説明

孔体内検査装置

【課題】良好な孔体内画像を得られると共に多機能化が可能な孔体内検査装置を提供すること。
【解決手段】二つ以上の異なる性質の光を出射する一つ又は複数の光源10と、光源10の出射光を孔体内の検査対象に向けて伝送し、検査対象からの反射・散乱光を孔体外に伝送する光伝送体20と、光伝送体20によって伝送された反射・散乱光を受光して検査情報を生成する検査情報生成手段30とを備え、光源10は、その異なる性質の光の少なくとも一つとして、孔体内に充填された媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射し、検査情報生成手段30は、異なる性質の光毎に異なる検査情報を出力する複数の手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔体内検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透過波長帯域が制限された媒体で満たされた孔体内を光学的に検査するために、このような媒体に対して透過性の高い特定波長の光を検査対象に照射し、その反射・散乱光から孔体内の検査に必要な情報を得る技術が知られている。
【0003】
例えば、血管内は血液で満たされており、血管内に可視光を照射して直接血管内壁の画像を得ようとしても、照射した光の殆どが血液によって反射・散乱され、その反射・散乱光が撮像光学系に入射するため、実際に見たい血管内壁の画像を得ることはできない。そこで、血管内を内視鏡で観察する際には、カテーテルチューブや内視鏡チャンネルから生理食塩水を血管内に照射するか、或いは血管内でバルーンを膨らませるなどして、血液を観察光路から一時的に排除することで視野確保を行うことが行われている。しかしながら、このような視野確保手段を用いると血管内にダメージを与える虞があるので、これを避けるために、血液に対する透過性が高い近赤外光を照射光として用いる画像取得技術が提案されている。
【0004】
下記特許文献1に記載される従来技術では、光源として近赤外の発光ダイオード(LD)を用い、LDから出射される単一波長の光(帯域幅の狭い光)を対象部位に照射し、その反射・散乱光を撮像装置で受光することで近赤外画像を得るようにしている。
【特許文献1】特表2005−507731
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、透過波長帯域が制限された媒体で満たされた孔体内を画像化するために、その媒体で吸収される特定波長帯域を避けた単一波長のLD光源を用いており、例えば、血管内の画像を得るためには、水分及びヘモグロビンの吸収が少ない近赤外の単一波長LD光源を採用している。
【0006】
近赤外の光源を採用するには、ハロゲンランプのような広帯域光源の近赤外域をフィルタによって取り出すことも考えられるが、これでは光源から出射される光を効率的に利用することができず、媒体を透過する光の強度を十分に確保することができない。また、ハロゲンランプのような広帯域光源を用いた場合に、媒体を透過する光の強度を高めるために光源の出力を上げると、光源から出射される光エネルギーによって周囲や装置の光伝送体を無用に加熱するといった不都合が生じる。
【0007】
一方、前述した従来技術のように媒体を透過する単一波長の光源を用いたとしても、対象部位にその単一波長を吸収する物体が存在する場合には、その部位からの反射が少なくなり、その物体やその周辺の画像化が困難になるという問題が生じる。また、使用するLD光源の単一波長を吸収する物体が媒体の中に混在しているような場合には、吸収によって透過光の強度が低下し、この場合にも画像化が困難になる問題が生じる。
【0008】
また、単一波長の光源では、基本的に濃淡画像しか得られないので、画像取得対象部位の視覚的な状態把握を詳細に行うことができない問題が生じる。例えば、血管内の表層形状を画像化する際には、濃淡画像によって異物の存在を把握することはできても、異物の同定や異物の構造を詳細に把握することができないという問題がある。
【0009】
更には、孔体内の状態をより詳細に検査しようとすると、視覚的な画像の取得のみでは十分な検査とは言い難い場合がある。対象部位から反射・散乱された光のスペクトル分析による検査や、対象部位の立体形状(奥行き)情報、対象部位の温度や硬さ等の物理的特性、等が分かれば、より詳細に対象部位を検査することが可能になる。
【0010】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、透過波長帯域が制限された媒体が充填された孔体内の画像を得るに際して、特定波長を吸収する物体が存在する場合にも、対象部位を明確に画像化できるようにすること、光源から出射される光を効率的に利用し、光のエネルギーによって周辺が加熱されるなどの不都合が生じないようにすること、対象部位の各種情報を取得することでより詳細に対象部位を検査することができること、すなわち、画像の取得のみに留まらない孔体内検査装置の多機能化等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明による孔体内検査装置は、以下の特徴を少なくとも具備するものである。
【0012】
すなわち、透過波長帯域が制限された媒体で満たされた孔体内を光学的に検査する孔体内検査装置であって、二つ以上の異なる性質の光を出射する一つ又は複数の光源と、前記光源の出射光を前記孔体内の検査対象に向けて伝送し、前記検査対象からの反射・散乱光を孔体外に伝送する光伝送体と、前記光伝送体によって伝送された反射・散乱光を受光して検査情報を生成する検査情報生成手段と、を備え、前記光源は、その異なる性質の光の少なくとも一つとして、前記媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射し、前記検査情報生成手段は、前記異なる性質の光毎に異なる検査情報を出力する複数の手段を備えることを特徴とする。
【0013】
このような特徴を具備することで、本発明の孔体内検査装置は、透過波長帯域が制限された媒体が充填された孔体内の画像を得るに際して、特定波長を吸収する物体が存在する場合にも、対象部位を明確に画像化することができる。また、光源から出射される光を効率的に利用し、光のエネルギーによって周辺が加熱されるなどの不都合が生じないようにすることができる。また、検査対象の各種情報を取得することでより詳細に対象部位を検査することができる。これによって、透過波長帯域が制限された媒体が充填された孔体内の検査を前提にして、孔体内画像の取得のみに留まらない孔体内検査装置の多機能化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る孔体内検査装置の構成を示す説明図である。本発明の実施形態に係る孔体内検査装置は、透過波長帯域が制限された媒体で満たされた孔体内を光学的に検査する装置であって、光源10、光伝送体20、検査情報生成手段30を基本構成として備えている。また、光伝送体20を孔体内に導入する導入部23、検査情報生成手段30の出力を演算処理する演算処理部40、演算処理の結果を表示する表示部50を更に必要に応じて備えている。
【0015】
光源10は、二つ以上の異なる性質の光を出射する一つ又は複数の光源からなり、その異なる性質の光の少なくとも一つとして、検査対象の孔体内に満たされた媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射するものである。
【0016】
ここで言う異なる性質の光とは、光の性質を波長帯域、可干渉性、連続性(パルス光,CW光)、偏波状態、等の同一観点又は異なる観点で比較し、互いの光の性質が異なることを指している。また、媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光とは、透過波長帯域が複数の帯域幅存在する場合には、それら全てを含むような帯域幅を有するものと、各透過波長帯域のいずれかに主要な波長帯域幅を有するものの両方を含むものである。
【0017】
光伝送体20は、図示の例では、光源10から出射された光を伝送するライトガイド21と検査対象からの反射・散乱光を伝送するイメージガイド22とを備えている。そして、ライトガイド21の先端側に照射光学系24を設けると共に、イメージガイド22の先端側に対物光学系25を設けている。ここでは、ライトガイド21とイメージガイド22とを分けているが、両者を一つの光伝送体で兼用することも可能である。
【0018】
検査情報生成手段30は、異なる性質の光毎に異なる検査情報を出力する複数の手段を備えており、各検査情報が演算処理部40で演算処理され、所望の検査結果を得る。得られた検査結果が表示部50に表示される。
【0019】
前述の媒体として血液を当てはめた場合、つまり血管内を検査対象とした場合には、透過波長帯域は、血液の透過窓(水分及びヘモグロビンの吸収が少ない波長範囲)に当たる、800〜1300nm、1400〜1800nm、2100〜2400nmの少なくともいずれかが該当することになる。このような媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を合わせることができる光源としては、非線形光学媒体中を透過させることで種光源から出射される狭帯域光を広帯域化するSC(Super Continuum)光源が有効である。
【0020】
図2は、SC光源の構成と性質を説明する説明図である(同図(a)が基本構成、同図(b),(c)が出射光の性質を示している)。同図(a)に示すように、光源10SCは、種光源11と非線形光学光ファイバ12によって構成され、種光源11から出射された狭帯域の出射光11sが、非線形光学光ファイバ12を通過する間に広帯域化され、広い帯域幅を有する出射光10sとなる。
【0021】
この光源10SCから血液の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を得るには、図2(b)に示すように、種光源11のピーク波長λを800〜2400nmの中心(1600nm)付近に設定し、非線形光学光ファイバ12による広帯域化の程度を適宜調整することで、800〜2400nmの全域をカバーする帯域幅を有する光を得ることができる。
【0022】
また、図2(c)に示すように、種光源11のピーク波長λ1,λ2,λ3を血液の透過窓の中心付近に設定することで、各透過窓(800〜1300nm,1400〜1800nm,2100〜2400nm)をそれぞれカバーする帯域幅を有する光を得ることができる。
【0023】
図3は、本発明の実施形態の一つを示す説明図である。この実施形態では、光源10を複数の光源(10A〜10M)によって構成し、検査情報生成手段30を複数の受光器(30A〜30N)によって構成している。
【0024】
各光源10A〜10Mは、異なる性質の光を出射するものであり、制御部60によって制御される。制御部60の制御形態としては、各光源10A〜10Mからの光を同時に出射させるようにしてもよいし、各光源10A〜10Mの一つ又は複数から選択的に光を出射させるようにしても良い。ここで、各光源10A〜10Mの少なくとも一つは、光源10SCのように、媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射するものである。
【0025】
光源10から複数の異なる性質の光が同時に出射される場合には、それらの光が合波器13で多重化されて、光学系14を介してライトガイド21に入射される。また、光源10から異なる性質の光が選択的に出射される場合には、出射された光が直接光学系14を介してライトガイド21に入射される。
【0026】
一方、この実施形態では、検査情報生成手段30は、複数の受光器30A〜30Nを備えている。光源10からの多重化された光がライトガイド21に入射された場合には、検査対象から反射・散乱した光がイメージガイド22によって伝送され、光学系31を介して、分波器32によって分波され、各受光器30A〜30Nで受光される。各受光器30A〜30Nからの出力が光源10による異なる性質の光毎に得られる異なる検査情報となり、これらの出力が検査情報毎に演算処理部40で処理されることになる。また、光源10から異なる性質の光が選択的に出射される場合には、イメージガイド22から出射される光は選択的に各受光器30A〜30Nに振り分けられ、各受光器30A〜30Nから異なる検査情報が得られることになる。
【0027】
また、本発明の実施形態としては、光源10は二つ以上の異なる性質の光を出射することができればよく、前述した実施形態のように複数の光源を備えている必要はない。すなわち、一つの光源の出射光を切り替えることで、二つ以上の異なる性質の光を出射するものであってもよい。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態を示す説明図であって、一つの光源の出射光を切り替えることで、二つ以上の異なる性質の光を出射する例を示したものである。ここでは、前述したSC光源を用いて、非線形光学光ファイバ12を介して、種光源11からの出射光を出射する場合(同図(a))と、非線形光学光ファイバ12を介することなく、種光源11からの出射光を直接出射する場合(同図(b))を選択的に切り替えるものである。これによると、前者の場合には、非線形光学光ファイバ12の広帯域化作用によって、同図(a)に示すように、帯域幅の広い光を得ることができ、後者の場合には、同図(b)に示すように、種光源11からの帯域幅の狭い光を得ることができる。
【0029】
このような実施形態によると、光源10は、少なくとも媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射するので、透過波長帯域が制限された媒体で満たされた孔体内を光学的に検査するに際して、媒体を透過する光を効率的に出射させることができ、周囲を加熱させるなどの不都合が生じることなく孔体内の検査対象から得られる反射・散乱光によって所望の検査情報を得ることができる。
【0030】
この際、光源10は波長帯域幅を有する光を出射するので、検査対象に特定波長の光を吸収する物体が存在する場合や媒体内に特定波長の光を吸収・散乱させる物体が存在する場合にも、孔体内面から十分な反射・散乱光を得ることができ、孔体内を適正に検査することができる。
【0031】
特に、孔体内面の画像化を行う場合には、孔体内の媒体の透過窓を介して帯域幅の広い光によって孔体内面から反射・散乱光を得ることができるので、検査対象に特定波長の光を吸収する物体が存在する場合や媒体内に特定波長の光を吸収・散乱させる物体が存在する場合にも、良好且つ情報量の豊富な画像を得ることができる。
【0032】
また、光源10は、多重化又は選択的に異なる性質の光を出射することができるので、前述したような孔体内の媒体における透過窓を透過する帯域幅を有する光による孔体内面の画像化等の検査に加えて、異なる性質の光(特に、可干渉性、連続性、偏波状態のいずれかが異なる光)による別観点の検査を行うことができる。これによって、より詳細に孔体内の対象部位を検査することができる。
【0033】
以下に、光源10の性質に関する態様とそれに対応する検査情報生成手段30の態様を、具体例を挙げて説明する。
【0034】
図5は、本発明の実施形態を示す説明図であって、前述した具体例の一つを示したものである(前述した説明と共通する箇所は同一符号を付して重複説明を一部省略する)。この実施形態では、光源10は、種光源11及び非線形光学光ファイバ12からなるSC光源を基本とするものであり、種光源11から出射される狭帯域光(或いは単一波長光)をそのまま光学系14を介してライトガイド21に入射させる第1の出射モードと、種光源11から出射される狭帯域光(或いは単一波長光)を、非線形光学光ファイバ12を通過させて広帯域化させた後、光学系14を介してライドガイド21に入射させる第2の出射モードとを、切り替え可能にしたものである。
【0035】
一方、検出情報生成手段30は、検査対象の画像情報を出力する撮像手段301と検出対象の物性情報を出力する物性検出手段302とを切り替えて採用するものであり、第1の出射モードを選択した際に、イメージガイド22から光学系31を介して得られる光を物性検出手段302側に切り替え、第2の出射モードを選択した際に、イメージガイド22から光学系31を介して得られる光を撮像手段301側に切り替える切り替え手段33を備えている。
【0036】
このような実施形態によると、光源10が第1の出射モードを選択している場合には、狭帯域光或いは単一波長光がライトガイド21を介して検査対象に照射されることになり、検査対象からの反射・散乱光がイメージガイド22を介して取得され、これを物性検出手段302が受光することになる。これによって、第1の出射モード選択時には、検査対象の温度、硬さ、流速といった物性情報を得ることができる。
【0037】
これに対して、光源10が第2の出射モードを選択している場合には、孔体内に満たされた媒体の透過窓をカバーする広帯域の帯域幅を有する光がライトガイド21を介して検査対象に照射されることになり、検査対象からの反射・散乱光がイメージガイド22を介して取得され、これを撮像手段301が受光することになる。これによって、第2の出射モード選択時には、媒体を透過して孔体内面の画像を得ることができる。
【0038】
このような実施形態によると、孔体内における媒体の透過窓を効果的に利用した広帯域光によって良好な孔体内画像を得ることができるだけでなく、異なる観点の検査情報を取得することができるので、より詳細に孔体内の検査を行うことができる。
【0039】
図5に示した実施形態では、一つの光源の出射モードを切り替える例を示したが、別の態様としては、図3に示すように、複数の光源を用意し、単一波長光を出射する一つの光源と媒体の透過窓をカバーする帯域幅を有する光を出射する一つの光源(例えばSC光源)を選択的に切り替えるようにしてもよい。
【0040】
図6は、物性検出手段302の具体例を示した説明図である。同図(a)が温度検出、同図(b)が硬さ検出、同図(c)が流速検出の例を示している。
【0041】
同図(a)では、光源10には単一波長のレーザを用い、検出対象のラマン散乱のスペクトルが温度によって変化することを利用している。ラマン散乱は光源10の照射光より長波長側にシフトした光が発生する。物性検出手段302では、このラマン散乱光は照射光と比べ微小であるため、反射・散乱光をフィルタ310でカットした後に、分光器311でスペクトルに分解して、受光器312で受光して検査情報を得る。検査対象の温度を測定することは、検査対象の識別やアブレーション等の治療において進捗度を知る上で参考になる。
【0042】
同図(b)は、検査対象の硬さを測定する方法としてはラマン散乱と同じ光学非線形現象であるブリルアン散乱を用いている。ブリルアン散乱は元の励起光に対して長波長側に微少量シフトするもので、このブリルアンシフト量が硬さに関係する。ただし、このシフト量は周波数でGHzであり分光器では感知できない。
【0043】
図示の例では、光源10の照射光には周波数差がブリルアン周波数シフト近傍で調整できる2波長レーザ101を用いる。短波長光のみ検査対象にダメージを与えない程度のハイパワーで照射し、散乱されてきた光を長波長光と干渉させる。この干渉光を検出するとダウンコンバートされたスペクトルからブリルアン周波数シフトを見ることが出来る。このための物性検出手段302の構成要素として、波長板320,長波長抽出フィルタ321,ビームスプリッタ322,光電変換器323Aとローパスフィルタ323Bとスペクトル測定器323Cを備えた受光器323を備えている。
【0044】
2波長レーザ101については単一のレーザを二分し片方をマイクロ波で強度変調しそのサイドバンドを長波長光として、他方を増幅器でハイパワーにして短波長光として用いる方法を採用している。これによると、レーザの波長ドリフトの影響を受けないメリットがある。
【0045】
同図(c)に示す例では、光源10には外部からの正弦波によって周期的なパルス光を発振する光源(能動モード同期レーザ)を用いる。この光源10からの出射光を、速度を持った散乱体に当てると散乱光のパルス間隔が変化する。パルスの周期を決めている正弦波信号と高速の光電変換器で検出した信号をミキシングしてそのスペクトルを見る。速度に応じてスペクトルのピークがシフトすることで、流速を検出できる。このための物性検出手段302の構成要素は、光電変換器331,増幅器332,ミキサ333,ローパスフィルタ334からなる。流速が検出されると、例えば血管に狭窄が見られた場合に、その箇所における血液の流速が変化するのを検出することができる。
【0046】
以下に、検査情報生成手段30の一つとして採用できる具体例を説明する。以下に説明する検査情報生成手段30の具体例は、前述した光源10が二つ以上の異なる性質の光を出射することを前提にして、その異なる性質の光毎に異なる検査情報を出力する複数の手段の中の一つになる。したがって、以下の説明では、一つの性質の光源に対応して検査情報を出力する一つの手段をそれぞれ説明する。
【0047】
以下に説明する検査情報生成手段30は、例えば、図5に示すような撮像手段301と組み合わせられ、光源10としては、孔体内に満たされる媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射する光源と組み合わせられて、本発明の実施形態を構成するものである。
【0048】
図7は、検査情報生成手段30として、検査対象の奥行き情報を出力する例を示している。検査対象の凹凸を検知できると、例えば、血管内の検査などでは内壁面の状態を知るための重要な情報となる。高い精度で奥行き情報を得る技術として、OCT(Optical Coherence Tomography)が一般に知られている。
【0049】
同図(a)に示す例では、光源10の一つの性質として、広帯域光源(低コヒーレンス光源)を用い、参照光の遅延(τ)を調整しながら干渉光強度を測定している。この強度は光路差(d)が0の時に最大となるため検査対象の反射点の位置を特定できる。
【0050】
すなわち、制御器61からの調整信号によって可変遅延器111が移動し、光源10から出射された光が偏光ビームスプリッタ110で分割されて形成される参照光の光路長が調整される。ライトガイド21を介して検査対象に照射される光を走査しながら、イメージガイド22を介して得られる反射・散乱光を、波長板341を介して偏光ビームスプリッタ342で参照光と合成し、参照光の光路長を調整しながら、受光器343で干渉光強度を測定する。可変遅延器111の調整信号は演算処理部40に送られ、干渉光強度が最大となる光路長が検出され、それに基づいて検査対象の奥行きを演算処理部40で把握できる。
【0051】
同図(b)に示す例では、やはり光源10の一つの性質として、広帯域光源(低コヒーレンス光源)を用いるが、参照光の遅延を固定する代わりに干渉後に分光器でスペクトル分解する。この際、受光器354はアレイ状のものを用いる。
【0052】
すなわち、光源10から出射された光が偏光ビームスプリッタ120で分割されて一部が参照光になり、他の一部がライトガイド21を介して検査対象に照射される。そして、イメージガイド22を介して得られる反射・散乱光を、波長板351を介して偏光ビームスプリッタ352で参照光と合成し、分光器353によってスペクトル分解してアレイ状の受光器354で受光する。この受光器354で測定したスペクトルを演算処理部40でフーリエ変換すると図(a)の例と同様の特性が得られる。
【0053】
同図(c)に示す例は、同図(b)に示した例の変形であり、光源10の一つの性質として広帯域光源を用いる代わりに波長掃引できる光源を用いている。そして、干渉光強度の時間変動を測定しそれをフーリエ変換することで、同様の特性を得ている。
【0054】
すなわち、制御器63からの信号に応じて、光源10から波長掃引された光が出射される。光源10から出射された光が偏光ビームスプリッタ130で分割されて一部が参照光になり、他の一部がライトガイド21を介して検査対象に照射される。そして、イメージガイド22を介して得られる反射・散乱光を、波長板361を介して偏光ビームスプリッタ362で参照光と合成し、分光器363によってスペクトル分解してアレイ状の受光器364で受光する。この受光器364で測定したスペクトルを制御器63からの信号に応じて演算処理部40でフーリエ変換すると、図(a)の例と同様の特性が得られる。
【0055】
図8は、検査情報生成手段30として、検査対象又は媒体のスペクトル分析情報を出力する例を示している。反射・散乱された光の波長に対するその強度の傾向をスペクトルとして測定し、ピークの強弱から測定対象の成分を判定することができる。特に、光源10の一つの性質として近赤外光を用いたものは近赤外分光法と呼ばれ、食品、薬剤、生体に対する分析ツールとして有効である。
【0056】
同図(a)は、光源10の一つの性質として、特定の帯域幅を有する光を用いるものである。この際の帯域幅は収集した検査情報に応じて設定することができる。例えば、光源10の一つの性質として、血液の透過窓に対応した帯域幅の光を出射して、血管内壁の画像を検査情報として得ると共に、血液の反射・散乱特性に対応する帯域幅の光を、光源10のもう一つの性質として採用し、その反射・散乱光のスペクトル分析情報を得ることで、血液の成分情報を得る。
【0057】
光源10から出射された光はライトガイド21を介して検査対象に照射され、イメージガイド22を介して得られた反射・散乱光は、スリット371を通過させて、プリズムや回折格子などの分光素子372と受光器373とからなるスペクトル分析手段で検出し、スペクトル分析情報を出力する。受光器373で得たスペクトル分析情報を光源10のスペクトル強度から差し引く計算を演算処理部40で行うことで、検査対象の吸収特性を把握することができる。
【0058】
同図(b)に示す例は、光源10として、所定の帯域幅を有する光を採用するのに換えて、波長掃引できる光源を用い、光源10の波長掃引と受光器380での検出を同期させることでスペクトルデータを得る。
【0059】
また、検査情報生成手段30は、光源10が直線偏波の光を出射したことに応じて、検査対象からの反射・散乱光の偏波状態の変化を検出する偏波状態検出手段を含むものであってもよい。これによると、検査対象での反射時に生じる偏波回転を検出して、異なる成分を有するが反射率が等しい場合の特性の違い等を検査することができる。
【0060】
以上説明したように、本発明の実施形態によると、透過波長帯域が制限された媒体が充填された孔体内の画像を得るに際して、特定波長を吸収する物体が存在する場合にも、対象部位を明確に画像化することができる。また、その際、光源から出射される光を効率的に利用し、光のエネルギーによって周辺が加熱されるなどの不都合が生じないようにすることができる。さらには、検査対象の各種情報を取得することで、より詳細に検査対象を検査することができ、画像の取得のみに留まらない孔体内検査装置の多機能化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る孔体内検査装置の構成を示す説明図である。
【図2】SC光源の構成と性質を説明する説明図である(同図(a)が基本構成、同図(b),(c)が出射光の性質を示している)。
【図3】本発明の実施形態の一つを示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態を示す説明図であって、一つの光源の出射光を切り替えることで、二つ以上の異なる性質の光を出射する例を示したものである。
【図5】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態における物性検出手段の具体例を示した説明図である。
【図7】本発明の実施形態における検査情報生成手段の具体例を示した説明図である。
【図8】本発明の実施形態における検査情報生成手段の具体例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10 光源、20 光伝送体、30 検査情報生成手段、40 演算処理部、50 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過波長帯域が制限された媒体で満たされた孔体内を光学的に検査する孔体内検査装置であって、
二つ以上の異なる性質の光を出射する一つ又は複数の光源と、
前記光源の出射光を前記孔体内の検査対象に向けて伝送し、前記検査対象からの反射・散乱光を孔体外に伝送する光伝送体と、
前記光伝送体によって伝送された反射・散乱光を受光して検査情報を生成する検査情報生成手段と、を備え、
前記光源は、その異なる性質の光の少なくとも一つとして、前記媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射し、
前記検査情報生成手段は、前記異なる性質の光毎に異なる検査情報を出力する複数の手段を備えることを特徴とする孔体内検査装置。
【請求項2】
前記媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射する光源として、SC(Super Continuum)光源を用いることを特徴とする請求項1に記載の孔体内検査装置。
【請求項3】
前記媒体の透過波長帯域は、800〜1300nm,1400〜1800nm,2100〜2400nmの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の孔体内検査装置。
【請求項4】
前記光伝送体は、前記光源から出射された光を伝送するライトガイドと前記検査対象からの反射・散乱光を伝送するイメージガイドとを備え、
前記ライトガイドの先端側に照射光学系を設けると共に、前記イメージガイドの先端側に対物光学系を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の孔体内検査装置。
【請求項5】
前記検査情報生成手段は、前記光源が前記媒体の透過波長帯域に主要な波長帯域幅を有する光を出射したことに応じて、前記検査対象の画像情報を出力する撮像手段を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の孔体内検査装置。
【請求項6】
前記検査情報生成手段は、前記光源が帯域幅を有する光を出射したことに応じて、前記検査対象のスペクトル分析情報を出力するスペクトル分析手段を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の孔体内検査装置。
【請求項7】
前記検査情報生成手段は、前記光源が低コヒーレンス光を出射したことに応じて、前記反射・散乱光と当該光源の出射光との干渉光強度を検出することで前記検査対象の奥行き情報を出力する奥行き検出手段を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の孔体内検査装置。
【請求項8】
前記検査情報生成手段は、前記光源が単一波長の光を出射したことに応じて、前記反射・散乱光を検出することで前記検査対象の物性情報を出力する物性検出手段を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の孔体内検査装置。
【請求項9】
前記検査情報生成手段は、前記光源が複数のパルス光を出射したことに応じて、前記検査対象からの散乱光のパルス到達時間の変動から前記検査対象の移動速度情報を出力する移動速度検出手段を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の孔体内検査装置。
【請求項10】
前記検査情報生成手段は、前記光源が直線偏波の光を出射したことに応じて、前記検査対象からの反射・散乱光の偏波状態の変化を検出する偏波状態検出手段を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の孔体内検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−259743(P2008−259743A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106049(P2007−106049)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】