説明

安全弁

【課題】圧力容器などの構成強度を一切低下させることなく取り付けられ、また異常圧に対する応答性も高く、さらに設計・製作が容易な安全弁を提供する。
【解決手段】一次側導圧口と二次側排圧口とを内通孔を介して連通すると共に、内通孔に縮径段部を設けてなるケーシングと、このケーシングの内通孔に導圧口から縮径段部と突合可能に嵌挿され、排圧口を閉栓する栓体とからなり、この栓体は導圧口を介して設定値以上の圧力を受圧したとき縮径段部と突合不能に反曲して内通孔を脱する。したがって、導圧口に係る圧力が設定値未満のとき、栓体は排圧口を閉塞する一方、設定値以上となれば、栓体は異常圧の押圧作用により縮径段部と突合不能に反曲変形し、縮径段部を乗り越えて内通孔を脱するから、内通孔が開通して異常圧を排圧口から開放する。なお、栓体は弾性変形可能な素材からなり、排圧口に通気性を有するストレーナを設けることもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばビールディスペンサの洗浄用容器のように内部が加圧状態となる圧力容器に取り付けられ、内圧が異常上昇したとき自動的に当該異常圧を外部に開放することで、容器破裂等の事故を防止する安全弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力容器として、例えばビールディスペンサの洗浄時に用いる洗浄用容器は、その口部に装着したディスペンサヘッドを通じて炭酸ガスボンベなどのガス供給源からガスを導入し、当該ガス圧によって内部の洗浄液(通常は水)をビールディスペンサに送出するものである。
【0003】
このとき容器の内圧は、通常、0.35〜0.4MPa(3.5〜4kgf/cm)で保たれ、当該圧力によって正常に洗浄液を送出することができるが、ガス供給源側で減圧弁が故障したり、洗浄路が目詰まりを起こすなどすれば、洗浄用容器の内圧が異常に上昇し、容器破裂などの危険な状態となる。
【0004】
そこで、従来は洗浄用容器に安全弁(リリーフ弁)を設け、容器の内圧を任意に開放可能としている。しかし、この安全弁までもが故障などによって正常に動作しない場合、上述した危険状態を回避することができない。
【0005】
特許文献1に開示の先行技術は、こうした問題を解決するもので、ディスペンサヘッドが着脱可能で、且つ、容器本体の口部に装着される装着体に、少なくとも1箇所において外部と通気する切欠溝を有した凹溝を形成すると共に、この凹溝にOリングを前記口部と圧接可能に収容し、異常圧が生じた場合は、Oリングの一部を凹溝から切欠溝に弾性変形させることで、高圧ガスを外部に排出可能な減圧機構を備えている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−27691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記先行技術は、容器本体の口部に対する装着体の着装部分(ネジ蓋部分)に減圧機構を構成するものであるから、前記着装部分の凹溝や切欠溝を形成した箇所が肉薄となって強度が低下するため、異常圧により前記着装部分が破断する恐れがある。もし、異常圧の排出前に前記着装部分が破断すれば、装着体が吹き飛んで非常に危険である。また、装着体の装着時にOリングは凹溝と口部とで強く挟持されることになるから、この状態からOリングを部分的に変形させることは困難であり、且つ、特許文献1の図3に従えば、内圧をOリングに作用させるための間隙が極めて小さため、異常圧に対する応答性も低い。さらに、Oリングに所望の動作をさせるためには、Oリングを最適な弾性係数を有する素材から製作する他、凹溝の深さや該凹溝に対する切欠溝の形成位置を最適に設定しなければならないから、当該減圧機構の設計・製作は極めて複雑なものである。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、圧力容器などの構成強度を一切低下させることなく取り付けられ、また異常圧に対する応答性も高く、さらに設計・製作が容易な安全弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、一次側導圧口に内通孔を延成して当該内通孔よりも大径の二次側排圧口と連通すると共に、前記内通孔に縮径段部を設けてなるケーシングと、このケーシングの前記導圧口から前記内通孔に前記縮径段部と周縁が突合可能に嵌挿して前記排圧口を閉栓する栓体とから安全弁を構成し、この栓体は前記導圧口を介して設定値以上の圧力を受圧したとき前記縮径段部と突合不能に二次側に向かって断面弓なりに変形して前記内通孔から前記排圧口に脱することで、前記排圧口を開栓するという手段を用いた。
【0010】
この手段によれば、導圧口に係る圧力(例えば、圧力容器の内圧)が設定値未満、即ち正常圧力のとき、栓体は排圧口を閉塞する。このとき内圧が一定せず、仮に内圧が上昇すれば、栓体が当該内圧に押圧されて排圧口に向かって移動しようとするが、内圧が設定値未満である限り、仮に栓体が内通孔を移動したとしても、周縁が縮径段部と突合して内通孔を閉塞し、一次側の内圧を保持する。これに対して、内圧が設定値以上となれば、栓体は異常圧の押圧作用により二次側に向かって断面弓なりに変形して、縮径段部と突合不能となり、結果、縮径段部を乗り越えて内通孔を脱するため、内通孔が開通して、異常圧は排圧口から開放される。なお、栓体について「二次側に向かって断面弓なりに変形」とは、栓体が異常圧の押圧力により二次側に全体的に反り曲がる変形をいい、湾曲、屈曲、折曲などの変形態様を含む概念である。
【0011】
膜板状の栓体は、ゴムやプラスチックなどの弾性変形可能な素材から成形することが好ましい。栓体が所定値未満の内圧で変形することを想定する場合、弾性変形によれば、仮に一時的な内圧上昇によって栓体が変形したとしても、内圧が定常となれば原形に復元して、内通孔を閉塞状態に維持し、また、縮径段部と突合可能な外径を保持するからである。さらに、栓体を再使用できるという利点もある。ただし、栓体を金属などの塑性変形素材から成形することを排除するものではない。
【0012】
また、排圧口に通気性を有するストレーナを設けることが好ましい。異常圧の発生時に、その通気性によって内圧を開放しつつ、栓体を捕捉できるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上述のような構成であるから、その取り付けに際して、洗浄用容器などの構成強度を一切低下することがなく、既存の圧力容器に対しても、導圧口の接続口を設けるだけで取り付けることができる。しかも、膜板状の栓体はその全面で内圧を受圧するから、有効受圧面積が大きく、異常圧に対する応答性も高い。さらに、ケーシングは内通孔に縮径段部を形成するだけで成形され、栓体は内通孔に嵌挿可能な外径に成形するだけであるから、設計・製作も極めて容易であり、しかも、栓体を導圧口から内通孔に嵌挿するだけであるから、組み付けも極めて容易である。
【0014】
また、膜板状の栓体を弾性変形可能な素材から成形することで、内圧が所定値未満であれば、内圧の一時的上昇によって栓体が変形したとしても原形に弾性復元するから、内通孔を確実に閉塞維持することができる。
【0015】
さらに、排圧口にストレーナを設けることで、内通孔から脱した栓体を捕捉するから、異常圧の排圧時に周囲を汚すことがなく、また、栓体が勢いよく吹き飛んだとしても、周辺の人や機器に危害が及ぶことを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の一実施形態を示したもので、1は一次側導圧口2と二次側排圧口3を内通孔4によって連通したケーシングであって、内通孔4には縮径段部5を形成している。この実施形態の場合、導圧口2から同径の内通孔4を延成し、当該内通孔4の二次側半分を縮径段部5とすると共に、排圧口3は内通孔4よりも大径としている。また、この実施形態では、導圧口2の外周に例えばディスペンサヘッドの装着体に螺合取り付けするための雄ネジ6を設けると共に、排圧口3には通気性を有するストレーナ7を設けている。このストレーナ7は、ネジ蓋に通気孔7aを形成してなり、排圧口3に着脱可能に螺入している。
【0017】
一方、8は内通孔4に嵌挿して、排圧口3を閉栓する膜板状の栓体である。即ち、この栓体8は、外周面が内通孔4の内周面と密着することで内通孔4に気密に嵌挿可能な外径を有することを特徴とし、さらに、導圧口2から嵌挿することで周縁の二次側面が縮径段部5と突合可能に位置させている。そして、栓体8は導圧口2を介して設定値以上の圧力を受圧したとき、二次側に向かって断面弓なりに変形して、前記周縁が縮径段部5と突合不能となる変形能を有することを特徴とする。なお、この実施形態では、膜板状の栓体8を一定の厚みを有する円盤状のゴム板から構成している。
【0018】
次に、本安全弁の動作を説明すると、先ず導圧口2に係る圧力(内圧)、即ち栓体8の受圧する圧力が設定値未満のとき、栓体8は図1の初期状態を維持するが、前記圧力が設定値に近づくにつれて栓体8を押圧する力が大きくなるため、栓体8が初期状態よりも二次側に向かって移動することがある。この移動は、膜板状の栓体8の弾性力(変形能)および内通孔4との摩擦力に起因して、何ら変形を伴わない移動と、若干の変形を伴う移動とに分けられる。しかし、何れの態様で移動するにしても、圧力が設定値未満であれば、図2に示したように、栓体8の移動は縮径段部5によって規制され、排圧口3を閉栓維持する。特に、膜板状の栓体8をゴム板のように弾性変形可能な素材から構成することで、仮に設定値未満の圧力によって栓体8が一時的に変形したとしても、弾性復元して内通孔4を気密保持する。
【0019】
一方、内圧が設定値以上となれば、当該異常圧によって膜板状の栓体8は、図3に示したように、二次側に屈するように断面弓なりに変形し(一点鎖線を参照)、この変形によって周縁が小径化するから、結局、縮径段部5と突合不能となり、異常圧に押圧されて栓体8が内通孔4から排圧口3に脱する。栓体8が内通孔4から脱することで、内通孔4の閉塞は解除されるから、導圧口2と排圧口3が連通して、異常圧を外部に排出することができる。また、内通孔4から脱した栓体8は、排圧口3に設けたストレーナ7によって捕捉されるから、栓体8の飛散によって周囲を汚すことも、また人や機器に危害を与えることもない。
【0020】
図4は、本発明をビールなどのサーバーシステムに適用したところを示している。同図中、10はビールなどのディスペンサ(サーバ)、11は炭酸ガスボンベなどのガス供給源、12は洗浄液(通常は水)を入れた洗浄用容器の本体、13は本体12の口部に取り付けた洗浄用容器の装着体、14は装着体13に装着されたディスペンサヘッドであり、15が本発明の安全弁である。即ち、この適用例の場合、ガス供給源11からディスペンサヘッドを通じて洗浄用容器にガス圧が導入され、当該ガス圧によって洗浄液をディスペンサヘッドを通じてディスペンサ(サーバ)に送出するシステムにおいて、本発明の安全弁15は洗浄用容器の内圧を導圧可能に装着体13に組み付けられる。ここで、排圧(異常圧)の設定値は、本発明を適用する設備に応じて決定するものであるが、その設備がビールディスペンサの洗浄用容器である場合、異常圧は0.75〜0.85MPa(7.5〜8.5kgf/cm)を例示することができる。
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。第一に、膜板状の栓体8の素材は、ゴムなどの弾性変形素材に変えて、設定値以上の圧力で塑性変形する素材とすることができる。ただし、この場合、内通孔4との気密性密着が困難な場合もあるため、栓体8の周面あるいは内通孔4にOリング等のシールないしはパッキン部材を設けておくことが好ましい。第二の変更点として、上記実施形態では、内通孔4の二次側全部を小径化して、これを縮径段部5としたが、本発明で必要なことは、圧力が設定値未満のとき栓体8が突合可能な段部とすることであるから、内通孔4の中途のみを小径化して縮径段部とすることができる。第三に、上記実施形態では、図1の状態を初期状態としたが、当初より栓体8を縮径段部5と突合させた図2の状態を初期状態としてもよい。さらに、第四にストレーナは省略可能であり、第五に、ケーシング1の外形は上記実施形態に何ら限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示した安全弁の断面図(初期状態)
【図2】同安全弁の内圧上昇時における動作説明図
【図3】同安全弁の異常圧発生時における動作説明図
【図4】同安全弁のビールサーバへの適用を示した説明図
【符号の説明】
【0023】
1 ケーシング
2 導圧口
3 排圧口
4 内通孔
5 縮径段部
7 ストレーナ
8 膜板状の栓体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側導圧口に内通孔を延成して当該内通孔よりも大径の二次側排圧口と連通すると共に、前記内通孔に縮径段部を設けてなるケーシングと、このケーシングの前記導圧口から前記内通孔に前記縮径段部と周縁が突合可能に嵌挿して前記排圧口を閉栓する栓体とからなり、この栓体は前記導圧口を介して設定値以上の圧力を受圧したとき前記縮径段部と突合不能に二次側に向かって断面弓なりに変形して前記内通孔から前記排圧口に脱することを特徴とした安全弁。
【請求項2】
栓体は弾性変形可能な素材からなる請求項1記載の安全弁。
【請求項3】
排圧口に通気性を有するストレーナを設けた請求項1または2記載の安全弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−103272(P2009−103272A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277528(P2007−277528)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(595151121)株式会社ヰゲタ (11)
【Fターム(参考)】