説明

太陽電池モジュール用保護シート及び太陽電池モジュール並びに太陽電池モジュールの製造方法

【課題】気泡の残留を抑制し、長期間の使用に耐えうる太陽電池モジュール用保護シートの提供。
【解決手段】基材シートと、該基材シートの一方の面に積層された、示差走査熱量測定法(DSC法)における融点が130℃未満である熱融着性樹脂からなる熱融着性シートとを有し、該熱融着性シートの表面に空気流通性経路を有することを特徴とする太陽電池モジュール用保護シート、及びそれを用いた太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用保護シート、及びそれを備えた太陽電池モジュール、並びに太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である太陽電池モジュールは、二酸化炭素を排出せずに発電できるシステムとして注目されている。その太陽電池モジュールには、高い発電効率とともに、屋外で使用した場合にも長期間の使用に耐えうる耐久性が求められている。
太陽電池モジュールの主な構成は、光発電素子である太陽電池セル、それらを密閉状態で内包する封止材、および保護シートからなる。太陽電池モジュールの受光面側(フロント側)とそのバック側には、それぞれフロント保護シートとバック保護シートが接着されており、太陽電池モジュール内への水蒸気の浸入を防いでいる。このような太陽電池モジュール用保護シートには、優れた水蒸気バリア性、耐候性が求められ、かつ太陽電池モジュールの封止材との接着性に優れることが要求されている。
従来、太陽電池モジュール用保護シートとして、水蒸気バリア性、耐候性、封止材への密着性を改善するための技術として、例えば、特許文献1〜3に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、透明性耐候性樹脂よりなる紫外線遮断性フィルムと、その内面に積層されたガラス転移温度が80℃以上の非晶質環状オレフィン共重合体よりなるフィルムとの積層体からなる太陽電池モジュール用保護層が開示されている。
特許文献2には、環状オレフィンコポリマーを用いたことを特徴とする表面保護シート及び環状オレフィンコポリマーフィルムの内面に接着剤層を介してPETフィルム等の樹脂フィルムを積層した表面保護シートが開示されている。
特許文献3には、環状オレフィン共重合体からなる層の両面にエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる層が存在している太陽電池モジュール用保護シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−306948号公報
【特許文献2】特開2006−165434号公報
【特許文献3】特開2006−198922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された従来の保護シートは、保護シートと封止材とをラミネートにより密着させる工程において、周囲の空気を巻き込んで、封止材と保護シートとの間に気泡として残留するという問題があった。該空気が残留した場合、封止材と保護シートとが徐々に剥離し、太陽電池モジュール全体の機能が損なわれることがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、気泡の残留を抑制し、長期間の使用に耐えうる太陽電池モジュール用保護シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、基材シートと、該基材シートの一方の面に積層された、示差走査熱量測定法(DSC法)における融点が130℃未満である熱融着性樹脂からなる熱融着性シートとを有し、該熱融着性シートの表面に空気流通性経路を有することを特徴とする太陽電池モジュール用保護シートを提供する。
【0007】
本発明の太陽電池モジュール用保護シートにおいて、前記熱融着性シートが、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有し、該熱融着性シートにおける酢酸ビニル(VA)含有量が20質量%以下であることが好ましい。
【0008】
本発明の太陽電池モジュール用保護シートにおいて、前記基材シートの熱融着性シートが積層された面とは反対の面に、さらにフッ素含有樹脂層が積層されていてもよい。
【0009】
本発明の太陽電池モジュール用保護シートにおいて、前記基材シートが樹脂シートであってもよい。
【0010】
また、本発明は、本発明に係る前記太陽電池モジュール用保護シートがフロント側またはバック側の一方、または両方に接着されてなる太陽電池モジュールを提供する。
【0011】
さらに、本発明は、本発明に係る前記太陽電池モジュール用保護シートを、太陽電池セルを内包する封止材の表面に、真空熱圧着法を用いて積層する太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、太陽電池モジュール用保護シートが、基材シートと、該基材シートの一方の面に積層された、示差走査熱量測定法(DSC法)における融点が130℃未満である熱融着性樹脂からなる熱融着性シートとを有し、該熱融着性シートの表面に空気流通性経路を有することにより、封止材と保護シートとの間の気泡の残留を抑制し、長期間の使用に耐えうる太陽電池モジュール用保護シートおよび太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第一の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の熱融着性シートの格子形状の空気流通性経路を示す平面図である。
【図3】本発明の熱融着性シートの斜め格子形状の空気流通性経路を示す平面図である。
【図4】本発明の熱融着性シートの空気流通性経路を示す断面図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第二の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[太陽電池モジュール用保護シート]
以下、本発明の太陽電池モジュール用保護シートの実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
(1)第一の実施形態
図1に示す第一の実施形態の太陽電池モジュール用保護シート10A,20Aは、基材シート24と、基材シート24の一方の面に積層された熱融着性シート22を有する。
本発明の太陽電池モジュール用保護シート10A,20Aにおいて、熱融着性シート22は、DSC法における融点が130℃未満である熱融着性樹脂からなり、熱融着性シート22は表面に空気流通性経路22aを有する。DSC法における融点が130℃未満である熱融着性シート22が熱圧着の際に融解することにより、熱圧着後に熱融着性シート22の表面に形成された空気流通性経路22aが消失し、良好に気泡が低減し、接着性を向上させることができる。
【0016】
前記熱融着性樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、エチレンメタクリル酸共重合体(EMMA)、エチレンアクリル酸共重合体(EMAA)、エチレングリシジルメタクリレート共重合体(EGMA)等を含有する樹脂が好ましく、EVAを含有する樹脂がより好ましい。一般に、太陽電池モジュールを構成する封止材30がEVAからなる封止樹脂であることが多く、その場合において、熱融着性シート22がEVAを含有する樹脂からなることにより、封止材30と熱融着性シート22との適合性および接着性を向上させることができる。
【0017】
熱融着性シート22がEVAを含有する場合、熱融着性シート22におけるVA含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
太陽電池モジュールを構成する封止材30には、EVAからなる封止樹脂が主に用いられているが、封止材中のVA含有量は一般に25〜40質量%であり、DSC法における融点は40〜75℃であることが多い。EVA含有樹脂においては、該樹脂中のVA含有量が多いほど耐熱性に劣る。
したがって、本発明における熱融着性シート22は、VA含有量を一般的な封止材30のVA含有量と比較して低くすることにより、該熱融着性シート22の融点を一般的な封止材30の融点よりも高く設定している。よって、ラミネートを用いて徐々に昇温を行い、太陽電池モジュール用保護シートを封止材30に積層する際、封止材30が先に溶解し、さらに昇温された後、熱融着性シート22が溶解することにより、封止材30と熱融着性シート22とが接着される。本発明においては、融点が高く、溶解するタイミングが遅い熱融着性シート22に空気流通性経路22aを設けることにより、効率的に気泡の低減がなされる。前記熱融着性樹脂は、熱融着性の観点から、DSC法における融点が130℃未満であり、120℃未満が好ましい。また、気泡低減の効率性から、DSC法における融点が80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
【0018】
熱融着性シート22の厚さは、熱融着性シート22を構成する熱融着性樹脂の種類によって適宜調整すればよく、通常、当該シート22の厚さは1〜200μmの範囲であることが好ましい。より具体的には、前記熱融着性シート22がEVAを含有するシートである場合には、軽量性および電気絶縁性等の観点から、当該EVAシートの厚さは、10〜200μmの範囲であることが好ましく、50〜150μmの範囲であることがより好ましく、80〜120μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0019】
空気流通性経路22aは、熱融着性シート22の表面(基材シートが積層された面とは反対の面)に溝を形成してなるものである。
空気流通性経路22aの形成方法は、特に限定されず、エンボスロールを使用したエンボス加工等で直接形成する方法や、表面に凹凸形状を付与した工程シート上に流延法等で製膜する方法等を用いることができる。
空気流通性経路22aの溝の形状(凹部)は、気泡の低減に好ましい形状であれば特に限定されず、平面視、格子形状、斜め格子形状、ハニカム形状、複数の並列した直線状又は曲線状の帯形状又は格子形状に設けた形状、不定形の形状であってもよい。図2は格子形状の空気流通性経路をエンボス模様として施した本願熱融着性シート22の平面図、図3は斜め格子形状の空気流通性経路をエンボス模様として施した本願熱融着性シート22の平面図である。
空気流通性経路22aの溝の大きさは、形成する溝の形状等によって適宜調整すればよく、図2、図3、および図4のように格子状の溝を形成する場合、c、d、g、h、およびkで示す格子状の溝の幅が10〜1000μmの範囲であることが好ましい。
空気流通性経路22aの溝の断面形状は、気泡の低減に好ましい形状であれば特に限定されず、図4に示す逆台形型以外に、四角形型、三角形型、V字型、U字型等が挙げられる。
空気流通性経路22aの溝の深さは、溝を形成する前記熱融着性シート22の厚さ等によって適宜調整すればよく、iで示す溝の深さは、1〜100μmの範囲であることが好ましい。
空気流通性経路22aの溝と溝との隙間(凸部)は、形成する溝の形状、大きさ等によって適宜調整すればよく、図2、図3、および図4のように格子状の溝を形成する場合、a、b、e、f、およびjで示す溝と溝との隙間は10〜10000μmの範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明の太陽電池モジュール用保護シート10A,20Aにおける基材シート24としては、樹脂シートであってもよく、樹脂シートでなくてもよいが、柔軟性、軽量性などの面から樹脂シートであることが好ましい。
ただし、基材シート24として光透過性を有さないものを用いた場合は、当該太陽電池モジュール用保護シート10A,20Aは、太陽電池モジュールのフロント側を保護するフロント保護シート10Aとしては用いられず、太陽電池モジュールのバック側を保護するバック保護シート20Aとして用いられる。
【0021】
前記樹脂シートとしては、太陽電池モジュール用保護シートにおける樹脂シートとして一般に用いられるものが選択される。樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエステルウレタン、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミド等のポリマーからなるシートが挙げられる。なかでも、電気絶縁性、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性および成形性が良好であることから、PET、PBT、PEN等のポリエステルからなるシートが好ましく、PETシートがより好ましい。
【0022】
前記樹脂シートの厚さは、太陽電池モジュールに要求される電気絶縁性に基づいて適宜調整すればよく、通常、10μm〜300μmの範囲であることが好ましい。より具体的には、樹脂シートがPETシートである場合、軽量性および電気絶縁性の観点から、その厚みが10μm〜300μmの範囲であることが好ましく、30μm〜200μmの範囲であることがより好ましい。
【0023】
また、前記樹脂シートには、本発明の効果を損なわない限りにおいて、耐候性、耐湿性等を高めるための表面改質処理が施されていてもよい。例えば前記PETシートにシリカ(SiO)および/またはアルミナ(Al)を蒸着することにより、当該太陽電池モジュール用保護シートの耐候性、耐湿性等を高めることができる。なお、当該シリカおよび/またはアルミナの蒸着処理は、前記樹脂シートの両面に行なわれてもよく、いずれか一方の面にのみ行われてもよい。
【0024】
熱融着性シート22の空気流通性経路22aを形成した面とは反対の面(裏面)に、基材シート24を積層する方法としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されず、基材シート24と熱融着性シート22との間に、さらに接着層23を設けて、該接着層23を介して、基材シート24と熱融着性シート22を積層させることができる。
【0025】
接着層23としては、基材シート24と、熱融着性シート22とに対して接着性を有する接着剤を含むものであることが好ましい。
該接着剤としては、特に限定されず、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤等を挙げることができる。また、接着性を向上させるために、熱接着性シート22、および基材シート24の当該接着層側の面をコロナ処理および/または化学薬品処理してもよい。
【0026】
(2)第二の実施形態
図5に示す第二の実施形態の太陽電池モジュール用保護シート10B,20Bは、基材シート24と、基材シート24の一方の面に積層された熱融着性シート22とを有し、基材シート24の熱融着性シート22が積層された面とは反対の面にフッ素含有樹脂層25が積層されている。フッ素含有樹脂層25を設けることにより、耐候性および耐薬品性を向上させることができる。したがって、太陽電池モジュール用保護シートの耐候性および耐薬品性を向上させるためには、フッ素含有樹脂層25が、太陽電池モジュール用保護シートにおける基材シート24の一方の面に設けられることが好ましい。
図5において、図1に示した太陽電池モジュール用保護シート10A,20Aと同じ構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
本発明の太陽電池モジュール用保護シート10B,20Bにおいて、フッ素含有樹脂層25は、フッ素含有樹脂を含む塗料を、基材シート24の熱融着性シート22が積層された面とは反対の面に所望の厚さの塗膜となるように塗布後、乾燥硬化することにより形成することができる。
【0028】
前記フッ素含有樹脂を含む塗料としては、本発明の効果を損なわず、乾燥硬化後にフッ素含有樹脂層25を形成するものであれば特に制限されず、溶剤に溶解又は水に分散されたもので、基材シート24の一方の面に塗布可能なものであればよい。
【0029】
前記塗料に含まれるフッ素含有樹脂としては、本発明の効果を損なわず、フッ素を含有する樹脂であれば特に限定されないが、前記塗料の溶媒(有機溶媒または水)に溶解し、架橋可能であるものが好ましい。
当該フッ素含有樹脂の好ましい例としては、旭硝子株式会社製のLUMIFLON(商品名)、セントラル硝子株式会社製のCEFRAL COAT(商品名)、DIC株式会社製のFLUONATE(商品名)等のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類や、ダイキン工業株式会社製のZEFFLE(商品名)等のテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類や、E.I.du Pont de Nemours and Company製のZonyl(商品名)、ダイキン工業株式会社製のUnidyne(商品名)等のフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類が挙げられる。これらの中でも、耐候性および顔料分散性等の観点から、CTFEを主成分としたポリマーおよびTFEを主成分としたポリマーがより好ましく、なかでも前記LUMIFLON(商品名)および前記ZEFFLE(商品名)が最も好ましい。
【0030】
前記塗料としては、前記フッ素含有樹脂の他に、架橋剤(硬化剤)、触媒(架橋促進剤)、および溶媒を含んでいてもよく、さらに必要であれば、顔料、染料および充填剤などの無機・有機化合物を含んでいてもよい。
【0031】
前記塗料の組成としては、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、例えば前記LUMIFLON(商品名)をベースとした塗料の組成物として、前記LUMIFLON(商品名)、顔料、架橋剤、溶媒および触媒を混合してなるものが挙げられる。該組成比としては、該塗料全体を100質量%としたときに、LUMIFLON(商品名)は3〜80質量%が好ましく、25〜50質量%がより好ましく、顔料は5〜60質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、有機溶媒は20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
【0032】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、図6の模式図で示すように、本発明に係る太陽電池モジュール用保護シート10,20を、太陽電池セル40を内包する封止材30からなる封止面に積層させることにより、当該太陽電池モジュール50内の太陽電池セル40および封止材30を、風雨、湿気、砂埃、機械的な衝撃などから守り、当該太陽電池モジュール50の内部を外気から遮断して密閉した状態に保つことができる。
【0033】
本発明の太陽電池モジュール用保護シートは、フロント保護シート10としても、バック保護シート20としても好ましく用いられるものであるが、光透過性の観点から、バック保護シート20としてより好ましく用いられる。
【0034】
[太陽電池モジュールの製造方法]
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、本発明に係る太陽電池モジュール用保護シート10,20を、太陽電池セルを内包する封止材30の表面に、真空熱圧着法を用いて積層する工程を含む。
本発明の太陽電池モジュール用保護シート10,20を封止材30の表面に積層させる場合、太陽電池モジュール用保護シート10,20における熱融着性シート面を封止材30の表面に積層させる。
真空熱圧着法の際の温度は、120℃〜150℃を最高温度として、徐々に昇温させることが好ましい。
【実施例】
【0035】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
Tダイ押し出し製膜機によりEVA(三井・デュポンポリケミカル社製;エバフレックスV5961、エチレン/酢酸ビニル=91:9(質量比)、DSC法における融点97℃)を100μmの厚みで製膜した。製膜したEVAフィルムに、金属ロールを用いたエンボスにより、凹凸部が、図2に示す所定形状の格子形状に形成されてなる形状転写面を形成した。ここでa、bは3000μm、c、dは500μm、溝の深さは50μm、溝の断面形状は四角とした。厚み125μmの耐加水分解ポリエステルフィルム(帝人・デュポンフィルム社製:メリネックス238)上にウレタン系接着剤(三井ポリウレタン製;A−515と三井ポリウレタン製;A−3とを9:1の割合で混合)をマイヤーバーで塗布して、80℃、1分間乾燥して10μmの接着剤層を形成した。この形成した接着剤面と製膜したEVAフィルムの非エンボス面とをラミネートして、太陽電池モジュール用保護シートを作製した。
【0037】
[実施例2]
実施例1と同様に製膜したEVAフィルムに、金属ロールを用いたエンボスにより、凹凸部が、図3に示す所定形状の斜め格子形状に形成されてなる形状転写面を形成した以外は、実施例1と同様に太陽電池モジュール用保護シートを作製した。ここでe、fは5000μm、g、hは100μm、溝の深さは40μm,溝の断面形状は四角とした。
【0038】
[実施例3]
フッ素含有樹脂を含む塗料として、LUMIFLON Lf−200(商品名、旭硝子社製)100質量部と、スミジュール3300(商品名、住化バイエルウレタン社製)10質量部と、タイピュアR105(商品名、デュポン社製)30質量部とを混合した混合物を調製した。アニール処理ポリエステルフィルム(帝人・デュポン社製:メリネックスSA、厚み125μm)の一方の面に、バーコーターを用いて、このフッ素含有樹脂を含む塗料を塗布し、130℃にて1分間乾燥、硬化させて、厚み15μmのフッ素含有樹脂層を形成した。
次いで、アニール処理ポリエステルフィルムのフッ素含有樹脂層を形成した面とは反対側の面に、実施例1と同様にして接着剤層を形成した。この形成した接着剤面と、実施例1と同様に製膜し形状転写面を形成したEVAフィルムの非エンボス面とをラミネートして、太陽電池モジュール用保護シートを作製した。
【0039】
[比較例1]
エンボス処理を行っていないEVAフィルムを用いた以外は上記実施例1と同様に太陽電池モジュール用保護シートを作製した。
【0040】
<気泡残存評価>
太陽電池モジュール用保護シート(100mm×100mm)と封止材用EVA(三井ファブロ社製;SC−4、DSC法における融点72℃、600μm×100mm×100mm)を積層し、さらに封止材用EVA側に剥離処理をしたガラス板(1mm×125mm×125mm)を積層した。この太陽電池モジュール用保護シート/封止材用EVA/ガラス板積層体を23℃のオーブンに入れ、更にガラス板上に100gの分銅をのせて、140℃まで昇温し、そのまま20分間加熱処理を行った。加熱処理した後、23℃、50%RH条件下で24時間放置し、常温まで冷却した。そして、太陽電池モジュール用保護シート/封止材用EVA/ガラス板積層体からガラス板を剥離し、太陽電池モジュール用保護シート/封止材用EVAを得た。得られた太陽電池モジュール用保護シート/封止材用EVAの封止材用EVA側面を50倍の倍率で顕微鏡(株式会社HIROX社製;KH−7700)を用いて画像化した。画像化したファイルを画像処理ソフトImage Pro−plus(商品名;Media Cybernetics社製)を用いて、二値化して解析し、太陽電池モジュール用保護シートと封止材用EVAとの間に入り込んだ気泡の面積を計算した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
上記結果から、本発明に係る実施例1〜3の太陽電池モジュール用保護シートは溝が消失しており、気泡の残留を抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0043】
10A、10B、10 太陽電池モジュール用フロント保護シート
20A、20B、20 太陽電池モジュール用バック保護シート
22 熱融着性シート
22a 空気流通性経路
23 接着層
24 基材シート
25 フッ素含有樹脂層
50 太陽電池モジュール
30 封止材
40 太陽電池セル
a、b、e、f、j 空気流通経路の溝と溝との隙間
c、d、g、h、k 空気流通経路の溝の幅
i 空気流通経路の溝の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シートの一方の面に積層された、示差走査熱量測定法(DSC法)における融点が130℃未満である熱融着性樹脂からなる熱融着性シートとを有し、該熱融着性シートの表面に空気流通性経路を有することを特徴とする太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項2】
前記熱融着性シートが、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有し、該熱融着性シートにおける酢酸ビニル(VA)含有量が20質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項3】
前記基材シートの熱融着性シートが積層された面とは反対の面に、フッ素含有樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項4】
前記基材シートが樹脂シートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール用保護シートを用いてなる太陽電池モジュール。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール用保護シートを、太陽電池セルを内包する封止材の表面に、真空熱圧着法を用いて積層する太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−238713(P2010−238713A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82018(P2009−82018)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】