説明

媒体の搬送装置及び当該搬送装置を備えた液体噴射装置

【課題】媒体の搬送時のスキューを解消できるとともに媒体にシワや折れ曲がりが生じにくい搬送装置等を提供する。
【解決手段】搬送される媒体10が正しい搬送状態と比べて傾いた搬送状態で搬送されているか否かを検出する検出手段(センサー53)と、前記検出手段が前記媒体の傾いた搬送状態を検出した場合に、前記媒体の搬送方向に沿った前記媒体の中心線Eを境界として区画される前記媒体の表面の2つの領域X,Yのうちのいずれか1つの領域の表面であって、かつ、前記媒体が正しい搬送状態で搬送される場合の前記媒体の中心線上の位置(基準位置C)より外れた位置と接触するスキュー補正体(スキュー補正軸61)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送時のスキューを補正する装置を備えた媒体の搬送装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターやレーザープリンター、ファクシミリ等に代表される液体噴射装置は、紙等の媒体を媒体の表面と接するローラーにより下流側に搬送しつつ、搬送経路の下流側に設けられた印刷部により媒体に印刷する構成の搬送装置を備える。この搬送装置として、ローラーにより搬送される媒体の印刷部に対する姿勢を維持するために、媒体の搬送方向に対する媒体の傾斜量をセンサーにより測定し、測定された傾斜量に応じて一対のローラー等の補正手段を回転させることにより、媒体のスキュー(斜行)を補正するものが知られている(特許文献1,2参照)。また、媒体を搬送するためのベルトのスキューを補正するために、ベルトと平行に設置されたローラーをベルトと平行な面上において傾動させる搬送装置が知られている(特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1,2の搬送装置では、一対のローラーに回転速度差を生じさせる構成のため、一方のローラーが接触する媒体の面と他方のローラーが接触する媒体の面、即ち、媒体の表面において離れた2箇所にそれぞれローラーによる異なる力が加わることになり、媒体にシワや折れ曲がりが生じる懸念がある。
また、特許文献3の搬送装置のローラーを特許文献1,2のローラーの代りに用いる場合、前述のように当該ローラーを媒体に接触させた状態でローラーを傾動させることになるが、このようにローラーと媒体とを接触させた状態でローラーを傾動させると、媒体の面に面を捻り擦るような強い力が加わり易いので、媒体にシワや折れ曲がりが生じる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−175752号公報
【特許文献2】特開平4−277151号公報
【特許文献3】特開2009−203036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべく、媒体の搬送時のスキューを解消できるとともに媒体にシワや折れ曲がりが生じにくい媒体の搬送装置及び当該搬送装置を備えた液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る媒体の搬送装置は、搬送される媒体が正しい搬送状態と比べて傾いた搬送状態で搬送されているか否かを検出する検出手段と、前記検出手段が前記媒体の傾いた搬送状態を検出した場合に、前記媒体の搬送方向に沿った前記媒体の中心線を境界として区画される前記媒体の表面の2つの領域のうちのいずれか1つの領域の表面であって、かつ、前記媒体が正しい搬送状態で搬送される場合の前記媒体の中心線上の位置より外れた位置と接触するスキュー補正体と、を備えたので、媒体の搬送時のスキューを解消できるとともに媒体にシワや折れ曲がりが生じにくい搬送装置を提供できる。
本発明に係る媒体の搬送装置は、前記検出手段と、前記検出手段が前記媒体の傾いた搬送状態を検出した場合に、前記媒体が正しい搬送状態で搬送される場合の前記媒体の搬送方向と平行な前記媒体の中心線上の位置より外れるように前記媒体の搬送方向と交差する方向に移動して前記媒体の表面に接触するスキュー補正体と、を備えたので、媒体の搬送時のスキューを解消できるとともに媒体にシワや折れ曲がりが生じにくい搬送装置を提供できる。
本発明に係る媒体の搬送装置は、前記検出手段と、前記媒体の搬送方向と交差する方向に移動可能に設けられたスキュー補正体と、前記スキュー補正体の駆動機構と、前記検出手段が前記媒体の傾いた搬送状態を検出した場合に、前記駆動機構を制御して、前記媒体が正しい搬送状態で搬送される場合の前記媒体の搬送方向と平行な前記媒体の中心線上の位置より外れた位置の前記媒体の表面に前記スキュー補正体を接触させる制御手段と、を備えたので、媒体の搬送時のスキューを解消できるとともに媒体にシワや折れ曲がりが生じにくい搬送装置を提供できる。
前記スキュー補正体は、前記媒体の搬送方向と交差する方向に延長するように設置され、延長方向の中央部が最大径に形成されて前記媒体の表面と接触する接触部を有した軸により構成されたので、軸を媒体の搬送方向と交差する方向に移動させることにより、媒体の搬送時のスキューを解消できる。
本発明に係る液体噴射装置は、前記媒体の搬送装置と、前記搬送装置の搬送経路の下流側に設けられた印刷部と、前記印刷部よりも前記搬送経路の上流側でかつ前記印刷部に最も近い位置に設けられて前記媒体を前記印刷部に搬送するローラーとを備え、前記検出手段は、前記ローラーの位置よりも前記搬送経路の上流側に設けられた構成としたので、前記媒体が前記ローラーの上流側からスキュー補正を行うことができるので、媒体が印刷部で印刷される前に余裕を持ってスキュー補正を行うことができ、印刷精度が向上する。
また、前記検出手段が、前記ローラーの位置よりも前記搬送経路の下流側で、かつ、前記印刷部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた構成としたので、媒体が印刷部で印刷される直前にスキュー補正を行うことができ、印刷精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は搬送装置を備えた液体噴射装置の側断面図、(b)は搬送装置の平面図(実施形態1)。
【図2】補正部の補正処理を示すフロー(実施形態1)。
【図3】傾斜量δの概念を示す模式図(実施形態1)。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組合せのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
図1に基づいて実施形態1による搬送装置を備えた液体噴射装置の一例であるインクジェットプリンター(以下、プリンターと言う)の構成を説明する。
プリンター1は、装置筐体2、供給部3、搬送部4、印刷部5、排出部6、制御装置100を備える。
【0010】
まず、プリンター1の概要を説明する。供給部3の供給トレイ11に紙等の媒体10が収容されている状態において、制御装置100が印刷指示を受けると、制御装置100が搬送駆動用のモーター20を制御して供給部3の図外の分離機構及び供給ローラー12を駆動させる。分離機構により媒体10が1枚ずつ分離され、分離された媒体10が供給ローラー12により装置筐体2内に取り込まれて搬送部4に供給される。さらに、制御装置100は、搬送駆動用のモーター20を制御して搬送部4の各ローラーを駆動させる。これにより、媒体10が印刷部5に送られる。そして、制御装置100は、搬送駆動用のモーター20を制御して搬送部4の送りローラー52を断続的に駆動させるとともに印刷部5のキャリッジ駆動用のモーター21及び印刷部5のヘッド5Bを制御する。例えば、制御装置100の印刷制御部102が、キャリッジ駆動用のモーター21を制御してヘッド5Bを搭載したキャリッジ5Aを媒体10の搬送方向Fと直交する方向に往復動作させながら、ヘッド5Bに形成された圧力印加室内の圧力を変化させるピエゾ素子に所定の電力を供給することによりヘッド5Bのノズル面よりインクを噴射させることによって、媒体10の表面に印刷が行われる。さらに、制御装置100は、搬送駆動用のモーター20を制御して排出部6の排出ローラー55を駆動させる。これにより、印刷終了後の媒体10が排出トレイ13に排出される。
【0011】
即ち、制御装置100は、供給部3の分離機構、中心軸を中心として回転する供給ローラー12、搬送部4の各搬送ローラー、排出部6の排出ローラー55等の駆動源としての搬送駆動用のモーター20を制御して媒体10の搬送を制御する搬送制御部101と、印刷部5のキャリッジ駆動用のモーター21及びヘッド5Bを制御して印刷動作を制御する印刷制御部102とを備え、プリンター1における媒体供給動作から媒体排出動作までを一貫して制御する。制御装置100は、コンピュータソフトウエアとコンピュータハードウエアとにより実現される。
【0012】
尚、搬送制御部101の詳細構成、及び、搬送制御部101によるスキュー(斜行)補正処理については後述する。
【0013】
前記供給部3は、媒体10を装置筐体2内に供給するための構成である。例えば、装置筐体2のヒンジを介して背面開口部2dを開閉可能なように設けられ、背装置筐体2の背面2b側に装置筐体2の背面2bから上方に立ち上がるように傾斜した状態に設定可能な供給トレイ11と、供給トレイ11に収容された媒体10を1枚ずつ分離する図外の分離機構と、当該分離機構により分離された媒体10を装置筐体2内に取り込むとともに搬送部4に送る供給ローラー12とを備える。
供給トレイ11は、媒体10を受ける受板部11aと、受板部11aの両側縁より立ち上がるように設けられて媒体10の幅方向の移動を規制する規制壁部11b;11bとにより構成され、受板部11aと規制壁部11b;11bとで区画された媒体収容部を形成する。受板部11a上には、複数の媒体10を収容可能であり、媒体10が単一又は重畳した状態で収容される。また、規制壁部11b;11b間の間隔は、適宜調整可能であり、異なるサイズの媒体10を収容することができる。
【0014】
前記搬送部4は、装置筐体2内に設けられて媒体10の搬送経路を構成するものであり、供給ローラー12により装置筐体2内に供給された媒体10を搬送経路の下流側に設けられた印刷部5に搬送する機能を備える。
なお、本明細書においては、搬送経路の供給部3側を搬送経路の上流側、搬送経路の排出部6側を搬送経路の下流側と定義して説明する。
【0015】
搬送部4は、搬送面13と、中間ローラー51と、送りローラー52と、スキュー検出用のセンサー53と、スキュー補正手段60と、スキュー補正体駆動機構70とを備える。
【0016】
搬送面13は、プラテンとも呼ばれる基板であって、例えば、供給トレイ11の出口から排出トレイ14の入口まで延長するように設けられる。
【0017】
送りローラー52は、媒体10を印刷部5に搬送する搬送経路において印刷部5よりも上流側でかつ印刷部5に最も近い位置に設けられて媒体10を印刷部5に搬送する搬送ローラーである。
中間ローラー51は、供給ローラー12と送りローラー52との間の搬送区間において、1つ以上設けられる搬送ローラーである。
中間ローラー51は、媒体10の搬送方向Fと直交する方向に延長するように配置された一対のローラー51A,51Bにより構成される。
送りローラー52は、媒体10の搬送方向Fと直交する方向に延長するように配置された一対のローラー52A,52Bにより構成される。
例えば、これらローラーの一方のローラーは駆動ローラーであり、他方のローラーは従動ローラーである。これら各ローラーを構成する一対のローラーは、媒体10を挟み込む前に外周面同士が離間し、媒体10を挟み込んだ後は外周面と媒体10の表面とが接触して媒体10を搬送可能な状態となるよう構成される。
また、送りローラー52は、例えば、上方に位置するローラー52Bの中心軸が、下方に位置するローラー52Aの中心軸よりも下流側に位置するように構成される。このようにローラー52Aとローラー52Bとを位置ずれさせて設けたことにより、ローラー52Aとローラー52Bとの間に挟み込まれる媒体10には下向きの力が働き、搬送面13から浮き上がることが防止される。
【0018】
図1(b)に示すように、前記スキュー検出用のセンサー53は、印刷部5に搬送される媒体10が正しい搬送状態と比べて傾いた搬送状態で搬送されているか否か、即ち、印刷部5に搬送される媒体10のスキュー(斜行)を検出する検出手段である。
尚、媒体10の正しい搬送状態とは、例えば、媒体10が所定寸法の長方形の紙である場合、媒体10が、媒体10の互いに対向する一対の長辺縁及びこれら一対の長辺縁と平行な媒体10の中心線Eと印刷部5の移動方向との直交状態を維持しながら搬送される状態、即ち、プリンター1が最適な性能を発揮できるように媒体10が搬送される状態を言う。言い換えれば、印刷部5の移動方向Gと直交する方向である媒体10の搬送方向Fと媒体10の中心線Eとが平行な状態を維持しながら媒体10が搬送されている状態を言う。
また、媒体10が正しい搬送状態と比べて傾いた搬送状態とは、例えば、媒体10が所定寸法の長方形の紙である場合、媒体10の中心線Eと印刷部5の移動方向とが直交していない状態で媒体10が搬送される状態、即ち、媒体10が、所謂、スキュー状態で搬送されている状態を言う。言い換えれば、媒体10の搬送方向Fと媒体10の中心線Eとが平行でない状態で媒体10が搬送されている状態を言う。
即ち、センサー53は、媒体10が搬送部4により搬送されている状態において、媒体10の搬送方向Fに対する媒体10の中心線Eの傾斜量δを検知するものである。言い換えれば、例えば、媒体10が所定寸法の長方形の紙である場合において、搬送される媒体10の下流側先端縁10Aとなる一方の辺縁とセンサー53;53による検出点同士を結ぶ一直線(印刷部5の移動方向と平行な直線)に対する媒体10の下流側先端縁10Aとなる一方の辺縁の傾斜量を検知するものである。
【0019】
センサー53は、例えば、スキュー補正手段60よりも上流側に設けられる。
センサー53は、搬送中の媒体10よりも上方に配置される一対のセンサー53A,53Bにより構成される。一対のセンサー53A,53Bは、搬送部で搬送されてくる下流側先端縁10Aの両側端部を検出可能なように、印刷部5の移動方向Gと平行な一直線上において所定間隔を隔てて配置される。
【0020】
センサー53A,53Bとしては、例えば、発光部から照射される光が媒体10によって反射されることにより媒体10の通過を検出する非接触式のセンサーを用いたり、あるいは、従動的に回転するローラーをそれぞれ備え、搬送される媒体10によってローラーが回転したときに、媒体10の下流側先端縁10Aを検出する接触式のセンサーを用いることができる。
両方のセンサー53A,53Bが媒体10の下流側先端縁10Aの両側端部を同時に検出すれば、媒体10は搬送方向Fに沿って真っ直ぐ搬送されていることとなる。つまり、媒体10が正しい搬送状態で搬送されていることが検出される。
一方、センサー53A,53Bによる下流側先端縁10Aの両側端部の検出時期が異なれば、媒体10は搬送方向Fに対して傾斜した状態で搬送されていることとなり、下流側に設けられた印刷部5に対して傾斜した状態で進入することとなる。つまり、媒体10が、スキュー状態で搬送されていることが検出される。
センサー53A,53Bは、後述の制御装置100と接続され、媒体10の検出信号をそれぞれ制御装置100に出力する。
【0021】
スキュー補正手段60は、スキュー補正時に媒体10の表面に接触する接触部63を有した構成である。接触部63は、媒体10が正しい搬送状態で搬送される場合の媒体10の搬送方向Fと平行な媒体10の中心線E上の位置を基準位置Cとして、印刷部5の移動方向Gと同一方向(媒体10の搬送方向Fと直交する方向)に往復移動可能に設けられる。
【0022】
スキュー補正手段60は、例えば、スキュー補正体としてのスキュー補正軸61と、スキュー補正軸61と対向するように設置された対向ローラー62とを備える。
スキュー補正軸61は、例えば、媒体10の搬送方向Fと直交する方向に延長し、かつ、延長方向の一部(例えば中央部)が最大径部に形成され、この最大径部の外周部が媒体10の表面に接触する接触部63として機能するように構成されたクラウン軸とも呼ばれる軸である。
例えば、スキュー補正軸61の接触部63は、媒体10が正しい搬送状態で搬送されている場合には基準位置Cにおいて媒体10の表面と非接触状態となるように位置され、かつ、媒体10が正しい搬送状態と比べて傾いた搬送状態で搬送されている場合(スキュー状態の場合)には、基準位置Cを基準として媒体10の搬送方向Fと直交する方向(印刷部5の移動方向)に移動した後に媒体10の表面と接触するよう制御される。
【0023】
スキュー補正体駆動機構70は、スキュー補正軸61の接触部63を媒体10の搬送方向Fと直交する方向に往復移動させる図外の水平往復移動機構と、接触部63を媒体10の表面と接触させ、又は、接触部63を媒体10の表面と離す図外の垂直往復移動機構とを備える。
水平往復移動機構は、例えば、スキュー補正軸61の軸に沿った方向に延長するようにスキュー補正軸61に連結されたラックと、ラックに噛合うピニオンと、搬送駆動用のモーター20の回転力をピニオンに伝達する歯車伝達機構又はベルト伝達機構等の伝達機構とにより構成される。あるいは、スキュー補正軸61の軸に沿った方向に往復移動可能なように駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡されて構成された無端ベルトと、無端ベルトとスキュー補正軸61とを連結する連結部と、搬送駆動用のモーター20の回転力をピニオンに伝達する歯車伝達機構又はベルト伝達機構等の伝達機構とにより構成される。
垂直往復移動機構は、例えば、スキュー補正軸61の軸に対して垂直方向に延長するようにスキュー補正軸61に連結されたラックと、ラックに噛合うピニオンと、搬送駆動用のモーター20の回転力をピニオンに伝達する歯車伝達機構又はベルト伝達機構等の伝達機構とにより構成される。あるいは、スキュー補正軸61の軸と垂直な方向に往復移動可能なように駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡されて構成された無端ベルトと、無端ベルトとスキュー補正軸61とを連結する連結部と、搬送駆動用のモーター20の回転力をピニオンに伝達する歯車伝達機構又はベルト伝達機構等の伝達機構とにより構成される。
尚、図外の専用のモーターを用いて水平往復移動機構や垂直往復移動機構を構成すれば、伝達機構の構成を簡単にできる。
【0024】
印刷部5は、搬送される媒体10上において搬送方向Fと直交する方向に移動可能なキャリッジ5Aと、キャリッジ5Aに設けられたヘッド5Bとを備える。
キャリッジ5Aは、図外のキャリッジ駆動機構により駆動され、ガイド軸7に沿って媒体10の搬送方向Fと直交する方向に往復移動可能に構成される。従って、印刷部5が媒体10の搬送方向Fと直交する方向に往復移動可能に構成される。
ヘッド5Bには、キャリッジ5Aに着脱可能に装着される図外のインクカートリッジ、又は、キャリッジ5A外に装着される図外のインクカートリッジからのインクが供給される。
キャリッジ駆動機構は、図外のキャリッジ支持フレームに固定されたキャリッジ駆動用のモーター21と、モーター21により回転する図外の回転軸に固定された図外の駆動プーリーと、キャリッジ支持フレームに回転可能に取付けられた図外の従動プーリーと、当該駆動プーリーと従動プーリーとに掛け渡されて、かつ、キャリッジ5Aに連結された図外のタイミングベルトとを備える。
従って、キャリッジ駆動用のモーター21が駆動することにより駆動プーリーが回転し、タイミングベルトが媒体10の搬送方向Fと直交する方向に移動するのに伴ってキャリッジ5Aも媒体10の搬送方向Fと直交する方向に移動し、この移動動作とともにヘッド5Bからヘッド5Bのノズル面5Cと対向する媒体10の表面にインクが噴射されることによって媒体10の表面に印刷が行われる。
【0025】
排出部6は、印刷終了後の媒体10を排出する手段であり、排出ローラー55と、排出トレイ14とを備える。排出ローラー55は、印刷部5よりも下流側に設けられる。排出ローラー55は、中間ローラー51や送りローラー52と同様の一対のローラー55A,55Bにより構成される。排出トレイ14は、例えば、ヒンジを介して装置筐体2の前面開口部2eを開閉可能なように装置筐体2の前面2aに設けられる。
【0026】
制御装置100の搬送制御部101は、センサー53からの出力に基づいてスキュー補正体駆動機構70を制御する補正部103を備える。
補正部103は、センサー53からの出力に基づいて傾斜量δを算出する傾斜量算出部104と、補正マップ105とを備える。
補正マップ105には、例えば、傾斜量δを補正するのに必要なスキュー補正軸(スキュー補正体)61の接触部63の基準位置Cからの移動方向、移動量、媒体10との接触時間等のスキュー補正体制御情報と傾斜量δとが対応付けられて図外の記憶部に格納されている。
【0027】
実施形態1では、搬送装置が、制御装置100と、搬送部4とを備える構成である。
また、スキュー補正装置が、補正部103と、スキュー補正体としてのスキュー補正軸61と、スキュー補正体駆動機構70とを備える構成である。
【0028】
以下、図2,図3に基づいて補正部103によるスキュー補正処理について説明する。
図2に示すように、補正部103は、まず、傾斜量δを算出する(ステップS100)。
傾斜量δは、媒体10の搬送速度情報、及び、センサー53A,53Bによる下流側先端縁10Aの両側端部の検出時期のずれ情報等に基づいて算出される。
傾斜量δは、例えば、図3(a)に示すように、媒体10の傾斜方向が搬送方向Fに対してセンサー53B側に傾斜している場合、即ち、センサー53Aがセンサー53Bよりも早く媒体10を検出した場合には正値として算出される。
また、図3(b)に示すように、媒体10の傾斜方向が搬送方向Fに対してセンサー53A側に傾斜している場合、即ち、センサー53Bがセンサー53Aよりも早く媒体10を検出した場合には負値として算出される。
【0029】
次に、補正部103は、補正マップ105を参照し(ステップS101)、ステップS100において算出された傾斜量δを補正するのに必要なスキュー補正体制御情報を得る。そして、補正部103は、得られたスキュー補正体制御情報に基づいてスキュー補正体としてのスキュー補正軸61を制御する(ステップS102)。
前述したように、傾斜量δが正値として算出された場合には、補正部103は、水平往復移動機構を制御して、スキュー補正軸61の接触部63をセンサー53A側に移動させると、媒体10のセンサー53A側の搬送が遅れるので、媒体10のスキューが解消されていく。この際、基準位置Cからの接触部63の移動量、接触部63と媒体10との接触時間等が制御されることによって、媒体10の搬送状態を正しい搬送状態にすることが可能である。
また、傾斜量δが負値として算出された場合には、補正部103は、水平往復移動機構を制御して、スキュー補正軸61の接触部63をセンサー53B側に移動させると、媒体10のセンサー53B側の搬送が遅れるので、媒体10のスキューが解消されていく。この際も、基準位置Cからの接触部63の移動量、接触部63と媒体10との接触時間等が制御されることによって、媒体10の搬送状態を正しい搬送状態にすることが可能である。
スキュー補正体制御情報に基づく制御が終了したならば、補正部103は、垂直往復移動機構を制御して接触部63を媒体10の表面から離して基準位置Cに戻す。
そして、センサー53A,53Bで媒体10を検出し、傾斜量δがある毎に、スキュー補正を行うことにより、媒体10の搬送状態を正しい搬送状態に維持することが可能となる。
即ち、スキュー補正された媒体10は、印刷部5の移動方向Gに直交した正しい搬送状態で搬送されることとなるので、印刷精度が向上する。
つまり、制御装置100の補正部103は、センサー53A,53Bが媒体10の傾いた搬送状態(スキュー状態)を検出した場合に、傾斜量δを算出して補正マップよりスキュー補正体制御情報を得、このスキュー補正体制御情報に基づいてスキュー補正体駆動機構70を制御して、媒体10が正しい搬送状態で搬送される場合の媒体10の搬送方向Fと平行な媒体10の中心線E上の位置、即ち、基準位置Cより外れた位置の媒体10の表面にスキュー補正体としてのスキュー補正軸61の接触部63を接触させる。
【0030】
実施形態1によれば、補正部103と、スキュー補正手段60と、スキュー補正体駆動機構70とを有したスキュー補正装置を備えたので、スキュー補正軸61を媒体10の搬送方向Fと直交する方向に移動させることによって、簡単に媒体10のスキューを解消できるようになる。
また、実施形態1によれば、センサー53A,53Bが媒体10の傾いた搬送状態を検出した場合に、媒体10の搬送方向Fに沿った媒体10の中心線Eを境界として区画される媒体10の表面の2つの領域X,Yのうちのいずれか1つの領域の表面であって、かつ、前述した基準位置Cより離れた位置に接触する接触部63を有したスキュー補正体としてのスキュー補正軸61を備えた。
即ち、実施形態1のように、媒体10の表面の2つの領域X,Yのうちのいずれか1つの領域の表面と接触部63とを接触させる構成によれば、特許文献1,2のように、媒体の表面において離れた2箇所にそれぞれローラーによる異なる力が加わることになったり、特許文献3で開示されたローラーを用いる場合のように、媒体の面に面を捻り擦るような強い力が加わりにくいので、媒体にシワや折れ曲がりが生じにくい。
従って、実施形態1によれば、従来の特許文献に開示された構成と比べて、媒体のスキューを解消できるとともに媒体にシワや折れ曲がりが生じにくい構成の搬送装置を得ることができる。
また、センサー53A,53Bが、送りローラー52の位置よりも搬送経路の上流側に設けられたので、送りローラー52の上流側から媒体10のスキュー補正を行うことができるので、媒体10が印刷部5で印刷される前に余裕を持ってスキュー補正を行うことができ、印刷精度が向上する。
【0031】
実施形態2
センサー53A,53Bを、搬送中の媒体10の両側縁10L,10Rを常に検出できる位置に配置して、補正部103が、媒体10の両側縁10L,10Rの傾斜量δを連続的に検出するように構成してもよい。
実施形態2によれば、補正部103が媒体10の傾斜量δを連続的に算出するので、補正部103が、更新される傾斜量δを常時参照しながら傾斜量δがなくなるように接触部63の連続制御を行える。
また、傾斜量δがなくなるように連続的に制御するので、スキュー補正体制御情報としてスキュー補正体の移動方向情報だけで制御が可能となり、補正マップ105を簡単にできる。
【0032】
実施形態3
センサー53を、送りローラー52よりも下流側で、かつ、印刷部5よりも上流側に設けてもよい。
実施形態3によれば、送りローラー52通過後の印刷部5に近い位置で媒体10のスキューを補正でき、印刷部5に近い位置で媒体10の搬送状態を正しい搬送状態にできるので、印刷精度が向上する。
【0033】
実施形態4
また、センサー53を、送りローラー52よりも上流側に設けるとともに、送りローラー52よりも下流側でかつ印刷部5よりも上流側にも設けるようにしてもよい。
実施形態4によれば、送りローラー52の前後位置でスキュー補正を行えるようになるので、印刷精度がより向上する。
【0034】
尚、図1において、スキュー補正手段60の対向ローラー62を媒体10の上表面と対向するように設置し、スキュー補正軸61を媒体10の下表面と対向するように設置してもよい。
また、スキュー補正軸61、対向ローラー62は、中心軸を回転中心として回転させる必要はないが、回転させてもよい。
【0035】
また、実施形態では、接触部63を、正しい搬送状態のとき、及び、移動時に媒体10の表面から離しておくようにしたが、接触部63を、正しい搬送状態のとき、及び、移動時に媒体10の表面と接触させておき、スキュー補正が終了した時点で接触部63と媒体10の表面とを離すようにしてもよい。
接触部63と媒体10の表面との接触力は、媒体10の表面に傷が付かないような接触力となるように調整すればよい。
【0036】
また、搬送経路におけるスキュー補正手段60と送りローラー52との間に例えば中間ローラー51と同様な構成の別の搬送ローラーを設けてもよい。
【0037】
また、スキュー補正手段60の対向ローラー62は、必ずしも設ける必要はない。例えば、センサー53が送りローラー52よりも下流側に設けられ、媒体10が中間ローラー51及び送りローラー52に挟まれている状態でスキュー補正する構成とすれば、媒体10の一方の面に接触可能なスキュー補正軸61を設けるだけでもよい。
【0038】
また、スキュー補正体としては、前述した基準位置Cより印刷部5の移動方向と同一方向に往復移動可能で媒体10の表面の一部に接触する接触部63を備えていればよい。例えば、スキュー補正体を、円板や球体により形成し、円板の外周面の一部や球体の面の一部を接触部63として機能させてもよい。また、媒体10の表面に点接触、線接触するような接触部63を有したスキュー補正体を用いてもよい。
【0039】
また、本発明によれば、センサー53A,53Bが媒体10の傾いた搬送状態を検出した場合に、媒体10の搬送方向Fに沿った媒体10の中心線Eを境界として区画される媒体10の表面の2つの領域X,Yのうちのいずれか1つの領域の表面であって、かつ、前述した基準位置C(媒体10が正しい搬送状態で搬送される場合の媒体10の搬送方向Fと平行な媒体10の中心線E上の位置)より離れた位置と接触するスキュー補正体を備えていればよいので、スキュー補正体としては、基準位置Cを基点として印刷部5の移動方向と同一方向に往復移動する構成でなくてもよい。即ち、センサー53A,53Bが媒体10の傾いた搬送状態を検出した場合に、任意の位置から2つの領域X,Yのうちのいずれか1つの領域の表面と接触するスキュー補正体を備えていればよい。
【0040】
さらに、スキュー補正体としては、印刷部5の移動方向と平行でかつ媒体10の搬送方向Fと直交する方向に移動するものでなくてもよい。例えば、搬送方向Fと交差する方向に移動するものでもよい。
【0041】
実施形態では、液体噴射装置の一例として、ヘッドを有する液体噴射装置としてのインクジェットプリンターを例にして説明したが、本発明における搬送装置は、レーザープリンター、ファクシミリ、複写機等、液体噴射対象となる媒体を搬送する搬送装置を備えた液体噴射装置に適用できる。また、液体噴射装置は液体を噴射するヘッドを備えていればよく、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルター等の製造に採用される電極材や色材を分散又は溶解した状態で噴射する装置をも含む。また、媒体は、所謂普通紙のみでなく、感熱紙、フィルム等、印刷部に対して搬送可能なものであれば、特に限定されない。
【0042】
また、本発明の搬送装置は、液体噴射装置の搬送装置以外にも適用可能である。例えば、スキャナー装置の搬送装置等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 プリンター(液体噴射装置)、5 印刷部、10 媒体、
52 送りローラー(ローラー)、53 センサー(検出手段)、
61 スキュー補正軸(スキュー補正体、軸)、63 接触部、
70 スキュー補正体駆動機構(駆動機構)、100 制御装置、
103 補正部(制御手段)、
C 基準位置(媒体が正しい搬送状態で搬送される場合の媒体の中心線上の位置)、
E 媒体の中心線、F 媒体の搬送方向、X,Y 2つの領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される媒体が正しい搬送状態と比べて傾いた搬送状態で搬送されているか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記媒体の傾いた搬送状態を検出した場合に、前記媒体の搬送方向に沿った前記媒体の中心線を境界として区画される前記媒体の表面の2つの領域のうちのいずれか1つの領域の表面であって、かつ、前記媒体が正しい搬送状態で搬送される場合の前記媒体の中心線上の位置より外れた位置と接触するスキュー補正体と、
を備えたことを特徴とする媒体の搬送装置。
【請求項2】
搬送される媒体が正しい搬送状態と比べて傾いた搬送状態で搬送されているか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記媒体の傾いた搬送状態を検出した場合に、前記媒体が正しい搬送状態で搬送される場合の前記媒体の搬送方向と平行な前記媒体の中心線上の位置より外れるように前記媒体の搬送方向と交差する方向に移動して前記媒体の表面に接触するスキュー補正体と、
を備えたことを特徴とする媒体の搬送装置。
【請求項3】
搬送される媒体が正しい搬送状態と比べて傾いた搬送状態で搬送されているか否かを検出する検出手段と、
前記媒体の搬送方向と交差する方向に移動可能に設けられたスキュー補正体と、
前記スキュー補正体の駆動機構と、
前記検出手段が前記媒体の傾いた搬送状態を検出した場合に、前記駆動機構を制御して、前記媒体が正しい搬送状態で搬送される場合の前記媒体の搬送方向と平行な前記媒体の中心線上の位置より外れた位置の前記媒体の表面に前記スキュー補正体を接触させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする媒体の搬送装置。
【請求項4】
前記スキュー補正体は、前記媒体の搬送方向と交差する方向に延長するように設置され、延長方向の中央部が最大径に形成されて前記媒体の表面と接触する接触部を有した軸により構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の媒体の搬送装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の媒体の搬送装置と、
前記搬送装置の搬送経路の下流側に設けられた印刷部と、
前記印刷部よりも前記搬送経路の上流側でかつ前記印刷部に最も近い位置に設けられて前記媒体を前記印刷部に搬送するローラーとを備え、
前記検出手段は、前記ローラーの位置よりも前記搬送経路の上流側に設けられたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
前記請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の媒体の搬送装置と、
前記搬送装置の搬送経路の下流側に設けられた印刷部と、
前記印刷部よりも前記搬送経路の上流側でかつ前記印刷部に最も近い位置に設けられて前記媒体を前記印刷部に搬送するローラーとを備え、
前記検出手段は、前記ローラーの位置よりも前記搬送経路の下流側で、かつ、前記印刷部よりも前記搬送経路の上流側に設けられたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171747(P2012−171747A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35501(P2011−35501)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】