説明

太陽電池アレイ

【課題】屋根上での太陽電池モジュールの配設作業や保守・点検作業を簡便に行うことが可能な優れた瓦屋根用の太陽電池アレイを提供すること。
【解決手段】屋根上に設けられた第1のケーシングと、第1のケーシングの軒側端部に固定された軒側枠を有し、第1のケーシング内に設けられた第1の太陽電池モジュールM3と、第1のケーシングの軒側に設けられた第2のケーシングと、弾性変形可能な棟側枠13を有し、第2のケーシングの軒側端部に固定されているとともに第2のケーシング内に設けられた第2の太陽電池モジュールM2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図8に示すような家庭の電気負荷を低減するために、家屋の屋根上に太陽エネルギーを電気に変換する瓦一体型の太陽電池モジュール30を瓦重ねして配設して成る太陽光発電屋根Jが知られている。
【0003】
このような瓦型の太陽光発電屋根の場合、太陽電池モジュール30は図9に示すような、瓦材と略同一形状の瓦材31の上部を太陽電池が埋め込めるように窪ませたものと、ガラスや樹脂などの透光体と太陽電池セルを張り合せた太陽電池32を樹脂や接着剤により一体化させたものが用いられている。前記太陽電池モジュール30は他の太陽電池を有しない瓦材10と形状的には何ら変わりがないので、通常の瓦材の施工と同様に、野地板33上に配された桟木9に瓦材10を屋根の軒先から順次瓦材を瓦重ねしていくことができる。
【0004】
なお、太陽電池モジュール30から出力される出力配線34はこの瓦の重なりにより生じる瓦材と野地板33の間の隙間を通すものが一般的である。
【0005】
また、図10に示すように、屋根の棟に平行な方向で隣り合う瓦材どうしは、上部突出部35と下部突出部36とによって噛み合わされており、容易にずれたりしないようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、瓦状の太陽電池アレイは、屋根面に太陽電池モジュールを積み重ねながら、配線する必要がある。そのため、配線作業の完了時に、太陽電池モジュールの屋根面への固定も終えた状態となる。したがって、結線の間違いがあり修理が必要な場合や太陽電池モジュールの保守・点検などのためには、多くの太陽電池モジュールを一度、取り外し、修理や保守・点検作業終了後に再び太陽電池モジュールを積み重ねなければならないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明では上述した問題を解消し、屋根上での太陽電池モジュールの修理や保守・点検作業を簡便に行うことができる瓦屋根用の太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の太陽電池アレイは、屋根上に設けられた第1のケーシングと、前記第1のケーシングの軒側端部に固定された軒側枠を有し、前記第1のケーシング内に設けられた第1の太陽電池モジュールと、前記第1のケーシングの軒側に設けられた第2のケーシングと、弾性変形可能な棟側枠を有し、前記第2のケーシングの軒側端部に固定されているとともに前記第2のケーシング内に設けられた第2の太陽電池モジュールと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の太陽電池アレイは、弾性変形可能な棟側枠を有し、第2のケーシングの軒側端部に固定されているとともに第2のケーシング内に設けられた第2の太陽電池モジュールを有することから、第1の太陽電池モジュールを持ち上げたときに、第2の太陽電池モジュールを取り外すことができる。したがって、屋根上での太陽電池モジュールの修理や保守・点検作業を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係る太陽電池アレイの実施形態について、模式的に図示した図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1に太陽電池アレイを構成する太陽電池モジュールMの斜視図を、図2に側面図を、図3に分解側面図を示す。また、図4に複数の太陽電池モジュールMを瓦状に重ねてなる太陽電池アレイの分解側面図を示す。
【0012】
図1に示すように、太陽電池モジュールMは、ガラスや樹脂などの透光体と太陽電池セルを張り合せた太陽電池11を備えた太陽電池モジュール本体MUと、この太陽電池モジュール本体MUを保持するケーシングMDとからなる。
【0013】
前記太陽電池モジュール本体MUは、棟側に配される棟側枠12と、軒側に配される軒側枠13とを有し、さらに、本実施形態では、左右両側に配される側面枠14を有する。
【0014】
ここで、太陽電池11は受光面にガラスや樹脂等の透光性基板が設けられ、この透光性基板に多数の太陽電池素子が収容された樹脂等からなる封止材が貼着されたものが好適である。太陽電池素子としては例えばシリコン系半導体やガリウムヒ素等から成る化合物半導体などの単結晶や非単結晶の材料が用いられ、互いに直列及び/または並列に電気的に接続されて成る。また、その他の部分はアルミニウム等の軽量で強度的に優れた金属材料等から構成されるが、耐候性に優れた樹脂材でもよい。
【0015】
図2に前記側面枠14を除いた状態の太陽電池モジュールMの側面図を示す。同図に示すように、上記太陽電池モジュールMは、太陽電池モジュールを瓦重ね可能とするため、他の太陽電池モジュール又は瓦材の棟側端部に載置される当接部26と、他の太陽電池モジュール又は瓦材の軒側端部が載置される被当接部26aを有する。本実施形態において当接部26は軒側枠13と一体で下側に突出形成されており、太陽電池モジュール本体MUに在る。被当接部26aは棟側枠12に形成されており、太陽電池モジュール本体MUに在る。また、前記ケーシングMDには、固定レール16が設けられ、この固定レール16に、係止部材として、軒側固定金具17と、棟側固定金具18が取り付けられている。
【0016】
前記棟側枠12は、多角形筒状体をなし且つ側面に開口する本体部26bを有する。
【0017】
この本体部26bの内部の孔26dに配線を通すことができる。本体部26bは弾性変形可能である。さらに、この本体部26bからモジュール把持片26cが延設されている。
【0018】
図3の分解側面図から明らかなように、太陽電池モジュール本体MUにはケーシングMDとの固定部27が設けられるとともに、対応の固定部28がケーシングMDの軒側端部に設けられ、結合ねじ19により両固定部を連結する構造となっている。
【0019】
太陽電池モジュールMは、図4に示すように建物の屋根K上に、セラミックや金属製の瓦材10と混在して設置することが可能である。太陽電池モジュールMを屋根K全体に設置することもできる。なお、図中の瓦材10は外観が平坦な平板瓦を使用しているが、波型瓦としてもよい。また、棟側と軒側の瓦材10を交互に互い違いになるように配しても、或いは、瓦材10が棟から軒まで一直線に並ぶように配してもよい。また、太陽電池モジュールMの長さは瓦材10の外形寸法の略整数倍に合わせている。
【0020】
次に、太陽電池モジュールMを組み付けて太陽電池アレイとする方法について説明する。
【0021】
図5(a)に示すように、瓦材10は野地板33上に配された桟木9に窪みを引掛ける形で軒側にずり落ちないように設置される。この瓦材10の棟側の野地板33上に軒先側受け金具20をねじや釘で固定する。そして、軒先側受け金具20の係合部21と太陽電池モジュールMの軒側固定金具17の係合部22を嵌合し、太陽電池モジュールMの棟側固定金具18を釘24やねじ釘などで野地板33上に打ち付けて固定する。
【0022】
図5(b)に、太陽電池モジュール同士の連結態様を示す。同図に示すように、太陽電池モジュールM1の棟側枠12に設けた折り返し付き延長片23と、太陽電池モジュールM2の軒側固定金具17の係合部22とを嵌合し、太陽電池モジュールM2の棟側固定金具18を釘24などで野地板33上に固定する。これにより、図6(a)に示すように、太陽電池モジュールM1と太陽電池モジュールM2とが瓦重ね状に固定される。
【0023】
固定された太陽電池モジュールM2は、太陽電池モジュールM1の棟側枠12の上部を覆うように配置されており、太陽電池モジュールM2の軒側枠13に備える当接部26と、太陽電池モジュールM1の棟側枠12における被当接部26aに備える上方突出部25により雨かえし構造を形成し、雨や風の侵入を防止している。
【0024】
次に、一の太陽電池モジュールM2(第2の太陽電池モジュール)について太陽電池モジュール本体MUを取り外す方法について説明する。図6(b)に示すように、太陽電池モジュールM2、およびM3における、軒側枠13と軒側固定金具17を締結している結合ねじ19を取り外す。このとき、図6(c)に示すように、太陽電池モジュールM3(第1の太陽電池モジュール)の太陽電池モジュール本体MUをわずかに持ち上げることができる。これは、棟側枠12の本体部26bが弾性変形可能なことによる。そして、太陽電池モジュールM2の軒側枠13を少し持ち上げて引き出すことにより太陽電池モジュール本体MUを取り外すことができる。
【0025】
なお、太陽電池モジュールM3の太陽電池モジュール本体MUを持ち上げて、少し浮かせるようにしないかぎり太陽電池モジュールM2の太陽電池モジュール本体MUを取り外すことができない。持ち上げないときには、太陽電池モジュール本体MUの棟側枠12に設けた上方突出部25が太陽電池モジュールM3の当接部26に引っかかり、抜け止めとなる。したがって、太陽電池モジュール本体MUが勝手に滑り落ちていかないようになっている。
【0026】
次に、太陽電池モジュールMの横方向の連結方式について説明する。
【0027】
太陽電池モジュールMの側面枠14の裏面には荷重受プレート15が取り付けられ、太陽電池モジュール同士、および太陽電池モジュールと瓦材の横方向(棟に対し水平方向)の結合に対応する。
【0028】
具体的には図7(a)に示すように、側面枠14の下部に設けられたレール部37に荷重受プレート15が挿し込まれており、該荷重受プレート15が太陽電池モジュールMと一体となっている。太陽電池モジュールM同士(第1の太陽電池モジュール、第3の太陽電池モジュール)を横並びに配した際、この荷重受プレート15は隣合う太陽電池モジュールM4の下部に入り込んだ形となり、太陽電池モジュールM4の側面枠14を支持するとともに、側面枠14と側面枠14の間に生じた隙間から侵入する雨水などを軒側に流す役割を果たしている。
【0029】
また同様に、図7(c)に示すように側面枠14の隣に瓦材10が配される場合にも、側面枠14と瓦材10の隙間から侵入する雨水などを軒側に流す樋の役割を果たす。
【0030】
また、図7(b)に示すように太陽電池モジュールMの側面枠14側に瓦材10が配される場合、側面枠14は瓦材の下部突出部36の上方に位置する。そして、側面枠14と瓦材10の隙間から侵入する雨水などは、瓦材10の下部突出部36が樋の役割をする。
【0031】
上記荷重受プレート15は、左右どちらの側面枠14にも装着可能であり、太陽電池モジュールMの左右どちらに瓦材が配されても対応できる設置の自由度が高いものである。さらに、荷重受プレートの形状を様々な瓦材に合った形とすることにより、どのような瓦材にも対応可能とすることができる。なお、荷重受プレート15はレール部35にねじなどで固定してもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。発明の目的を逸脱しない限り、任意の形態とすることができることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの概略斜視図である。
【図2】図1の太陽電池モジュールの概略側面図である。(側面枠を除いて示している。)
【図3】図1の太陽電池モジュールの分解側面図である。(側面枠を除いて示している。)
【図4】本発明の太陽電池アレイが屋根の一部に配設されている例を模式的に説明する斜視図である。
【図5】(a)、(b)は本発明の太陽電池アレイの一部分解側面図である。(側面枠を除いて示している。)
【図6】(a)、(b)、(c)は本発明の太陽電池アレイの一部分解側面図である。(側面枠を除いて示している。)
【図7】(a)、(b)、(c)は本発明の太陽電池モジュール同士、または太陽電池モジュールと瓦材の横方向での接合状態を示す軒側面図である。
【図8】従来の太陽電池瓦が屋根の一部に配設されている例を模式的に説明する斜視図である。
【図9】従来の太陽電池瓦が屋根の一部に配設されている例を示す側面図である。
【図10】従来の太陽電池瓦の瓦重ねの様子を模式的に説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
9:桟木
10:瓦材
11:太陽電池
12:棟側枠
13:軒側枠
14:側面枠
15:荷重受プレート
16:固定レール
17:軒側固定金具
18:棟側固定金具
19:結合ねじ
20:軒先側受け金具
21:係止部
22:係止部
23:枠突出部
24:釘
25:上方突出部
26:当接部
26a:被当接部
27:固定部
28:固定部
30:瓦一体型太陽電池モジュール
31:瓦材
32:太陽電池
33:野地板
34:出力配線
35:上部突出部
36:下部突出部
37:レール部
J:太陽光発電屋根
K:屋根
M:太陽電池モジュール
M1、M2、M3、M4:太陽電池モジュール
MU:太陽電池モジュール本体
MD:ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上に設けられた第1のケーシングと、
前記第1のケーシングの軒側端部に固定された軒側枠を有し、前記第1のケーシング内に設けられた第1の太陽電池モジュールと、
前記第1のケーシングの軒側に設けられた第2のケーシングと、
弾性変形可能な棟側枠を有し、前記第2のケーシングの軒側端部に固定されているとともに前記第2のケーシング内に設けられた第2の太陽電池モジュールと、を有する太陽電池アレイ。
【請求項2】
前記第1の太陽電池モジュールの前記軒側枠が下方突出部を有し、前記第2の太陽電池モジュールの前記棟側枠が、前記下方突出部より棟側に上方突出部を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池アレイ。
【請求項3】
前記下方突出部の端部は下側を向いており、前記上方突出部の端部は上側を向いていることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池アレイ。
【請求項4】
前記上方突出部と前記下方突出部とは間をあけて配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の太陽電池アレイ。
【請求項5】
前記第1の太陽電池モジュールの棟に平行な方向に隣接して設けられた第3の太陽電池モジュールと、
前記第1の太陽電池モジュールと前記第3の太陽電池モジュールとに固定された荷重受けプレートと、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池アレイ。
【請求項6】
前記荷重受けプレートは、前記第1の太陽電池モジュールおよび前記第3の太陽電池モジュールの下側に固定されていることを特徴とする請求項5に記載の太陽電池アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−262884(P2007−262884A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137913(P2007−137913)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【分割の表示】特願2002−188464(P2002−188464)の分割
【原出願日】平成14年6月27日(2002.6.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】