説明

太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュール

【課題】本発明は、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る耐熱性、耐候性、防湿性、その他の機械的強度、ガスバリア性などの諸特性に優れ、使用後の廃棄物処理、安全性など環境配慮型の安価な太陽電池モジュール用バックシートおよびそのバックシートを使用した太陽電池モジュールを提供することを目的とするものである。
【解決手段】太陽電池モジュールに使用するバックシートであって、
前記バックシートが、少なくとも、環状オレフィン共重合体フィルムからなることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシートおよびそのバックシートを使用した太陽電池モジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る耐熱性、耐候性、防湿性、その他の諸特性に優れ、使用後の廃棄物処理、安全性など環境配慮型の安価な太陽電池モジュール用バックシートおよびそのバックシートを使用した太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する内外各方面の関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制のために、種々努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は、大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇し、地球環境に重大な影響を及ぼす。化石燃料に代替えするエネルギーとしては、いろいろ検討されているが、クリーンなエネルギー源である太陽光発電に対する期待が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子単体をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年)に亘って素子を保護するため種々パーケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性プラスチックからなる充填材で間隙を埋め、裏面を耐熱、耐候性プラスチック材料などのシートで保護された構成になっている。
【0003】
これらの太陽電池モジュールは、屋外で使用されるため、その構成、材質構造などにおいて、十分な耐久性、耐候性が要求される。特に、裏面保護シート(バックシート)は耐候性と共に水蒸気透過率の小さいことが要求される。これは水分の透過により充填材が剥離、変色したり、配線の腐蝕を起こした場合、モジュールの出力そのものに影響を及ぼす恐れがあるためである。
【0004】
従来、この太陽電池用裏面保護シートしては、ポリフッ化ビニルフイルム(フッ素フィルム)(デュポン社製、商品名「テドラー」)でアルミニウム箔をサンドイッチした積層構造のバックシートが多く用いられていた。しかし、このフッ素フィルムは機械的強度も弱く、太陽電池モジュール製造時に加えられる140〜150℃の熱プレスの熱により軟化し、太陽電池素子電極部の突起物が充填材層を貫通し、さらにバックシートを構成する内面のフッ素フィルムを貫通し、裏面保護シート中のアルミニウム箔に接触することにより、太陽電池素子とアルミニウム箔が短絡して電池性能に悪影響を及ぼすという欠点があったと同時に、ポリフッ化ビニルフイルムは高価であり、太陽電池モジュールの低価格化の点で一つの障害となっている。
【0005】
また、アルミニウム金属箔を使用しているために、使用後の廃棄物焼却時に、焼却炉のロストル(火格子)に燃え残りの金属が詰まる問題や、焼却時にアルミナに変化して、焼却残滓の埋め立て処分時に加湿することによって、焼却残滓中のアルミナに吸着されていた有毒なアンモニアガスが発生してくる問題、また、焼却せずにアルミニウム箔だけを分離して回収することも簡単に行い得ない。
【0006】
また、ポリフッ化ビニルフイルムは、高価である上に、焼却時に有毒ガスが発生する問題も危惧されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの欠点及び障害を改善するために、例えば、ポリアクリルフイルム、塩化ビニルフイルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフイルム、ポリフッ化ビニリデンフイルムその他の種々の代替フイルムが太陽電池モジュール用バックシートとして検討されてきたが、これらのフィルム単体では耐熱性、耐候性、防湿性等の諸機能を満たすことができない。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る耐熱性、耐候性、防湿性、その他の機械的強度、ガスバリア性などの諸特性に優れ、使用後の廃棄物処理、安全性など環境配慮型の安価な太陽電池モジュール用バックシートおよびそのバックシートを使用した太陽電池モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、すなわち、
請求項1に係る発明は、
太陽電池モジュールに使用するバックシートであって、
前記バックシートが、少なくとも、環状オレフィン共重合体フィルムからなることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシートである。
【0010】
請求項2に係る発明は、
前記バックシートが、環状オレフィン共重合体フィルムに他の高分子フィルムを積層してなる請求項1記載の太陽電池モジュール用バックシートである。
【0011】
請求項3に係る発明は、
前記バックシートが、環状オレフィン共重合体フィルムに無機酸化物からなる蒸着高分子フィルムを積層してなる請求項1記載の太陽電池モジュール用バックシートである。
【0012】
請求項4に係る発明は、
前記無機酸化物からなる蒸着高分子フィルムが、高分子フィルム基材の少なくとも片面に、有機官能基を有するシランカップリング剤あるいはシランカップリング剤の加水分解物と、ポリオールおよびイソシアネート化合物との複合物を含むプライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層を順次積層してなることを特徴とする請求項3記載の太陽電池モジュール用バックシートである。
【0013】
請求項5に係る発明は、
前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項3または4記載の太陽電池モジュール用バックシートである。
【0014】
請求項6に係る発明は、
前記高分子フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムから選ばれるいずれかの高分子フィルムであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシートである。
【0015】
請求項7に係る発明は、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュールである。
【0016】
<作用>
本発明により、太陽電池モジュール用バックシートとして、耐熱性、耐候性および防湿
性に優れる環状オレフィン共重合体フィルムを使用することにより、所望の厚さの環状オレフィン共重合体フィルム単体で構成することが可能となり、さらに、この環状オレフィン共重合体フィルムに汎用の高分子フィルムまたは蒸着高分子フィルムを積層することができる構成であるから、機械的強度、ガスバリア性を付与することも可能である。したがって、耐熱性、耐候性、防湿性、機械的強度、ガスバリア性などの諸特性に優れる安価な太陽電池モジュール用バックシートおよびそのバックシートを使用した太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る耐熱性、耐候性、防湿性、その他の機械的強度、ガスバリア性などの諸特性に優れる太陽電池モジュール用バックシートおよびそのバックシートを使用した太陽電池モジュールを提供することができる。
【0018】
また、本発明により、構成材料にアルムニウム金属箔やポリフッ化ビニルフィルムなどを使用していないので、使用後の廃棄物処理、安全性など環境に配慮した環境負荷の少ない太陽電池モジュール用バックシートを提供することができる。
【0019】
また、本発明により、所望の厚さの環状オレフィン共重合体フィルム単体で構成することが可能となり、さらに、この環状オレフィン共重合体フィルムに汎用の高分子フィルムまたは蒸着高分子フィルムを積層することができる構成であるから、従来のバックシートに比較して安価な太陽電池モジュール用バックシートを提供できるので、太陽電池モジュールの低価格化を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の太陽電池モジュール用バックシートの構成の一例を示す断面図である。図2は、本発明の太陽電池モジュール用バックシートの構成の他の例を示す断面図である。図3は、本発明の太陽電池モジュール用バックシートの構成のさらに別の例を示す断面図である。図4は、太陽電池モジュール用バックシートを構成する蒸着高分子フィルムの一例を示す断面図である。図5は、本発明の太陽電池モジュール用バックシートを使用した太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の一例としての太陽電池モジュール用バックシート1は、環状オレフィン共重合体フィルム単体10からなる構成のバックシートである。環状オレフィン共重合体フィルム1の厚さとしては、5〜300μmの範囲のものが使用できる。5μmより薄い厚さであると、フィルムの成膜、モジュールの製造が困難となり、また十分な防湿性も得られない。300μmよりも厚いとフィルム価格の点から経済的ではない。特に、上記の環状オレフィン共重合体フィルム単体の場合は、機械的強度を考慮して50〜300μmの範囲が望ましい。50μmより薄い厚さであると十分な機械的強度が得られない。
【0022】
また、本発明の他の例としての太陽電池モジュール用バックシート2は、図2に示すように、環状オレフィン共重合体フィルム10上に、他の汎用な高分子フィルム20を積層した構成のバックシートである。この積層構成の場合の環状オレフィン共重合体フィルム10の厚さとしては、5〜300μmの範囲が望ましい。厚さが5μmよりも薄いと十分な機械的強度が得られない。
【0023】
また、本発明のさらに別の例としての太陽電池モジュール用バックシート3は、図3に示すように、環状オレフィン共重合体フィルム10上に、無機酸化物からなる蒸着高分子フィルム30を積層した構成のバックシートである。特に、この構成のバックシート3に
は、高度の防湿性とガスバリア性を付与することができる。この積層構成の場合の環状オレフィン共重合体フィルム10の厚みとしては、5〜300μmの範囲が望ましい。厚さが5μmよりも薄いと十分な機械的強度が得られない。
【0024】
本発明で使用される環状オレフィン共重合体フィルム10は、環状オレフィン成分としては、例えば、シクロヘキサンまたはその誘導体、シクロヘプテンまたはその誘導体、シクロオクテンまたはその誘導体、シクロノネンまたはその誘導体、シクロデセンまたはその誘導体、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンまたはその誘導体,テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンまたはその誘導体,ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンまたはその誘導体,オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,10.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4ヘキサデセンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4,10−ペンタデカジエンまたはその誘導体,ペンタシクロ[4.7.0.12,5.08,13.19,12]−3−ペンタデセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[7.8.0.13,6.02,7.110,17.011,16.112,15]−4−エイコセンまたはその誘導体,ノナシクロ[9.10.1.14,7.03,8.02,10.012,21.113,20.014,19.115,19]−5−ペンタセコンまたはその誘導体等をあげることができ、これら1成分でも2成分以上でもよい。
【0025】
さらに、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンまたはその誘導体,テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンまたはその誘導体,ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンまたはその誘導体,オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,10.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4ヘキサデセンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4,10−ペンタデカジエンまたはその誘導体,ペンタシクロ[4.7.0.12,5.08,13.19,12]−3−ペンタデセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[7.8.0.13,6.02,7.110,17.011,16.112,15]−4−エイコセンまたはその誘導体,ノナシクロ[9.10.1.14,7.03,8.02,10.012,21.113,20.014,19.115,19]−5−ペンタセコンまたはその誘導体等の開環物及びその水素添加物をあげることができ、これら1成分でも2成分以上でもよい。
【0026】
また、環状オレフィン成分を含有させるオレフィンの成分としては、例えば、エチレン,及びプロピレン,1−ブテン,1ーペンテン,4−メチル−ペンテン,3−メチル−ペンテン,1−ヘキセン,1−ヘプテン,1−オクテン,1−ノネン,1−デセン等をあげることができ、これら1成分でも2成分以上でも良い。
【0027】
環状オレフィン成分を含有させた環状オレフィン共重合体において、エチレン成分等オレフィン成分に由来する構造単位は40〜95モル%の範囲、環状オレフィン成分に由来する構造単位は、通常5〜60モル%の範囲が適当である。
【0028】
さらに、環状オレフィン共重合体として、環状オレフィンを開環共重合した開環共重合体及びその水素添加体を用いることができる。例えばビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンまたはその誘導体,テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンまたはその誘導体,ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンまたはその誘導体,オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,10.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4ヘキサデセンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセンまたはその誘導体,トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンまたはその誘導体,ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4,10−ペンタデカジエンまたはその誘導体,ペンタシクロ[4.7.0.12,5.08,13.19,12]−3−ペンタデセンまたはその誘導体,ヘプタシクロ[7.8.0.13,6.02,7.110,17.011,16.112,15]−4−エイコセンまたはその誘導体,ノナシクロ[9.10.1.14,7.03,8.02,10.012,21.113,20.014,19.115,19]−5−ペンタセコンまたはその誘導体等の単独開環重合体または2成分以上の開環共重合体及びこれらの水素添加体をあげることができる。
【0029】
本発明で使用される高分子フィルム20としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムなどの汎用の高分子フィルムが好適に用いられる。ただし、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の高分子フィルムも使用することができる。
【0030】
本発明で使用される蒸着高分子フィルム30としては、図4に示すように、高分子フィルム基材31の少なくとも片面に、有機官能基を有するシランカップリング剤あるいはシランカップリング剤の加水分解物と、ポリオールおよびイソシアネート化合物との複合物を含むプライマー層32、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層33、ガスバリア性被膜層34を順次積層した蒸着高分子フィルムが用いられる。
【0031】
以下、この蒸着高分子フィルム30について詳細に説明する。
【0032】
高分子フィルム基材31はプラスチック材料からなるフィルムであり、無機酸化物薄膜層の透明性を生かすために透明なフィルムが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリフィルム、ポリカーボネートフィルムなどが用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。特に、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。またこのプラスチック基材1の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。
【0033】
高分子フィルム基材31の厚さはとくに制限を受けるものではないが、バックシートとしての適性、や積層するプライマー層32、無機酸化物薄膜層33、または被膜層34を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲で、用途によって6〜30μmとすることが好ましい。
【0034】
本発明のプライマー層32は、高分子フィルム基材31上に設けられ、高分子フィルム基材31と無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層33との間の密着性を高め、デラミネーションの発生等を防止することを目的とする。上記の目的を達成するためにプライマー層32として用いることができるのは、有機官能基を有するシランカップリング剤、あるいはその加水分解物と、ポリオールおよびイソシアネート化合物等との複合物である必要がある。
【0035】
さらに、プライマー層32を構成する複合物について詳細に説明する。前記シランカップリング剤の例としては、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤或いはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0036】
さらに、これらのシランカップリング剤のうち、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基を含むものや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N―β―(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むものがある。さらにγ―グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ―(3、4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むものや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β―メトキシエトキシ)シラン等のようなシランカップリング剤にアルコール等を付加し水酸基等を付加したものでも良く、これら1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0037】
これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシアネート化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固なプライマー層を形成し、他端のアルコキシ基またはアルコキシ基の加水分解によって生成したシラノール基が無機酸化物中の金属や、無機酸化物の表面の極性の高い水酸基等と強い相互作用により無機酸化物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。よって上記プライマー層としてシランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
【0038】
また、ポリオールとは高分子末端に、2つ以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。このポリオールとして、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールもしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオールが好ましい。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを重合させたアクリルポリオールや、前記アクリル酸誘導体とスチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性、シランカップリング剤との相溶性を考慮する
と前記アクリルポリオールのヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0039】
アクリルポリオールとシランカップリング剤の配合比は、重量比で1/1から1000/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1から100/1の範囲にあることである。溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独および任意に配合されたものを用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いる場合には、共溶媒としてイソプロピルアルコール等のアルコール類と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0040】
さらに、イソシアネート化合物は、アクリルポリオールなどのポリオールと反応してできるウレタン結合によりプラスチック基材や無機酸化物との密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。前記機能を発揮するイソシアネート化合物の具体例としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、もしくは誘導体の1種、またはこれらの2種以上用いることができる。
【0041】
ここで、アクリルポリオールとイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるのもではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでアクリルポリオールとインソシアネート化合物との配合比としては、イソシアネート化合物由来のNCO基がアクリルポリオール由来のOH基の50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのはNCO基とOH基が当量で配合される場合である。混合方法は、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0042】
プライマー層32は、シランカップリング剤、ポリオール、イソシアネート化合物を任意の濃度で混合した複合溶液を製作し、高分子フィルム基材41にコーティング、乾燥硬化して形成する。プライマー層32を形成するプライマー剤は具体的には、シランカップリング剤とポリオールを混合し、溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して作成する。前記方法以外にシランカップリング剤とポリオールを溶媒中混合しておき予めシランカップリング剤とポリオールを反応させたものを溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物加えて作製する方法などがある。
【0043】
前記プライマー剤にさらに各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を添加する事も可能である。
【0044】
プライマー層32は、プライマー剤を、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用い高分子フィルム基材31の上にコーティングし、その後コーティング膜を乾燥乾燥し溶媒等を除去し硬化させることによって形成する。
【0045】
プライマー層32の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、
一般的に0.01〜2μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は厚いために塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。特に好ましいのは0.05〜0.5μmの範囲内にあることである。
【0046】
次に、無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層33は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであればよい。その中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素が好ましい。ただし、本発明の無機酸化物薄膜層43は、上述した無機酸化物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば用いることができる。
【0047】
無機酸化物薄膜層33の厚さは、用いられる無機化合物の種類、構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は無機酸化物薄膜層にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、無機酸化物薄膜層に亀裂を生じる危惧がある。好ましくは、10〜150nmの範囲内である。
【0048】
無機酸化物薄膜層33をプライマー層32上に形成する手段としては各種手段が可能であるが、真空蒸着法により形成することが一般的である。この真空蒸着法以外の手段としてスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。この真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかを適宜用いればよい。また無機酸化物薄膜層とプラスチック基材の密着性及び無機酸化物薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、無機酸化物薄膜層の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなど吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0049】
無機酸化物薄膜層33上に設けられたガスバリア性被膜層34は、無機酸化物薄膜層33を保護し、さらに高いガスバリア性を付与するための層である。
【0050】
上記のガスバリア性被膜層34の高いガスバリア性を付与する形成材料としては、例えば、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物からなるもの、さらには、前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、またはこれらの混合物のいずれかからなる溶液を塗布形成したものである。高いガスバリア性を付与する被膜層の他の例としては、水溶性高分子と塩化銀からなるもの、さらには前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールからなる溶液を塗布形成したものである。具体的には、水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいは前記溶液に金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を無機酸化物薄膜層33にコーティング、加熱乾燥し形成したものである。ガスバリア性被膜層34を形成する各成分についてさらに詳細に説明する。
【0051】
本発明のガスバリア性被膜層34を形成するために用いられる水溶性高分子の具体例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(PVA)がガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビ
ニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVAまでを含み、特に限定されない。
【0052】
また、塩化錫は塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl4)、あるいはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0053】
さらに、金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などの一般式、M(OR)n(M:Si、Ti、Al、Zr等の金属、R:CH3、C25等のアルキル基)で表せるものである。中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0054】
上述した各成分を単独、またはいくつかを組み合わせてガスバリア性被膜層34を形成することができ、さらに、ガスバリア性被膜層のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの添加剤を加えてもよい。
【0055】
例えば、ガスバリア性被膜層34に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(TTI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)などのモノマー類と、これらの重合体、または誘導体などがある。
【0056】
ガスバリア性被膜層34を形成するためのコーティング剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法などの従来公知の手段を用いることができる。また被膜層の厚さは、被膜層を形成するコーティング剤の種類や加工条件によって異なるが、乾燥後の厚さが0.01μm以上あれば良いが、厚さが50μm以上では膜にクラックが生じ易くなるため、0.01〜50μmの範囲が好ましい。
【0057】
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの環状オレフィン共重合体フィルム上に汎用の高分子フィルムや蒸着高分子フィルムを積層する方法としては、ドライラミネーション法、共押出しミネーション法などの公知の方法で積層することができる。接着剤としては、接着強度が長期間の屋外使用で劣化によるデラミネーションなどを生じないこと、さらに接着剤が黄変しないことなどが必要であり、例えば、ポリウレタン系接着剤などが使用できる。上記の接着剤は、例えば、ロ−ルコ−ト法、グラビアロ−ルコ−ト法、キスコ−ト法、その他等のコ−ト法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、そのコ−ティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位が望ましい。
【0058】
次に、上記構成の本発明の太陽電池モジュール用バックシート(裏面保護シート)を使用して太陽電池モジュ−ルを製造する方法について図5を参照して説明する。かかる製造法としては、公知の方法、例えば、太陽電池モジュ−ル用表面保護シ−ト44、充填剤層42、配線43を配設した光起電力素子としての太陽電池素子41、充填剤層42、および、本発明のバックシート1(2,3)を順次に積層し、さらに、必要ならば、各層間に、その他の素材を任意に積層し、次いで、これらを、真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネ−ション法等の通常の成形法を利用し、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、枠体(スペーサー)45を装着して太陽電池モジュ−ルを製造することができる。
【0059】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する通常の太陽電池モジュ−ル用表面保護シ−ト44と
しては、太陽光の透過性、絶縁性等を有し、さらに、耐候性、耐熱性、耐光性、耐水性、防湿性、防汚性、その他等の諸特性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、極めて耐久性に富み、さらに、光起電力素子としての太陽電池素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。上記の表面保護シ−トとしては、具体的には、公知のガラス板等、さらに、例えば、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、アセタ−ル系樹脂、その他等の各種の高分子フィルムないしシ−トを使用することもできる。
【0060】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する太陽電池モジュ−ル用表面保護シ−ト44の下に積層する充填剤層42としては、太陽光が入射し、これを透過して吸収することから透明性を有することが必要であり、また、表面保護シ−トおよびバックシート(裏面保護シ−ト)との接着性を有することも必要であり、光起電力素子としての太陽電池素子の表面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、さらには、光起電力素子としての太陽電池素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。具体的には、上記の充填剤層としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸、または、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、シリコ−ン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。なお、本発明においては、太陽光の入射側の充填剤としては、耐光性、耐熱性、耐水性等の耐候性を考慮すると、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が望ましい素材である。
【0061】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する光起電力素子としての太陽電池素子41としては、従来公知のもの、例えば、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型あるいはタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe2)等のII−VI族化合物半導体太陽電子素子、有機太陽電池素子、その他等を使用することができる。さらに、薄膜多結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜微結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜結晶シリコン太陽電池素子とアモルファスシリコン太陽電池素子とのハイブリット素子等も使用することができる。
【0062】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する光起電力素子41の下に積層する充填剤層42としては、上記の太陽電池モジュ−ル用表面保護シ−トの下に積層する充填剤層と同材質のものが使用できる、バックシート(裏面保護シート)との接着性を有することも必要であり、光起電力素子としての太陽電池素子の裏面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、さらには、光起電力素子としての太陽電池素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。
【0063】
上記太陽電池モジュ−ルの枠体(スペーサー)45としては、一般的にはアルミニウム型材が使用される。
【0064】
以下に、本発明における具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0065】
厚さ100μmの環状オレフィンコポリマーフィルム単体(原料樹脂名、ポリプラスチック(株)製「Topas」)を太陽電池モジュール用バックシートとして使用し、150℃、30分、1torrの条件で真空加熱によりラミネートして、図5に示す構成の太陽電池モジュ−ルを作成した。
【実施例2】
【0066】
実施例1と同材質からなる厚さ75μmの環状オレフィンコポリマーフィルムに下記の厚さ12μmの蒸着高分子フィルムをウレタン系接着剤層(三井武田ケミカル(株)製、主剤タケラックA511/硬化剤A50を10/1で混合、塗布量5g/m2)介して積層した積層フィルムを太陽電池モジュール用バックシートとして使用し、実施例1と同様にして太陽電池モジュ−ルを作成した。
【0067】
<蒸着高分子フィルム>
プラスチック基材1として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、プライマー層2としてプライマー剤Aをグラビアコート法により厚さ0.2μm(乾燥膜厚)形成した。次いでプライマー層2上に電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させそこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物薄膜層3を形成した。更にその上に下記組成のコーティング剤をグラビアコーターで塗布し乾燥機で100℃、1分間乾燥させ、厚さ0.3μmの被膜層4を形成した蒸着高分子フィルムを得た。コーティング剤の組成は、(1)液と(2)液を配合比(wt%)で60/40に混合したものを用いた。ここで、(1)液はテトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2 換算)の加水分解溶液、(2)液はポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)である。
【0068】
<プライマー剤A>
希釈溶媒(酢酸エチル)中、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン1重量部に対し、アクリルポリオールを5重量部を量りとり混合し、攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてトリイジルイソシアネート(TDI)をアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度に希釈したものをプライマー剤Aとする。
【実施例3】
【0069】
本発明の太陽電池モジュ−ルと性能を比較するための比較例として、
厚さ38μmのフッ素フィルム(デュポン社製「テドラー」)に、実施例2と同様のウレタン系接着剤層を介して、厚さ20μmのアルミニウム金属箔を積層し、同様のウレタン系接着剤層を介して、さらに上記厚さ38μmのフッ素フィルムを積層した3層構成の積層フィルムを太陽電池モジュール用バックシートとして使用し、実施例1と同様にして太陽電池モジュ−ルを作成した。
【実施例4】
【0070】
本発明の太陽電池モジュ−ルと性能を比較するための比較例として、
厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、「S10」)単体を太陽電池モジュール用バックシートとして使用し、実施例1と同様にして太陽電池モジュ−ルを作成した。
【実施例5】
【0071】
本発明の太陽電池モジュ−ルと性能を比較するための比較例として、
厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、「S10」)に、実施例2と同様の蒸着高分子フィルムを実施例2と同様のウレタン系接着剤層を介して積層した積層フィルムを太陽電池モジュール用バックシートとして使用し、実施例1と同様にして太陽電池モジュ−ルを作成した。
【0072】
上記で得られた太陽電池モジュール用バックシートについて、下記の評価方法に基づき
防湿性および耐候性試験を実施し、また作成した太陽電池モジュ−ルについては出力試験を実施して評価した。その評価結果を表1に示す。なお、表1には環境対応、コストについて比較評価および各評価項目について優(◎)、良(○)、不可(×)の3段階評価も示してある。
【0073】
<防湿性評価>
JIS K7129に準拠して、40℃、90%RHの条件で実施した。
【0074】
<耐候性評価>
バックシートを80℃、90%RHの環境下で3000時間保存後の外観および物性劣化の度合いを評価した。
【0075】
<出力試験>
太陽電池モジュ−ルを85℃、90%RHの環境下で500時間保存後の電池の出力試験を行った。
【0076】
【表1】

【0077】
表1より、実施例3で得られた太陽電池モジュール用バックシートは、フッ素フィルムおよびアルミニウム金属箔をを含む構成であるから環境対応性、コスト面で問題がある。また、実施例4、5で得られた太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュールは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた構成であるから、PETフィルム特有の加水分解性に起因する耐久性が低下し、防湿性、耐候性、出力試験での問題がある。蒸着PETフィルムを積層したとしても、なお耐候性に問題が生じる。これに対して、実施例1、2で得られた本発明の太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュールは、実施例3〜5で得られた比較例としての太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュールに比較して、防湿性、耐候性、出力試験、環境対応性、コストのいずれにおいても満足できるものである。
【0078】
このことは、本発明により、太陽電池モジュール用バックシートとして、耐熱性、耐候性および防湿性に優れる環状オレフィン共重合体フィルムを使用することにより、所望の厚さの環状オレフィン共重合体フィルム単体で構成することが可能となり、さらに、この環状オレフィン共重合体フィルムに汎用の高分子フィルムまたは蒸着高分子フィルムを積層することができる構成であるから、機械的強度、ガスバリア性を付与することも可能である。したがって、耐熱性、耐候性、防湿性、機械的強度、ガスバリア性などの諸特性に優れる太陽電池モジュール用バックシートおよびそのバックシートを使用した太陽電池モジュールを提供することができる。
【0079】
そして、本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、構成材料にアルムニウム金属箔やフッ素フィルムなどを使用していないので、使用後の廃棄物処理、安全性など環境に配慮した環境負荷の少なく、所望の厚さの環状オレフィン共重合体フィルム単体で構成することが可能となり、さらに、この環状オレフィン共重合体フィルムに汎用の高分子フィルムまたは蒸着高分子フィルムを積層することができる構成であるから、従来のバックシートに比較して安価な太陽電池モジュール用バックシートを提供できるので、太陽電池モジュールの低価格化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の太陽電池モジュール用バックシートの構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュール用バックシートの構成の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュール用バックシートの構成のさらに別の例を示す断面図である。
【図4】太陽電池モジュール用バックシートを構成する蒸着高分子フィルムの構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュール用バックシートを使用した太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1、2、3・・・バックシート(裏面保護シート)
10・・・環状オレフィン共重合体フィルム
20・・・高分子フィルム
30・・・蒸着高分子フィルム
31・・・高分子フィルム基材層
32・・・プライマー層
33・・・蒸着薄膜層
34・・・ガスバリア被膜層
40・・・太陽電池モジュール
41・・・太陽電池素子
42・・・充填材
43・・・配線
44・・・表面保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールに使用するバックシートであって、
前記バックシートが、少なくとも、環状オレフィン共重合体フィルムからなることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項2】
前記バックシートが、環状オレフィン共重合体フィルムに他の高分子フィルムを積層してなる請求項1記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項3】
前記バックシートが、環状オレフィン共重合体フィルムに無機酸化物からなる蒸着高分子フィルムを積層してなる請求項1記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項4】
前記無機酸化物からなる蒸着高分子フィルムが、高分子フィルム基材の少なくとも片面に、有機官能基を有するシランカップリング剤あるいはシランカップリング剤の加水分解物と、ポリオールおよびイソシアネート化合物との複合物を含むプライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層を順次積層してなることを特徴とする請求項3記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項5】
前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項3または4記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項6】
前記高分子フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムから選ばれるいずれかの高分子フィルムであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−294780(P2006−294780A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111748(P2005−111748)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】