説明

媒体鑑別装置

【課題】微分フィルタによるフィルタ処理を媒体の画像に施すことによって、折れじわの特徴を正確に識別することができ、媒体の傷み度合いを正確に判別し、傷み度合いの激しい媒体を確実に排除することができるようにする。
【解決手段】媒体11の画像を取得する画像取得部21と、微分フィルタによるフィルタ処理を前記画像に施すフィルタ処理部22と、該フィルタ処理部22によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部23と、前記フィルタ処理画像から前記媒体11の傷み度合いを抽出する特徴抽出部と、前記傷み度合いに基づいて前記媒体11が正常であるか異常であるかを判定する判定部25とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体鑑別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行、信用金庫、郵便局、消費者金融会社等の金融機関の支店等に配設されたATM(Automatic Teller Machine:現金自動預払機)、CD(Cash Dispenser:現金自動支払機)等の自動取引装置や両替機、また、商店や路上に配設された自動販売機等には、紙幣等の有価証券の真偽を判別したり、媒体の種別を判別するための媒体鑑別装置が配設されている。該媒体鑑別装置が紙幣等の媒体の真偽を判別することによって、偽造紙幣等の不正な媒体を排除することができる。
【0003】
しかし、傷みが激しくて折れじわが多く存在する媒体は、真正媒体であっても、搬送路に引っ掛かって搬送不能となり、紙詰まり、すなわち、ジャムの発生の原因となるので、判別してリジェクトすることが望ましい。また、折れじわが多く存在する媒体は、偽造媒体との区別が困難である。
【0004】
そこで、従来では、媒体の真偽を判別する判別閾(しきい)値を調整して、折れじわが多く存在する媒体を排除するようになっている。また、メカ的な方法で媒体の厚みを検出することによって、媒体の折れじわ等を検出することができる媒体鑑別装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開2006−226859号公報
【特許文献2】特開2002−303679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の媒体鑑別装置においては、メカ的な方法で媒体の厚みを検出するようになっているので、海外紙幣のように印刷の凹凸が大きい媒体、厚さにばらつきのある媒体、セキュリティスレッドが厚い媒体等の場合、しわが多く存在する媒体を確実に判別することは困難である。
【0006】
本発明は、前記従来の媒体鑑別装置の問題点を解決して、微分フィルタによるフィルタ処理を媒体の画像に施すことによって、折れじわの特徴を正確に識別することができ、媒体の傷み度合いを正確に判別し、傷み度合いの激しい媒体を確実に排除することができる媒体鑑別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の媒体鑑別装置においては、媒体の画像を取得する画像取得部と、微分フィルタによるフィルタ処理を前記画像に施すフィルタ処理部と、該フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、前記フィルタ処理画像から前記媒体の傷み度合いを抽出する特徴抽出部と、前記傷み度合いに基づいて前記媒体が正常であるか異常であるかを判定する判定部とを有する。
【0008】
本発明の他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記判定部の判定結果に従って前記媒体を格納するボックスを切り替える切り替え制御部を有する。
【0009】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記特徴抽出部は、前記フィルタ処理画像の所定の領域から分散の特徴値を抽出する。
【0010】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、媒体の画像を取得する画像取得部と、微分フィルタによるフィルタ処理を前記画像に施すフィルタ処理部と、該フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、前記フィルタ処理画像にラベリング処理を施すラベリング処理部と、前記ラベリング処理の結果に基づいて必要の無い特徴を排除する排除部と、前記必要の無い特徴が排除された画像から貼(は)り合わせの特徴を抽出する特徴抽出部と、判定閾値を格納する判定閾値格納部と、前記貼り合わせの特徴の特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【0011】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記排除部は、折れじわの特徴を排除する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、媒体鑑別装置においては、微分フィルタによるフィルタ処理を媒体の画像に施すようになっている。これにより、折れじわの特徴を正確に識別することができ、媒体の傷み度合いを正確に判別し、傷み度合いの激しい媒体を確実に排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示す第1のブロック図であり媒体の画像認識の観点から観たブロック図、図2は本発明の第1の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示す第2のブロック図であり媒体の物理的仕分けの観点から観たブロック図である。
【0015】
図において、10は本実施の形態における媒体鑑別装置であり、ATM、CD等の自動取引装置、自動販売機、両替機、ゲーム機等の装置に配設され、媒体11の真偽を判別するために使用される。ここで、該媒体11は、例えば、紙幣であるが、ビール券、ギフト券、商品券等の金券、トラベラーズチェック、小切手、株券等の有価証券、入場券等の施設利用券、切符、帳票、カード、通帳等であってもよく、いかなる種類のものであってもよい。
【0016】
ここでは、説明の都合上、前記媒体11が紙幣である場合について説明する。この場合、前記媒体鑑別装置10は、長期間に亘(わた)る使用、折り畳みの繰り返し、乱雑な取扱い等によって折れじわが生じた媒体11としての折れじわ券における折れじわの特徴を識別することにより、媒体11の傷み度合いを抽出して、傷み度合いの激しいものであるか否かを判別するものであるが、媒体11の大きさ、形状、姿勢等を認識することができるものであってもよいし、さらに、認識した媒体11の大きさ等に基づいて、該媒体11の種類を判別することができるものであってもよい。例えば、該媒体11が我が国の紙幣である場合、千円札、二千円札、五千円札及び一万円札の4種類の金種の紙幣について、種類を判別することができることが望ましい。
【0017】
そして、前記媒体鑑別装置10は、自動取引装置のように媒体11としての紙幣を受領する装置における紙幣の搬送路や紙幣の取扱装置に配設され、受領した紙幣を鑑別する。なお、前記紙幣を受領する装置は、一般的には、銀行、信用金庫、郵便局、消費者金融会社等の金融機関の支店等の営業店や、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店の店舗等に配設されているATM、CD等の自動取引装置であるが、紙幣を受領するための装置であれば、鉄道、バス等の交通機関の券売機、飲料、タバコ等の自動販売機、両替機、ゲーム機等いかなる装置であってもよい。
【0018】
本実施の形態において、前記媒体鑑別装置10は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、通信インターフェイス等を有する。さらに、前記媒体鑑別装置10は、媒体11の画像認識の観点から、画像取得部21、フィルタ処理部22、フィルタ処理画像格納部23、分散特徴抽出部24、判定部25、結果出力部26、媒体切り替え制御部27及び判定閾値格納部28を有する。
【0019】
ここで、前記画像取得部21は、光源から光を照射して媒体11の画像を取得する機能を有し、図示されない光源及び受光センサを備える画像取得装置が取得した画像を取得する。具体的には、媒体鑑別装置10に導入された媒体11に対して光源から照射された光による透過画像又は反射画像を、前記媒体11の画像として取得する。
【0020】
そして、フィルタ処理部22は、前記画像取得部21が取得した画像にフィルタ処理として、微分フィルタとしてのSobel(ソーベル)フィルタによるフィルタ処理を施す。また、フィルタ処理画像格納部23は、前記フィルタ処理部22によってフィルタ処理が施された画像、すなわち、フィルタ処理画像を格納する。
【0021】
さらに、分散特徴抽出部24は、前記フィルタ処理画像から媒体11の傷み度合いを抽出する特徴抽出部として機能する。具体的には、フィルタ処理画像格納部23に格納されているフィルタ処理画像における所定の領域、例えば、右半分の領域における分散を計算して抽出する。つまり、フィルタ処理画像の所定の領域から分散の特徴値を抽出する。
【0022】
また、判定部25は、前記傷み度合いに基づいて媒体11が正常であるか異常であるかを判定する。具体的には、前記分散特徴抽出部24が抽出した分散の特徴値を、判定閾値格納部28にあらかじめ格納されている判定閾値と比較して、媒体11の傷み度合いを判定する。すなわち、媒体11が折れじわが多い傷み度合いの激しい券であるか否かを判定する。さらに、結果出力部26は、前記判定部25の判定結果を受けて、該判定結果を媒体切り替え制御部27に出力する。
【0023】
なお、媒体11の物理的仕分けの観点から、前記画像取得部21、フィルタ処理部22、フィルタ処理画像格納部23、分散特徴抽出部24、判定部25、結果出力部26及び判定閾値格納部28は、認識部31として把握することができる。また、前記媒体切り替え制御部27は、媒体11の物理的仕分けの観点から、切り替え制御部32、切り替え部33、異常媒体格納ボックス34及び正常媒体格納ボックス35を有する。
【0024】
ここで、前記異常媒体格納ボックス34は、判定部25によって折れじわが多い傷み度合いの激しい券、すなわち、異常媒体としての異常券であると判定された媒体11を格納する容器である。また、前記正常媒体格納ボックス35は、判定部25によって異常媒体であると判定されなかった媒体11、すなわち、正常媒体としての正常券を格納する容器である。
【0025】
そして、前記切り替え部33は、媒体鑑別装置10内における媒体11の搬送路を切り替えることによって、媒体11の搬送先を前記異常媒体格納ボックス34又は正常媒体格納ボックス35のいずれかに切り替える。また、前記切り替え制御部32は、結果出力部26が出力した判定結果に従って前記切り替え部33の動作を制御し、これにより、媒体11を格納するボックスを切り替える。
【0026】
次に、前記構成の媒体鑑別装置10の動作について説明する。
【0027】
図3は本発明の第1の実施の形態におけるフィルタ処理の動作を説明する図、図4は本発明の第1の実施の形態におけるSobelフィルタの例を示す図である。なお、図3において、(a−1)は正常券の画像、(a−2)はSobelフィルタ、(a−3)は正常券のフィルタ処理画像、(b−1)は傷みのひどい券の画像、(b−2)はSobelフィルタ、(b−3)は傷みのひどい券のフィルタ処理画像であり、図4において、(a)は水平方向のSobelフィルタ、(b)は垂直方向のSobelフィルタである。
【0028】
まず、媒体鑑別装置10に導入された媒体11が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21が前記媒体11の画像を取得する。ここでは、説明の都合上、媒体11が図3(a−1)及び(b−1)に示されるような正常媒体としての正常券11a又は異常媒体としての傷みのひどい券11bである場合について説明する。なお、該傷みのひどい券11bは、真正媒体であるが、多数の折れじわ15が存在する。
【0029】
続いて、フィルタ処理部22は、画像取得部21が取得した画像にSobelフィルタ処理を施す。この場合、図3(a−2)及び(b−2)に示されるように、微分フィルタとしてのSobelフィルタ41を使用し、正常券11a及び傷みのひどい券11bの画像にフィルタ処理を施す。なお、Sobelフィルタ41は、差分演算を行うことによって差分を検出する差分フィルタである。これにより、図3(a−3)及び(b−3)に示されるように、正常券11aのフィルタ処理画像11−1a及び傷みのひどい券11bのフィルタ処理画像11−1bを得ることができる。
【0030】
そして、フィルタ処理画像格納部23は、前記フィルタ処理画像11−1a及び11−1bを格納する。なお、図3(b−3)において、15−1は折れじわ15に対応する特徴である。
【0031】
ここで、前記Sobelフィルタ41としては、図4(a)に示されるような水平方向のSobelフィルタ41a又は図4(b)に示されるような垂直方向のSobelフィルタ41bが使用される。
【0032】
続いて、分散特徴抽出部24は、フィルタ処理画像格納部23に格納されているフィルタ処理画像11−1a及び11−1bにおける所定の領域、例えば、図3(a−3)及び(b−3)に示されるような右半分の領域42における分散を計算して抽出する。
【0033】
ここで、図3(a−3)に示されるような正常券11aのフィルタ処理画像11−1aには、Sobelフィルタ処理によって現れる折れじわ15に対応する特徴15−1が存在しないので、分散特徴抽出部24は分散の特徴値を抽出することができない。それに対し、図3(b−3)に示されるような傷みのひどい券11bのフィルタ処理画像11−1bには、Sobelフィルタ処理によって現れる折れじわ15に対応する特徴15−1が存在するので、分散特徴抽出部24は、分散の特徴値として大きな値を抽出する。
【0034】
続いて、判定部25は、前記分散の特徴値と、判定閾値格納部28に格納されている判定閾値とを比較する。例えば、図3(a−3)に示されるような正常券11aのフィルタ処理画像11−1aは、分散の特徴値がなく、判定閾値より低いので、正常媒体であると判定される。また、例えば、図3(b−3)に示されるような傷みのひどい券11bのフィルタ処理画像11−1bは、分散の特徴値が大きく、判定閾値より高いので、異常媒体であると判定される。
【0035】
そして、前記判定部25の判定結果は、結果出力部26によって、切り替え制御部32に出力される。すると、該切り替え制御部32は、結果出力部26から受信した判定結果に従って、切り替え部33の動作を制御する。
【0036】
媒体鑑別装置10に導入された媒体11が図3(a−1)に示されるような正常券11aであると、切り替え部33によってその搬送先が正常媒体格納ボックス35に切り替えられるので、前記正常券11aは正常媒体格納ボックス35内に格納される。また、媒体鑑別装置10に導入された媒体11が図3(b−1)に示されるような傷みのひどい券11bであると、切り替え部33によってその搬送先が異常媒体格納ボックス34に切り替えられるので、前記傷みのひどい券11bは異常媒体格納ボックス34内に格納される。
【0037】
このように、本実施の形態においては、媒体11の画像にSobelフィルタ41によるフィルタ処理を施し、フィルタ処理が施された画像から分散の特徴値を抽出する。これにより、折れじわ15の特徴15−1を正確に判別することができるので、傷みのひどい券11bを確実に判別して異常媒体格納ボックス34に格納することができる。したがって、傷みのひどい券11bを確実に排除することができ、傷みのひどい券11bに起因するジャムの発生を確実に防止することができる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0039】
図5は本発明の第2の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図であり媒体の画像認識の観点から観たブロック図である。
【0040】
本実施の形態において、媒体鑑別装置10は、媒体11の画像認識の観点から、前記第1の実施の形態における分散特徴抽出部24に代えて、ラベリング処理部51、貼り合わせ特徴抽出部52及び垂直方向累積部53を有する。
【0041】
そして、前記ラベリング処理部51は、フィルタ処理画像格納部23に格納されているフィルタ処理画像に対してラベリング処理を施す。また、前記貼り合わせ特徴抽出部52は、必要のない特徴を排除する排除部、及び、貼り合わせの特徴を抽出する特徴抽出部として機能し、ラベリング処理の結果に基づき面積及び長さの条件に従って折れじわの特徴を削除するとともに、貼り合わせの特徴を残留させる。さらに、前記垂直方向累積部53は、折れじわの特徴が削除された画像に対して垂直方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する。つまり、折れじわの特徴が削除された画像の垂直方向に画素単位の輝度を累積して、前記画像の特徴波形を得る。
【0042】
なお、本実施の形態において、判定部25は、前記垂直方向累積部53が取得した特徴波形のピーク値、すなわち、特徴値を、判定閾値格納部28にあらかじめ格納されている判定閾値と比較して、特徴波形の示す特徴が貼り合わせであるか否かを判定する。すなわち、媒体11が貼り合わせ券であるか否かを判定する。
【0043】
また、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0044】
次に、本実施の形態における媒体鑑別装置10の動作について説明する。まず、フィルタ処理までの動作について説明する。
【0045】
図6は本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理の動作を説明する図である。なお、図6において、(a−1)は正常券の画像、(a−2)はSobelフィルタ、(a−3)は正常券のフィルタ処理画像、(b−1)は傷みのひどい貼り合わせ券の画像、(b−2)はSobelフィルタ、(b−3)は傷みのひどい貼り合わせ券のフィルタ処理画像である。
【0046】
まず、媒体鑑別装置10に導入された媒体11が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21が前記媒体11の画像を取得する。ここでは、媒体11が図3(a−1)及び(b−1)に示されるような正常媒体としての正常券11a又は異常媒体としての傷みのひどい貼り合わせ券11cである場合について説明する。
【0047】
なお、該傷みのひどい貼り合わせ券11cは、真正媒体12と偽造媒体13とを貼り合わせたものであり、真正媒体12と偽造媒体13とを貼り合わせた箇所に示す貼り合わせ部14が存在する。また、真正媒体12には、多数の折れじわ15が存在する。
【0048】
続いて、フィルタ処理部22は、画像取得部21が取得した画像にSobelフィルタ処理を施す。この場合、図6(a−2)及び(b−2)に示されるように、微分フィルタとしてのSobelフィルタ41を使用し、正常券11a及び傷みのひどい貼り合わせ券11cの画像にフィルタ処理を施す。これにより、図6(a−3)及び(b−3)に示されるように、正常券11aのフィルタ処理画像11−1a及び傷みのひどい貼り合わせ券11cのフィルタ処理画像11−1cを得ることができる。
【0049】
そして、フィルタ処理画像格納部23は、前記フィルタ処理画像11−1a及び11−1cを格納する。なお、図6(b−3)において、14−1は貼り合わせ部14に対応する特徴である。
【0050】
次に、ラベリング処理について説明する。
【0051】
図7は本発明の第2の実施の形態におけるラベリング処理の対象となる画像の例を示す図、図8は本発明の第2の実施の形態におけるラベリング処理による特徴値の例を示す図である。
【0052】
ラベリング処理は、連続する画像を1つとみなし、その塊を検出する処理である。図7には、傷みのひどい貼り合わせ券11cの画像をラベリング処理の対象とする例が示されている。傷みのひどい貼り合わせ券11cには、貼り合わせ部14、複数の折れじわ15等を含む複数の連続する画像が含まれているので、それらの各々を塊とみなして検出する。図7に示される例においては、各塊にL1〜L8の番号が付与されている。
【0053】
前記ラベリング処理部51は、傷みのひどい貼り合わせ券11cの画像に含まれる塊L1〜L8を検出し、さらに、該塊L1〜L8のそれぞれについて、面積、長さ、及び、外接矩(く)形の縦横比を検出する。これにより、ラベリング処理による特徴値として、図8に示されるような結果を得ることができる。
【0054】
そして、貼り合わせ特徴抽出部52は、ラベリング処理部51によるラベリング処理の結果に基づき、特徴値としての面積及び長さに従って、貼り合わせ部14の判別に不要な塊を削除する。
【0055】
例えば、図8に示される例において、面積が120以下の塊を折れじわ15として削除する。その結果、塊L2〜L7は削除される。さらに、例えば、フィルタ処理画像においては、貼り合わせ部14の特徴14−1は縦線になるので、縦横比が10以下の塊は貼り合わせ部14の特徴14−1でないとして削除する。その結果、塊L1は削除される。そして、ラベリング処理が施された画像、すなわち、ラベリング処理画像には、塊L8だけが残ることとなる。
【0056】
次に、前記媒体鑑別装置10のフィルタ処理から後の動作について説明する。
【0057】
図9は本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理から後の動作を説明する図である。なお、図9において、(a−1)は傷みのひどい貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(a−2)は傷みのひどい貼り合わせ券のラベリング処理画像、(b−1)は傷みのひどい貼り合わせ券のフィルタ処理画像の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフ、(b−2)は傷みのひどい貼り合わせ券のラベリング処理画像の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフである。
【0058】
ラベリング処理部51は、フィルタ処理画像格納部23に格納されているフィルタ処理画像11−1a及び11−1cに対して、ラベリング処理を施す。なお、これ以降は、傷みのひどい貼り合わせ券11cのフィルタ処理画像11−1cについてのみ説明し、正常券11aのフィルタ処理画像11−1aについての説明は省略する。
【0059】
ラベリング処理により、図9(a−1)に示されるような傷みのひどい貼り合わせ券11cのフィルタ処理画像11−1cの場合、領域42〜44に含まれる塊が検出され、図7に示されるような番号が付与された後、各塊について図8に示されるような特徴値を得ることができる。
【0060】
続いて、貼り合わせ特徴抽出部52は、ラベリング処理部51によるラベリング処理の結果に基づき、特徴値としての面積及び長さに従って、貼り合わせ部14の判別に不要な塊を削除する。これにより、図9(a−2)に示されるような傷みのひどい貼り合わせ券11cのラベリング処理画像11−2cを得ることができる。
【0061】
続いて、垂直方向累積部53が、図9(a−2)に示されるような傷みのひどい貼り合わせ券11cのラベリング処理画像11−2cに対し、垂直方向に画素の輝度を累積すると、図9(b−2)に示されるような輝度を表す波形61−1を得ることができる。該波形61−1には、貼り合わせ部14の特徴14−1に対応して形成されるピーク点62−1が含まれる。
【0062】
続いて、判定部25は、前記波形61−1におけるピーク点62−1の値を特徴値として抽出し、該特徴値と判定閾値格納部28に格納されている判定閾値とを比較する。図9(b−2)に示される例において、判定閾値はTaである。この場合、特徴値が判定閾値より高いので、前記ピーク点62−1は貼り合わせ部14の特徴14−1に対応するものであって、媒体11は貼り合わせ券であると判定される。そして、前記判定部25の判定結果は、結果出力部26によって出力される。
【0063】
仮に、ラベリング処理が行われないとすると、垂直方向累積部53は、図9(a−1)に示されるような傷みのひどい貼り合わせ券11cのフィルタ処理画像11−1cに対し、垂直方向に画素の輝度を累積することとなり、図9(b−1)に示されるような輝度を表す波形61を得ることになってしまう。該波形61には、貼り合わせ部14の特徴14−1に対応して形成されるピーク点62の他に、折れじわ15の特徴15−1に対応して形成されるピーク点が多数含まれる。そのため、判定部25は、媒体11が貼り合わせ券であるか否かを正確に判別することができなくなってしまう。
【0064】
このように、本実施の形態においては、媒体11の画像にSobelフィルタ41によるフィルタ処理を施し、さらに、ラベリング処理を施して特徴値を抽出する。これにより、折れじわ15の特徴を排除することができるので、貼り合わせ部14の特徴を正確に判別することができる。したがって、折れじわ15が多く存在する傷みのひどい貼り合わせ券11cであっても、貼り合わせ券であることを確実に判別することができる。
【0065】
なお、前記第1及び第2の実施の形態においては、媒体11の画像のフィルタ処理に使用するフィルタがSobelフィルタである場合について説明したが、フィルタは必ずしもSobelフィルタに限定されるものではなく、微分フィルタであればいかなる種類のフィルタであってもよく、例えば、Prewittフィルタ、グラディエントフィルタ等であってもよい。
【0066】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示す第1のブロック図であり媒体の画像認識の観点から観たブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示す第2のブロック図であり媒体の物理的仕分けの観点から観たブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるフィルタ処理の動作を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるSobelフィルタの例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図であり媒体の画像認識の観点から観たブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理の動作を説明する図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態におけるラベリング処理の対象となる画像の例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるラベリング処理による特徴値の例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理から後の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
10 媒体鑑別装置
11 媒体
11−1a、11−1b、11−1c フィルタ処理画像
14−1、15−1 特徴
15 折れじわ
21 画像取得部
22 フィルタ処理部
23 フィルタ処理画像格納部
24 分散特徴抽出部
25 判定部
28 判定閾値格納部
32 切り替え制御部
41、41a、41b Sobelフィルタ
42、43、44 領域
51 ラベリング処理部
52 貼り合わせ特徴抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)媒体の画像を取得する画像取得部と、
(b)微分フィルタによるフィルタ処理を前記画像に施すフィルタ処理部と、
(c)該フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、
(d)前記フィルタ処理画像から前記媒体の傷み度合いを抽出する特徴抽出部と、
(e)前記傷み度合いに基づいて前記媒体が正常であるか異常であるかを判定する判定部とを有することを特徴とする媒体鑑別装置。
【請求項2】
前記判定部の判定結果に従って前記媒体を格納するボックスを切り替える切り替え制御部を有する請求項1に記載の媒体鑑別装置。
【請求項3】
前記特徴抽出部は、前記フィルタ処理画像の所定の領域から分散の特徴値を抽出する請求項1又は2に記載の媒体鑑別装置。
【請求項4】
(a)媒体の画像を取得する画像取得部と、
(b)微分フィルタによるフィルタ処理を前記画像に施すフィルタ処理部と、
(c)該フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、
(d)前記フィルタ処理画像にラベリング処理を施すラベリング処理部と、
(e)前記ラベリング処理の結果に基づいて必要の無い特徴を排除する排除部と、
(f)前記必要の無い特徴が排除された画像から貼り合わせの特徴を抽出する特徴抽出部と、
(g)判定閾値を格納する判定閾値格納部と、
(h)前記貼り合わせの特徴の特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを有することを特徴とする媒体鑑別装置。
【請求項5】
前記排除部は、折れじわの特徴を排除する請求項4に記載の媒体鑑別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−134542(P2010−134542A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307655(P2008−307655)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】