説明

媒体処理装置

【課題】 従来の媒体処理装置では剛性が劣化した紙幣は、正確に判別することが困難であり、正常な紙幣として顧客に返金されてしまい、装置の信頼性や顧客サービスの点で問題がある。
【解決手段】 紙幣に超音波を照射して、共振させ、当該共振の周波数から紙幣の固有振動数を割り出し、正常な紙幣の固有振動数と比較することにより紙幣の剛性の劣化を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から取り込んだ媒体を処理する装置において、媒体の剛性の劣化を検出する機能を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来から使用されている代表的な媒体処理装置の一つである現金自動取引装置1の外観を示す外観図である。また図7には現金自動取引装置1に搭載された主な装置の構成を示している。
【0003】
現金自動取引装置1には顧客との取引の際に装置前面の接客口から紙幣を受け入れ、所定の取引の後、必要に応じて出金する入出金処理を行う紙幣入出金部2、顧客が所持している磁気カードを受け入れて、当該カードに記憶されている情報を読み出したり書き換えたりするカードリードプリンタ部3、顧客の通帳を受け入れて、当該通帳に取引した内容や金額を印字する通帳プリンタ部4、表示画面に各種情報を表示して顧客にガイダンス、操作指示等を行う顧客操作表示部5により構成されている。これらの各部位は現金自動取引装置1内に搭載されたメイン制御部6により制御されている。
【0004】
実際の取引に当たっては顧客が装置の前に立つと装置前面に設けられた図示しないセンサにより、顧客の存在を検知し、当該検知の信号に基づきメイン制御部6が顧客操作表示部5にサービス画面の表示の指示を送信する。顧客操作表示部5では種々のサービス画面が表示されて、顧客が所望する手続きの処理に誘導する。顧客が紙幣の入金を伴う取引を希望している場合、金額、暗証番号等の情報を顧客が入力した後、紙幣入出金部2の接客口を開いて入金を受付けるとともに、顧客が所定の紙幣を入金する。
【0005】
顧客が接客口から一括投入した複数の紙幣は、接客口から装置内部に設けられた搬送路上に送出される段階で一枚ずつ分離される。そして一枚搬送される毎に金種判別を行い、紙幣入出金部2内に設けられた金種別に紙幣収納庫に格納される。
【0006】
その後、紙幣収納庫に格納された紙幣は装置の操作部を介して入力される顧客の要求に従い、必要に応じて格納された紙幣を取り出した後、接客口まで搬送し顧客の要求した金額の紙幣を返却する。
【特許文献1】特開2002−197507号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した現金自動取引装置1では、取り込まれた紙幣は搬送路上を一枚ずつ搬送されるが、取り扱われる紙幣の剛性が劣化していると紙幣の搬送詰まりの原因となることがある。そのような障害を防ぐために剛性の劣化している紙幣を装置内に取り込む毎に速やかに特定して、このような紙幣を装置内に保留して再使用しないようにすれば、装置の信頼性が高まると同時に顧客サービスの向上の観点からも有益である。
【0008】
その為、現金自動取引装置などの媒体を大量に取扱う装置には媒体の紙質や痛み具合を判別する機能を有しているものがある。しかしながら、従来の一般的な媒体判別機能では紙幣のイメージ画像を画像処理することにより判別を行っており、紙幣の「歪み」や「しわ」等の紙幣の弱り具合に由来する微細な特徴を検出するのが困難な為、剛性の劣化した紙幣と正常な紙幣を正確に判別することは難しい。その為、剛性の劣化した紙幣と正常な紙幣を正確に判別できる媒体処理装置の開発が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本願発明の現金自動取引装置は超音波を使用して紙幣を判別する手段を備えたことを特徴としている。該紙幣判別手段は搬送路上或はその付近に超音波発信素子からなる超音波発信部、及び超音波受信素子からなる超音波受信部を有しており、両素子間に紙幣が搬送された後、超音波発信部から紙幣の表面に超音波を発信し、紙幣から2次的に生じた輻射波を超音波受信部にて受信することによりに紙幣の剛性が劣化具合を判別するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記した構成により剛性の劣化した紙幣を確実に判別することができ、また剛性が劣化しているとした紙幣をリジェクト庫に収納して、装置内に剛性の劣化した紙幣が再び還流しないようにして媒体詰まりを防ぐとともに、顧客に剛性の劣化した不良な紙幣を返却することがなくなり顧客サービスを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最良の形態である実施例1及び2について順次説明する。
【実施例1】
【0012】
以下に本発明の実施例1を説明する。実施例1の発明では現金自動取引装置1に入金され搬送されてきた紙幣に超音波発信手段から超音波を照射して共振を発生させ、当該共振により生じた2次輻射波を超音波受信手段により受信し、その検出値から紙幣の固有振動数を算出し、この固有振動数を正常な紙幣の固有振動数と比較することにより、紙幣の剛性が劣化しているかを判別するものである。
【0013】
(構成)
図1は実施例1の紙幣判別部7の構成図である。紙幣判別部7は現金自動取引装置1の搬送路B上に設置される。紙幣判別部7は紙幣Aに超音波Cを照射する超音波発信センサ9及び紙幣からの2次輻射波Dを受信する超音波受信センサ10、超音波発信センサ9及び超音波受信センサ10より搬送路Bの上流で紙幣の存在を検出するセンサ11、超音波発信センサ9の駆動信号を発生する駆動回路12、超音波受信センサ10からの出力信号を増幅する増幅器13、紙幣による発生した2次輻射波の周波数を自動的に解析するのに必要な情報をサンプリングするサンプリング回路14、サンプリング回路14での周波数の解析結果を基に紙幣の固有振動数を算出する固有振動数算出部15、紙幣の状態を判別する為の基準値である正常な紙幣の固有振動数を予め記憶しておくメモリからなる基準固有振動数記憶部16、正常な紙幣の振幅情報が予め記憶されている基準振幅記憶部17からなる。これらの構成は紙幣判別制御部8により制御されている。
【0014】
なお、超音波発信センサ9及び超音波受信センサ10は搬送路B上の紙幣Aを境として対向するように取り付けられている。このときの超音波発信センサ9及び超音波受信センサ10の取り付け方法については、種々の方法を採用することができるが、例えば搬送路Bの上部、下部を構成する金属板に穴を開け、超音波発信センサ9及び超音波受信センサ10を埋め込むといったような方法が考えられる。
【0015】
(動作)
以下では、図3を用いて本発明の実施例1の動作の流れについて説明する。なお図3は実施例1の動作フローチャートであり、以降に示すS1〜S12の各ステップは、図3のフローチャートの表示を対応している。
【0016】
顧客の来店時に現金自動取引装置1において取引する場合、顧客操作表示制御部5に取引メニューが表示される。メニューの内容としては例えば支払、入金、残高照会、通帳記入、振込み等顧客の取引に関連する事項が各種キーによって表示される。顧客はこの取引メニューを見て自分の希望の取引のキーを押し下げて選択する。
【0017】
ここでは顧客が入金を選択すると、顧客操作表示部5は顧客の所持しているカードと通帳の挿入を促す画面を表示すると同時に、これに応じて顧客がカードをカードリードプリンタ部3に挿入するか、または通帳を通帳プリンタ4に挿入すると、カードや通帳に記憶されている顧客の暗証番号等の情報が読み取られて所定の図示しないメモリに格納される。
【0018】
続いて、顧客操作表示部5に顧客の暗証番号の入力を促す旨の画面を表示する。顧客が画面上に表示されたテンキーを押して暗証番号を入力すると、この入力した暗証番号と上記のメモリに格納した暗証番号とを照合して両者が一致した場合、顧客操作表示部5は取引が可能であることの表示した後に、紙幣の挿入を促す画面を表示させるとともに紙幣入出金部2が入金の準備を指示する。
【0019】
続いて、顧客が紙幣を紙幣入出金部2の接客口に挿入する。挿入された紙幣は一枚毎搬送されて紙幣判別部7に到達する。紙幣Aが紙幣判別部7付近に接近するとセンサ11が紙幣Aの先端を検出すると同時に紙幣判別制御部8に紙幣が検出されたことを通知する紙幣検出信号を送信する(S1)。紙幣判別制御部8は、検出センサ11から送信されてきた紙幣検出信号を受信すると、図示しないメモリに予め格納されている超音波発信センサ9から発信する超音波の基となる図2に示した矩形波の周期初期値T1と電圧値V1を読み出し、駆動回路12に駆動信号を作る指示とともにこれを与え、駆動回路12は紙幣判別制御部8の指示に応じて駆動信号を作成し超音波発信センサ9に与える。
【0020】
紙幣Aの先端がセンサ11に検出されると、紙幣Aが検出されたことの信号が紙幣判別制御部8に送られ、紙幣Aの中心が超音波発信センサ9の真下に来るまで所定の移動量分だけ搬送する。(S2) 図示しないセンサにより、紙幣Aが超音波発信センサ9の真下に存在することが検出されると、紙幣Aが検出されたことの信号が紙幣判別制御部8に送られ、紙幣判別制御部8の命令により超音波発信センサ9は初期周期T1の超音波Cを発生して紙幣Aへ照射する(S3)。紙幣Aは超音波発信センサ9からの超音波Cを受けて周期Tの強制振動を起こす。それと同時に超音波受信センサ10側の紙幣面から周期Tの2次輻射波Dが発生する。
【0021】
超音波受信センサ10はこの2次輻射波Dを受信(S4)し、電気信号を出力して増幅器13に与え、増幅器13はこの電気信号を増幅してサンプリング回路14に与える。次に、サンプリング回路14は、この増幅された電気信号により振幅情報をサンプリングして紙幣判別制御部8へ転送する。次に紙幣判別制御部8はこの振幅情報を所定のメモリに保存する(S5)。
【0022】
紙幣判別部7は、基準振幅記憶部17から予めメモリに記憶されている共振時の紙幣の振幅の最大値を取り出し、測定時に得られた紙幣の振幅の最大値と比較する(S6)。測定された紙幣の振幅の最大値が紙幣振動記憶部16から読み出した共振紙幣振幅の最大値より小さい場合、紙幣の振動が共振状態ではないと判別し、紙幣判別制御部8は認識制御部駆動信号の周期T1の値を変更し(S7)再度、駆動回路12に指示を与える。
【0023】
測定された振幅の最大値が共振時の振幅の最大値より大きい場合、紙幣の振動が共振状態であると判別して、固有振動数算出部15は駆動信号の周期T1の現在値を用いて共振の周波数を算出する。この共振の周波数は紙幣の固有振動数となる(S8)。続いて、紙幣判別制御部8は基準固有振動数記憶部16から予め記憶されている正常な紙幣の基準固有振動数を読み出し(S9)、算出された紙幣の固有振動数と比較する(S10)。
【0024】
算出された固有振動数が基準固有振動数より大きい場合、紙幣は剛性が劣化していると判断して,紙幣を紙幣入出金部2に設けられた一次保留部に集積されたのち、リジェクト庫へ収納する(S11)。また、算出された固有振動数が基準固有振動数と等しいか、もしくは小さい場合は、紙幣入出金部2に紙幣Aを一時保留部に搬送させて一時保留した後、再利用可能な正常な紙幣として紙幣収納庫に収納する(S12)。
【0025】
顧客の投入した最後の紙幣までが、すべて判別が終了すると正常な紙幣と判別された紙幣について合計金額を算出し、顧客操作表示部5に当該金額を表示し顧客に通知する。顧客が表示された金額を確認し、顧客により金額を確認した旨を示す入力がさせると入金処理が完了する。
【実施例2】
【0026】
(構成)
次に本発明の実施例2について説明する。本実施例では超音波発信センサ9の駆動信号として、図5に示したような単一波パルス信号を用いることにより、発信超音波センサから超音波が紙幣に自由振動を発生させ、紙幣の固有振動数を解析するようにしたものである。
【0027】
(構成)
実施例2の構成は、図1に示した実施例1の構成とほぼ同様であり、紙幣判別部7は現金自動取引装置1の搬送路上に設置され、超音波発信センサ9、超音波受信センサ10、センサ11、駆動回路12、増幅器13、サンプリング回路14、固有振動数算出部15、基準固有振動数記憶部16からなる。なお、本実施例では実施例1の基準振幅記憶部17は使用しない。上記した構成は紙幣判別制御部8により制御されている。図6は第2実施例の発信超音波センサの駆動信号を示すものであり、Tが単一波パルスの有効作用時間を表し、V2がパルスの強さを表すものである。
【0028】
(動作)

図4は実施例2の動作フローチャートである。なお、本実施例の顧客の入金から、紙幣判別部7までの搬送の流れは上述した実施例1と全く同じであり、顧客は顧客操作表示部5の表示に従いカードまたは通帳の挿入し、暗証番号等の入力の後、入金処理の場合は接客口に所持している紙幣を入金する。以降、入金された紙幣が紙幣判別部のある位置に到達した後の動作について説明をする。
【0029】
顧客は所定の情報を入力すると、所持している紙幣を紙幣入出金部4の接客口に投入する。その後、投入された一枚ずつ分離させて搬送され、紙幣Aが紙幣判別部7を通過する時、センサ11により紙幣Aの先端が検出されると、紙幣判別制御部8は、駆動回路12に有効作用時間Tと強さV2の単一波パルスを作る指示を与え、駆動回路12はこの指示を受けてこの単一波パルスを作成し、超音波発信センサ9に与える。紙幣Aが超音波発信センサ9の真下に搬送されてくると(S22)に、超音波発信センサ9はこの単一波パルスを受けて超音波を発生し紙幣へ照射する(S23)。紙幣はこの超音波を受けて自由振動が起こし2次輻射Dを発生する。次に、超音波受信センサ10はこの2次輻射波Dを受信(S24)し、電気信号を出力して増幅器13に与え、増幅器13はこの電気信号を増幅してサンプリング回路14に与える。次にサンプリング回路14は、この増幅された電気信号より振幅と振動数の情報をサンプリングして紙幣判別制御部8へ転送する。次に紙幣判別制御部8はこの振幅と振動数情報を所定の図示しないメモリに保存する。紙幣判別部は、上記メモリに保存された振動数情報を読み出し、紙幣の自由振動数を検出(S25)し、固有振動数算出部15において、検出された自由振動数から固有振動数を算出する(S26)。
【0030】
続いて、紙幣判別制御部8は基準固有振動数記憶部16から予め記憶され、正常な紙幣の基準固有振動数を読み出し(S27)、紙幣Aの判定により算出した固有振動数と比較する(S28)。算出された固有振動数が基準固有振動数より大きい場合、紙幣は剛性が劣化していると判断して,紙幣を紙幣入出金部2に設けられた一次保留部に集積されたのち、リジェクト庫へ収納する(S29)。また、算出された固有振動数が基準固有振動数と等しいか、もしくは小さい場合は、紙幣入出金部2に紙幣Aを一時保留部に搬送させて一時保留した後、再利用可能な正常な紙幣として紙幣収納庫に収納する(S30)。
【0031】
顧客の投入した最後の紙幣までが、すべて判別が終了すると正常な紙幣と判別された紙幣について合計金額を算出し、顧客操作表示部5に当該金額を表示し顧客に通知する。顧客が表示された金額を確認し、顧客により金額を確認した旨を示す入力がさせると入金処理が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1の紙幣判別部の構成図である。
【図2】本発明の実施例1の駆動信号である。
【図3】本発明の実施例1の動作のフローチャート図である。
【図4】本発明の実施例2の動作のフローチャート図である。
【図5】本発明の実施例2の駆動信号である。
【図6】現金自動取引装置の外観図である。
【図7】従来の現金自動取引装置の装置の構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 現金自動取引装置
2 紙幣入出金部
3 カードプリンタ部
4 通帳プリンタ部
5 顧客操作表示部
6 メイン制御部
7 紙幣判別部
8 紙幣判別制御部
9 超音波発信センサ
10 超音波受信センサ
11 センサ
12 駆動回路
13 増幅器
14 サンプリング回路
15 固有振動数算出部
16 基準固有振動数記憶部
17 基準振幅記憶部
A 紙幣
B 搬送路
C 超音波
D 2次輻射波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を取り込んで処理する媒体処理装置において、
媒体に超音波を照射する超音波発信手段と、
前記媒体からの輻射波を受信する超音波受信手段と、
前記受信した輻射波から前記媒体の固有振動数を検出する固有振動数検出手段と、
前記媒体が共振した時の固有振動数に基づいて前記媒体の剛性の劣化を判別する
判別手段を有することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
媒体を取り込んで処理する媒体処理装置において、
媒体に超音波を照射する超音波発信手段と、
前記媒体からの輻射波を受信する超音波受信手段と、
前記超音波発信手段から前記媒体に超音波を照射して、自由振動を発生させることにより固有振動数を求め、該固有振動数により前記媒体の剛性の劣化を判別する判別手段を設けたことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項3】
正常な媒体の固有振動数の閾値を予め記憶する固有振動数記憶手段を有し、
超音波の照射により、求められた前記媒体の固有振動数を前記固有振動数記憶手段に記憶されている固有振動数と比較することにより、媒体の剛性が劣化しているかを判別することを特徴とする請求項1及び2記載の媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−250869(P2006−250869A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70951(P2005−70951)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】