説明

太陽電池セルの製造方法

【課題】四角形の太陽電池セルの製造において、簡単に線幅の細い電極を厚く形成できるようにする。
【解決手段】四角形のシリコン基板1の表面に形成された反射防止膜2上に、レジストをスピンコート法により塗布して、プリベークする。この上に再びレジストをスピンコート法により塗布して、ベークし、2層のレジスト膜3を形成する。電極パターンにしたがってレジスト膜3を露光、現像する。レジスト膜3に覆われていない反射防止膜2をエッチングする。シリコン基板1に金属層4を蒸着した後、レジストを除去するリフトオフを行い、電極10を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四角形等の多角形の太陽電池セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコン系太陽電池の高効率化要素技術の一つとして、受光面電極の線幅を細くすることにより、実効的な受光面積を大きくして、短絡電流密度を増加させるという手法がある。受光面電極の作製方法には、印刷プロセスとフォトリソグラフィプロセスがある。一般的にフォトリソグラフィプロセスの方が電極線幅を微細化できる。
【0003】
しかしながら、従来のフォトリソグラフィプロセスでは、電極高さが、レジスト厚で制限されるため、5μm程度にしかならない。電極高さを稼ぐことができず、電極を微細にするほど電極の電気抵抗が高くなる。そのため、変換効率が上がらないという問題点がある。
【0004】
この問題を解決するため、蒸着で下地となる電極を形成した後にメッキにより電極を厚くする方法がある。しかし、メッキにより電極を厚くする場合には、電極の厚さ方向のみならず横方向にも線幅が広がってしまう。その結果、受光面積が小さくなり、変換効率が下がってしまう。
【0005】
また、特許文献1には、フォトレジスト塗布、開口部形成、メッキ層形成、リフトオフの一連の工程を複数回行って、電極を厚くする方法が開示されている。この方法では、工程数が多く、簡便なプロセスとは言い難い。
【特許文献1】特開平4−2131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のことから、横方向に広がることなく電極を厚くすることができる簡便なプロセスが必要である。微細な電極の形成には、フォトリソグラフィプロセスを用いることが適している。このプロセスにおいて電極を厚くするには、フォトレジストを厚く塗布する必要がある。
【0007】
ここで、四角形の太陽電池セルを製造する場合、四角形のシリコン基板にスピンコート法により、フォトレジストを塗布する。スピンコート時の回転数を遅くすると、フォトレジストを厚く塗布することができる。ところが、シリコン基板の四隅に代表される周辺部にフォトレジストが溜まり、周辺部ではフォトレジストが厚くなり、パターン通りに露光、現像できず、均一な線幅の電極を形成できないという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、上記に鑑み、四角形等の太陽電池セルにおいて、線幅の細い電極を厚く形成できる簡便な製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多角形の太陽電池セルの製造方法において、半導体基板に多層のレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜を露光、現像して所定のパターンを形成する工程と、パターン形成後に金属層を形成してリフトオフし、電極を形成する工程とを含むものである。
【0010】
多層のレジスト膜にすることにより、レジスト膜が厚くなる。これによって、電極を高くすることが可能となる。そして、フォトリソグラフィプロセスにより厚いレジスト膜のパターニングを行うことにより、レジスト膜に線幅の細い開口を形成できる。開口内に、金属層が高く形成される。リフトオフにより、レジスト膜が除去され、開口内の金属層を残してレジスト膜上の金属層も除去され、残った金属層により電極が形成される。
【0011】
多層のレジスト膜を形成する工程では、半導体基板にレジストを塗布してベークすることを複数回行う。レジスト膜を積層していくことにより、レジスト膜の厚さが増していく。
【0012】
レジストの塗布は、スピンコート法により行う。スピンコート法によってレジストを塗布するとき、2000〜3000rpmで半導体基板を回転する。この回転数は通常の回転数よりも高いので、四角形等の多角形のシリコン基板の周辺部のレジストが遠心力で振り飛ばされ、隅にレジストが溜まらない。したがって、膜厚の均一なレジスト膜を多層に形成できる。
【0013】
レジストをベークするとき、最終回のベーク時間を最終回以外のベーク時間よりも長くする。下層のレジストは上にレジストを積層できる程度の硬さを有していればよいので、ベークは短時間でよい。これによって、各層のレジストの硬さが大きく違わないようにできる。そして、最終回のベークを長時間行うことにより、最終的にレジスト膜が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、四角形等の多角形の半導体基板において、電極を形成するために必要なレジスト膜を厚く形成することができ、しかもこのレジスト膜にフォトリソグラフィプロセスによって電極パターンを形成することにより、線幅が細く、厚みのある電極を形成することができる。
【0015】
したがって、多角形の半導体基板を用いた太陽電池セルにおいて、受光面電極の線幅を細くしながら、電極高さを高くでき、電極の電気抵抗を低くすることが可能となり、変換効率の高い太陽電池セルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態にかかる太陽電池セルを図1に示す。太陽電池セルは、単結晶シリコン、多結晶シリコン等の結晶系半導体基板1を用いた太陽電池であり、四角形の半導体基板1の受光面に縦横に受光面電極10が形成されている。なお、受光面電極10は、図中横方向に平行に配設されたグリッド電極10aと、発電電力を外部に取り出すためのメイン電極10bとからなる。グリッド電極10aは、光を遮らないように、メイン電極10bよりも線幅が細く形成される。
【0017】
ここで、四角形の結晶Si太陽電池セルの製造プロセスを説明する。製造プロセスとして、シリコン基板1にpn接合を形成する工程と、シリコン基板1の表面に反射膜2を形成する工程と、シリコン基板1の表面にレジスト膜3を形成する工程と、レジスト膜3を露光、現像して、電極パターンを形成する工程と、シリコン基板1の表面に金属層4を形成する工程と、レジスト膜3および一部の金属層4を除去して受光面電極10を形成する工程と、シリコン基板1の裏面に裏面電極を形成する工程とからなる。そして、受光面電極10の形成はフォトリソグラフィプロセスによって行う。
【0018】
まず、図2に示すように、四角形のシリコン基板1の受光面となる表面にテクスチャ構造を形成する。なお、テクスチャ形成方法としては、機械的な加工方法、レーザーを用いた加工方法、RIE法などのドライエッチング法、ウェットエッチング法などがあげられる。
【0019】
テクスチャ構造を形成したシリコン基板1の表面に、リンなどのドーパントの熱拡散によりpn接合を形成する。次に、シリコン基板1の表面上に反射防止膜2を形成する。反射防止膜2の材料としては、誘電体を有し膜形成可能な材料であれば、特に制限されるものではなく、例えばシリコン窒化物、シリコン酸化物、アルミナ、フッ化マグネシウムなどがあげられる。また、その形成方法についても特に制限はなく、プラズマCVD法、減圧CVD法、スパッタ法などによって、反射防止膜2を形成する。
【0020】
次に、図3に示すように、シリコン基板1の反射防止膜2上に、多層のレジスト膜3を形成する。すなわち、ポジ型のフォトレジストをスピンコート法によりシリコン基板1の表面に塗布する。このとき、シリコン基板1に対する回転数を遅くすると、フォトレジストがシリコン基板1の周辺部、特に四隅に溜まるため、回転数を2500rpmとする。
【0021】
シリコン基板1に対する回転数は、2000〜3000rpmの間で設定され、シリコン基板1を通常よりも速く回転させる。シリコン基板1上に滴下されたレジストは、遠心力により外周に向かって広がる。余分なレジストはシリコン基板1上から振り切られ、均一な厚さのレジスト膜3が形成される。回転数が上記の範囲よりも低いと、レジストがシリコン基板1の周辺部に溜まり、レジスト膜3の厚さが不均一になる。回転数が上記の範囲より高いと、レジストが過度に振り切られ、レジスト膜3の厚さが薄くなって、膜厚を厚くできない。
【0022】
フォトレジストを塗布した後、プリベークを行って、レジストを乾燥させる。1層目のレジスト膜3の上に、上記と同じようにして、レジストを塗布、ベークして、2層目のレジスト膜3を形成する。ここで、最終(2回目)のベーク時間は、1回目のベーク時間よりも長くされる。すなわち、最終回以外のベークは短時間にして、最終回のベークは長時間行う。これによって、レジスト膜3の各層の硬さが大きく違わないようにすることができる。
【0023】
このように、レジストの塗布およびベークを複数回行うことにより、シリコン基板1の周辺部にレジストが溜まることなく、所望の厚さにレジストを塗布することができる。例えば、塗布、ベークを2回行って2層のレジスト膜3を形成したとき、レジスト厚さは20μmとなる。なお、レジスト膜3の厚さに応じて塗布、ベークの回数は適宜選定され、2層以上のレジスト膜3が形成される。
【0024】
次に、図4に示すように、所定の電極パターンを形成する。電極パターンに応じた所定形状のガラスマスクを使用して、レジスト膜3の露光、現像を行う。ここで、フォトレジストが通常より厚いので、露光時間、現像時間ともに長くする。レジスト膜3に線幅の細い開口5が形成される。その後、薬液によりフォトレジストで被覆されていない開口5内の反射防止膜2をエッチングして除去する。
【0025】
この後、図5に示すように、所望厚さの金属層4を形成する。金属層4は、Au,Ag,Ni,Alなどの金属を蒸着して形成される。シリコン基板1に形成されたレジスト膜3上および開口5内のシリコン基板1上に所望厚さの金属層4が形成される。なお、金属層4の形成は、スパッタリングなどによって行ってもよい。
【0026】
そして、図6に示すように、レジスト膜3を除去して、電極10を形成する。金属層4が被覆されたシリコン基板1をアセトン等の溶剤に浸漬して、リフトオフする。レジスト膜3がその上の金属層4とともにシリコン基板1から剥離して、レジストが除去される。受光面電極10がシリコン基板1上に所定のパターンに形成される。レジスト厚さを20μmとしたとき、電極幅が15μm、電極高さが10μmの電極10が形成される。
【0027】
上記の製造方法による四角形の太陽電池セルでは、線幅が細く、かつ高い受光面電極10が形成される。特に、この製造方法によれば、微細なグリッド電極10aを形成するのに好適である。
【0028】
線幅の細い電極10が高くなることにより、電気抵抗が減る。そのため、従来の同じ電極幅(15μm)で電極高さ5μmの太陽電池セルと比較して、従来よりも0.5%上昇した変換効率の太陽電池セルが得られる。また、下地電極を形成した後にメッキにより電極を高くする従来方法と比較すると、従来よりも1.6%上昇した変換効率の太陽電池セルが得られる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。太陽電池セルは四角形に限らず、多角形であればよく、正六角形、正八角形であってもよい。また、スリットコータによりレジストを塗布して、多層のレジスト膜を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の太陽電池セルを受光面側から見たときの平面図
【図2】反射防止膜を形成したシリコン基板の断面図
【図3】多層のレジスト膜を形成したシリコン基板の断面図
【図4】電極パターンにしたがってレジストを現像したシリコン基板の断面図
【図5】金属層を形成したシリコン基板の断面図
【図6】レジストを除去して電極を形成したシリコン基板の断面図
【符号の説明】
【0031】
1 シリコン基板
2 反射防止膜
3 レジスト膜
4 金属層
5 開口
10 受光面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形の太陽電池セルの製造方法において、半導体基板に多層のレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜を露光、現像して所定のパターンを形成する工程と、パターン形成後に金属層を形成してリフトオフし、電極を形成する工程とを含むことを特徴とする太陽電池セルの製造方法。
【請求項2】
半導体基板にレジストを塗布してベークすることを複数回行って、多層のレジスト膜を形成することを特徴とする請求項1記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項3】
レジストの塗布は、スピンコート法により行うことを特徴とする請求項2記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項4】
レジストをベークするとき、最終回のベーク時間を最終回以外のベーク時間よりも長くすることを特徴とする請求項2または3記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項5】
スピンコート法によってレジストを塗布するとき、2000〜3000rpmで半導体基板を回転することを特徴とする請求項3または4記載の太陽電池セルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−147102(P2010−147102A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320075(P2008−320075)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】