説明

太陽電池及びその製造方法

【課題】太陽光を安価で環境負荷が少なく効率的に光電変換素子に集光可能な太陽電池を提供するにある。
【解決手段】太陽電池は、導光体を備え、この導光体は、コアがクラッドで被覆され、このコア内には、延出方向に配向された指向性発光粒子が分散されている。外部から外部光線が発光微粒子に入射されて指向性が与えられてコア内に射出される。コア内に向けられた光線は、コアとクラッドの界面で全反射されて光線を電力に変換する光電変換部に導波される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く用いられている太陽電池においては、シリコン(Si)等の大面積の半導体基板、または、ガラス基板などの支持基板に化学的気相成長法(CVD)などにより成膜した例えばアモルファスシリコン(a−Si)等の半導体薄膜を用いて、光電変換層が形成されている構造が一般的である。しかしながら、このような太陽電池は、その半導体基板や半導体薄膜の製造過程において、例えば半導体基板製造時の溶融やCVDにおける高真空に関して、太陽電池に適した大面積での製造工程に非常に膨大なエネルギーを消費するという課題がある。これは、発電自体は太陽光の自然エネルギーを利用しているが、ライフサイクルアセスメントという点では、製造工程時の環境負荷低減を進めることが重要になっている。
【0003】
このような構造の太陽電池に対して、例えば、特許文献1に開示されるように、太陽光を導光して光電変換素子に集光する太陽電池の方式が提案されている。この方式の太陽電池は、個々の太陽電池セルの面積を大幅に削減することができる利点がある。従って、本方式による太陽電池においては、太陽電池セルに集光する構造体には、光電変換特性を与える必要がないため、製造時の負荷を低減できることを特徴として挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−340493
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような太陽光の導光・集光方法では、プリズム作用を利用しているため、太陽光を集光するための導光板の作製には、比較的高度な加工技術が必要とされる。また、プリズム作用を利用する構造では、導光板に対して入射角度が一定な光線に対しては、効率的な導光を実現することができる。しかし、太陽光のように、その光源位置が経時的に変化される光源に対しては、導光角を制御することが難しいという課題がある。即ち、ある一定角の入射角については、光線を導光して集光可能であるが、一定角の入射角から逸脱するような入射角においては、導光することができずに効率を落としてしまう問題がある。この問題を回避する手法として、太陽の動きに合わせてプリズム位置を変化させて太陽を追尾する方法がある。しかし、この方法は、太陽電池ユニット自体に可動性を与える必要があることから、太陽電池の構造が複雑になるばかりでなく、追尾のための駆動エネルギーを必要とする問題がある。従って、この駆動エネルギーを含めた総合的な太陽電池の変換効率は、実質上低下する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされてものであり、その目的は、太陽光を効率的に光電変換部に集光可能な太陽電池及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
この発明によれば、
この発明によれば、
第1の屈折率を有するコアと、
外部からの光線を導波する光線に変換する前記コア内に分散された指向性発光粒子と、
前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第2の屈折率を有するクラッドからなる導光体において、
前記導光体の端部に光電変換部を有し、前記指向性発光粒子は、前記導波する光線を前記光電変換部方向に指向性を持つように配置されたこと、
を特徴とする太陽電池が提供される。
【0008】
また、この発明によれば、
第1の屈折率を有する部位と、
外部からの光線を導波する光線に変換する前記部位内に分散された指向性発光粒子と、
前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第2の屈折率を有するコアと、
前記部位または前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第3の屈折率を有するクラッドからなる導光体において、
前記導光体の端部に光電変換部を有し、前記指向性発光粒子は、前記導波する光線を前記光電変換部方向に指向性を持つように配置されたこと、
ことを特徴とする太陽電池が提供される。
【0009】
更に、この発明によれば、
第1の導光体及び第2の導光体であって、当該第1及び第2の導光体は、
第1の屈折率を有するコアと、
外部からの光線を導波する光線に変換する前記コア内に分散された指向性発光粒子と、
前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第2の屈折率を有するクラッドからなる構造、或いは、
第1の屈折率を有する部位と、
外部からの光線を導波する光線に変換する前記部位内に分散された指向性発光粒子と、
前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第2の屈折率を有するコアと、
前記部位または前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第3の屈折率を有するクラッドからなる構造を
備え、前記第2の導光体は、前記第1の導光体の端部に配置され、かつ、前記第2の導光体端部に光電変換部を有し、
前記第1の導光体に分散された指向性発光粒子は、前記第1の導光体内を導波する光線を前記第2の導光体方向に指向性を持つように配置され、
前記第2の導光体に分散された指向性発光粒子は、前記第2の導光体内を導波する光線を前記光電変換部方向に指向性を持つように配置されたことを特徴とする太陽電池が提供される。
【0010】
更にまた、この発明によれば、
前述した導光体における前記指向性発光粒子において、前記導波する光線は、前記外部からの光線とその波長が異なることを特徴とする太陽電池が提供される。
【0011】
加えて、この発明によれば、
前述した太陽電池において、前記導波する光線の指向性は、前記導光体形成時の延伸工程に起因する指向性発光粒子の配向を用いることを特徴とする太陽電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
この発明の太陽電池によれば、従来の導光及び集光作用を利用する太陽電池とは異なり、製造方法が比較的に容易で製造時のエネルギー消費が少なく、且つ、導光板に入射する太陽光線を効率的に、局所的に配置された光電変換素子に導光することができる。また、発光素子における波長変換特性を活用して光電変換素子に適合させた中心波長域の光線を集光可能である。また、局所的に配置された光電変換素子自体も小面積にすることができるため、光電変換特性に優れた単結晶基板で作られた光電変換素子を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る太陽電池を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示される平板状の導光部材を概略的に示す斜視図である。
【図3】図1に示される平板状の導光部材を概略的に示す断面図である。
【図4】図1に示される平板状の導光部材のコアに分散される発光微粒子を概略的に示す斜視図である。
【図5】図1に示される平板状の導光部材を製造する過程を概略的に示す断面図である。
【図6】図3に示される平板状の導光部材における光線軌跡を概略的に示す断面図である。
【図7】(a)、(b)及び(c)は、図1に示される平板状の導光部材を製造する工程をより具体的に示す模式的断面図である。
【図8】この発明の第2の実施の形態に係る太陽電池を概略的に示す斜視図である。
【図9】(a)及び(b)は、図8に示されるファイバ状の導光部材を導光部材の延出方向に沿って切断して概略的に示す縦断面図及び導光部材の延出方向に直交する面内で切断した概略的に示す縦断面図である。
【図10】図8に示すファイバ状の導光部材を製造する装置を概略的に示す模式断面図である。
【図11】(a)及び(b)は、図8に示される導光部材における光線軌跡を概略的に示す断面図である。
【図12】図8に示すファイバ状の導光部材を並列配置した導光構造を概略的に示す断面図である。
【図13】図8に示すファイバ状の導光部材の変形例を概略的に示す斜視図である。
【図14】(a)及び(b)は、図13に示されるファイバ状の導光部材を導光部材の延出方向に沿って切断して概略的に示す縦断面図及び導光部材の延出方向に直交する面内で切断した概略的に示す縦断面図である。
【図15】図8に示すファイバ状の直線状の複数の導光部材が湾曲して配置される構造を備えた導光構造を概略的に示す平面図である。
【図16】図15に示す導光構造の変形例を概略的に示す平面図である。
【図17】この発明の第3の実施の形態に係る太陽電池の導光部材を概略的に示す断面図である。
【図18】(a)及び(b)は、図17に示されるファイバ状の導光部材を導光部材の延出方向に沿って切断して概略的に示す縦断面図及び導光部材の延出方向に直交する面内で切断した概略的に示す縦断面図である。
【図19】(a)及び(b)は、図17に示される導光部材における光線軌跡を概略的に示す断面図である。
【図20】この発明の第4の実施の形態に係る太陽電池の導光部材を概略的に示す断面図である。
【図21】図20に示される平板状の導光部材を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る太陽電池を説明する。
【0015】
図1は、この発明の第1の実施の形態に係る太陽電池を概略的に示す斜視図である。図1に示すように太陽電池は、入射した光線を電力Pwに変換して出力する光電変換素子(光電変換セル)28を備え、この光電変換素子28は、平板状の導光部材30の一方の側端面に配置固定されている。導光部材30の一方の側端面に対向する他方の側端面には、光反射電極(光反射層)27が設けられている。平板状の導光部材30は、太陽光線12に向けられる光入射面30Aを備え、図2及び図3に示すように多数の発光微粒子26が略均一に分散されたコア層24が一対のクラッド層22―1、22−2間に挟み込まれた構造に形成されている。ここで、発光微粒子26は、コア層のクラッド層に挟持された厚みと比較して極く小さい粒子であって、この観点から微粒子と称する。また、コア層24及びクラッド層22は、通常の光ファイバのコア及びクラッドと同様にコア層24内を伝播する光線がコア層24及びクラッド層22―1,22−2間の界面で全反射されるようにコア層24及びクラッド層22―1,22−2の屈折率が設定されている。また、導光部材30、特に入射面30Aの側のクラッド層22―1は、外部光線12がコア層24に進入できるのに十分な光透過性を有している。
【0016】
発光微粒子26は、図4に模式的に示すように外部から入射した光線を、指向性を持って発光可能な粒子である。以下、これを指向性発光粒子と称する。ここで、この発光粒子の必要条件は、光線に指向性を与えることであり、また、この指向性発光粒子においては、指向性発光とともに波長変換を行うことも可能である。波長変換は、例えば、フォトルミネセンス(PL)発光により入射光線の波長を変換して入射光線の波長とは異なる波長を有する光線14を発光し、図4に示すように光線に指向性を与えてその端面26A,26Bから光線を外部に向ける略円柱形状の粒子である。波長変換は、一例として、発光微粒子26が650nmの中心波長域を有する光線14の発光が可能な場合に、これより短い波長の光線12がこの発光微粒子26によって650nm付近の光線14に変換される場合が相当する。また、フォトルミネセンス(PL)で発光する発光微粒子26として、例えば、微粒子径が数ナノメートルに制御されて作られた硫化鉛(PbS)があり、この硫化鉛(PbS)の発光微粒子26では、短波長側の光線12を吸収して、880nm付近の波長の光線14に変換して射出することが可能である。この発光微粒子26は、1.4eV付近のエネルギーを有する波長が変換効率に優れているとされている。太陽光は、紫外域から長波長側に連続的なスペクトル分布を有しているため、変換対象の波長として、例えば、1.4eV付近のエネルギーを有する波長として880nm程度の波長が該当する場合、紫外域から880nmまでの光線12が発光素子(波長変換と光の方向を制御可能な微粒子)26を用いて、光の波長変換及び方向制御を実施して、光電変換素子28に向けることにより、光電変換素子28は、変換効率に優れた均一な光線14が導入されることになる。
【0017】
発光微粒子26は、図5に矢印Exで示されるような延伸工程によりその配向方向が揃えられて発光微粒子26の指向性をコア層24とクラッド層22―1,22−2の界面における全反射条件を満たす方向に設定することができる。即ち、図5の左側の領域に示されるように発光粒子の指向性については均一ではない。これに対して、発光微粒子26は、クラッド部材32−1、32−2及びコア部材34が図5に示されるように延伸工程において、クラッド層22−1、22−2及びコア層24が引き延ばされるに際して図5に示すように発光微粒子26の配向方向(長軸の方向)が延伸方向に揃えられ、発光微粒子26の端面26A、26Bが平板状の導光部材30の一方並びに他方の側端面に向けられるように配向される。このように延伸された導光部材30では、発光微粒子26からの光線は、光ファイバ内における光線と同様にコア層24とクラッド層22―1、22−2との界面にて全反射を繰り返しながら、コア層24内を導光され、光電変換微粒子26に導入される。
【0018】
図1に示される太陽電池では、太陽光線12が光入射面30Aを照射するように配置される場合には、光入射面30Aに照射された外部光線12は、板状導光部材30内において、図6に示すように発光微粒子26に入射され、この指向性発光微粒子26より波長変換され、変換された光線が指向性発光微粒子26の端面から射出される。射出された光線は、コア層24とクラッド層22との界面にて全反射を繰り返しながら、コア層24内を導光され、光入射面30Aに沿って板状導光部材30の一方の側端面に設けられた光電変換素子(光電変換セル)28に導かれる。また、板状導光部材30の他方の側端面に向けられた光線は、光反射電極(光反射層)27で反射されて板状導光部材30の一方の側端面に設けられた光電変換素子(光電変換セル)28に導かれる。光電変換素子28では、入射された光線が電力に変換されて電力Pwとして負荷(図示せず)に出力される。
【0019】
上述したように、この発明の第1の実施の形態に係る太陽電池では、従来の導光及び集光作用を利用する太陽電池とは異なり、製造方法が比較的に容易で製造時のエネルギー消費が少なく、且つ、導光板に入射する太陽光線を効率的に、局所的に配置された光電変換素子28に導光することができる。また、発光素子における波長変換特性を活用して光電変換素子に適合させた中心波長域の光線を集光可能である。また、局所的に配置された光電変換素子自体も小面積にすることができるため、光電変換特性に優れた単結晶基板で作られた光電変換素子を利用することができる。
【0020】
導光体(部材30)は、より具体的には、図7(a)〜(c)に示される工程を経て延伸されて製造される。初めに、図7(a)に示されるように指向性発光が可能な発光微粒子26が用意される。このとき、配向性発光粒子の配向性については無秩序である。コア層24に比べて大きな厚みを有する板状のコア部材34中に分散して混入される。次に、この板状のコア部材34の両面にクラッド層22となるクラッド部材32−1,32−2を形成する。クラッド部材32−1、32−2も同様に製造されるべきクラッド層22に比べて大きな厚みを有するように形成される。従って、図7(b)に示すように、板状のコア部材34が板状のクラッド部材32−1、32−2で被覆され、製造されるべき板状の導光部材30に比べて大きな厚みを有する板状構造体が用意されることとなる。ここでコア材料としては、例えばアクリル樹脂、クラッド材料としては、フッ素系樹脂などを用いることができる。この板状構造体は、コア層24及びクラッド層22―1,22−2の軟化点以上となるように加熱された状態で、図7(c)に示すように圧延ローラ37,39間に導かれ、圧延ローラ37,39によって加熱状態下で圧延される。この圧延工程では、コア層24は、延伸され、当初無配向に配置していた発光微粒子26は、延伸によって再配列され、発光微粒子26の配向方向(長軸の方向)が延伸方向に揃えられ、発光微粒子26の端面26A、26Bが平板状の導光部材30の一方並びに他方の側端面に向けられるように配向される。また、圧延時のロール40,42間のピッチを調整することにより、所望の板厚が板形状の導光体部材30に与えられる。
【0021】
図1に示される太陽電池においては、板形状の導光部材30の相対する端面の一方に反射電極27が設けられ、その反対側に光電変換素子28が取り付けられている。これは、図7(c)に示される製造時の圧延処理により、発光微粒子26は、その配向性について、板厚方向に対して直交する方向(例えば、長手方向)に配向されるだけでなく、延伸により面内方向についても延伸方向に配向され、光電変換素子28の端面から射出される光線の方向が特定される。従って、図7(c)における矢印Exが圧延方向に設定される場合、発光微粒子26は、面内方向についても矢印Exの方向に配向しやすいため、この矢印Exに直交する端面に向けて光線が伝播される。ここで、板形状導光部材30に入射した外部光線12は、コア層24内に分散されている指向性発光微粒子26によりコア層24内で、副次的に波長変換され、コア層24内の伝播方向に波長変換された光線として導光される。コア層24は、クラッド層22により狭持されていることから、クラッド層22に向けられた光線は、コア層24及びクラッド層22間の界面で全反射され、全反射を繰り返しながら、板形状導光部材30の端面に向けて導光される。換言すれば、板形状導光部材30の表面に面照射された外部光線12は、波長変換されて導光部材30の端面に向けて伝播されることになる。伝播された光線波長の光電変換に最適する光電変換素子28が端面に配置されることにより、この波長変換され、伝播された光線は、光電変換されて電流に変換されることとなる。このような太陽電池の構造では、外部光線12が照射される板形状導光板20の面の面積に対して、光電変換素子28の光照射面(入射面)の面積を十分に小さくすることができ、結果として、太陽電池の構造としては、製造工程における負荷を抑制することができ、しかも、大面積の入射面を備える太陽電池モジュールを製造することができる。
【0022】
尚、第1の実施の形態では、板形状導光部材30の形状を直方体としているが、この形状に限定されるものではなく、他の形状に形成されても良い。また、光電変換素子28は、直方体の4つの端面の1つに設けているが、これに限定されるものではない。
【0023】
図8並びに図9(a)及び(b)は、この発明の第2の実施の形態に係る太陽電池の導光部材40を示している。この図8並びに図9(a)及び(b)に示される第2の実施の形態においては、図1〜図7に示した第1の実施の形態とは異なり、平板状の導光部材30に代えてファイバ状の導光部材40が採用されている。
【0024】
図8並びに図9(a)及び(b)に示されるファイバ状の導光部材40は、通常の光ファイバと同様にコア42及びこのコア42を被覆するクラッド44から構成されている。コア42には、コア24と同様に指向性を与えた光線を発光可能な発光微粒子26が分散されている。発光微粒子26に関しては、図4に示される微粒子と同様であるので、第1の実施の形態における説明を参照されたい。また、コア42及びクラッド44は、通常の光ファイバと同様にコア42内を伝播する光線がコア42及びクラッド44の界面で全反射される条件を満たすような屈折率がコア42及びクラッド44に与えられている。即ち、コア42には、光線14の導波を可能にするため、クラッド44より屈折率が高く設定されている。
【0025】
ファイバ状の導光部材40には、外部から光線が図6に示すと同様に照射されて外部光線の主たる波長域において透過性に優れたクラッド44を介してコア42内に入射される。コア42内では、入射光線が円柱形状に模式的に示される図4のような発光微粒子26に進入し、この発光微粒子26内で波長変換されて変換された光線が発光微粒子26の端面26A,26Bから発せられる。ここで、発光微粒子26の長軸が略コア42の延出方向に沿って配列されていることから、発光微粒子26の端面26A,26Bから射出された光線は、コア42及びクラッド44の界面で全反射を繰り返してコア42内を伝播されることとなる。
【0026】
図8に示すファイバ状の導光部材40は、図10に示される製造方法を経て製造されて指向性発光が可能なように発光微粒子26がコア42内に配向される。即ち、初めに、発光微粒子26がコア42内に無配向に分散されてコア42の外周がクラッド44で被覆された柱状部材50が用意される。この柱状部材50が加熱炉52内で加熱されて軟化されてキャプスタン54に導かれる。この加熱軟化された柱状部材50は、キャプスタン54において巻き取りドラム56によって引っ張られて延伸され、所望のサイズ(径)が与えられてファイバ形状の導光部材40に成形される。キャプスタン54で成形されたファイバ形状の導光部材40は、巻き取りドラム56に巻き取られる。
【0027】
上述した成形過程で、コア42が延伸されるため、無配向に配置されている発光微粒子26は、延伸によって再配列されて長手方向(ファイバの延出方向)に沿って配向される。その結果、各発光微粒子26の端面26A,26Bがコア42の延出方向に向けられ、発光微粒子26の端面26A,26Bからは、波長変換された光線14がコア42及びクラッド44の界面で全反射されるように向けられる。
【0028】
図11(a)及び(b)には、例えば、太陽光線のような外部光線12が図8に示されるようなファイバ形状の導光部材40に入射される際の、光線12、14の経路を模式的に示している。既に説明したように、ファイバ形状導光部材40に外部光線12が入射されると、コア42内に配向分散された発光微粒子26内で、例えば、フォトルミネセンスにより入射光線12が波長変換されて指向性を有する光線14に変換される。この波長変換とは、例えば、発光微粒子26が650nmの中心波長域を有する発光が可能な場合、これより短い波長光が650nm付近の光線14に変換されることをいう。また、発光微粒子26は、延伸工程によりその指向性が図11(a)におけるコア42内における全反射方向に射出されるため、発光微粒子26からの光線14は、光ファイバ内の光線と同様にコア42とクラッド44の界面にて全反射を繰り返しながら、コア42内を導かれる。
【0029】
図11(b)に示すように、ファイバ形状の導光部材40は、円形の断面形状を有するため、例えば、導光部材40の延出方向に直交するように入射する光線14は、クラッド44がレンズとして作用してコア42内に集光させることができる。従って、外光12が集中して発光微粒子26に向けられ、発光微粒子26における光線の変換効率を高めることができる。
【0030】
図12に示されるようにファイバ形状の導光体部材40−1〜40−nが並列配置されている構造においては、より広い面積に亘って外光12を受光することができる。即ち、ファイバ形状の導光部材40であっても、並列配置された集積構造で、面展開された導光部材40を実現することができる。この構造では、隣接するクラッド44は、光線14の導波に寄与しない領域となっているが、クラッド44自体のレンズ作用(集光作用)によりコア42に外部光線12を集光することも可能である。
【0031】
尚、外部光線12のレンズ作用(集光特性)をより向上するために、図13及び図14(a)及び(b)に示されるようにクラッド44の外周に、コア42に外部光線12を集光させる為の屈折率制御層48が設けられても良い。この屈折率制御層48によって、外光12をコア42に向けるように屈折させ、更に、屈折光線をクラッド44で更にコア42に向けて屈折し、導光部材40に入射された外部光線12の殆どをコア層42に誘導させるようにしても良い。この構造は、コア42の外周をクラッド44で被覆した構造では、コア42及びクラッド44の界面で光線14を全反射させる為にコア42及びクラッド44の屈折率に制約があり、十分な集光作用を与えることができない虞があるが、クラッド44外周に設ける屈折率制御層48には、屈折率に関して制限があるものの折率制御層48に十分なレンズ作用(集光作用)を与えることができる。従って、図13及び図14(a)及び(b)に示す構造によれば、より高効率の太陽電池を提供することができる。
【0032】
直線状の複数の導光部材40が並列されて配置される場合に限らず、図15及び図16に示されるように1本の長い導光部材40が湾曲されて平面的に展開されて大面積の光入射面を有するように配置されても良い。この導光部材40の一方端の光射出面には、反射面27が設けられ、他方端の光射出面には、光電変換素子28が設けられても良い。図13及び図14(a)及び(b)に示す構造は、連続的に平面的にファイバ形状の導光部材40が展開されていることから、この構造によれば、大面積の太陽電池提供することができる。また、この構造においては、ファイバ形状の導光部材40が導光機能及び集光機能を有し、光電変換素子28は、外部光線12が照射される面積に比較して十分に小面積の受光部を有し、光電変換特性に優れた単結晶基板上に光電変換部が形成された光電変換素子28を用いることができる。例えば、ガリウム砒素基板上に3族と5族の元素からなる化合物半導体を成膜した太陽電池においては、Siから構成されているものと比較して高い変換効率を実現できる。従って、優れた光電変換効率を備えた高効率の太陽電池を提供することができる。
【0033】
また、図16に示されるように、ファイバ形状導光部材40の他方端の光射出面と光電変換素子28の受光部との間が光導波特性に優れた光ファイバ49で光学的に連結され、導光部材40から光線14が光ファイバ49を介して光電変換素子28に導かれても良い。この図16に示される太陽電池によれば、光電変換素子28を比較的に自由に設置することができ、太陽電池の設置性の自由度を高めることができる。一例として太陽電池は、一般的に家屋或いはビル等の屋上に設置されるが、このような外部環境は、外気温変化或いは湿度変化が大きく、光電変換素子28にとっては好ましい設置ではないとされている。しかし、図16に示されるような構造によれば、光電変換素子28を厳しい外部環境下に置くことなく、温度調整された暗室等に設置可能であり、光電変換の効率低下を防ぐことができるとともに光電変換素子28が外部環境下で劣化されることを防止することができる。更に、光電変換素子28から光電変換により取り出される電力Pwも比較的に短い配線長で負荷に供給することが可能となり、配線での電力損出を低下させることが可能である。
【0034】
図17〜図19は、この発明の第3の実施の形態に係る太陽電池の導光部材60及び導波光を示している。この第3の実施の形態に係る太陽電池では、第2の実施の形態と同様に導光部材60がファイバ形状に形成されているが、第2の実施の形態とは異なりコア42中ではなく第2のクラッド62中に発光微粒子26が導光部材60の延出方向に沿ってその発光の指光性が与えられると共に略均一に分散されている。即ち、図17並びに図18(a)及び(b)に示す導光部材60は、第1及び第2のクラッド44,62を備え、ファイバ状の第2のクラッド62がコア42によって被覆され、コア42が更に第1のクラッド44で被覆されている。第2のクラッド62には、指向性を与えた光線を発光可能な発光微粒子26が第2のクラッド62の延出方向に配向されるように均一に分散されている。ここで、発光微粒子26は、図4に示される微粒子と同様に指向性を与えた光線を発光する特性、例えば、フォトルミネセンスにより入射された外光12を波長変換して指向性ある光線14に変換する特性を有し、また、コア42並びに第1及び第2のクラッド44、62には、通常の光ファイバと同様にコア42内を伝播する光線がコア42及び第1のクラッド44の界面及びコア42及び第2のクラッド62の界面で全反射条件を満たすような屈折率が与えられている。即ち、コア42には、光線14の導波を可能にするため、第1のクラッド44と第2のクラッド62より屈折率が高く設定されている。
【0035】
図19(a)及び(b)に示すように、ファイバ状の導光部材60には、外部から光線が照射されて透明な第1のクラッド44及びコア42を介して第2のクラッド62内に入射される。第2のクラッド62内では、入射光線が発光微粒子26に進入し、この発光微粒子26内でファイバ長手方向に指向性を有する光線14が発光微粒子26の端面26A,26Bから発せられる。ここで、光線14は、光線12に対して異なる波長に変換されても良い。れる。射出された光線14は、第2のクラッド62内を伝播されてコア42内に進入される。ここで、発光微粒子26の長軸が略コア42の延出方向に沿って配列されていることから、図4に模式的に示す発光微粒子26の端面26A,26Bから射出され、コア42内に進入して伝播される光線は、コアと第1のクラッドの界面、及び、コアと第2のクラッドの界面において全反射されて、コア内を導波することになる。
【0036】
図17及び図18(a)並びに(b)に示される構造においては、第1或いは第2の実施の形態と異なり、光線を伝播するコア42内に発光微粒子26が分散されていないことから、光線14の伝播が発光微粒子26によって阻害されることなく、効率的にコア42内を導波されることとなる。
【0037】
第3の実施の形態に係る太陽電池では、第2の実施の形態と同様にファイバ形状の導光部材60に関して記述しているが、第1の実施形態と同様の形態に適応可能である。即ち、図2が図17に示される平板状導光部材の断面を示していると仮定すると、図2に示される形態となるように平板状の第2のクラッド62が平板状の2つのコア42間に狭持されるように配置され、更に、平板状の2つのコア42上に第1のクラッド44が形成されても良い。このような構造の太陽電池では、図19(a)及び(b)に示すと同様に外光12が発光微粒子26で波長変換され、外光14が発光微粒子から平板状の2つのコア42に導入され、この平板状の2つのコア42内を伝播されることとなる。
【0038】
図20は、この発明の第4の実施の形態に係る太陽電池を示している。この図20に示される太陽電池は、図2に示される平板状の導光部材30と同様な構造を有する平板状の導光部材70を備え、この平板状の導光部材70の互いに対向される端面に図8、図13或いは図17に示される導光部材40、60と同様な構造を有するファイバ状の導光部材72−1,72−2の側面側が固定されている構造を有している。ファイバ状の導光部材72−1,72−2の延出方向の1端には、光電変換素子28−1、28−2が設けられ、延出方向の他端には、反射層(図示せず)或いは光電変換素子(図示せず)が設けられている。ファイバ状の導光部材72−1,72−2内を導波する光線は、反射層で反射されて光電変換素子28−1、28−2に向けられて光電変換素子28−1、28−2で受光されて電力に変換されて出力される。また、ファイバ状の導光部材72−1,72−2内を導波する光線は、導光部材72−1,72−2の両端に設けた光電変換素子28−1、28−2及び図示しない光電変換素子で受光されて電力Pw1,Pw2に変換されて出力される。
【0039】
平板状の導光部材70は、図2及び図3に示すようにコア24をクラッド22−1,22−2で狭持した構造を有し、コア24内には、発光素子26が図21に示されるようにZ方向に沿って配向されるように均一に分散されている。この構造の平板状の導光部材70では、外部から入射される光線12、例えば、Y方向に沿って入射される光線12は、発光素子26で発光素子26の端面26A,26BからZ方向に向けて光線14として発せられる。この光線14は、コアとクラッドの界面において全反射条件を満たしながら導波して導光部材70の互いに対向する端面に向けられ、ファイバ状の導光部材72−1,72−2内に導入される。
【0040】
ファイバ状の導光部材72−1,72−2では、例えば、図8(又は、図13或いは図17)に示す構造を採用した場合、最外周のクラッド44或いはクラッド44及び屈折率制御層48の組み合わせが集光作用(レンズ作用)を有することから、入射された光線14は、図9(a)及び(b)或いは図19(a)及び(b)に示されるようにコア42内に分散された発光素子26或いは図17に示すようにクラッド62内に分散された発光素子26に照射される。この光線は、コア42内の発光素子26或いはクラッド62内の発光素子26で指向性が与えられ、また、ファイバ状の導光部材72−1,72−2の長手方向に指向性が与えられてコア42内を導波される。コア24,44内を導波された光線は、ファイバ状の導光部材72−1,72−2の1端で夫々で反射され、1端に設けた光電変換素子28−1、28−2で電力Pw1、Pw2に変換される。
【0041】
尚、図21に示すような平板状の導波部材70にあっては、光線が入射する面の側に対向する面に反射層74が設けられ、導波部材70を通過した光線12が再び導波部材70内に向けて反射層74で反射され、発光素子26がこの反射光線で照射されるようにしても良い。反射層74を設けることによってより、例えば、太陽光などの外部からの光線を発光素子26に向けることができ、粒子に吸収されずに透過する一部の成分については、再度、粒子を含む層に向けることができ、より光変換効率を向上させることができる。
【0042】
図20に示される太陽電池によれば、光電変換素子28は、ファイバ端部に設置すれば良いことから、光電変換素子28は、第1の実施の形態に係る太陽電池に比較して更に微小な面積の受光部を有する素子とすることができる。
【0043】
尚、図20に示される太陽電池においては、板状の導光部材70における導光波長と、ファイバ形状の導光体における導光波長は同一でなくとも良い。一例として、670nmの波長域で光電変換特性に優れた光電変換素子28が用いられる場合、ファイバ形状の導光部材内においては、670nmの波長域において波長変換可能な指向性のある発光微粒子26を用いて、板状の導光体内においては、650nmの波長域において波長変換可能な指向性のある発光微粒子26を用いることもできる。
【0044】
上述した実施の形態では、太陽電池が平面的に展開されている構造のみに付いて説明しているが、入射する光線を有効利用するために図1、図15、図16及び図20が多層に積層されるように配置されても良く、各太陽電池に波長依存性を与えて波長域分割して各太陽電池で光電変換しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
太陽光を安価で環境負荷が少なく効率的に光電変換素子に集光可能な太陽電池が提供される。
【符号の説明】
【0046】
12...外部光、14...導波光線、22...クラッド、24...コア層、22−1、22−2...クラッド層、26...発光素子、26A、26B...端面、27...光反射電極、28、28−2,28−2...光電変換素子、30...導光部材、30A...光入射面、32−1,32−2...クラッド部材、34...コア部材、37,39...圧延ローラ、40、40−1〜40−n...導光部材、42...コア、44...クラッド、48...屈折率制御層、49...光ファイバ、50...柱状部材、52...加熱炉、54...キャプスタンス、56...巻き取りドラム、60...導光部材、62...クラッド、70、72−1,72−2...導光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屈折率を有するコアと、
外部からの光線を導波する光線に変換する前記コア内に分散された指向性発光粒子と、
前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第2の屈折率を有するクラッドからなる導光体において、
前記導光体の端部に光電変換部を有し、前記指向性発光粒子は、前記導波する光線を前記光電変換部方向に指向性を持つように配置されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
第1の屈折率を有する部位と、
外部からの光線を導波する光線に変換する前記部位内に分散された指向性発光粒子と、
前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第2の屈折率を有するコアと、
前記部位または前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第3の屈折率を有するクラッドからなる導光体において、
前記導光体の端部に光電変換部を有し、前記指向性発光粒子は、前記導波する光線を前記光電変換部方向に指向性を持つように配置されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項3】
第1の導光体及び第2の導光体であって、当該第1及び第2の導光体は、
第1の屈折率を有するコアと、
外部からの光線を導波する光線に変換する前記コア内に分散された指向性発光粒子と、
前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第2の屈折率を有するクラッドからなる構造、或いは、
第1の屈折率を有する部位と、
外部からの光線を導波する光線に変換する前記部位内に分散された指向性発光粒子と、
前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第2の屈折率を有するコアと、
前記部位または前記コアと界面を有し、前記導波する光線が前記界面において全反射条件を満たすように定められた第3の屈折率を有するクラッドからなる構造を
備え、前記第2の導光体は、前記第1の導光体の端部に配置され、かつ、前記第2の導光体端部に光電変換部を有し、
前記第1の導光体に分散された指向性発光粒子は、前記第1の導光体内を導波する光線を前記第2の導光体方向に指向性を持つように配置され、
前記第2の導光体に分散された指向性発光粒子は、前記第2の導光体内を導波する光線を前記光電変換部方向に指向性を持つように配置されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項4】
における前記指向性発光粒子において、前記導波する光線は、前記外部からの光線とその波長が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の太陽電池において、前記導波する光線の指向性は、前記導光体形成時の延伸工程に起因する指向性発光粒子の配向を用いることを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−225692(P2010−225692A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69041(P2009−69041)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】