説明

太陽熱集熱装置及び太陽熱発電システム

【課題】受熱部における熱伝達率を向上させる。
【解決手段】太陽熱集熱装置は、熱媒体23を流す第1配管24、及び複数の反射部10により反射された太陽光の熱を受ける第1受熱面26Bを有し、第1受熱面26Bの熱を用いて第1配管24を流れる熱媒体23を加熱する第1熱交換部22Bと、第1熱交換部22Bにより加熱された熱媒体23を流す第2配管24、複数の反射部10により反射された太陽光の熱を受ける第2受熱面26A、及び第2配管24に設けられ、第2配管24を流れる熱媒体23を第2受熱面26Aの裏面に吐出するノズル25を有する第2熱交換部22Aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱集熱装置及び太陽熱発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の火力発電システム等の化石燃料を燃焼させる発電プラントに対し、地球温暖化抑止の観点から、運転中に二酸化炭素を発生しない風力発電等の再生可能エネルギーが普及しつつある。このような代替エネルギーの1つとして、太陽光を集光して得た熱によって熱媒体を加熱し、この熱媒体の熱容量をエネルギー源にタービンを駆動して発電する太陽熱発電が注目されている。太陽熱発電は、従来の火力発電システムに類似する技術・設備で稼動でき、また、他の再生可能エネルギーに比べて高い出力を得ることが可能である。
【0003】
集光型太陽熱発電システムは、トラフ式、タワー式、ディッシュ式などいくつかの方式が開発されているが、基本的には、太陽光を高密度に集めることでエネルギーを得るものであり、太陽光を反射させるミラー、反射した光を受け、熱媒体に熱を伝える受熱部と、蒸気発生器やタービン/発電機などのエネルギー変換システムにより構成されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
集光型太陽熱発電システムは、タービンサイクルの上流側温度、すなわち熱媒体の温度が高いほど発電効率が高くなるため、受熱部における熱伝達率の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/015388号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0011290号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、受熱部における熱伝達率を向上できる太陽熱集熱装置及び太陽熱発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による太陽熱集熱装置は、熱媒体を流す第1配管、及び複数の反射部により反射された太陽光の熱を受ける第1受熱面を有し、前記第1受熱面の熱を用いて前記第1配管を流れる前記熱媒体を加熱する第1熱交換部と、前記第1熱交換部により加熱された前記熱媒体を流す第2配管、複数の反射部により反射された太陽光の熱を受ける第2受熱面、及び前記第2配管に設けられ、前記第2配管を流れる前記熱媒体を前記第2受熱面の裏面に吐出するノズルを有する第2熱交換部と、を備えるものである。
【0008】
本発明の一態様による太陽熱発電システムは、上記太陽熱集熱装置と、前記太陽熱集熱装置により加熱された前記熱媒体と水とを熱交換させて蒸気を発生させる熱交換器、前記蒸気により回転駆動するタービン、前記タービンのタービン軸に連結された発電機、及び前記タービンから排出された蒸気を復水する復水器を有する発電装置と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受熱部における熱伝達率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽熱発電システムの概略構成図である。
【図2】同実施形態に係る太陽熱集熱装置の受熱部の縦断面図である。
【図3】熱交換部の横断面図である。
【図4】熱交換部の横断面図である。
【図5】熱交換部の縦断面図である。
【図6】熱交換部の縦断面図である。
【図7】変形例による受熱部の縦断面図である。
【図8】変形例による受熱部の縦断面図である。
【図9】変形例による受熱面の概略構成図である。
【図10】変形例による受熱部の概略構成図である。
【図11】変形例による熱交換部の概略構成図である。
【図12】変形例による配管の概略構成図である。
【図13】変形例による受熱部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に本発明の実施形態に係る太陽熱発電システムの概略構成を示す。太陽熱発電システムは、太陽光を集光し、その熱で熱媒体23を加熱する太陽熱集熱装置1と、太陽熱集熱装置1により加熱された熱媒体23を用いて蒸気52を発生させて発電を行う発電装置5とを備えている。熱媒体23には、水、空気、溶融塩などが使用される。
【0013】
発電装置5は、熱媒体23と水51とを熱交換して蒸気52を発生させる熱交換器50と、蒸気52により回転駆動する蒸気タービン54と、蒸気タービン54のタービン軸に連結され、タービン軸の回転により発電を行う発電機55とを有している。蒸気タービン54から排出される蒸気は復水器56で冷却されて水51となり、熱交換器50に供給される。復水器56には、蒸気を冷却するための冷却水を供給する冷却塔57が連結されている。
【0014】
太陽熱集熱装置1は、太陽光Lを反射する複数の反射部10と、反射部10により反射された太陽光の熱を集熱する集熱装置20とを備えている。集熱装置20は、タワー21と、タワー21の上部に設けられ、反射部10により反射された太陽光の熱を受ける受熱部22と、熱媒体23を流すための配管24とを備えている。
【0015】
反射部10は、平面鏡11と、平面鏡11を支える支柱12と、太陽の動きに追従して平面鏡11の向きを調整する調整機構(図示せず)とを備えており、ヘリオスタット(Heliostat)とも呼ばれている。各反射部10は、平面鏡11で反射した太陽光が集熱装置20の受熱部22に当たるように、平面鏡11の向きを調整している。そのため、複数の反射部11で反射した太陽光が受熱部22に集中する。
【0016】
タワー21内において、配管24は受熱部22の近傍に設置され、熱媒体23は下から上へ流れている。配管24は、例えば炭素鋼で形成され、複数設けられる。受熱部22における熱エネルギーが熱媒体23に移動して、熱媒体23が加熱される。
【0017】
受熱部22を通過して加熱された熱媒体23は、図1に示すように、熱交換器50で水51と熱交換する。熱交換により降温した熱媒体23はタワー21に戻る。このように、熱媒体23はタワー21と熱交換器50との間で循環している。
【0018】
図2に受熱部22の縦断面(上下方向の断面)を示す。図1及び図2に示すように、受熱部22は、熱交換部22A、及び熱交換部22Aの下方に設けられた熱交換部22Bを有している。熱交換部22Bにより加熱された熱媒体23は、上方の熱交換部22Aへ送り込まれて、さらに加熱される。
【0019】
図3に、熱交換部22Bの横断面(水平方向の断面)を示す。図2及び図3に示すように、熱交換部22Bでは、複数の配管24が、反射部10により反射された太陽光の熱を受ける受熱面26Bに接触するように(又は受熱面26Bの極めて近くに)設けられている。受熱面26Bの熱が配管24を流れる熱媒体23に移動することで、熱媒体23が加熱される。受熱面26Bは例えばSUSで形成されている。
【0020】
図4に、熱交換部22Aの横断面を示す。図2及び図4に示すように、熱交換部22Aでは、各配管24に複数のノズル25が、反射部10により反射された太陽光の熱を受ける受熱面26Aに向かって、設けられている。図5に示すように、ノズル25は、配管24を流れる熱媒体23を、受熱面26A(の裏面)へ吐出する。熱媒体23が、高温になっている受熱面26Aに直接接触するため、熱交換部22Bのように配管24の管壁を介して熱媒体23を加熱する手法よりも、受熱面26Aから熱媒体23への熱伝達率を高くすることができる。
【0021】
ノズル25は、受熱面26Aへの光の入射熱エネルギーの設計に応じて配置され、等間隔に配置しても良いし、千鳥状に配置しても良い。受熱面26Aは例えばSUSで形成されている。
【0022】
図6に示すように、熱交換部22Aの底部には、熱媒体23を貯留するタンク27が設けられている。ノズル25から吐出された熱媒体23は、受熱面26Aに接触して落下し、タンク27に貯留される。熱媒体23は、タンク27に貯留されている間も、受熱面26Aにより加熱され得る。タンク27に貯留されている熱媒体23は、配管24aにより排出される。タンク27から排出された熱媒体23は、熱交換器50に供給される。なお、熱媒体23が気体の場合は、受熱面26Aで加熱されて上昇した熱媒体23を熱交換部22Aの上方で回収したり、熱媒体23を排出するための配管を別途設けたりすることが好ましい。
【0023】
熱交換部22Aにおいて、配管24の上端は塞がっていてもよいし、塞がっていなくてもよい。配管24の上端が塞がっている場合、熱交換部22Aに送り込まれた熱媒体23は全てノズル25から吐出されることになる。配管24の上端が塞がっていない場合は、熱交換部22Aに送り込まれた熱媒体23のうち、ノズル25から吐出されなかった熱媒体23は、例えば、タンク27から配管24aにより排出された熱媒体23と混合されて、熱交換器50に供給される。
【0024】
このように、本実施形態では、配管24にノズル25を設け、受熱面26Aの裏面に熱媒体23を吐出して、熱媒体23と受熱面26Aの裏面とを直接的に接触させるため、熱媒体23は受熱面26Aから多くの熱量を集熱することができ、受熱部22における熱伝達率を向上させることができる。また、受熱面26Aと熱媒体23との熱交換により、受熱面26Aの温度を効率良く低下させることができるため、受熱部22を構成する材料の信頼性を向上させることができる。
【0025】
上記実施形態では、配管24に設けられる複数のノズル25の吐出口径は同じであったが、図7に示すように、配管24に設けられるノズル25の吐出口径を、位置に応じて変えてもよい。すなわち、図7に示すように、上部(熱媒体23の流れの下流側)のノズル25の吐出口径が、下部(熱媒体23の流れの上流側)のノズル25の吐出口径より大きくなるようにしてもよい。これにより、各ノズル25からの熱媒体23の吐出量を均一化することができる。
【0026】
ノズル25の口径比率は、配管24内で発生する熱媒体23の摩擦損失、分岐損失、出口損失により規定されるもので、流体流量、配管径、ノズル25の配置及び個数から算出されるが、必ずしも全ての圧力損失バランスを満たす必要性はない。
【0027】
また、図8に示すように、熱交換部22Aにおいて、配管24の口径が上から下に向かって徐々に大きくなるようにしてもよい。すなわち、熱媒体23の流れの上流側の配管24の口径が、下流側の配管24の口径より大きくなるようにしてもよい。配管24をこのような構成にすることでも、各ノズル25からの熱媒体23の吐出量を均一化することができる。この配管径拡大比率についても、流体流量、配管径、ノズル25の配置及び個数から算出される。配管24は円管でもよいし、矩形管でもよい。
【0028】
図9(a)に示すように、受熱面26Aの裏面(ノズル25から吐出された熱媒体23が接触する面)にガイド28を設けてもよい。図9(b)に示すように、受熱面26Aの裏面に接触した熱媒体23は、ガイド28に沿って左右方向へ流れる。ガイド28が無く、ノズル25から吐出された熱媒体23が受熱面26Aをそのまま流下する場合、上部のノズル25から吐出されて流下してきた熱媒体23が、下部のノズル25から吐出された熱媒体23と受熱面26Aとの接触(熱交換)の妨げになり得る。図9(a)、(b)に示すようにガイド28を設けることで、熱媒体23は左右方向へ流れてから流下するため、下部のノズル25から吐出された熱媒体23も、受熱面25から多くの熱量を集熱することができる。
【0029】
また、図10(a)、(b)に示すように、熱交換部22Aと熱交換部22Bとの間の配管24に、熱媒体23と水51とを熱交換させる熱交換タンク(熱交換器)29を設けてもよい。水51は、熱交換タンク29において熱媒体23により加熱された後に、熱交換器50(図1参照)に供給される。このような構成にすることで、水51を予熱することができる。また、熱交換部22Aに供給される熱媒体23の温度が下がるため、受熱面26Aからの集熱量を増やすことができる。
【0030】
熱媒体23を吐出するノズル25の数を制御する制御部を設け、受熱面26Aへの入射熱エネルギー量や、受熱面26Aの表面温度に応じて、受熱面26Aへの熱媒体23の吐出量を調整するようにしてもよい。天候の急変や曇天時の熱エネルギー不足時において、受熱面26Aの使用面積(反射光の照射面積)を縮小し、受熱面26Aの未使用領域には熱媒体23を吐出しないようにすることで、タワー21から排出される熱媒体23の温度が低下することを防止できる。
【0031】
図11(a)、(b)に示すように、熱交換部22Aにおける配管24を二重管構造にしてもよい。配管24は、受熱面26Aに接触している外管24bと、外管24bの内側に設けられた内管24bとを備えている。内管24bには熱媒体23が流れている。内管24bにはノズル25が設けられており、このノズル25から外管24bの内壁面に熱媒体23が吐出される。ノズル25から吐出された熱媒体23は、外管24bの管壁を介して受熱面26Aから熱量を集熱する。このような構成によっても、熱媒体23は受熱面26Aから多くの熱量を集熱することができ、受熱部22における熱伝達率を向上させることができる。
【0032】
また、図12に示すように、熱交換部22Bにおける配管24内部にスワール構造31を設けてもよい。スワール構造31により熱媒体23を回転(攪拌)させることで、配管24内の熱媒体23の温度分布を平準化させ、熱交換部22Bにおける熱伝達率をさらに向上させることができる。
【0033】
上記実施形態では、ノズル25から受熱面26Aへ熱媒体23を吐出する熱交換部22Aと、配管24にノズル25が設けられていない熱交換部22Bとの2つの熱交換部を備えた構成について説明したが、熱交換部22A及び/又は熱交換部22Bを2つ以上設けてもよい。また、熱交換部22Aのみを1つ以上設けた構成にしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、熱交換部22A、22Bを上下に配置した構成について説明したが、図13に示すように、左右に配置してもよい。熱媒体23の流れの上流側に熱交換部22Bが配置され、下流側に熱交換部22Aが配置される。
【0035】
上記実施形態では、タワー型の太陽熱集熱装置1について説明したが、トラフ式など他の方式の太陽熱集熱装置に適用することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 太陽熱集熱装置
5 発電装置
10 反射部
11 平面鏡
12 支柱
20 集熱装置
21 タワー
22 受熱部
22A、22B 熱交換部
23 熱媒体
24 配管
25 ノズル
26A、26B 受熱面
27 タンク
28 ガイド
29 熱交換タンク
31 スワール構造
51 水
52 蒸気
54 蒸気タービン
55 発電機
56 復水器
57 冷却塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を流す第1配管、及び複数の反射部により反射された太陽光の熱を受ける第1受熱面を有し、前記第1受熱面の熱を用いて前記第1配管を流れる前記熱媒体を加熱する第1熱交換部と、
前記第1熱交換部により加熱された前記熱媒体を流す第2配管、複数の反射部により反射された太陽光の熱を受ける第2受熱面、及び前記第2配管に設けられ、前記第2配管を流れる前記熱媒体を前記第2受熱面の裏面に吐出するノズルを有する第2熱交換部と、
を備える太陽熱集熱装置。
【請求項2】
前記ノズルは前記第2配管の上流側から下流側にかけて複数設けられ、
前記熱媒体の流れの下流側に位置するノズルの吐出口径は、上流側に位置するノズルの吐出口径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の太陽熱集熱装置。
【請求項3】
前記第2配管は、前記熱媒体の流れの上流側の口径が下流側の口径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の太陽熱集熱装置。
【請求項4】
前記第2受熱面の裏面には、前記ノズルから吐出された前記熱媒体を左右方向へ導くガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽熱集熱装置。
【請求項5】
前記ノズルは前記第2配管の上流側から下流側にかけて複数設けられ、
前記第2受熱面への入射熱エネルギー量に応じて、前記熱媒体を吐出するノズルの数が調整されることを特徴とする請求項1に記載の太陽熱集熱装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽熱集熱装置と、
前記太陽熱集熱装置により加熱された前記熱媒体と水とを熱交換させて蒸気を発生させる熱交換器、前記蒸気により回転駆動するタービン、前記タービンのタービン軸に連結された発電機、及び前記タービンから排出された蒸気を復水する復水器を有する発電装置と、
を備える太陽熱発電システム。
【請求項7】
前記第1配管と前記第2配管との間に設けられ、前記第1熱交換部により加熱された前記熱媒体を用いて、前記復水器から排出された水を加熱する熱交換タンクをさらに備え、
前記熱交換タンクにより加熱された水が、前記発電装置の前記熱交換器に供給されることを特徴とする請求項6に記載の太陽熱発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−202556(P2012−202556A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64517(P2011−64517)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】