Cの下部から屋根4の傾斜方向に沿って斜め下方へ突出した鍔部92C(なお、図6では図面の関係上、鍔部92Cは右方向に突出している)と、この鍔部92Cの下面から下方へ垂れ下がる水切部93Cと、この水切部93Cの中間部分と枠本体91Cの側面とを連結する中間連結部94Cとを備えている。また、枠本体91Cの上部には、太陽電池モジュール8が嵌め込まれる一対の突出片95Cが設けられている。
【0025】
一方、縦枠部9Aは、図4に示すように、断面略L字型の長尺部材であって、屋根4の傾斜方向に沿って左右に配置される一対の縦枠部9Aは、屋根面42上に取り付けられる支持レール10にそれぞれ固定される。各縦枠部9Aは、その上部に上述した上枠部9B及び下枠部9Cと同様の太陽電池モジュール8が嵌め込まれる一対の突出片91Aと、支持レール10に固定される固定片92Aとを備えている。また、左右に配置される一対の縦枠部9Aは、その上面に開口Kが形成され、該開口Kにはカバー部材93AがビスB2により取り付けられるようになっている。
【0026】
周縁部に上記のようなフレーム9が設けられた太陽電池モジュール8は支持レール10によって屋根面42との間に空気流通層Sを介在させた状態で支持されている。
支持レール10は、屋根面42に屋根4の軒先から棟に向けて延在する長尺なものであり、該支持レール10は、棟方向に所定間隔で複数設けられ、隣り合う支持レール10,10によって太陽電池モジュール8が支持されている。
支持レール10は、図4に示すように、内部が中空で縦枠部9Aの固定片92Aを受けてビスB3で固定される縦枠受部101と、この縦枠受部101を支持し、屋根面42上にビスB4で固定される縦枠支持部102とを備えている。縦枠受部101の長手方向に沿った両端には、太陽電池モジュール8及びカバー部材93Aとの間から万が一侵入してきた雨水等が屋根面42上に落ちることを防ぐ止水部103が形成されている。
【0027】
上記のように構成された太陽電池モジュール8は以下のように屋根面42に取り付けられている。
すなわち、太陽電池モジュール8には、その周縁部が縦枠部9A、上枠部9B及び下枠部9Cの一対の突出片91A、93B、95C内に嵌め込まれることによってフレーム9が取り付けられている。また、図4に示すように、屋根面42上には、支持レール10がその縦枠支持部102がビスB4で固定されることによって取り付けられており、この支持レール102に縦枠部9Aが支持されることによって太陽電池モジュール8が取り付けられている。
具体的には、上下方向に互いに隣接する太陽電池モジュール8は、図5及び図6に示すように、下方に配置される太陽電池モジュール8の上枠部9Bと上方に配置される太陽電池モジュール8の下枠部9Cとにおいて、下枠部9Cの鍔部92Cが上枠部9Bの枠本体91Bの上面に当接するとともに、上枠部9Bの当接片92Bが下枠部9Cの枠本体91Cの側面に当接することによって、互いに遊嵌している。
また、左右方向に互いに隣接する太陽電池モジュール8は、右側に配置される太陽電池モジュール8の縦枠部9Aと左側に配置される太陽電池モジュール8の縦枠部9Aとにおいて、支持レール10の縦枠受部101に各縦枠部9Aの固定片92AがビスB3でそれぞれ固定されている。さらに、これら両縦枠部9Aの上面に形成された開口Kには、ビスB2によりカバー部材93Aが取り付けられている。つまり、左右に隣接する太陽電池モジュール8どうしの間に、カバー部材93Aが配置されている。
このようにして太陽電池モジュール8が、前記屋根面42との間に空気流通層Sを介在させた状態で設けられている。
なお、図1に示すように、太陽電池モジュール8は屋根4の傾斜方向に複数枚設置されるが、棟近傍には、太陽電池モジュール8に代えて、PVセルがないことを除いて太陽電池モジュール8と同様の構造の透明ガラスモジュール8aが設置される。これによって、空気流通層Sの温度上昇と日照量向上を図ることができる。なお、透明ガラスモジュール8aの納まりは、太陽電池モジュール8と同様である。
【0028】
また、空気流通層Sは、図5に示すように、太陽電池モジュール8の軒先側に取り付けられた面戸46の隙間423と、屋根面42の棟5側に形成されて屋根裏に通じる開口部424とに連通している。また、開口部424には、伝熱手段13が接続されている。
ここで、伝熱手段13を屋根面42の棟5側に形成された開口部424に接続したのは、空気流通層S内で加熱された空気を屋根4の棟5側からそのまま伝熱手段13に伝達することができるためである。つまり、温度の高い空気は屋根4の棟5側に上昇し易いことから、伝熱手段13を棟5側に設けた方が軒先側に設ける場合よりも集熱率が高くなるため好ましい。
【0029】
伝熱手段13としては、空気流通層Sで集熱された熱を伝達するものであれば良く、搬送ファンとダクトの組み合わせの他、例えば熱伝導率の大きなアルミニウムや銅等の金属製のパイプやダクト等が挙げられる。特に、パイプ内に揮発性の液体を封入した周知のヒートパイプが好適である。
本実施の形態では、図1〜図3に示すように、伝熱手段13として、ダクト13a、13b,13c、チャンバーボックス13d、ファンを備えたファンユニット13eを使用している。
ダクト13aは、一端部が前記屋根面42に形成された開口部424に接続され、他端部が前記チャンバーボックス13dに接続されたものである。開口部424は屋根の棟方向に沿って複数設けられており、各開口部424にそれぞれダクト13aが接続されている。
【0030】
チャンバーボックス13dは、屋根の棟方向に長尺な筒状のものであり、その一方の端部は建物本体3の妻壁に設けられた換気ガラリに接続されており、他方の端面は閉塞され、さらに外周部に前記複数のダクト13aが軸方向に所定間隔で接続されている。
ダクト13bは、一端部が前記チャンバーボックス13dに接続され、他端部が前記ファンユニット13eに接続されたものである。ファンユニット13eは複数あり、各ファンユニット13eにそれぞれダクト13bが接続されている。
ダクト13cは、その一端部がファンユニット13eに接続されたうえで、建物内に床や壁を貫通して導入されている。
そして、空気流通層S内の加熱された空気は、ファンユニット13eのファンによって、空気流通層Sから吸い込まれ、ダクト13a、チャンバーボックス13d、ダクト13b、ダクト13cを流通するようになっている。
【0031】
また、前記チャンバーボックス13d内には、このチャンバーボックス13dとダクト13bとの接続部を開閉する図示しない第1電動ダンパと、チャンバーボックス13dの一方の端部を開閉する図示しない第2電動ダンパとが設けられており、夏季の日中は第1電動ダンパを閉じるとともに、第2電動ダンパを開けることによって、空気流通層S内の加熱された空気を妻壁の換気ガラリから自然排気できるようになっている。
第1および第2電動ダンパは、図示しないコントローラに接続され、このコントローラに、前記透明ガラスモジュール8aの近傍の空気流通層Sに設置された図示しない温度センサに接続されている。
そして、第1および第2電動ダンパは、空気流通層Sの温度変化に伴って、前記コントローラによって自動的に開閉されるようになっている。例えば、夏季の日中は、第1電動ダンパを閉じるとともに、第2電動ダンパを開けることによって、空気流通層S内の加熱された空気を妻壁の換気ガラリから自然排気し、夏季の夜間は、第1電動ダンパを開けるとともに、第2電動ダンパを閉じることによって、夜間の冷気を空気流通層Sに取り込み、屋根面42や太陽電池モジュール8の表面からの放射冷却も作用させ、ダクト13a、チャンバーボックス13d、ダクト13b、ダクト13cを流通させ、後述する蓄熱手段12、35に蓄冷させることができる。
また、冬季の日中は、第1電動ダンパを開けるとともに、第2電動ダンパを閉じることによって、空気流通層Sで加熱された空気を、ダクト13a、チャンバーボックス13d、ダクト13b、ダクト13cを流通させ、後述する蓄熱手段12、35に蓄熱させることができ、冬季の夜間は第1電動ダンパを閉じるとともに、第2電動ダンパを開けることによって、空気流通層S内の冷気を妻壁の換気ガラリから自然排気することができる。
【0032】
前記建物本体3は、2階建てのものであり、2階(特定階)の中間位置には中間床15が設けられている。中間床15は2階床16の一部の上方に配置されており、2階床16からの高さは0.9m〜1.4m程度になっている。
中間床15と2階床16との間は収納空間17となっている。収納空間17と2階床上の部屋18a,18bとは隣接しており、この部屋18a,18bから収納空間17に出入りできるようになっている。
【0033】
前記中間床15の直下には天井20が設けられており、この天井20と前記中間床15との間の天井裏空間21に前記ダクト13cが接続されている。すなわち、ダクト13cは2階の天井22を貫通したうえで、さらに中間床15と天井20を貫通している。ダクト13cには、吹出管13fが接続されており、この吹出管13fが天井裏空間21に配置され、該天井裏空間に開口している。
なお、前記ダクト13cは複数本あるが、図3においては、1本だけ図示している。また、ダクト13cは、図3に示すように、2階の天井22を貫通したうえで、中間床15上の部屋27、中間床15、2階床15を貫通しているが、2階の天井を貫通したうえで、2階の内壁28内を貫通して、2階床15を貫通してもよい。この場合、前記吹出管13fは、中間床15を構成する床パネルの框材を貫通させて、天井裏空間21に接続すればよい。
【0034】
前記天井裏空間21には、蓄熱手段12が設けられている。この蓄熱手段12としては、蓄熱容量を比較的大きくすることができ、蓄熱効果を高める点で、例えば潜熱を利用して蓄熱する潜熱蓄熱材が好ましい。この潜熱蓄熱材とは、単体、共融混合物、又は凝固点降下物質の融解と凝固の潜熱によって蓄熱と放熱とが行われるものである。具体的には、硫酸ナトリウム10水塩をポリプロピレン性の容器に充填したものや、パラフィンを特殊樹脂加工したアルミシートで封印したもの等を有効に用いることができる。このような蓄熱手段12は、前記天井20より上方に設けた支持部材によって天井20との間に隙間をもって支持されている。したがって、蓄熱手段12と天井20との間には空気流通路23が設けられている。
前記支持部材としては例えば、桟材を水平面内で縦横に組んだものが使用されており、この支持部材は中間床15を構成する床パネルの框材に固定されている。なお、床パネルは框材を矩形枠状に組み立てるとともに、この矩形枠の内部に補強用の桟材を縦横に組み付けて枠体を構成し、枠体の上面に合板等からなる面材を取り付けてなるものである。
【0035】
また、前記天井20の裏面側に、この天井20より断熱効果の高い断熱材が設けられている。この断熱材24は例えばポリスチレンフォームで板状に形成されており、この断熱材24と蓄熱手段12との間に、前記空気流通路23が設けられている。
また、前記中間床15の部屋18a側の端部と、天井20の部屋18a側の端部との間には、図3に示すように、吹出口25が設けられ、中間床15には、図2に示すように、上下に貫通する吹出孔26が設けられている。
【0036】
前記ダクト13cは、2階床16を貫通したうえで、1階の部屋(例えば玄関ホール)29を貫通し、さらに、1階床30を貫通して、床下31に接続されている。
ダクト13cには、吹出口13gが設けられている。この吹出口13gは玄関ホール29に開口しており、この吹出口13gから暖気(加熱された空気)を玄関ホール29に吹き出すようになっている。
さらに、ダクト13cには、分岐ダクト13hが、2階床16とその直下の天井16aとの間の天井裏空間16bにおいて、水平に接続され、さらに下方に曲げられて、天井16aを貫通して、天井16aの下面に1階の部屋(例えば洗面室)32に向けて開口しており、この分岐ダクト13hの先端開口から部屋32に暖気を吹き出すようになっている。
なお、図3では、ダクト13cから分岐する分岐ダクト13hを天井16aの下面に開口したが、これに限ることなく、例えば、図1および図2に示すように、複数のダクト13cのうちの1本のダクト13cを直接天井16aの下面に開口してもよい。
【0037】
また、床下31の地盤G上には防湿土間コンクリート33が打設されており、基礎2の立上部の床下31側を向く側面には断熱材34が設けられている。
防湿土間コンクリート33の表面には、川砂を所定の厚さで敷き詰められてなる蓄熱手段35が設けられており、この蓄熱手段35にダクト13cが接続されている。すなわち、ダクト13cの下端部は分岐して、略水平に配置されたうえで、蓄熱手段35内に埋設されており、蓄熱手段35内に埋設されたダクト13cの外周部には、軸方向に所定間隔で吹出口が形成されている。そして、この吹出口から暖気を吹き出し、蓄熱手段35に暖気の熱を蓄熱するようになっている。したがって、蓄熱手段35に蓄熱された熱を1階床30の部屋の床暖房に利用できる。
また、1階床30を構成する床パネルに、吹出孔を形成すれば、この吹出孔から暖気を1階の部屋に吹き出すこともできる。
【0038】
本実施の形態によれば、屋根面42に配設された複数の太陽電池モジュール8によって、太陽光を電気(電力)に変換することができ、建物1で消費する電力を賄うことができる。
また、太陽電池モジュール8と屋根面42との間に空気流通層Sが形成されており、この空気流通層Sに伝熱手段13が接続されているので、太陽熱が太陽電池モジュール8を透過して空気流通層S内の空気に伝達されることによって、その空気が加熱され、加熱された空気が伝熱手段13を介して、建物の2階にある中間床15とその直下に設けられた天井20との間の天井裏空間21に流入し、加熱された空気の熱が天井裏空間21に設けられた蓄熱手段12に蓄熱される。
その結果、蓄熱手段12に蓄熱された熱を中間床上の部屋27の床暖房に利用できるとともに、天井20に、この天井20より断熱効果の高い断熱材24が設けられているので、蓄熱手段12から下方に向けて放出された熱は断熱材24でその大部分が断熱される。したがって、蓄熱手段12に蓄熱された熱を中間床上の部屋27の床暖房として効率よく使用できる。また、中間床15には吹出孔26が形成されており、この吹出孔26から暖気が吹出すので、中間床上の部屋27の暖房として利用できる。
【0039】
また、断熱材24を透過した一部の熱によって天井20が加熱され、その下の収納空間17の暖房として使用できる。つまり、収納空間17は居室に比べて床面(2階の床面)から天井20までの高さが低いので、加熱された天井20によってある程度収納空間17を暖めることができる。収納空間17は、冬場は居室ほど暖める必要がないが、ある程度暖めて一定の温度に保持しておくことによって、収納物の維持管理に役立つ。また、断熱材24の性能を変えることで、上方に流れる熱と下方に流れる熱の割合を変えることができる。
さらに、空気流通層S内で加熱された空気は、伝熱手段13を介して、1階の床下31に流入し、加熱された空気の熱が床下31に設けられた蓄熱手段35に蓄熱される。その結果、蓄熱手段35に蓄熱された熱を1階の床暖房に利用できる。
【0040】
また、2階床上の部屋18aが、収納空間17と隣接しており、中間床15の部屋18a側の端部と、天井20の部屋18a側の端部との間に吹出口25が設けられているので、蓄熱手段12から放出された熱によって暖められた暖気が吹出口25から放出され、2階床上の部屋18aの暖房として利用できる。
また、蓄熱手段12と天井20との間に空気流通路23が形成されているので、蓄熱手段12から下方に向けて放出される熱によって暖められた暖気が空気流通路23を通って天井裏空間21に行き渡るので、床暖房として有効利用できる。
さらに、蓄熱手段12が潜熱蓄熱材であるので、蓄熱容量を比較的大きくすることができ、また、蓄熱温度が安定するので蓄熱効果を高めることができる。
【0041】
また、建物1の屋根面42に、太陽電池モジュール8が屋根面42との間に空気流通層Sを介在させた状態で設けられているので、空気流通層Sを形成するための従来のような透光性部材を必要としない。
したがって、太陽電池モジュール8の設置作業だけで、太陽電池モジュール8の設置とともに、空気流通層Sを形成できる。したがって、施工が容易となるとともに、透光性部材が不要となるので、その分部品点数を軽減できる。
さらに、伝熱手段13が、屋根4の棟側において空気流通層Sに接続されているので、空気流通層S内で加熱された空気を屋根4の棟側からそのまま伝熱手段12に伝達することができる。つまり、温度の高い空気は屋根4の棟側に上昇し易いことから、伝熱手段13を棟側に設けた方が軒先側に設ける場合よりも集熱率が高くなるため好ましい。
【0042】
また、太陽電池モジュール8は屋根面42に設けられた支持レール10によって支持されているので、太陽電池モジュール8を屋根面42に該屋根面42との間に空気流通層Sを介在させた状態で容易かつ確実に設置することができる。
また、屋根4の軒先から棟に向けて延在する支持レール10が棟方向に所定間隔で複数設けられており、伝熱手段13が屋根の棟側において空気流通層Sに接続されているので、空気流通層S内で加熱された空気が支持レール10の延在方向に沿ってスムーズに流れて、伝熱手段13に至る。
【0043】
なお、本実施の形態において、2階床16とその直下の天井16aとの間の天井裏空間16bにも、伝熱手段13のダクト13cを接続してもよい。この場合、複数あるダクト13cのうちの一部のダクト13cを天井裏空間16bに接続するとともに、天井16aに、この天井16aより断熱効果の高い断熱材を設ければよい。
【符号の説明】
【0044】
1 建物
4 屋根
8 シースルー型太陽光発電モジュール
12 蓄熱手段
13 伝熱手段
15 中間床
16 2階床(特定階床)
17 収納空間
18a 部屋(特定階床上の部屋)
20 天井
21 天井裏空間
23 空気流通路
24 断熱材
25 吹出口
30 1階床
42 屋根面
S 空気流通層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根面に、電池モジュールが前記屋根面との間に空気流通層を介在させた状態で設けられており、
前記空気流通層に伝熱手段が接続されており、
この伝熱手段は、前記建物の1階床より上方にある床とこの床の直下に設けられた天井との間の天井裏空間に接続されており、
前記天井裏空間に、熱を蓄える蓄熱手段が設けられており、
前記天井に、この天井より断熱効果の高い断熱材が設けられていることを特徴とする太陽光発電集熱システム。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽光発電集熱システムにおいて、
前記1階床より上方にある床は、ある特定階の中間位置にある中間床であり、
この中間床と特定階床との間が収納空間となっており、
前記中間床とその直下に設けられた天井との間の天井裏空間に前記蓄熱手段が設けられていることを特徴とする太陽光発電集熱システム。
【請求項3】
請求項2に記載の太陽光発電集熱システムにおいて、
前記特定階床上の部屋が、前記収納空間と隣接しており、
前記中間床の前記部屋側の端部と、前記天井の前記部屋側の端部との間に吹出口が設けられていることを特徴とする太陽光発電集熱システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽光発電集熱システムにおいて、
前記蓄熱手段と前記天井との間に空気流通路が設けられていることを特徴とする太陽光発電集熱システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽光発電集熱システムにおいて、
前記蓄熱手段は、潜熱を利用して蓄熱する潜熱蓄熱材であることを特徴とする太陽光発電集熱システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−1713(P2011−1713A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144097(P2009−144097)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】