説明

安定化有機ボラン重合開始剤及び重合性組成物

本発明は、第1部分に、遊離基発生種を形成できる有機硼素化合物及びジヒドロカルビルヒドロキシルアミン、脂環式ヒドロキシルアミン又はジヒドロカルビルアミン若しくは脂環式ヒドロキシルアミンのニトリルオキシドを含む、安定化量の1種又はそれ以上の化合物を、並びに第2部分に、遊離基重合可能な1種又はそれ以上の化合物を含む重合性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離基重合可能な部分(moiety)を含む化合物及び遊離基重合を開始できる有機ボラン開始剤を含む安定化重合性組成物並びにこのような組成物を基剤とする接着剤に関する。別の実施態様において、本発明は、遊離基重合可能な部分を含む化合物の重合方法及びこのような組成物を用いる基材(substrate)の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンのような表面エネルギーの低いオレフィンは、玩具、自動車部品、家具用途などのような種々の用途において種々の魅力的な性質を有する。これらのプラスチック材料の表面エネルギーは低いため、これらの材料に接着する接着剤組成物を見つけることは非常に困難である。これらのプラスチックに使用される市販接着剤は、表面への接着剤の接着前に、時間を要したり、又は表面の徹底的な前処理を必要したりする。このような前処理には、コロナ処理、火炎処理、プライマーの適用などがある。表面の徹底的な前処理のための要件は、自動車部品、玩具、家具などの設計者にかなりの制限をもたらす。
【0003】
Skoultchiに対して発行された一連の特許(特許文献1、2、3、4、及び5(これら全てを参照することによって本明細書中に組み入れる))は、アクリル系接着剤組成物において有用な二部分型(two−part)開始剤系を開示している。二部分系の第1部分は安定な有機ボランアミン錯体を含み、第2部分は、有機酸又はアルデヒドのような不安定化剤又は活性化剤を含む。錯体の有機ボラン化合物は、3つの配位子を有し、それらはC1〜C10アルキル基又はフェニル基から選ぶことができる。接着剤組成物は、スピーカー磁石、金属対金属の接着、自動車のガラス対金属の接着、ガラス対ガラスの接着、回路基板部品の接着、選ばれたプラスチック対金属の接着、ガラス対木材の接着などのような構造用又は半構造用接着剤用途において、また、電動機磁石に有用であることが開示されている。
【0004】
Zharovらは一連の特許(特許文献6、7及び8(これら全てを参照することによって本明細書中に組み入れる))において、硬化の開始に有機ボランアミン錯体を使用する接着剤として特に有用である重合性アクリル系組成物を開示している。これらの錯体は、表面エネルギーの低い基材に接着する接着剤の重合を開始するのに良好であることが開示されている。
【0005】
Pociusは一連の特許(特許文献9、10、11、12、13及び14(これら全てを参照することによって本明細書中に組み入れる))において、ジ第一アミンと、第一アミンと反応する少なくも2個の基を有する化合物との反応生成物であるポリアミン及びポリオキシアルキレンポリアミンのような種々のアミンを有するアミン有機ボラン錯体を開示している。Posius(特許文献12)は、有機ボランポリアミン錯体、ポリオール及びイソシアネート脱錯化剤を含む組成物を開示している。
【0006】
Kendallらの特許文献15及びKneafseyらの特許文献16及び17は、接着剤組成物において重合用開始剤として使用できる第四硼素塩を開示している。これらの接着剤組成物は、表面エネルギーの低い基材の接着に使用できる。
【0007】
先行技術において開示された開始剤の多くは、周囲温度又はその近辺の温度において、オレフィン不飽和を含む組成物中で不安定であり、周囲温度又はその近辺の温度において時間と共に重合を引き起こす。周囲温度又はその近辺の温度におけるこの不安定性は、必要になる前に重合を引き起こすおそれがあり、また、所望の用途に不適当な組成物を生じる可能性がある。更に、これらの組成物は一般に、一方は樹脂側で且つもう一方が硬化剤である二部分型組成物である。一方の側(硬化剤)は有機ボラン化合物を含み、もう一方の側は脱錯化剤を含む。ほとんどの場合、2液の容積比はかなり異なり、即ち、4:1より大きく、多くの場合10:1又はそれ以下である。問題は、二部分型組成物を計量供給するために設計されたほとんどの市販装置が、4:1又はそれ以下の比を用いることである。これらの組成物をこのような装置中で使えるようにするためには、樹脂又は反応しない成分を一方又はもう一方に添加して、適当な容積比を得る。問題は、有機ボラン化合物を含む側に樹脂を添加する場合には、混合物が不安定になる可能性があり、混合物が周囲温度で硬化し始めて、組成物を無駄にすることもあり得ることである。過剰な不活性材料を硬化剤側に添加する場合には、不活性成分が可塑剤として働くか又は弱い連続相を生じ、重合組成物の性質に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
前記参考文献のいくつかは、不所望な重合に対して組成物を安定化するために、ヒドロキノンのようなフェノール化合物を使用することを開示している。Pociusの特許文献18の18欄,第45行〜第53行;Pociusの特許文献11の13欄,第17行〜第24行を参照されたい。Jennesの特許文献19は、アルキルボラン開始アクリレート系にヒドロキノン、フェナチアジン又はt−ブチルピロカテコールを使用することを開示している。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,106,928号
【特許文献2】米国特許第5,143,884号
【特許文献3】米国特許第5,286,821号
【特許文献4】米国特許第5,310,835号
【特許文献5】米国特許第5,376,746号
【特許文献6】米国特許第5,539,070号
【特許文献7】米国特許第5,690,780号
【特許文献8】米国特許第5,691,065号
【特許文献9】米国特許第5,616,796号
【特許文献10】米国特許第5,621,143号
【特許文献11】米国特許第5,681,910号
【特許文献12】米国特許第5,686,544号
【特許文献13】米国特許第5,718,977号
【特許文献14】米国特許第5,795,657号
【特許文献15】米国特許第6,630,555号
【特許文献16】米国特許出願公開2003/0226472
【特許文献17】米国特許出願公開2004/0068067
【特許文献18】米国特許第5,684,102号
【特許文献19】米国特許第3,236,823号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、表面エネルギーの低い基材(substrate)に接着することができる接着剤系、及びこのような接着を促進する開始剤系が必要とされている。更にまた必要なのは、周囲温度又はその近辺の温度において熱安定性であり且つユーザーが必要とする場合に重合されるポリマー組成物及び接着剤系である。更にまた必要なのは、徹底的な又はコストのかかる前処理を必要とせずに、表面エネルギーの低い基材に接着でき且つ表面エネルギーの低い基材を他の基材に接着できる接着剤組成物である。既存の市販装置中で混合比4:1又はそれ以下で使用できる更なる組成物も必要とされている。高温において安定性、強度及び接着性を有する組成物もまた、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1部分中に、遊離基発生種(species)を形成できる有機硼素化合物及びジヒドロカルビルヒドロキシルアミン、脂環式ヒドロキシルアミン又はジヒドロカルビルヒドロキシルアミン若しくは脂環式ヒドロキシルアミンのニトリルオキシドを含む1種又はそれ以上の化合物を、並びに第2部分中に、遊離基重合可能な1種又はそれ以上の化合物を含む二部分型重合性組成物である。好ましい一実施態様において、第2部分は更に、2つの部分の接触時に、有機ボラン化合物に遊離基発生種を形成させることができる助剤を含む。別の実施態様において、本発明の重合性組成物は接着剤組成物中に配合できる。別の好ましい実施態様において、第1部分は遊離基重合可能な1種又はそれ以上の化合物を更に含む。これは、商業的に望ましい容積比の2つの部分を有する組成物の配合を容易にする。この配合の接着剤組成物はプラスチックのような表面エネルギーの低い基材への優れた接着性を提供する。
【0012】
本発明はまた、重合性化合物が重合されるような条件下で重合性組成物の成分を接触させることを含む重合方法である。一実施態様において、接触は周囲温度又はその近辺で行われる。別の実施態様において、この方法は、重合された組成物を、有機ボラン化合物が遊離基発生種を形成するような条件下で高温に加熱する工程を更に含む。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、遊離基発生種化合物を形成できる有機硼素化合物;ジヒドロカルビルヒドロキシルアミン、脂環式ヒドロキシルアミン又はジヒドロカルビルヒドロキシルアミン若しくは脂環式ヒドロキシルアミンのニトリルオキシド;及び遊離基重合可能な1種又はそれ以上の化合物を含む一部分型重合性組成物である。有機硼素化合物は、遊離基発生種が形成される温度にこの組成物を加熱することによって遊離基発生種を形成できる。
【0014】
更に別の実施態様において、本発明は2つ又はそれ以上の基材を一緒に接着させる方法であって、重合が開始されるような条件下で重合性組成物の成分を一緒に接触させ;前記重合性組成物を2つ又はそれ以上の基材と接触させ;これらの2つ又はそれ以上の基材を、重合性組成物がこれらの2つ又はそれ以上の基材の間に位置するように配置し;そして、重合性組成物を重合させ且つこれらの2つ又はそれ以上の基材を一緒に接着させることを含む。
【0015】
更に別の実施態様において、本発明は、基材の被覆方法であって、本発明に係る組成物を基材の1つ又はそれ以上の面と接触させ、そして本発明に係る組成物の重合を開始することを含む方法である。
【0016】
別の実施態様において、本発明は、本発明に係る組成物が基材の間に配置された且つ各基材に結合された、2つの基材を含む積層体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の重合性組成物は、プライマー又は表面処理を必要とせずに、表面エネルギーの低い基材に良好な結合を形成できる。これらの重合性組成物は、接着剤、被覆剤として又は基材を一緒に貼り合わせるのに使用できる。本発明の重合性組成物は、4:1又はそれ以下の2部分容積比で市販装置中で計量分配されるように配合することができる。重合された組成物は、高温で優れた凝集及び接着強度を示し、従って、全ての温度において優れた安定性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、40℃への加熱時における、種々の安定剤を含む配合物の粘度の数日間にわたるグラフである。図2も、40℃への加熱時における、種々の安定剤を含む配合物の粘度の数日間にわたるグラフである。
【0019】
重合開始剤は、三価有機硼素化合物を形成できる有機硼素含有化合物である。好ましい一実施態様において、遊離基発生種は、三価有機硼素化合物遊離基発生種である。好ましい硼素含有化合物は、少なくとも3つが共有結合であり且つ1つが共有結合であるか錯化剤と電子的に結合した形態であることができる、硼素への4つの結合を有するため、四価である。三価硼素化合物のような遊離基発生種は、硼素含有化合物が別の物質(本明細書中では脱錯化剤(decomplexing agent)又は開始剤(initiator)と称する)と接触する際に形成される。遊離基発生種は、周囲の酸素と反応することよって遊離基を発生する。硼素含有化合物が四価である実施態様においては、このような接触によって、硼素原子に結合した又は配位された配位子の1つが引き抜かれ、硼素含有化合物は三価ボランに転化される。遊離基発生種は、重合条件下において遊離基を含む又は発生する化合物である。脱錯化剤又は開始剤は、錯化剤と反応するか又は硼素含有化合物から陽イオンを引き抜く任意の化合物であることができる。好ましくは、硼素含有化合物は、有機ボレート又は有機ボラン錯体(complex)である。
【0020】
有機ボレートは、プラスの陽イオンと陰イオンの四価硼素との塩である。脱錯化剤又は開始剤との接触によって有機ボランに転化されることができる任意の有機ボレートを使用できる。好ましい有機ボレート(第四硼素塩としても知られる)の1つの類は、Kneafseyらの米国特許出願公開2003/0226472及びKneafseyらの米国特許出願公開2004/0068067に開示されており、これらをいずれも参照することによって本明細書中に組み入れる。これら2つの米国特許出願公開に開示された好ましい有機ボレートは式:
【0021】
【化1】

【0022】
[式中、
14は、C1〜C10アルキルであり;
15は、それぞれ独立して、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、フェニル、フェニル置換C1〜C10アルキル又はフェニル置換C3〜C10シクロアルキルであるが、ただし、R14及び/又はR15の任意の2つは場合によっては炭素環の一部であることができ;
+は、金属イオン又は第四アンモニウム塩である」
によって記載される。有機ボレートの好ましい例としては、ナトリウムテトラエチルボレート、リチウムテトラエチルボレート、リチウムフェニルトリエチルボレート及びテトラメチルアンモニウムフェニルトリエチルボレートが挙げられる。
【0023】
別の実施態様において、有機ボレートは、Kendallらの米国特許第6,630,555号(参照することによって本明細書中に組み入れる)に開示されたような内部ブロックトボレートである。この特許に開示されているのは、硼素原子が、更にオキサ又はチオ−部分を含む環構造の一部である4個の配位内部ブロックトボレートである。内部ブロックト複素環式ボレートは好ましくは以下の構造:
【0024】
【化2】

【0025】
[式中、Jは酸素又は硫黄であり;Jが酸素を表す場合には、nは整数2、3、4又は5であり;Jが硫黄を表す場合には、nは整数1、2、3、4又は5であり;R16、R17、R18及びR19は独立して、炭素数1〜10の置換又は非置換アルキル又はアルキレン基、炭素数7〜12の置換アリール基又は非置換アリール基であり;R17、R18及びR19は水素であることができ;R16は、第2の非置換又は置換環状ボレートの一部であることができ;R16はスピロ環又はスピロ−エーテル環を構成でき;R16はR17と一緒に結合して脂環式環を形成でき;又はR16はR17と一緒にシクロエーテル環を構成でき、Mは正電荷を持つ任意の種であり;mは0より大きい]
を有する。
【0026】
本明細書中で有機ボレートに関して記載する用語「内部ブロックト」(内部封鎖)(internally blocked)は、4つの配位硼素原子が、4つの硼素配位結合価又は結合価のうち2つの間で架橋された内部環構造の一部であることを意味する。内部ブロッキングは、硼素が単環又は多環構造の一部である単環又は二環構造を含む。
【0027】
有機ボラン化合物がアミン錯体の形態である実施態様において、本発明において使用される遊離基発生種は、トリアルキルボラン又はアルキルシクロアルキルボランである。好ましくは、このようなボランは、式:
【0028】
B−(R23
[式中、Bは硼素を表し;R2は、それぞれ別個にC1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキルであるか、あるいはR2の2つ又はそれ以上が結合して脂環式環を形成することができる]
に相当する。好ましくは、R2はC1〜C4アルキル、更に好ましくはC2〜C4アルキル、最も好ましくはC3〜C4アルキルである。好ましい有機ボランには、トリ−エチルボラン、トリ−イソプロピルボラン及びトリ−n−ブチルボランがある。
【0029】
有機硼素化合物が有機ボランアミン錯体である実施態様において、有機ボランは三価有機ボランであり、アミンは有機ボランと共に可逆的に錯形成する任意のアミンであることができる。このような錯体は、式:
B−(R23Am
[式中、R2は前述の通りであり、Amがアミンである]
で表される。
【0030】
有機硼素化合物が有機ボランアミン錯体である実施態様において、有機ボラン化合物の錯化に使用されるアミンは、有機ボランを錯化し且つ脱錯化剤への暴露時に又は高温への暴露時に脱錯化されることができる任意のアミン又はアミン混合物であることができる。アミン/有機ボラン錯体中における所定のアミンの使用の望ましさは、結合エネルギー(binding energy)として知られる、ルイス酸−塩基錯体と、単離されたルイス酸(有機ボラン)と塩基(アミン)のエネルギーの合計とのエネルギー差から計算することができる。結合エネルギーのマイナスの値が大きいほど、錯体は安定である。
【0031】
結合エネルギー=
−(錯体エネルギー−(ルイス酸のエネルギー+ルイス塩基のエネルギー))
【0032】
このような結合エネルギーは、Hartree Fock法のようなab−initio法及び3−21G基底系を用いて計算できる。これらの計算法は、SPARTAN及びGaussian 98プログラムとSilicon Graphicsワークステーションのような市販のソフトウェア及びハードウェアを用いて商業的に入手できる。アミン/有機ボラン結合エネルギーが10kcal/mol又はそれ以上のアミンが好ましく、結合エネルギーが15kcal/mol又はそれ以上のアミンがより好ましく、結合エネルギーが20kcal/mol又はそれ以上のアミンが最も好ましい。本発明の組成物の重合が脱錯剤を用いて開始される実施態様において、アミン−有機ボランの結合エネルギーは好ましくは50kcal/mol又はそれ以下、最も好ましくは30kcal/mol又はそれ以下である。本発明の組成物の重合が熱を用いて開始される実施態様において、アミンの結合エネルギーは好ましくは100kcal/mol又はそれ以下、より好ましくは80kcal/mol又はそれ以下、最も好ましくは50kcal/mol又はそれ以下である。
【0033】
好ましいアミンとしては、第一アミン若しくは第二アミン又は第一アミン基若しくは第二アミン基を含むポリアミン、あるいはアンモニア[Zharovの米国特許第5,539,070号(5欄,第41行〜第53行;参照することによって本明細書中に組み入れる)、Skoultchiの米国特許第5,106,928号(2欄,第29行〜第58行;参照することによって本明細書中に組み入れる)及びPociusの米国特許第5,686,544号(7欄,第29行〜10欄,第36行;参照することによって本明細書中に組み入れる)に開示];エタノールアミン、第二ジアルキルジアミン又はポリオキシアルキレンポリアミン;並びにジアミンと、アミンと反応性の2つ又はそれ以上の基を有する化合物との、アミンを末端基とする反応生成物[Devinyの米国特許第5,883,208号(7欄,第30行〜8欄,第56行;参照することによって本明細書中に組み入れる)に開示]が挙げられる。Devinyの特許に記載された反応生成物に関しては、好ましいジ第一アミンとしては、アルキルジ第一アミン、アリールジ第一アミン、アルカリールジ第一アミン及びポリオキシアルキレンジアミンが挙げられ;アミンと反応性の化合物としては、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、アルデヒド、エポキシド、アルコール及びアクリレート基の2つ又はそれ以上の部分を含む化合物が挙げられる。Devinyの特許に記載された好ましいアミンとしては、n−オクチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−ヘキサンジアミン)、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン(1,3−プロパンジアミン)、1,2−プロピレンジアミン、1,2−エタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリエチレンテトラアミン及びジエチレントリアミンが挙げられる。好ましいポリオキシアルキレンポリアミンとしては、ポリエチレンオキシドジアミン、ポリプロピレンオキシドジアミン、トリエチングリコールプロピレンジアミン、ポリテトラメチレンオキシドジアミン及びポリエチレンオキシドコポリプロピレンオキシドジアミンが挙げられる。
【0034】
好ましい一実施態様において、アミンはトリアルキルボラン又はアルキルシクロアルキルボランを含み、また、アミンは第一アミン;第二アミン;第一アミン若しくは第二アミン又は両者を有するポリアミン;アンモニア;ポリオキシアルキレンアミン;ジアミンと、アミンと反応する部分を有する二官能価化合物との反応生成物(この反応生成物は末端アミン基を有する);アリールアミン;複素環式アミン;アミジン構造成分を有する化合物;複素環中に少なくとも1つの第二窒素を有する脂肪族複素環(この複素環式化合物は複素環中に1個又はそれ以上の更なる第二若しくは第三窒素原子、酸素原子、硫黄原子又は二重結合を含むこともできる);アミン部分を含む1個又はそれ以上の置換基が脂環式環に結合した脂環式化合物;共役イミン;又はそれらの混合物[Sonnenscheinらの米国特許出願公開2002/0028894,パラグラフ0018〜0045(参照することによって本明細書中に組み入れる)に記載]を含む。
【0035】
別の好ましい実施態様において、アミンはさらにシロキサンを含み、それはアミノシロキサンである。アミンが、有機ボランとの充分な結合エネルギー(前述)を有する、アミン単位及びシロキサン単位を共に有する任意の化合物を使用できる。好ましくは、シロキサン部分は、この成分をシロキサンモノマー、オリゴマー及び/又は、存在する場合には、ポリマーの重合に関与させるものである。シロキサン含有モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーはシリコーンを含む任意の化合物であることができる。好ましくはシリコーン化合物は反応性官能価を有する。好ましい反応性官能価としては、水素化物、オレフィン性不飽和、ヒドロキシル及び加水分解してシラノール部分を形成する加水分解性部分が挙げられる。好ましいアミンシランは、Sonnenscheinらの米国特許出願第10/377,440(2003年2月28日出願,13頁,第1行〜第17頁,第19行(参照することによって本明細書中に組み入れる)に開示されている。
【0036】
有機硼素化合物が有機ボランアミン錯体である実施態様においては、錯体中のアミン化合物対ボラン化合物の当量比が比較的重要である。錯体の安定性を増大させるために、且つ脱錯化剤がイソシアネート官能性化合物である実施態様においては、イソシアネート官能性化合物と反応させることによって最終製品中にポリ尿素を存在させるために、過剰のアミンが好ましい。ポリ尿素の存在は、組成物の高温特性を改善する。
【0037】
本発明の重合性組成物に使用できる遊離基重合可能な化合物としては、遊離基重合によって重合できるオレフィン性不飽和を含む任意のモノマー、オリゴマー、ポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。このような化合物は当業者によく知られている。Mottusの米国特許第3,275,611号(2欄,第46行〜4欄,第16行)及びSonnensheinらのU.S.2002/0028894(パラグラフ47)は、このような化合物を記載しており、これらの文献を参照することによって本明細書中に組み入れる。
【0038】
組成物が接着剤として使用される実施態様においては、好ましくはアクリレート及び/又はメタクリレートを基剤とする化合物を使用する。最も好ましいアクリレート及びメタクリレート化合物としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート及びシクロヘキシルメチルメタクリレートが挙げられる。遊離基重合可能な化合物(例えばアクリレート及び/又はメタクリレートを基剤とする化合物)の好ましい量は、配合物の重量に基づき、好ましくは10重量%又はそれ以上、より好ましくは20重量%又はそれ以上、最も好ましくは30重量%又はそれ以上である。遊離基重合可能な化合物(例えばアクリレート及び/又はメタクリレートを基剤とする化合物)の好ましい量は、配合物総重量に基づき、好ましくは90重量%又はそれ以下、より好ましくは85重量%又はそれ以下、最も好ましくは80重量%又はそれ以下である。
【0039】
本発明の組成物は、第1部分(又は第1液)中に、有機硼素化合物及び1種又はそれ以上の開環性複素環部分を含む1種又はそれ以上の化合物を、且つ第2部分(又は第2液)中に、遊離基重合によって重合され得る化合物、開環性複素環部分を含む化合物を重合させることができる触媒及び、場合によっては、有機ボラン化合物を脱錯化する成分を含む二部分型(又は二液型)重合性組成物を含む。一実施態様において、本発明は、遊離基重合によって重合する化合物から製造された1種又はそれ以上のポリマーを含む第1相と開環性複素環部分を含む1種又はそれ以上の化合物から得られた重合又は部分重合化合物を含む第2相を含む2相系である。一実施態様において、複素環式開環部分を含む化合物から製造されるポリマーは、遊離基重合によって製造されるポリマーとは混和性でなく、従って、得られる重合組成物は少なくとも2つの領域を有し、各領域は形成される2種のポリマーのうちの一方を多く含む。一実施態様において、本発明の2部分型組成物は、遊離基重合可能な重合化合物を含む重合部分と、開環性複素環部分を有する非重合又は部分重合化合物を含んでなる第2の部分を含む。これらの2つの部分は混和性、部分混和性又は非混和性であることができる。好ましい実施態様において、重合組成物は、一方の相はオレフィン結合によって重合する化合物を基剤とし且つもう一方の相は複素環部分の開環反応によって重合する、2つの相を含む。本発明の硬化組成物は、好ましくは多くの場合は混和性でない2つの領域を含む。いくつかの実施態様においては、2つの領域は2種の異なるポリマーの別々の相又は相互貫通網目構造である。組成物が架橋用化合物を含む場合には、2つの領域は互いに化学的に結合するができる。
【0040】
複素環式開環性部分を含む化合物は、開環及び重合の可能な複素環部分を含む任意のモノマー、オリゴマー又はプレポリマーであることができる。複素環部分のヘテロ原子は好ましくは、窒素、酸素又は硫黄であり、窒素及び酸素が好ましく、酸素が最も好ましい。好ましくは、複素環部分は3員環である。好ましい複素環部分はオキシラン及びアジリジン部分であり、オキシラン部分が最も好ましい。好ましい複素環式開環重合性化合物は、Sonnenscheinの米国特許出願公開2003/018,611(パラグラフ0048及び0049)及び米国特許第5,308,895号(8欄,第6行,式6及び8欄,第9行及び式9)に開示されており、これらの文献を参照することによって本明細書中に組み入れる。
【0041】
複素環式開環重合性化合物、例えばオキシラン及びアジリジンから得られるポリマーの存在は、ナイロンのような、表面エネルギーが比較的高いプラスチックへの接着性を向上させ、また、本発明の重合又は部分重合組成物の熱的性質を改善する。比較的表面エネルギーの高い基材への結合を改善するのに充分な且つ重合又は部分重合組成物の高温特性を改善するのに充分な量の複素環式開環性化合物を使用する。ここで言及する熱的性質には、重合組成物の比較的高いガラス転移温度及び改善された高温凝集強度(125及び150℃といった高温における比較的高い重ね剪断強度によって示される)がある。複素環式開環重合性化合物が存在する場合には、重合性配合物は好ましくは、ガラス転移温度又は重合性配合物の所定の高温における重ね剪断強度を著しく改善するのに充分な量の複素環式開環重合性化合物を含む。ガラス転移温度の著しい改善は5℃である。かさね剪断強度の著しい改善は、125℃において50psi又はそれ以上である。重合性配合物全体は、2重量%又はそれ以上の、より好ましくは5重量%又はそれ以上の、最も好ましくは10重量%又はそれ以上の複素環式開環重合性化合物を含むことができる。重合性配合物は、50重量%又はそれ以下の、より好ましくは45重量%又はそれ以下の、最も好ましくは40重量%又はそれ以下の複素環式開環重合性化合物を含むことができる。
【0042】
場合によっては、複素環式開環重合性化合物に由来する相に遊離基重合性化合物相を架橋させるのが有用であることがある。これは、オレフィン性不飽和官能価、例えばアクリル部分と複素環開環重合性官能価又はイソシアネート官能価とを共に含む二官能価モノマー(以下、架橋剤と称する)を用いて行う。この型の材料の例としては、グリシジルアクリレート、例えばグリシジルメタクリレート又はイソシアナトアクリレート、例えば2−イソシアナトエチルメタクリレートが挙げられる。このような化合物は、通常の反応条件下で反応して、重合性組成物の各相中の反応性成分と反応する。架橋剤の使用量は、所望の性質を、即ち、125℃又はそれ以上の温度における充分な剪断強度を与えるが、室温接着強度を目標値未満に下げない量である。このような架橋剤の好ましい量は、重合性配合物の重量に基づき、0重量%又はそれ以上、より好ましくは1重量%又はそれ以上、さらに好ましくは3重量%又はそれ以上、最も好ましくは5重量%又はそれ以上である。好ましくは、架橋剤の使用量は、重合性配合物全体の20重量%又はそれ以下、より好ましくは15重量%又はそれ以下、最も好ましくは12重量%又はそれ以下である。
【0043】
好ましい一実施態様において、複素環式化合物の開環重合は、複素環式化合物をルイス酸触媒と接触させることによって開始する(Arnold,R.J,.Mod.Plastics,41,149(1964)及びJ.Harris及びS.Temin,J.Appl.Polym Sci.,10,523,(1966)(これらの文献を参照することによって本明細書中に組み入れる)に記載)。例えば、House,H.,Modern Synthetic Methods,2nd Edition,p.786,(1972)(参照することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたような複素環式化合物の重合を開始する任意のルイス酸を使用できる。好ましいルイス酸の例としては、三塩化硼素、三フッ化硼素(BF3)、四塩化錫、二塩化亜鉛、四塩化チタン及び三塩化アルミニウムが挙げられる。いくつかの実施例において、ルイス酸は、弱ルイス塩基によって錯化して、空気中で水蒸気との反応に対して安定化することができる。本明細書中で使用する「弱塩基」は、ルイス酸が重合を触媒しようとする組成物中の開環重合性化合物よりも弱い塩基である。好ましいルイス塩基には、アミン、ケトン及びエーテルがある。本明細書において特に有用なのは、三フッ化硼素及び四塩化錫(SnCl4)のアミン及びエーテル錯体である。四塩化錫は、いくつかの接着剤配合物では錯化を必要とせずに良好な保存寿命を有することができる。ルイス酸用の錯化剤として有用な好ましいアミンとしては、アミン置換芳香族化合物、例えばアニリン、置換アニリン、ジフェニルアミン及び置換ジフェニルアミンが挙げられる。ルイス酸用の錯化剤として有用な好ましいエーテルとしては、低沸点エーテル(沸点50℃未満)が挙げられる。好ましいエーテルは、ジアルキルエーテル、例えばジエチルエーテル及びジメチルエーテル並びに脂環式エーテル、例えばテトラヒドロフランである。好ましいケトンとしてはアセトンが挙げられる。ルイス酸触媒は、複素環式部分を含む化合物の重合を開始するのに充分な量で使用し、特に、それらは、比較的少量で使用でき、化学量論は、一部の硬化性系の場合に必要とされるほど厳密に監視する必要がない。好ましくは、ルイス酸触媒の使用量は総配合物の0.1重量%又はそれ以上、より好ましくは0.25重量%又はそれ以上、最も好ましくは0.5重量%又はそれ以上である。好ましくは、ルイス酸触媒の使用量は、配合物全体の10重量%又はそれ以下、より好ましくは8重量%又はそれ以下、最も好ましくは6重量%又はそれ以下である。
【0044】
好ましい一実施態様において、本発明の組成物はさらに、シロキサン骨格及び重合可能な反応性成分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーを含む化合物を含むことができる。本発明において有用なシロキサン骨格及び重合可能な反応性成分を有する化合物、オリゴマー又はプレポリマーは、骨格中にシロキサン単位を含み且つ適度な反応条件下で組成物を重合できる反応性基を有する任意の化合物、オリゴマー又はプレポリマーを含む。これらは、Sonnenscheinら,米国特許出願第10/377,440号(2003年2月28日に出願),20頁,第1行〜27頁,第15行の関連部分に詳述されており、これらを参照することによって本明細書中に組み入れる。前述ような官能性シロキサン重合性性化合物の存在は、表面エネルギーの低い基材への優れた接着性を依然として提供しながら、極めて低いTgポリマーの相を提供することによって、重合又は部分重合組成物の低温柔軟性及び伸び率を改善する。重合又は部分重合組成物の物理的性質を改善し且つ重合又は部分重合組成物の低温特性を改善するのに充分な量のシロキサン官能性材料を用いる。組成物のTgは、シロキサンポリマーの量及びその架橋密度を制御することよって制御できる。0℃又はそれ以下のガラス転移温度を達成するためには、かなりの量のシロキサンポリマーが存在する。好ましくは、ポリマー組成物は、100psi又はそれ以上の重ね剪断強度を示す。重合性配合物全体はシロキサン重合性化合物を1重量%又はそれ以上、より好ましくは2重量%又はそれ以上、最も好ましくは3重量%又はそれ以上含むのが好ましい。重合性配合物は、シロキサン重合性化合物を90重量%又はそれ以下、より好ましくは85重量%又はそれ以下、最も好ましくは80重量%又はそれ以下含むのが好ましい。
【0045】
追加の官能価を重合性組成物中に混和し且つシロキサン官能基の物理的性質を改善する簡便な方法は、配合物中に多官能価シロキサン含有架橋剤を含ませることである。多官能価シロキサン含有架橋剤は、存在するポリマー材料を架橋するために存在する反応性材料の官能基と反応性である官能基を少なくとも2個、好ましくは2〜4個の官能基とシロキサン単位を含む化合物、オリゴマー及びポリマーを含む。好ましくは、形成される種々のポリマー材料を結合させるために、存在する種々の化合物、オリゴマー又はポリマーと反応する少なくとも2個の異なる官能基が存在する。好ましくは、1つはシロキサンを基材とする物質と反応し、1つは存在する又は反応において形成される不飽和基を含む官能性材料と反応する。このような物質の例は、(3−グリシジルプロピル)トリメトキシシロキサン、(アクリルオキシプロピリル)トリメトキシシラン、(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン、(メタクリロプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、メタクリルオキシプロピルプロピルを末端基とするポリジメチルシロキサン、(アクリルオキシプロピル)メチルシロキサンジメチルシロキサンコポリマーなどである。一実施態様においては、オキシラン環を、配合物中及びシラノール官能性シロキサン含有ポリマーを架橋させることができるアルコキシシロキサン中に混和する。他の場合には、シロキサン含有相をアクリル相に架橋させることができるアクリル及びメタクリル官能基を混和する。他の例は、メルカプト官能性シロキサン及びイソシアナト官能性シロキサンである。これらの材料は全て、信越シリコーン、Witco、Dow Corning、Gelestなどのような会社から市販されている。ビニル及び加水分解性基を有するシロキサン含有化合物、オリゴマー及び/又はプレポリマーも使用できる。
【0046】
場合によっては、シロキサン化合物由来相に遊離基重合性化合物相を架橋させることが有効であり得る。これは、オレフィン性不飽和官能基、例えばアクリル部分及びシリコーン官能性重合性官能基を共に含む二官能価モノマー(以下架橋剤と称する)を用いて行う。この型の物質の例としては、(アクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン及び(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサンが挙げられる。同様に、シロキサン相を、アルキルボラン−アミン錯体からのアミンとイソシアネートと反応によって生成される硬質ポリ尿素相に架橋させることができる。このような架橋用材料としては、3−アミノプロピルトリエトキシシロキサン、3−アミノプロピルトリメトキシシロキサン、3−イソシアナトプロピルトリメントオキシシロキサン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシロキサンが挙げられる。このような化合物は、通常の反応条件下で、重合性組成物の別の相の反応性成分と反応する。架橋剤の使用量は、所望の性質、即ち、室温における充分な重ね剪断強度を与えるが、結合撓み強度を所望の値以下に低下させない量である。架橋剤の好ましい量は、重合性配合物の重量に基づき、0重量%又はそれ以上、より好ましくは1重量%又はそれ以上、最も好ましくは2重量%又はそれ以上である。好ましくは、架橋剤の使用量は、重合性配合物全体の20重量%又はそれ以下、より好ましくは15重量%又はそれ以下、最も好ましくは12重量%又はそれ以下である。
【0047】
好ましい一実施態様において、エポキシ置換基を含むシロキサン官能性材料の反応は、Saunders,K.J.,Organic Polymer Chemistry,2nd Edition,Chapter(1998)(参照することによって本明細書中に組み入れる)に記載された触媒を混和することによって行う。この技術の実施には、使用されるシリコーンの化学的性質に応じて種々の触媒を使用できる。シロキサン官能性材料間の反応の促進には、錫触媒を使用することが多い。好ましい錫触媒としては、ジブチル錫ジアセテート及びジブチル錫ジラウレートが挙げられる。水分硬化性室温加硫に関するテトラアルコキシチタン触媒は、Buylら(米国特許第5,948,854号)によって及びNylundらによる改良(米国特許第6,008,284号)に記載されている。種々の酸触媒が、Falenderら(米国特許第4,448,927号)によって教示されている。これらの特許全てを参照することによって本明細書中に組み入れる。白金触媒もまた、ビニル官能基化シロキサンの重合に使用される。好ましい白金触媒の例としては、クロロ白金酸及び白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。有用な触媒の前記例は、説明のためにのみ記載するのであり、本発明をこれらに限定するものではない。一般に、本発明の触媒又は遊離基成分の重合性成分を阻害しないならば、シロキサン官能性モノマー又はオリゴマーの重合に有用な任意の触媒が本発明において有用である。
【0048】
触媒は、シロキサン官能性化合物の重合の開始に充分な量で使用する。特にそれらは比較的少量で使用できる。好ましくは、触媒の使用量は、総配合物の0.1重量%又はそれ以上、より好ましくは0.25重量%又はそれ以上、最も好ましくは0.5重量%又はそれ以上である。好ましくは、触媒の使用量は、総配合物の10重量%又はそれ以下、より好ましくは8重量%又はそれ以下、最も好ましくは6重量%又はそれ以下である。
【0049】
複素環式開環重合性化合物とシロキサン重合性化合物は、遊離基重合可能な部分を含む化合物の重合速度と同様な速度で重合するのが好ましい。1つの重合性成分の反応が遅すぎる場合には、組成物は、両相のポリマーへのモノマー又はオリゴマーの許容され得る転化を得る前にガラス化又はゲル化するおそれがある。未反応成分は可塑剤として作用して接着性、熱的性能などのような性質を劣化させるおそれがある。重合組成物を後加熱して重合の完了を推進することによって、最終重合組成物の性質を改善することができる。これは、重合組成物をそのガラス転移温度より高温に加熱することによって行う。この実施態様において、構造の予想使用温度において後硬化を行うのが好ましく、組成物の予想使用温度より5℃高い温度において後硬化を行うのがより好ましく、重合組成物の予想使用温度より10℃高い熱的後硬化を提供するのが最も好ましい。後硬化法の例は、Briggsの米国特許第4,426,243号及びErsun−Hallsbyらの米国特許第5,204,386号に開示されており、これらの特許を参照することによって本明細書中に組み入れる。
【0050】
ラジカル重合可能な部分を有する化合物の重合に有用な有機ボラン化合物は、三価ボラン化合物のような遊離基発生種を形成可能な化合物の形成を引き起こす脱錯化剤の適用によって、例えばボランからアミンを排除することによって、遊離基発生種を形成可能な化合物に転化することができる。例えば有機ボランアミン錯体のアルキルボランからのアミンの排除による、三価ボランのような遊離基発生種を形成可能な化合物の形成は、交換エネルギーが好ましい任意の化学物質、例えば鉱酸、有機酸、ルイス酸、イソシアネート、酸塩化物、塩化スルホニル、アルデヒドなどを用いて行われることができる。好ましい脱錯化剤は酸及びイソシアネートである。複素環式開環性化合物が存在し且つ開環重合用の開始剤がルイス酸であるこれらの実施態様においては、ルイス酸が脱錯化剤の役割も果たすことができるので、脱錯化剤は省くことができる。ルイス酸を脱錯化剤及び複素環式開環重合開始剤として用いる場合には、重合の開始に必要な量を超える追加量は必要ない。開始剤の選択は、重合性組成物の使用によって影響される場合がある。特に、重合性組成物が接着剤であり且つ接着する材料がポリプロピレンである場合には、好ましい類の開始剤はイソシアネート開始剤であり、基材がナイロンである場合には、好ましい開始剤は酸である。重合は熱によっても開始できる。重合を開始するために組成物を加熱する温度は、硼素含有化合物から除去される基の結合エネルギーによって決定される。一般に、例えば有機ボランアミン錯体の脱錯化による、遊離基含有種を形成可能な化合物の形成による重合の開始に使用する温度は、30℃又はそれ以上、好ましくは50℃又はそれ以上である。好ましくは、熱開始重合を開始する温度は120℃又はそれ以下、より好ましくは100℃又はそれ以下である。熱源が、組成物の成分にもその作用にも悪影響を与えないならば、組成物を所望の温度に加熱する任意の熱源を使用できる。このように、組成物は、熱への暴露前又は後に基材と接触させることができる。基材との接触前に組成物を加熱する場合には、組成物は、基材にもはや接着できない点まで重合される前に、基材と接触させなければならない。熱開始反応においては、ラジカル形成に好ましい条件をもたらすのに充分なであるが重合を阻害するほどは多くない酸素が存在するように酸素含量を制御することが必要なであろう。
【0051】
本発明の組成物は、安定化量の脂環式ヒドロキシルアミン又はジヒドロカルビルヒドロキシルアミン;又はそれらのニトロキシル若しくはニトリルオキシドを含む。本明細書中で使用する「安定化」は、必要になるまで重合を防ぐことを意味する。一般に、これは、通常の貯蔵条件下で重合が阻害されることを意味する。通常の貯蔵条件は、接着剤がシール容器に貯蔵される0℃〜40℃の温度における貯蔵を意味する。安定な組成物は、所定の期間中、不所望な粘度増加を受けないものである。粘度増加は、モノマーの重合が存在する証拠である。好ましい実施態様において、40℃又はそれ以下の温度で貯蔵した場合に、粘度が30日間で150%より多く増加しないならば、より好ましくは粘度増加が30日間で100%又はそれ以下であるならば、最も好ましくは粘度増加が30日間で50%又はそれ以下ならば、組成物は安定性である。
【0052】
本発明において有用なジヒドロカルビルヒドロキシルアミン、脂環式ヒドロキシルアミン及びそれらのニトリルオキシドとしては、本発明の組成物中に含まれる場合にここに記載した組成物を改善するこのような任意の組成物が挙げられる。脂環式ヒドロキシルアミンは、窒素原子にヒドロキシル部分が結合した窒素含有脂肪族複素環を意味する。ジヒドロカルビルヒドロキシリルアミン及び脂環式ヒドロキシルアミン上のヒドロカルビル基は、本発明の配合物中におけるこれらの添加剤の性能にそれほど影響を与えない任意の置換基で置換することができる。
【0053】
好ましいジヒドロカルビルヒドロキシルアミン及び脂環式ヒドロキシルアミンは、式(R132N−OH[式中、R13はそれぞれ独立してヒドロカルビル部分であるか又は2つのR13が結合してシクロ環を形成でき、ヒドロカルビル基又はシクロ環は、本発明における化合物の作用を阻害しない1種又はそれ以上の置換基で置換することができる]に相等する。
【0054】
一実施態様において、ニトロキシル又はニトリルオキシドは、式:
(R132−N−O
[式中、R13は前述の通りである]
で示される。
【0055】
好ましくは、R13は、それぞれ独立して、C2〜C30アルキル、アルカリール若しくはアリール部分であるか、又は2つのR13がC2〜C30アルキル部分を形成し;より好ましくは、C10〜C20アルキル、アルカリール若しくはアリール部分であるか、2つのR13がC2〜C7シクロアルキルであり;C10〜C20アルキル部分がさらに好ましい。好ましいジヒドロカルビルヒドロキシルアミンには、BASF製のヒドロキシルアミン遊離塩基、Mitsui Chemicals America,Inc.製のヒドロキシルアミン誘導体、Mayzo Inc.からBNX 2000として入手可能なN−ヒドロキシルビス(N−ベンジル)アミン、及びビス(N−デシル)N−ヒドロキシルアミンとしても記載される、酸化ビス(水素化獣脂アルキル)アミンを含むCiba Specialty ChemicalsからIrgastab FS Products、並びに構造:
【0056】
【化3】

【0057】
を有する、Aveciaから入手可能なXenoxylがある。
【0058】
ジヒドロカルビルヒドロキシルアミン、脂環式ヒドロキシルアミン又はそれらのニトリルオキシドは、本発明の組成物の安定化に充分な量で使用する。好ましくは、ヒドロキシルアミンは、本発明の組成物百万部当たり1部又はそれ以上、より好ましくは2部又はそれ以上、最も好ましくは5部又はそれ以上の量で使用する。好ましくは、ヒドロキシルアミンは、本発明の組成物百万部当たり100,000部又はそれ以下、より好ましくは50,000部又はそれ以下、さらに好ましくは10,000部又はそれ以下、最も好ましくは3,000部又はそれ以下の量で使用する。
【0059】
本発明の二部分型重合性組成物又は接着剤組成物は、従来の市販の二部分型組成物用計量分配装置と共に使用するのに他に類を見ないほど適している。モノマーミックス、錯体の量、重合触媒の量及び接着を行う温度によっては有効ポットライフ(開放時間)が短い場合があるため、2部分が合わされたら、組成物は直ちに使用しなければならない。本発明の接着剤組成物は、一方又は両方の基材に適用し、次いで基材を、好ましくは接着層から過剰な接着剤組成物を追い出す圧力を加えて、結合させる。一般に、結合は、組成物の適用後すぐに、好ましくは20分以内に、より好ましくは10分以内に行わなければならない。代表的な接着剤層厚さは0.005インチ(0.13mm)〜0.03インチ(0.76mm)である。本発明の組成物は接着剤及び隙間充填剤の両方の役割をすることができるので、隙間充填が必要ならば、接着剤層はさらに厚くすることができる。結合プロセスは概ね室温又はそれ以上の温度において容易に実施できる。
【0060】
組成物はさらに、種々の任意添加剤を含むことができる。特に有用な添加剤は、組成物の総重量に基づき、10〜60重量%の量で混和できる中〜高分子量(10,000〜1,000,000)のポリメチルメタクリレートのような増粘剤である。増粘剤は、組成物の適用をし易くするために組成物の粘度を増加させるのに使用できる。
【0061】
アジリジンは配合物の安定性を向上させるので、複素環式開環性化合物が存在し且つそれがオキシランであるいくつかの実施態様において、ある種のアジリジン含有化合物を配合物中に含ませるのが望ましい場合がある。一般に、配合物の安定性を改良するのに充分なアジリジンを添加する。好ましくは、配合物の重量に基づき、1重量%又はそれ以上の、より好ましくは2重量%又はそれ以上のアジリジンを用いる。好ましくは、配合物重量に基づき10重量又はそれ以下の、より好ましくは7重量%又はそれ以下のアジリジンを用いる。
【0062】
本発明に係る重合性組成物は、シーラント、被覆、プライマーを含む種々の方法でポリマー表面の改質に、及び射出成形樹脂に使用できる。これらはまた、マトリックス樹脂としてガラス及び金属繊維マットと併せて、例えば樹脂トランスファー成形操作において使用できる。これらはさらに、封入剤及び注封材料として、例えば電気部品、プリント回路基板などの製造において使用できる。非常に望ましいことに、これらは、ポリマー、木材、セラミック、コンクリート、ガラス及び下塗り金属を含む種々の基材を結合できる重合性接着剤組成物を提供する。別の望ましい関連用途は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリテトラフルオロエチレン並びにそれらのコポリマーのような、表面エネルギーの低い基材へのペイントの付着の促進への使用である。この実施態様においては、組成物は、基材の表面への最終被覆の付着を強化するために表面を改質するのに基材の表面に被覆する。
【0063】
本発明の組成物は被覆用途において使用できる。このような用途において、組成物はさらに溶剤のような担体を含むことができる。被覆はさらに、被覆用の当業者によく知れらた添加剤、例えば、塗料を着色するための顔料、阻害剤及びUV安定剤を含むことができる。組成物はまた、粉体被覆として適用でき、粉体被覆用の当業者によく知られた添加剤を含むことができる。
【0064】
本発明の組成物は、ポリマー成形品、押出フィルム又は輪郭に合わせて作られた物体の表面改質に使用できる。本発明の組成物はまた、未改質プラスチック基材へのポリマー鎖の表面グラフトによってポリマー粒子の官能性を変化させるのに使用できる。
【0065】
本発明の重合性組成物は、複雑な表面処理法、下塗りなどを用いずに結合することが従来非常に難しかった、表面エネルギーの低いプラスチック又はポリマー基材を接着するのに特に有用である。表面エネルギーの低い基材とは、45J/m2又はそれ以下、より好ましくは40mJ/m2又はそれ以下、最も好ましくは35mJ/m2又はそれ以下の表面エネルギーを有す材料を意味する。これらの材料には、20mJ/m2未満の表面エネルギーを有するポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリアミド、シンジオタクチックポリスチレン、オレフィン含有ブロックコポリマー及びフッ素化ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエタン(TEFLON(登録商標))がある。(「表面エネルギー」という表現は、「臨界湿潤張力」と同義で使用されることが多い。)本発明の組成物で有効に結合できる、それらのより若干表面エネルギーの高い他のポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート及びポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0066】
本発明の重合性組成物は、二部分型接着剤として容易に使用できる。重合性組成物の成分は、このような材料を扱う場合に通常成されるようにブレンドされる。有機ボランアミン錯体からオレフィン性重合性成分が分離されるように、有機ボランアミン錯体用の脱錯化剤を通常、オレフィン性重合性成分に含ませ、それによって、二部分型組成物の第1部分を提供する。重合開始剤系の有機ボランアミン錯体は、組成物の第2部分を提供し、組成物の使用が要求とされる直前に第1部分に添加する。同様に、複素環式開環性化合物又はシロキサン化合物の重合用の触媒は、このような化合物から分離しておく。触媒は、直接第1部分に添加することもできるし、あるいは反応性オレフィン性モノマー、即ちメタクリル酸メチル又はMMA/PMMA粘稠溶液のような適当な担体中に予め溶解させることができる。第2部分は、2部分(two parts)の容積をバランスさせるためにオレフィン不飽和を有すモノマーを含むことができる。
【0067】
商業的及び工業的環境において最も容易に使用できる本発明の二部分型接着剤のような、二部分型接着剤に関しては、2部分を合する容量比は、簡便な自然数でなければならない。これは、簡便な市販計量分配装置による接着剤の適用を容易にする。このような計量分配装置は、米国特許第4,538,920号及び第5,082,147号(参照することによって本明細書中に組み入れる)中に示され、Conprotec,Inc.(Salem,New Jersey)から商品名MIXPACとして入手可能である。典型的に、これらの計量分配装置は、並列に配置された1対のチューブ状容器を使用し、各チューブは接着剤2部分の一方を受けるようになっている。各チューブに対して1つ、合計2つのプランジャーが同時に進められて(例えば手動で又は手動のラチェット機構によって)、チューブの内容物が、2部分のブレンドを容易にするスタティックミキサーを含むことができる通常の細長い中空混合室に排出する。ブレンドされた接着剤は、混合室から基材上に押出す。チューブが空になったら、新しいチューブと交換して、適用プロセスを続けることができる。
【0068】
接着剤の2部分を合する比は、チューブの直径によって制御される。(各プランジャーは、一定直径のチューブ内に収容される大きさであり、プランジャーは同じ速度でチューブ内を進められる。)1つの計量分配装置は、種々の異なる二部分型接着剤と共に使用できるように考えられていることが多く、プランジャーは、接着剤の2部分を簡便な混合比で送出する大きさである。このような普通の混合比は、1:1、2:1、4:1及び10:1であるが、好ましくは10:1未満、より好ましくは4:1未満、最も好ましくは1:1である。
【0069】
好ましくは、本発明の混合二部分型組成物は、垂れ落ちをさせることなく適用可能な適当な粘度を有する。好ましくは、2つの個々の成分の粘度は同じオーダー又は大きさでなければならない。好ましくは、混合組成物は100センチポアズ(0.1Pa.S)又はそれ以上、より好ましくは1,000センチポアズ(1.0Pa.S)又はそれ以上、最も好ましくは5,000センチポアズ(5.0Pa.S)又はそれ以上の粘度を有する。好ましくは、接着剤組成物は、1,000,000センチポアズ(1000Pa.S)又はそれ以下、より好ましくは500,000センチポアズ(500Pa.S)又はそれ以下、最も好ましくは30,000センチポアズ(30Pa.S)又はそれ以下の粘度を有する。
【実施例】
【0070】
以下の実施例は、説明のために記載するのであって、「特許請求の範囲」の範囲を限定することを目的としない。特に断らない限り、全ての部及び百分率は重量基準である。
成分
下記の実施例中に以下の成分を用いた:
メタクリル酸メチル(Rohm and Haasから入手可能);
ポリ(メチルメタクリレート)(Rohm−Degussa−Huls Gruppeから登録商標及び名称Digalon LP51/07として入手可能);
スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックブロックコポリマー(Dexco Polymersから登録商標及び名称Vector 2518として入手可能);
ヒュームドシリカ(Cabot Corporationから登録商標及び名称Cab−o−sil TS−720として入手可能);
ポリ(メチルメタクリレート)ポリアクリレートコポリマー(Rohm and Haas Companyから登録商標及び名称Paraloid EXL 2691Aとして入手可能);
イソホロンジイソシアネート(Creanovaから入手可能);
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)(Aldrich Chemical Companyから入手可能);
酸化ビス(水素化牛脂アルキル)アミン(ビス(N−ドデシル)N−ヒドロキシルアミン(登録商標及び名称Irgastab FS042として入手可能);
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールのブタン二酸ジメチルエステルポリマー(Ciba Specialty Chemicalsから登録商標Tinuvin 622として入手可能);
Irgastab FS301,酸化ビス(水素化牛脂アルキル)アミン(Irgastab FS042)とトリス(2,4−ジtert−ブチルフェノール)ホスファイトとの混合物(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能);
Irgaphos 168(トリス(2,4−ジtert−ブチルフェノール)ホスファイト);
トリ−n−ブチルボランとメトキシプロピルアミンとの錯体;
Jeffamine T403(ポリプロピレンオキシドを基材とする二価ポリアミン);
ヒドロキノン(HQ);
ヒドロキノンのメチルエーテル(MEHQ);
BNX2000(式:
【0071】
【化4】

【0072】
に対応するジベンジルヒドロキシルアミン(Mayzo Inc.から入手可能));
BLS1770(式:
【0073】
【化5】

【0074】
に対応する脂環式エステルヒンダードアミン(Mayzo Inc.から入手可能));
BHT(式:
【0075】
【化6】

【0076】
に対応する3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(Aldrich Chemicalから入手可能));
PTZ(式:
【0077】
【化7】

【0078】
によって表されるフェノチアジン(Avecia Inc.から入手可能));
Xenonyl安定剤(式:
【0079】
【化8】

【0080】
に対応する(4−ヒドロキシル−2,6−テトラメチル)ピペリジニルオキシド(Avecia Inc.から入手可能))。
【0081】
例1〜7
二部分型配合物は、各部分に関して成分を混合してから、それらを別々の容器中に入れることによって製造する。いくつかの異なる部分B配合物を製造した。
【0082】
部分Aは、メタクリル酸メチル69.1%、ポリ(メチルメタクリレート)17.5%、スチレン−ブタジエントリブロックブロックコポリマー4.9%、ヒュームドシリカ3.0%及びイソホロンジイソシアネート5.5%を含んでなる。部分Bは、トリ−n−ブチルボラン−メトキシプロピルアミン錯体15%、アミンを末端基とするポリエーテルポリオール、Jeffamine T403 8.0%、メタクリル酸メチル54%、ポリ(メチルメタクリレート)15%、ポリ(メチルメタクリレート)ポリアクリレートコポリマー7%及び下記の安定剤を含んでなる。
【0083】

濃度 安定剤 OHアミン濃度
1 2,500ppm Irgastab FS301 1250ppm
2 2,500ppm BHTを含まない 1250ppm
Irgastab FS301
3 2,500ppm Irgastab FS042 2500ppm
4 2,500ppm Irgafos 168 0ppm
5 2,500ppm フェノチアジン 0ppm
6 2,500ppm Tinuvin 622 0ppm
7 2,500ppm BHT 0ppm
【0084】
各部分Bは、オーブン中で40℃において長期間一定時間にわたって老化させた。各部分Bに関して定期的に粘度を測定した。老化の結果を表IIにまとめ、図1に示す。図1は、40℃における日数対粘度を示す。
【0085】
【表1】

【0086】
これらの実施例は、酸化ビス(水素化牛脂アルキル)アミンの使用が本発明の組成物の安定性を向上させることを示している。
【0087】
例8〜16
例1〜7の記載に従って、例8〜16を製造した。配合物中の成分の相対量を以下に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
表IIIは安定化された配合物を示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表IVは、温度40℃に暴露後の種々の日数において測定された粘度を示す。
【0092】
【表4】

【0093】
表IVは、各配合物に関する粘度変化を示す。
【0094】
図2は、40℃における日数に対する粘度のグラフである。粘度は、Brookfield Viscometer Model DV−IIを用いて20rpmにおいてNo.7のスピンドルを使用して測定した。図2及び表IVは、Irgastab FS042、BNX2000及びXenoxyl安定剤を含む組成物は全て、試験した他の材料よりもはるかに大きい安定性を示すことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】40℃への加熱時における、種々の安定剤を含む配合物の粘度の数日間にわたるグラフである。
【図2】40℃への加熱時における、種々の安定剤を含む配合物の粘度の数日間にわたるグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分に、遊離基発生種を形成できる有機硼素化合物、及びジヒドロカルビルヒドロキシルアミン若しくは脂環式ヒドロキシルアミン又はジヒドロカルビルアミン若しくは脂環式ヒドロキシルアミンのニトリルオキシドを含む1種又はそれ以上の化合物を、並びに第2部分に、遊離基重合可能な1種又はそれ以上の化合物を含んでなる二部分型重合性組成物。
【請求項2】
前記第2部分が2つの部分の接触時に有機硼素化合物を遊離基発生種に転化できる脱錯化剤を更に含む請求項1に記載の二部分型組成物。
【請求項3】
前記有機硼素化合物が有機ボランアミン錯体又は有機硼酸塩である請求項2に記載の二部分型組成物。
【請求項4】
前記有機硼素化合物が有機ボランアミン錯体である請求項3に記載の二部分型組成物。
【請求項5】
前記第1部分が遊離基重合可能な1種又はそれ以上の化合物を更に含む請求項3に記載の二部分型組成物。
【請求項6】
前記の1種又はそれ以上のヒドロキシルアミン化合物が式(R132N−OH又は式(R132−N−O[式中、R13はそれぞれ独立してヒドロカルビル部分であるか、又は2つのR13がシクロ環を形成する]に相当する請求項5に記載の二部分型組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の重合性組成物の成分を、遊離基重合可能な1種又はそれ以上の化合物が重合されるような条件下で接触させることを含んでなる重合方法。
【請求項8】
2つ又はそれ以上の基材の結合方法であって、
a.請求項1〜6のいずれかに記載の組成物の成分を、重合が開始されるような条件下で接触させ;
b.接着剤組成物を2つ又はそれ以上の基材と接触させ;
c.接着剤組成物が2つ又はそれ以上の基材の間に配置されてそれらが互いに接触するように、2つ又はそれ以上の基材を配置し;そして
d.接着剤を硬化させることによって、2つ又はそれ以上の基材を一緒に結合させる
ことを含んでなる基材の結合方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物を、表面エネルギーの低いポリマーの表面の少なくとも一部と接触させ、そして有機硼素化合物を三価有機硼素化合物に転化させ、それによって表面エネルギーの低いポリマーの表面にポリマーが形成されるようにモノマー、オリゴマー、ポリマー又はそれらの混合物の重合を開始することによる、表面エネルギーの低いポリマーの表面の改質方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物の成分を接触させ;接触させられた組成物を基材の1つ又はそれ以上の面と接触させ;そして被覆組成物を硬化させることを含んでなる、基材の被覆方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物を含む被覆組成物。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物が基材の間に配置され且つ各基材に結合された少なくとも2つの基材を含んでなる積層体。
【請求項13】
有機ボランアミン錯体中に、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミン、脂環式ヒドロキシルアミン又はヒドロカルビルヒドロキシルアミン若しくは脂環式ヒドロキシルアミンのニトリルオキシドを含んでなる1種又はそれ以上の化合物及び遊離基重合可能な1種又はそれ以上の化合物を含んでなる一部分型重合性組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−502742(P2008−502742A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542550(P2006−542550)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/018320
【国際公開番号】WO2006/001787
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】