説明

安定重合化ヘモグロビン代用血液

【課題】周囲条件下に十分な量の酸素を組織に輸送、移転する能力をも持ち、かつ、血管内滞留時間が良好である代用血液を提供すること。
【解決手段】アルミニウムホイルラミネート素材を含む、約0.0001〜約0.01インチの厚さを持つ酸素保護フィルム二重包装であって、室温で1気圧あたり24時間あたり100平方インチあたり約1.0cc未満の酸素透過性を持つ酸素保護フィルム二重包装中に、脱酸素化ヘモグロビン製剤を維持することからなる、脱酸素化ヘモグロビン製剤の安定性を保護する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱酸素化ヘモグロビン製剤の安定性を保護する方法および血液からの安定重合化ヘモグロビン代用血液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血液損失(例えば急性出血によるものや、外科手術中のもの)、貧血症(例えば悪性貧血又は鎌状赤血球貧血)又はショック(例えば低血量性ショック(volume deficiency shock )、アナフィラキシーショック、敗血症性ショック若しくはアレルギー性ショック)がもたらす低酸素症を処置又は予防するために、代用血液が必要とされている。
【0003】
代用血液としてこのような立場から血液や血液画分を使用することは、危険に満ちている。例えば全血の使用は、しばしば肝炎原因ウイルスやAIDS原因ウイルスが伝達される危険を伴い、これらは患者の回復を困難にしたり、患者に死をもたらすこともある。また、全血の使用は、免疫血液学的問題と供血者間不適合を避けるために、血液型の決定と交差適合試験を必要とする。
【0004】
代用血液としてのヒトヘモグロビンは、浸透活性と酸素を輸送移転する能力とを持つが、腎臓経路と血管壁によって循環系から迅速に除去され、極めて短寿命であるので、概して半減期が不十分であるという不都合がある。さらに、ヒトヘモグロビンはしばしば毒性レベルのエンドトキシン、細菌及び/又はウイルスで汚染されていることがある。
【0005】
ヒト以外のヘモグロビンもヒトヘモグロビンと同じ欠点を持つ。さらに、ヒト以外の供給源から得たヘモグロビンは、一般に、その受血者において免疫系応答を引き起こしうるタンパク質(抗体など)で汚染されている。
【0006】
その他にも、ペルフルオロ化合物、合成ヘモグロビン類似物、リポソーム封入ヘモグロビン及び化学修飾ヘモグロビンを含む、少なくとも4種類の代用血液がこれまでに使用されている。しかし、これらの代用血液の多くは概して血管内滞留時間が短く、循環系によって外来物質として除去されたり、肝臓、脾臓その他の組織に留まる。また、これらの代用血液の多くは、生体系と生物学的に適合しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ヘモグロビン系代用血液の製造における最近の進歩にも関わらず、その代用血液の注入によってもたらされる免疫系応答やいかなる毒物学的作用をも広く防止できるほど汚染物質(エンドトキシン、細菌、ウイルス、リン脂質及び非ヘモグロビンタンパク質など)のレベルが低い代用血液が必要とされ続けている。加えて、代用血液は周囲条件下に十分な量の酸素を組織に輸送、移転する能力をも持たなければならず、かつ、血管内滞留時間が良好でなければならない。
【0008】
さらに代用血液は、1 )全血にほぼ等しい浸透活性(oncotic activity)を持ち、2 )交差適合試験や感受性試験を行わなくてもほとんどの受血者に輸注することができ、3 )極わずかな冷却で長期間保存できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、
アルミニウムホイルラミネート素材を含む、約0.0001〜0.01インチの厚さを持つ酸素保護フィルム二重包装であって、室温で1気圧あたり24時間あたり100平方インチあたり約1.0cc未満の酸素透過性を持つ酸素保護フィルム二重包装中に、脱酸素化ヘモグロビン製剤を維持することからなる、脱酸素化ヘモグロビン製剤の安定性を保護する方法、
に関する。
【0010】
発明の概要
本発明は、クロマトグラフィーカラムを用いて全血液から安定重合化ヘモグロビン代用血液を製造する方法に関する。また、本発明は、実質的に酸素を含まない雰囲気下でヘモグロビン代用血液の安定性を保つ方法に関する。さらに、本発明は、安定重合化ヘモグロビン製剤ならびに重合化ヘモグロビンおよび還元剤からなる安定溶液からなる組成物に関する。
【0011】
1つの態様において、該方法は、血液を抗凝固剤と混合して血液溶液を生成させ、次いで、該血液溶液中の赤血球を洗浄して、赤血球から小さな血漿蛋白質を分離することを含む。該方法は、洗浄した赤血球を白血球から分離し、次いで、赤血球を破壊してヘモグロビンを放出させ、ヘモグロビン溶液を生成させる工程も含む。それから、公称100kDおよび30kDの分子量カットオフ限外濾過膜の分子量分画により、および高速液体クロマトグラフィーにより、ヘモグロビン溶液中の非ヘモグロビン成分をヘモグロビン溶液から分離し、ヘモグロビン溶出物を生成させる。次いで、ヘモグロビン溶出物を脱酸素化し、続いて還元剤と接触させて酸化安定脱酸素化ヘモグロビン溶液を生成させ、続いてこのものを架橋剤と混合して重合化反応混合物を生成させる。次いで、該重合化反応混合物を安定化させ、生理学的溶液および還元剤を用いてダイアフィルトレーションし、それにより、重合化ヘモグロビン溶液が生理学的に許容され得るように作られ、該還元剤が微量の酸素を捕獲し、そうすることによって、該安定重合化ヘモグロビン代用血液を生成させる。
【0012】
本発明の代用血液は、組織の赤血球の流量が低下し、正常血液量で、少なくとも正常の全身血管抵抗を有する脊椎動物に対して、少なくとも1回の投与量のヘモグロビンを脊椎動物の循環系に導入することにより、脊椎動物の組織において組織の酸素添加を増加させる方法に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従うと、ヘモグロビン系代用血液の注入によってもたらされる免疫系応答やいかなる毒物学的作用をも広く防止できるほど汚染物質(エンドトキシン、細菌、ウイルス、リン脂質及び非ヘモグロビンタンパク質など)のレベルが低い代用血液が提供される。加えて、周囲条件下に十分な量の酸素を組織に輸送、移転する能力をも持ち、かつ、血管内滞留時間が良好である代用血液が提供される。
【0014】
さらに、1 )全血にほぼ等しい浸透活性(oncotic activity)を持ち、2 )交差適合試験や感受性試験を行わなくてもほとんどの受血者に輸注することができ、3 )極わずかな冷却で長期間保存できる代用血液が提供される。
【0015】
本発明の有利性は多大である。1つの有利性は、本発明の方法により製造されるヘモグロビンが、従来の方法よりも高い純度を有するということである。それは、カルボニックアンヒドラーゼ等のリカルシトラント(recalcitrant)蛋白質成分でさえも実質的に含まない。したがって、1つの種に由来するヘモグロビンを代用血液として、受容した種が重大な副作用を被ることなく、異なる種に好適に用いることができる。
【0016】
本発明の方法から製造される安定重合化ヘモグロビン代用血液は、大量に低コストで利用できるウシの血液から製造することができる。ウシヘモグロビンは、ヒトヘモグロビンの酸素親和性を修正するために必要なピリドキサール−5−ホスフェートまたは他の化学物質等の化学修飾試薬を必要とせず、生理学的に適切な酸素結合曲線を有するというさらなる有利性を保持している。
【0017】
さらに、重合化ヘモグロビンは、より高収率でも製造され、従来の方法よりも非安定化ヘモグロビンが低いレベルである。
【0018】
また、本発明の方法により製造され保存された代用血液は、より高い純度およびより長い寿命を有する。代用血液は、室温で2年以上安定である。代用血液は、相対的に低酸素親和性を有し、血管内保持時間が増加し、好適な腫脹圧を有する。
【0019】
本発明は、RBC流の少なくとも一部の低下から生じる、組織および/または器官の低酸素症の可能性と程度、並びに組織壊死の可能性を低減させるという点でさらに有利である。別の有利性は、生命に必須の器官またはその一部への有意なRBC流の低下から病気になった脊椎動物に対する生存率が上昇することである。また、本発明は、末端の組織の酸素添加を有意に低下させることなく、RBC流の制限を要する侵襲性手法を行うことも可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
以下、本発明方法の特徴とその他の細部を、添付の図面を参照してより具体的に説明し、特許請求の範囲に示す。本発明の特定の態様は例示のために記載されるのであって、それらが本発明の限定として記載されるのでないことは理解されるだろう。本発明の本質的特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく種々の実施態様で使用することができる。
【0021】
本明細書に規定するところの代用血液とは、ヒト、哺乳動物その他の脊椎動物中で使用するためのヘモグロビン系酸素運搬組成物であって、少なくとも生命維持に必要な器官及び組織に酸素を輸送、移転することができ、十分な血管内腫脹浸透圧を維持できるものである。脊椎動物とは古典的に定義される通りであり、循環系中の血液を利用して組織に酸素を移転するヒトその他あらゆる脊椎動物を含む。本発明の方法に関して好ましい脊椎動物は、霊長類、犬、猫、ラット、馬、豚又は羊などの哺乳動物である。さらに好ましい脊椎動物はヒトである。本発明の方法で処置される脊椎動物は、胎児(出生前の脊椎動物)、出生後の脊椎動物又は誕生時の脊椎動物のいずれであってもよい。
【0022】
また、循環系の定義は古典的に定義される通りであり、心臓、動脈、静脈、及びより小さい脈管構造(毛細管など)を含む微小循環系からなる。
【0023】
本発明の方法によって製造される代用血液は、そのエンドトキシン、リン脂質、外来タンパク質その他の汚染物質レベルが、有意な免疫系応答を引き起こさず、受血者にとって非毒性でなければならない。代用血液は超純度であることが好ましい。本明細書に規定するところの超純度とは、エンドトキシンが0.5EU/ml未満、リン脂質が3.3nmol/ml未満であり、検出できるレベルの非ヘモグロビンタンパク質(血清アルブミン、抗体など)を含有しないことを意味する。
【0024】
「エンドトキシン」という用語は、グレイン(grain )陰性菌細胞壁の外層の一部として生産される細胞結合型リポ多糖類を指し、これらは多くの条件下で毒性である。エンドトキシンを動物に注射すると、発熱、下痢、出血性ショックその他の組織損傷が起こりうる。エンドトキシン単位(EU)は、1983年米国薬局方年次総会(United States Pharmacopeial Convention)3014頁に、0.1 ナノグラムの米国参照標品ロットEC-5に含まれる活性と定義されている。1 バイアルのEC-5は10,000EUを含有する。代用血液中のエンドトキシン濃度を測定するのに適した手段の例としては、アソシエーツオブケープコッド(Associates of Cape Cod;マサチューセッツ州ウッズホール)によって開発さた「速度/ 濁度測定リムウス遊走細胞ライステート(Kinetic/Turbidimetric Limuus Amebocytic Lystate ;LAL )5000法」という方法が挙げられる。
【0025】
本明細書に規定するところの安定重合化ヘモグロビンは、低酸素環境下に保存すると、適切な貯蔵温度で2 年以上の期間、好ましくは2 年以上の期間、分子量分布及び/ 又はメトヘモグロビン含量が実質上増減しないヘモグロビン系酸素運搬組成物である。1 年以上の貯蔵に適した貯蔵温度は約0 ℃〜約40℃である。好ましい貯蔵温度範囲は約4 ℃〜約30℃である。
【0026】
適切な低酸素環境とは、その代用血液中に約15重量% 未満のメトヘモグロビン濃度をもたらす、少なくとも1 年の貯蔵期間中にその代用血液と接触する酸素の累積量と定義される。酸素の累積量には、代用血液パッケージ内へ漏出する酸素と、その代用血液とパッケージの当初の酸素含量が含まれる。
【0027】
本発明の方法を通じて、RBC 収集からヘモグロビン重合まで常に、微生物成長又は生物負荷(bioburden )を最小に抑えることのできる条件下、例えば温度を約0 ℃以上約20℃未満に維持するなど、に、血液溶液、RBC 及びヘモグロビンを維持する。好ましくは、温度を約15℃以下に維持する。より好ましくは温度を10±2 ℃に維持する。
【0028】
本発明の方法において、安定重合化ヘモグロビン溶液とそこから得られる代用血液の製造工程用の成分の一部を、滅菌製剤を製造できる程度に消毒する。滅菌とは、当該技術分野で定義される通りであり、具体的には、その溶液が、USP XXII, Section 71,1483-1488頁に規定される滅菌性に関する米国薬局方の要求に合致することである。さらに、プロセスストリーム(process stream)にさらされる成分の一部を、そのプロセスストリームと反応若しくはそのプロセスストリームを汚染しない素材で加工又は被覆するのが通例である。そのような素材としては、ステンレス鋼及びインコネルなどのその他のスチール合金を挙げることができる。
【0029】
安定重合化ヘモグロビン代用血液を製造する方法の一態様、システム10を、図1A〜1Cに図解する。図1Aにおいて、システム10は血液供給サブシステム12を含む。血液供給サブシステム12はろ過器14、供給タンク16、供給ポンプ18及び直列プレフィルター20、22を含む。供給タンク16には、赤血球(RBC )又はヘモグロビンを含有する血液溶液と、少なくとも1 種類の抗凝固剤とを入れる。
【0030】
システム10で加工できる好適なRBC 又はヘモグロビン供給源としては、新しい、又は古い若しくは期限切れの人血、牛血、羊血、豚血、犬血、及びその他脊椎動物由来の血液、並びに、例えばBIO/TECHNOLOGY, 12:55-59(1994)に記載のトランスジェニックHb及び組換え生産ヘモグロビン(Nature, 356:258-60(1992))などの遺伝形質転換法で生産されたヘモグロビンが挙げられる。
【0031】
血液は、生きているドナーから集めることもできるし、屠殺したばかりのドナーから集めることもできる。牛全血を集める一方法は、Rauschらに付与された米国特許第5,084,558 号及び同5,296,465 号に記述されている。血液は衛生的に集められることが好ましい。
【0032】
血液の有意な凝固を防止するために、収集時又は収集直後に、血液を少なくとも1 種類の抗凝固剤と混合する。好適な抗凝血剤は従来から当該技術分野で知られているものであり、例えばクエン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸及びヘパリンなどが挙げられる。血液と混合する時、抗凝固剤は粉末等の固形であってもよいし、水溶液であってもよい。
【0033】
血液溶液の供給源は、集めたばかりの試料からであってもよいし、血液バンクから得られる失効した人血等の古い試料からであってもよいと解される。さらに血液溶液は凍結及び/又は液体状態で保存されていたものであってもいいだろう。本発明の方法において使用する前に血液溶液を凍結しないことが好ましい。
【0034】
もう一つの態様では、血液溶液を供給タンク16に導入する前に、血液溶液中のペニシリンなどの抗生物質レベルを検定する。抗生物質レベルは、その血液試料のドナーが抗生物質で処置されていなかったということを立証することによって、その血液試料が感染性生物を含んでいないという程度の保証をするために測定される。抗生物質に関する好適な検定法の例としては、「乳中ペニシリンの迅速検出」と題する方法を使用するペニシリン検定キット(Difco,ミシガン州デトロイト)が挙げられる。血液溶液が含有するペニシリンレベルは約0.008 単位/ml 以下であることが好ましい。別法として、家畜に疾病が無いこと、若しくは家畜の抗生物質処置がないことを監視する獣群管理プログラムを使用することもできる。
【0035】
好ましくは、供給タンク16の充填に先立って、又はその充填中に、血液溶液をろ過して、大きな凝集物及び粒子を除去する。600 メッシュのふるいが好適なろ過器の例である。
【0036】
図1Aに戻って、供給ポンプ18は供給タンク16中の血液溶液を吸引し、その血液溶液を、直径約50マイクロメートル(μm )以上の大きな血液溶液残渣を除去するための直列プレフィルター20、22経由でダイアフィルトレーションタンク24に排出し、その血液溶液に含まれるRBC の洗浄に備える。好適な直列プレフィルターの例は800 μm 及び50μm ポリプロピレンフィルターである。本発明方法では、製造効率を向上させるために、直列プレフィルター20、22による血液溶液の予備ろ過が好ましい。もう一つの態様では、血液溶液を予備ろ過するのではなく、その後の限外ろ過及び/ 又はクロマトグラフィー精製工程で大きな残渣を除去する。
【0037】
次に、血液溶液中のRBC を適当な手段、例えばダイアフィルトレーション、若しくは少なくとも一つの等張溶液による独立した希釈工程と濃縮工程の併用など、で洗浄することによって、RBC を血清アルブミンや抗体(例えば免疫グロブリン(IgG ))のような細胞外血漿タンパク質から分離する。RBC は、バッチ法でも、連続供給法でも洗浄できると解される。
【0038】
許容できる等張溶液は当該技術分野で知られている通りであり、RBC の細胞膜を破裂させずに全血の血漿部分を置換するpHと浸透性を持つ、クエン酸/ 生理食塩溶液のような溶液が挙げられる。好ましい等張溶液は中性pHと285 〜315mOsm の浸透性を持つ。好ましい態様では、この等張溶液がクエン酸ナトリウム二水和物(6.0g/l)と塩化ナトリウム(8.0g/l)の水溶液からなる。
【0039】
本発明方法で使用する水は、蒸留水、脱イオン水、注射用水(WFI )及び/ 又は低発熱原水(LPW )のいずれであってもよい。好ましい水であるWFI は、注射用水に関する米国薬学仕様(U.S. Pharmacological Specifications )に合致する脱イオン化蒸留水である。WFI はPharmaceutical Engineering, 11, 15-23 (1991)にも記述されている。好ましい水であるLPW は、0.002EU/ml未満を含有する脱イオン水である。
【0040】
上記等張溶液は、血液溶液に添加する前にろ過することが好ましい。好ましいフィルターの例としては、Millipore 10,000ダルトン限外ろ過膜(Millipore カタログ番号CDUF 050 G1 フィルターなど)や、A/G Technology中空糸10,000ダルトン(カタログ番号UFD-10-C-85 )が挙げられる。
【0041】
図1Aに戻って、細胞洗浄サブシステム26はダイアフィルトレーションタンク24、ダイアフィルトレーションループ28、排出ライン30及びポンプ32を含有する。好適なポンプとしては、Waukeshaw 100 ガロン/ 分モデルW30 が挙げられる。ポンプ32はダイアフィルトレーションタンク24から吸い上げ、ダイアフィルトレーションループ28又は排出ライン30に排出する。ダイアフィルター34を含むダイアフィルトレーションループ28は、ポンプ32からの流れをダイアフィルトレーションタンク24に再循環させる。ダイアフィルトレーションタンク24内部の温度は、ダイアフィルトレーションタンク24の外側をエチレングリコールジャケット式冷却システム(図示していない)を用いて冷却することによって維持できる。
【0042】
好ましい態様では、血液溶液中のRBC をダイアフィルトレーションによって洗浄する。ダイアフィルトレーションタンク24に含まれる血液溶液は、ポンプ32によって、ダイアフィルトレーションループ28経由で循環されるので、血液溶液はダイアフィルター34を横切る濾液の損失によって濃縮される。好適なダイアフィルターとしては、0.1 μm 〜0.5 μm フィルター(例えば0.2 μm 中空糸フィルター, Microgon Krosflo II マイクロフィルトレーションカートリッジ)のように、RBC より実質的に小さい血液溶液成分からRBC を分離する孔径を持つ微孔性膜が挙げられる。同時に、ろ過した等張溶液を、ダイアフィルター34を横切って失われる濾液の速度(又は体積)に等しい速度で、連続的に(又は一括して)補充する。RBC 洗浄の間に、直径がRBC よりかなり小さい血液溶液の成分若しくは血漿のような液体成分は、ダイアフィルター34の壁を通り抜けて濾液に入る。RBC 、血小板及び白血球などの希釈された血液溶液中のさらに大きい物体は保持され、連続的に又は一括して加えられる等張液と混合されて、透析血液溶液を形成する。
【0043】
より好ましい態様では、ある体積のろ過等張溶液をダイアフィルトレーションタンク24に加えることによって、ダイアフィルトレーションタンク24中の血液溶液の体積を最初に希釈する。添加される等張溶液の体積は、血液溶液の当初の体積とほぼ等しいことが好ましい。
【0044】
もう一つの態様として、RBC を一連の連続(又は逆連続)希釈及び濃縮工程によって洗浄する。この場合、血液溶液は少なくとも一つの等張溶液を加えることによって希釈され、フィルターを横切って流れることによって濃縮されて、そうすることによって透析血液溶液を形成する。
【0045】
RBC 洗浄は、RBC を汚染している血漿タンパク質のレベルがかなり減少、通常は約90% 減少した時に完了する。通例、RBC 洗浄は、ダイアフィルター34から排出された濾液の体積が、血液溶液をろ過等張溶液で希釈する前にダイアフィルトレーションタンク24に含まれていた血液溶液の体積の約300%又はそれ以上に等しくなったときに完了する。図1Aに戻って、ダイアフィルター34から排出された濾液の体積は、排出ライン流量メーター(図示していない)によって測定される。さらにRBC を洗浄することにより、RBC から細胞外血漿タンパク質をさらに分離することもできる。例えば、6 体積の等張溶液でダイアフィルトレーションをすれば、IgG の少なくとも約99% を血液溶液から除去できる。
【0046】
次に、透析血液溶液を、透析血液溶液中のRBC を遠心分離などによって白血球及び血小板から分離するための手段にかける。図1Aでは、ダイアフィルトレーションタンク24から、ポンプ32による透析血液溶液の供給を受けながら同時に稼動している遠心分離機36に、透析血液溶液をポンプ32で連続的に注入することによって、RBC を白血球及び血小板から分離する。稼動中の遠心分離機36は、RBC を重いRBC 相中に分離し、一方、白血球(WBC )と血小板の大部分を軽いWBC 相中に分離することもできる速度で回転する。RBC 相の画分とWBC 相の画分は、稼働中の遠心分離機36から連続的に別々に排出される。好ましい遠心分離機としては、例えば#28リングダム(ringdam )を装着したシャープレス スーパー セントリフュージ(Sharples Super Centrifuge )、モデル番号AS-16 などが挙げられる。
【0047】
他の血液成分からRBC を分離するための当該技術分野における公知の他の方法、例えば沈降分離(この分離法では、RBC が他の血液成分から分離される前に有意な量のRBC の細胞膜が破壊されてしまうということがない(例えばRBC の約30% 未満))なども使用できると解される。
【0048】
RBC の分離後、そのRBC をRBC 溶解手段によって溶解して、RBC からヘモグロビンを放出させ、ヘモグロビン含有溶液を得る。溶解手段には、例えば機械的溶解法、化学的溶解法、低浸透圧溶解法、若しくは、酸素を輸送し放出するというHbの能力を有意に損なうことのない、ヘモグロビンを放出させるその他の公知の溶解法など、様々な溶解法が含まれる。
【0049】
図1Aに戻って、上記RBC 相に含まれるRBC のかなりの部分を、遠心分離機36から排出しながら機械的に溶解することが好ましい。概して堅い表面又は構造、例えばRBC 相排出ライン38の壁に衝突すると、RBC の細胞膜が破裂し、その結果、ヘモグロビン(Hb)がRBC からRBC 相に放出される。より好ましい態様では、RBC 相排出ライン38を通るRBC 相の流れが、遠心機36から出てくるRBC 相の流れに対してある角度をなすので、排出ライン38の内表面と衝突することにより、RBC のかなりの部分が機械的に溶解される。
【0050】
さらなる態様として、組換え生産ヘモグロビン、例えばNature, 356:258-260(1992)に記載の組換え生産ヘモグロビンなどを、RBC の代わりに本発明の方法で加工することもできる。ヘモグロビンを含有する細菌細胞を洗浄し、上述のように汚染物質から分離する。次いで、これらの細菌細胞を当該技術分野で知られる手段、例えばボールミルで機械的に破壊して、その細胞からヘモグロビンを放出させ、溶解細胞相を得る。次に、その溶解細胞相を溶解RBC 相と同様に加工する。
【0051】
溶解後、溶解RBC 相を限外ろ過することによって、分子量が約100,000 ダルトンを超えるタンパク質のようなより大きな細胞残渣を除去する。一般に細胞残渣は、Hb、さらに小さい細胞タンパク質、電解質、補酵素及び代謝中間体有機物を除いて、無傷の細胞成分と断片化された細胞成分の全てを含む。好ましい限外ろ過膜としては、例えばMillipore 製(カタログ番号CDUF 050 H1 )やA/G Technology(マサチューセッツ州ニーダム、モデル番号UFP100E55 )製の100,000 ダルトンフィルターなどが挙げられる。
【0052】
図1Aに示すように、溶解RBC 相は次いでRBC 相排出ライン38に流れ込み、ポンプ39によって、清浄化迂回ライン40経由でタンク42に送られる。次に、タンク42中の溶解RBC 相はポンプ44によって限外ろ過器46に注入される。溶解RBC 相に含まれるHbと水の大部分は限外ろ過器46を透過してHb限外ろ過物を与え、一方細胞膜や分子量が約100,000 ダルトンを超えるタンパク質のようなより大きい細胞残渣は保持されてタンク42に再循環される。同時にタンク42には、Hb限外ろ過物中に失われる液体の少なくとも一部を補充する水が連続的に加えられる。
【0053】
重合に利用できるヘモグロビンの収率を最大化するために、タンク42中のHb濃度が8グラム/リットル(g/l )未満になるまで限外ろ過を続けることが好ましい。沈降分離、遠心分離又は精密ろ過など、Hbを溶解RBC から分離するための他の方法も使用できる。タンク42の温度は、エチレングリコールジャケット式冷却システム(図示していない)を使用してタンク42の外側を冷却するなど、適当な手段で制御される。
【0054】
もう一つの態様では、溶解RBC 相がRBC 相排出ライン38から清浄化ライン47を通って静置混合機(static mixer)48に流入する。RBC 相の静置混合機48への移送と同時に、図示していない手段によって好ましくはほぼ等量の水をも静置混合機48に注入し、次いでその中で水を低せん断力条件下にRBC 相と混合して、溶解RBC コロイドを形成させる。
【0055】
当該技術分野で知られる他の低せん断力混合手段も、その混合手段が溶解RBC 相中に存在するRBC 膜の有意な量を混合中に断片化しない限り使用できると解される。
【0056】
次に、溶解RBC コロイドを、静置混合機48からポンプ50によって、Hbを非ヘモグロビンRBC 成分から分離するための適当な手段(例えば沈降分離手段や、HbをRBC 膜、膜結合型タンパク質その他の成分から分離するために運転される遠心分離機52など)に供給する。遠心分離機52は、溶解RBC コロイドを軽いHb相と重い相に分離できるような速度で回転する。その軽い相はHbからなり、通例、Hbの密度とほぼ等しいかそれ未満の密度を持つ非ヘモグロビン成分を含有する。許容できる遠心分離機の例は、シャープレス ディビジョン オブ アルファ−レイバル セパレーション、インコーポレイテッド(Sharples Division of Alfa-Laval Separation, Inc.)製のシャープレス スーパー セントリフュージ、モデル番号AS-16 である。Hb相は遠心分離機52からHb分離中に連続して排出され、Hb精製に備えて保持タンク54に集められる。もう一つの態様では、次いでそのHb相がポンプ55によって保持タンク54から精密ろ過器56に移送され、それによってHb相中のHbが細胞ストロマから横断(cross-flow)ろ過されて、Hb精密ろ過物を与える。次に、細胞ストロマは、精密ろ過器56から保留分(retentate )と共に保持タンク54に戻される。好適な精密ろ過膜としては、0.45μミリポア ペリコン カセット(Millipore Pellicon Cassette )、カタログ番号HVLP 000 C5 ミクロフィルターが挙げられる。保持タンク54の温度は、例えばエチレングリコールジャケット式冷却システム(図示していない)を使用して保持タンク54の外側を冷却するなどの適当な手段によって制御される。この方法の性能を最適化するために、精密ろ過器56の入口の液圧が約10psi の初期圧から約25psi に増大した時に、精密ろ過を完了する。次に、Hb精密ろ過物はポンプ58によって精密ろ過器56からタンク42に移送され、その後、そのHb精密ろ過物が限外ろ過器46によって限外ろ過され、Hb限外ろ過物を与える。
【0057】
次に、そのHb限外ろ過物を限外ろ過することによって、電解質、補酵素、代謝中間体及び分子量が30,000ダルトンより小さいタンパク質などのより小さな細胞残渣と水をHb限外ろ過物から除去する。好適な限外ろ過膜としては、30,000ダルトン限外ろ過膜(ミリポア カタログ番号CDUF 050 T1 及び/又はアミコン(Armicon )、番号540 430 )が挙げられる。
【0058】
図1Bでは、上記Hb限外ろ過物がポンプ60によって限外ろ過用タンク62に注入される。次に、そのHb限外ろ過物がポンプ64によって限外ろ過器66経由で限外ろ過用タンク62に戻されて再循環されることにより、概して濃Hb溶液であるHb保留分を与える。
【0059】
以降の精製段階の効率を向上させるために、好ましくは、限外ろ過用タンク中のHb濃度が100g/lに等しくなるまで限外ろ過を続ける。
【0060】
次に、その濃縮Hb溶液を1又はそれ以上の並列(parallel)クロマトグラフィーカラムに導いて、高性能液体クロマトグラフィーにより、抗体、エンドトキシン、リン脂質、酵素及びウイルスなどといった他の汚染物質からヘモグロビンをさらに分離する。
【0061】
そこで、濃Hb溶液を限外ろ過用タンク62からポンプ68によってクロマトグラフィーカラム70に含まれる媒体上に導き、Hbを汚染物質から分離する。クロマトグラフィーカラム70は、限外ろ過物の非ヘモグロビン成分からHbを分離するのに適した十分量の媒体を含有しなければならない。好適な媒体の例としては、陰イオン交換媒体、陽イオン交換媒体、疎水性相互作用媒体及びアフィニティー媒体が挙げられる。好ましい態様では、クロマトグラフィーカラム70が、非ヘモグロビンタンパク質からHbを分離するのに適した陰イオン交換媒体を含有する。好適な陰イオン交換媒体としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニアゲル、架橋デキストラン、アガロース、若しくはジエチルアミノエチル基や四級アミノエチル基などの陽イオン性化学官能基で誘導体化されているポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチル−メタクリレート又はスチレンジビニルベンゼンのような誘導体化要素などが挙げられる。溶解RBC 相中に存在しそうな他のタンパク質及び汚染物質と比較して、Hbの選択的な吸着と脱着に適した陰イオン交換媒体とそれに対応する溶離剤は、当該技術分野における妥当な技術の一つによって容易に決定できる。
【0062】
より好ましい態様では、シリカゲルから陰イオン交換媒体を作るために、熱水処理によってポアサイズを拡大し、γ- グリシドキシプロピルトリメトキシシランにさらして活性エポキシド基を形成させ、次いでジメチルアミノエタノール(HOCH2CH2N(CH3)2)にさらして四級アンモニウム陰イオン交換媒体を形成させるという方法を使用する。この方法はJournal of Chromatography, 120:321-333(1976)に記述されており、この報文はそのまま参考文献として本明細書の一部を構成する。
【0063】
まずクロマトグラフィーカラム70にHb結合を促進する第1溶離剤を流し込むこと(flushing)によって、クロマトグラフィーカラム70を予備処理する。次に、濃Hb溶液をカラム70中の媒体に注入する。濃Hb溶液を注入した後、クロマトグラフィーカラム70を通る異なる溶離液でクロマトグラフィーカラム70を逐次洗浄して、分離精製Hb溶出液を得る。
【0064】
好ましい態様として、酵素のカルボニックアンヒドラーゼ、リン脂質、抗体及びエンドトキシンなどのタンパク質汚染物質をHbから分離するために、クロマトグラフィーカラム70中でpH勾配を利用する。異なるpH値を持つ一連の緩衝液のそれぞれを適当な手段、例えばポンプ74、で逐次クロマトグラフィーカラム70に導くことにより、クロマトグラフィーカラム70中の媒体内にpH勾配を作成する。その緩衝液は10,000ダルトン脱発熱原膜などによってろ過しておくことが好ましい。Hbを分離するために使用する緩衝液は、Hbと非ヘモグロビン汚染物質の溶出が概してpHに依存し、イオン強度には有意に依存しないよう、低いイオン強度を持つべきである。通例、約50mM又はそれ以下のイオン濃度を持つ緩衝液は、好適な低イオン強度を持つ。
【0065】
第1緩衝液は、濃Hb溶液をクロマトグラフィーカラム70中の媒体へ輸送し、その媒体に対するHbの結合を促進する。次に、第2緩衝液がクロマトグラフィーカラム70内のpHを調節して、Hbを媒体に結合させたまま、混入している非ヘモグロビン成分をクロマトグラフィーカラム70から溶出させる。次に、第3緩衝液がクロマトグラフィーカラム70からHbを溶出させる。次に、そのHb溶出液はタンク76に集められる。Hb溶出液はさらなる使用の前に、滅菌フィルター77のような滅菌フィルターを通して導入されることが好ましい。好適な滅菌フィルターとしては、ザルトリウス ザルトブラン(Sartorius Sartobran )pHカタログ番号5232507 GIPHフィルターのような0.22μm フィルターが挙げられる。
【0066】
好ましい態様として、Hb溶出液の純度を保証するために、Hb溶出液の最初の3%〜4%とHb溶出液の最後の3%〜4%を廃棄する。
【0067】
クロマトグラフィーカラム70を再使用しようとする場合は、次に、クロマトグラフィーカラム70中に残存する非ヘモグロビンタンパク質とエンドトキシンを第4緩衝液で溶出させる。Hbは既にクロマトグラフィーカラム70から分離溶出されているので、第4緩衝液は低イオン強度を持つ必要はない。
【0068】
好ましい態様では、第1緩衝液がトリス−ヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)溶液(濃度約20mM;pH約8.4 〜約9.4 )である。第2緩衝液は、第1緩衝液と第3緩衝液の混合液であり、第2緩衝液は約8.2 〜約8.6 のpHを持つ。第3緩衝液はTris溶液(濃度約50mM;pH約6.5 〜約7.5 )である。第4緩衝液はNaCl/Tris 溶液(濃度約1.0M NaCl 及び約20mM Tris ;pH約8.4 〜約9.4 、好ましくは約8.9 〜9.1 )である。第2緩衝液のpHは約8.2 と約8.4 の間であることが特に好ましい。
【0069】
通例、使用する緩衝液の温度は約0 ℃〜約50℃である。好ましくは、緩衝液の温度を使用中は約12.4±1.0 ℃とする。さらに、緩衝液は通例、約9 ℃〜約11℃の温度で保存される。
【0070】
次に、重合の前に、例えば、変性や酸化ヘモグロビン(metHb)の生成などによって起こり得る、酸素を輸送し放出するというHb溶出液中のHbの能力の有意な低下が生じることなく、Hbを十分に脱酸素化する手段によって、Hb溶出液を脱酸素化し、脱酸素化Hb溶液(以下、脱酸素化−Hb)を得る。
【0071】
一態様として、相間移動膜(phase transfer membrane )を横切る不活性ガスのガス移動によって、Hb溶出液を脱酸素化する。そのような不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン及びヘリウムなどが挙げられる。ヘモグロビン溶液を脱酸素化するための当該技術分野で知られる他の手段も、Hb溶出液の脱酸素化に使用できると解される。そのような他の手段としては、例えばHb溶出液の窒素パージ;光による光分解;スルフヒドリル化合物、例えばN-アセチル-L−システイン(NAC )、D,L-システイン、γ- グルタミル- システイン、グルタチオン、2-メルカプトエタノール、2,3-ジメルカプト-1- プロパナール(proponal)、1,4-ブタンジチオール、チオグリカル酸塩、ジチオエリスリトール、ジチオスレイトールその他の生物適合性スルフヒドリル化合物;クエン酸塩;クエン酸;還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH2);還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH2);還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH2)、その他の生物適合性還元剤などの還元剤による化学的除去などを挙げることができる。
【0072】
図1Bに戻って、脱酸素化はHb脱酸素化サブシステム78内で行われる。Hb脱酸素化サブシステム78はタンク76、ポンプ80、再循環配管82、相間移動膜86及び排出ライン90を含む。ポンプ80はタンク76中のHb溶出液を吸引して、再循環配管82か、排出ライン90に排出する。ポンプ80によってタンク76から再循環配管82に送り出されたHb溶出液は、次いで並列に配置された限外ろ過器84及び/ 又は相関移動膜86を通った後、タンク76に戻ってくる。この工程の効率を向上させるには、クロマトグラフィーカラム70からの溶出後、Hb溶出液を濃縮することが好ましい。Hb溶出液を限外ろ過器84に通して再循環させることにより、Hb溶出液は濃縮されて濃Hb溶液になる。好適な限外ろ過膜としては、例えば30,000ダルトン以下の限外ろ過膜(ミリポア ヘリコン カタログ番号CDUF050G1 、アミコン カタログ番号540430など)が挙げられる。通例、Hb溶出液の濃縮は、Hb濃度が約100 〜約120g/lになった時に完了する。Hb溶出液を濃縮する間は、Hb溶出液の温度をタンク76内で約8 〜12℃に維持することが好ましい。タンク76の温度は、エチレングリコールジャケット式冷却システム(図示していない)を使用してタンク76の外側を冷却するなどの適当な手段で制御される。
【0073】
次に、緩衝液をポンプ88によって、タンク76中のHb溶液、これは濃縮されていることが好ましい、に注ぎ、そのHb溶液のイオン強度を調節して、Hb脱酸素化を増進する。Hb溶液中のHbの酸素親和性を減じるためにイオン強度を約150meq/lを超えるように調節することが好ましい。好適な緩衝液としては、Hbタンパク質をほとんど変性させないpHを持ち、かつ、Hb脱酸素化を促進しうる程度に高いイオン強度を持つ緩衝液が挙げられる。好適な緩衝液の例としては、pH範囲約6.5 〜約8.9 の塩溶液が挙げられる。好ましい緩衝液はpH約8.9 の1.0M NaCl, 20mM Tris水溶液である。
【0074】
好ましくは、製造効率を向上させるために、得られた緩衝Hb溶液を限外ろ過器84を通して再循環させてタンク76に戻すことにより、Hb溶液を再び濃縮する。好ましい態様としては、Hb濃度が約100g/l〜約120g/lになった時点で濃縮を完了する。
【0075】
脱酸素化中は、Hb溶液をポンプ80によってタンク76から相間移動膜86経由でタンク76へ再循環させる。適当な相間移動膜としては、例えば0.05μm ポリプロピレン中空糸精密ろ過膜(例えばヘキスト−セラネセ カタログ番号5PCM-107)などが挙げられる。同時に、不活性ガスの向流(counterflow )を相間移動膜86に通す。好ましい不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン及びヘリウムなどが挙げられる。これにより、相間移動膜86を横切るガス交換がHb溶液から酸素を取り除くことになる。
【0076】
脱酸素化は、有意なメトヘモグロビン生成を制限するのに適し、かつ、Hbを架橋した時に、大部分のHb分子が、低酸素親和性をもたらす構造的立体配置を持ち、それによってそのヘモグロビンの酸素送達能を高めることになるような低酸素濃度が得られるまで続ける。通例、HbO2 濃度が約20% 未満、好ましくは約10% 未満になるまで脱酸素化を続ける。
【0077】
脱酸素化中、Hb溶液の温度は、通例、脱酸素化速度をメトヘモグロビン生成速度と釣り合わせるレベルに維持される。温度は、メトヘモグロビン含量を20% 未満に制限するように維持される。最適な温度とすることにより、Hb溶液を脱酸素化しながらも、メトヘモグロビン含量は約5%未満、より好ましくはメトヘモグロビン含量は約2.5%未満となるだろう。通例、脱酸素化中は、Hb溶液の温度を約19℃〜約31℃に維持する。
【0078】
脱酸素化中と、それに続く本発明の方法の残りの工程の間は常に、Hbを低酸素環境に維持することにより、Hb溶液による酸素吸着を最小限に抑える。好適な低酸素環境としては、例えば酸素化Hb(オキシヘモグロビン又はHbO2 )がHb溶液中の約20未満となるような環境などが挙げられる。
【0079】
次に、その脱酸素化−Hbを適当な脱酸素化貯蔵緩衝液及び架橋剤と混合する。貯蔵緩衝液と架橋剤は、脱酸素化−Hbに同時に加えてもよいし、貯蔵緩衝液の添加後に、架橋剤を脱酸素化−Hbに加えてもよいと解される。貯蔵緩衝液と架橋剤は、脱酸素化−Hbに逐次添加されることが好ましい。
【0080】
一態様として、脱酸素化−Hbと混合する前に、貯蔵緩衝液をろ過する。貯蔵緩衝液に適したフィルターは、その緩衝液を脱発熱原化できる、通例10,000ダルトン以下のフィルター又は膜である。好適な貯蔵緩衝液フィルターの例としては、10,000ダルトンの排除限界を持つ、ミリポア ヘリコン カタログ番号CDUF050G1 又はエージー テクノロジー マックスセル(AG Technology Maxcell )カタログ番号UFP-10-C-75 脱発熱原フィルターが挙げられる。
【0081】
一態様として、重合中に分子間架橋を妨害することがほとんどないよう、脱酸素化−Hbのイオン強度を十分低く維持するために、貯蔵緩衝液はpHを安定化するための緩衝剤をも含有する。通例、酸化安定化脱酸素化−Hbのイオン強度は、重合前で約50mOsm未満である。
【0082】
好適な脱酸素化貯蔵緩衝液は、脱酸素化−Hb溶液を酸化に対して安定化するのに適した量の非毒性還元剤を含有する。好適な還元剤としては、スルフヒドリル化合物、例えばN-アセチル-L- システイン(NAC )、D,L-システイン、γ- グルタミル- システイン、グルタチオン、2-メルカプトエタノール、2,3-ジメルカプト-1- プロパナール(proponal)、1,4-ブタンジチオール、チオグリカル酸塩、ジチオエリスリトール、ジチオスレイトール、その他の生物適合性スルフヒドリル化合物;クエン酸塩;クエン酸;還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH2 );還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NHDPH2);還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH2);その他の生物適合性還元剤が挙げられる。低酸素含量貯蔵緩衝液の酸素含量は、その緩衝液中の還元剤濃度を実質的に減少させないほどに低く、かつ、酸化安定化脱酸素化−Hb中のオキシヘモグロビン含量を約20% 以下に制限しうるほどに低くなければならない。通例、貯蔵緩衝液は約50torr未満のpO2 を持つ。上記スルフヒドリル化合物の機能には、脱酸素化−Hb中に残存する酸素化Hbを脱酸素化すること、脱酸素化−Hb中に残存するメトヘモグロビンを還元すること、酸素除去によって脱酸素化−Hb(及び最終Hb代用血液製剤)を室温で酸化安定化(即ち脱酸素化)状態に維持すること、及び修飾四量体型Hbを優先的に形成させるために最適なHb重合を促進することが含まれる。本明細書に規定する修飾四量体型Hbとは、Hb四量体のHb二量体への有意な解離を防止するために分子内架橋されている四量体型Hbをいう。
【0083】
好ましい態様として、貯蔵緩衝液はHb重合とメトヘモグロビン生成を釣り合わせるのに適したpHを持つべきであり、通例約7.6 〜約7.9 である。
【0084】
好ましい態様として、貯蔵緩衝液は約25〜35mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.7 〜7.8 )を含有し、酸化安定化脱酸素化−Hb中のNAC 濃度が約0.003 重量% 〜約0.3 重量% になるような量のNAC を含有する。より好ましくは、酸化安定化脱酸素化−Hb中のNAC 濃度を約0.05重量% 〜約0.2 重量% にする。
【0085】
貯蔵緩衝液のpHと酸素含量は、酸化安定化脱酸素化−Hbが、Hb重合とメトヘモグロビン生成を釣り合わせるのに適したpH、好ましくは7.6 〜約7.9 pH単位と、安定化後に約20% HbO2 未満、好ましくはメトヘモグロビン生成をも制限する10% HbO2 以下の酸素含量とを持つことを保証するのに適すべきである。
【0086】
好ましい態様として、重合前に、酸化安定化脱酸素化−Hbが約0.003 重量% 〜約0.3 重量% のNAC を含有することになるような量のN-アセチルシステイン(NAC )貯蔵緩衝液を脱酸素化−Hbに加える。
【0087】
より好ましい態様として、重合前に、酸化安定化脱酸素化−Hbが約0.03重量% 〜約0.3 重量% のNAC 、又は等モル%の他のスルフヒドリル化合物を含有することになるような量のNAC 貯蔵緩衝液を脱酸素化−Hbに加える。
【0088】
さらに好ましい態様として、酸素安定化脱酸素化−Hbは重合開始前に約0.05重量% 〜約0.2 重量% のNAC を含有する。
【0089】
図1Bに戻って、貯蔵緩衝液はポンプ88のような適当な手段によってタンク76中の脱酸素化−Hbに加えられる。同時に、脱酸素化−Hbは、ポンプ80によるタンク76からの再循環によって、限外ろ過器84でダイアフィルトレーションされる。通例、ポンプ80(例えばアルビン サニタリー ポンプ(Albin Sanitary Pump )、モデル325,アルビン ポンプ インコーポレイテッド(Albin Pump, Inc.)、ジョージア州アトランタ)は、ポンプ80が作動していない時に加圧流がポンプ80を通過できるように設計される。貯蔵緩衝液は、タンク76中の液体をほぼ一定レベルに保つことによって、限外ろ過器86を横切って失われる液体を補充するにほぼ足りる量で、タンク76に連続的に又は一回ずつ(batchwise )加えられる。好ましくは、限外ろ過器86を横切るダイアフィルトレーションによって失われる液体の体積が、タンク76中の脱酸素化−Hbの当初の体積の約3倍になるまで、平衡化を続ける。限外ろ過器84から排出される濾液の体積は、当該技術分野で知られる手段、例えば排出ライン流量計によって測定できる。
【0090】
次に、図1Bと1Cに示すように、酸化安定化脱酸素化−Hbは、タンク76を窒素などの不活性ガスで加圧することにより、Hb脱酸素化サブシステム78から排出ライン90経由で移送される。
【0091】
ある態様では、次いで、酸化安定化脱酸素化−Hbが排出ライン90から任意フィルター92を通って貯蔵タンク94に流れる。好適なフィルターとしては、0.5 μm ポリプロピレンプレフィルター(ポール プロファイル ツー(Pall Profile II )、カタログ番号ABIY005Z7 )や0.2 μm 滅菌マイクロフィルター(ゲルマン サポー(Gelman Supor))が挙げられる。貯蔵タンク94は、窒素のような不活性ガスによるパージと被覆(blanketing)などにより、酸化安定化脱酸素化−Hbの充填前に、低酸素環境下に維持される。酸化安定化脱酸素化−Hbを充填した後、貯蔵タンク94を窒素のような不活性ガスで覆い、細菌又は酸素の混入を最小限に抑えるために密閉する。貯蔵タンク94は通例、ほぼ室温に維持される。次いで、貯蔵タンク94を窒素のような不活性ガスで加圧することにより、酸化安定化脱酸素化−Hbを貯蔵タンク94から重合サブシステム98の脱酸素化ループ96に移送する。
【0092】
もう一つの態様では、窒素のような不活性ガスでタンク76を加圧することにより、次いで、酸化安定化脱酸素化−Hbを排出ライン90から貯蔵迂回ライン95経由で脱酸素化ループ96に直接流す。
【0093】
重合サブシステム98は脱酸素化ループ96、濃縮ループ100 及び重合反応器102 を含む。脱酸素化ループ96では、ポンプ104 により、酸化安定化脱酸素化−Hbを、重合反応器102 から静置混合機10を通らせ、次に相間移動膜108 を通らせて再循環させる。濃縮ループ100 はポンプ110 を含み、このポンプが重合反応器102 から酸化安定化脱酸素化−Hbを吸引し、限外ろ過器112 又は並列迂回路114 を通り、次に静置混合機116 を通って、再循環させる。好ましい限外ろ過膜の例は、30,000ダルトン限外ろ過膜(例えばミリポア ヘリコン CDUF050LT 又はアミコン S40Y30 )である。好適な相間移動膜としては、例えば0.05μm ポリプロピレンマイクロフィルター(例えばヘキスト−セラネセ コーポレーション、カタログ番号5PCM-108, 80平方フィート)などが挙げられる。
【0094】
任意に、酸化安定化脱酸素化−Hbを重合サブシステム98に移送する前に、適当量の水を重合反応器102 に加えてもよい。一態様として、重合反応器102 に酸化安定化脱酸素化−Hbを加えた時に、約10〜約100g/l Hbの濃度を持つ溶液が得られるような量を適当量の水とする。その水は酸素枯渇状態であることが好ましい。
【0095】
相間移動膜108 を通る流れによって水の脱酸素化を補助するために、ポンプ104 で重合サブシステム98のすべてにわたって水を再循環させる。窒素などの加圧不活性ガスの向流を相間移動膜108 の反対側へ導くことによって、水をさらに脱酸素化する。
【0096】
重合サブシステム98中の水のpO2 が、HbO2 含量を約20% に制限することのできるレベル、通例約50torr未満まで十分に減少した後、重合反応器102 を窒素などの不活性ガスで覆う。次に、貯蔵タンク94を不活性ガス(例えば窒素)で加圧することによって重合反応器102 に、又は排出ライン90から貯蔵迂回ライン95経由で直接排出することによって重合反応器102 に、酸化安定化脱酸素化−Hbを貯蔵タンク94から移送し、そして重合反応器102は同時に不活性ガスの適当な気流で覆われている。
【0097】
重合反応器102 中の酸化安定化脱酸素化−Hb溶液の温度を、架橋剤と接触させたときに、酸化安定化脱酸素化−Hbの重合を最適化するような温度まで上げる。ヘモグロビンを重合する条件には、重合反応器102 中の重合反応混合物を、分子内Hb架橋を引き起こしうるほどに高い温度、かつ、有意なHb変性を防止しうるほどに低い温度まで加熱することが含まれる。通例、重合反応混合物は約25℃〜約45℃の温度に約2 〜6 時間加熱される。しかし、重合反応混合物の少なくとも一部は、25℃未満の温度で重合するだろう。好ましい重合条件には、該反応混合物を約40℃〜約44℃に約4 〜6 時間加熱することが含まれる。重合反応器102 を加熱するための好ましい熱伝導手段、図示していない、の例は、熱いエチレングリコールをジャケット内に導くことによって加熱するジャケット式加熱システムである。
【0098】
好適な架橋剤の例としては、Hbタンパク質を架橋する多官能性試薬、例えばグルタルアルデヒド、スクシンジアルデヒド、活性型のポリオキシエチレン及びデキストラン、α- ヒドロキシアルデヒド(グリコールアルデヒドなど)、N-マレイミド-6- アミノカプロイル- (2'- ニトロ,4'-スルホン酸)- フェニルエステル、m-マレイミド安息香酸-N- ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1- カルボキシレート、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1- カルボキシレート、m-マレイミドベンゾイル-N- ヒドロキシスクシンイミドエステル、m-マレイミドベンゾイル-N- ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、スルホスクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、1-エチル-3- (3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N'- フェニレンジマレイミド、並びにビスイミデート類、アシルジアジド類又はアリールジハライド類に属する化合物などを特に挙げることができる。
【0099】
架橋剤の好適量は、分子内架橋によるHbの安定化と、分子間架橋によるHbポリマーの形成とを可能にし、それによって血管内保持時間を増大させることのできる量である。通例、架橋剤の好適量は、Hbに対する架橋剤のモル比が約2:1 を超える量である。Hbに対する架橋剤のモル比は約20:1〜40:1であることが好ましい。
【0100】
好ましくは、約7.6 〜約7.9 のpHを持ち、約35mMかそれ以下の塩化物濃度を持つ緩衝液中で重合を行なう。
【0101】
図1Cに戻って、酸化安定化脱酸素化−Hbを重合反応器102 から迂回路114 経由で再循環させながら、好適量の架橋剤を投入口(orifice ;図示していない)から酸化安定化脱酸素化−Hbに添加する。次に、低せん断力の混合手段によって、架橋剤と酸化安定化脱酸素化−Hbを混合する。好適な低せん断力混合手段には静置混合機116 が含まれる。好適な静置混合機は、例えばChemineer, Inc. から得られる「Kenics」静置混合機である。
【0102】
ある態様では、酸化安定化脱酸素化−Hbと架橋剤を静置混合機116 経由で再循環させることによって、架橋剤と酸化安定化脱酸素化−Hbのほぼ均一な混合を伴う乱流状態が起こり、それによって高濃度の架橋剤を含有する脱酸素化−Hbのポケットが形成する可能性が減少する。架橋剤と脱酸素化−Hbのほぼ均一な混合は、高分子量Hbポリマー(すなわち500,000 ダルトンを超えるポリマー)の形成を減少させると共に、重合中の架橋剤と脱酸素化−Hbのより迅速な混合を可能にする。
【0103】
さらに、還元剤がスルフヒドリル化合物である場合は、そのスルフヒドリル化合物(好ましくはNAC )の存在ゆえに、Hb重合中にかなりのHb分子内架橋が起こるだろう。スルフヒドリル化合物の架橋剤及び/又はHbとの相互作用に関する正確な機構はわからないが、スルフヒドリル化合物はHb/架橋剤化学結合に、高分子量Hbポリマーの生成を少なくとも部分的に阻害し、安定化四量体型Hbを優先的に生成させるような方法で影響を与えると思われる。
【0104】
脱酸素化−Hbと混合するスルフヒドリル化合物の量は、重合中にHbの分子内架橋を増大させる程度に高く、かつ、高イオン強度ゆえにHb分子の分子間架橋を有意に減少させない程度に低い量である。通例、約0.25モル〜約5 モルの脱酸素化−Hbを酸化安定化するには、約1 モルのスルフヒドリル官能基(−SH)が必要である。還元剤がスルフヒドリル化合物でない場合は、分子内架橋を増進するに足る量のスルフヒドリル化合物を重合反応混合物に添加する。適当なスルフヒドリル化合物には、前記列挙した化合物が含まれる。スルフヒドリル化合物の十分量は変動するが、一般的には約0.003%〜0.3%である。
【0105】
ポリ(Hb)は、Hb分子のかなりの部分がそのポリ(Hb)中で化学結合しており、高分子量重合ヘモグロビン鎖内には少量(例えば15% 未満)しか含まれない場合に、有意な分子内架橋を持つと定義される。高分子量ポリ(Hb)分子とは、例えば約500,000 ダルトンを超える分子量を持つ分子である。
【0106】
好ましい態様では、グルタルアルデヒドを架橋剤として使用する。通例、1 キログラムの酸化安定化脱酸素化−Hbにつき約10〜約70グラムのグルタルアルデヒドを使用する。より好ましくは、1 キログラムの酸化安定化脱酸素化−Hbにつき約29〜31グラムのグルタルアルデヒドを、5 時間かけて加える。また、約35mM又はそれ以下の塩化物イオン濃度を持つ緩衝液中で重合を行なうことが好ましい。好適な緩衝剤の例は、pH7.8 の12mMリン酸緩衝液である。
【0107】
重合後、一般に、重合反応器102 中のポリ(Hb)溶液の温度を、架橋剤とのさらなる反応がほとんど起こらない温度(約15℃〜約25℃、好ましくは約18℃〜約20℃)まで下げる。重合反応器102 を冷却するための熱伝導手段の許容できる例は、エチレングリコール流によって冷却される熱交換器(図示していない)で覆われた重合反応器である。
【0108】
使用する架橋剤がアルデヒドでない場合、生成するポリ(Hb)は安定ポリ(Hb)である。使用する架橋剤がアルデヒドである場合は、適当な還元剤と混合してそのポリ(Hb)中のより不安定な結合を還元してより安定な結合を生成するまでは、生成するポリ(Hb)は安定でない。好適な還元剤の例には、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、トリメチルアミン、t-ブチルアミン、モルホリンボラン及びピリジンボランが含まれる。
【0109】
還元剤の添加に先立って、ポリ(Hb)溶液の濃度が約75〜約85g/l に増大するまでポリ(Hb)溶液を限外ろ過器112 経由で再循環させることによって、ポリ(Hb)溶液を濃縮してもよい。好適な限外ろ過膜の例は、30,000ダルトンフィルター(例えばMillipore Helicon カタログ番号CDUF050LT 、Amicon 540430 )である。
【0110】
還元剤が水素化ホウ素物である場合は、その還元剤を保護し、次のイミン還元中にHbを変性させうる水素ガスの発生を防止するために、ポリ(Hb)溶液のpHをアルカリ性pHに調節する。一態様として、そのpHを10以上に調節する。pHは、ポリ(Hb)溶液をダイアフィルトレーションしながら、重合反応器102 中のポリ(Hb)溶液に緩衝溶液を添加することによって調節される。ポリ(Hb)溶液は、ポリ(Hb)溶液をポンプ110 で重合反応器102 から限外ろ過器112 を通して再循環させることによって、ダイアフィルトレーションされる。そのホウ酸ナトリウム緩衝液に適したフィルターの例は、10,000ダルトン限外ろ過膜である。別法として、アルカリ性緩衝液の直接添加によってpHを調節してもよい。
【0111】
pHの調節後、少なくとも1 種類の還元剤、好ましくは水素化ホウ素ナトリウム溶液を、一般的には脱酸素化ループ96を通して重合反応器102 に加える。通例、ポリ(Hb)内のHb四量体1 モルにつき(64,000ダルトンのHbにつき)約5 〜約18モルの還元剤を加える。好ましい態様において、重合サブシステム98中のポリ(Hb)溶液各9 リットルにつき、1 リットルの0.25M 水素化ホウ素ナトリウム溶液を0.1 〜0.12 lpmの速度で加える。
【0112】
この量の還元剤を液体、溶液及び/ 又はスラリーとして投入口(図示していない)から重合反応器102 に入れた後、それを静置混合機106 と相間膜108 を通して循環させることにより、その還元剤と重合反応器102 中のポリ(Hb)溶液の迅速かつ効果的な混合を支援する乱流状態を作る。還元剤の添加中、重合反応器102 中のポリ(Hb)溶液を、ポンプ104 によって、静置混合機106 及び相間移動膜108 経由で連続的に再循環させることにより、溶存酸素と水素を除去する。還元剤の添加が完了した後、重合反応器102 中の攪拌装置(図示していない)でポリ(Hb)溶液と還元剤を攪拌しながら、重合反応器102 中で約0.5 〜2 時間還元し続けて、安定ポリ(Hb)を得る。
【0113】
次に、必要であれば、重合サブシステム98中の安定ポリ(Hb)を、一般的には約10g Hb/l〜約250g Hb/lの濃度にまで濃縮する。安定ポリ(Hb)溶液は、ポンプ110 による重合反応器102 から限外ろ過器112 経由の再循環によって濃縮される。
【0114】
次に、安定重合化ヘモグロビン代用血液を得るため、適当なpHと生理学的電解質レベルを持つダイアフィルトレーション溶液で安定ポリ(Hb)をダイアフィルトレーションすることにより、安定ポリ(Hb)のpHと電解質を生理学的レベルに戻す。そのダイアフィルトレーション溶液は緩衝溶液であることが好ましい。
【0115】
ポリ(Hb)を還元剤で還元した場合、そのダイアフィルトレーション溶液は酸性pH、好ましくは約4 〜約6 を持つ。
【0116】
最終重合化ヘモグロビン代用血液の安定性を高めるための酸素除去剤として、安定ポリ(Hb)に非毒性還元剤も加える。還元剤はダイアフィルトレーション溶液の一部として加えることができ、および/ または、別個に加えることもできる。所定量の還元剤を加えて、貯蔵期間中メトヘモグロビン含量を約15% 未満に維持する程度に酸素を除去する濃度にする。その還元剤はスルフヒドリル化合物であることが好ましく、NAC がより好ましい。通例、添加する還元剤の量は、約0.05重量% 〜約0.2 重量% のスルフヒドリル濃度を与えるような量である。
【0117】
安定ポリ(Hb)溶液を生理学的に許容できるpHと電解質レベルにするに足る体積が交換するまで、ダイアフィルトレーションを続けることにより、安定重合化ヘモグロビン代用血液を得る。図1Cにおいて、限外ろ過器112 を横切るダイアフィルトレーションによって一般的に失われる液体の体積は、重合サブシステム98中の安定ポリ(Hb)の体積の約6 〜約10倍である。
【0118】
もう一つの態様として、安定重合化ヘモグロビン代用血液を生成させた後、その代用血液をダイアフィルトレーションすることにより、その代用血液から非修飾及び修飾四量体型Hbを除去する。生理的溶液で代用血液を一般に約30g/l 〜約50g/l の濃度に希釈する。次に、その希釈Hbを、ポンプ104 で重合反応器102 、静置混合機106 及び精製フィルター120 経由で再循環させることによってダイアフィルトレーションする。次に、生理的溶液、一般的には生理学的に許容できるpHと電解質レベルを持つ脱酸素化緩衝液でその希釈代用血液をダイアフィルトレーションすることにより、解離条件下に行なうゲル透過クロマトグラフィーで測定される修飾四量体型Hb種と非修飾四量体型Hb種の含量を約10% 以下に減少させる。修飾四量体型Hbは、Hb四量体のHb二量体への有意な解離を防止するために、分子内で架橋されている四量体型Hbと定義される。精製フィルター120 は、修飾及び非修飾Hb四量体を代用血液から除去できるような好ましい分子量カットオフを持つ(典型例は約100,000 ダルトン;Filtron Ex. Omega カタログ番号05100CO5)。修飾及び非修飾四量体型Hbを除去した後、必要であれば、そのHb製剤の濃度が約10g Hb/l〜約250g Hb/l、好ましくは約120g Hb/l〜約140g Hb/lになるまで、限外ろ過器112 経由で代用血液の再循環を続ける。
【0119】
好ましい態様として、不活性で実質上酸素を含有しない雰囲気で重合反応器と残りの輸送装置中の圧力を維持しながら、代用血液を無菌操作条件下に包装する。
【0120】
本発明の方法によって生成する好適な安定重合化ヘモグロビン代用血液の仕様を表I に記載する。
【0121】
【表1】

【0122】
生理学的pHの例は、18〜22℃で約7.2 〜約7.9 のpHである。好ましい生理学的pHは18〜22℃で約7.6 〜約7.9 である。
【0123】
図1Cに戻って、次に、重合反応器102 を不活性ガスで加圧することにより、安定重合化ヘモグロビン代用血液を無菌操作法で貯蔵容器に輸送する。任意に、貯蔵に先立って、代用血液をプレフィルターと精密ろ過器(図示していない)に直接通してもよい。0.5 μm 以下のポリプロピレンプレフィルターと0.2 μm 滅菌ろ過膜がそれぞれプレフィルター及び精密ろ過膜として許容できる。
【0124】
次に、安定代用血液を、それぞれ低酸素環境を持つ短期間貯蔵容器(図示していない)又は滅菌貯蔵容器に保存する。貯蔵期間中の蒸発による代用血液の有意な濃縮を防止するため、貯蔵容器はさらに、水蒸気の通過に対して十分に不透過性でなければならない。代用血液の有意な濃縮とは、代用血液の1 又はそれ以上のパラメーターが仕様を超えて高くなる濃縮をいう。
【0125】
本発明の好ましい態様として、実質上酸素を含まない雰囲気下にヘモグロビン代用血液を維持することにより、ヘモグロビン代用血液の安定性を保つ。この方法は、例えば酸素保護フィルム二重包装(例えば袋)、ガラス容器(例えばバイアル)又はスチール製容器等の酸素不透過性容器中で代用血液を維持することによって達成できる。容器が酸素保護フィルム二重包装である場合は、ポリマーフィルム(例えば本質的に酸素不透過性のポリエステル、エチレンビナール(ethylene vinal)ラミネート(EVOH)、ポリビニリジンジクロリン(PVDC)又はナイロン)、及びホイルラミネート(例えば銀又はアルミニウムホイルラミネート)のようなラミネートを含む種々の素材からその容器を製造することができる。
【0126】
二重包装がポリエステルフィルムのようなフィルムである場合は、種々の好適な方法によってそのフィルムを本質的に酸素不透過性にすることができる。1つの態様において、製造されたフィルムがそのままで本質的に酸素不透過性である。別法として、そのポリマー素材が所望の仕様に合致するほど酸素不透過性でない場合は、そのフィルムを積層するか、その他の処置を施すことにより、酸素透過性を減少又は排除できる。
【0127】
好ましい態様として、ホイルがアルミニウム、銀、金その他の金属であるホイルラミネートを使用する。ホイル層は約0.0001〜0.01インチの厚さを持つことが好ましく、約0.003 インチの厚さを持つことがより好ましい。このラミネートは一般に1 又はそれ以上のポリマー層を含有する。そのポリマーは、例えばポリエステル層(例えば48ゲージポリエステル)、ポリプロピレン、ナイロンなどを含む種々のポリマー素材でありうる。
【0128】
本発明の容器は、バイアル、注射器、箱など種々の構造を持ちうる。好ましい態様として、その容器を袋型にする。好適な袋は、1 枚又はそれ以上(例えば2 枚)のシートの周囲を連続的に接着して注入可能センター(fillable center )を持つかたく閉じた酸素不透過性の構造にすることにより、作成することができる。袋の形態は当該技術分野で日常的に目にされる形態にできる。接着は、好適な素材のいずれでも達成できる。ポリエステル/ ホイルラミネート素材の場合は、例えばポリエステル接着剤を使用することができる。
【0129】
容器は、好ましくは、室温で1 気圧あたり24時間あたり100 平方インチあたり約1.0cc 未満の酸素透過性を持ち、好ましくはこれらの条件で1 平方インチあたり約0.6cc 未満の酸素透過性を持つ。これらの基準に合致する容器には、二重包装を持つプラスチック容器、例えばCryovac 製品(Cryovac BYV200など)及びKAPAK 製品(KAPAK 50303 ;KAPAK Corporation,ミネソタ州ミネアポリス)などがある。これらの金属又はポリマー複合フィルム二重包装プラスチック袋は、AUDIONVAC 密封装置(Audion Electro B.V., Weesp-Holland)を用いて密封される。KAPAK 50303 は、48ゲージポリエステル/ ホイル/ スクライアー(Sclair)ラミネート製のホイルラミネート容器である。そのホイル層は厚さ約0.0003”のアルミニウムホイルである。Sclair層(ポリエチレンフィルム)は0.003 ”の厚さを持つ。各層は接着剤で接着されている。その他の好適なKAPAK 製品には、KAPAK 50703 、KAPAK 50353 及びKAPAK 60N32 が含まれる。Cryovac BYV200も低密度ポリエチレン(LLDPE )の0.6mm 層、0.6mm 両側サラン被覆ポリビニルアルコール及び2.2mm LLDPE 密閉層(シーラント)を持つラミネート製品である。その酸素透過性は約0.02cc/100平方インチ/24 時間/ 気圧/72 °F/0%湿度及び約0.4cc/100 平方インチ/24 時間/ 気圧/72 °F/100%湿度である。
【0130】
好ましい態様として、実質上酸素を含まない雰囲気下で代用血液を包装する。好適な雰囲気の例としては、窒素、アルゴン及びヘリウムが挙げられる。
【0131】
本発明で使用されるポンプには、蠕動型、隔壁型、ギア型、ピストン型及び回転ローブ型ポンプが含まれる。隔壁型ポンプはBran & Luebbe Inc.(イリノイ州バッファローグローブ)から入手できる。好適な回転ローブポンプとしては、Albin Pump Inc. (ジョージア州アトランタ)製のAlbin SLP 110 P51 B1衛生ローブ回転ポンプが挙げられる。回転ローブポンプはWaukesha Pumps(ウィスコンシン州ウォーケショー)やG & H Corporation (ウィスコンシン州ケノーシャ)からも入手できる。
【0132】
本発明の方法に従って製造される安定重合化ヘモグロビン代用血液の合成については、さらに実施例1 で説明する。
【0133】
哺乳動物又はヒトで有用な本発明の安定重合化ヘモグロビン代用血液組成物については、実施例3 の表IV及びV で説明する。さらに、犬における本発明のHb代用血液の獣医学的使用については、実施例5 〜6 で説明する。さらに、本発明の安定重合化ヘモグロビン代用血液のヒトにおける有意な副作用を伴わない使用については、実施例7 〜8 で説明する。
【0134】
本発明のヘモグロビン溶液は、その組織に向かう赤血球(RBC )流が減少している組織の組織酸素添加を増大させるために、循環系に導入することができる。RBC 流の減少はRBC 流の部分的な閉塞、組織領域に関係する血管集団の減少及び/ 又は心臓性機能不全によってもたらされうる。
【0135】
毛細管によるその関連組織への酸素の移転は、一般に、単位時間あたりにその毛細管によって輸送される酸素の量と定義される酸素流量によって特徴づけられる。通常、動脈血中の酸素の98% はRBC によって運搬されるので、古典的には、酸素流量は主として赤血球流量と関係づけられている。したがって、毛細管を通るRBC 流が有意に減少すると、酸素流量が減少し、それによって関連組織への酸素移転が少なくなり、組織低酸素症や組織無酸素症をもたらす可能性がある。
【0136】
本発明の方法は、循環系の血漿相内で酸素を運搬し、組織に酸素を移転するという、RBC から独立したヘモグロビンの能力を利用する。したがって、脊椎動物の循環系へのヘモグロビンの導入によってヘモグロビンを投与された脊椎動物について、投与されたヘモグロビンがその脊椎動物の循環系を循環する場合は、酸素流速は、その投与されたヘモグロビンによって移転される酸素の増大にも依存する。
【0137】
循環系を循環するヘモグロビンの酸素移転能は、実施例9 に証明されている。実施例9 では、組織酸素圧の測定値の減少によって定義される、筋肉組織内の貧血性低酸素症(ヘタスターチ(hetastarch)による等体積的(isovolemic)血液希釈によって誘導されたもの)が、試験対象に少量のヘモグロビン溶液を血管内投与することによって効果的に治療された。
【0138】
本発明の方法では、循環系の血漿相を循環するヘモグロビンから脊椎動物組織への酸素移転の結果として、少なくとも部分的に組織酸素添加が起こる。酸素添加される組織は、小さな局部的組織領域であってもよいし、手足や器官のような区分けされた組織領域であってもよく、および/ または、その脊椎動物の体じゅうの組織であってもよい。冒された組織へのRBC 流の減少によって酸素供給量が減少している組織は、組織酸素圧の減少によって測定されるところの低酸素症になることがあり、酸素供給が長時間完全に制限されるなどの極端な場合は、無酸素症にさえなりうる。
【0139】
組織低酸素症とは、その組織内の正常レベルを下回る酸素圧(酸素の分圧)の低下をいう。組織無酸素症とはその組織内に測定できる酸素分圧がない状態をいう。
【0140】
組織内の酸素圧(酸素分圧)によって測定される組織酸素添加は、実施例9 に説明するように決定される。
【0141】
RBC 流の局部的、区域的又は全身的減少を持つ脊椎動物は、その他の点では正常な酸素輸送系を持ってもよいし、酸素の輸送及び移転に有害な影響を与えうる付加的な異常を身体の一部又は身体全体に持ってもよい。
【0142】
さらに本発明の方法では、脊椎動物は、ヘモグロビンの投与前に正常血液量的血液量を持つ。正常血液量的血液量(normovolemic blood volume )とは、嘔吐、下痢、火傷又は脱水症にから派生する大量の体液損失若しくは重度の出血によって起こりうるような循環血液量減少性ショックを引き起こさない、その脊椎動物の循環系内の血液量と定義される。一般に、正常血液量的血液量は、その脊椎動物に関する正常な血液量の少なくとも約90% を含む。場合によっては、正常血液量的液量が、循環血液量減少性ショックを引き起こすことなく、正常血液量の約80% 程度しか含有しないこともある。
【0143】
さらに、正常血液量的血液量を構成する血液は、少なくともほぼ正常な濃度のRBC を含有する。例えば、ヒトの正常血液量的血液量中の血液は、一般的には少なくとも約30% の主要血管ヘマトクリットを持つ。
【0144】
本発明の方法において、脊椎動物がさらに、ヘモグロビンの投与前、循環系中に、正常若しくは正常より高い全身血管抵抗を持つ。正常全身血管抵抗とは、その脊椎動物に敗血症性ショックのような分布性(distributive)ショックを引き起こさない血管抵抗をいう。
【0145】
減少赤血球流は、正常RBC 流レベルを下回る、局部的、区域的及び/ 又は全身的RBC 流のいずれの減少をも含み、「無RBC 流」状態をも含む。局部的RBC 流は、毛細血管床内の1 又はそれ以上の毛細管を通るRBC 流からなり、該毛細管は通常、局部的組織領域を酸素添加するためのRBC 流を提供する。区域的RBC 流は、手足や器官のようにより広い組織領域を酸素添加するためのRBC 流を提供する。全身的RBC 流は身体の主要循環系を通る流れであり、したがって身体全体を酸素添加するためのRBC を提供する。
【0146】
本発明方法の一態様として、狭窄や血管封鎖のような循環系の部分閉塞(その量は、その部分閉塞を通過するRBC 流を減少又は排除するが、少なくともいくらかの血漿は流れ得るような量である)を持っているか将来持つ脊椎動物にヘモグロビンを投与する。ヘモグロビンの投与は、局部的又は区域的部分閉塞より遠位にある組織の組識酸素添加を増大させ、および/または、体じゅうの組識酸素添加を増大させることによって全身的部分閉塞を治療する。
【0147】
この方法において、上記部分閉塞は、そこを通って分子状ヘモグロビンのような血漿成分が冒された組識に流れることのできる少なくとも1 つの開口部を持ち、その血漿成分は約16,000ダルトン以上の分子量を持つ。上記部分閉塞は、好ましくは、そこを通って約32,000ダルトン以上の分子量を持つ血漿成分(例えば二量体型Hb)が冒された組識に流れることのできる少なくとも1 つの開口部を持つ。分子内架橋四量体型Hbのように約64,000ダルトン以上の分子量を持つ血漿成分が、その部分閉塞を通過して冒された組識に流れることができれば、より好ましい。
【0148】
RBC はヘモグロビンよりかなり大きく、概して直径7 〜10ミクロンであるので、部分閉塞を通過するにはヘモグロビンの場合よりかなり大きな血管開口部(直径40〜100nm )を必要とする。
【0149】
部分閉塞は、すべての組識位置や動脈、静脈、毛細血管などのすべての血管で起こりうる。さらに、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁など、循環系内の弁も部分閉塞しうる。また、心室流出や心室の肺動脈への開口部など、心臓の室又は区画も部分閉塞しうる。
【0150】
循環系の部分閉塞は一時的である場合もあるし、永続的である場合もあり、また再発性である場合もある。循環系部分閉塞は、血管壁欠損、疾患、損傷、血液成分の凝集、新生物、空間をふさぐ病変、感染症、異物、圧迫、薬物、機械的装置、血管収縮、血管痙攣など、種々の理由で起こりうる。
【0151】
本明細書で規定するところの循環系の狭窄とは、循環系のいずれかの導管又は管腔が狭くなることをいう。狭窄は、一般に、アテローム性動脈硬化;動脈移植による縫合線、移植又はステント用の設置接合点、血管、移植片又はステントのよじれや奇形、損傷又は侵襲的手術(例えばカテーテル法、血管形成術、血管ステント設置、人工器官、同種組識及び/ 又は自家組識の血管移植、)から治癒した組識又は傷痕になった組識などといった血管壁異常;人工弁又は人工血管などの血管プロテーゼ;新生物塊、血腫若しくは機械的手段(例えば鉗子、止血帯、加圧装置など)によるなどの圧迫;化学中毒又は薬物副作用;血管収縮;及び血管痙攣などから起こりうる。
【0152】
心臓の弁又は区画内の狭窄の例には、大動脈狭窄、ボタン穴狭窄、灰化結節性狭窄、冠状動脈口狭窄、二重大動脈狭窄、魚口僧帽弁狭窄、特発性肥厚性大動脈弁下部狭窄、漏斗部狭窄、僧坊弁狭窄、筋性大動脈弁下部狭窄、肺動脈弁狭窄、大動脈弁下部狭窄、下部狭窄、大動脈弁上部狭窄、三尖弁狭窄が含まれる。
【0153】
本明細書において血管封鎖とは、循環系の導管又は管腔内の封鎖と定義される。導管又は管腔の封鎖の典型例には、in situ 又は閉塞性のアテローム性物質又は斑、疾患や損傷がもたらす若しくは創傷治癒部位における血塊での血液成分(血小板、フィブリン及び/ 又はその他の細胞成分)の凝集が含まれる。血塊には、血栓症、塞栓症、極端な場合は異常凝固状態が含まれる。
【0154】
他の血管封鎖としては、真菌感染や心糸状菌虫感染などの循環系内の微生物感染症又は高等生物感染症がもたらす封鎖がある。
【0155】
さらに、血管封鎖は、侵襲性医療手術中に血流を遮断するための「GELFOAM R 」吸収性ゼラチン滅菌スポンジや破損したカテーテルチップのような、循環系の導管又は管腔内に含まれる異物によっても起こりうる。
【0156】
本発明のもう1 つの態様として、ある組識領域にRBC を供給する機能を果たす血管集団が減少し、その結果その冒された組識に対するRBC 流が減少している、若しくはそのおそれのある脊椎動物にヘモグロビンを投与する。これにより、その投与されたヘモグロビンは、冒された組識の組識酸素添加を増大させる。血管集団の減少は、一般的には、火傷(熱、化学薬品若しくは放射線)又は侵襲性医療手術(例えば血管の除去若しくは焼灼)の結果である。
【0157】
本発明の方法のさらなる態様として、心臓性機能不全のために全身血流が減少していて、それゆえにRBC が減少している脊椎動物にヘモグロビンを投与する。これにより、その投与されたヘモグロビンはその体じゅうの組識酸素添加を増大させる。心臓性機能不全とは、低血流状態をもたらす心臓の若しくは心臓を冒す疾患又は損傷をいい、例えば心筋梗塞、心筋虚血、心筋損傷、不整脈、心筋症、心臓神経障害及び心膜滲出などである。
【0158】
この方法において、胎児期脊椎動物の循環系の部分閉塞は一般に、妊娠期間中の出生前発育に影響する疾患若しくは欠損の結果、又は疾患若しくは欠損の処置(例えば子宮内手術)の結果である。
【0159】
ヘモグロビン溶液の血管内投与による、RBC 流が減少することにより冒された組識に対する酸素移転の改善は、組識酸素圧をベースライン値まで修復するに足る投与量のヘモグロビン溶液を血管内注入した後に起こる(実施例9 及び10で観測された)組識酸素添加の有意な増大によって立証される。
【0160】
本発明の方法で使用する場合、ヘモグロビンは天然のRBC に含まれるのではなく、一般に、生理学的に許容できる担体中に存在する。その担体は液体状態であることが好ましい。また、ヘモグロビンが、生理学的に許容できる担体内のヘモグロビンの生理学的に許容できる溶液又は懸濁液内に存在することが好ましい。好適なヘモグロビンとしては、そのヘモグロビンのかなりの部分が酸素を輸送転移することのできる、本明細書に記載のヘモグロビン溶液や、例えば二量体型ヘモグロビン、四量体型ヘモグロビン、分子内架橋ヘモグロビン、重合化ヘモグロビン、凍結乾燥ヘモグロビン及び/ 又は化学修飾ヘモグロビン等のその他の形態のヘモグロビンが挙げられる。脊椎動物の循環系へのヘモグロビンの投与が、その脊椎動物の低酸素組識に測定できる組識酸素圧の増大をもたらすならば、そのヘモグロビンは酸素を輸送移転する有意な能力を持つ。ヘモグロビンの少なくとも約85% が酸素を輸送移転できることが好ましい。
【0161】
その他の好適なヘモグロビン溶液の例には、次に挙げるものが含まれる:安定化された2,3-ジホスホグリセリン酸レベルを持つヘモグロビン溶液(Bonhard に付与された米国特許第3,864,478 号明細書に記載されているようなもの);架橋ヘモグロビン(Mazur に付与された米国特許第3,925,344 号明細書、 Bonsen らに付与された米国特許第4,001,200 号明細書、同4,001,401 号明細書及び同4,053,590 号明細書、Morrisらに付与された米国特許第4,061,736 号明細書、又はScannon らに付与された米国特許第4,473,496 号明細書に記載されているようなもの);無ストロマヘモグロビン(Doczi に付与された米国特許第3,991,181 号明細書、Simmondsらに付与された米国特許第4,401,652 号明細書、Kothe らに付与された米国特許第4,526,715 号明細書に記載されているようなもの);多糖類と結合したヘモグロビン(Wongに付与された米国特許第4,064,118 号明細書に記載されているようなもの);ピリドキサルリン酸と縮合したヘモグロビン(Bonhard らに付与された米国特許第4,136,093 号明細書に記載されているようなもの);ジアルデヒド結合ヘモグロビン(Bonhard らに付与された米国特許第4,336,248 号明細書に記載されているようなもの);イヌリンと共有結合したヘモグロビン(Ajisaka らに付与された米国特許第4,377,512 号明細書に記載されているようなもの);ポリアルキレングリコール又はポリアルキレンオキシドと結合したヘモグロビン又はヘモグロビン誘導体(Iwashitaらに付与された米国特許第4,412,989 号明細書、Iwasaki らに付与された米国特許第4,670,417 号明細書、Nho らに付与された米国特許第5,234,903 号明細書に記載されているようなもの);無発熱原及び無ストロマヘモグロビン溶液(Bonhard らに付与された米国特許第4,439,357 号明細書に記載されているようなもの);無ストロマ非ヘムタンパク質不含ヘモグロビン(Tye に付与された米国特許第4,473,494 号明細書に記載されているようなもの);修飾架橋無ストロマヘモグロビン(Tye に付与された米国特許第4,529,719 号明細書に記載されているようなもの);無ストロマ架橋ヘモグロビン(Bucci らに付与された米国特許第4,584,130 号明細書に記載されているようなもの);α- 架橋ヘモグロビン(Walderらに付与された米国特許第4,598,064 号明細書及びRe.34,271 号に記載されているようなもの);四量体非含有重合化ピリドキシル化ヘモグロビン(Sehgalらに付与された米国特許第4,826,811 号明細書及び同5,194,590 号明細書に記載されているようなもの);安定アルデヒド重合化ヘモグロビン(Hsiaに付与された米国特許第4,857,636 号明細書に記載されているようなもの);硫酸グリコサミノグリカンに共有結合したヘモグロビン(Fellerらに付与された米国特許第4,920,194 号明細書に記載されているようなもの);反応性アルデヒド成分を持つ高分子量ポリマーと反応させた修飾ヘモグロビン(Corny に付与された米国特許第4,900,780 号明細書に記載されているようなもの);トリポリリン酸ナトリウムの存在下に架橋されたヘモグロビン(Hai らに付与された米国特許第5,128,452 号明細書に記載されているようなもの);安定ポリアルデヒド重合化ヘモグロビン(Hsiaに付与された米国特許第5,189,146 号明細書に記載されているようなもの);及びβ- 架橋ヘモグロビン(Klugerらに付与された米国特許第5,250,665 号明細書に記載されているようなもの)。
【0162】
ヘモグロビン懸濁液には、エマルジョン中のヘモグロビン又は乳化ヘモグロビン溶液が含まれる。ヘモグロビン懸濁液の例には次に挙げるものが含まれる:水非混和性両親媒性膜に封入されたヘモグロビン画分を持つヘモグロビン溶液(Djordjevich らに付与された米国特許第4,543,130 号明細書に記載されているようなもの);無ストロマヘモグロビンが添加された二水相のエマルジョン(Ecanowらに付与された米国特許第4,874,742 号明細書に記載されているようなもの);及び生理学的に適合する油中のヘモグロビン溶液の水中油中水型多重エマルジョン(Beissingerらに付与された米国特許第5,061,688 号明細書及び同5,217,648 号明細書に記載されているようなもの)。
【0163】
好ましい態様において、本発明の方法で使用されるヘモグロビンは、本明細書に記載する重合化ヘモグロビン代用血液の形態をとる。
【0164】
本発明方法での使用に好ましいヘモグロビン溶液組成物、すなわち、代用血液は、0.5 エンドトキシン単位/mL 未満、酸素輸送/ 転移能の有意な減少をもたらさないメトヘモグロビン含量、約2 〜約20g Hb/dL の総ヘモグロビン濃度及び生理学的pHを有する滅菌溶液である。さらに好ましい態様では、Hb溶液が約12〜約14g Hb/dL の総ヘモグロビン濃度を持つ。好ましいHb溶液及び代用血液の例については、下記実施例で説明する。
【0165】
一般に、ヘモグロビンの好適な投与量又は投与量の組み合わせは、血漿内に含まれた時に、脊椎動物血中の総ヘモグロビン濃度を約0.1 〜約10グラムHb/dL 増大させるヘモグロビン量である。ヒトについて好ましい投与量は、総ヘモグロビンを約0.5 〜約2g Hb/dL 増大させるだろう。犬について好ましい投与量は、総ヘモグロビンを約3.5g〜約4.5g Hb/kg 体重増大させるだろう。
【0166】
ヘモグロビンは、1 又はそれ以上の注射法でヘモグロビンを脊椎動物の循環系に直接的及び/ 又は間接的に注射することによって投与できる。直接的注射法の例には、静脈内注射や動脈内注射のような血管内注射及び心臓内注射が含まれる。間接的注射法の例には、ヘモグロビンがリンパ系によって循環系に輸送されるような皮下注射、腹腔内注射、套管針又はカテーテルによる骨髄への注射が含まれる。ヘモグロビンが静脈内注射で投与されることが好ましい。
【0167】
処置される脊椎動物は、Hb溶液の注入前、注入中及び/ 又は注入後に低血液量状態、正常血液量状態又は高血液量状態のいずれであってもよい。ヘモグロビンは、例えばトップローディング(top loading )のような方法や交換法で循環系に注入することができる。
【0168】
循環系の一部又は循環系全体におけるRBC 流の減少によってもたらされる脊椎動物内の低酸素組識を処置するために、ヘモグロビンを治療的に投与することができる。また、脊椎動物の組識に対するRBC 流若しくは循環系全体のRBC 流の考えうる又は予想される減少がもたらしうる脊椎動物内の組識の酸素枯渇を防止するために、ヘモグロビンを予防的に投与することもできる。部分動脈閉塞を治療的若しくは予防的に処置するためのヘモグロビンの投与、又は微小循環系における部分閉塞を処置するためのヘモグロビンの投与に関するさらなる考察は、それぞれ実施例10及び11に記載する。
【0169】
下記実施例を参照して本発明をさらに例証する。
【実施例】
【0170】
実施例 1
安定重合化ヘモグロビン代用血液の合成
米国特許第5296465号明細書に記載されているように、ウシ全血のサンプルを集め、抗凝固剤のクエン酸ナトリウムを混合して血液溶液を得、次いでエンドトキシンレベルについて分析を行った。
【0171】
それぞれの血液溶液サンプルを集めた後約2℃で維持し、次いで600メッシュのふるいでろ過して大きな凝集物及び粒子を除いた。
【0172】
プールを行う(pooling)前に、それぞれの血液溶液サンプルのペニシリンレベルを、ミシガン州デトロイトのディフコから購入した測定キットを用いての、「牛乳中ペニシリン迅速検出法(Rapid Detection of Penicillin in Milk)」という名称の方法によって測定し、血液溶液サンプルのペニシリンレベルが0.008単位/mL以下であることを確認した。
【0173】
次いで、血液溶液サンプルをプールし、発熱性物質が除かれた(depyrogenated)クエン酸ナトリウム水溶液と混合して、ウシ全血中に、0.2重量%のクエン酸ナトリウムを含む溶液を得た(以下、「0.2%クエン酸ナトリウム血液溶液」)。
【0174】
次いで、0.2%クエン酸ナトリウム血液溶液を、800μm及び50μmのポリプロピレンフィルターに連続して通して、約50μm以上の直径の、大きな血液溶液の残渣を除去した。
【0175】
次いで、RBCを洗浄して、RBCから細胞外血漿性タンパク質、例えばBSA又はIgG、を分離した。血液溶液に含まれるRBCを洗浄するために、まず最初に、ダイアフィルトレーション(diafiltration)タンクに、ダイアフィルトレーションタンクにある血液溶液と同量のろ過済みの等張液を添加して希釈した。等張液はミリポアの(カタログ番号CDUF 050 G1)10000ダルトン限外ろ過膜でろ過された。等張液は、注射用蒸留水(WFI)中に、6.0g/Lのクエン酸ナトリウム、8.0g/Lの塩化ナトリウムから構成されるものであった。
【0176】
次いで、希釈された血液溶液を、0.2μmのホローファイバー(マイクロゴン クロスフロ II マイクロフィルトレーション カートリッジ(Microgon Krosflo II microfiltration cartridge))を用いてのダイアフィルター(diafilter)により、もとの体積にまで濃縮した。同時に、補充として、0.2μmのダイアフィルターによるろ過による減少速度と同じ速度で、ろ過済み等張液を連続的に添加した。ダイアフィルトレーションの間に、希釈された血液溶液の、明らかにRBCより直径が小さい成分、又は血漿等の液体成分は、ろ過によって0.2μmのダイアフィルターの壁を通過した。RBC、血小板及び希釈された血液溶液のより大きなかたまり、例えば白血球は、連続的な等張液の添加によっても残存し、そして透析された血液溶液を得た。
【0177】
RBCの洗浄の間、希釈された血液溶液を約10〜25℃の温度に、ダイアフィルターの入口の液圧を約25〜30psiに維持し、プロセスの効率化を図った。
【0178】
ダイアフィルターによるろ過排出液の体積が、ろ過済みの等張液による希釈前の血液溶液の体積の約600%と等しくなった時点で、RBCの洗浄を終了した。
【0179】
次いで、透析された血液溶液を、シャープレス スーパー セントリフュージ、モデル番号AS−16、ナンバー28リングダム(ringdam)付き、に対して毎分約4リットルの速度で連続的に供給した。遠心分離機の運転は血液溶液の供給と同時に行い、白血球及び血小板からRBCを分離した。運転の間、RBCが重いRBC相に分離するのに充分な、その一方、白血球(WBC)及び血小板の実質的な部分も軽いWBC相に分離するのに充分な回転数、具体的には約15000rpmで回転させた。RBC相の一画分とWBC相の一画分を別々に、連続的に運転の間に遠心分離機から抜き出した。
【0180】
RBCの分離に続いて、RBCを溶解させてヘモグロビン含有溶液を得た。RBCの実質的な部分は、遠心分離機からRBCを排出する際に、機械的に溶解させた。遠心分離機の中からのRBC相の流れに対して、ある角度を持っているRBC相排出ラインの壁に衝突した際に、RBCの細胞膜は破裂した。それによりRBCからヘモグロビン(Hb)がRBC相へ放たれた。
【0181】
次いで、溶解RBC相を、排出ラインを経て静置混合機(6エレメント(elements)付きケニクス(Kenics)1/2インチ、ケミナー(Chemineer)社)へ流し出した。RBC相の静置混合機への移し換えと同時に、等量のWFIも静置混合機へ注入し、そこでWFIをRBC相と混合させた。RBC相とWFIの静置混合機への注入速度は、それぞれ毎分約0.25Lである。
【0182】
静置混合機内でのRBC相とWFIの混合により、溶解RBCコロイドが得られた。次いで、静置混合機から、溶解RBCコロイドを、Hbを非ヘモグロビンRBC成分から分離するのに適したシャープレス スーパー セントリフュージ(モデル番号AS−16、シャープレス ディビジョン アルファ−レイバル セパレーション(Alfa−Laval Separation) インコーポレイテッド)に移した。この遠心分離機を、溶解RBCコロイドを軽いHb相と重い相に分離するのに充分な回転数で回転させた。軽い相は、HbとさらにHbの密度とほぼ等しいかより小さい非ヘモグロビン成分から構成されていた。
【0183】
遠心分離機から、0.45μmのミリポア ペリコン カセット(Millipore Pellicon Cassette)、カタログ番号HVLP 000 C5 マイクロフィルター、を通してHb相を連続的に抜き出し、Hb精製用に用意された保持タンクに移した。次いで、細胞ストロマを保留分(retentate)とともにマイクロフィルターから保持タンクに戻した。精密ろ過の間は、保持タンクの温度を10℃以下に維持した。効率化を図るために、マイクロフィルター入口の液圧が初期の約10psiから約25psiに高まった時点で精密ろ過を終えた。次いで、精密ろ過を行ったHbをマイクロフィルターから精密ろ過用タンクに移した。
【0184】
次いで、精密ろ過を行ったHbを、100000 ミリポア カタログ番号 CDUF 050 H1 限外ろ過膜に供給した。精密ろ過を行ったHbに含まれる、Hbの実質的な部分と水は100000ダルトンの限外ろ過膜を透過し、そしてHbの限外ろ過物を得、一方、約100000ダルトンを超える分子量のタンパク質等の、より大きな細胞の残渣は残存し、精密ろ過用タンクに再循環されて戻された。同時に、補充として、限外ろ過に伴う水の減少に対応して、WFIを連続的に加えた。大まかに言えば、細胞の残渣は、Hb、より小さな細胞タンパク質、電解質、補酵素及び代謝中間体有機物以外の、すべての細胞性成分及びその断片を含む。精密ろ過用タンクのHb濃度が8グラム/リットル(g/l)未満となるまで、限外ろ過を続けた。Hbの限外ろ過の際、精密ろ過用タンク内の温度は約10℃に維持した。
【0185】
Hbの限外ろ過物を限外ろ過タンクに移し、次いで、ここで、Hbの限外ろ過物を30000ダルトン ミリポア カタログ番号 CDUF 050 T1 限外ろ過膜に再循環させてより小さな細胞成分、例えば、電解質、補酵素、代謝中間体及び約30000ダルトンに満たないタンパク質を除き、それにより、約100g Hb/リットルの濃縮Hb溶液を得た。
【0186】
次いで、濃縮Hb溶液を、限外ろ過タンクから、並列(parallel)クロマトグラフィー用カラム(長さ2フィート、内径8インチ)の中の媒体に導き、高性能液体クロマトグラフィーによってHbを分離した。クロマトグラフィー用カラムには、Hbと非ヘモグロビンタンパク質とを分離するのに適した陰イオン交換媒体が含まれていた。この陰イオン交換媒体はシリカゲルから形成されていた。このシリカゲルは、γ−グリシドキシ プロピルトリメトキシシランに曝されて活性エポキシド基が形成され、次いでジメチルアミノエタノール(HOCH2 CH2 N(CH32)に曝されて四級アンモニウム陰イオン交換媒体が形成されたものであった。シリカゲルを処理するこの方法は、ジャーナル オブ クロマトグラフィー(Journal of Chromatography)、120:321−333(1976)に記載されている。
【0187】
それぞれのカラムを、最初の、Hbの結合を促進させる緩衝液でクロマトグラフィー用カラムを洗浄して前処理とした。4.52リットルの濃縮Hb溶液をそれぞれのクロマトグラフィー用カラムに注入した。濃縮Hb溶液の注入後、次いで、三種類の異なる緩衝液を連続的に導くことでクロマトグラフィー用カラムを洗浄し、カラム内でpH勾配を付けることによってHbをクロマトグラフィー用カラムを通じて溶出させた。使用時のそれぞれの緩衝液の温度は約12.4℃であった。クロマトグラフィー用カラムに注入する前に、予め緩衝液を10000ダルトンの限外ろ過膜に通しておいた。
【0188】
この最初の緩衝液、20mMのトリス−ヒドロキシメチル アミノメタン(トリス)(pHは約8.4〜約9.4)によって、濃縮Hb溶液をクロマトグラフィー用カラム内の媒体に移し、Hbを結合させた。pHが約8.3の二番目の緩衝液、最初の緩衝液と三番目の緩衝液の混合物、は、次いで、混入している非ヘモグロビン成分をクロマトグラフィー用カラムから溶出させる一方、Hbは留めるようなクロマトグラフィー用カラム内のpHに調整された。二番目の緩衝液による平衡化は、カラム1本当たり毎分約3.56リットルの流速で、約30分間行った。二番目の緩衝液での溶出物は廃液として捨てた。次いで、三番目の緩衝液、50mM トリス(pHは約6.5〜約7.5)、でクロマトグラフィー用カラムからHbを溶出させた。
【0189】
次いで、Hb溶出物を、0.22μのサルトブラン(Sartobran) カタログ番号5232507 G1PH フィルターを通してタンクに導き、そこにHb溶出物を集めた。Hb溶出物の最初の3〜4%とHb溶出物の最後の3〜4%は廃液とした。
【0190】
次いで、Hb溶出物を約100g Hb/Lに濃縮した。溶出物中のエンドトキシンが0.05EU/mLに満たず、そしてホスホリピドが3.3ナノモル/mLに満たない場合、このHb溶出物を続けて使用した。60リットルの濃縮済み高純度溶出物、濃度は100g Hb/L、に対して、9リットルの1.0M 塩化ナトリウム、20mM トリス(pH8.9)緩衝液を添加し、それにより160mMのイオン強度のHb溶液を得、Hb溶液中のHbの酸素親和性を低減させた。次いで、限外ろ過膜、具体的には10000ダルトンのミリポア ヘリコン(Helicon)、カタログ番号 CDUF050G1 フィルター、に10℃で再循環させて、Hbの濃度が110g/リットルとなるまでHb溶液を濃縮した。
【0191】
次いで、ヘキスト−セラネセ(Hoechst−Celanese)社 カタログ番号G−240/40)の0.05μmポリプロピレンマイクロフィルターフェイズトランスファーメンブレンに毎分12リットルでHb溶液を再循環させることで、Hb溶液のpO2 が、HbO2 の含有量で約10%のレベルに減少するまで、そのHb溶液を脱酸素化処理に付し、脱酸素化Hb溶液(以下、「脱酸素化−Hb」)を得た。同時に、チッ素ガスを毎分60リットルの流速でフェイズトランスファーメンブレンの反対側に導いた。脱酸素化処理の間は、Hb溶液の温度を約19℃〜約31℃の間に維持した。
【0192】
脱酸素化処理の際にも、そしてそれに続くプロセスを通して、Hbを低酸素環境下で維持して、Hbによる酸素の吸収を極小化し、そして脱酸素化−Hb中の酸化Hb(オキシヘモグロビン又はHbO2 )の含有量を約10%に満たない程度に維持した。
【0193】
次いで、60リットルの脱酸素化−Hbを、180リットルの貯蔵緩衝液、0.2重量%のN−アセチルシステイン、33mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.8)、pO2 が50torr未満である、を用いて、限外ろ過膜に通してダイアフィルトレーションを行い、酸化安定脱酸素化−Hbを得た。脱酸素化−Hbの混合の前に、10000ダルトン ミリポア ヘリコン、カタログ番号CDUF050G1の発熱性物質除去フィルターを用いて、貯蔵緩衝液から発熱性物質を除いた。
【0194】
限外ろ過膜を通すことによる液体の減少とほぼ同じ速度で連続的に貯蔵用緩衝液を加えた。ダイアフィルトレーションは、限外ろ過膜を通してのダイアフィルトレーションによる液体の減少量が、脱酸素化−Hbの初期の量の約3倍になるまで続けた。この原料はこの時点で保存しても良い。
【0195】
酸化安定脱酸素化−Hbを重合化装置に移す前に、酸素を除去したWFIを重合化リアクターに加えて重合化装置の酸素を除き、酸化安定脱酸素化−Hbの酸化を防いだ。重合化装置に添加するWFIの量は、酸化安定脱酸素化−Hbを重合化リアクターに添加した時に約40g Hb/Lの濃度のHb溶液が生じる量であった。次いで、WFIを重合化装置に再循環させて、加圧したチッ素の反対側からの流れに対して、0.05μmのポリプロピレンマイクロフィルターフェイズトランスファーメンブレン(ヘキスト−セラネセ社 カタログ番号5PCM−108、80平方フィート)を通す流れによりWFIから酸素を除いた。フェイズトランスファーメンブレンを透過するWFIとチッ素ガスの流速はそれぞれ、毎分約18〜20リットル、40〜60リットルであった。
【0196】
重合化装置のWFIのpO2 が、約2torr pO2 未満に減らされた後、重合化リアクターの頭部空間に、毎分約20リットルのチッ素を流して重合化リアクターをチッ素で覆った。次いで、酸化安定脱酸素化−Hbを重合化リアクターに移した。
【0197】
Hb溶液とWFIの混合によって生じる、塩素濃度が35mM以下の12mM、pH7.8のリン酸緩衝液中で重合化が行われた。
【0198】
次いで、42℃の加熱条件下、6エレメント付きケニクス1−1/2インチ静置混合機(ケミナー社)を通してHb溶液を再循環させながら、酸化安定脱酸素化−HbとN−アセチルシステインを、架橋剤のグルタルアルデヒドと、具体的にはHbを1kgあたり29.4gのグルタルアルデヒドを5時間かけて、穏やかに混合し、重合化Hb(ポリ(Hb))溶液を得た。
【0199】
酸化安定脱酸素化−Hbとグルタルアルデヒドを、静置混合機を通して再循環することにより、乱流条件下でグルタルアルデヒドと酸化安定脱酸素化−Hbとが穏やかに均一に混合し、それにより、高濃度のグルタルアルデヒドを含む脱酸素化−Hbのポケットが形成される可能性を低減させた。グルタルアルデヒドと脱酸素化−Hbとを穏やかに均一に混合することで、(分子量が500000ダルトンを超える)高分子量のポリ(Hb)の形成を抑え、さらに、重合化の間の、グルタルアルデヒドと脱酸素化−Hbとの混合をより速くさせた。
【0200】
加えて、Hbの重合化の際にN−アセチルシステインが存在する効果として、Hbの重合化の際にHb分子内に架橋が明確に形成された。
【0201】
重合化の後、重合化リアクターのポリ(Hb)溶液の温度を下げ、約15℃〜約25℃の間の温度とした。
【0202】
次いで、限外ろ過膜にポリ(Hb)溶液を通して再循環させ、ポリ(Hb)の濃度が約85g/Lに高まるまで、ポリ(Hb)溶液を濃縮した。好ましい限外ろ過膜としては、30000ダルトン フィルター(例えば、ミリポア ヘリコン、カタログ番号CDUF050LT)である。
【0203】
次いで、ポリ(Hb)溶液をその後、66.75gの水素化ホウ素ナトリウムと混合し、次いで、静置混合機を通して再循環を再び行った。具体的には、9リットルのポリ(Hb)溶液ごとに、0.25Mの水素化ホウ素ナトリウム溶液を1リットル加え、流速を毎分0.1〜0.12リットルとした。
【0204】
ポリ(Hb)溶液に水素化ホウ素ナトリウムを添加する前に、ポリ(Hb)溶液のpHをpHが約10のpHに調整してアルカリ性にし、水素化ホウ素ナトリウムと水素ガスの発生を保護した。ポリ(Hb)溶液を、約215リットルの、発熱性物質と酸素が除かれた、pHが約10.4〜約10.6の12mMホウ酸ナトリウム緩衝液とダイアフィルトレーションを行って、ポリ(Hb)溶液のpHを調整した。重合化リアクターから、30kDの限外ろ過膜を通してポリ(Hb)溶液を再循環させてダイアフィルトレーションを行った。ダイアフィルトレーションによる、限外ろ過膜を通すことによる液体の減少速度とほぼ同じ速度で、ポリ(Hb)溶液へのホウ酸ナトリウム緩衝液の添加を行った。ダイアフィルトレーションによる、限外ろ過膜を通すことによる液体の減少量が重合化リアクター中のポリ(Hb)溶液の最初の量の約3倍の量となるまで、ダイアフィルトレーションを続けた。
【0205】
pHの調整の次に、水素化ホウ素ナトリウム溶液を重合化リアクターに添加し、ポリ(Hb)溶液中のイミン結合を還元してケトイミン結合として溶液中のポリ(Hb)を安定化させた。水素化ホウ素ナトリウムの添加の際に、重合化リアクター中のポリ(Hb)溶液を、静置混合機と0.05μmポリプロピレンマイクロフィルターフェイズトランスファーメンブレンを通して連続的に再循環させ、溶解している酸素と水素とを除いた。静置混合機を通して供給することにより、迅速にかつ効果的に水素化ホウ素ナトリウムとポリ(Hb)溶液とを混合する供給条件である、水素化ホウ素ナトリウムの乱流をも引き起こした。0.05μmフェイズトランスファーメンブレンを透過するポリ(Hb)溶液とチッ素ガスの流速はそれぞれ、毎分約2.0〜4.0リットルと毎分約12〜18リットルであった。水素化ホウ素ナトリウムの添加終了後、毎分約75回転で攪拌機の回転を続けている間、重合化リアクターでの還元は続いた。
【0206】
水素化ホウ素ナトリウムの添加から約1時間後、重合化リアクターから30000ダルトンの限外ろ過膜を通して、安定ポリ(Hb)溶液の濃度が110g/Lとなるまで安定ポリ(Hb)溶液を再循環させた。ろ過され、酸素が除かれた、WFI中に27mM乳酸ナトリウム、12mM NAC、115mM塩化ナトリウム、4mM塩化カリウム、及び1.36mM塩化カルシウムが含まれたpHが小さい緩衝液(pH5.0)を用いて、30000ダルトンの限外ろ過膜を通しての、安定ポリ(Hb)溶液のダイアフィルトレーションにより、濃縮の後、pHと安定ポリ(Hb)溶液の電解質を生理的なレベルに戻し、安定重合化Hb代用血液を得た。ダイアフィルトレーションは、限外ろ過膜を経てのダイアフィルトレーションによる液体減少量が、濃縮Hb産物のダイアフィルトレーション前の量の6倍となるまで続けた。
【0207】
pHと安定ポリ(Hb)溶液の電解質を生理的なレベルに戻した後、次いで、ろ過し、酸素が除かれたpHが小さい緩衝液を重合化リアクターに添加して、安定重合化ヘモグロビン代用血液を5.0g/デシリットルの濃度に希釈した。次いで、希釈された代用血液を、重合化リアクターから静置混合機及び100000ダルトンの精製用フィルターに通しての再循環により、ろ過され、酸素が除かれた、WFI中に27mM乳酸ナトリウム、12mM NAC、115mM塩化ナトリウム、4mM塩化カリウム、及び1.36mM塩化カルシウムが含まれた緩衝液(pH7.8)に対してダイアフィルトレーションを行った。ダイアフィルトレーションは、代用血液中の、解離条件下でのGPCによる修飾された四量体及び未修飾四量体の量が約10%以下となるまで続けた。
【0208】
精製用フィルターは、限定された浸透ライン(a restricted permeate line)を用いて低い膜間圧の条件下で実施した。修飾された四量体Hb及び未修飾四量体Hbのほとんどが除かれた後、30000ダルトンの限外ろ過膜を通して、代用血液の濃度が130g/リットルの濃度になるまで代用血液の再循環を続けた。
【0209】
次いで、安定代用血液は、低酸素環境かつ酸素漏出の少ない好ましい容器に保存した。
【0210】

実施例2
ヘモグロビン代用血液の保存
実施例1で調製し、600mLのステリコン(Stericon)パッケージに包装したヘモグロビン代用血液を、ホイルラミネートパッケージ(KAPAK 50303、以下「ホイル」と称する)、Cryvac BYV200またはCryovac P640Bパッケージで二重包装した。KAPAK 50303およびCryovac BYV200容器は、前記に詳述している。Cryovac P640Bは、0.6mmのサラン(Saran)被覆した二軸方向性ナイロン層、0.1mmの粘着剤層および2.0mmの直鎖状低密度ポリエチレン密封層からなるラミネート材質である。該材質の酸素透過性は、24時間/気圧/72°F/0%湿度で、約8〜15cc/100スクエア(sq.)である。包装された代用血液を、N−アセチル−L−システイン(NAC)、ビス−N−アセチル−L−(HbO2 )およびメトヘモグロビン(metHb)の濃度および/またはレベルを定時的にサンプリングして、室温で約418日間維持した。結果を以下の表IIに示す。
【0211】
【表2】

【0212】
ヘモグロビン代用血液がホイルラミネートパッケージ(KAPAK 50303)で二重包装された前記実験を本質的に繰り返した。包装された代用血液を、N−アセチル−L−システイン(NAC)、ビス−N−アセチル−L−システイン(NAC2 )、全Hb(THb)、酸化型ヘモグロビン(HbO2)およびメトヘモグロビン(metHb)の濃度および/またはレベルを定時的にサンプリングして、室温で約24ヶ月間維持した。結果を以下の表III に示す。
【0213】
【表3】

【0214】
実施例3
重合化ヘモグロビン分析
ヘモグロビン製剤中のエンドトキシン濃度は、マサチューセッツ州、ウッズホール(Woods Hole)、ケープコッド(Cape Cod)の提携者、レビン(J.Levin)ら,J.Lab.Clin.Med.,75:903−911(1970)により開発された「Kinetic/Turbidimetric LAL 5000 Methodology」方法により決定される。当業者に公知の様々な方法が、特異的細胞膜蛋白質または糖脂質に対する例えば、沈降アッセイ、イムノブロッティング、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)等を用いて、いかなる微量のストロマに対しても試験した。
【0215】
微粒子の計測を、「注入における微粒子物質:単回投与注入に対する大量注入」、U.S.Pharmacopeia,22:1596,1990の方法により決定した。
【0216】
グルタルアルデヒド濃度を決定するために、400μlのヘモグロビン製剤の標本試料をジニトロフェニルヒドラジンで誘導し、それから、100μlの誘導溶液のアリコートを、27℃、速度1ml/分、勾配によりYMC AQ−303 ODSカラムに注入した。勾配は、2つの移動層、水中0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)およびアセトニトリル中0.08% TFAからなっていた。勾配流は、6.0分間の一定の60%のアセトニトリル中0.08% TFA、12分間以上の85%のアセトニトリル中0.08% TFAへの直線勾配、4分間以上の100%のアセトニトリル中0.08% TFAへの直線勾配、2分間の100%のアセトニトリル中0.08% TFAでの保持および45%の水中0.1%TFAでの再平衡化からなる。紫外線検出を360nmで測定した。
【0217】
NAC濃度を決定するために、ヘモグロビン製剤のアリコートを脱気リン酸ナトリウム水溶液で1:100に希釈し、50μlを勾配を有するYMC AQ−303 ODSカラムに注入した。勾配緩衝液は、リン酸ナトリウム水溶液および0.05% TFAを含む水中の80%アセトニトリルの混合物からなっていた。勾配流は、15分間のリン酸ナトリウム水溶液を100%、それから5分間以上の80%アセトニトリルおよび0.05% TFAの混合物を100%への直線勾配、5分間の保持からなっていた。それから、システムを20分間100%リン酸ナトリウムで再平衡化した。
【0218】
リン脂質分析を以下の2つの論文に含まれる方法に基づいた方法により行なった:コラロビック(Kolarovic)ら,「A Comparison of Extraction Methods for the Isolation of Phospholipids from Biological Sources」,Anal.Biochem.,156:224−250,1986およびダック−チョン(Duck−Chong,C.G.),「A Rapid Sensitive Method for Determining Phospholipid Phosphorus Involving Digestion With Magnesium Nitrate」,Lipids,14:492−497,1979。
【0219】
浸透度をマサチューセッツ州、ニードハム(Needham)、アドバンスト インストルメント(Advanced Instruments)社製、Advanced Cryomatic Osmometer、Model #3C2での分析により決定した。
【0220】
全ヘモグロビン、メトヘモグロビンおよびオキシヘモグロビン濃度を、マサチューセッツ州、レキシントン、インストルメンテーションラボラトリー(Instrumentation Laboratory)製のCo−Oximeter Model #482により決定した。
【0221】
Na+ 、K+ 、Cl- 、Ca++、pO2 濃度を、マサチューセッツ州、ウォールサム、ノバ バイオメディカル コーポレーション(Nova Biomedical Corporation)製、Novastat Profile 4により決定した。
【0222】
酸素結合定数、P50を、ペンシルバニア州、サウスハンプトン、TCSコーポレーション製、Hemox−Analyzerにより決定した。
【0223】
温度およびpHを当業者に公知の標準的な方法により決定した。
【0224】
分子量(M.W.)を解離条件下でヘモグロビン製剤についてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を行うことにより決定した。ヘモグロビン製剤の標本試料を分子量分布に対して分析した。ヘモグロビン製剤を、50mM Bis−Tris(pH 6.5)、750mM MgCl2 、および0.1mM EDTAの移動層中で4mg/mlに希釈した。この緩衝液は、ポリ(Hb)からHb四量体を二量体に解離させ、この二量体は分子内または分子間架橋を通じて他のHb二量体と架橋しなかった。希釈試料をTosoHaas G3000SWカラムに注入した。流速は、0.5ml/分であり、紫外線検出を280nmで記録した。
【0225】
本発明の方法にしたがって生成した、獣(OXYGLOBINTM)およびヒト(HEMOPURETM2)Hb代用血液についての上記試験の結果を、それぞれ表IVおよびVに要約した。
【0226】
【表4】

【0227】
【表5】

【0228】
さらに、本方法にしたがって製造した代用血液の評価により、該代用血液が一般的な安全性試験を十分満たすことも示された。一般的な安全性試験において、2匹のマウスおよび2匹のモルモットに代用血液を注射し、その後試験動物を7日間監視した。代用血液を注射したいずれの動物も体重の増加、体重の減少または死亡を示さず、それにより代用血液の一般的な安全性が立証された。
【0229】

実施例4
安定重合化ヘモグロビン代用血液の安定性分析
本発明の方法にしたがって製造された重合化ヘモグロビン代用血液の安定性を、様々な保存温度で24ヶ月間以上評価した。評価された具体的保存温度は2〜8℃、室温(約25℃)、37℃であった。2〜8℃および室温(RT)での保存にとって、安定性の結果(表VIに提供)は、代用血液が代用血液の組成において些細な変化のみで2年間安定であったことを示す。さらに、37℃での保存に対して、代用血液は1年以上の間安定であった。37℃で18ヵ月間保存した代用血液は、しかしながら、25μで5粒子/mlより少なく、500,000ダルトン以上の分子量のHbが11%以上であることを示した。
【0230】
これらの分析において、全ヘモグロビン、メトヘモグロビンおよびオキシヘモグロビン濃度を、マサチューセッツ州、レキシントン、インストルメンテーションラボラトリーのCo−Oximeter Model #482により決定した。
【0231】
【表6】

【0232】
さらに、分子量を、代用血液について高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)を行うことにより決定した。代用血液の標本試料を分子量分布について分析した。ヘモグロビン製剤を、50mM Bis−Tris(pH 6.5)、750mM MgCl2 、および0.1mM EDTAの移動層中で4mg/mlに希釈した。希釈試料をHPLC TosoHaas G3000SWカラムに注入した。流速は0.5mL/分で、紫外線検出は@280nmでセットした。
【0233】
パッケージの完全さを、代用血液を含むパッケージの漏れについて視覚点検を行うことにより評価した。
【0234】

実施例5
イヌ科動物におけるIn Vivo腫脹効果の決定
本研究の目的は、トップローディング投与に続く血漿体積の拡大を測定することにより脾臓摘出ビーグル犬における獣(OXYGLOBINTM)Hb代用血液のin vivo腫脹効果、特に投与されたヘモグロビンのグラムあたりの血管内空間に吸い込まれた水の体積を決定することである。さらに、10% Dextran 40および0.9% 生理食塩水であるファルマシア(Pharmacia)により製造された(RHEOMACRODEXTM−Saline)の比較投与も決定した。
【0235】
2匹のイヌを、規則的な健康スクリーニングおよび少なくとも4週間の環境順応期間の後、この研究に参加させた。イヌを処理の少なくとも3日前に脾臓摘出した。それらを、アトロピンおよびメペリジンHClの組み合わせで前麻酔し、イソフルランの吸入により麻酔した。乳酸化リンガー溶液を外科的方法により10〜20ml/kg/時間で注入した。
【0236】
イヌは使い捨て頭部カテーテルを経由して20ml/kg/時間でHb代用血液(40ml/kg)を受けた。ヘマトクリットの最下点が達成されるまで、ヘマトクリットを投与前、投与後1/4、1/2、1、2、3、4時間またはそれ以後に測定した。
【0237】
イヌを脾臓摘出して、投与後の血漿体積の変化の正確な測定をさせるために一定の血漿体積およびRBC質量を確定した。
【0238】
血漿体積における変化の計算を以下の式を用いて行った:

【0239】
式中、PVは血漿体積、Hct1 は開始ヘマトクリット、およびHct2 は最終ヘマトクリットである。この計算は、循環血液体積中のRBCの数および平均血球体積が一定のままであると仮定して、ヘマトクリットの変化に基づいていた。
【0240】
表VIIに表されているように、ヘマトクリットの最下点は両方のイヌにおいて投与の2時間後に起こった。平均血球体積(MCV)は研究を通じて安定なままであった。
【0241】
【表7】

【0242】
投与後血管内に吸い込まれた液体の体積は、イヌ3503Cおよび14雄に対して、それぞれ6ml/gヘモグロビンおよび9ml/gヘモグロビンであった。合成コロイド溶液(RheomacrodexR −Saline)の投与を、同様の腫脹効果を起こす投与に基づいて計算した。Rheomacrodexは、静脈内投与されたグラム当たり間隙から約22mlの液体を吸引する。
【0243】
Rheomacrodexの計算された比較投与は、30ml/kgおよび15ml/kgHb代用血液に対して、それぞれ、14ml/kgおよび7ml/kgであった。
【0244】
(OxyglobinTM)Hb代用血液により血管内に吸い込まれた液体の体積は8ml H2 O/グラム ヘモグロビンであった。投与の体積は30ml/kgであり、投与におけるヘモグロビンの濃度は13g/dlであったので、投与あたりのヘモグロビンの全量は3.9g/kgであり、Hb代用血液による投与あたりの血管内空間に吸引された液体の全体積は31.2mlであった。
【0245】
合成コロイド溶液は、Dextranのグラムあたり約22mlの水に吸い込まれる。Hb代用血液の比較投与あたりのコロイド溶液におけるDextranの全量は1.4gであった。したがって、コロイド溶液の比較投与あたりの血管内空間に吸い込まれた液体の全量は14mlである。
【0246】

実施例6
イヌ用量応答研究
急性正常血液量血液希釈後、60分および24時間の脾臓摘出したビーグル犬におけるイヌ赤血球ヘモグロビンおよび酸素運搬に関連した、動脈酸素含有量に関して、10%デキストラン40および0.9%生理食塩水である(レオマクロデックス(RHEOMACRODEX)−生理食塩水、Pharmacia製)合成コロイド溶液と比較し、本発明の(OXYGLOBINTM)Hb代用血液の薬剤効果および獣医的薬剤応答を決定するために、この研究を行なった。
【0247】
急性正常血液量血液希釈は、外科的な失血による貧血の臨床的な状況に似せた実験モデルである。重度の貧血(Hct=9%、Hb=3g/dl)をこの方法により作り出し、酸素運搬の絶対必要量を維持した。酸素運搬および酸素含有量は、大量出血ですぐに減少する。
【0248】
正常血液量希釈モデルを開発する際に、対照イヌに生じたような体積拡大のみにより、またはヘモグロビン溶液で処理したイヌに生じたような動脈酸素含有量の増加に関連した体積拡大により酸素運搬を回復する治療法は、結果として死ぬような血圧と心臓血液搏出量の不可逆的な減少を避けるために、約10分以内に、ヘマトクリットを9%にしなければならないことがわかった。
【0249】
目標ヘマトクリットに到達する5分以内に、その血液体積をデキストラン40溶液で広げたにもかかわらず、本研究における12匹の対照イヌのうち2匹が投与の間または後に死んだ。これらのイヌの死は、激しい急性失血の臨床的状態を繰り返す実験モデルの厳しさを反映している。
【0250】
通常の健康スキャニングおよび少なくとも4週間の新環境順応期間の後に、30匹のイヌを本研究に投入した。治療法を、3つのイヌの応答(A、BおよびC)を用いてずらし、各応答に、1匹のイヌ/性別/群を含めた。イヌを無作為に治療第1日の32日前で5群(3匹のオスおよび3匹のメスからなる6匹のイヌ/群)に割り当てた。イヌを、群間で同等の分配ができるような方法を用いて、体重に基づく乱塊法によりそれぞれの群に割り当てた。オスおよびメスを別々に無作為化した。異常な臨床的徴候または臨床病理データ等の許容外な前処理データを持ついかなるイヌをも、同じ環境条件下で維持した予備のイヌと置き換えた。
【0251】
試験物/対照物に1回の静脈内注入により処理した。注入の割合を注入ポンプで調整した。実際の1時間あたりの注入体積は、各イヌの最も最近の体重に依存した。
【0252】
ヘモグロビン溶液の最高投与量は、正常血液量(normovolemic)をもつイヌにおける体積拡大による急性心臓血管効果の安全上限値に基づいた。中程度の投与量を、投与応答曲線の形状を決めるために選択した。最低投与量は、イヌにおける体積および血流力学の効果により決定される臨床的に適切な投与の下限値に基づいた。
【0253】
脾臓萎縮による増加した循環系RBC量が実験モデルへ影響するのを避けるために、治療の少なくとも7日前に各イヌに脾臓摘出を施した。ヘモグロビン溶液による治療当日に、各イヌをイソフルランの吸入で麻酔し、1回呼吸体積が20〜25ml/kgである部屋の空気を用い、機械的に換気をした。この工程の間、動脈pCO2 を約40mmHgに維持するように換気の割合を調整した。イソフルランの内部(薬物)有効期消滅(end−expired)濃度を測定し、イヌどうしの間で麻酔水準が有効である対照を提供するように制御した。血流力学的機能および酸素輸送パラメーターの測定のために、イヌに機械を備えつけた。肺動脈内の流れの方向に沿ったカテーテルの配置を、血圧分析および血圧トレーシングにより確認した。熱希釈心臓血液搏出量能を有する2管腔カテーテルを、血圧測定および血液投与中止用の動脈系を提供するために大腿部動脈に配置した。体積置換および試験物/対照物投与用に、カテーテルを頭部静脈内、またはもし必要なら他の静脈内に配置した。
【0254】
各イヌは、手術の1日前に予防のために、および脾臓摘出後3日間、1日1回抗生物質(プロカインペニシリンG)の筋肉内注射を受けた。V−スポリン、局所的抗生物質(ポリミキシンB、バシトラシン、ネオマイシン)を必要に応じ、1日1回手術部に適用した。
【0255】
機械を備えつけた後、約40mmHgのpCO2 に達する血流力学安定性および基準線測定値の収集を行なった。それから、イヌから採血し同時に約1.6〜2.3倍量の乳酸化Ringer’s溶液で投与中止し、等容量の(isovolemic)状態を維持することで、急性正常血液量希釈のモデルを作製した。ほぼ基準値で肺動脈楔入圧を維持することで、等容量な状態を達成した。ヘモグロビン濃度が約30g/l(3.0g/dl)になるまで、血液投与中止/体積置換を約45〜90分で行なった。乳酸化Ringer’s溶液を、重力静脈内セットおよび注入バッグ周辺の加圧帯を用いて、急速に注入した。もし、急性貧血の誘導後および投与開始より先5分間より多く、動脈最大血圧が50mmHg以下であるなら、そのイヌを却下し、同じ環境条件下に維持されている予備のイヌとかえた。
【0256】
コロイド対照とヘモグロビン溶液の投与を表VIIIに示すように行った。血流力学測定を採血前、投与前、投与直後、および投与後60分および24時間で行った。60分後測定の後、イヌを麻酔から回復させ、再び血流力学測定のために機械を備えつけ、投与後24時間で行った。
【0257】
【表8】

【0258】
共変量として採血前または投与前どちらかの値を用いて、分散分析(ANOVA)または共分散分析(ANCOVA)により、全ての血流力学パラメーターを統計学的に分析した。投与した溶液の体積の効果、Hb代用血液の効果(薬剤効果)およびHb代用血液の投与応答(投与効果)を試験するために、特定の線型対比を構成した。これらの試験を、試験群間での差が0.05レベルで統計学的に有意であるとするパラメーターのみについて行った。各群について、選択された時間の時点における特定の変数の比較をt検定により行った。
【0259】
動脈酸素含有量は、本研究における効力の1つの基準であった。動脈酸素含有量は、細胞および血漿ヘモグロビンの酸素運搬能および血漿中に溶解した酸素の尺度である。血漿ヘモグロビンの非存在下では、飽和細胞ヘモグロビンにより運搬される酸素量および吸入酸素分圧から動脈酸素含有量を算出する。血漿ヘモグロビンは、本研究において酸素含有量に有意に関わっていると予想されたので、酸素含有量をLexO2Con−K装置(チェストナッツ ヒル、マサチューセッツ州)を用いて直接測定した。不必要なことであり、動脈酸素含有量の測定において、かわりに増加した酸素濃度の効果を混同することを避けるために、実験中に酸素に富んだ空気を投与しなかった。
【0260】
平均動脈および静脈酸素含有量は、それぞれ貧血を誘導した後の全ての群で約4〜8倍減少した。動脈酸素含有量は、Hb代用血液処理した全ての群における投与前の値に比べ、投与後60分でかなり増加し、中程度および高い投与群に投与した後24時間ではかなり増加したままであった。動脈または静脈の酸素含有量は、どの対照群でも投与後に変化がなかった。
【0261】
図2に示すように、投与後60分および24時間の対照群と比べ、Hb代用−血液処理された群において動脈酸素含有量を増加させた。線形投与応答が、投与後60分および24時間で見られた。有意な体積効果を投与後60分の動脈酸素含有量で検出した。
【0262】
また、投与後60分および24時間で対照と比べて、静脈酸素含有量もまた、Hb代用血液処理した群で増加した。この増加は、投与後60分で線形投与応答を示したが、24時間では示さなかった。
【0263】
投与後60分の動脈−静脈(A−V)酸素含有量の違いについてHb代用血液処理した群に関して観察された投与効果は、薬剤効果の非存在に基づく有意な体積効果を生じ、投与後60分の対照群における体積効果の観察結果と同じであった。Hb代用血液処理した群は、有意な線形投与応答をもつコロイド対照に比べ、24時間でA−V酸素差に有意な増加を示した。該A−V差は、心臓血液搏出量の観点から、解釈されなければならない。投与後24時間で、対照群におけるA−V差は、Hb代用血液処理した群のものより有意に低かった。この違いの一つの可能性のある説明としては、対照群のイヌが末梢組織の酸素消費必要量を満たすためにはより高い心臓血液搏出量をあてにしなければならなかったことがあげられる。Hb代用血液処理した群は、増加した心臓血液搏出量を引き起こすことなしに、投与後24時間のA−V差が末梢組織の必要量を満たすのに十分な大きさを維持した。
【0264】
動脈酸素含有量に加えて、イヌRBCヘモグロビン(CaO2 /g RBC Hb)の投与に関して標準化された全動脈酸素含有量を本研究で試験した。RBCヘモグロビンは全ての群で一定であったので、この比較を投与する群の間で動脈酸素含有量の違いを示すために行った。血漿または全ヘモグロビン濃度を動脈酸素含有量の可能性のある相関関係は、有効な効力の臨床測定値を提供した。図3に示されるように、投与後60分および24時間で、全てのHb代用血液処理された群(24時間で低い投与群を除く)は、投与前の値に対してCaO2/g RBCヘモグロビンの有意な増加を示した。RBCヘモグロビンを与えたものに関する動脈酸素含有量は、投与後60分および24時間の間のコロイド対照において有意に違わなかった。
【0265】
赤血球ヘモグロビンを与えたものに関する全動脈酸素含有量は、有意な線形投与応答をもつ投与後60分のコロイド対照に比べ、Hb代用血液処理した群で有意に増加した。また、有意な投与効果は投与後24時間で生じ、有意な線形投与応答を有していたが、薬剤効果はさほど有意ではなかった(P<0.06)。
【0266】
酸素運搬は、他の効力の基準であった。酸素運搬を動脈酸素含有量および心臓血液搏出量に基づいて計算した。従って、酸素運搬は、心臓血液搏出量に影響する全ての生理学的因子により作用される。この研究に選んだ対照は、合成コロイド(レオマクロデックス−生理食塩水、Pharmacia製)であり、それは10%デキストラン40および0.9%生理食塩水であり、それが血管内体積を広げるが、酸素を運搬することは公知ではない。対照は、Hb代用血液におけるヘモグロビンのコロイド特性と当量の類似した体積拡大を提供した。
【0267】
Hb代用血液の各投与は明瞭な体積効果を示すと予想されたので、データが異なる投与の薬剤効果のみを反映するように、デキストラン溶液の2回の投与を、体積効果についての対照として使用した。この比較を低および中程度の投与について行った。コロイド対照の投与を、実施例5の結果から示されるように、低および中程度の投与試験物の生体内膨張効果の当量比較を提供するデキストラン40の投与に基づいて選択した。
【0268】
体積効果をコロイド中程度投与量(14ml/kg)とコロイド低投与量(7ml/kg)との間の平均値の差を用いて、統計学的に定義した。薬剤効果を各Hb代用血液処理した群とそれに対応するコロイド対照を比較することで決定した。線形投与応答が、低および高投与量Hb代用血液処理した群の間に見られた。
【0269】
酸素運搬を方程式に従って計算した:DO2 =CO×CaO2 ×10/kg(ここで、COは心臓血液搏出量、CaO2は動脈酸素含有量である)。予想されるように、全ての処理群において貧血を誘導した後、DO2 において平均2〜3倍の減少が全ての群で生じた。酸素濃度は、基準酸素消費の維持が心臓血液搏出量での増加に起因するのに十分なくらい減少し、酸素の抽出を増加して、結果として低い静脈酸素含有量を生じた。図4に示されるように、酸素運搬は、投与前の値に比べ、投与後60分で低投与量Hb代用血液処理した群において約30%、中程度および高Hb代用血液処理した群において100%より多く増加した。その差は、全ての3つの投与群について有意であった(P<0.05)。対照群は、この時有意な差を示さなかった。投与後60分で、DO2は、重要な薬剤で処理した全ての群および線形投与応答をもつ投与効果の間に有意な違いを示した。24時間で、酸素運搬の差は群間で示されなかった。全てのHb代用血液処理した群についての投与後60分の酸素運搬の改良は、それらに対応するコロイド対照を比較して、心臓血液搏出量の適度な増加に加えて、動脈酸素含有量の増加に関連する投与量に基本的に依存していた。
【0270】
酸素消費を平衡式に従って計算した:VO2 =CO×CaO2 ×10kg。全ての群におけるDO2の平均2〜3倍の減少は貧血の誘導後に生じた。統計学的な有意差は、Hb代用血液処理した群または対照群の間、または投与前を投与後の値を比較したときの群内で記録されなかった。
【0271】
全群についての酸素抽出率(VO2 /DO2 )は、貧血誘導後の約3倍の増加を示した。酸素抽出率は、対照群に比べ、投与後60分の全てのHb代用血液処理した群で、投与量に依存した形で有意に減少された。Hb代用血液処理した群および対照群の間には投与後24時間で有意差は見られなかった。
【0272】
平均心臓血液搏出量は、貧血の誘導した後の全ての群において10%〜39%の間で増加した。心臓血液搏出量は、コロイド対照群における出血前値に比べ、投与後24時間で有意に増加したが、Hb代用血液処理した群では増加しなかった。コロイド低投与量および中程度投与量の群の間で心臓血液搏出量に有意差を与えるような有意な体積効果が、投与後60分で明白になった。心臓血液搏出量の増加は、同じように、投与後の血管内体積の拡大による増加した脈拍体積または重度の貧血のストレスによる交感神経の増加した正常な状態に関連していた。Hb代用血液低投与量おより高投与量の間での有意な投与応答は、投与後60分では明らかであるが、24時間では明らかではなかった。Hb代用血液処理した群およびコロイド対照群の間の心臓血液搏出量の差は、投与後60分および24時間で見られなかった。
【0273】
肺動脈楔入圧(PAWP)は、貧血の誘導の間で有意に変化しなかった。PAWPは、投与前の値に比べ投与後60分で、低投与量コロイド群において有意に減少し、中程度投与量コロイド群において変化しないままであった。中程度および高投与量Hb代用血液処理した群のPAWPは、投与前の値に比べ投与後60分で、線形投与応答に増加した。増加したPAWPは、投与後60分で血管内体積の投与量依存的な増加を反映した。投与後60分または24時間で、Hb代用血液処理群および対照群の間では、有意な薬剤効果を検出しなかった。投与後60分でコロイド対照群において有意な体積効果を検出した。
【0274】
動脈の収縮期血圧、拡張期血圧および平均血圧は、貧血を誘導した後全ての群で有意に減少し、それから投与後直ぐに有意に増加した。貧血誘導後の動脈の収縮期血圧の減少は、減少した血液粘性による末梢血管抵抗性の減少、そして結果として貧血に関連していると思われる。投与後60分で、両コロイド対照群の動脈の収縮期血圧、拡張期血圧および平均血圧は、投与前の値と有意に異ならなかった。低投与量のコロイド対照の収縮期血圧、拡張期血圧および平均血圧は、投与後24時間で投与前の値に比べ有意に増加した。対照的に、収縮期血圧、拡張期血圧および平均血圧の増加は、投与前の値に比べ、投与後60分および24時間で全てのHb代用血液処理した群において統計学的に有意であった。Hb代用血液処理した群の収縮期血圧、拡張期血圧および平均血圧は、投与後60分では対応するコロイド対照群よりかなり高かったが、24時間では高くなかった。
【0275】
肺動脈の収縮期血圧、拡張期血圧および平均血圧の有意な増加は、投与前の値に比べ、投与後60分の中程度および高投与量Hb代用血液処理した群において観察された。その増加は、肺動脈の拡張期血圧について中程度のHb代用血液処理した群において、投与後24時間で持続していた。さらに、低投与量コロイド群は、平均肺動脈血圧について投与前の値と比べ、投与後24時間で統計学的に有意に増加した。この増加は、臨床的に重要であると考えられた。Hb代用血液の投与後60分での全身の動脈の収縮期血圧および拡張期血圧の増加は、投与前の値に比べ、Hb代用血液の直接的な薬剤効果であった。拡張期血圧は、おそらく減少した肺末梢血管の抵抗性の結果、コロイド対照群において変化しないままであった。
【0276】
投与後60分または24時間での肺動脈の収縮期血圧について、有意差は、Hb代用血液処理した群および対照群の間で見られなかった。対照的に、肺動脈の拡張期血圧および平均血圧は、投与後60分の体積効果、薬剤効果、および投与効果に関して有意な違いがあったが、24時間では有意な違いはなかった。
【0277】
全ヘモグロビンは、出血により約4倍以上減少した。Hb代用血液処理した群は、投与後60分または24時間で対応するコロイド対照群に比べて、全ヘモグロビンについて投与量に依存した増加を示した。
【0278】
血漿ヘモグロビン濃度は、投与後60分および24時間で対応したコロイド対照群に比べ、Hb代用血液処理した群において投与量依存した形で有意に増加した。全Hb代用血液処理した群の投与後の血漿および全ヘモグロビン濃度の増加は、対応するコロイド対照と比較して、Hb代用血液のヘモグロビン濃度に特徴を有していた。投与量依存した有意性の増加は、24時間持続し、動脈酸素含有量の持続性の増加に関連していた。
【0279】
要約すると、Hb代用血液を用いた治療への応答は、線形的であり、例えば、投与後60分で、Hb代用血液の投与量が高くなればなるほど、対応するコロイド対照に比べ、酸素運搬および血流力学の改善が大きくなった。部屋の空気を呼吸している間、維持された動脈酸素含有量および正常な臨床的な徴候が、30ml/kgおよび45ml/kg投与量のHb代用血液で処理された群において24時間持続するHb代用血液の有益な生物学的効果を支えている。Hb代用血液のクリアランスは、投与後24時間で酸素運搬および血流力学的効果に見られる変化の原因であるようである。結論として、この研究から得られる結果は、30〜45ml/kgの範囲にわたる投与量の選択を支持している。これらの群への投与は両方とも、効力のパラメーターにおいて対応するコロイド対照群と統計学的に有意な差を示し、その投与量応答は線形であった。
【0280】
この投与範囲の臨床的な理論的解釈は、重度の貧血イヌ(例えば、ヘマトクリット<15%標識臨床的徴候)が改善された動脈酸素含有量および酸素運搬の線形投与応答から示されるように、より高い投与量から利益を得るという事実に基づいている。しかしながら、より持続力のある投与量は、血管内体積の過負荷にかかり易くしたイヌに示された。Hb代用血液処理した群に投与後60分で見られる肺動脈楔入圧および肺動脈圧の投与量依存的な一過性の増加は、イヌのこの集団において高い投与量の使用を制限するであろう。従って、30〜45ml/kgの範囲の投与は、貧血の程度および血管内体積の状態を規定するように広い集団のイヌに効果があるだろう。
【0281】

実施例7
ヒト用量応答研究
本研究は、Hb代用血液(以後HBOL)の静脈投与の増加の割合の安全性および耐性を、ヒトにおける血流力学、神経内分泌および血液学的なパラメーターに基づいて評価するために行った。試験被験者は、18−45才の年齢間の正常な健康な成年男性(70−90kg)であった。本研究を通じて、試験被験者は一日あたり55%炭水化物類、30%脂肪(2:1の重合不飽和脂肪:飽和脂肪の比)、15%蛋白質および150mEqのナトリウムの制御された等カロリーの規定食にした。カフェイン含有飲料を避け、液体摂取は、少なくとも3000mls/日であった。また、薬物の相伴う使用も避けた。さらに本研究を通じて、試験被験者はアルコールおよび煙草を摂取しなかった。
【0282】
調べた12被験者を、3つの群に分けた。それぞれの試験群において、3被験者がHBOLを受け、1被験者がコントロールとしてリンガー乳酸を受けた。それぞれの試験群は異なる割合のHBOL注入をした。本研究では、単純盲検として、30日間隔にわたって、割合の漸増研究を行った。
【0283】
本研究の1日目において、入院患者相中、それぞれの被験者は、利き腕でない手の橈骨動脈に小さい径の動脈カテーテルを挿入した。挿入位置は、殺菌液(アルコールおよび/またはヨード)で清潔にし、次いで1%−2%の少量のライドカイン麻酔液を橈骨動脈の部分上に、皮下注射した。動脈カテーテルは血圧を測定するため、および血液ガス評価を容易にするために挿入した。1から2時間後、全ての被験者は、一つの大きい内径の静脈カテーテル(肘前窩中に16−径ニードル)を片腕の静脈に据えた。それぞれの被験者は、次いで15分以下で出た750ml(1.5ユニット)の全血の瀉血を行い、次いで2時間以上、2250mlのリンガー乳酸の注入により等容量の(isovolemic) 血液希釈を行った。
【0284】
45g(346ml)のHBOLが、次いで標準80μmの血液フィルター、5μmのフィルター、および腕の静脈中の大きい内径の静脈カテーテルを通す一連の無菌技術を用いて、試験群1、2および3のそれぞれの被験者に、それぞれ0.5gm/分、0.75gm/分および1.0gm/分の割合で静脈注入した。
【0285】
同時に、それぞれの被験者は、同一基準のHBOL注入後の最初の28時間にわたって繰り返しおよびしばしば行われた連続的な肺動脈の機能試験、心臓機能評価および多岐の血液学、化学および尿検査の実験試験について橈骨動脈カテーテルにより浸入測定をうけた。
【0286】
その後、外来患者相(2日目から29日目)において、実験研究、生命徴候、ECGおよび医学的現象を、放出後の最初の4日間は毎日、およびその後1ヵ月の間は1週間ごとに行った。
【0287】
血流力学は、HBOL−処理群(注入後)における収縮期圧、拡張期圧および平均動脈圧について、1日目の対照より一般的に著しく値が高かった。患者活動(例えば、食事中またはバスルームを使用しているとき)および日週期と同一基準の血圧データにおける変化性を注目したが、一般的にHBOL−処理被験者は、1日目のコースの間だけの対照より大きい、収縮期血圧(約5−15mmHg)、拡張期血圧(約5−10mmHg)および平均動脈圧(約10mmHg)の値を有する。ピークに達する傾向がある値は、8−12時間の間に、睡眠中のベースラインへの回帰および動脈カテーテルの除去を伴って、影響する。パルスは一般的に1日目中の対照に比べ、全てのHBOL処理群において約10ビート低かった。パルス低下の最下点は、注入の最初の15分以内に見られた。値は、24時間後の全ての試験群で同様だった。
【0288】
心臓指数は、4時間を通した対照より低い1 L/分/m2 まで残存させた注入の最初の時間の間に約1−2 L/分/m2 衰え、次いで4時間でベースラインに戻った。心臓指数は、さらに患者活動の時間の間にも増加した(上記)。
【0289】
全末梢抵抗は、血圧変化に平行するが、しかしながら、値は2時間以内にベースラインに戻った。全末梢抵抗における増加および心臓指数における減少を伴う全身の血圧の一過性の増加は、予期できない。投与の割合およびこれらの血流力学的応答の程度の差は無く、介入が示唆されないことを意味することは重要である。
【0290】
肺機能試験(肺活量および肺の体積の複合的な測定を含む)および動脈血液ガス測定は目立たなかった。注目に値することは、HBOL−処理群に見られる増強された拡散容量であった。拡散容量における10−15%の増加は、24時間まで対照における10%の減少に比較して統計的に顕著であった。全ての群を処理した瀉血および血液希釈の程度のため、これらの見地はとりわけ重要である。
【0291】
血液学的研究において、予想されたより他に、瀉血および血液希釈手順を有するヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数および血清蛋白質、血液学および血清化学実験試験における一過性の減少は目立たなかった。例外は、HBOLを与えた後、それぞれ、6および48時間によりピーク値を示す血清鉄およびフェリチンであった。
【0292】
血清化学測定は、血清トランスアミナーゼおよびリパーゼの一過性の増加を有する一人の被験者(#10)を除いて、目立たなかった。該被験者がこれらの酵素の上昇の時と同等の、いかなる相伴う臨床的に顕著な医学的現象(即ち、えん下困難または腹の痛み)をも有しないことに着目することが重要である。これらの実験異常性の確かな病因は明らかではないが、以前の研究は、オッジ括約筋または肝胆汁管および大膵管系の他の部分の一過性の準臨床的な痙縮が関与するであろうことを示唆する。これらの変化は一過性であり(および腹の不快感を伴わなわない)、続発性を表さなかったことに注目することが重要である。顕著な変化は被験者#10の投与後の胆嚢の超音波において表れなかった。
【0293】
尿検査は、本研究を通じて目立たなかった。本研究中の被験者の検出しうる尿のヘモグロビンはなかった。さらにクレアチニン清掃率はかなり高く、予期したように、血液希釈段階中で、尿のアデノシンデアミナーゼ結合蛋白質、電解質(ナトリウム、カリウム、塩素)、鉄、微アルブミン、NAG(N−アセチル−ベータ−グルコサミニダーゼ)および尿の尿素窒素は目立たなかった。
【0294】
多くの薬理力学パラメーターにおいて明らかな変化は、投与割合の機能として観察されなかった。全ヘモグロビンのサイズ除外(ゲル濾過)クロマトグラフィー(SEC)の解析およびヘモグロビンの明らかな分子量フラクションのためにHBOLの注入の開始をする前およびした後、連続的な血液試料および蓄積する尿試料を集めた。散在性の血漿二量体フラクション濃度だけが、いかなる薬理力学的解析をも妨げることを観察した。統計的に有意な差(p<0.05)が4量体の体積の分布(割合の増加を伴う減少)、4量体の達した最大濃度(割合の増加を伴う増加)および4量体の最大濃度発生(割合の増加を伴う減少)において観察された。
【0295】
観察された医学的現象は、瀉血(例えば、血管迷走神経の症状の発現)、多岐の肺動脈機能試験(空気えん下、おくびまたは腹の「ガス」)、動脈内カテーテル挿入(例えば、痛みまたは部位全体の刺痛)、もしくは腹の不快感(例えば、鉄補給の摂取に関連する)、に関係する予測された知見と一致した。非特異的な、一過性の腹の「ガス」の背景があるように思われるが、明白な腹の痛みまたはえん下困難の場合はなかった。さらに、血清トランスアミナーゼまたはリパーゼにおけるいかなる変化を伴うこれらの症状の関連性はなかった。
【0296】
要約すると、HBOLはよく許容された。血圧、および注入の最初の2時間中の心臓指数における衰退に比例した全末梢抵抗において小さい一過性の増加があったが、血流力学は目立たなかった。拡散容量における増加は、最初の24時間の間の対照よりHBOL−処理した群においてより顕著に高かった。
【0297】

実施例8
分類分けした自転車運動試験における人間に対するHBOLの効果
本研究は、HBOLの自己輸血を与えた被験者の運動容量を評価するために行った。特異的な終点は、肺機能(例えば、拡散容量および乳酸レベルおよびpO2 )、血流力学(例えば、心拍度数、心臓指数および血圧)および運動耐性(例えば、持続期間、作業負荷および無酸素限界値)を含んだ。本被験者は、6人の正常で健康な男性で、年齢18−45才であった。一人の被験者は、本研究において15分間以内の瀉血の体積を得る機能不全(failure)の為の研究に置き換えた。該研究はランダム、単純盲検、2重交差研究として行った。
【0298】
全ての被験者は、リンガー乳酸〔3:1〕、および自己輸血(ATX)または45gmsのHBOLのいずれかの次に750mlの瀉血を有した。該ATXまたはHBOLは0.5gm/mlで90分で行った。自転車運動ストレス試験は瀉血に先立った日およびATXまたはHBOLの注入後約45分に行った。同じ手順を1週間繰り返した後、被験者を反対の処理に移した。
【0299】
投与日(1日目および8日目)において、すべての被験者は、一つの橈骨動脈への動脈内カテーテルの挿入、噴門遠隔操作およびインピーダンス心臓曲線への付加、および次いで750mlの全血の瀉血(PBX)(<15分間)を有した。2250mlのリンガー乳酸(RL)により、2時間以上(等容量血液希釈相)行った。被験者は次いで、HBOL(45gms〔約346−360ml〕、0.5gm/分の速度で90分以上)またはATX(110−120gmsのヘモグロビン〔約750ml〕、HBOLと同じ速度および持続)のいずれかを受けた。BESTはいずれかの注入終了後、約45分で行った。動脈血液ガス、血液学、化学および尿試験の連続的な測定は1日目および8日目の24時間周期の間、徹底的に行った。連続的なフォロー−アップは、投与、および全ての投与が終わった後一ヵ月間の間、外来患者ごとに行った。
【0300】
被験者は、HBOLおよびATX周期間で、似たようなレベルで 運動することができた。無酸素限界値での酸素摂取(VO2 )および二酸化炭素生成(VCO2 ) は、ほとんど同一であった。また、METS、ワット、パルス(最大パルスの%として)、無酸素限界値までの時間、一回呼吸量(tidal volume)(VT)および分換気(VE)における実際の運動負荷も似ていた。動脈血液ガスは、HBOLおよびATX周期間の間で似ていた。乳酸の増加を伴うpHおよび重炭酸の小さい減少は無酸素限界値で予測された知見に一致した。これらの自転車試験の結果は、運動容量(無酸素限界値に達するまでの時間および運動負荷として定義した)はベースライン、および自己輸血またはHBOLいずれかの注入後で似ていた。すなわち、血流力学は収縮期圧、拡大期圧および平均動脈圧のHBOL周期の間でかなり高い値(約5mmHg)で注目された。血圧の増加と同基準のものとしては、一般的に最初の4時間以内の全末梢抵抗における増加があった。心臓指数はHBOL周期の間で減退した(〜0.5L/分/M2 )。パルスはATX周期よりHBOLの間で、約5−10ビート低かった。これらの知見は、HBOL研究で観察され、臨床的な関係はほとんど無かった。
【0301】
肺機能試験はATXおよびHBOL注入後の拡散容量のベースラインを超える14%増加以外は目立たなかった。被験者はHBOLおよびATX周期の間に似た運動容量に達することができた。運動ピーク(無酸素限界値)の間の動脈血液ガス測定は、両方の周期において似ていたが、動脈pO2 はHBOL周期の間でより高い傾向があった。血漿乳酸レベルはATX周期よりもHBOL周期の間でより低かった。休止している代謝の技術(art )測定は、酸素消費量、二酸化炭素生成および代謝のエネルギー消費がATX周期よりもHBOL周期の間でより多かったことを示した。前記の比較は、およそ1gのHBOLから3gのATXである。VO2およびVCO2 についての観察に共役した拡散容量は、より多くの酸素がATXよりもHBOLのグラムあたりの組織レベルに届けられていることを示す。拡散容量はヘモグロビンレベルによって直接に変化することが一般的に考えられるが、しかしながら、1gの血漿ヘモグロビンが3gmsのRBCヘモグロビンと同じように拡散容量を増やすという示唆がある。
【0302】
実験研究は、小さいが、HBOL周期の間のALT、AST、5’−ヌクレオチダーゼ、リパーゼおよびクレアチンキナーゼの一過性の増加が顕著であった。異常な尿の知見は無かった。
【0303】
血液学的研究は、実施例7のものと一致した。
【0304】
観察された医学的現象は、瀉血(例えば血管迷走神経のエピソード)、多岐の肺機能試験(おくびまたは腹の「ガス」)、動脈内カテーテル挿入(例えば、痛みまたは挿入部位全体の刺痛)または1ヵ月のコースにわたって正常な被験者に観察されるかもしれない非常に多くの毎日の病気(例えば、頭痛、上部気道疾患または風邪)に関係する予測された知見と一致した。腹の「ガス」および中央心窩部における血圧を有するが、えん下困難を有しない1人の被験者(被験者#105)が、以前のHBOL研究において観察された他の胃腸の症状の訴えを示唆する。L−アルギニンは、ヘモグロビンが内在性の一酸化窒素の機能(一酸化窒素は胃腸の平滑筋、特に食道および腸における緩和において絶対必要である)の邪魔をすることができるという概念に基づいて治療の基準として使用した。L−アルギニンは一酸化窒素シンターゼが一酸化窒素を生成する上での基質である。理論的に、もし一つがヘモグロビン由来の一酸化窒素の還元を有した場合(恐らくヘムと一酸化窒素の結合)、その時、L−アルギニンの投与が利益になる。明らかに被験者は、約2時間のL−アルギニンを有する被験者の症状からの一過性の軽減によって注目された。これは、L−アルギニンの血漿半減期が約2時間であるため、予想できない知見ではない。残念ながら、いくつかの副作用(悪心および嘔吐)が生じ、注入を止めた。我々は、彼にコリン抑制性、抗痙攣性の薬剤、ヒヨスチアミンの二回投与をすることを決めた。該被験者はさらなる症状の訴えおよび続発症を有さなかった。
【0305】
要約すると、HBOLは改善された酸素運搬、および運動の間および休憩中の使用に関連した。HBOLは、相似した血流力学のスペクトラム、安全な実験結果、薬理力学および明らかに観察されたことに対する医学的な現象を生み出した。L−アルギニンを有する介入が胃腸の症状の逆転を生み出すが、その用途は、悪心および嘔吐により限定された。しかしながら、コリン抑制性の療法の使用は、遭遇した胃腸の症状に対する処置に価値があった。
【0306】

実施例9
血液希釈後の重合化ヘモグロビン溶液の注入による組織酸素飽和の研究
本研究において、左後脚筋肉(腓腹筋)について8匹の犬実験群内で、無−酸素産生溶液を有する等容量血液希釈により麻酔された動物に対する重合化ヘモグロビン溶液の注入の影響を決定するために、局所的な組織酸素飽和レベルを測定した。
【0307】
局所的な組織酸素分圧は、骨格の筋肉末端から露出した大腿部の動脈での少なくとも200局在pO2 値を測定し、および次いでそれぞれの測定ポイントのヒストグラムにおけるpO2値を表示するために、シグマ−pO2 −ヒストグラフ(モデル番号:KIMOC6650、エッペンドルフ−ネゼアラー(Netherler )−ハインツ GmbH、ハンブルグ、ドイツ)を用いて決定した。
【0308】
それぞれの測定ポイントで、エッペンドルフ−pO2 −ヒストグラフは、ガラスで絶縁され、テフロン被覆された金微陰極(microcathode)を含有するバネ鋼ケーシングを有する酸素針プローブを用いて、酸素分圧をポーラログラフィー的に測定した。該酸素針プローブは、銀/塩化銀陽極に向かって−700mVで荷電し、それを、該酸素針プローブ挿入部位の近くの皮膚に付着させた。生じた電流は電極チップの酸素分圧に比例し、このように局在の組織酸素飽和の測定が与えられる。
【0309】
局所的な酸素飽和測定はマイクロプロセッサー制御されたマニピュレーターの補助で自動的に得られ、それが一連の「ピルグリムステップ(pilgrim steps )」における組織を通した酸素針プローブを動かし、典型的には、前方移動由来の組織の圧迫を和らげるために、0.3mmの後方移動を行った後の1mmの前方移動からなり、実質のpO2値のサンプリングを伴っていた。それぞれの組織酸素飽和測定の終了時に、針プローブは、それぞれの測定が乱されていない、傷付けられていない筋肉組織でのみ行われるような新しい組織位置に移動した。
【0310】
本研究において、気管内の挿管法の30分前に麻酔の誘導のために、5mg/kgケタミン(ケタネストTM、パーケデービス、ドイツ)および2mg/kgキシラジン(ロンプンTM、バイヤー、ドイツ)を筋肉内注射により8匹の犬に与えた。機械的な換気は酸素中70%の一酸化窒素および1.0%イソフルランを用いて行った。換気は、34および38mmHg間の端−一回(end-tidal )pCO2 を維持するようにセットした。
【0311】
左大腿部動脈に、動脈血圧の浸入測定および血液サンプリングのためにカニューレを挿入した。7−スワン−ガンツカテーテルを、肺動脈圧、中央静脈圧および肺キャピラリー楔圧を測定するために、左大腿部静脈を通して肺動脈に据えた。3mmのカテーテルを、血液交換、および重合化ヘモグロビン溶液の注入のために右外部の頸静脈および左大腿部静脈に据えた。
【0312】
外科手術後、麻酔は0.025mg/kg/hrフェンタニル(ヤンセン、ドイツ)および0.4mg/kg/hrミダゾラム(ダルミクムTM、ロッシュ、ドイツ)の継続注入により維持した。筋肉緩和は、0.2mg/kg/hrベキュロニウム(ノーキュロンTM、オルガノン、ドイツ)を用いて達した。換気は空気中30%酸素にセットした。
【0313】
犬は、ベースラインリーディングをとる前の40分間平衡化させた。ベースラインリーディング後、それぞれの犬は、約35−45%のベースラインヘマトクリットから約25%のヘマトクリットのヘタスターチ、次いで約5%の増加で最終約10%のヘマトクリットのステップワイズで等容量に血液希釈した。約25%、20%、15%および10%のヘマトクリットで、関連する血流力学および組織酸素分圧を測定した。
【0314】
約3g Hb/dL血液の血液におけるRBCヘモグロビン濃度と等量である約10%のヘマトクリットに達した後、それぞれの犬をついで重合化ヘモグロビン溶液(HBOC−201、またヘモピュア2TM溶液、バイオピュア社、ボストン、MA)を測定した全ヘモグロビン(RBC由来Hb+重合化Hb溶液由来Hb)を増やすに充分な三回の増加投与で約0.6−1.0g/dL/投与によって注入した。さらなるヘモピュア2TM溶液の記載を、前の実施例で提供する。
【0315】
全パラメーターを20分周期の平衡化後、記録した。それぞれの全ヘモグロビンレベル間の時間周期は60分であった。
【0316】
図5は重合化ヘモグロビン溶液の注入が実質的に貧血の犬における局所的な筋肉組織酸素圧を、重合化ヘモグロビン溶液の最初の投与後、3.0g/dLのRBCヘモグロビン濃度に関連する16torrの平均pO2 から、重合化ヘモグロビン溶液の注入により約0.6g/dLまでの全ヘモグロビン濃度を増加によって35torrの正常平均pO2まで増加させることを示す。本研究の実験犬は、血液希釈に先立って、15.8g/dLのRBCヘモグロビン濃度に関連する、33torrの平均筋肉組織酸素圧を有した。結果的に、本研究は、酸素を組織へ運搬するRBCの減らされた有用性により生じた減らされた筋肉組織酸素圧が改善され、少量のヘモグロビンを動物の循環系中に注入することにより、正常値、または上記正常値まで回復させうることを示した。例えば、図5は、重合化ヘモグロビン溶液の注入により、約0.6gHb/dL血漿の全ヘモグロビンにおける増加、血液希釈から約12.8gHb/dL血漿のRBCヘモグロビン濃度における減少に関連する組織酸素圧の減少と同等の、19torrまでの組織酸素圧が増加したことを示す。
【0317】

実施例 10
動脈RBC流阻害に対する末端組織酸素添加の研究
本研究では、組織酸素圧を、後脚筋肉(m.gastrocnemius)において、対照群(6匹のイヌ)においては90〜93%の大腿部動脈狭窄末端部で、実験群A(7匹のイヌ)においては94%の大腿部動脈狭窄末端部で、増加レベルの重合化ヘモグロビン溶液(Hemopure 2TM溶液、マサチューセッツ州、ボストン、Biopure Corporation製)を狭窄後注入した後、測定した。本研究は、実験群B(6匹のイヌ)における94%の大腿部動脈狭窄末端部での後脚筋肉における組織酸素圧の測定も含んでおり、そこでは、重合化ヘモグロビン(HBOC−201)を狭窄を導入する前に注入した。
【0318】
全パラメーターを、狭窄後30分、狭窄後45分、(実験群Bのみ)および重合化ヘモグロビン溶液またはヘタスターチ(2−ヒドロキシエチルエーテル)の投与後15分(対照群および実験群Aのみ)の平衡期間後ベースラインで記録した。
【0319】
対照および実験群におけるイヌを麻酔し、実施例9で述べたようにモニターした。麻酔誘導に続いて、ベースライン測定を記録した。対照群および実験群Aの後脚筋肉に対するベースライン領域組織酸素圧は図6に提供されている。
【0320】
それから、実験群Bの各イヌに、各イヌにおいて測定される全ヘモグロビン(血漿中RBC由来のHb+重合化Hb溶液由来のHb)を約2.0g/dLまで増加させるのに十分な量の重合化ヘモグロビン溶液を注入した。B群イヌの条件は続いて約15〜約30分間平衡化させて、組織酸素圧を実験群Bに対するベースライン値として記録した(図7)。
【0321】
それから、各群の各イヌの1つの後脚に対して、血液流が約90〜95%まで減少するまで、大腿部動脈を外科的に曝し、様々な動脈クランプでとめた。血液流を狭窄末端に位置する環状流プローブにより測定した。対照群および実験群Aのイヌ、ならびに実験群Bのイヌにおける狭窄の末端の後脚筋肉について、狭窄の30分後の平均局所組織酸素圧を、それぞれ、図2および3に提供する。これらの図は組織酸素圧(pO2 レベル)の厳密に等価な減少を示し、対照群および実験群Aのイヌに対して末端後脚筋肉での局所低酸素症を生じた(図6)。特に、図2に示されたように、対照群に対して、平均組織酸素圧は、平均ベースライン値の23±2.2トルから平均狭窄後値の8±0.9トルまで減少した。さらに、図6に示されたように、平均組織酸素圧は、実験群Aに対して、平均ベースライン値の27±2.9トルから平均狭窄後値の11±1.1トルまで減少した。さらに、この時に、対照群および実験群Aのイヌに対する末端筋肉組織は青灰色に見えた。
【0322】
しかしながら、95%狭窄を誘導する前に重合化ヘモグロビン溶液を注入された実験群Bのイヌに対して、狭窄の30分後に、平均筋肉組織酸素圧の有意な減少は見られなかった。図7に示されたように、実験群Bに対する平均組織酸素圧は、平均ベースライン値の35±6.9トルから平均狭窄後値の32±4.5トルまで減少した。
【0323】
さらに、狭窄の45分後、実験群Bに対して、平均組織酸素圧の36±4.5トルは、ベースライン値から有意には異ならなかった。
【0324】
図6および7の結果は、動物における「90%以上の」狭窄の誘導は、動物が狭窄の誘導前に重合化ヘモグロビン溶液を予防的に投与された場合を除き、狭窄の組織末端に厳密な低酸素症条件を創り出したことを示す。図7に示されたように、重合化ヘモグロビン溶液を予防的に投与された動物は、狭窄末端の筋肉組織の正常組織酸素圧を維持し、したがって、組織へのRBC流の部分阻害に続く組織低酸素症を防ぐヘモグロビンの予防投与の効力を証明した。
【0325】
狭窄の30分後の酸素圧測定に続き、それから、対照群の各イヌを2回の200mLの追加の投与をヘタスターチで注入した。その投与は、投与あたりイヌにおける全Hbを約0.5〜約0.7g/dLまで増加させるのに必要な重合化ヘモグロビン溶液の体積に相当する体積に一般的に一致する。同時に、実験群Aの各イヌを、投与あたり各イヌにおける測定される全ヘモグロビン(RBC由来のHb+重合化Hb溶液由来のHb)を約0.5〜約0.7g/dLまで増加させるのに十分な2回の追加の投与において、重合化ヘモグロビン溶液を用いて注入した。
【0326】
対照群の狭窄後脚筋肉に対する注入後局所組織酸素圧は、200mLおよび400mLのヘタスターチ注入について、図2に提供される。観察される平均組織酸素圧は、200mLのヘタスターチ注入に対して10±1.6トルで、400mLのヘタスターチ注入に対して10±1.2トルであった。この図は、低酸素症で色が青灰色のままである末端後脚筋肉での8±0.9トルの狭窄後値と比較して、ヘタスターチの狭窄後注入は狭窄末端の組織酸素添加を改良しなかったことを示す。
【0327】
実験群Aの狭窄後脚筋肉に対する注入後局所的組織酸素圧も、0.5g/dLおよび1.2g/dL Hb溶液注入について、図2に提供する。観察される平均組織酸素圧は、血漿Hb(および全Hb)における0.5g/dLの増加と関連する20±2.4トルであり、血漿Hb(および全Hb)における1.2g/dLの増加と関連する29±2.8トルであった。この図は、11±1.1トルの狭窄後平均酸素圧に比較して、ヘモグロビン溶液の狭窄後注入が有意に狭窄への後脚筋肉末端に対する平均組織酸素圧を増加させ、したがって低酸素症条件を緩和させたたことを示す。
【0328】
また、改良された組織酸素添加は、ヘモグロビン溶液注入に続く青灰色から赤茶色への狭窄筋肉の色の変化により立証される。
【0329】
比較群および実験群Aを比較した時に、ベースラインまたは狭窄後組織酸素圧間に有意な違いはなかった。しかしながら、等容量のヘタスターチを受けた比較群と比較して、1回目のHb投与後(p<0.01)および2回目のHb投与後(p<0.001)の実験群Aにおける組織酸素圧の高い有意な増加があった。
【0330】
平均酸素圧の比較は図6に提供されていて、重合化ヘモグロビン代用血液での治療と比較して、非酸素含有血漿増量剤、特にヘタスターチで狭窄末端の低酸素組織の治療の相対的な効能を示している。ここで立証されたように、ヘタスターチの注入は、狭窄末端筋肉組織において、平均組織酸素圧を改良しなかった。対照的に、重合化ヘモグロビン溶液の注入は、ベースラインと比較した時の正常値に対して、狭窄末端筋肉組織において、平均筋肉組織酸素圧を有意に改良した。
【0331】

実施例 11
RBC流阻害を有する微小血管系におけるヘモグロビン溶液流の研究
麻酔の誘導に続いて、スプラグー−ドーリーラット(Sprague−Dawley rat)の腹部を外科的に開き、小腸および結合する腸管膜を曝した。それから、腸管膜中での微小循環をビデオ顕微鏡のもとで観察した。腸管膜中に、血栓症の毛細血管が、関連するRBC流の完全な妨害と共に同定された。光学ドップラー速度計(Texas A&M Microvascular Research Inst.)を用いると、この毛細血管を通るRBC流の測定はゼロのドップラー値を与えた。このことは、この毛細血管を通るRBC流がないことを示す。
【0332】
重合化ヘモグロビン溶液(HBOC−201、マサチューセッツ州、ボストン、バイオピュアコーポレーション)を蛍光色素、具体的にはフルオレセインイソチオシアネートで標識し、それから、ラットの腹腔から遠い位置に静脈内注射した。
【0333】
重合化ヘモグロビン溶液中のヘモグロビンを、ウィルダースピン(Wilderspin)によりAnal.biochem.,132:449(1982)に、およびオーシアタ(Ohshiata)によりAnal.biochem.,215:17−23(1993)に記載された方法を改良して用いることによってフルオレセインイソチオシアネート(以下「FITC」と称する)で標識した。FITC標識のストック溶液を6.6gのFITCを615mLの100mMホウ酸緩衝液(pH9.5)に溶解させることにより調製した。重合化ヘモグロビン溶液(13g Hb/dLで923mL)を、512mLのホウ酸緩衝液で平衡化した窒素フラッシュされた容器に負荷した。それから、FITC/ホウ酸緩衝液を11.8mL/分で静的混合機ループを通じて、ヘモグロビン/ホウ酸混合物に加えた。反応を2時間室温で窒素環境中で攪拌し続けながら行なった。30kDの膜(Millipore Pellicon,5平方フィート)を用いて7回の乳酸保存溶液(pH 7.7)での体積交換に対するダイアフィルトレーションにより、残りのFITCを除いた。最後の交換後、システムを8.6g/dLヘモグロビンに濃縮し、材料を、嫌気的方法を用いて60mLシリンジで窒素除去10mLバキュテイナーチューブに等分した。チューブを薄いホイルで包み、使用するまで4℃で保存した。FITC:Hbの10:1モル比は、反応に用いると、標識Hb産物中でFITC:Hbの5:1の比を与えた。
【0334】
標識ヘモグロビンの注入に続き、約1分内に、標識ヘモグロビンが、赤血球細胞の停滞し、体積した凝集を通過して、血栓症毛細血管を通じて入ったり流れたりするのが観察された。
【0335】
本研究の結果は、ヘモグロビンが、RBC流が制限されまたは排除される微小血管系を通じて流れることができ、それによって、RBC流がない血栓症毛細血管に関連した組織にヘモグロビンによる増加した酸素輸送をさせていることを示している。
【0336】

均等物
当業者であれば、単なる日常的実験手法により、本明細書に記載された発明の具体的態様に対する多くの均等物を認識し、あるいは確認することができるであろう。これらのおよび他の全ての均等物は下記クレームに記載されるような本発明の範疇に含まれるものである。
【0337】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]ヘモグロビンを含む赤血球画分をクロマトグラフィーカラムに供し、pH勾配で精製ヘモグロビン製剤を溶出することからなり、そうすることによってヘモグロビン溶出物を生成する、実質的に他の血液蛋白質成分および混入物を含まない精製ヘモグロビン製剤の製造方法。
[2]ヘモグロビンを含む赤血球画分が、下記工程からなる方法により得られる、前記[1]記載の方法:
a)血液を抗凝固剤と混合して血液溶液を生成させる工程;
b)該血液溶液中の赤血球を洗浄する工程;
c)洗浄した赤血球を白血球から分離する工程;および
d)分離した赤血球を破壊し、そうすることによって、ヘモグロビンを含む赤血球画分を含有する蛋白質と細胞の破片との混合物を得る工程。
[3]下記工程をさらに含んでなる前記[2]記載の方法:
a)細胞の破片から蛋白質を分離し、そうすることによって、蛋白質抽出物を得る工程;
b)該蛋白質抽出物を分画して高分子量の蛋白質を除去し、そうすることによって、ヘモグロビンを含む低分子量の蛋白質画分を得る工程;および
c)限外濾過により低分子量の蛋白質画分中のヘモグロビンを濃縮し、そうすることによって、ヘモグロビンを含む精製赤血球画分を生成する工程。
[4]下記工程をさらに含んでなる前記[3]記載の方法:
a)ヘモグロビン溶出物中のヘモグロビンを脱酸素化させて、脱酸素化ヘモグロビン溶液を生成させる工程;
b)該脱酸素化ヘモグロビン溶液と第1の還元剤とを混合して、酸化安定脱酸素化ヘモグロビン溶液を生成させる工程;
c)該酸化安定脱酸素化ヘモグロビン溶液と架橋剤とを混合して、重合化反応混合物を生成させる工程;
d)該重合化反応混合物を重合化し、そうすることによって、安定重合化ヘモグロビン溶液を生成させる工程;および
e)生理学的溶液および第2の還元剤の存在下で、非重合化ヘモグロビンから重合化ヘモグロビン溶液を精製する工程、該工程により、重合化ヘモグロビン溶液が生理学的に許容され得るように作られ、該還元剤が酸素を捕獲し、そうすることによって、安定な重合化精製ヘモグロビン製剤を生成する工程。
[5]限外濾過膜を用いるダイアフィルトレーション(diafiltration )により、重合化ヘモグロビン溶液を非重合化ヘモグロビンから精製する、前記[4]記載の方法。
[6]重合化反応混合物を化学的に還元することにより、重合化反応混合物を分子量の分布において安定化させる、前記[4]記載の方法。
[7]赤血球画分を、ヘモグロビンからのエンドトキシンのイオン交換アフィニティー分離のためのパッキングからなるクロマトグラフィーカラムに供する、前記[1]記載の方法。
[8]下記工程をさらに含んでなる前記[1]記載の方法:
a)赤血球を含む血液と抗凝固剤とを混合して血液溶液を生成させる工程;
b)等張液で該血液溶液を希釈する工程;
c)該希釈血液溶液を濾過して、赤血球からより小さな血漿成分を分離する工程;
d)該濾過した血液溶液を遠心分離して、赤血球から白血球を分離する工程;
e)赤血球を表面に向け、赤血球の少なくとも一部の細胞膜を破り、ヘモグロビン溶液を生成させる工程;
f)該ヘモグロビン溶液を限外濾過して、ヘモグロビン溶液から大きな細胞の破片を除去する工程;および
g)該ヘモグロビン溶液を限外濾過して、ヘモグロビン溶液から小さな非ヘモグロビン成分を除去し、そうすることによって、ヘモグロビンを含む精製赤血球画分を製造する工程。
[9]下記工程をさらに含んでなる前記[8]記載の方法:
a)ヘモグロビン溶出物を脱酸素化させて、脱酸素化ヘモグロビン溶液を生成させる工程;
b)該脱酸素化ヘモグロビン溶液と還元剤とを混合して、酸化安定脱酸素化ヘモグロビン溶液を生成させる工程;
c)該酸化安定脱酸素化ヘモグロビン溶液と架橋剤とを混合して、重合化反応混合物を生成させる工程;
d)該重合化反応混合物を重合化し、そうすることによって、重合化ヘモグロビン溶液を生成させる工程;
e)該重合化ヘモグロビン溶液と塩基溶液とを接触させる工程、該工程により 、重合化ヘモグロビン溶液が塩基性になる工程;
f)該塩基性重合化ヘモグロビン溶液と水素化ホウ素ナトリウムとを接触させる工程、該工程により不安定結合が還元され、そうすることによって、安定重合化ヘモグロビン溶液を生成する工程;
g)生理学的溶液を用いて、該安定重合化ヘモグロビン溶液をダイアフィルトレーションする工程、該工程により重合化ヘモグロビン溶液が生理学的に許容され得るように作られ、そうすることによって、超純粋な安定重合化ヘモグロビン製剤を生成する工程;および
h)該超純粋な安定重合化ヘモグロビン製剤を濾過して、該超純粋な安定重合化ヘモグロビン製剤から四量体ヘモグロビンを分離する工程。
[10]実質的に酸素のない雰囲気下で、ヘモグロビン製剤を維持することからなる、ヘモグロビン製剤の酸化安定性を保護する方法。
[11]下記工程からなる、ヘモグロビン溶液に含まれるヘモグロビンからの重合化ヘモグロビン溶液の製造方法:
a)該ヘモグロビン溶液と還元剤とを混合する工程、該工程によりヘモグロビン溶液が脱酸素化し、そうすることによって、酸素安定化脱酸素化ヘモグロビン溶液を生成する工程;
b)該混合した該酸素安定化脱酸素化ヘモグロビン溶液と架橋剤とを混合し、そうすることによって、重合化反応混合物を生成する工程;および
c)該重合化反応混合物を重合化し、そうすることによって、重合化ヘモグロビン溶液を生成する工程。
[12]下記工程からなる、ヘモグロビン溶液に含まれるヘモグロビンからの重合化ヘモグロビン溶液の製造方法:
a)該ヘモグロビン溶液を脱酸素化し、そうすることによって、脱酸素化ヘモグロビン溶液を生成する工程;
b)該脱酸素化ヘモグロビン溶液と第1の還元剤とを混合し、そうすることによって、酸素安定化脱酸素化ヘモグロビン溶液を生成する工程;
c)該混合した該酸素安定化脱酸素化ヘモグロビン溶液と架橋剤とを混合し、そうすることによって、重合化反応混合物を生成する工程;および
d)該重合化反応混合物を重合化し、そうすることによって、重合化ヘモグロビン溶液を生成する工程。
[13]架橋剤がジアルデヒドであり、重合化反応混合物が加熱により重合化される前記[12]記載の方法。
[14]下記工程をさらに含んでなる前記[13]記載の方法:
a)重合化ヘモグロビン溶液とアルカリ溶液とを接触させる工程、該工程により、重合化ヘモグロビン溶液が塩基性になる工程;
b)該塩基性重合化ヘモグロビン溶液と第2の還元剤とを接触させる工程、該工程により安定な還元重合化ヘモグロビン溶液を生成させる工程;および
c)7.9以下のpHを有する第1の生理学的溶液を用いて、該安定な還元重合化ヘモグロビン溶液をダイアフィルトレーションする工程、該工程により還元重合化ヘモグロビン溶液が生理学的に許容され得るように作られ、そうすることによって、安定重合化ヘモグロビン溶液を生成する工程。
[15]7.6〜7.9のpHを有する第2の生理学的溶液を用いて、重合化ヘモグロビンから非重合化ヘモグロビンを分離するのに適当なフィルターに対して、安定重合化ヘモグロビン溶液をダイアフィルトレーションする工程をさらに含んでなる前記[14]記載の方法。
[16]哺乳類のヘモグロビンがウシヘモグロビンであり;第1の還元剤がN−アセチル−L−システインであり;ジアルデヒドがグルタルアルデヒドであり;アルカリ溶液がアルカリホウ酸緩衝液であり;第2の還元剤が水素化ホウ素ナトリウムであり;ならびに第1の生理学的溶液が、27mM乳酸ナトリウム、12mM NAC、115mM NaCl、4mM KClおよび1.36mM CaCl2 を含み、約5のpHを有する前記[15]記載の方法。
[17]下記からなる安定重合化ヘモグロビン溶液:
a)重合化ヘモグロビン;および
b)該重合化ヘモグロビンを安定化させる還元剤。
[18]還元剤が、N−アセチル−L−システイン、D,L−システイン、グルタチオン、γ−グルタミル−システイン、2−メルカプトエタノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール、チオグリコレート、1,4−ブタンジチオール、クエン酸塩;クエン酸、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸および還元型フラビンアデニンジヌクレオチドからなる群より選ばれる、前記[17]記載の安定重合化ヘモグロビン溶液。
[19]前記[1]記載の方法により製造された安定重合化ヘモグロビン溶液。
[20]下記特徴を有する、溶液1リットル当たり120〜140gのヘモグロビンの濃度の哺乳類ヘモグロビンからなる安定重合化ヘモグロビン溶液:
a)15重量%未満の含有量のメトヘモグロビン;
b)10重量%以下の含有量のオキシヘモグロビン;
c)ミリリットル当たり0.5エンドトキシンユニット未満の濃度のエンドトキシン;
d)15重量%以下の500,000ダルトンを越える分子量を有する重合化ヘモグロビン;および
e)5重量%以下の安定化されていない四量体ヘモグロビンであるヘモグロビン。
[21]下記特徴を有する、溶液1リットル当たり10〜250gのヘモグロビンの濃度の哺乳類ヘモグロビンからなる安定重合化ヘモグロビン溶液:
a)15重量%未満の含有量のメトヘモグロビン;
b)10重量%以下の含有量のオキシヘモグロビン;
c)ミリリットル当たり0.5エンドトキシンユニット未満の濃度のエンドトキシン;
d)15重量%以下の500,000ダルトンを越える分子量を有する重合化ヘモグロビン;
e)10重量%以下の65,000ダルトン未満の分子量を有する重合化ヘモグロビン;および
f)5重量%以下の32,000ダルトン未満の分子量を有するヘモグロビン。
[22]低下した赤血球の流量を有する脊椎動物の組織において、組織の酸素添加を増加させる医薬の製造のための前記[19]、[20]または[21]記載の安定重合化ヘモグロビン溶液の使用。
[23]低下した赤血球の流量に対する予防法として、組織の酸素添加を増加させるかまたは酸素欠乏を予防する医薬の製造のための前記[19]、[20]または[21]記載の安定重合化ヘモグロビン溶液の使用。
[24]脊椎動物の組織において、低下した赤血球の流量を有する組織の酸素添加を増加させる方法であって、少なくとも1回の投与量のヘモグロビンを脊椎動物の循環系に導入することからなる方法。
[25]脊椎動物において、低下した赤血球の流量の結果としての低下した酸素添加に対する予防法として、脊椎動物において組織の酸素添加を増加させるかまたは酸素欠乏を予防する方法であって、少なくとも1回の投与量のヘモグロビンを脊椎動物の循環系に導入することからなる方法。
【図面の簡単な説明】
【0338】
【図1A】図1Aは、本発明の安定重合化ヘモグロビン代用血液の製造方法の概略的な流れ図を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の安定重合化ヘモグロビン代用血液の製造方法の概略的な流れ図を示す。
【図1C】図1Cは、本発明の安定重合化ヘモグロビン代用血液の製造方法の概略的な流れ図を示す。
【図2】図2は、室内の空気で呼吸し、種々の量のヘモグロビン代用血液または10%デキストラン(Dextrane) 40 および0.9%生理食塩水である合成コロイド溶液(RHEOMACRODEX-Saline)で治療を受けた、血液量が正常で、血液希釈された急性脾摘出ビーグル犬における1gの赤血球ヘモグロビン当たりの動脈の酸素のプロットである。
【図3】図3は、室内の空気で呼吸し、種々の量のヘモグロビン代用血液または合成コロイド溶液(RHEOMACRODEX-Saline)で治療を受けた、血液量が正常で、血液希釈された急性脾摘出ビーグル犬に対する動脈の全酸素含有量のプロットである。
【図4】図4は、室内の空気で呼吸し、種々の量のヘモグロビン代用血液または合成コロイド溶液(RHEOMACRODEX-Saline)で治療を受けた、血液量が正常で、血液希釈された急性脾摘出ビーグル犬における酸素の送達のプロットである。
【図5】図5は、下記条件下、1)15.8g/dLの平均RBCヘモグロビン(Hb)濃度のベースライン、2)3.0g/dLの平均RBCヘモグロビン濃度までヘタスターチ(hetastarch)で等容量に血液希釈した後、3)3.0g/dLの平均RBCヘモグロビン濃度までヘタスターチで等容量に血液希釈した後、約0.6g/dLの血漿Hb濃度に上昇するまで重合化ヘモグロビン溶液を注入し、全ヘモグロビン濃度が約3.6g/dLになる、4)3.0g/dLの平均RBCヘモグロビン濃度までヘタスターチで等容量に血液希釈した後、約1.6g/dLの血漿Hb濃度に上昇するまで重合化ヘモグロビン溶液を注入し、全ヘモグロビン濃度が約4.6g/dLになる、および5)3.0g/dLの平均RBCヘモグロビン濃度までヘタスターチで等容量に血液希釈した後、約2.6g/dLの血漿Hb濃度に上昇するまで重合化ヘモグロビン溶液を注入し、全ヘモグロビン濃度が約5.6g/dLになる条件下で、実施例9に記載の実験犬に対する後脚組織平均酸素圧(torr)のプロットである。
【図6】図6は、下記条件下、1)ベースライン、2)各犬の大腿動脈の狭窄を確立(すなわち、実験群Aの犬に対して94%の狭窄および対照群の犬に対して90〜93%の狭窄)した30分後、3)各犬の狭窄の近傍の通常の循環系に、約0.5g/dLまで血漿ヘモグロビン濃度を上昇させるのに十分な量で、実験犬に重合化ヘモグロビン溶液量(または対照犬にヘタスターチ溶液を等容量)を静脈内に注射した30分後、および4)各犬の狭窄の近傍の通常の循環系に、約1.2g/dLまで血漿ヘモグロビン濃度を上昇させるのに十分な量で、実験犬に重合化ヘモグロビン溶液量(または対照犬にヘタスターチ溶液を等容量)を静脈内に注射した30分後に対する実施例10に記載の実験群Aの犬と比較した対照の犬に対する平均後脚組織酸素圧(torr)のプロットである。
【図7】図7は、各犬の将来の狭窄の近傍の通常の循環系に、約2g/dLまで全ヘモグロビン濃度を上昇させるのに十分な量で、重合化ヘモグロビン溶液量を静脈内に注射した後、各犬の後脚に94%の大腿動脈狭窄を導入した、実施例10に記載の実験群Bの犬に対する平均後脚組織酸素圧(torr)のプロットである。該プロットは、以下の条件下、1)ベースライン、2)各犬に94%の大腿動脈狭窄を確立して30分後、および3)各犬に94%の大腿動脈狭窄を確立して45分後に対する平均後脚組織酸素圧を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムホイルラミネート素材を含む、約0.0001〜約0.01インチの厚さを持つ酸素保護フィルム二重包装であって、室温で1気圧あたり24時間あたり100平方インチあたり約1.0cc未満の酸素透過性を持つ酸素保護フィルム二重包装中に、脱酸素化ヘモグロビン製剤を維持することからなる、脱酸素化ヘモグロビン製剤の安定性を保護する方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−260393(P2007−260393A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71402(P2007−71402)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【分割の表示】特願平8−528657の分割
【原出願日】平成8年3月22日(1996.3.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501013592)バイオピュア コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】