嫌気性微生物による地下水および/または土壌の浄化判定方法
【課題】揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法を提供すること。
【解決手段】揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(A)〜(D)を含む判定方法。
(A)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する工程、
(B)採取した地下水を嫌気性条件下で培養するか、または採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(C)工程(B)で用いる地下水と同じ地下水を工程(B)の培養物に供給して、供給した地下水と同量の培養物を回収する工程、および
(D)工程(C)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【解決手段】揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(A)〜(D)を含む判定方法。
(A)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する工程、
(B)採取した地下水を嫌気性条件下で培養するか、または採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(C)工程(B)で用いる地下水と同じ地下水を工程(B)の培養物に供給して、供給した地下水と同量の培養物を回収する工程、および
(D)工程(C)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性微生物浄化法は、汚染された地盤に対し有機資材を注入し、地盤内に適切な嫌気環境を作り出すことで有用な脱塩素化微生物を活性化させ、VOC分子中の塩素を水素に置換(脱塩素化)する浄化技術である。地盤中の酸化還元電位を人為的に調整することで、VOCの脱塩素化は以下のように進行すると考えられる。
(i)有機物供給等によって酸素、硝酸イオンが微生物により消費され、脱塩素化に必要である嫌気環境が形成される。
(ii)形成された嫌気環境により、脱塩素化に関与する微生物が活性化し、テトラクロロエチレン(PCE)→トリクロロエチレン(TCE)→cis−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)の脱塩素化が進行する。
(iii)還元環境が一定期間継続されると、嫌気環境下で増殖・活性化した脱塩素化微生物によりcis−1,2−DCE→塩化ビニル(VC)→エチレン、エタンの脱塩素化が進行する。
【0003】
また、一般的に、TCEからジクロロエチレン(DCE)、およびcis−1,2−DCEからVC、エチレン、エタンへの脱塩素化には、図1で示す酸化還元電位の還元環境が必要である。VOCの完全脱塩素化は、有用な脱塩素化微生物が地盤中に存在しないと進行しないことが報告されている(非特許文献1)。したがって、汚染サイトに嫌気性微生物浄化法を適用するためには、事前に嫌気性微生物浄化法の浄化適合性を検証することが重要と考えられている。
【0004】
cis−1,2−DCEやVCの脱塩素化にはデハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌の関与が明らかにされているため、嫌気性微生物浄化法の浄化適合性を判断する方法として、これらの有用菌や有用菌による分解遺伝子をDNA検出技術により確かめることが有効であると報告されている(非特許文献1〜3、特許文献1)。また、遺伝子解析による地下水中のデハロコッコイデス属の検出と、室内培養試験の併用より適合性を確認している事例も有る(非特許文献1、4および5)。
【0005】
一方、実際に汚染されている土壌および地下水を用いて培養試験を行い、VOCが脱塩素化されることを確認することで有用細菌が存在することを確かめる方法も存在している(特許文献2および3)。
【0006】
しかしながら、上記分解微生物および分解に係る遺伝子のDNA検出による判定では、DNA検出技術において、環境中のサンプルから微生物のゲノムDNAを抽出し、PCR法によって検出する技術が一般的に用いられており、一方、汚染地盤の環境サンプルにはゲノムDNAの取得やPCRを阻害する物質が地盤環境中に存在している可能性もあるため、デハロコッコイデス属の細菌数が相対的に少ない場合には、正確な情報を得られないケースも有る(非特許文献6)。また、有害物質による脱塩素化の阻害影響等も報告されており(非特許文献7)、遺伝子解析によりデハロコッコイデス属が存在したという結果だけで脱塩素化が可能と判断することには浄化適合性を誤診する可能性を伴う。
【0007】
実際の汚染サイトから得られた土壌や地下水を用いて培養試験を行いVOCが脱塩素化されることを確認する浄化適合性試験方法は、有用な脱塩素化微生物の存在を汚染物質の脱塩素化を確認しながら調べることができる点で優れている。しかしながら、その浄化適合性試験方法で行われる培養試験には以下の問題点が有る。
(1)培養操作が煩雑であり、熟練を要する。
(2)汚染地盤における人為的な活性化方法を室内培養条件に忠実に再現ができないと、意図する結果を得られない。または、間違った診断をする可能性がある。
(3)培養には長期の試験期間を要する。
【0008】
具体的な例を挙げると、これまで報告されている培養方法の場合、温度設定が実際の地盤環境と異なるため、培養後に優占種となる微生物相が実地盤で活性化した場合の微生物相と異なる恐れがある(特許文献2および3)。また、脱塩素化の対象となる地下水に硫化ナトリウムなどの還元試薬を用いて連続培養する方法(特許文献4)は、有機資材を用いて嫌気環境を形成する方法とは異なるため、上記と同様の問題が残る。
【0009】
したがって、培養装置および方法はできるだけ実地盤における活性化方法を的確に再現できる培養方法を必要とするが、十分な検討は行われていなかった。また、有機資材を投入した後の脱塩素化の傾向として、cis−1,2−DCE以降の脱塩素化が進行するまでに2〜12ヶ月程度の停滞期間が存在することが確認されている。そのため、培養装置には培養期間が長期化しても定期的に試料を採取して培養状況を評価する必要があるが、長期的な培養にも対処可能な培養方法も確立されていなかった。
【0010】
従来から嫌気性微生物の培養によく用いられる回分式培養法は、浄化対象とする地盤より採取した地下水と有機資材を密閉型のバイアル瓶に入れて培養する方法であり、汚染濃度を経時的に測定して適合性を評価することができ、回分式培養法の利点としては、ブチルゴム栓により密閉できるため嫌気性微生物の培養が容易にできること、比較的小さいスケールで培養可能であり、多数の条件の比較試験等に適した培養法であることが挙げられる。
【0011】
しかしながら、VOCの脱塩素化試験では、cis−1,2−DCE以降の脱塩素化が停滞することがあり、cis−1,2−DCE以降の脱塩素化を確認する試験では、本発明者らの検討(後述)により、以下のような問題が生じることがあることがわかった。
(4)培養本数が多く必要である。
(5)培養が予定より長期化し、培養結果が得られない場合がある。
(6)栄養源が不足した場合に栄養源が供給できない。
(7)酸化還元電位が安定しない。
【0012】
【特許文献1】特開2002−345473号公報
【特許文献2】特開2006−214782号公報
【特許文献3】特開2006−26553号公報
【特許文献4】特開2006−262842号公報
【非特許文献1】Hendrickson, E. R., et al. 2002. Appl. Environ. Microbiol. 68:485-495
【非特許文献2】Miller, J. A., et al. 2004, Appl. Environ. Microbiol. 70:4880-4888
【非特許文献3】Krajmlnik-Brown R. et al. 2004, Appl. Environ. Microbiol. 70:6347-6351
【非特許文献4】Fennell D. E, et al., 2001, Environ. Sci. Technol.1830-1839
【非特許文献5】F. E. Loffler, et al. 2000, Appl. Environ. Microbiol. 66:1369-1374
【非特許文献6】中島誠ほか,2005,地下水土壌汚染とその防止対策に関する研究集会,242−247
【非特許文献7】新庄尚史ほか,2006,地下水土壌汚染とその防止対策に関する研究集会,163−166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記(1)〜(7)の問題に対応すべく、従来とは異なる培養法を用いて、揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、VOCに汚染された土壌、地下水の現場環境に近い条件下で、土壌、地下水に含まれる嫌気性微生物を半連続培養法(下記の工程(B)〜(C)または工程(F)〜(H)を繰り返す培養法)で培養することにより、上記(1)〜(7)の問題を回避でき、実際の地盤環境に即した、より適切な判定が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
〔1〕揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(A)〜(D)を含む判定方法。
(A)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する工程、
(B)採取した地下水を嫌気性条件下で培養するか、または採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(C)工程(B)で用いる地下水と同じ地下水を工程(B)の培養物に供給して、供給した地下水と同量の培養物を回収する工程、および
(D)工程(C)で回収した培養物を分析して地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【0016】
〔2〕工程(B)〜(D)を繰り返すことをさらに含む、〔1〕に記載の判定方法。
〔3〕工程(B)において、採取した地下水の現場温度の±5℃の温度条件下で、地下水を培養することをさらに含む、〔1〕または〔2〕に記載の判定方法。
〔4〕工程(B)において、地下水に、揮発性有機塩素化合物、有機資材および栄養塩の少なくとも1つを添加して、地下水を培養することをさらに含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の判定方法。
【0017】
〔5〕嫌気性微生物がデハロコッコイデス属細菌である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の判定方法。
〔6〕揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(E)〜(I)を含む判定方法。
(E)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水と土壌を採取する工程、
(F)採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(G)工程(F)とは別に、採取した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(H)工程(F)の培養物を工程(G)の 培養物に供給して、供給した培養物と同量の工程(G)の培養物を回収する工程、および
(I)工程(H)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【0018】
〔7〕工程(F)〜(I)を繰り返すことをさらに含む、〔6〕に記載の判定方法。
〔8〕工程(F)および(G)において、採取した地下水の現場温度の±5℃の温度条件下で、地下水を培養することをさらに含む、〔6〕または〔7〕に記載の判定方法。
〔9〕工程(F)および(G)において、地下水に、揮発性有機塩素化合物、有機資材および栄養塩の少なくとも1つを添加して、地下水を培養することをさらに含む、〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の判定方法。
〔10〕嫌気性微生物がデハロコッコイデス属細菌である、〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の判定方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、揮発性有機塩素化合物に汚染された地下水および/または土壌の現場環境と近い条件下で嫌気性微生物を培養する培養方法により、揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを、適切に判断できる。また、現時点で揮発性有機塩素化合物を脱塩素化することが知られているデハロコッコイデス属細菌だけでなく、未知の微生物による浄化についても判定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、揮発性有機塩素化合物(VOC)で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(A)〜(D):
(A)VOCで汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する工程、
(B)採取した地下水を嫌気性条件下で培養するか、または採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(C)工程(B)で用いる地下水と同じ地下水を工程(B)の培養物に供給して、供給した地下水と同量の培養物を回収する工程、および
(D)工程(C)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物がVOCを分解しているか否かを判断する工程
を含む。
【0021】
VOCは、例えば、塩素を持つテトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、また、それらの分解生成物であるcis−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)などである。
【0022】
地下水および/または土壌に存在し、VOCを分解する嫌気性微生物として、デハロコッコイデス属細菌が挙げられるが、これに限定されず、同定されていない未知の微生物でもよい。
【0023】
工程(A)において、VOCで汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する。このとき、採取した地下水の現場温度を測定しておくことが好ましい。採取した地下水は、工程(B)で培地として培養に用いる。また地下水と土壌を採取した場合は、地下水に土壌を添加し、培養に用いる。
【0024】
以下、工程(B)と(C)について、これらの工程で好ましく用いられる培養装置1(図2)を参照しながら説明するが、培養装置はこれに限定されない。
【0025】
図2において、滅菌した地下水培養瓶1(ねじ口ガラス瓶など、容量は好ましくは0.5〜10L、より好ましくは2L以上)に、工程(A)で採取した地下水を入れる。嫌気条件下で培養するため、地下水は、地下水培養瓶1がいっぱいになるように入れることが好ましい。攪拌培養するときは回転子10を入れる。また、有機資材(例えば廃蜜糖、ポリ乳酸など、濃度は好ましくは0.02重量%〜0.1重量%)、栄養塩(例えばKH2PO4、K2HPO4、硝酸塩、アンモニウム塩、酵母エキスなど、濃度は好ましくは有機物の炭素量(C)に対してP量が5%以下)、VOCなどを添加してもよい。工程(A)で土壌も採取した場合は、土壌を地下水培養瓶1にさらに入れる。土壌量は、地下水の5〜20重量%が好ましい。また、地下水培養瓶1に担体を入れてもよく、担体として、例えば珪砂、ガラスビーズ、高分子材料等が挙げられ、特に限定されない。土壌、担体の存在は、ミクロな還元環境の形成に役立ち、培養期間の短縮に寄与すると考えられる。
【0026】
地下水培養瓶1を、ステンレスチューブ2と3を挿入した密栓可能な蓋で閉じる。この蓋は、ブチルゴム栓4にステンレスチューブ2と3が挿入され、プラスチックキャップ5で固定するものである。なお、蓋は、内側にテフロンコーティングを施したプラスチックキャップにステンレスチューブを固定した構造でもよい。ステンレスチューブ2の先端は、回転子の影響のない範囲で地下水培養瓶1の中央部より下部に設置する(地下水培養瓶1の底部から3cmの位置が好ましい)。ステンレスチューブ3の先端は、地下水の上面に接する位置に設置する(蓋下部から、1cm程度出るように挿入することが好ましい)。ステンレスチューブ2と3に、ステンレス製のバルブ6を取り付け、培養中は両バルブを閉めておく。
【0027】
滅菌した交換地下水貯留瓶8(ねじ口ガラス瓶など、容量は好ましくは0.5〜10L、より好ましくは2L以上)に、地下水(地下水培養瓶1に入っているものと同じ地下水、または地下水を濾過滅菌処理したもの)を入れる。この地下水が、工程(C)で供給する地下水となる。地下水に、上記有機資材、栄養塩、VOCなどをさらに添加してもよい。
【0028】
交換地下水貯留瓶8は、地下水培養瓶1と同様にしてブチルゴム栓とプラスチックキャップで密栓する。ブチルゴム栓には、ステンレスチューブ2とステンレスチューブ13が挿入されている。ステンレスチューブ13で、交換地下水貯留瓶8と窒素ガスで充填されたテフロンフィルムパック7とを連結し、ステンレスチューブ13にバルブ6を取り付ける。交換地下水貯留瓶8の気相部を、テフロンフィルムパック7からステンレスチューブ13を通って送られる(窒素ガスライン)窒素ガスで置換しておく。またステンレスチューブ2に、液送ポンプ11を備える。
【0029】
工程(B)の培養は、採取した地下水の現場温度の±5℃、より好ましくは±3℃、更に好ましくは±1℃の範囲の温度で行うことが好ましい。攪拌培養する場合は、スターラー9と回転子10を用いて、例えば80〜100rpmで攪拌すればよい。
【0030】
工程(C)において、地下水培養瓶1で培養した地下水の一部を回収する。回収した地下水は分析用の試料として用いることができる。採取するには、ステンレスチューブ2と3のバルブ6を開け、液送ポンプ11により、交換地下水貯留瓶8の地下水をステンレスチューブ2の矢印方向に流し(交換地下水流入ライン)、地下水培養瓶1に流入する。流入した量だけ、ステンレスチューブ3の矢印方向に培養した地下水が流れて(培養液採取ライン)採取できる(サンプリング)。採取の際、培養中の地下水を空気に触れずに採取できるので、嫌気環境を壊さない。また、栄養源が不足した場合に新たな地下水(培地)を供給することにより、有機物等を再供給できる。さらに、採取した量と同量の地下水を供給することにより、地下水培養瓶1中の空へき量・圧力を一定に保つことができる。従って、空へきへのVOCの揮発量も一定にすることができる。実際にブランク試験も行っており、揮発による損失は殆どないことが確認されている(データは示さず)。
【0031】
採取の間隔および量は、特に限定されず、回分試験のように制限を受けずに、頻繁に採取することが可能である。例えば、試験開始直後は、数日おきに測定し、安定した状態(cis1,2−DCE停滞期など)では、2週間に1回度程度の採取を行えばよい。採取の量は、後述の分析の項目が多ければ、その分多くすればよい。VOCの測定のみ行う場合は、例えば1〜5mlの採取でよく、TOC、イオン組成、ORP、ATPなど多数測定する場合は、例えば10〜25ml(2L培養であれば1%程度)を採取すればよい。なお、汚染現場の地下水流量が速い場合などは、地下水の採取量、回数を増やしてもよい。
【0032】
工程(D)において、工程(C)で採取した地下水を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が、VOCを分解しているか否かを判断する。
【0033】
分析方法は特に限定されないが、公知の方法、測定装置を用いることができる。例えばVOCの濃度の測定(ヘッドスペースGC−MS法など)、全有機体炭素(TOC)の測定、酸化還元電位(ORP)の測定、pHの測定、イオン組成の分析、ATPの測定、嫌気性微生物量の測定(MPN法など)、嫌気性微生物の遺伝子解析(例えばデハロコッコイデス属細菌の塩基配列(GeneBankなどのデータベースで検索可能)からプローブを設計し、蛍光物質等で標識したプローブを作製して、分析試料中の細菌をハイブリダイゼーションにより検出したり、プライマーを用いて、分析試料から調製した核酸を鋳型としてPCRで増幅して、細菌を検出、定量する)などを行えばよい。分析方法は複数組合わせて行ってもよい。
【0034】
上記工程(B)〜(D)を繰り返し、経時的に分析結果を得る。
VOCが経時的に分解され、あるいはVOCを分解する嫌気性微生物が増殖していれば、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物がVOCを分解していると判断し、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能であると判定する。
【0035】
VOCが分解されず、あるいはVOCを分解する嫌気性微生物が存在しない、増殖しないと判断された場合には、地下水および/または土壌にVOCを分解する嫌気性微生物を移植することや、嫌気性微生物が増殖する環境の整備等の検討を行うことが好ましい。
【0036】
培養装置1のメリットとして、以下が挙げられる。
(I)培養装置の構造が簡単である。
(II)水質分析、微生物解析に必要な量だけの培養した地下水を回収でき、培養中の地下水を空気に触れずに採取できる(嫌気環境を壊さない)。
(III)分析に必要量の培地を採取してもORPの上昇は殆どない。例えば2Lの培養容器から水質分析等の為に20ml採取した場合、培養容器は約1%程度の地下水が交換採取されるが、ORPの変動は僅かであり、すぐに同等値に戻ることを確認している。
(IV)期間に左右されず、エタン、エチレンまでに至る長期培養期間を最適な条件で培養可能である。
(V)地下水交換、栄養源等の供給が容易なため、集積培養にも適している。
(VI)汚染地盤の土壌を入れた試験にも対応しやすい培養装置である。
(VII)担体を入れた培養にも対応しやすい培養装置である。
(VIII) 汚染源であるVOCを再添加し、長期的な脱塩素化効果を確認する試験法としても用いることができる。
【0037】
培養装置1のメリット(VI)の土壌を入れる培養方法は、地下水のみを用いる場合と比較して、より地盤環境に近い条件で培養を行うことにより、地盤環境で実際の起こりうる現象を忠実に再現することが可能になる特長がある。しかしながら、地下水培養瓶に直接土壌を添加すると以下の問題が生ずる恐れがある。
・培養地下水中のVOCの土壌粒子への収着
・VOC収着土粒子の不均一な混入によるVOC測定結果のバラツキ
・その他土壌粒子による分析操作の阻害(顕微鏡観察など)
そこで、本発明において、以下の工程(E)〜(I):
(E)VOCで汚染された地下水と土壌を採取する工程、
(F)採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(G)工程(F)とは別に、採取した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(H)工程(F)の培養物を工程(G)の 培養物に供給して、供給した培養物と同量の工程(G)の培養物を回収する工程、および
(I)工程(H)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物がVOCを分解しているか否かを判断する工程
を含む、揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法を開発した。
【0038】
工程(E)において、VOCで汚染された地下水と土壌を採取する。このとき、採取した地下水の現場温度を測定しておくことが好ましい。採取した地下水は、工程(G)で培地として培養に用いる。また、採取した土壌を地下水に添加して、工程(F)で培養に用いる。
【0039】
以下、工程(F)〜(H)について、これらの工程で好ましく用いられる培養装置2(図3)を参照しながら説明するが、培養装置はこれに限定されない。
【0040】
培養装置2は、地下水培養瓶1と交換地下水貯留瓶8の間に土壌培養瓶12を設置した装置である。土壌培養瓶12で、工程(E)で採取した土壌を地下水に添加して培養する(工程(F))。工程(G)で培養した地下水の一部を採取し、工程(F)で培養した地下水(土壌上澄み液)を供給する(工程(H))。このようにすることにより、汚染地盤に存在する地下水だけでなく土壌に付着した微生物によるVOCの脱塩素効果が確認できるため、より地盤環境に近い条件での培養試験結果が得られる。
【0041】
図3において、滅菌した地下水培養瓶1に、工程(E)で採取した地下水を入れる。嫌気性条件下で培養するため、地下水は、地下水培養瓶1がいっぱいになるように入れることが好ましい。攪拌培養するときは、回転子10を入れる。また、上記濃度の有機資材、栄養塩、VOCなどを添加してもよい。さらに、地下水培養瓶1に担体を入れてもよく、担体としては、例えば珪砂、ガラスビーズ、高分子材料等が挙げられ、特に限定されない。
【0042】
地下水培養瓶1を、ステンレスチューブ2と3を挿入した密栓可能な蓋で閉じる。ステンレスチューブ2の先端は、回転子の影響のない範囲で地下水培養瓶1の中央部より下部に設置する(地下水培養瓶1の底部から3cmの位置が好ましい)。ステンレスチューブ3の先端は、地下水の上面に接する位置に設置する(蓋下部から、1cm程度出るように挿入することが好ましい)。ステンレスチューブ2と3に、ステンレス製のバルブ6を取り付け、培養中は両バルブを閉めておく。
【0043】
滅菌した土壌培養瓶12に、VOCに汚染された地盤の土壌(地下水培養瓶1と同じ汚染サイトから採取した土壌が好ましい)と地下水を入れる。土壌量は、地下水の5〜20重量%が好ましい。攪拌培養するときは回転子10を入れる。また、上記濃度の有機資材(地下水培養瓶1と同じものが好ましい)、栄養塩、VOCなどを添加してもよい。嫌気条件下で培養するため、地下水は、土壌培養瓶12がいっぱいになるように入れることが好ましい。土壌培養瓶12を、ブチルゴム栓とプラスチックキャップで密栓し、ブチルゴム栓にはステンレスチューブ2と14が挿入されている。
【0044】
滅菌した交換地下水貯留瓶8に、地下水(地下水培養瓶1に入っているものと同じ地下水、または地下水を濾過滅菌処理したものが好ましく、有機資材、栄養塩、VOCなどを添加してもよい)を入れる。交換地下水貯留瓶8を、ブチルゴム栓とプラスチックキャップで密栓し、ブチルゴム栓にはバルブ6付きステンレスチューブ14とステンレスチューブ13が挿入されている。ステンレスチューブ13で、窒素ガスで充填されたテフロンフィルムパック7と交換地下水貯留瓶8を連結し、ステンレスチューブ13にバルブ6を取り付ける。交換地下水貯留瓶8の気相部を、テフロンフィルムパック7からステンレスチューブ13を通って送られる(窒素ガスライン)窒素ガスで置換しておく。また、ステンレスチューブ14に液送ポンプ11を備える。土壌培養瓶12の培養中はステンレスチューブ2と14のバルブ6を閉じておく。
【0045】
工程(F)および(G)の培養は、採取した地下水の現場温度の±5℃、より好ましくは±3℃、更に好ましくは±1℃の範囲の温度で行うことが好ましい。攪拌培養する場合は、スターラー9と回転子10を用いて、例えば80〜100rpmで攪拌すればよい。
【0046】
工程(H)において、地下水培養瓶1で培養した地下水の一部を採取する。採取した地下水は分析用の試料として用いることができる。採取するには、ステンレスチューブ2、3および14のバルブ6を開け、液送ポンプ11により、交換地下水貯留瓶8の地下水をステンレスチューブ14の矢印方向に流して(交換地下水流入ライン)土壌培養瓶12に流入し、土壌培養瓶12の土壌上澄み液をステンレスチューブ2の矢印方向に流して(土壌液流入ライン)地下水培養瓶1に流入する。流入した量だけ、ステンレスチューブ3の矢印方向に培養した地下水が流れて(培養液採取ライン)採取できる(サンプリング)。なお、土壌培養瓶12の土壌上澄み液を地下水培養瓶1へ流入するときに、撹拌をとめて沈降性の土粒子が沈んだ後に上澄み液を流入するようにする(停止の目安は5〜10分)。また、地下水培養瓶1の培養と土壌培養瓶12の培養は、同時期に開始してもいいが、土壌培養瓶12を予め馴養し、土壌上澄み液を地下水培養瓶1への流入に用いてもよい。採取の間隔および量は、工程(C)と同様にすればよい。
【0047】
工程(I)において、工程(H)で採取した地下水を分析して、汚染された地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が、VOCを分解しているか否かを判断する。分析方法は工程(D)と同様にすればよい。
【0048】
上記工程(F)〜(I)を繰返し、経時的に分析結果を得る。
地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能であるかどうかの判定は、上述のとおりである。
【0049】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、工程(B)〜(C)または工程(F)〜(H)の繰返しを半連続培養法ということがある。
【実施例】
【0050】
[比較例1]
回分式培養法(従来培養法)の評価
100mlバイアル瓶(15本)にVOCの汚染サイトの地下水と有機資材A(廃蜜糖)を適量(濃度0.02重量%、参照文献:特開2006−320848号公報)入れ、テフロンコーティング加工したブチルゴム栓で密閉し、20℃で培養した。20℃は汚染サイトの地下水の温度である。培養経過ごとにバイアル瓶を回収して分析試料とし、VOC、TOC、ORPを測定した。なお、VOCの測定は、ヘッドスペースGC−MS法(アジレント テクノロジー)、TOCの測定は全有機炭素計(島津製作所)、ORPの測定は酸化還元電位計(堀場製作所)で行った。
【0051】
結果を図4〜6に示す。
回分試験では、1条件1回のサンプリングに1〜3本のバイアル瓶を回収し、分析試料とした。VOCの経時変化については(図4)、3ヶ月を経過してもcis−1,2−DCEの脱塩素化を確認することができなかった。またTOCの経時変化については(図5)、培養初期の有機物消費量が大きく、添加量の85%以上が培養1ヶ月で消費され、脱塩素化が進まなかった。ORPの経時変化については(図6)、数値が安定しておらず、テフロン加工したブチルゴム栓を用いても長期の培養により空気が混入するものと考えられる。回分試験では、ブチルゴム栓部に注射針を刺して採取したり、源栄養源を注入していたりする事例があるが、この場合ブチルゴム栓に穴が開くため、VOC成分が揮発や空気の混入を誘発して、正しい試験結果が得られないと考えられる。
【0052】
以上の結果から、回分式培養法は、培養本数が多く必要である、培養が予定より長期化し、培養結果が得られない場合がある、栄養源が不足した場合に栄養源が供給できない、酸化還元電位が安定しない、という問題点があることがわかる。
【0053】
[実施例1]
半連続培養法による浄化適合性の評価
培養装置1を用いて、地下水培養瓶1に汚染サイト地下水と上記有機資材Aを入れ、交換地下水貯留瓶8に汚染サイト地下水を入れ、交換地下水貯留瓶8の空気を窒素ガスで置換した。培養は、回転子とスターラーで攪拌しながら20℃で行った。
【0054】
サンプリングは、培養6日後に実施し、その後は2週間に1回程度の頻度で行った。交換地下水貯留瓶8の地下水をポンプで地下水培養瓶1に流入し、地下水培養瓶1中の培養した地下水を押出すようにして約10〜25ml採取し、分析試料とした。VOCとORPを比較例1と同様にして測定した。
【0055】
結果を図7および8に示す。VOC培養100日経過頃からcis−1,2−DCEの脱塩素化、VCの上昇が確認された(図7)。cis−1,2−DCEの脱塩素化が停滞したため培養が長期化したが、安定した還元状態を維持した(図8)。
【0056】
[実施例2]
培養装置1と2の比較
〔培養装置1による培養〕
図2の地下水培養瓶1に、有機資材Aの代わりに有機資材B(ポリ乳酸(HRC))を適量(乳酸ナトリウムとして0.05重量%、参照文献:2006−320848号公報)入れた以外は、実施例1と同様にして培養し、サンプリングし、VOCを測定した。また培養300日目に、デハロコッコイデス属細菌の定量をMPN法で行った。
【0057】
〔培養装置2による培養〕
図3の地下水培養瓶1に、培養装置1と同じ汚染サイト地下水と有機資材Bを入れた。土壌培養瓶12に、同じく汚染サイト地下水と有機資材B、さらに汚染サイト土壌を地下水に対して10重量%入れ、混合した。培養条件は培養装置1と同様にし、20℃で地下水培養瓶1、土壌培養瓶12ともに攪拌下で培養した。サンプリングは、土壌培養瓶12の土壌上澄み液(攪拌停止10分後の培養した地下水)を用いて地下水培養瓶1へポンプで流入し、地下水培養瓶1中の培養した地下水を押出すようにして約10〜25ml採取し、VOCを測定した。また培養300日目にデハロコッコイデス属細菌の定量をMPN法で行った。
【0058】
培養装置1のVOC測定結果を図9、培養装置2のVOC測定結果を図10に示す。有機資材Bを用いた場合、培養装置1の培養では、300日以上の培養を経ても、cis−1,2−DCEの脱塩素化は確認できなかったが(図9)、培養装置2の培養では、cis−1,2−DCEの脱塩素化が培養100日目以降見られ、VCの脱塩素化が確認された(図10)。
【0059】
培養装置1および2の細菌定量結果を図11に示す。脱塩素化に関与するデハロコッコイデス属細菌の増殖が培養装置2の培養では顕著に観測された。
以上から、本発明の判定方法において、特に培養装置2が有用であることがわかる。
【0060】
[実施例3]
VOCの供給による長期的脱塩素化能
汚染源であるVOCを定期的に供給し、VOCの脱塩素化能が長期的に可能であるか、培養装置1を用いて試験した。地下水培養瓶1に、以下の(a)〜(c)の地下水を定期的に交換地下水貯留瓶8から供給し、攪拌下、20℃で培養し、VOCを測定した。
(a)TCE添加
(b)有機物添加、TCE添加
(c)有機物+栄養塩添加、TCE添加
(栄養塩は、有機物(C):りん酸塩(P):硝酸塩(N)=100:5:1の比とした。また、リンは、KH2PO4 21.9g/L、K2HPO4 28.1g/Lの濃度で作製したりん酸緩衝液を有機物の炭素量(C)に対して、P量が1%となるように配合した。有機物は乳酸ナトリウムであり、有機物量は0.02重量%とした。参照文献:2006−320848号公報)
【0061】
初期56日目までの結果では、(b)と(c)に大きな差は見られなかった(図12及び図13参照)。また、TCEの添加回数が増加するに従い(培養期間が長期化した場合)、(c)の(有機物+栄養塩)の条件の有用性が確認された(図14〜図16)。
【0062】
以上から、TCE、有機物(+栄養塩)を繰り返し添加することが可能であり、培養条件の有用性を長期的に確認することできることがわかった。即ち、本発明に用いる培養方法は、VOCの脱塩素化微生物の集積培養法として用いることもできる。
【0063】
[実施例4]
リンの添加による効果
リンを定期的に供給し、その効果を培養装置1を用いて試験した。地下水培養瓶1に、以下の(d)、(e)の地下水を交換地下水貯留瓶8から定期的に供給し、攪拌下、20℃で培養し、VOCを測定した。
(d)乳酸ナトリウム添加
(e)乳酸ナトリウム添加、リン添加
(リンは、KH2PO4 21.9g/L、K2HPO4 28.1g/Lの濃度で作製したりん酸緩衝液を有機物の炭素量(C)に対して、P量が1%となるように配合した。乳酸ナトリウム添加量は0.02重量%とした。参照文献:特開2006−320848号公報)
【0064】
結果を図17、図18に示す。リンの添加量が多くても、脱塩素化を阻害することはないが、環境保全上なるべく低濃度の添加が望ましく、効果の得られる添加量として1mg/L程度とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の判定方法は、有機物に汚染された地下水および/または土壌の浄化技術に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】脱塩素化に適した酸化還元電位を示す。
【図2】本発明に用いる培養装置1の概略を示す。
【図3】本発明に用いる培養装置2の概略を示す。
【図4】回分式培養法によるVOCの経時変化を示す。
【図5】回分式培養法によるTOCの経時変化を示す。
【図6】回分式培養法によるORPの経時変化を示す。
【図7】半連続培養法によるVOCの経時変化を示す。
【図8】半連続培養法によるORPの経時変化を示す。
【図9】半連続培養法(培養装置1)によるVOCの経時変化を示す。
【図10】半連続培養法(培養装置2)によるVOCの経時変化を示す。
【図11】デハロコッコイデス属細菌の定量結果を示す。
【図12】交換地下水貯留瓶の地下水にVOCと有機物を添加した場合の水培養後56日目までのVOCの変化を示す。
【図13】交換地下水貯留瓶の地下水にVOC、栄養塩及び有機物を添加した場合の培養後56日目までのVOCの変化を示す。
【図14】交換地下水貯留瓶の地下水にVOCを添加(有機物無添加)した場合のVOCの経時変化を示す。
【図15】交換地下水貯留瓶の地下水に有機物とVOCを添加した場合のVOCの経時変化を示す。
【図16】交換地下水貯留瓶の地下水に有機物、栄養塩及びVOCを添加した場合のVOCの経時変化を示す。
【図17】交換地下水貯留瓶の地下水に乳酸ナトリウムを添加した場合のVOCの経時変化を示す。
【図18】交換地下水貯留瓶の地下水に乳酸ナトリウムとリンを添加した場合のVOCの経時変化を示す。
【符号の説明】
【0067】
1 地下水培養瓶
2 ステンレスチューブ
3 ステンレスチューブ
4 ブチルゴム栓
5 プラスチックキャップ
6 バルブ
7 テフロンフィルムパック
8 交換地下水貯留瓶
9 スターラー
10 回転子
11 液送ポンプ
12 土壌培養瓶
13 ステンレスチューブ
14 ステンレスチューブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性微生物浄化法は、汚染された地盤に対し有機資材を注入し、地盤内に適切な嫌気環境を作り出すことで有用な脱塩素化微生物を活性化させ、VOC分子中の塩素を水素に置換(脱塩素化)する浄化技術である。地盤中の酸化還元電位を人為的に調整することで、VOCの脱塩素化は以下のように進行すると考えられる。
(i)有機物供給等によって酸素、硝酸イオンが微生物により消費され、脱塩素化に必要である嫌気環境が形成される。
(ii)形成された嫌気環境により、脱塩素化に関与する微生物が活性化し、テトラクロロエチレン(PCE)→トリクロロエチレン(TCE)→cis−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)の脱塩素化が進行する。
(iii)還元環境が一定期間継続されると、嫌気環境下で増殖・活性化した脱塩素化微生物によりcis−1,2−DCE→塩化ビニル(VC)→エチレン、エタンの脱塩素化が進行する。
【0003】
また、一般的に、TCEからジクロロエチレン(DCE)、およびcis−1,2−DCEからVC、エチレン、エタンへの脱塩素化には、図1で示す酸化還元電位の還元環境が必要である。VOCの完全脱塩素化は、有用な脱塩素化微生物が地盤中に存在しないと進行しないことが報告されている(非特許文献1)。したがって、汚染サイトに嫌気性微生物浄化法を適用するためには、事前に嫌気性微生物浄化法の浄化適合性を検証することが重要と考えられている。
【0004】
cis−1,2−DCEやVCの脱塩素化にはデハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌の関与が明らかにされているため、嫌気性微生物浄化法の浄化適合性を判断する方法として、これらの有用菌や有用菌による分解遺伝子をDNA検出技術により確かめることが有効であると報告されている(非特許文献1〜3、特許文献1)。また、遺伝子解析による地下水中のデハロコッコイデス属の検出と、室内培養試験の併用より適合性を確認している事例も有る(非特許文献1、4および5)。
【0005】
一方、実際に汚染されている土壌および地下水を用いて培養試験を行い、VOCが脱塩素化されることを確認することで有用細菌が存在することを確かめる方法も存在している(特許文献2および3)。
【0006】
しかしながら、上記分解微生物および分解に係る遺伝子のDNA検出による判定では、DNA検出技術において、環境中のサンプルから微生物のゲノムDNAを抽出し、PCR法によって検出する技術が一般的に用いられており、一方、汚染地盤の環境サンプルにはゲノムDNAの取得やPCRを阻害する物質が地盤環境中に存在している可能性もあるため、デハロコッコイデス属の細菌数が相対的に少ない場合には、正確な情報を得られないケースも有る(非特許文献6)。また、有害物質による脱塩素化の阻害影響等も報告されており(非特許文献7)、遺伝子解析によりデハロコッコイデス属が存在したという結果だけで脱塩素化が可能と判断することには浄化適合性を誤診する可能性を伴う。
【0007】
実際の汚染サイトから得られた土壌や地下水を用いて培養試験を行いVOCが脱塩素化されることを確認する浄化適合性試験方法は、有用な脱塩素化微生物の存在を汚染物質の脱塩素化を確認しながら調べることができる点で優れている。しかしながら、その浄化適合性試験方法で行われる培養試験には以下の問題点が有る。
(1)培養操作が煩雑であり、熟練を要する。
(2)汚染地盤における人為的な活性化方法を室内培養条件に忠実に再現ができないと、意図する結果を得られない。または、間違った診断をする可能性がある。
(3)培養には長期の試験期間を要する。
【0008】
具体的な例を挙げると、これまで報告されている培養方法の場合、温度設定が実際の地盤環境と異なるため、培養後に優占種となる微生物相が実地盤で活性化した場合の微生物相と異なる恐れがある(特許文献2および3)。また、脱塩素化の対象となる地下水に硫化ナトリウムなどの還元試薬を用いて連続培養する方法(特許文献4)は、有機資材を用いて嫌気環境を形成する方法とは異なるため、上記と同様の問題が残る。
【0009】
したがって、培養装置および方法はできるだけ実地盤における活性化方法を的確に再現できる培養方法を必要とするが、十分な検討は行われていなかった。また、有機資材を投入した後の脱塩素化の傾向として、cis−1,2−DCE以降の脱塩素化が進行するまでに2〜12ヶ月程度の停滞期間が存在することが確認されている。そのため、培養装置には培養期間が長期化しても定期的に試料を採取して培養状況を評価する必要があるが、長期的な培養にも対処可能な培養方法も確立されていなかった。
【0010】
従来から嫌気性微生物の培養によく用いられる回分式培養法は、浄化対象とする地盤より採取した地下水と有機資材を密閉型のバイアル瓶に入れて培養する方法であり、汚染濃度を経時的に測定して適合性を評価することができ、回分式培養法の利点としては、ブチルゴム栓により密閉できるため嫌気性微生物の培養が容易にできること、比較的小さいスケールで培養可能であり、多数の条件の比較試験等に適した培養法であることが挙げられる。
【0011】
しかしながら、VOCの脱塩素化試験では、cis−1,2−DCE以降の脱塩素化が停滞することがあり、cis−1,2−DCE以降の脱塩素化を確認する試験では、本発明者らの検討(後述)により、以下のような問題が生じることがあることがわかった。
(4)培養本数が多く必要である。
(5)培養が予定より長期化し、培養結果が得られない場合がある。
(6)栄養源が不足した場合に栄養源が供給できない。
(7)酸化還元電位が安定しない。
【0012】
【特許文献1】特開2002−345473号公報
【特許文献2】特開2006−214782号公報
【特許文献3】特開2006−26553号公報
【特許文献4】特開2006−262842号公報
【非特許文献1】Hendrickson, E. R., et al. 2002. Appl. Environ. Microbiol. 68:485-495
【非特許文献2】Miller, J. A., et al. 2004, Appl. Environ. Microbiol. 70:4880-4888
【非特許文献3】Krajmlnik-Brown R. et al. 2004, Appl. Environ. Microbiol. 70:6347-6351
【非特許文献4】Fennell D. E, et al., 2001, Environ. Sci. Technol.1830-1839
【非特許文献5】F. E. Loffler, et al. 2000, Appl. Environ. Microbiol. 66:1369-1374
【非特許文献6】中島誠ほか,2005,地下水土壌汚染とその防止対策に関する研究集会,242−247
【非特許文献7】新庄尚史ほか,2006,地下水土壌汚染とその防止対策に関する研究集会,163−166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記(1)〜(7)の問題に対応すべく、従来とは異なる培養法を用いて、揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、VOCに汚染された土壌、地下水の現場環境に近い条件下で、土壌、地下水に含まれる嫌気性微生物を半連続培養法(下記の工程(B)〜(C)または工程(F)〜(H)を繰り返す培養法)で培養することにより、上記(1)〜(7)の問題を回避でき、実際の地盤環境に即した、より適切な判定が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
〔1〕揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(A)〜(D)を含む判定方法。
(A)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する工程、
(B)採取した地下水を嫌気性条件下で培養するか、または採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(C)工程(B)で用いる地下水と同じ地下水を工程(B)の培養物に供給して、供給した地下水と同量の培養物を回収する工程、および
(D)工程(C)で回収した培養物を分析して地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【0016】
〔2〕工程(B)〜(D)を繰り返すことをさらに含む、〔1〕に記載の判定方法。
〔3〕工程(B)において、採取した地下水の現場温度の±5℃の温度条件下で、地下水を培養することをさらに含む、〔1〕または〔2〕に記載の判定方法。
〔4〕工程(B)において、地下水に、揮発性有機塩素化合物、有機資材および栄養塩の少なくとも1つを添加して、地下水を培養することをさらに含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の判定方法。
【0017】
〔5〕嫌気性微生物がデハロコッコイデス属細菌である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の判定方法。
〔6〕揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(E)〜(I)を含む判定方法。
(E)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水と土壌を採取する工程、
(F)採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(G)工程(F)とは別に、採取した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(H)工程(F)の培養物を工程(G)の 培養物に供給して、供給した培養物と同量の工程(G)の培養物を回収する工程、および
(I)工程(H)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【0018】
〔7〕工程(F)〜(I)を繰り返すことをさらに含む、〔6〕に記載の判定方法。
〔8〕工程(F)および(G)において、採取した地下水の現場温度の±5℃の温度条件下で、地下水を培養することをさらに含む、〔6〕または〔7〕に記載の判定方法。
〔9〕工程(F)および(G)において、地下水に、揮発性有機塩素化合物、有機資材および栄養塩の少なくとも1つを添加して、地下水を培養することをさらに含む、〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の判定方法。
〔10〕嫌気性微生物がデハロコッコイデス属細菌である、〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の判定方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、揮発性有機塩素化合物に汚染された地下水および/または土壌の現場環境と近い条件下で嫌気性微生物を培養する培養方法により、揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを、適切に判断できる。また、現時点で揮発性有機塩素化合物を脱塩素化することが知られているデハロコッコイデス属細菌だけでなく、未知の微生物による浄化についても判定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、揮発性有機塩素化合物(VOC)で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(A)〜(D):
(A)VOCで汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する工程、
(B)採取した地下水を嫌気性条件下で培養するか、または採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(C)工程(B)で用いる地下水と同じ地下水を工程(B)の培養物に供給して、供給した地下水と同量の培養物を回収する工程、および
(D)工程(C)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物がVOCを分解しているか否かを判断する工程
を含む。
【0021】
VOCは、例えば、塩素を持つテトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、また、それらの分解生成物であるcis−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)などである。
【0022】
地下水および/または土壌に存在し、VOCを分解する嫌気性微生物として、デハロコッコイデス属細菌が挙げられるが、これに限定されず、同定されていない未知の微生物でもよい。
【0023】
工程(A)において、VOCで汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する。このとき、採取した地下水の現場温度を測定しておくことが好ましい。採取した地下水は、工程(B)で培地として培養に用いる。また地下水と土壌を採取した場合は、地下水に土壌を添加し、培養に用いる。
【0024】
以下、工程(B)と(C)について、これらの工程で好ましく用いられる培養装置1(図2)を参照しながら説明するが、培養装置はこれに限定されない。
【0025】
図2において、滅菌した地下水培養瓶1(ねじ口ガラス瓶など、容量は好ましくは0.5〜10L、より好ましくは2L以上)に、工程(A)で採取した地下水を入れる。嫌気条件下で培養するため、地下水は、地下水培養瓶1がいっぱいになるように入れることが好ましい。攪拌培養するときは回転子10を入れる。また、有機資材(例えば廃蜜糖、ポリ乳酸など、濃度は好ましくは0.02重量%〜0.1重量%)、栄養塩(例えばKH2PO4、K2HPO4、硝酸塩、アンモニウム塩、酵母エキスなど、濃度は好ましくは有機物の炭素量(C)に対してP量が5%以下)、VOCなどを添加してもよい。工程(A)で土壌も採取した場合は、土壌を地下水培養瓶1にさらに入れる。土壌量は、地下水の5〜20重量%が好ましい。また、地下水培養瓶1に担体を入れてもよく、担体として、例えば珪砂、ガラスビーズ、高分子材料等が挙げられ、特に限定されない。土壌、担体の存在は、ミクロな還元環境の形成に役立ち、培養期間の短縮に寄与すると考えられる。
【0026】
地下水培養瓶1を、ステンレスチューブ2と3を挿入した密栓可能な蓋で閉じる。この蓋は、ブチルゴム栓4にステンレスチューブ2と3が挿入され、プラスチックキャップ5で固定するものである。なお、蓋は、内側にテフロンコーティングを施したプラスチックキャップにステンレスチューブを固定した構造でもよい。ステンレスチューブ2の先端は、回転子の影響のない範囲で地下水培養瓶1の中央部より下部に設置する(地下水培養瓶1の底部から3cmの位置が好ましい)。ステンレスチューブ3の先端は、地下水の上面に接する位置に設置する(蓋下部から、1cm程度出るように挿入することが好ましい)。ステンレスチューブ2と3に、ステンレス製のバルブ6を取り付け、培養中は両バルブを閉めておく。
【0027】
滅菌した交換地下水貯留瓶8(ねじ口ガラス瓶など、容量は好ましくは0.5〜10L、より好ましくは2L以上)に、地下水(地下水培養瓶1に入っているものと同じ地下水、または地下水を濾過滅菌処理したもの)を入れる。この地下水が、工程(C)で供給する地下水となる。地下水に、上記有機資材、栄養塩、VOCなどをさらに添加してもよい。
【0028】
交換地下水貯留瓶8は、地下水培養瓶1と同様にしてブチルゴム栓とプラスチックキャップで密栓する。ブチルゴム栓には、ステンレスチューブ2とステンレスチューブ13が挿入されている。ステンレスチューブ13で、交換地下水貯留瓶8と窒素ガスで充填されたテフロンフィルムパック7とを連結し、ステンレスチューブ13にバルブ6を取り付ける。交換地下水貯留瓶8の気相部を、テフロンフィルムパック7からステンレスチューブ13を通って送られる(窒素ガスライン)窒素ガスで置換しておく。またステンレスチューブ2に、液送ポンプ11を備える。
【0029】
工程(B)の培養は、採取した地下水の現場温度の±5℃、より好ましくは±3℃、更に好ましくは±1℃の範囲の温度で行うことが好ましい。攪拌培養する場合は、スターラー9と回転子10を用いて、例えば80〜100rpmで攪拌すればよい。
【0030】
工程(C)において、地下水培養瓶1で培養した地下水の一部を回収する。回収した地下水は分析用の試料として用いることができる。採取するには、ステンレスチューブ2と3のバルブ6を開け、液送ポンプ11により、交換地下水貯留瓶8の地下水をステンレスチューブ2の矢印方向に流し(交換地下水流入ライン)、地下水培養瓶1に流入する。流入した量だけ、ステンレスチューブ3の矢印方向に培養した地下水が流れて(培養液採取ライン)採取できる(サンプリング)。採取の際、培養中の地下水を空気に触れずに採取できるので、嫌気環境を壊さない。また、栄養源が不足した場合に新たな地下水(培地)を供給することにより、有機物等を再供給できる。さらに、採取した量と同量の地下水を供給することにより、地下水培養瓶1中の空へき量・圧力を一定に保つことができる。従って、空へきへのVOCの揮発量も一定にすることができる。実際にブランク試験も行っており、揮発による損失は殆どないことが確認されている(データは示さず)。
【0031】
採取の間隔および量は、特に限定されず、回分試験のように制限を受けずに、頻繁に採取することが可能である。例えば、試験開始直後は、数日おきに測定し、安定した状態(cis1,2−DCE停滞期など)では、2週間に1回度程度の採取を行えばよい。採取の量は、後述の分析の項目が多ければ、その分多くすればよい。VOCの測定のみ行う場合は、例えば1〜5mlの採取でよく、TOC、イオン組成、ORP、ATPなど多数測定する場合は、例えば10〜25ml(2L培養であれば1%程度)を採取すればよい。なお、汚染現場の地下水流量が速い場合などは、地下水の採取量、回数を増やしてもよい。
【0032】
工程(D)において、工程(C)で採取した地下水を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が、VOCを分解しているか否かを判断する。
【0033】
分析方法は特に限定されないが、公知の方法、測定装置を用いることができる。例えばVOCの濃度の測定(ヘッドスペースGC−MS法など)、全有機体炭素(TOC)の測定、酸化還元電位(ORP)の測定、pHの測定、イオン組成の分析、ATPの測定、嫌気性微生物量の測定(MPN法など)、嫌気性微生物の遺伝子解析(例えばデハロコッコイデス属細菌の塩基配列(GeneBankなどのデータベースで検索可能)からプローブを設計し、蛍光物質等で標識したプローブを作製して、分析試料中の細菌をハイブリダイゼーションにより検出したり、プライマーを用いて、分析試料から調製した核酸を鋳型としてPCRで増幅して、細菌を検出、定量する)などを行えばよい。分析方法は複数組合わせて行ってもよい。
【0034】
上記工程(B)〜(D)を繰り返し、経時的に分析結果を得る。
VOCが経時的に分解され、あるいはVOCを分解する嫌気性微生物が増殖していれば、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物がVOCを分解していると判断し、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能であると判定する。
【0035】
VOCが分解されず、あるいはVOCを分解する嫌気性微生物が存在しない、増殖しないと判断された場合には、地下水および/または土壌にVOCを分解する嫌気性微生物を移植することや、嫌気性微生物が増殖する環境の整備等の検討を行うことが好ましい。
【0036】
培養装置1のメリットとして、以下が挙げられる。
(I)培養装置の構造が簡単である。
(II)水質分析、微生物解析に必要な量だけの培養した地下水を回収でき、培養中の地下水を空気に触れずに採取できる(嫌気環境を壊さない)。
(III)分析に必要量の培地を採取してもORPの上昇は殆どない。例えば2Lの培養容器から水質分析等の為に20ml採取した場合、培養容器は約1%程度の地下水が交換採取されるが、ORPの変動は僅かであり、すぐに同等値に戻ることを確認している。
(IV)期間に左右されず、エタン、エチレンまでに至る長期培養期間を最適な条件で培養可能である。
(V)地下水交換、栄養源等の供給が容易なため、集積培養にも適している。
(VI)汚染地盤の土壌を入れた試験にも対応しやすい培養装置である。
(VII)担体を入れた培養にも対応しやすい培養装置である。
(VIII) 汚染源であるVOCを再添加し、長期的な脱塩素化効果を確認する試験法としても用いることができる。
【0037】
培養装置1のメリット(VI)の土壌を入れる培養方法は、地下水のみを用いる場合と比較して、より地盤環境に近い条件で培養を行うことにより、地盤環境で実際の起こりうる現象を忠実に再現することが可能になる特長がある。しかしながら、地下水培養瓶に直接土壌を添加すると以下の問題が生ずる恐れがある。
・培養地下水中のVOCの土壌粒子への収着
・VOC収着土粒子の不均一な混入によるVOC測定結果のバラツキ
・その他土壌粒子による分析操作の阻害(顕微鏡観察など)
そこで、本発明において、以下の工程(E)〜(I):
(E)VOCで汚染された地下水と土壌を採取する工程、
(F)採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(G)工程(F)とは別に、採取した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(H)工程(F)の培養物を工程(G)の 培養物に供給して、供給した培養物と同量の工程(G)の培養物を回収する工程、および
(I)工程(H)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物がVOCを分解しているか否かを判断する工程
を含む、揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法を開発した。
【0038】
工程(E)において、VOCで汚染された地下水と土壌を採取する。このとき、採取した地下水の現場温度を測定しておくことが好ましい。採取した地下水は、工程(G)で培地として培養に用いる。また、採取した土壌を地下水に添加して、工程(F)で培養に用いる。
【0039】
以下、工程(F)〜(H)について、これらの工程で好ましく用いられる培養装置2(図3)を参照しながら説明するが、培養装置はこれに限定されない。
【0040】
培養装置2は、地下水培養瓶1と交換地下水貯留瓶8の間に土壌培養瓶12を設置した装置である。土壌培養瓶12で、工程(E)で採取した土壌を地下水に添加して培養する(工程(F))。工程(G)で培養した地下水の一部を採取し、工程(F)で培養した地下水(土壌上澄み液)を供給する(工程(H))。このようにすることにより、汚染地盤に存在する地下水だけでなく土壌に付着した微生物によるVOCの脱塩素効果が確認できるため、より地盤環境に近い条件での培養試験結果が得られる。
【0041】
図3において、滅菌した地下水培養瓶1に、工程(E)で採取した地下水を入れる。嫌気性条件下で培養するため、地下水は、地下水培養瓶1がいっぱいになるように入れることが好ましい。攪拌培養するときは、回転子10を入れる。また、上記濃度の有機資材、栄養塩、VOCなどを添加してもよい。さらに、地下水培養瓶1に担体を入れてもよく、担体としては、例えば珪砂、ガラスビーズ、高分子材料等が挙げられ、特に限定されない。
【0042】
地下水培養瓶1を、ステンレスチューブ2と3を挿入した密栓可能な蓋で閉じる。ステンレスチューブ2の先端は、回転子の影響のない範囲で地下水培養瓶1の中央部より下部に設置する(地下水培養瓶1の底部から3cmの位置が好ましい)。ステンレスチューブ3の先端は、地下水の上面に接する位置に設置する(蓋下部から、1cm程度出るように挿入することが好ましい)。ステンレスチューブ2と3に、ステンレス製のバルブ6を取り付け、培養中は両バルブを閉めておく。
【0043】
滅菌した土壌培養瓶12に、VOCに汚染された地盤の土壌(地下水培養瓶1と同じ汚染サイトから採取した土壌が好ましい)と地下水を入れる。土壌量は、地下水の5〜20重量%が好ましい。攪拌培養するときは回転子10を入れる。また、上記濃度の有機資材(地下水培養瓶1と同じものが好ましい)、栄養塩、VOCなどを添加してもよい。嫌気条件下で培養するため、地下水は、土壌培養瓶12がいっぱいになるように入れることが好ましい。土壌培養瓶12を、ブチルゴム栓とプラスチックキャップで密栓し、ブチルゴム栓にはステンレスチューブ2と14が挿入されている。
【0044】
滅菌した交換地下水貯留瓶8に、地下水(地下水培養瓶1に入っているものと同じ地下水、または地下水を濾過滅菌処理したものが好ましく、有機資材、栄養塩、VOCなどを添加してもよい)を入れる。交換地下水貯留瓶8を、ブチルゴム栓とプラスチックキャップで密栓し、ブチルゴム栓にはバルブ6付きステンレスチューブ14とステンレスチューブ13が挿入されている。ステンレスチューブ13で、窒素ガスで充填されたテフロンフィルムパック7と交換地下水貯留瓶8を連結し、ステンレスチューブ13にバルブ6を取り付ける。交換地下水貯留瓶8の気相部を、テフロンフィルムパック7からステンレスチューブ13を通って送られる(窒素ガスライン)窒素ガスで置換しておく。また、ステンレスチューブ14に液送ポンプ11を備える。土壌培養瓶12の培養中はステンレスチューブ2と14のバルブ6を閉じておく。
【0045】
工程(F)および(G)の培養は、採取した地下水の現場温度の±5℃、より好ましくは±3℃、更に好ましくは±1℃の範囲の温度で行うことが好ましい。攪拌培養する場合は、スターラー9と回転子10を用いて、例えば80〜100rpmで攪拌すればよい。
【0046】
工程(H)において、地下水培養瓶1で培養した地下水の一部を採取する。採取した地下水は分析用の試料として用いることができる。採取するには、ステンレスチューブ2、3および14のバルブ6を開け、液送ポンプ11により、交換地下水貯留瓶8の地下水をステンレスチューブ14の矢印方向に流して(交換地下水流入ライン)土壌培養瓶12に流入し、土壌培養瓶12の土壌上澄み液をステンレスチューブ2の矢印方向に流して(土壌液流入ライン)地下水培養瓶1に流入する。流入した量だけ、ステンレスチューブ3の矢印方向に培養した地下水が流れて(培養液採取ライン)採取できる(サンプリング)。なお、土壌培養瓶12の土壌上澄み液を地下水培養瓶1へ流入するときに、撹拌をとめて沈降性の土粒子が沈んだ後に上澄み液を流入するようにする(停止の目安は5〜10分)。また、地下水培養瓶1の培養と土壌培養瓶12の培養は、同時期に開始してもいいが、土壌培養瓶12を予め馴養し、土壌上澄み液を地下水培養瓶1への流入に用いてもよい。採取の間隔および量は、工程(C)と同様にすればよい。
【0047】
工程(I)において、工程(H)で採取した地下水を分析して、汚染された地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が、VOCを分解しているか否かを判断する。分析方法は工程(D)と同様にすればよい。
【0048】
上記工程(F)〜(I)を繰返し、経時的に分析結果を得る。
地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能であるかどうかの判定は、上述のとおりである。
【0049】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、工程(B)〜(C)または工程(F)〜(H)の繰返しを半連続培養法ということがある。
【実施例】
【0050】
[比較例1]
回分式培養法(従来培養法)の評価
100mlバイアル瓶(15本)にVOCの汚染サイトの地下水と有機資材A(廃蜜糖)を適量(濃度0.02重量%、参照文献:特開2006−320848号公報)入れ、テフロンコーティング加工したブチルゴム栓で密閉し、20℃で培養した。20℃は汚染サイトの地下水の温度である。培養経過ごとにバイアル瓶を回収して分析試料とし、VOC、TOC、ORPを測定した。なお、VOCの測定は、ヘッドスペースGC−MS法(アジレント テクノロジー)、TOCの測定は全有機炭素計(島津製作所)、ORPの測定は酸化還元電位計(堀場製作所)で行った。
【0051】
結果を図4〜6に示す。
回分試験では、1条件1回のサンプリングに1〜3本のバイアル瓶を回収し、分析試料とした。VOCの経時変化については(図4)、3ヶ月を経過してもcis−1,2−DCEの脱塩素化を確認することができなかった。またTOCの経時変化については(図5)、培養初期の有機物消費量が大きく、添加量の85%以上が培養1ヶ月で消費され、脱塩素化が進まなかった。ORPの経時変化については(図6)、数値が安定しておらず、テフロン加工したブチルゴム栓を用いても長期の培養により空気が混入するものと考えられる。回分試験では、ブチルゴム栓部に注射針を刺して採取したり、源栄養源を注入していたりする事例があるが、この場合ブチルゴム栓に穴が開くため、VOC成分が揮発や空気の混入を誘発して、正しい試験結果が得られないと考えられる。
【0052】
以上の結果から、回分式培養法は、培養本数が多く必要である、培養が予定より長期化し、培養結果が得られない場合がある、栄養源が不足した場合に栄養源が供給できない、酸化還元電位が安定しない、という問題点があることがわかる。
【0053】
[実施例1]
半連続培養法による浄化適合性の評価
培養装置1を用いて、地下水培養瓶1に汚染サイト地下水と上記有機資材Aを入れ、交換地下水貯留瓶8に汚染サイト地下水を入れ、交換地下水貯留瓶8の空気を窒素ガスで置換した。培養は、回転子とスターラーで攪拌しながら20℃で行った。
【0054】
サンプリングは、培養6日後に実施し、その後は2週間に1回程度の頻度で行った。交換地下水貯留瓶8の地下水をポンプで地下水培養瓶1に流入し、地下水培養瓶1中の培養した地下水を押出すようにして約10〜25ml採取し、分析試料とした。VOCとORPを比較例1と同様にして測定した。
【0055】
結果を図7および8に示す。VOC培養100日経過頃からcis−1,2−DCEの脱塩素化、VCの上昇が確認された(図7)。cis−1,2−DCEの脱塩素化が停滞したため培養が長期化したが、安定した還元状態を維持した(図8)。
【0056】
[実施例2]
培養装置1と2の比較
〔培養装置1による培養〕
図2の地下水培養瓶1に、有機資材Aの代わりに有機資材B(ポリ乳酸(HRC))を適量(乳酸ナトリウムとして0.05重量%、参照文献:2006−320848号公報)入れた以外は、実施例1と同様にして培養し、サンプリングし、VOCを測定した。また培養300日目に、デハロコッコイデス属細菌の定量をMPN法で行った。
【0057】
〔培養装置2による培養〕
図3の地下水培養瓶1に、培養装置1と同じ汚染サイト地下水と有機資材Bを入れた。土壌培養瓶12に、同じく汚染サイト地下水と有機資材B、さらに汚染サイト土壌を地下水に対して10重量%入れ、混合した。培養条件は培養装置1と同様にし、20℃で地下水培養瓶1、土壌培養瓶12ともに攪拌下で培養した。サンプリングは、土壌培養瓶12の土壌上澄み液(攪拌停止10分後の培養した地下水)を用いて地下水培養瓶1へポンプで流入し、地下水培養瓶1中の培養した地下水を押出すようにして約10〜25ml採取し、VOCを測定した。また培養300日目にデハロコッコイデス属細菌の定量をMPN法で行った。
【0058】
培養装置1のVOC測定結果を図9、培養装置2のVOC測定結果を図10に示す。有機資材Bを用いた場合、培養装置1の培養では、300日以上の培養を経ても、cis−1,2−DCEの脱塩素化は確認できなかったが(図9)、培養装置2の培養では、cis−1,2−DCEの脱塩素化が培養100日目以降見られ、VCの脱塩素化が確認された(図10)。
【0059】
培養装置1および2の細菌定量結果を図11に示す。脱塩素化に関与するデハロコッコイデス属細菌の増殖が培養装置2の培養では顕著に観測された。
以上から、本発明の判定方法において、特に培養装置2が有用であることがわかる。
【0060】
[実施例3]
VOCの供給による長期的脱塩素化能
汚染源であるVOCを定期的に供給し、VOCの脱塩素化能が長期的に可能であるか、培養装置1を用いて試験した。地下水培養瓶1に、以下の(a)〜(c)の地下水を定期的に交換地下水貯留瓶8から供給し、攪拌下、20℃で培養し、VOCを測定した。
(a)TCE添加
(b)有機物添加、TCE添加
(c)有機物+栄養塩添加、TCE添加
(栄養塩は、有機物(C):りん酸塩(P):硝酸塩(N)=100:5:1の比とした。また、リンは、KH2PO4 21.9g/L、K2HPO4 28.1g/Lの濃度で作製したりん酸緩衝液を有機物の炭素量(C)に対して、P量が1%となるように配合した。有機物は乳酸ナトリウムであり、有機物量は0.02重量%とした。参照文献:2006−320848号公報)
【0061】
初期56日目までの結果では、(b)と(c)に大きな差は見られなかった(図12及び図13参照)。また、TCEの添加回数が増加するに従い(培養期間が長期化した場合)、(c)の(有機物+栄養塩)の条件の有用性が確認された(図14〜図16)。
【0062】
以上から、TCE、有機物(+栄養塩)を繰り返し添加することが可能であり、培養条件の有用性を長期的に確認することできることがわかった。即ち、本発明に用いる培養方法は、VOCの脱塩素化微生物の集積培養法として用いることもできる。
【0063】
[実施例4]
リンの添加による効果
リンを定期的に供給し、その効果を培養装置1を用いて試験した。地下水培養瓶1に、以下の(d)、(e)の地下水を交換地下水貯留瓶8から定期的に供給し、攪拌下、20℃で培養し、VOCを測定した。
(d)乳酸ナトリウム添加
(e)乳酸ナトリウム添加、リン添加
(リンは、KH2PO4 21.9g/L、K2HPO4 28.1g/Lの濃度で作製したりん酸緩衝液を有機物の炭素量(C)に対して、P量が1%となるように配合した。乳酸ナトリウム添加量は0.02重量%とした。参照文献:特開2006−320848号公報)
【0064】
結果を図17、図18に示す。リンの添加量が多くても、脱塩素化を阻害することはないが、環境保全上なるべく低濃度の添加が望ましく、効果の得られる添加量として1mg/L程度とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の判定方法は、有機物に汚染された地下水および/または土壌の浄化技術に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】脱塩素化に適した酸化還元電位を示す。
【図2】本発明に用いる培養装置1の概略を示す。
【図3】本発明に用いる培養装置2の概略を示す。
【図4】回分式培養法によるVOCの経時変化を示す。
【図5】回分式培養法によるTOCの経時変化を示す。
【図6】回分式培養法によるORPの経時変化を示す。
【図7】半連続培養法によるVOCの経時変化を示す。
【図8】半連続培養法によるORPの経時変化を示す。
【図9】半連続培養法(培養装置1)によるVOCの経時変化を示す。
【図10】半連続培養法(培養装置2)によるVOCの経時変化を示す。
【図11】デハロコッコイデス属細菌の定量結果を示す。
【図12】交換地下水貯留瓶の地下水にVOCと有機物を添加した場合の水培養後56日目までのVOCの変化を示す。
【図13】交換地下水貯留瓶の地下水にVOC、栄養塩及び有機物を添加した場合の培養後56日目までのVOCの変化を示す。
【図14】交換地下水貯留瓶の地下水にVOCを添加(有機物無添加)した場合のVOCの経時変化を示す。
【図15】交換地下水貯留瓶の地下水に有機物とVOCを添加した場合のVOCの経時変化を示す。
【図16】交換地下水貯留瓶の地下水に有機物、栄養塩及びVOCを添加した場合のVOCの経時変化を示す。
【図17】交換地下水貯留瓶の地下水に乳酸ナトリウムを添加した場合のVOCの経時変化を示す。
【図18】交換地下水貯留瓶の地下水に乳酸ナトリウムとリンを添加した場合のVOCの経時変化を示す。
【符号の説明】
【0067】
1 地下水培養瓶
2 ステンレスチューブ
3 ステンレスチューブ
4 ブチルゴム栓
5 プラスチックキャップ
6 バルブ
7 テフロンフィルムパック
8 交換地下水貯留瓶
9 スターラー
10 回転子
11 液送ポンプ
12 土壌培養瓶
13 ステンレスチューブ
14 ステンレスチューブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(A)〜(D)を含む判定方法。
(A)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する工程、
(B)採取した地下水を嫌気性条件下で培養するか、または採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(C)工程(B)で用いる地下水と同じ地下水を工程(B)の培養物に供給して、供給した地下水と同量の培養物を回収する工程、および
(D)工程(C)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【請求項2】
工程(B)〜(D)を繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
工程(B)において、採取した地下水の現場温度の±5℃の温度条件下で、地下水を培養することをさらに含む、請求項1または2に記載の判定方法。
【請求項4】
工程(B)において、地下水に、揮発性有機塩素化合物、有機資材および栄養塩の少なくとも1つを添加して、地下水を培養することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項5】
嫌気性微生物がデハロコッコイデス属細菌である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項6】
揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(E)〜(I)を含む判定方法。
(E)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水と土壌を採取する工程、
(F)採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(G)工程(F)とは別に、採取した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(H)工程(F)の培養物を工程(G)の 培養物に供給して、供給した培養物と同量の工程(G)の培養物を回収する工程、および
(I)工程(H)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【請求項7】
工程(F)〜(I)を繰り返すことをさらに含む、請求項6に記載の判定方法。
【請求項8】
工程(F)および(G)において、採取した地下水の現場温度の±5℃の温度条件下で、地下水を培養することをさらに含む、請求項6または7に記載の判定方法。
【請求項9】
工程(F)および(G)において、地下水に、揮発性有機塩素化合物、有機資材および栄養塩の少なくとも1つを添加して、地下水を培養することをさらに含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項10】
嫌気性微生物がデハロコッコイデス属細菌である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項1】
揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(A)〜(D)を含む判定方法。
(A)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水、または地下水と土壌を採取する工程、
(B)採取した地下水を嫌気性条件下で培養するか、または採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(C)工程(B)で用いる地下水と同じ地下水を工程(B)の培養物に供給して、供給した地下水と同量の培養物を回収する工程、および
(D)工程(C)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【請求項2】
工程(B)〜(D)を繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
工程(B)において、採取した地下水の現場温度の±5℃の温度条件下で、地下水を培養することをさらに含む、請求項1または2に記載の判定方法。
【請求項4】
工程(B)において、地下水に、揮発性有機塩素化合物、有機資材および栄養塩の少なくとも1つを添加して、地下水を培養することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項5】
嫌気性微生物がデハロコッコイデス属細菌である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項6】
揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水および/または土壌に対して、該地下水および/または土壌中の嫌気性微生物による浄化が可能かどうかを判定する方法であって、以下の工程(E)〜(I)を含む判定方法。
(E)揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水と土壌を採取する工程、
(F)採取した土壌を添加した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(G)工程(F)とは別に、採取した地下水を嫌気性条件下で培養する工程、
(H)工程(F)の培養物を工程(G)の 培養物に供給して、供給した培養物と同量の工程(G)の培養物を回収する工程、および
(I)工程(H)で回収した培養物を分析して、地下水および/または土壌中の嫌気性微生物が揮発性有機塩素化合物を分解しているか否かを判断する工程。
【請求項7】
工程(F)〜(I)を繰り返すことをさらに含む、請求項6に記載の判定方法。
【請求項8】
工程(F)および(G)において、採取した地下水の現場温度の±5℃の温度条件下で、地下水を培養することをさらに含む、請求項6または7に記載の判定方法。
【請求項9】
工程(F)および(G)において、地下水に、揮発性有機塩素化合物、有機資材および栄養塩の少なくとも1つを添加して、地下水を培養することをさらに含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項10】
嫌気性微生物がデハロコッコイデス属細菌である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−25097(P2009−25097A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187363(P2007−187363)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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