説明

太陽電池セル電極形成ペースト、並びに太陽電池セルおよびその製造方法

【課題】太陽電池の電極を凹版グラビアオフセット印刷法によって形成する場合において、基板表面に従来よりも比して細幅で厚みもある電極を、従来に比して生産性を向上させて形成することができる太陽電池セル電極形成ペーストを得ること。
【解決手段】太陽電池セルの電極の形成に用いられる太陽電池セル電極形成ペーストにおいて、導電性粉末と、軟化点が350〜600℃の範囲内にあるガラスフリットと、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つを含む結着用樹脂と、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、またはポリメタクリル酸アルキルの構造を有するアクリル樹脂からなる転写用樹脂と、20℃での蒸気圧が0.1mmHg以下である低揮発性溶媒と、20℃での蒸気圧が0.5〜5mmHgである高揮発性溶媒と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池セルの表面に形成される集電極を形成するための太陽電池セル電極形成ペーストに関するものである。また、この太陽電池セル電極形成ペーストを用いて形成された太陽電池セルおよびその製造方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題への高まりから、太陽電池が注目されているが、この太陽電池の受光面側には、線状の集電極が設けられている。この集電極は、太陽電池内部で発生した電流を外部へ送電する役割を有することから電気抵抗が低いことが望ましく、また、太陽電池の内部に太陽光をできる限り多く取り込めるように、電極幅は細いことが望ましい。そのため集電極は、幅を狭くするとともに、高さを高くして断面積を大きくすることが求められる。このような集電極は、従来ではスクリーン印刷法などの方法によって形成されてきたが、近年では、電極幅が80μm以下の集電極の形成が求められており、このような幅の集電極をスクリーン印刷法で形成することは困難である。そのため、より電極幅の細い集電極を形成する方法として、凹版グラビアオフセット印刷が検討されている。
【0003】
凹版グラビアオフセット印刷法は、凹版に形成された溝に導電性ペーストを埋め込み、凹版からゴムブランケットなどの中間転写体に導電性ペーストを一旦転写(第一の転写)し、さらに、被印刷物に再転写(第二の転写)を行って、被印刷物上に所定形状の導電性ペーストからなる電極パターンを形成する方法である。このような凹版グラビアオフセット印刷法において、凹版から中間転写体への導電性ペーストの転写率を高める技術(たとえば、特許文献1参照)や、中間転写体から被印刷物への導電性ペーストの転写率を高める技術(たとえば、特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
特許文献1には、第一の転写の転写率を向上させるため、導電性ペーストの溶媒として、高沸点溶媒(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート)と比較的低沸点を有する低沸点溶媒(2−ブトキシエタノール)の2種類の溶媒を用いることで、凹版から中間転写体への転写率の向上を図る技術が開示されている。これは、凹版の溝内で乾燥が進み、導電性ペーストに含まれる2種類の溶媒のうちの低沸点溶媒が蒸発することで、溝内での導電性ペーストの凝集力が向上するためである。また、高沸点溶媒を低沸点溶媒に適当な分率で混合することで、中間転写体への転写後の乾燥のしすぎを防ぎ、つぎに続く被印刷物への転写時のパイリングを防ぐようにしている。
【0005】
また、特許文献2には、第二の転写の転写率を確保するため、導電性ペーストにエチルセルロースとアクリル樹脂を重量比で1:9〜9:1としたバインダを添加することで、パイリングを防ぐ技術が開示されている。この特許文献2では、中間転写体の導電性ペーストが転写される面を、表面エネルギの低いシリコーンゴムとし、導電性ペーストの決着樹脂として、シリコーンゴムとの親和性が高いエチルセルロースと、ガラス基板からなる被印刷物との親和性が高いアクリル樹脂とを組み合わせることによって、凹版から中間転写体への転写性、および中間転写体から被印刷物への転写性のバランスを取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−293904号公報
【特許文献2】特開2003−59336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、太陽電池の電極形成において、印刷量以外に生産性に寄与する要因として印刷速度がある。印刷速度を上げるには、凹版から中間転写体への転写速度、中間転写体から被印刷物への転写速度を高めればよい。このように印刷速度を増した場合、特許文献1に記載の導電性ペーストを用いると、印刷工程での導電性ペーストの乾燥時間が短くなるため、第二の転写時に導電性ペーストが乾燥しすぎる傾向は緩和され、過乾燥によるパイリングは発生しにくくなる。
【0008】
しかし、体積抵抗率をできるだけ小さくする必要のある太陽電池の電極形成用の導電性ペーストにおいては、導電性ペースト中の導体フィラーの体積分率を高める必要があるために、導電性ペースト内の無機成分が多くなる。そのため、導電性ペーストは、凝集力に欠け、中間転写体で造膜されず、第二の転写後も中間転写体に残留するといったモードのパイリングが発生するという問題点があった。
【0009】
また、特許文献2では、アクリル樹脂バインダを含ませることによって被印刷物と導電性ペーストとの密着力を増加させ、第二の転写時のパイリングを防止している。しかし、特許文献2では、被印刷物がガラス基板の場合であり、転写時に導電性ペーストが接触する領域が小さい平滑性に欠ける多結晶シリコン基板を被印刷物とした場合には、同様の結果を得ることができない。特に、高速で印刷すると、第二の転写後も中間転写体に残留するパイリングが発生するという問題点があった。
【0010】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、太陽電池の電極を凹版グラビアオフセット印刷法によって形成する場合において、基板表面に従来よりも比して細幅で厚みもある電極を、従来に比して生産性を向上させて形成することができる太陽電池セル電極形成ペーストを得ることを目的とする。また、この太陽電池セル電極形成ペーストを用いた太陽電池セルおよびその製造方法を得ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、この発明にかかる太陽電池セル電極形成ペーストは、太陽電池セルの電極の形成に用いられる太陽電池セル電極形成ペーストにおいて、導電性粉末と、軟化点が350〜600℃の範囲内にあるガラスフリットと、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つを含む結着用樹脂と、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、またはポリメタクリル酸アルキルの構造を有するアクリル樹脂からなる転写用樹脂と、20℃での蒸気圧が0.1mmHg以下である低揮発性溶媒と、20℃での蒸気圧が0.5〜5mmHgである高揮発性溶媒と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、太陽電池セル電極形成ペーストを凹版から中間転写体に転写し、中間転写体から被印刷物である半導体基板の表面に転写して、凹版グラビアオフセット印刷法によって太陽電池の電極を形成する場合において、フィラー分散剤と、結着剤と、オフセット印刷に特有の転写プロセスに必要な密着性を機能分離して、それぞれの機能を担う結着用樹脂および転写用樹脂と、高揮発性溶媒と低揮発性溶媒の少なくとも2種の溶媒と、を含む導電性ペーストを用いたので、印刷終了まで溶媒が枯渇することなく、かつ高揮発性溶媒の蒸発によって、版胴から中間転写体への転写時と中間転写体から半導体基板への転写時における導電性ペーストの転写性を変化させるようにした。これによって、中間転写体への転写率が高く、かつ半導体基板への転写率も高く、所望の形状を有する集電極を形成することができるという効果を有する。また、従来に比して太陽電池セルの生産性を高めることもできるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】図1−1は太陽電池セルの上面図である。
【図1−2】図1−2は太陽電池の裏面図である。
【図1−3】図1−3は図1−1のA−A断面図である。
【図2】図2は、凹版グラビアオフセット印刷装置の一例を模式的に示す図である。
【図3】図3は、実施例1と比較例1〜3の実験条件および測定結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例2,3と比較例4,5の実験条件および測定結果を示す図である。
【図5】図5は、実施例4〜8の実験条件および測定結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例9〜12の実験条件および測定結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例13,14と比較例6,7の実験条件および測定結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例15〜17と比較例8の実験条件および測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明の実施の形態にかかる太陽電池セル電極形成ペースト、並びに太陽電池セルおよびその製造方法を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態1.
図1−1〜図1−3は、太陽電池セルの全体構成の一例を模式的に示す図であり、図1−1は太陽電池セルの上面図であり、図1−2は太陽電池セルの裏面図であり、図1−3は図1−1のA−A断面図である。太陽電池セル10は、半導体基板としてのP型シリコン基板(以下、単にシリコン基板ともいう)12と、このP型シリコン基板12の一方の主面(受光面)側の表面にN型の不純物を拡散させたN型拡散層13と、他方の主面(裏面)側の表面にシリコン基板12よりも高濃度にP型の不純物を含んだP+層14と、を含む光電変換層11を備える。
【0016】
また、太陽電池セル10は、光電変換層11の受光面への入射光の反射を防止する反射防止膜15と、光電変換層11で発電された電気を局所的に集電するために受光面に所定のピッチで複数平行に設けられる銀などからなる集電極であるグリッド電極21と、グリッド電極21で集電された電気を外部に取り出すためにグリッド電極21にほぼ直交して設けられる銀などからなるバスバー電極22と、光電変換層11で発電された電気の集電と光電変換層11を透過した入射光の反射を目的としてP型シリコン基板12の裏面のほぼ全面に設けられるアルミニウムなどからなる裏側集電電極31と、この裏側集電電極31に生じた電気を外部に取り出す銀などからなる裏側取出電極32と、を備える。なお、光電変換層11の受光面側には、入射光を効率よく光電変換層11内に導くために、数μm〜数十μmの凹凸を有するテクスチャ構造が一般的に形成されている。また、受光面側(表面側)のグリッド電極21とバスバー電極22とを合わせて、以下では、表面電極20ともいい、裏面側の裏側集電電極31と裏側取出電極32とを合わせて、以下では、裏面電極30ともいう。
【0017】
このように構成された太陽電池セル10では、太陽光が太陽電池セル10の受光面側からPN接合面(P型シリコン基板12とN型拡散層13との接合面)に照射されると、ホールと電子が生成する。PN接合面付近の電界によって、生成した電子はN型拡散層13に向かって移動し、ホールはP+層14に向かって移動する。これにより、N型拡散層13に電子が過剰となり、P+層14にホールが過剰となる結果、光起電力が発生する。この光起電力はPN接合を順方向にバイアスする向きに生じ、N型拡散層13に接続した表面電極20がマイナス極となり、P+層14に接続した裏面電極30がプラス極となって、図示しない外部回路に電流が流れる。
【0018】
つぎに、太陽電池セル10の受面側に形成されるグリッド電極21を含む表面電極20を形成する凹版グラビアオフセット印刷装置の構成について説明する。図2は、凹版グラビアオフセット印刷装置の一例を模式的に示す図である。この凹版グラビアオフセット印刷装置100は、被印刷物のシリコン基板12を載置して移動させるコンベア101と、印刷ユニット110と、を備える。
【0019】
印刷ユニット110は、印刷するグリッド電極21(以下、集電極ともいう)の形状に凹部が形成された印刷パターンとしての版胴111と、太陽電池セル電極形成ペーストである導電性ペースト120を貯留するペースト貯留槽112と、ペースト貯留槽112内に配置され、版胴111に導電性ペースト120を供給するペースト供給ロール113と、版胴111の表面に供給された導電性ペースト120を掻き取るドクターブレード114と、版胴111の幅方向(回転軸の長さ方向)に導電性ペースト120がはみ出すことを防止するペーストはみ出し防止バー115と、版胴111に供給された導電性ペースト120を受理しコンベア101上に載置されたシリコン基板12上に転写するブランケット胴116と、ブランケット胴116を押さえ、ブランケット胴116との摩擦力で駆動する押さえロール117と、を有する。ペースト供給ロール113、版胴111、ブランケット胴116および押さえロール117は、円柱状の構造を有し、円柱の上下面の中心を通る軸が互いに平行となるように配置されるとともに、その側面の一部が隣接する他のロールと互いに接するように配置されている。
【0020】
印刷ユニット110の版胴111は、凹版であり、回転軸を取り付けた金属製の母材表面に銅めっきを施し、写真製版法によるエッチングによってその表面に溝を形成したものである。この例では、図1−1に示されるように、シリコン基板12上に形成されるグリッド電極21の長さに合わせて、第1の方向に複数並行して延在した第1の溝と、第1の方向とは異なる第2の方向、たとえば第1と第2の溝に直交する方向にバスバー電極22を形成するための第2の溝と、が版胴111の表面に形成される。なお、ドクターブレード114による磨耗を抑制するために、銅めっきされた表面にたとえば硬質クロムめっきなどの保護層を設けてもよい。また、版胴表面に形成される溝の形状の安定化のために、母材に直接溝を写真製版法によって形成してもよいし、レーザ加工機や研削機によって母材に直接溝を形成してもよい。
【0021】
太陽電池セル10の集電極(グリッド電極21)は遮光部をできるだけ少なくするために、できるだけ細くする必要がある。しかし、細くしすぎると、版胴111の溝に導電性ペースト120が充填されなかったり、導電性ペースト120の中間転写体であるブランケット胴116への密着力が小さくなったりしてしまう。そのため、太陽電池セル10の集電極を形成するための第1の溝として、10μm以上80μm以下の幅を持つものが適当である。
【0022】
また、第1の溝の深さが浅いと、版胴111上で導電性ペースト120が過乾燥し、ブロッキングの要因となる可能性がある一方、深さが深いと、オーバエッチングのため溝幅が拡大してしまう。そのため、第1の溝の深さは、溝幅と同等の深さから溝幅に対して1/3程度の深さであることが好ましい。
【0023】
ブランケット胴116(以下、中間転写体ともいう)は、たとえば回転軸が付属した円筒形の金属の芯の円周曲面にゴムを形成した構造を有する。中間転写体から被印刷物であるシリコン基板12への第二の転写の転写率を考慮すると、一般的に臨界表面張力の値が10〜30mN/m程度であるシリコーンゴムを選択すること好ましい。また、印刷速度が3m/minを超える高速印刷を行う場合には、ゴムの変形を被印刷物に追随させないと、第二の転写の転写率が小さくなるため、ゴムの硬度は5〜40°(JIS−A)であることが好ましい。
【0024】
つぎに、このような凹版グラビアオフセット印刷装置100を用いた太陽電池セル10の表面電極20の形成方法について説明する。ペースト貯留槽112内の導電性ペースト120と接触するように回転するペースト供給ロール113が回転することによって、円柱状の版胴111も回転する。このとき、ペースト供給ロール113の表面に付着した導電性ペースト120が版胴111の表面に付着し、さらにドクターブレード114によって、版胴111(凹版)の溝に導電性ペースト120が充填される。ついで、版胴111と連動して同じ周速度で回転する円柱状のブランケット胴116に、導電性ペースト120が充填された版胴111が接触するときに、版胴111からブランケット胴116への第一の転写がなされる。その後、ブランケット胴116の周速度と同じ速度でコンベア101上を搬送される被印刷物であるシリコン基板12とブランケット胴116が接触するときに、ブランケット胴116から被印刷物への第二の転写がなされる。以上によって、導電性ペースト120がシリコン基板12に印刷される。この印刷時において、印刷速度は円柱状の形状上を持つ版胴111の表面およびブランケット胴116の周速度と等しくなるように、図示しない駆動モータの回転数とギア比が制御される。
【0025】
ここで、凹版グラビアオフセット印刷による太陽電池セル10の電極形成において、印刷量以外に大きく生産性に寄与する要因として印刷速度がある。単位時間当たりに処理できる被印刷物の数、すなわち印刷速度、を高めることによって、生産性は向上する。印刷速度を上げるためには、円筒形の版(版胴111)から中間転写体(ブランケット胴116)への転写速度、中間転写体(ブランケット胴116)から被印刷物(シリコン基板12)への転写速度を速めればよい。さらには、円筒形の版(版胴111)と円筒形の中間転写体(ブランケット胴116)からなる回転式の印刷方法を採り、なおかつ、第一の転写と第二の転写までの時間を短縮するために、版胴111、ブランケット胴116と被印刷物の動きを連動させ、円筒形のブランケット胴116に転写された導電性ペースト120が、ブランケット胴116が一回転しない間に、被印刷物に転写させるようにすればよい。
【0026】
印刷量が確保されれば、以上の方式を採ることによって生産性は著しく向上する。一般的に行われている印刷方法であるスクリーン印刷法の生産性に対して向上させるには、印刷速度すなわち転写速度を、たとえば3m/min以上とすればよい。
【0027】
この実施の形態で使用する導電性ペースト120は、導電性粉末、ガラスフリットなどの無機粉末成分に加え、結着用樹脂、転写用樹脂、高揮発性溶媒、低揮発性溶媒などの有機成分を含む。
【0028】
導電性粉末は、導電性ペースト120を焼成した後、電気的な導通を確保するための成分であり、金属粉末などの導電性を有するものであればよいが、太陽電池の集電極には導電率の低い銀粉末が好ましい。粉末の粒径は特に限定されないが、50%平均粒径が集電極の幅に対して1/5以下であることが望ましい。これは、50%平均粒径が集電極の幅に対して1/5を超えると、凹版の溝に導電性ペーストが充填されにくくなり、印刷後の集電極の断線の発生頻度が高くなるからである。一方、粒径が小さすぎると所望の含有割合の導電性粉末を含んだ導電性ペーストの粘度が増粘し、印刷性に問題が発生するため、増粘による印刷性の問題が発生しない程度の粒径であることが望ましい。
【0029】
ガラスフリットは、焼成後に導電性粉末を焼成させ電極形状を保つと共に、電極と被印刷物(シリコン基板12)との密着性を確保するために添加される成分である。このようなガラスフリットとして、有機成分の熱分解温度で溶解しない性質を有し、焼成後のシリコン基板12の反り量を低減でき、できるだけ低温で焼成できるものであることが望ましい。低温焼成可能なものであれば、経済的に有利であるからである。そのため、導電性ペーストに含まれる有機成分の種類によってガラスフリットの軟化点を適宜変更させることが好ましいが、この実施の形態の導電性ペースト120においては、その軟化点が350〜600℃の範囲内のものを使用する。このようなガラスフリットとして、具体的には、酸化鉛、ホウケイ酸ガラス、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ビスマスなどの金属酸化物を含有するガラスから選択される1種または2種以上のガラス粉末が望ましい。ガラスフリットの粒径は特に限定されないが、導電性粉末と同じ理由から、同程度の粒径であることが好ましい。また、ガラスフリットの粒径は、導電性粉末の粒径に対して1/3以下であることが好ましい。これは、ガラスフリットの粒径が導電性粉末の粒径に対して1/3よりも大きいと、効率よく焼結できず、集電極の導電率が大きくなってしまうからである。
【0030】
結着用樹脂は、印刷後に導電性ペースト120がシリコン基板12上で形状を保持するために添加される成分である。このため、印刷後の導電性ペースト120が、柔軟性を有しつつも強靭となる樹脂が選択される。また、焼成によって結着用樹脂を熱分解させて除去する際に、樹脂分またはその残渣が残存せずに、完全に除去される樹脂が好ましい。このような樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エチルセルロースなどを例示することができるが、この中から、導電性粉末の分散性や粘度調整も含め適宜選択される。
【0031】
転写用樹脂は、第二の転写時にシリコン基板12への密着力を確保するために添加される成分であり、この実施の形態において必須の成分である。この転写用樹脂は、焼成によって熱分解させて除去する際に、樹脂分またはその残渣が残存せずに、完全に除去される樹脂であると共に、第二の転写時に密着性を発現できる樹脂である必要がある。有機成分が多すぎると、焼成後に集電極内部にボイドなどが形成され、導電率の低下や電極強度の低下などが懸念される。特に太陽電池セル10の集電極においては、幅に対して高さの比率を上げ、遮光部を最小限にしつつ集電極の断面積を大きくする必要がある。このような観点から、ボイドの形成は大きな問題となる。そのため、少ない量で、第二の転写時のシリコン基板12に対する密着力を向上させることができる樹脂が転写用樹脂として適している。このような樹脂として、単位構造あたりの極性基の密度が高いものが考えられるが、熱分解後の残渣が残存しないものとしては、金属塩を含まない水酸基やカルボキシル基、カルボン酸エステルなどを例示することができる。たとえば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸や一部のカルボキシル基をエステル化したポリアクリル酸アルキル、ポリメタクリル酸アルキルが挙げられる。このうち、ポリビニルアルコールは、溶媒に対する溶解性が他のものに比して低く、第二の転写が不十分となるので、溶媒に溶解する材料を選択することが望ましい。また、ポリアクリル酸アルキルやポリメタクリル酸アルキルは、ポリアクリル酸に対して吸湿性が比較的低く、外部環境からの吸湿による導電性ペーストの粘度特性が安定であるため、印刷環境の影響に対する安定性、ポットライフの長期間化の面から、転写用樹脂として好ましい。
【0032】
さらに、ポリアクリル酸アルキルまたはポリメタクリル酸アルキルの分子量や側鎖の構造で、第二の転写時のシリコン基板12に対する密着力は大きく異なるが、分子量が20万以下であること、または樹脂の特性のひとつであるガラス転移温度(Tg)が80℃以下であることが密着性確保の上で望ましい。さらには、第二の転写の転写率を確保するためには、導電性ペーストに対する分率として1重量%以上が望ましく、また、第一の転写の転写率を確保するためには、導電性ペーストに対する分率として6重量%以下が望ましい。
【0033】
低揮発性溶媒は、無機粉体の分散媒であると同時に、結着用樹脂を溶解させ、結着用樹脂と共に印刷後に導電性ペースト120の形状を保持させる溶媒である。このような機能を有するものであれば、低揮発性溶媒として公知の溶媒を用いることができる。導電性ペースト120の安定性を考慮して、20℃において、0.1mmHg以下の比較的低い蒸気圧を有する溶媒が好ましい。このような低揮発性溶媒として、たとえば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどを例示することができる。
【0034】
高揮発性溶媒は、印刷工程の内、ドクターブレード114で凹版(版胴111)の溝に充填されてから、第二の転写までの期間に、低揮発性溶媒に対して優先的に揮発し、導電性ペースト120の粘度特性と凝集力を変化させる役割を有する溶媒である。凹版の溝への充填は、導電性ペースト120が低粘度であることが望ましいため、低揮発性溶媒を含め溶媒量や、そのほかの有機成分の分量で導電性ペーストの粘度が調整される。
【0035】
もし、ドクターブレード114で凹版の溝に充填したときの導電性ペーストの組成が第二の転写時にも保持されていれば、第二の転写時に、シリコン基板12上で濡れ広がったり、ブランケット胴116(中間転写体)の圧力で導電性ペースト120が潰れ、集電極の幅が広がったりしてしまう。また、導電性ペースト120の凝集力がブランケット胴116への密着力よりも小さい場合には、第二の転写時に導電性ペースト120内部で凝集破壊が生じ、第二の転写後もブランケット胴116に導電性ペースト120が残留するパイリングを起こる結果、第二の転写の転写率を大幅に低下させてしまう。
【0036】
そこで、この実施の形態では、低揮発性溶媒に高揮発性溶媒を加えることにより、印刷工程の内、ドクターブレード114で凹版の溝に充填されてから、第二の転写までの間に、溶媒(高揮発性溶媒)を揮発させるようにしている。この高揮発性溶媒の揮発によって、導電性ペースト120内の溶媒成分の分率が減少し、導電性ペースト120の凝集力を向上させることが可能となる。また、溶媒の揮発による溶媒成分の分率の減少に伴って、転写用樹脂の分率が増加するので、導電性ペースト120のシリコン基板12に対する密着性が向上する。その結果、高速印刷においてもパイリングを起こすことなく、第二の転写時の転写率を100%とすることが可能となる。
【0037】
これを達成するための高揮発性溶媒として、20℃において、0.5〜5mmHgの比較的高い蒸気圧を有するものがよい。具体的には、プロピレングリコールジアセテート、デカリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、フェネトール、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、2−エチル−1−ブタノール、アセト酢酸エチル、フルフラール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセタート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、2−メトキシエチルアセタートなどが挙げられる。また、導電性ペースト120内での分率としては、16重量%以下、好ましくは2〜14重量%であることが望ましい。さらに、シリコン基板12への密着性を考慮し、転写用樹脂に対して重量比で4倍以下であればよく、第一の転写が十分なされるためには転写用樹脂に対して重量比で1倍以上であればよい。
【0038】
ここで、転写用樹脂は、これらの溶媒に溶解させて用いられる。転写用樹脂の分子量は溶解性に大きく関わっており、転写用樹脂の分子量が20万以下であると、これらの溶媒に溶解させることが可能となる。また、高揮発性溶媒における転写用樹脂の溶解性が、低揮発性溶媒における転写用樹脂の溶解性よりも大きいものを選択することによって、第一の転写から第二の転写の間に導電性ペースト120から優先的に高揮発性溶媒が揮発した際に、転写用樹脂が導電性ペースト120の表面に偏析する。その結果、転写用樹脂が少量にもかかわらず、効率よく第二の転写時にシリコン基板12との密着力を向上させ、パイリングを防止することが可能となり、焼成後の集電極の強度および導電率を向上させることができる。
【0039】
なお、この実施の形態による導電性ペースト120に、上述した各成分以外に、分散剤、レベリング剤、消泡剤などをさらに添加してもよい。
【0040】
このような導電性ペースト120の各成分は、所定の割合で配合後、3本ロールミル、ボールミル、遊星式攪拌器、ウェブロータなどを用いて攪拌し調合される。たとえば、必要に応じ分散剤を加えた無機粉体を攪拌した後、予め結着用樹脂、転写用樹脂を溶解した溶媒を添加し、再度攪拌することにより、導電性ペースト120が調合される。
【0041】
攪拌後の導電性ペースト120の粘度は、25℃で3〜25Pa・sであることが好ましい。これは、導電性ペースト120の粘度が3Pa・sに満たない場合には、転写された集電極の幅が大きくなり遮光面積が増大してしまい、25Pa・sよりも大きくとなると、第一の転写時や第二の転写時に糸引きが発生したり、ドクターブレード114で凹版の溝以外の部分の導電性ペースト120を除去できなかったりするという不具合が生じるからである。
【0042】
このようにして調合された導電性ペースト120を、図2に示される凹版グラビアオフセット印刷装置100によってPN接合が形成されたシリコン基板12の受光面側に所定の形状に印刷した後、焼成する。これによって、シリコン基板12の受光面側には集電極が形成される。なお、集電極の形成された面の裏側に、裏面電極30を形成することで、たとえば図1−1〜図1−3に示される太陽電池セル10となる。裏面電極30は、予めシリコン基板12に印刷しておき、集電極と同時に焼成してもよい。
【0043】
以下に、この実施の形態による実施例について、比較例とともに説明する。図3〜図8は、実施例および比較例の実験条件および測定結果を示す図である。
【0044】
以下の各実施例および各比較例で使用した太陽電池セル電極形成ペーストとしての導電性ペースト120は、つぎのようにして調整する。まず、ボールミルを用い、導電性粉末とガラスフリットを攪拌する。また、ウェブロータを用い、結着用樹脂と転写用樹脂を、高揮発性溶媒および低揮発性溶媒に溶解させた樹脂含有溶液を作製する。その後、撹拌した導電性粉末とガラスフリットに、樹脂含有溶液を添加し、3本ロールミルで混練することによって、導電性ペースト120を調整する。
【0045】
ここで、導電性ペースト120の成分として、導電性粉末である銀粉末を75重量部とし、ガラスフリットを2重量部とし、結着用樹脂であるエチルセルロースおよびビスフェノールA型エポキシをそれぞれ2重量部とし、転写用樹脂、低揮発性溶媒および高揮発性溶媒を以下の図に示される割合とする。
【0046】
調整した導電性ペースト120の粘度は、コーンプレート式定常流粘度計を用い、ずり速度12s-1として測定を行う。
【0047】
調整した導電性ペースト120を図2に示される凹版グラビアオフセット印刷装置100のペースト貯留槽112内に供給し、上記した方法によって多結晶シリコン基板上に所定形状のグリッド電極を印刷する。ここでは、凹版グラビアオフセット印刷に使用する版の集電極形成用の溝の長さは150mmとし、溝の幅は50μmとする。なお、版の溝の形状は、丸本ストルアス社製のレプリセットF−1(商品名)などのシリコーンRTV(Room Temperature Vulcanization)のような型取り樹脂を用いて、版胴111上に形成された溝の形状を転写し、キーエンス社製のVK9510(商品名)などの非接触式レーザ変位センサを用いて版胴111に形成された溝の幅と深さを測定する。
【0048】
また、印刷速度、すなわち版胴111およびブランケット胴116の周速度を、3m/minとする。凹版グラビアオフセット印刷によって、第一の転写が行われたかどうかは、第一の転写後のブランケット胴116上に粘着テープを貼り付け、粘着テープに転写された導電性ペースト120をレーザ顕微鏡で観察することによって判定する。また、第二の転写の転写率が100%であるか否かは、第二の転写後のブランケット胴116上に粘着テープを貼り付け、粘着テープに転写された導電性ペースト120をレーザ顕微鏡で観察することによって判定する。なお、以下の図において、「第一の転写」の項目は、第一の転写の状態を示すものであり、「○」は集電極すべての場所で第一の転写が行われたことを示し、「△」は集電極の一部が第一の転写が行われなかったことを示し、「×」は集電極のすべての場所で第一の転写が行われなかったことを示している。また、「第二の転写」の項目は、第二の転写の転写率が100%であるか否かを示すものであり、「○」は集電極すべての場所で第二の転写の転写率が100%であることを示し、「△」は集電極の一部で第二の転写の転写率が100%未満であることを示し、「×」は集電極のすべての場所で第二の転写の転写率が100%未満であることを示している。
【0049】
上記したように、多結晶シリコン基板への導電性ペースト120の印刷後に焼成を行い、集電極を形成する。そして、形成された集電極の幅と高さを測定する。集電極の幅は、レーザ顕微鏡を用いて異なる複数の位置(10点)で測定を行い、その平均値を集電極の幅とする。また、集電極の高さは、レーザ変位計を用いて異なる複数の位置(10点)で測定を行い、その平均値を集電極の高さとする。
【0050】
(実施例1と比較例1〜3)
図3は、実施例1と比較例1〜3の実験条件および測定結果を示す図である。実施例1では、転写用樹脂として3重量部のポリメタクリル酸アルキルを用い、低揮発性溶媒として10重量部のα−テルピネオールを用い、高揮発性溶媒として6重量部のプロピレングリコール−n−ブチルエーテルを用いて導電性ペースト120を調整する。比較例1〜3では、これらのうちいずれかを含まないもので導電性ペースト120を調整する。すなわち、比較例1では、転写用樹脂として3重量部のポリメタクリル酸アルキルを用い、低揮発性溶媒として16重量部のα−テルピネオールを用い、高揮発性溶媒を用いずに導電性ペースト120を調整する。また、比較例2では、転写用樹脂を用いず、低揮発性溶媒として10重量部のα−テルピネオールを用い、高揮発性溶媒として6重量部のプロピレングリコール−n−ブチルエーテルを用いて導電性ペースト120を調整する。さらに、比較例3では、転写用樹脂として3重量部のポリメタクリル酸アルキルを用い、低揮発性溶媒を用いず、高揮発性溶媒として16重量部のプロピレングリコール−n−ブチルエーテルを用いて導電性ペースト120を調整する。
【0051】
図3から明らかなように、転写用樹脂、高揮発性溶媒のいずれかを含まない比較例1,2では、第二の転写時にパイリングが発生し、電極高さが非常に低く、抵抗値の低い集電極を形成することができない。また、低揮発性溶媒を含まない比較例3では、第一の転写時に導電性ペーストが断線する不具合に加え、断線していない部分においても、印刷された集電極の幅、高さが低く、抵抗値の低い集電極を形成できない。
【0052】
さらに、比較例1〜3において、印刷速度を変えて評価を行ったところ、比較例1の場合、2m・min-1以上で第二の転写時にパイリングが発生し、1m・min-1で第一の転写および第二の転写ともに良好となる。比較例2の場合、1m・min-1以上でも第二の転写時にパイリングが発生する。比較例3の場合、いずれの印刷速度においても、集電極のすべてまたは一部で第一の転写が行われない。これは、比較例1,2の場合には、第二の転写時の導電性ペースト120の凝集力と、多結晶シリコン基板への密着力が欠けるためと考えられ、比較例3の場合には、低揮発性溶媒が存在しないことから導電性ペースト120が過乾燥となり、第一の転写でのブランケット胴116への密着力に問題があるためと予想される。さらには、比較例3の場合で印刷速度をさらに増加させた場合にも同様の結果となるが、上述の問題に加え、版胴111とブランケット胴116が接する時間、すなわち第一の転写が行われる時間が短いため、転写しにくいという理由も考えられる。
【0053】
これに対して、実施例1では、第一の転写、第二の転写の結果とも良好である。また、第二の転写によって多結晶シリコン基板に形成された電極の幅は48μmであり、高さは8μmとなり、型崩れせず所望の形状で多結晶シリコン基板に集電極が形成される。さらに、実施例1で印刷速度を変えて評価を行ったところ、9m・min-1以下であれば、第一の転写、第二の転写とも良好な結果が得られる。
【0054】
これらより、高揮発性溶媒が第二の転写までの間に揮発することによって、第二の転写が良好となるように導電性ペースト120の凝集力が高められるとともに、多結晶シリコン基板への密着性が高められ、第二の転写時におけるパイリングの発生が抑制される。また、低揮発性溶媒の存在によって、第一の転写時の導電性ペースト120の断線や転写率の低下を抑制することができる。その結果、太陽電池セル製造にあたっての生産性が向上する。
【0055】
(実施例2,3と比較例4,5)
図4は、実施例2,3と比較例4,5の実験条件および測定結果を示す図である。実施例2,3と比較例4,5では、低揮発性溶媒として10重量部のα−テルピネオールを用い、高揮発性溶媒として6重量部のプロピレングリコール−n−ブチルエーテルを用い、転写用樹脂として材料を変えて導電性ペースト120を調整する。具体的には、転写用樹脂として、実施例2では3重量部のポリアクリル酸アルキルを用い、実施例3では3重量部のポリアクリル酸を用い、比較例4では、3重量部のポリビニルアルコールを用い、比較例5では3重量部のガラス転移温度Tgが98℃のポリメタクリル酸アルキルを用いる。
【0056】
図4から明らかなように、転写用樹脂としては、実施例1で用いたポリメタクリル酸アルキル以外に、ポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸も有効であることがわかる。
【0057】
比較例4で転写用樹脂として用いたポリビニルアルコールは、溶媒にすべてが溶解しないものである。このようなポリビニルアルコールを転写用樹脂として用いる場合には、第二の転写の転写率が集電極のすべての場所で100%未満となってしまう。同様の結果は、溶媒に対する溶解性に欠ける分子量が大きなポリメタクリル酸アルキル、ポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸においても得られる。
【0058】
比較例5で用いた転写用樹脂(ポリメタクリル酸アルキル)の示差走査熱量測定で測定したガラス転移温度Tgは、98℃である。このような樹脂を用いた場合も、第二の転写の転写率が集電極のすべての場所で100%未満となってしまう。一方、実施例1〜3で用いた転写用樹脂の示差走査熱量測定で測定したガラス転移温度Tgはそれぞれ、76℃、68℃、22℃である。このように、転写用樹脂のガラス転移温度Tgが80℃を境界にして、第二の転写の転写率に差が表れる。つまり、転写用樹脂のガラス転移温度Tgが80℃を越える場合には、第二の転写の転写率が集電極のすべての場所で100%未満となり、効果が見られない。これは、ガラス転移温度Tgが80℃よりも高いと、分子の構造がより剛直となるため、第二の転写でブランケット胴116と多結晶シリコン基板が接する時間が短い場合には十分な密着力が得られなくなるためであると考えられる。
【0059】
以上のように、転写用樹脂としては、溶媒に対してすべてが溶解可能な分子量を有するとともに、ガラス転移温度が80℃以下であるポリメタクリル酸アルキルやポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸などを用いることができる。
【0060】
(実施例4〜8)
図5は、実施例4〜8の実験条件および測定結果を示す図である。これらの実施例4〜8においては、転写用樹脂としてポリメタクリル酸アルキルを用い、低揮発性溶媒として10重量部のα−テルピネオールを用い、高揮発性溶媒としてプロピレングリコール−n−ブチルエーテルを用いて導電性ペースト120を調整する。このとき、実施例4〜7では、転写用樹脂と高揮発性溶媒との配合比が1:2となるようにして、導電性ペースト120内のそれぞれの重量比を変化させ、実施例8では、転写用樹脂と高揮発性溶媒との配合比が1:4となるようにする。
【0061】
このように転写用樹脂と高揮発性溶媒の重量比または配合比を変化させることで、粘度が大きく変化する。しかし、いずれの場合にも、第一の転写、第二の転写ともに良好な結果が得られている。
【0062】
実施例4では、電極高さが3μmと低い結果が得られる。これは、転写用樹脂の濃度が0.3重量部と低いため、粘度が高く流動性が劣った結果、版胴111の溝に導電性ペースト120が充分充填されなかったためか、版胴111とブランケット胴116が接触する間に十分に導電性ペースト120が転写、移行せず、第一の転写の転写率が低かったためと考えられる。
【0063】
また、実施例8では、実施例4と同じ転写用樹脂の重量比を有しながら、転写用樹脂と高揮発性溶媒の配合比を1:4に変えることによって、粘度を25Pa・s-1以下にしている。この場合には、第一の転写時に問題は発生せず、一定量の集電極の高さを確保できる。しかし、印刷速度を変えて実験すると、3m・min-1を超える印刷速度で印刷すると、第二の転写時にパイリングが生じる。そのため、この場合には3m・min-1以下の印刷速度で印刷することが望ましい。
【0064】
実施例5では、実施例8と同じ粘度を有しながら、転写用樹脂と高揮発性溶媒との配合比を1:2として、転写用樹脂の重量比を実施例8(実施例4)の場合よりも多くしている。この場合には、印刷速度を5m・min-1にしても、良好な転写が可能となる。このことから、転写用樹脂が0.4重量部以上、すなわち導電性ペースト120内の分率として0.4%の場合には、さらに高速で印刷することができ生産性が向上する。
【0065】
また、実施例6〜7では、粘度が25Pa・s-1以下となる導電性ペーストを用いるが、この場合には、第一の転写がさらに安定する。粘度の下限としては、特に限定されないが、粘度は溶媒量に大きく依存することから、粘度が低いと溶媒量が多いため、濡れ広がりやすくなる。特に、1Pa・s-1未満の場合、電極幅が広がりやすくなる。そのため、導電性ペースト120の粘度としては、1Pa・s-1以上であることが望ましい。
【0066】
実施例7に示されるように、転写用樹脂が7重量部、すなわち導電性ペースト120内の分率として6.25%の場合には、集電極の高さが2μmと低くなる。この理由は明らかではないが、ブランケット胴116の表面のシリコーン樹脂は極性基を有しないのに対して、実施例7のように、導電性ペースト120内に極性基を高密度で含む転写用樹脂が多くなりすぎると、導電性ペースト120のブランケット胴116に対する密着力が劣るためと考えられる。
【0067】
以上の結果より、転写用樹脂の導電性ペースト120内の分率としては、0.27〜6.25重量%の範囲であればよいが、特に、0.4〜6重量%の範囲である場合に印刷速度を速めることが可能となり、生産性が向上する。
【0068】
(実施例9〜12)
図6は、実施例9〜12の実験条件および測定結果を示す図である。これらの実施例9〜12においては、転写用樹脂として3重量部のポリメタクリル酸アルキルを用い、低揮発性溶媒として10重量部のα−テルピネオールを用い、高揮発性溶媒としてプロピレングリコール−n−ブチルエーテルを用いて導電性ペースト120を調整する。このとき、実施例9〜12では、高揮発性溶媒の配合量を実施例1の場合に対して種々に変化さている。
【0069】
この図6に示されるように、高揮発性溶媒が2〜15重量部の範囲、すなわち導電性ペースト内での高揮発性溶媒の分率として2.1〜13.8重量%の範囲であれば、第一の転写、第二の転写ともに問題はない。
【0070】
ここで、実施例9では、電極の幅、高さともに実施例1の場合に比して小さい値となっているが、これは、第一の転写の転写率が比較的小さいためである。これに対して、実施例10〜12では、電極の幅、高さともに実施例9の場合に比して大きな値となっている。これらより、第一の転写が十分になされるためには、高揮発性溶媒が転写用樹脂に対して重量比で1倍以上であることがさらには好ましい。
【0071】
実施例9は、実施例1の導電性ペースト120で高揮発性溶媒が揮発した後の状態と同等である。第一の転写の転写率が低い理由は明確になっていないが、実施例4と同等の粘度であり、実施例4と同様の理由と考えられる。
【0072】
また、実施例11では、電極幅が実施例1と比較して若干広くなっており、実施例12では、電極幅が実施例1と比較してかなり広くなっている。これは、第一の転写時または第二の転写時に濡れ広がったためと考えられる。種々の高揮発性溶媒の揮発速度の違いによって、最適な配合比は若干異なるが、この実施の形態における導電性ペースト120において第一の転写が十分なされるためには、高揮発性溶媒は、転写用樹脂に対して重量比でほぼ4倍以下であることがさらに好ましい。
【0073】
(実施例13,14と比較例6,7)
図7は、実施例13,14と比較例6,7の実験条件および測定結果を示す図である。これらの実施例と比較例では、転写用樹脂として3重量部のポリメタクリル酸アルキルを用い、低揮発性溶媒として10重量部のα−テルピネオールを用い、高揮発性溶媒として20℃での蒸気圧が異なる6重量部の種々の材料を用いて導電性ペースト120を調整する。高揮発性溶媒として、比較例6ではアセトフェノンを用い、実施例13ではプロピレングリコールジアセテートを用い、実施例14では2−メトキシエチルアセタートを用い、比較例7ではプロピレングリコール−n−メチルエーテルを用いる。これらの各材料の20℃での蒸気圧は、アセトフェノンが0.37mmHgであり、プロピレングリコールジアセテートが0.58mmHgであり、2−メトキシエチルアセタートが5.0mmHgであり、プロピレングリコール−n−メチルエーテルが8.7mmHgである。
【0074】
図7に示されるように、高揮発性溶媒の20℃での蒸気圧が0.58mmHgのプロピレングリコールジアセテートを用いた実施例13と、同じく5.0mmHgの2−メトキシエチルアセタートを用いた実施例14では、第一の転写、第二の転写ともに良好で、電極の幅と高さも問題ない結果が得られる。これに対して、20℃での蒸気圧が0.37mmHgのアセトフェノンを用いた比較例6では、第二の転写に問題がある。これは、蒸気圧が実施例13,14のものに比して低い高揮発性溶媒が第二の転写までに十分に揮発しないため、第二の転写時にパイリングが生じるためであると考えられる。また、20℃での蒸気圧が8.7mmHgのプロピレングリコール−n−メチルエーテルを用いた比較例7では、第一の転写に問題がある。これは、蒸気圧が実施例13,14のものに比して高い高揮発性溶媒の大部分が第一の転写時までに揮発してしまうため、ブランケット胴116への密着力が劣化し、第一の転写の転写率が悪化するためであると考えられる。以上より、高揮発性溶媒の20℃での蒸気圧は、0.5〜5.0mmHgであることが望ましい。
【0075】
(実施例15〜17と比較例8)
図8は、実施例15〜17と比較例8の実験条件および測定結果を示す図である。これらの実施例と比較例では、転写用樹脂として3重量部のポリメタクリル酸アルキルを用い、高揮発性溶媒として6重量部のプロピレングリコール−n−ブチルエーテルを用い、低揮発性溶媒として20℃での蒸気圧が異なる10重量部の種々の材料を用いて導電性ペースト120を調整する。低揮発性溶媒として、実施例15ではブチルカルビトールを用い、実施例16ではブチルカルビトールアセテートを用い、実施例17ではジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを用い、比較例8ではジプロピレングリコールメチルエーテルを用いる。これらの各材料の20℃での蒸気圧は、ブチルカルビトールが0.01mmHgであり、ブチルカルビトールアセテートが0.04mmHgであり、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが0.08mmHgであり、ジプロピレングリコールメチルエーテルが0.28mmHgである。
【0076】
図8に示されるように、低揮発性溶媒の20℃での蒸気圧が0.01mmHgのブチルカルビトールを用いた実施例15、同じく0.04mmHgのジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを用いた実施例16、および同じく0.08mmHgのジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを用いた実施例17では、第一の転写、第二の転写ともに良好で、電極の幅と高さも問題ない結果が得られる。これに対して、20℃での蒸気圧が0.28mmHgのジプロピレングリコールメチルエーテルを用いた比較例8では、第一の転写に問題がある。これは、導電性ペースト120が過乾燥となり、第一の転写でのブランケット胴116への密着力に問題があるためであると考えられる。以上より、低揮発性溶媒の20℃での蒸気圧は、0.1mmHg以下、より好ましくは0.01〜0.08mmHgである。
【0077】
また、実施例15〜17で印刷速度を速めて印刷したところ、いずれの場合も6m・min-1以下の印刷速度では、第一の転写、第二の転写ともに良好である。しかし、実施例1で第一の転写、第二の転写ともに良好であった印刷速度9m・min-1の場合には、第二の転写時にパイリングが生じる。これは、実施例1で用いた低揮発性溶媒であるα−テルピネオールは、実施例15〜17の低揮発性溶媒と比較して、転写用樹脂に対し貧溶媒であることが原因であると考えられる。つまり、第一の転写から第二の転写の間に導電性ペースト120から優先的に高揮発性溶媒が揮発したときに、本来転写用樹脂が必要とされるシリコン基板12との界面に転写用樹脂が偏析したため、よりシリコン基板12との密着力が向上し、より高速での印刷が可能となるからであると考えられる。その結果、生産性を向上させることができる。以上より、低揮発性溶媒は転写用樹脂に対して貧溶媒であることが望ましい。
【0078】
なお、これまでの実施例では、凹版の溝の幅を50μmのもので評価しているが、凹版の溝幅を変化させると、第一の転写量が左右され、印刷工程中の揮発量が異なり、第一の転写、第二の転写時の導電性ペーストの特性は異なるものと予想される。しかし、実験によって、凹版の溝幅が20〜80μmの範囲において、凹版の溝幅が50μmの場合と同様の傾向が確認される。つまり、この実施の形態における導電性ペースト120は、凹版の溝幅が、20〜80μmの範囲において有効である。また、上述の実施例で使用した導電性ペースト120をこれらの版胴111に適用すると、版の溝幅に対して、集電極の幅は+5〜−10μmで形成される。
【0079】
さらに、上述した実施例による印刷を繰り返し行うことによって、集電極の高さを25μmとした太陽電池セルの特性を評価すると、従来のスクリーン印刷法で形成された集電極を持つ太陽電池セルと比較して、版の溝幅を50〜80μmとした場合に発電効率が高まる。これは、スクリーン印刷法で集電極を形成する場合に比較して、遮光面積が減り、受光面積が増えるためと考えられる。一方、版の溝幅が20〜40μmの場合には、発電効率が下がることが確認される。これは、遮光面積が減り、受光面積が増加するものの、集電極の断面積が減少し、集電極での電気抵抗に由来する電圧降下による発電効率の減少のデメリットが大きくなるためである。そのため、版の溝幅が20〜40μmの場合で、印刷をさらに繰り返し、集電極の高さを25μmよりも高めることによって断面積を増やすと、発電効率の向上が確認される。
【0080】
この実施の形態では、導電性ペースト120を版胴111からブランケット胴116に転写し、ブランケット胴116から被印刷物である半導体基板の表面に転写して、凹版グラビアオフセット印刷法によって太陽電池の電極を形成する場合において、凹版グラビアオフセット印刷法に特有の転写プロセスに必要な密着性を機能分離して、それぞれの機能を担う転写用樹脂と、高揮発性溶媒と低揮発性溶媒の少なくとも2種の溶媒と、を含む導電性ペーストを用いたので、印刷終了まで溶媒が枯渇することなく、かつ高揮発性溶媒の蒸発によって、版胴111からブランケット胴116への転写時とブランケット胴116から半導体基板への転写時における導電性ペースト120の転写性を変化させるようにした。これによって、ブランケット胴116への転写率が高く、かつ半導体基板への転写率も高く、所望の形状を有する集電極を形成することができるという効果を有する。また、従来の凹版グラビアオフセット印刷法で用いられる導電性ペーストに比較して、印刷速度を高めることができるので、従来に比して太陽電池セルの生産性を高めることもできるという効果を有する。
【0081】
さらには、元来、版上に必ず所定量以上の導電性ペースト120を必要とするスクリーン印刷法と比べ、凹版グラビアオフセット印刷法では、印刷されずに廃棄する導電性ペースト120の量が少なくて済む。また、同じ発電効率を有する太陽電池セルにおいて、スクリーン印刷法で集電極を形成する場合と比較すると、集電極の線幅が狭く受光面積を広げられるため、比較的集電極の抵抗値が高くても構わず、集電極の高さすなわち断面積は小さくてもよい。その結果、印刷される導電性ペースト120の量をスクリーン印刷法の場合に比して少なくすることができるという効果も得られる。さらに、同じ凹版グラビアオフセット印刷法でも、この実施の形態による導電性ペースト120を用いることで、従来に比してより高速の印刷を行うことが可能となる。この場合には、単位時間当たりの導電性ペースト120の消費量が多いため、ポットライフが短い導電性ペースト120でも消費期限に到達する前にすべて消費し、無駄なく導電性ペースト120を利用することができる。そのため、無駄なペーストの使用量を削減することができるという効果も有する。
【0082】
なお、上述した説明では、被印刷物として多結晶シリコン基板を例に挙げたが、これに限定される趣旨ではない。被印刷物として、多結晶シリコン基板のほかに、単結晶シリコン基板やアモルファスシリコン基板を用いることもできる。また、このほかにも、ゲルマニウムなどの単元素の半導体基板やガリウム砒素などの化合物半導体基板など、太陽電池に使用される基板であれば被印刷物として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明にかかる太陽電池セル電極形成ペーストは、太陽電池に使用される基板に有用であり、特に、比較的安価であるが表面の凹凸が大きく第二の転写が困難な多結晶シリコン基板に適している。
【符号の説明】
【0084】
10 太陽電池セル
11 光電変換層
12 シリコン基板
13 N型拡散層
14 P+層
15 反射防止膜
20 表面電極
21 グリッド電極
22 バスバー電極
30 裏面電極
31 裏側集電電極
32 裏側取出電極
100 凹版グラビアオフセット印刷装置
101 コンベア
110 印刷ユニット
111 版胴
112 ペースト貯留槽
113 ペースト供給ロール
114 ドクターブレード
115 防止バー
116 ブランケット胴
117 ロール
120 導電性ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの電極の形成に用いられる太陽電池セル電極形成ペーストにおいて、
導電性粉末と、
軟化点が350〜600℃の範囲内にあるガラスフリットと、
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つを含む結着用樹脂と、
ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、またはポリメタクリル酸アルキルの構造を有するアクリル樹脂からなる転写用樹脂と、
20℃での蒸気圧が0.1mmHg以下である低揮発性溶媒と、
20℃での蒸気圧が0.5〜5mmHgである高揮発性溶媒と、
を含むことを特徴とする太陽電池セル電極形成ペースト。
【請求項2】
前記転写用樹脂のガラス転移温度は、80℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル電極形成ペースト。
【請求項3】
前記転写用樹脂は、前記低揮発性溶媒と前記高揮発性溶媒にすべて溶解する樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル電極形成ペースト。
【請求項4】
調整後の粘度が25Pa・s-1以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル電極形成ペースト。
【請求項5】
前記転写用樹脂は、当該導電性ペーストに対して0.4〜6重量%含まれ、
前記高揮発性溶媒は、前記転写用樹脂に対して重量比で1〜4倍であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル電極形成ペースト。
【請求項6】
前記転写用樹脂の前記低揮発性溶媒への溶解性は、前記転写用樹脂の前記高揮発性溶媒への溶解性よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル電極形成ペースト。
【請求項7】
前記低揮発性溶媒は、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、およびジプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの材料であり、
前記高揮発性溶媒は、プロピレングリコールジアセテート、デカリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、フェネトール、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、2−エチル−1−ブタノール、アセト酢酸エチル、フルフラール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセタート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、および2−メトキシエチルアセタートからなる群から選択される少なくとも1つの材料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の太陽電池セル電極形成ペースト。
【請求項8】
PN接合面が基板面に平行に形成された半導体基板と、
前記半導体基板の第1の主面上に第1の方向に延在して平行に複数形成されるグリッド電極、および第2の方向に前記複数のグリッド電極と接続するように形成されるバスバー電極を含む表面電極と、
前記半導体基板の第2の主面上に形成される裏面電極と、
を備える太陽電池セルにおいて、
前記表面電極は、導電性粉末と、軟化点が350〜600℃の範囲内にあるガラスフリットと、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つを含む結着用樹脂と、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、またはポリメタクリル酸アルキルの構造を有するアクリル樹脂からなる転写用樹脂と、20℃での蒸気圧が0.1mmHg以下である低揮発性溶媒と、20℃での蒸気圧が0.5〜5mmHgである高揮発性溶媒と、を含む太陽電池セル電極形成ペーストを用いて形成されることを特徴とする太陽電池セル。
【請求項9】
第1の導電型の拡散層が第1の主面側に形成された第2の導電型の半導体基板の第2の主面上に導電性ペーストを塗布して裏面電極となる裏面電極形成層を形成し、前記第1の主面上に第1の方向に複数平行に延在するグリッド電極となるグリッド電極形成層、および第2の方向に延在し、前記グリッド電極間を接続するバスバー電極となるバスバー電極形成層を含む表面電極形成層を、太陽電池セル電極形成ペーストを塗布して形成し、焼成して太陽電池セルを製造する太陽電池セルの製造方法において、
前記太陽電池セル電極形成ペーストは、導電性粉末と、軟化点が350〜600℃の範囲内にあるガラスフリットと、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つを含む結着用樹脂と、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、またはポリメタクリル酸アルキルの構造を有するアクリル樹脂からなる転写用樹脂と、20℃での蒸気圧が0.1mmHg以下である低揮発性溶媒と、20℃での蒸気圧が0.5〜5mmHgである高揮発性溶媒と、を含み、
前記表面電極形成層は、前記太陽電池セル電極形成ペーストを用いて凹版グラビアオフセット印刷法によって形成されることを特徴とする太陽電池セルの製造方法。
【請求項10】
前記表面電極形成層の形成は、
前記表面電極形成層の形状に溝が彫られた円柱状の版胴の表面に前記太陽電池セル電極形成ペーストを塗布する第1の工程と、
前記版胴の表面に塗布された前記太陽電池セル電極形成ペーストを、前記版胴の回転軸と平行な回転軸を有し、前記版胴と接する円柱状の中間転写体の表面に転写する第2の工程と、
前記中間転写体の表面に転写された前記太陽電池セル電極形成ペーストを、前記中間転写体の周速度と同じ速度で前記中間転写体と接しながら、前記中間転写体の回転方向に移動する前記半導体基板の前記第1の主面上に転写する第3の工程と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項11】
前記表面電極形成層の高さが予め定められた高さとなるまで、前記第1の工程から前記第3の工程までを繰り返し行うことを特徴とする請求項10に記載の太陽電池セルの製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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