完全な差動ボイスコイルモータ制御のための、オンチップ補償
差動ボイスコイルモータ制御機能を備えるディスクドライブコントローラが開示される。差動ボイスコイルモータ制御機能は、内部制御ループのための、直列接続された1以上のMOSトランジスタから成る抵抗器を含む、オンチップ補償ネットワークを備える。補償ネットワークにおけるMOSトランジスタのゲートは、調整電流に基づいてバイアス電圧で駆動される。調整電流は、集積回路における過程及び温度変化、例えばオンチップコンデンサ内の変化などに伴って変化するよう、得られる。オンチップ補償ネットワークは、内部制御ループを適切に補償するよう、ディスクドライブ内のボイスコイルモータの駆動において所望の周波数応答を与えるよう、十分正確に調整可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御の領域内にあって、より具体的には、ディスクドライブシステムにおけるボイスコイルモータの制御へと向けられている。
【0002】
発明の背景
本発明はモータ制御の領域内にあって、より具体的には、ディスクドライブシステムにおけるボイスコイルモータの制御へと向けられている。
【0003】
磁気ディスクドライブ技術は、最新のパーソナルコンピュータシステムにおいて支配的な不揮発性大容量記録技術であって、例えばポータブルデジタルオーディオプレーヤのような他の装置における大容量記録アプリケーションにとって重要な記録技術であり続けている。磁気ディスクドライブの領域において基本的であるように、ディスク円盤状記録媒体表面に配置された強磁性材料の層における、ある場所(「ドメイン」)を磁化することによって、データは書き込まれる。各々の磁化されたドメインは磁気双極子を形成し、その双極子の向きに対応する記録されたデータ値を有する。データビットのドメインへの「書き込み」は、物理的に磁気ディスクの近くに配置された小さな電磁石コイルへ電流を流すことによって、典型的には達成されるのであり、コイルを通るその電流の極性が、誘導される磁気双極子の向きを決定し、そしてディスクに書き込まれるデータ状態を決定する。最新のディスクドライブにおいて、磁気抵抗素子は、ディスク表面の選択された場所における磁気双極子の向きを感知し、そして記録されたデータ状態を読み出すために用いられる。典型的に、その書き込みコイルと磁気抵抗素子とは、読み出し/書き込み「ヘッド」の内部に、物理的に置かれる。
【0004】
従来のディスクドライブシステムにおいては、スピンドルモータがディスク円盤状記録媒体を回転させ、そして「ボイスコイル」モータが、モータからの遠位端において、読み出し/書き込みヘッドがその上に搭載されたアクチュエータアームを動かす。ボイスコイルモータはそのようにして、所望のアドレスに対応するディスク表面のトラックへと読み出し/書き込みヘッドを動かす。ディスク表面上の位置インジケータが感知され、そして所望の場所へのアクチュエータアーム位置の調節のために制御ループへとフィードバックされるという点において、従来のボイスコイルモータはサーボ制御されていた。典型的に、「外部」制御ループは、フィードバック位置信号をアクチュエータの所望の位置と比較するのであり、そしてこれらの値の差から、トルク指令値が得られる。所望の方向へアクチュエータアームを動かすためのモータトルクを生み出すボイスコイルモータへの駆動電流を生み出すために、トルク指令は用いられる。従来のボイスコイルモータ制御回路には、「内部」制御ループも併せて備えられており、そこにおいては、モータへ流される電流が感知され、そしてこのモータ電流の制御のために、フィードバックループに流される。
【0005】
図1は、ディスクドライブシステムにおけるボイスコイルモータのための従来の駆動回路を図解している。VCMデジタル/アナログ変換器(DAC)22は、ボイスコイルモータのための「外部」サーボ制御ループからデジタルトルク指令信号TRQ_CMDを受信し、そして抵抗器23を介して誤差増幅器24の負入力部へとアナログ信号を生み出す。誤差増幅器24は、その正入力部において基準電圧VREFを受信する。誤差増幅器24のシングルエンド出力は出力増幅器28に印加され、出力増幅器28は、その出力端子T3及びT4において差動出力電流iOUTを発生させる。この出力電流iOUTはモータMへと流され、モータMは、インダクタLm及び寄生抵抗Rmの形で、インピーダンスを出力増幅器28に与える。ループには、モータMと共に感知抵抗器31が含まれており、そしてこの抵抗器31を通した電圧は、感知増幅器32により、端子T5及びT6において感知される。感知増幅器32の出力は、抵抗器25を介して、VCM DACの出力において加算ノードに印加される。そのようなものとして、DAC22の出力部における所望のトルク信号への負のフィードバックとして、感知抵抗器31を通しての電圧が印加される。回路がバランスされている(すなわち、電流iOUTが、トルク指令信号TRQ_CMDに対応する所望の電流に等しい)場合、誤差増幅器24の負入力部における電圧は基準電圧VREFに一致するであろう。
【0006】
制御システムの技術分野において基本的であるように、モータMにより与えられるインピーダンスが、この内部制御ループの応答特性を決定する。具体的には、モータMのインダクタンスLmが、システムの応答が周波数と共に変化するようなこのループの周波数応答における「極」を定め、そして振動が起こりうる周波数を定める。その技術分野において既知である通り、制御ループの周波数応答がシステム要件を満たすことができるように、そして動作が不安定になることを回避するために、モータの周波数応答に対する補償を制御ループに実装することが可能である。図1における従来の回路では、そのような補償は、誤差増幅器24を介して接続されたR−Cネットワークを経由して実現される。この場合において、補償ネットワークには、抵抗器26及びコンデンサ27の直列ネットワークと並列接続されたコンデンサ25が含まれる。コンデンサ25、27及び抵抗器26の素子値は、モータMのインダクタンスLm及び抵抗Rmと、そして制御ループの動作周波数に対する所望の帯域幅(すなわち、その範囲に亘って制御ループが適正な応答を有するような周波数範囲)とに基づく。
【0007】
制御システムの技術分野において周知な通り、コンデンサ27は制御ループにおける積分器として役立つのであり、それは制御ループの周波数応答において、より低い周波数でのより高い利得を与える。制御ループ応答へと盛り込まれる90°位相シフト(及び対応しての位相マージンの減少)に対抗するべく、抵抗器26は、コンデンサ27を積分し、安定性を改善することにより、応答特性を平坦化する。コンデンサ25は、所望のカットオフ周波数を超えた高周波数における応答をロールオフする。
【0008】
図1に示すとおり、(抵抗器23及び25のような受動素子に加えて)VCM DAC22、誤差増幅器24、出力増幅器28、及び感知増幅器32が、単一の集積回路20へと実装される。従来のサイズとインピーダンスとであるボイスコイルモータMのために、コンデンサ25、27、及び抵抗器26の補償ネットワークに対して要求される素子値は、典型的には「オフチップ」で、集積回路20の外部において、実現されるものである。図1において示される通り、この補償ネットワークは、集積回路20の端子T1及びT2にまたがって接続されるのであり、また示されている通り、T1及びT2は、誤差増幅器24の入力及び出力部に接続される。これら素子は外部から接続されるので、それらの値を高精度で選択し、正確な補償を与えることができる。反対に、仮にコンデンサ25、27及び抵抗器26が「オンチップ」で実装されているとすれば、それらの素子値は10−20%程度変わりうるであろう。最新のボイスコイルモータ制御ループを適当に補償するためには、それを許容することはできない。
【0009】
誤差増幅器24の出力部におけるシングルエンド信号から駆動電流が得られ、シングルエンド入力を擬差動出力増幅器28へと駆動するという点において、この図1で示される従来のボイスコイル制御回路は、当該技術分野においては「シングルエンド」制御ループと称される。そのようにして、集積回路20の2つの外部端子にまたがった3つの外部素子によって、外部の補償ネットワークを実現することができる。
【0010】
しかしながら今日の技術動向においては、最新のディスクドライブシステムにおいてボイスコイルモータを駆動させるために、完全に差動的な電力段を使うことが、多く好まれる。ディスクドライブの(インチごとのトラックで測定される)記録密度は増加し続けており、これによりボイスコイルモータ制御ループのためのノイズ除去能力の改善が要求されている。加えて、ディスクドライブシステムの継続的小型化と共に、そして、例えばディスクドライブベースのポータブルデジタルオーディオプレーヤ中などでのバッテリー電源が好まれる傾向と共に、ディスクドライブコントローラ電子機器の電源電圧もまた低下する傾向にある。このように、電源電圧レベルがより低くなることによって、制御回路における線形スイングの「ヘッドルーム」は低減される。完全に差動的な制御ループ(例えば、差動出力増幅器を駆動する差動誤差増幅器)を使用することにより、電源、基板、または他の回路機能からのノイズ結合が望ましく除去されるであろうし、制御ループにおける全高調波ひずみが減少するであろう。併せて、必要とする線形スイング「ヘッドルーム」は、図1に示されるようなシングルエンドモータドライブに必要とされるそれの2分の1である。
【0011】
しかしながら、完全に差動的な制御回路のための、従来の外部「オフチップ」補償の実装には、2セットの補償素子が必要とされる。図1を参照すると、コンデンサ25、27及び抵抗器26から成る並列補償ネットワークの2つの実体が、完全な差動段のためには要求されるであろう。これにより当然ながら、シングルエンドの場合に比較して2倍の数の外部素子が必要とされ、そして2つの追加的集積回路端子ピンが必要とされる。素子における追加的経費、及び更に重要な、ピン数及び回路基板スペースにおける追加的経費は、特にデジタルオーディオプレーヤのような小型システムにおいては、禁止的に高額なものとなる可能性がある。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
従って、本発明の1つの目的は、例えばディスクドライブ中のボイスコイルモータのようなモータのフィードバック制御において、補償ネットワークを制御回路と一体化させることができるような回路、及びその動作方法を与えることである。
【0013】
本発明の更なる目的は、最適動作のためにオンチップ補償ネットワークを厳密に調整することができるような、回路及び方法を与えることである。
【0014】
本発明の更なる目的は、変化する製造過程や動作温度に亘って、補償が1次のオーダーまでは一定であるような、回路及び方法を与えることである。
【0015】
以下の明細書と図面とを併せて参照すれば、当該技術分野において通常の能力を有する者にとって、本発明における他の目的や利点が明らかとなるであろう。
【0016】
完全な差動的信号経路のために補償ネットワークが与えられるようなフィードバック制御回路へと、本発明を実装することができる。その補償ネットワークは、集積回路コンデンサ、及び直列に繋がれた一対の金属酸化膜半導体(MOS)トランジスタを含む。マスタ回路によって生成された電圧に追従する電圧において、MOSトランジスタのゲートへは共通のゲート電圧が印加される。調整された基準電流を伝導するように、補償ネットワークの装置に適合されゲート電圧で駆動されるMOSトランジスタが、マスタ回路には含まれる。補償ネットワークはそのようにして、変化する製造パラメータや動作温度に亘って少なくとも1次近似までは一定であるような補償を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施例の詳細な説明
本発明は、その好ましい実施形態に関連して、即ち、コンピュータまたは他のデジタルシステムのためのディスクドライブコントローラに実装されるものとして、説明される。そのようなアプリケーションにおいて用いられたとき、本発明は特に有益であろうと考えられるためである。しかしながら本発明は、本明細書中で説明されたものに限らず、別のアプリケーションにおいても重要な恩恵と利点とを与えうるということも、考慮に入れられている。従って、以下の説明は例示の目的のみにおいて与えられるのであって、請求の範囲に記載された通りである本発明の真の範囲を制限することを意図するものではないということが、理解されるべきである。
【0018】
図2は、本発明の好ましい実施形態が実装されるような、ディスクドライブシステムを備えたコンピュータの例を図解している。この例において、パーソナルコンピュータまたはワークステーション2は従来のやり方で実現されるのであり、適切な中央演算処理ユニット(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ビデオ及びサウンドカードまたは機能、ネットワークインターフェース能力、等を備えている。コンピュータ2の内部にはホストアダプタ3も含まれており、一方の側でコンピュータ2のシステムバスへと、そしてもう一方の側で、ディスクドライブコントローラ7が接続されるバスBへと、繋がっている。バスBは好ましくは従来の標準に従って実装されるのであって、その例としては、Enhanced Integrated Drive Electronics (EIDE)標準やSmall Computer System Interface (SCSI)標準が含まれる。併せて他のディスク記憶装置(ハードディスクコントローラ、フロッピー(登録商標)ディスクコントローラ等)やその他の周辺機器を、所望される通りに、そして従来のやり方で、バスBに接続してよい。代替的に、システム2は、例えばポータブルデジタルオーディオプレーヤ等の、よりスケールの小さいシステムであってよい。
【0019】
この例におけるディスクドライブコントローラ7は、ドライブ電子機器が、コンピュータ2内部のコントローラ基板そのものとしてよりも、ディスクドライブに物理的に実装されるような、ディスクドライブコントローラアーキテクチャに対応する。当然ながら、スケールのより大きいシステムにおいて、コントローラ7はコンピュータ2の内部に実装されていてよい。図1の一般化されたブロック図において、コントローラ7は、コンピュータ2と媒体自身との間のデータ経路中にデータチャネル4を含む、複数の集積回路を備える。ディスクドライブコントローラ7はまた、コントローラ13を備える。コントローラ13は、好ましくは、適切なメモリ資源(図示しない)を伴ったデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、または他のプログラム可能なプロセッサとして実装される。メモリ資源には、典型的には、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、例えばフラッシュメモリのような他の不揮発性記録装置のうちの幾つか、あるいは全てが含まれる。コントローラ13は、例えばアドレスマッピング、誤り訂正コーディング、及びデコード等のような機能を含む、ディスクドライブシステムの動作を制御する。バスBとデータチャネル4との間で繋がれたインターフェース回路、及びクロック生成回路等を含む他のカスタム論理回路も併せて、ディスクドライブコントローラ7内に備えることができる。
【0020】
ディスクドライブシステムのヘッドディスクアセンブリ20は、磁気的に記録されたデータの書き込みと読み出しとに関わる、電子部品及び機械部品を備える。この例において、ヘッドディスクアセンブリ20は、スピンドルモータ14の制御下で自身の軸の周りに回転する強磁性表面を(好ましくは両側に)有するような、1以上のディスク18を備える。複数の読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a、15bは、アクチュエータアーム17によって移動させることが可能であり、そして前置増幅器及び書き込みドライバ機能11に繋がれる。読み出しの側において、前置増幅器及び書き込みドライバ機能11は、ディスク読み出し動作中に、読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15bから感度電流を受信する。そして、これら感度電流に対応する信号を増幅して、ディスクドライブコントローラ7内のデータチャネル回路4へと送る。書き込みの側においては、前置増幅器及び書き込みドライバ機能内の書き込みドライバ回路は、データチャネル4から、ディスク18の特定の場所に書き込まれるべきデータを受信し、そしてこれらのデータを、読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15bを介したディスク18への書き込みのために適切な信号へと変換する。読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15b内の磁気抵抗読み出しヘッドにDCバイアスを印加するための回路を含み、また、一定の浮上高度を維持するために読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15bを制御可能に加熱するための浮上高度制御回路(Bloodworth等によるTexas Instruments Incorporatedに譲渡された出願に基づいて2005年5月19日に発行された、米国特許出願公開US2005/0105204 A1において説明されており、それは参照のためにここに組み込まれている)を併せて含む、他の回路機能を、前置増幅器及び書き込みドライバ機能11とラベルが付された機能ブロックに、併せて含めることができる。
【0021】
この例において、ディスクドライブコントローラ7は、スピンドル動作制御機能8及びボイスコイル動作制御機能10と通信するサーボ制御6を含む。スピンドル動作制御機能8は、サーボ制御6からの制御信号に従ってヘッドディスクアセンブリ20内のスピンドルモータ14を駆動し、一方でボイスコイル動作制御機能10は、そのような制御信号に従ってボイスコイルモータ12を駆動する。当該技術分野において既知である通り、スピンドルモータ14はディスク18をその軸の周りに回転させ、そしてボイスコイルモータ12はディスク18におけるアクチュエータアーム17の半径方向の位置を制御する。このようなやり方によって、データをディスク18における適切な物理的場所へと書き込むことができるように、またそこから読み出すことができるように、スピンドルモータ14及びボイスコイルモータ12は、コントローラ13により通信されるアドレス値に従って、読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15bをディスク18表面における所望の場所へ配置する。図1に示される通り、電力管理機能9は、コンピュータ2からPWR線上で電力を受け取るのであり、そして、ディスクドライブコントローラ7内部、及びヘッドディスクアセンブリ20内部におけるさまざまな電圧を発生させて制御する手段となるような、1以上の電圧調整器を備える。ディスクドライブシステムの小型化のために、及び製造コストを削減するために、サーボ制御6、スピンドル動作制御8、電力管理機能9、及びボイスコイル動作制御10の機能を単一の集積回路5へと組み込むことができる。
【0022】
今、図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態に従いボイスコイルモータ12によって推進される動作の制御における、サーボ制御6及びボイスコイル動作制御機能8の構造と動作とが、まさに説明される。本発明におけるこの実施形態に従えば、この制御機能には2つのフィードバックループが伴う。この例において、サーボ制御6は、所望の位置信号に比較しての、アクチュエータアーム17のディスク表面18からの相対的位置を監視することにより、「外部」制御ループを管理する。ボイスコイル動作制御機能10は、サーボ制御6により、その外部ループ制御機能から生み出されるトルク指令信号に比較しての、ボイスコイルモータ12に印加される電流(及び、ボイスコイルモータ12によってアクチュエータアーム17へかけられるトルク)を監視することにより、「内部」制御ループを管理する。
【0023】
本発明におけるこの実施形態では、サーボ制御6は、ディスクドライブコントローラ7内のコントローラ13より位置指令信号POS_CMDを受信する。POS_CMD信号は、サーボ制御6の詳細な構造に依存して、デジタルまたはアナログ領域のどちらのものであってもよい。サーボ制御6は併せて、ディスク18におけるアクチュエータアーム17の現在の半径方向の位置を示す信号を前置増幅器11から受信する、位置デコーダ38を備える。当該技術分野において既知である通り、最新のディスクドライブは一般的に、ディスク表面上にさまざまな半径で(例えば各トラックの間に)配置され、半径またはトラック位置を示す、読み出し/書込みヘッド15への信号を与えるような、位置インジケータを備える。位置デコーダ38は、その指示信号から、位置指令信号POS_CMDと比較するのに適正な形式で役に立つ位置信号をデコードすることができるような、サーボ制御6における回路に相当する。図3の実施形態において、加算機能35は、位置指令信号POS_CMDと位置デコーダ38により生み出されるフィードバック信号との差に対応する、誤差信号POS_ERRを発生させる。誤差信号POS_ERRはすなわち、アクチュエータアーム17の実際の位置と所望の位置との間の、現在の差に対応する。
【0024】
制御ループ補償機能36は誤差信号POS_ERRを受信し、外部制御ループにおける安定した周波数応答を保証すべく、従来のやり方で、アナログまたはデジタル領域のいずれかにおいて適切に、この信号をフィルターにかけるか、ないしは加工する。制御ループ補償機能36の出力、併せてサーボ制御6のボイスコイルモータ制御機能10への出力は、トルク指令TRQ_CMDである。本発明におけるこの実施形態に従えば、トルク指令TRQ_CMDとは、アクチュエータアーム17をその現在の位置から所望される位置へと動かすために、ボイスコイルモータ12によってかけられるべきトルクの方向と大きさとを示す、制御信号である。
【0025】
本発明におけるこの実施形態では、トルク指令信号TRQ_CMDはデジタル信号であり、VCM DAC40によって受信されるような信号であり、そしてボイスコイルモータドライバ42へ印加するために、アナログ領域へと変換される。以下で更なる詳細において説明される通り、ボイスコイルモータドライバ42は、トルク指令信号TRQ_CMDに応答して、そして感知電圧横断感知抵抗器44のフィードバック信号に応答して、出力電流iOUTを生み出す。感知電圧横断感知抵抗器44はボイスコイルモータ12と直列になっており、従って出力電流iOUTを伝導する。本発明におけるこの実施形態では、ボイスコイルモータドライバ42は完全に差動的な駆動段であり、従来のシングルエンドボイスコイルモータドライバよりも低い電源電圧を用いることを可能とし、そしてドライブ回路に要求される線形スイングヘッドルームを低減させる。
【0026】
図4は、本発明におけるこの好ましい実施形態に従ったボイスコイルモータ制御機能10の構造を更に詳細に図解している。上述の通り、VCM DAC40はデジタルトルク指令信号TRQ_CMDをサーボ制御6から受信し、それをアナログ信号DACOUTへと変換する。本発明におけるこの好ましい実施形態に従えば、VCM DAC40はまた、基準信号DACMIDを生み出す。基準信号DACMIDはプログラムされた、または一定の中間レベルないしはヌル信号へと設定された、アナログ信号である。当該技術分野において既知である通り、そしてその機能から明らかである通り、ボイスコイルモータ12によってかけられるトルクは、アクチュエータアーム17が移動するべき方向に依存して、いずれの極性であってもよい。従って、デジタルトルク指令信号TRQ_CMDに対応するアナログ信号DACOUTは、中間レベルないしはヌルのDACMID信号より上であっても、または下であってもよい。DACOUT、DACMID信号は、フィードバック信号SNS_N、SNS_Pと同様に、加算ブロック46へと印加される。
【0027】
このアナログ信号DACOUTの構成によって、ボイスコイルモータドライバ42の完全に差動的な構造にも関わらず、VCM DAC40を、完全に差動的なDACとしてよりもむしろ、シングルエンドデジタルアナログ変換器として構築することが可能となる。実際に、本発明におけるこの実施形態に従って、VCM DAC40を比較的単純に構築することができる。例えば従来の二重抵抗器列DACとして構築することができるのであり、その一例は、参照によってここに組み込まれている、1999年11月2日にTexas Instruments Incorporatedに対して与えられた米国特許第5,977,898号において説明されている。中間レベル出力信号DACMIDは、単にデジタルアナログ変換回路における固定された中間値として得ることができる。これにより、VCM DAC40における回路の複雑さとサイズとは大幅に低減され、そしてボイスコイルモータ制御機能10のコストと複雑さとが低減される。
【0028】
図4において示される通り、感知抵抗器44はボイスコイルモータ12と直列に接続され、電流iOUTを伝導する。ボイスコイル制御機能10の端子T5及びT6は、感知抵抗器44をまたいで接続され、感知増幅器52の入力に使用される。そして感知増幅器52は、差動信号をSNS_N,SNS_P線上に駆動する。その信号は、感知抵抗器44をまたがって感知される電圧に対応し、そしてボイスコイルモータドライバ42によって駆動される電流iOUTに対応する。加算ブロック46はSNS_N及びSNS_P線上の差動信号を受信し、そして図5a及び図5bに関連してこれから説明される通り、この信号をDACOUT及びDACMID線の差動信号と共に加算する。
【0029】
図5aは、本発明の好ましい実施形態に従った加算ブロック46の構造を図解している。図5aにおいて示される通り、gmセル60はDACOUT及びDACMID線において差動信号を受信し、そしてgmセル62は、SNSOUT_P及びSNSOUT_N線において差動信号を受信する。図5bから特に明らかとなる通り、gmセル60及び62の各々は高い入力インピーダンスを与える。gmセル60の高いインピーダンス入力により、加算ブロック46を、追加的バッファを必要とせずにVCM DAC40へ直接接続することが可能となる(あるいは二重抵抗器DACのような単純なDACからの接続であれば、それが必要とされたであろう)。加えて、gmセル62における高いインピーダンス入力により、感知増幅器52を比較的小さいものとして駆動することが可能となる。gmセル60及び62の各々における差動出力は、加算ノードSUMP及びSUMNに印加される。SUMP及びSUMNは、それぞれが抵抗器61及び63を介して、各々接地されている。図5aに示される通り、gmセル60及び62は各々差動的gmセルであり、セル60及び62の正出力部は抵抗器61において加算ノードSUMPに接続され、そしてセル60及び62の負出力部は抵抗器63において加算ノードSUMNに接続される。
【0030】
上述の通り、VCM DAC40は実質的にシングルエンドDACであり、その出力DACOUTは、中間レベル基準信号DACMIDから相対的に異なって与えられる。そのような、VCM DAC40の差動出力の強度は、SNS_P及びSNS_N線における差動信号の範囲の実質的に半分である。従って、gmセル60の相互コンダクタンスは、gmセル62におけるそれの2倍であるように構成される。この例においては、抵抗器61及び63の抵抗値をRとして、gmセル60を相互コンダクタンス1/Rを有するよう構築することができるのであり、gmセル62を相互コンダクタンス1/2Rを有するよう構築することができる。
【0031】
図5bは、本発明の好ましい実施形態に従い、加算ブロック46におけるgmセル60及び62の構造の特定の例を示す。本発明の範囲内において、他のgmセル回路構成を代わりに用いることによるgmセル60及び62の実現が可能であるということを、理解すべきである。
【0032】
本発明のこの実施形態において、gmセル60は1組の差動レッグを有する。1つのレッグは、そのゲートにおいて信号線DACOUTを受けるn型MOSトランジスタ66aを備え、もう1つのレッグは、そのゲートにおいて信号線DACMIDを受けるn型MOSトランジスタ66bを備える。トランジスタ66aのドレインは電流ソース671から電流i1を受けるよう接続されており、そしてそのソースとこの装置のボディノードとは電流ソース68aに接続されており、電流ソース68aは電流i1よりも大きい電流i2を地面に伝導する。同様に、トランジスタ66bのドレインは電流ソース672から電流i1を受け、そしてそのソースとトランジスタ66bにおけるボディノードとは電流ソース68bを通じて接続されており、電流ソース68bは電流i2を地面に伝導する。トランジスタ66aのドレインはまた、p型金属酸化膜半導体(MOS)トランジスタ64a1及び64a2のゲートに接続されており、それらトランジスタの各々は、電源電圧Vddにバイアスされた自身のソースを有する。トランジスタ64a2のドレインはトランジスタ66aのソースに接続され、そしてトランジスタ64a1のドレインは、SUMPノードにおいて抵抗器61に接続されている。同様に、トランジスタ66bのドレインはp型金属酸化膜半導体(MOS)トランジスタ64b1及び64b2のゲートに接続され、それらトランジスタの各々は、電源電圧Vddにバイアスされた自身のソースを有する。トランジスタ64b2のドレインはトランジスタ66bのソースに接続され、そしてトランジスタ64b1のドレインは、ノードSUMNにおいて抵抗器63に接続されている。抵抗器65はそのノードにおいて、トランジスタ66a及び66bのソース間に接続されている。抵抗器65は抵抗Rを有し、それは抵抗器61及び63の抵抗Rと等しい。加算ノードSUMNは抵抗器61を介して接地されており、加算ノードSUMPは抵抗器63を介して接地されている。好ましくは、トランジスタ64及び66は全て、お互いにサイズが一致する。
【0033】
図5bに示される通り、gmセル62はgmセル60と同一に構築されるのであり、ここにおいて詳細な説明はしない。gmセル62において、入力信号線SNS_P及びSNS_Nは、2つの差動レッグにおける向かい合ったn型MOSトランジスタのゲートに接続される。これらn型装置のソース間に接続された抵抗器69を備え、抵抗器69の抵抗が2R、すなわち抵抗器65,61,及び63における抵抗の2倍であるということにおいてのみ、gmセルの構造が異なる。このようにして、gmセル60の利得はgmセル62の利得の2倍となり、それにより、gmセル62に印加される完全に差動的な入力信号SNS_P及びSNS_Nとは反対に、入力信号DACOUTにおける(固定された中間レベルDACMIDに比較しての)シングルエンドの性質が補償される。
【0034】
動作において、トランジスタ66a及び66bの各々が、そのソースに接続されたボディノードを有するため、そしてトランジスタ66a及び66bの各々が、その対応する電流ソース671及び672から電流i1を伝導しなければならないため、トランジスタ66a及び66bの各々におけるゲート−ソース電圧(Vgs)は一定に留まらなければならない。そのようにして、信号線DACOUT及びDACMIDの電圧における如何なる違いをも、必然的に、抵抗器65をまたいで発現される。信号線DACOUTにおける電圧が信号線DACMIDにおける電圧に一致する、バランスされた状態において、抵抗器65をまたいでの電圧は発現しないのであり、従って、電流は抵抗器65を通じて伝導されない。トランジスタ64a2を通じて伝導される電流は、従って、電流i2と電流i1との間の差(すなわちi2−i1)に対応するのであり、トランジスタ64b2によって伝導される電流もまた、このバランスされた状態においては電流差i2−i1である。
【0035】
しかしながら、信号線DACOUT及びDACMIDにおいてゼロでない差動電圧が印加される場合、この差動電圧は抵抗器65をまたいで反映され、抵抗器に、対応する電流Δiを伝導させる。この電流Δiは当然ながら、電流ソース68a及び68bの影響を伝導固定電流i2として考慮に入れて、トランジスタ64a2及び64b2によって伝導される電流に反映されなければならない。例えば、DACOUT線における電圧がDACMID線における中間レベル電圧よりも高い場合、電流Δiは図5bにおいて、抵抗器65をまたいで左から右へと伝導されるであろう。トランジスタ64a2はこうして、電流[(i2−i1)+Δi]を伝導するであろうし、一方のトランジスタ64b2は電流[(i2−i1)−Δi]を伝導するであろう。トランジスタ64a1はトランジスタ64a2を通じての電流を映し出し、トランジスタ64b1はトランジスタ64b2を通じての電流を映し出すので、2つの差電流[(i2−i1)+Δi]及び[(i2−i1)−Δi]は加算ノードSUMP及びSUMNにそれぞれ印加され、抵抗器61及び63をまたいだ対応差動電圧を発現させる。gmセル62の動作も、その信号線入力SNS_P及びSNS_Nにおける差動電圧が結果的に抵抗器61及び63へと同様のやり方で印加される差動電流となるような、同様の動作である。しかしながら、抵抗器69はgmセル60における抵抗器65の2倍の抵抗を与えるので、gmセルによって生み出される差動電流は、同じ差動入力電圧に対してgmセル60により生み出される電流の2分の1であろう。従って、gmセル60及び62から抵抗器61への電流の合計は加算ノードSUMPにおける電圧を決定し、そしてgmセル60及び62から抵抗器63への電流の合計はまた、加算ノードSUMNにおける電圧を決定するであろう。そしてノードSUMP及びSUMNにおける差動電圧は、本発明のこの実施形態に従うところのgmセル60及び62への差動入力電圧の合計、を反映するであろう。
【0036】
gmセル60及び62からのこれら差動電流がお互いにバランスするようなバランス条件を、以下のように表すことができる:
1/2*(SNS_P−SNS_N)=(DACOUT−DACMID)
すなわち、gmセル60の利得はgmセル62の利得の2倍だからである。
加算ブロック46のこの構造は、VCM DAC40として用いられる典型的なシングルエンドDACの構造と互換性があり、感知増幅器52における出力電圧スイングは典型的に、DACMID線上の中間レベル値についての出力電圧スイングの2倍である。
こうして、加算ノードSUMP及びSUMNの間の差動電圧においての加算ブロック46の伝達関数を、以下のように表すことができる:
SUMP−SUMN=2(DACOUT−DACMID)−(SNS_P−SNS_N)
この表現から明らかな通り、装置が適切に適合されている限り(同じ集積回路において実装することによりそれらは適合されるであろう)、加算ブロック46の伝達関数は抵抗値及び他の素子値から独立している。
【0037】
図4に戻ると、SUMP及びSUMN線への差動電圧としての加算ブロック46の出力は、調整可能なgmセル48に印加され、gmセル48は出力部OUTP及びOUTNにおいて、出力部OUTP及びOUTNにおける差動電圧に対応する差動電流を生み出す。本発明における、この好ましい実施形態に従えば、調整可能なgmセル48は、回路中の別の場所において発生される利得調整電流igmTUNEに応答して、ループ帯域幅を、その相互コンダクタンスgmの関数として設定できるという意味で、調整可能である。
【0038】
図4において示される通り、利得調整電流igmTUNEは、ディスクドライブコントローラ7内部のプログラム可能な電流ソース47によって発生される。プログラム可能な電流ソース47は、基準電流igmTUNE(REF)に応答して、そして電流igmTUNEの基準電流igmTUNE(REF)への比率を選択するデジタル指令gm_TUNE_CMDに応答して、アナログ電流igmTUNEを発生させるための従来の回路である。本発明における、この好ましい実施形態に従えば、この基準電流igmTUNE(REF)、及び利得調整電流igmTUNEは、好ましくは、この内部制御ループの周波数応答及び帯域幅が、過程及び動作温度の変化に亘って少なくとも1次のオーダーまでは一定であるようにと、調整可能なgmセル48と同じ集積回路内のコンデンサの電気容量と共に変化する。以下で説明される通り、調整電流igmTUNEのレベルは、調整可能なgmセル48の相互コンダクタンスgmを制御し、そしてこの相互コンダクタンスgmは、ボイスコイル動作制御機能10のループ帯域幅における強力な因子である。このように、本発明における、この実施形態に従えば、この内部制御ループの性能を最適化できるように、利得調整電流igmTUNEのレベルはデジタル指令gm_TUNE_CMDを手段として調整可能であることが好ましい。制御ループの帯域幅は、調整電流igmTUNEがプリセットされるようにと、しかしながらファームウェアの変更により、調整電流igmTUNEを公称レベルから所望される通りに調節することができるようにと、典型的には公称レベルにプリセットされるであろうと考えられる。当業者であれば、図4に図解されているプログラム可能な電流ソース47のバリエーション、及びその代わりとなるものを、この利得調整電流igmTUNEを発生させるために、導くことができる。
【0039】
図6を参照して、本発明の好ましい実施形態に従うところの調整可能なgmセル48の構造が説明される。gmセル48の構造への、さまざまな従来型アプローチを代わりに用いることが可能であろうと考えられるが、しかしながら、図6において示される特定の構造は、それが調整可能であることに加えて、製造及び温度変化に亘るその安定性から、特に有利であると考えられる。調整可能なgmセル48はマスタ回路66を備え、マスタ回路66は、n型MOSトランジスタ76におけるテール電流と、スレーブ回路68内のn型MOSトランジスタ82における対応するテール電流を制御する。スレーブ回路68は加算ノードSUMP及びSUMNから差動電圧を受け取り、それに応じて、信号線OUTP及びOUTN上に出力差動電流を発生させる。
【0040】
マスタ回路66は、ソースがVdd電源電圧にバイアスされ、そしてゲートとドレインとがnpn型バイポーラトランジスタ72aのコレクタに接続された、p型MOSトランジスタ70aを含む、差動的gmセルを備える。この電流ミラーの第2のレッグは、ソースがVddであって、ゲートがトランジスタ70aのゲート及びドレインに接続されている、p型MOSトランジスタ70bを備える。トランジスタ70bのドレインはnpn型バイポーラトランジスタ72bのコレクタに接続されており、npn型バイポーラトランジスタ72bは、トランジスタ72aのエミッタと同様にテール電流トランジスタ76のドレインに接続されたエミッタを有する。トランジスタ76のソースは接地されている。npn型バイポーラトランジスタ72a及び72bのベースは、後述される通り、調整可能なgmセル48の相互コンダクタンスgmを決定する、固定されているかまたは調節された電圧である差動基準電圧ΔVを受け取る。トランジスタ72a及び72bは、サイズ、伝導度、及び他の特性がお互いに一致する。
【0041】
トランジスタ70bのドレインとバイポーラトランジスタ72bのコレクタとにおけるノードは、p型MOSトランジスタ75のゲートに接続されており、p型MOSトランジスタ75はVdd電源電圧においてソースを有し、またそのドレインはマスタ回路66内のトランジスタ76のゲートに接続されている。このノードはまた、スレーブ回路68内のn型MOSトランジスタ82のゲートに接続されており、そしてトランジスタ75をオン状態に維持するためにバイアス電流iBを伝導する電流ソース81を通じてバイアスされている。コンデンサ74はトランジスタ75のドレインとゲートとの間に繋がれている。加えて、トランジスタ70bのドレインとバイポーラトランジスタ72bのコレクタとにおけるこのノードはまた、電流igmTUNEを地面に伝導する電流ソース85に接続されている。電流ソース85は、プログラム可能な電流ソース47(図4)の一部であってよいし、そのような電流を映し出す電流ミラートランジスタであってよいし、または、そのような他の手段で、上述されたこの利得調整電流igmTUNEを提供するために構築されていてよい。このことは、本明細書を参照すれば当業者にとって明らかであろう。
【0042】
スレーブ回路68は、お互いにサイズが一致する、そしてそのサイズはマスタ回路66内のトランジスタ72a及び72bと一致する、npn型トランジスタ80a及び80bの差動的ペアを備える。トランジスタ80a及び80bのエミッタはお互いに接続されており、そして、トランジスタ76のゲートに接続されたゲートと接地されたソースとを有するn型MOSトランジスタ82のドレインに接続されている。トランジスタ80aのコレクタは出力ノードOUTNにおいてp型MOSトランジスタ78aのドレインに接続されており、そしてトランジスタ80bのコレクタは、出力ノードOUTPにおいてp型トランジスタ78bのドレインに接続されている。トランジスタ78a及び78bのソースはVdd電源電圧におかれており、それらのゲートは、共通モードフィードバックブロック84によって制御される。共通モードフィードバックブロック84は、当該技術分野において知られている通りの、出力ノードOUTP及びOUTNの共通モード電圧がDC動作範囲内で実質的に一定のままであることを保証するための、従来の共通モードフィードバック制御回路である。
【0043】
動作において、トランジスタ70bのゲート電圧はトランジスタ70aにスレーブされていることを考慮し、マスタ回路66は、差動基準電圧ΔVに応答して、そのバイポーラトランジスタ72a及び72bを通じて差動電流を発現させる。この差動電圧は、トランジスタ76により伝導されるテール電流を定めるために、利得調整電流igmTUNEを加算する。利得調整電流igmTUNEがマスタ回路66における不均衡を引き起こす限りにおいて、トランジスタ70bのドレイン電圧は変調(modulate)するであろう。それはトランジスタ76のゲート電圧を変調し、そしてそれ故に、トランジスタ76によって伝導されるテール電流を調節する。結局、トランジスタ76を通じてのテール電流は、差動基準電圧ΔVにより確立される差動電流が利得調整電流igmTUNEによりバランスされることになるようなバランス条件に達するまで、調節される。このバランス条件において、マスタ回路66は以下の通り明確に定まった相互コンダクタンスgmを有する:
【数1】
【0044】
こうして、この相互コンダクタンスは利得調整電流igmTUNEと基準差動電圧ΔVとにより定められ、そして以下に更なる詳細が説明される通り、デジタル指令gm_TUNE_CMDを手段として利得調整電流igmTUNEを制御することにより調整可能である(ΔVを固定したと仮定している)。
【0045】
トランジスタ76及び82のゲートがお互いに接続されており、そしてトランジスタ75のドレイン電圧によって制御されるために、このトランジスタ76により伝導されるテール電流はトランジスタ82を通じて映し出される。このように、マスタ回路66により定められるテール電流はまた、スレーブ差動回路68内のトランジスタ82により伝導されるテール電流でもある。そして、トランジスタ80a及び80bはトランジスタ72a及び72bと一致するために、スレーブ回路68の相互コンダクタンスgmはマスタ回路66のそれと一致し、従ってまた利得調整電流igmTUNEと基準差動電圧ΔVとにより定められ、そして利得調整電流igmTUNEを手段として調整可能である。SUMP及びSUMN線におけるその差動電圧信号はこうして、上述のマスタ回路66により設定された相互コンダクタンスにおいてのOUTP及びOUTN線における差動電流として反映される。
【0046】
図4に戻ると、調整可能なgmセル48の出力部におけるOUTP及びOUTN線は、出力増幅器50の差動入力部に接続されている。出力増幅器50は次に、ボイスコイルモータ12に端子T3及びT4を介して接続された、その差動出力部において、出力電流iOUTを生み出す。ボイスコイルモータ12はそれから、出力電流iOUT(どちらの極性であってもよい)を用いて駆動され、所望のトルク、及びアクチュエータアーム17における所望の回転並進(rotational translation)を生み出す。
【0047】
図4に示されている通りのボイスコイルモータ12に対する電気的等価物から明らかなように、そして当該技術分野において既知である通り、ボイスコイルモータ12のインダクタンスLmは、ボイスコイル動作制御機能10により制御される内部制御ループへの理想的でない周波数応答を与える。そのようなわけで、図4において示される通り、好ましくはループ補償がボイスコイルモータドライバ42の内部に備えられるか、またはそれに接続される。
【0048】
本発明におけるこの好ましい実施形態に従うところの、加算ブロック46及び調整可能なgmセル48を含む完全な差動段としての、ボイスコイルモータドライバ42の構造があるために、所望の補償をもたらすためには、お互いが直列接続され、そしてコンデンサCpと並列接続された、抵抗器RC及び積分コンデンサCCの単一の補償ネットワークのみを、差動出力線OUTP及びOUTNをまたいで利用すればよい。上述の通り、従来の完全な差動ボイスコイルモータドライブ機能は、1つが各々の差動線のためであるような、2つのそのような補償ネットワークを必要とした。本発明におけるこの実施形態に従えば、抵抗器RC及びコンデンサCC,CPによる、この補償ネットワークは、ボイスコイルモータドライバ42へ外部素子を用いて実現できる。この場合において、完全な差動ボイスコイルモータ制御機能の実現コストがこの観点から過度に増大しないようにと、2つの外部端子及びこれら3つの外部素子のみが必要とされるであろう。
【0049】
当該技術分野において基本的であるように、ボイスコイルモータ12の周波数応答は、「極」周波数fpoleを有するであろう:
【数2】
ここにおいてR44は感知抵抗器44の抵抗である。
従って、この極に対する内部制御ループの適切な補償には、抵抗器RC及びコンデンサCCの直列RCネットワークにより決定される「ゼロ」周波数fzeroが含まれるであろう。
【数3】
【0050】
このゼロ周波数fzeroは外部素子により正確に実現可能ではあるが、最新の集積回路における製造のばらつきにより、コンデンサCCの電気容量がおよそ10%程度、いずれかの方向へ変化し得るのであるし、そして従来の多結晶シリコンまたは拡散抵抗器Rrの抵抗値が、更に幅広く変化し得る。
【0051】
本発明における好ましい実施形態に従えば、お互いが直列に接続され、そしてコンデンサCpと並列に接続された、抵抗器RC及び積分コンデンサCCの十分に正確な補償ネットワークは、ボイスコイルモータドライバ42と共に「オンチップ」で実現可能であり、さらにはディスクドライブシステムの製造コストを削減する。加えて、本発明におけるこの実施形態に従えば、このネットワークにおける抵抗器RCを、温度や製造過程の変化に亘って少なくとも1次のオーダーまでは一定であるような周波数応答において「ゼロ」周波数を与えることができるように、実現可能である。
【0052】
図7は、本発明におけるこの実施形態に従い、お互いが直列に接続され、そしてコンデンサCpと並列に接続された、抵抗器91(抵抗RCを有する)及び積分コンデンサCCのオンチップ補償ネットワークの構造を図解している。本発明におけるこの実施形態に従えば、周波数ロールオフコンデンサCp及び高積分コンデンサCCは、以下に説明されるような、所望の特性により決定される電気容量値を有する集積回路コンデンサのための、従来のやり方により構築される。カットオフ周波数を超えての所望のロールオフ利得を提供するために、ロールオフコンデンサCpの値は従来のやり方で選択されるであろう。コンデンサCpはピコファラッド(picofarad, pF)程度の電気容量を有し、そのようなものはボイスコイルモータドライバ42と同じ集積回路内部において容易に実現可能と考えられる。本発明の、この実施形態における抵抗器91は、お互いが直列に接続されており、また積分コンデンサCCと直列になっているソース−ドレイン経路を有する、n型MOSトランジスタ90a及び90bのペアで構築される。補償抵抗器91を実現するために、このやり方で直列に接続されるトランジスタ90の数は、ボイスコイルモータ12の特性に依存して変わり得る。トランジスタ90a及び90bのゲートはお互いに共通して接続されており、ゲート電圧Vgateにバイアスされている。そのようにして、ゲート電圧Vgateは、トランジスタ90a及び90bにより与えられるソース−ドレイン抵抗、そして補償ネットワーク内の抵抗器91の抵抗RCを制御する。
【0053】
この直列なトランジスタ90の数はプログラム可能なように、例えば各々のトランジスタ90に並列に配置されたスイッチングトランジスタを手段として制御できると考えられる。図8は、この代替的なやり方における、抵抗器91’の構造を図解している。そのやり方においては、3つのトランジスタ90a,90b,90cが、直列に接続されたソース−ドレイン経路を有し、そしてそれらトランジスタのゲートは、お互いに共通して接続されており、ゲート電圧Vgateにバイアスされている。この例において、トランジスタ90b及び90cは、対応する各々のバイパスn型MOSトランジスタ93b及び93cのソース/ドレイン経路と並列に接続された、ソース/ドレイン経路を有する。トランジスタ93b及び93cのゲートは独立デジタル制御信号BYP_B,BYP_Cを受信する。そのようにして、抵抗器91’の抵抗RCは、トランジスタ93b及び93cのいずれか一方、またはその両方についての調整を行い、各々のトランジスタ90b及び90cのいずれか一方、またはその両方をショートさせることにより、制御可能である。ゼロでない最小の抵抗値RCは、補償のためには常に要求されるであろうと考えられるので、トランジスタ90aに並列に接続されているようなバイパストランジスタは存在しない。このようなやり方で、補償ネットワークにおける抵抗器91’の抵抗RCのデジタル制御が、この代替的実装により与えられる。
【0054】
本発明における好ましい実施形態に従えば、変化する過程及び温度に亘ってゼロ周波数fzeroが一定であることを保証するために、ゲート電圧Vgateがマスタ−スレーブ回路から発生される。図7に戻ると、このマスタ−スレーブ回路の「マスタ」側には、プログラム可能な電流ソース57の制御下において調整電流iTUNEを伝導する電流ソース90が備えられている。プログラム可能な電流ソース57は基準電流iTUNE(REF)を受信する。調整電流iTUNEは基準電流iTUNE(REF)に基づく。プログラム可能な電流ソース57はまた、調整電流iTUNEの基準電流iTUNE(REF)に対する比率を制御する、デジタル指令値TUNE_CMDを受信する。例えば、調整電流iTUNEがプログラム可能な電流ソース57内部を伝導する電流に比例するようにと、電流ソース90は電流ミラーに属するかもしれないし、あるいは、プログラム可能な電流ソース57は、従来のやり方によって電流ソース90の伝導を制御するために、制御信号(電圧または電流)を発行するかもしれない。本発明における、この好ましい実施形態に従えば、基準電流iTUNE(REF)、そして調整電流iTUNEは、例えば以下に説明がされるクロック発生器回路56内のコンデンサのような集積回路コンデンサの電気容量が変わるとともに変化する。変化する過程や温度に亘って、少なくとも1次のオーダーまでは一定であるようなゼロ周波数fzeroを得るために、そのようなコンデンサのサイズ及び誘電体における過程変化が電流ソース90により伝導される電流iTUNEに反映されるよう、調整電流iTUNEはボイスコイル動作制御機能10と同一の集積回路内で実現されるコンデンサの電気容量に基づくべきである。
【0055】
図9は、本発明におけるこの好ましい実施形態に従って、電気容量依存調整基準電流iTUNE(REF)を発生させるための、そして、調整可能なgmセル48の利得を制御するためにプログラム可能な電流ソース47(図4)に印加される電気容量依存基準電流igmTUNE(REF)を発生させるための、クロック発生器回路56の構造を図解する。当然ながら、これらの電流iTUNE(REF) 及びitmTUNE(REF)を発生させるために別の回路を用いてよいということは想定されているし、実際に、そのような回路がクロック発生器回路である必要はない。本明細書を参照した当業者であれば、そのような代わりの回路を容易に導き出せるであろう。しかしながら、そのようなクロック発生器回路は、ディスクドライブコントローラ7の動作のために他の理由から必要とされるので、本発明に従ってディスクドライブコントローラ機能を実現するときの効率性のためには、電流iTUNE(REF) 及びitmTUNE(REF)を併せて発生させるためにクロック発生器回路を用いることが特に便利であると考えられる。
【0056】
クロック発生器回路56は、調整可能なgmセル48及び出力増幅器50と同じ集積回路内に、本発明におけるこの実施形態に従って実現されるような、集積回路コンデンサ54、の充電及び放電に基づいて、出力クロック信号CLKを発生させる。コンデンサ54はVCC電源より、電流ソース50a及びスイッチ51aを介して(地面に対して)充電され、そしてスイッチ51b及び電流ソース50bを介して放電される。当該技術分野において既知である通り、この回路におけるスイッチ51a,51b,及び他のスイッチは、当然ながら従来のトランジスタを経由して実装される。本発明におけるこの実施形態に従えば、電流ソース50a及び50bの各々は、コンデンサ54を充電または放電し、従ってコンデンサ54の電気容量に依存するような電流に対応する、電流ICを伝導する。この電流ICは、出力クロック信号CLKに基づき、コンデンサ54の変化する電気容量に亘って所望の周波数のクロック信号CLKを与えるレベルへと電流ICが調節されるよう、電流トリム回路49によってトリム可能である。
【0057】
スイッチ51a及び51bは論理回路58により制御され、相補的に重複しないように動作する。スイッチ51a及び51bが動作する周波数は、コンデンサ54をまたいだ電圧が実質的には折れ線三角形型波形(piecewise−linear triangle waveform)となるように、コンデンサ54が充電されて放電されるRC時定数よりも相当に高いと考えられる。
【0058】
コンデンサ54は比較器55の負入力部へと接続されている。比較器55は、その正入力部において、抵抗分割器52から選択された電圧レベルを受け取る。抵抗分割器52は、基準電圧VREFと地面との間に接続された抵抗器の組として構成されている。抵抗分割器52内において、高い方の電圧ノードは、スイッチ53hiを介して、比較器55の正入力部に接続されており、低い方の電圧ノードはスイッチ53loを介して接続されている。スイッチ53hi及び53loは、相補的であって重複しないようなやり方で、論理回路により制御される。すなわちスイッチ51aが閉じられている間にはスイッチ53hiが閉じられており(コンデンサ54を充電する)、スイッチ51bが閉じられている間にはスイッチ53loが閉じられている(コンデンサ54を放電する)。このように、比較器55は実質的に、充電サイクルのために、併せて放電サイクルのために、コンデンサ54をまたいだ電圧を比較する対象としての、2つの基準レベルを有する。比較器55はこうして、スイッチ51a及び51bの切り替えの周波数に対応する矩形波信号を実質的に発生させる。この矩形波はバッファ57へと印加され、バッファ57はクロック信号CLKを生成する。クロック信号CLKはまた、論理回路58及び電流トリム49にフィードバックされる。
【0059】
上述の通り、クロック信号CLKの周波数が所望の周波数に一致するように、電流トリム49は、コンデンサ54が充電され、そして放電される電流ICを調節する。すなわち、コンデンサ54の電気容量が公称よりも高い場合には、電流ICは電流トリム49により増加され、コンデンサ54の電気容量が公称よりも低い場合には電流ICは減少される。従って、電流ICはコンデンサ54の電気容量が変わると共に変化する。
【0060】
この電流ICは、基準電流iTUNE(REF)及び基準電流igmTUNE(REF)を生み出すために、電流ミラー59を介して、映し出される。従って、これら電流iTUNE(REF)及びigmTUNE(REF)の各々は、電流ICの固定比率であって、そしてまた、コンデンサ54の電気容量が変わると共に変化する。電流iTUNE(REF)は図7におけるプログラム可能な電流ソース57へと印加され、プログラム可能な電流ソース57は次に電流ソース90を制御し、そして基準電流igmTUNE(REF)が図4におけるプログラム可能な電流ソース47へと印加されるか、またはこれを制御する。
【0061】
電流ソース90は、クロック発生器回路56の電流ミラー59の一部と対応してよいし、あるいは、コンデンサ54の電気容量に基づく調整電流iTUNEを伝導するように制御される。この調整電流は、自身のドレインと、そしてペアを成すn型MOSトランジスタ94のゲートと、に接続されたゲートを有するn型MOSトランジスタ92のドレインへの、調整電流iTUNEであって、トランジスタ92及び94のソースは接地されている。この電流の「スレーブ」レッグ内にあるトランジスタ94のドレインは、自身のドレインが演算増幅器98によってバイアスされており、自身のゲートが演算増幅器100によってバイアスされているような、n型MOSトランジスタ96のソースに接続されている。好ましくは、本発明におけるこの実施形態に従って、n型MOSトランジスタ96は、そのサイズ及び構造がトランジスタ90a及び90bの各々に一致する。演算増幅器98は、自身の出力部に繋がれた反転入力部と、基準電圧VREF+ΔV/2を受信する非反転入力部と、を有する。電圧VREFは、実質的には差動出力線OUTP及びOUTNにおける共通モード電圧に対応する基準電圧であり、電圧ΔVは数百ミリボルト(mV:millivolt)程度の定電圧である。演算増幅器100は、基準電圧VREF−ΔV/2を受信する非反転入力部と、トランジスタ96のソース及びトランジスタ94のドレインにおけるノードに繋がれた反転入力部と、そして電圧Vgateを駆動する出力部とを有する。Vgateは「スレーブ」レッグ内のトランジスタ96のゲートに印加され、併せてトランジスタ90a及び90bのゲートに印加される。
【0062】
動作において、トランジスタ92によって伝導される電流iTUNEは、トランジスタ96もまた電流iTUNEを伝導するようにと、トランジスタ94に映し出される(非常に高い入力インピーダンスを与える演算増幅器への入力である)。演算増幅器98は、トランジスタ96のドレインを基準電圧VREF+ΔV/2にバイアスする。他方、演算増幅器98は、基準電圧VREF−ΔV/2と等しくなるトランジスタ96のソースにおける電圧と結果的に一致するレベルにおいて、ゲート電圧Vgateを発現させる。そのようにして、トランジスタ96のソース−ドレイン電圧は、演算増幅器98及び100によって、強制的に電圧ΔVとされる。そしてトランジスタ96のソース−ドレイン電流は、トランジスタ92及び94の電流ミラーの動作により、強制的に電流iTUNEとされる。従って、トランジスタ94のソース−ドレイン抵抗はΔV/iTUNEであり、合計で抵抗器91の抵抗RCを成すトランジスタ90の各々の抵抗と同様である。
【0063】
電気容量CCを、過程及び温度の変化とともに変わる容量値を有するものとして、以下のように考えることができる。
【数4】
ここにおいて、C0は公称値であり、εは、温度及び過程の変化から生じる、この公称値C0からのわずかな変化である。既に論じたとおり、電流iTUNEは電気容量の変化を反映する基準電流iTUNE(REF)に比例して発生するのであり、電流iTUNE自身もまた電気容量の変化を反映する。
【数5】
ここにおいて、I0は電流iTUNEに対する公称値である。そのようにして、電流iTUNEは、少なくとも1次のオーダーに亘っては、電気容量CCの変化と共に変化する。そして上述の通り、電流iTUNEは、プログラム可能な電流ソース57か、または別のそのような回路を用いて調整可能である。
【0064】
上述の通り、トランジスタ90a及び90bはトランジスタ96と物理的に一致し、ほぼ同一の動作条件で(電圧VREFはほぼ、差動出力線OUTP及びOUTNにまたがった共通モード電圧である)、同一のゲート電圧を受信する。トランジスタ90の各々の実体はこうして、トランジスタ96におけるソース−ドレイン抵抗ΔV/ITUNEと同一のソース−ドレイン抵抗を与えるのであって、こうして抵抗RCが以下のように得られる:
【数6】
ここにおいてNは、組を成して抵抗器91を形成するトランジスタ90の数である(図7の例においてはN=2であり、図8の例においては、Nは1から3へと変化する)。結果として、電流iTUNEを調節することにより抵抗RCを調整可能であり、そして抵抗RCは過程や温度変化に起因して電気容量が変わることに逆比例して、変化する。
【0065】
既に論じた通り、抵抗器91及びコンデンサCCの直列RCネットワークにより決定されるゼロ周波数fzeroを導くことができる:
【数7】
または、上述された抵抗RC及びコンデンサ電気容量CCの表現を参照すれば、以下の通りとなる:
【数8】
【0066】
この表現から明らかな通り、ゼロ周波数fzeroは、過程パラメータまたは動作温度の変化に起因する公称からの変位εからは独立している。図8に関連して上述した通り、ボイルコイルモータ12の極における大きな変化が求められている場合には、N個の多数トランジスタ90を、抵抗器91’を形成するよう直列にし、それらトランジスタ90の1以上に対して並列にスイッチング装置93を与えて、ゼロ周波数fzeroがより幅広く(電流iTUNEのトリミングまたは調節により達成される調節レベルを超えて)変化するよう構成することが可能である。
【0067】
システムの周波数応答における極周波数fpoleを相殺するよう、ゼロ周波数fzeroは選択可能であると仮定し、そしてコンデンサCpの電気容量がコンデンサCCのそれと比較して小さいと仮定すれば、内部制御ループ帯域幅BWを以下のように表すことができる:
【数9】
ここでG(drv)は出力増幅器50の利得であり、G(sns)は感知増幅器52の利得であり、そしてgmは調整可能なgmセル48の利得である。コンデンサCCの電気容量は、そのオンチップ構造により固定されていると考えれば、デジタル指令TUNE_CMDの値の変化を介して電流igmTUNEを調節することで、調整可能なgmセル48の利得を調節することにより、ループ帯域幅は調節可能である。加えて、調整可能なgmセル48の利得gmは、それ自身がオンチップコンデンサ54の電気容量に依存する、その調整電流igmTUNEに依存するので、ループ帯域幅BWはまた、少なくとも1次のオーダーでは、過程の変化や動作温度の変化に亘って一定である。この内部制御ループにおけるDC利得Gm(ω=0)は、以下のように表すことができる:
【数10】
この、DCにおける相互コンダクタンス利得Gmは一定値に留まる。
【0068】
本発明におけるこの実施形態に従えば、たとえボイスコイルモータ制御機能10が完全に差動的な形式で実現されているとしても、そのボイスコイルモータ制御機能10の内部制御ループに対してオンチップ補償ネットワークが与えられる。従って、本発明に従えば、線形スイングヘッドルームを低減させ、より低い電源電圧を可能とするという重要な利点が得られるだけでなく、この補償ネットワークのオンチップでの実現により、ディスクドライブコントローラを実装するために要求される外部端子や外部素子の数を減らすことができ、結果として回路基板のスペースも削減される。更には、本発明におけるこの実施形態に従って得られる補償ネットワークはまた、過程や動作温度の変化に亘り、少なくとも1次のオーダーにおいては安定しており、実際にゼロ補償周波数は、比較的単純な回路技法を用いて調整可能である。
【0069】
本発明の代替的実施形態に従えば、その機能内部への各々の差動線に対してオンチップ補償が与えられるような、完全な差動ボイスコイルモータ制御機能110が与えられる。より具体的には、上述の本発明における第1の好ましい実施形態に備えられていたよりも、より単純な加算機能を用いることができる。それは2つの補償ネットワークを必要とするが、しかしながらそこにおいて、これら補償ネットワークはボイスコイルモータ制御機能110と共に「オンチップで」実現可能である。本発明におけるこの実施形態の更なる詳細な説明のために、図10へと注意が向けられる。
【0070】
本発明におけるこの実施形態に従えば、VCM DAC112の入力部においてデジタルトルク指令TRQ_CMDが受信される。TRQ_CMDは、ボイスコイルモータ120によって与えられるべきトルクの所望の極(方向)及び大きさに対応しており、ボイスコイルモータ120は前述同様、インダクタンスLm及びその寄生抵抗Rmによって表される。本発明におけるこの実施形態では、VCM DAC112は差動デジタルアナログ変換器であり、差動出力部を有し、加算ノードS1及びS2に、それぞれ抵抗器113a及び113bを介して接続されている。本発明における前述の実施形態と同様、感知抵抗器121が、ボイスコイルモータ120に直列に備えられている。端子T5及びT6は、感知抵抗器121の反対側に接続されている。差動感知増幅器122は端子T5及びT6に繋がれた差動入力部を有し、そして、その差動出力部において、感知抵抗器121をまたいでの差動電圧に対応して、差動信号を発生させる。感知増幅器122からの差動出力線は、抵抗器115a及び115bを介して、加算ノードS1及びS2に繋がれている。
【0071】
加算ノードS1及びS2は、差動誤差増幅器114のそれぞれの入力部に接続されている。誤差増幅器114の差動出力部は、出力増幅器118(これも差動増幅器である)の差動入力部に接続されている。出力増幅器118の差動出力部は端子T3に接続されており、そしてボイスコイルモータ120にまたがっている。本発明におけるこの実施形態に従えば、端子T3から端子T4への電流の極性が、VCM DAC112の出力部における差動信号の極性と同じになるように、差動誤差増幅器114と差動出力増幅器118との各々は反転している。
【0072】
動作において、VCM DAC112からの差動出力と、感知増幅器122の差動出力とは、加算ノードS1及びS2において加算される。この例において、先に示唆された極性を考えると、これら差動信号の極性はお互いに反対である。加算ノードS1及びS2にまたがっての差動電圧は、電流iOUTがトルク指令TRQ_CMDによって指令されるレベルに一致するようなバランス条件においてゼロとなるであろう。
【0073】
本発明におけるこの実施形態に従えば、ボイスコイルモータ120のリアクタンスLmに起因する、制御ループの周波数応答における極に対する補償は、差動誤差増幅器114の各々の入力部及び出力部をまたいで接続された補償ネットワークにより影響を受ける。より具体的には、抵抗器116aに直列な積分コンデンサCCと並列であるような、増幅器114の負入力部と増幅器114の正出力部との間の補償コンデンサCpにより、1つのそのような補償ネットワークは実現される。同様に、積分コンデンサCC及び抵抗器116bの直列ネットワークと並列であるような補償コンデンサCpが、差動誤差増幅器114の正入力部と負出力部との間に接続されている。抵抗器116a及び116bは、直列に接続されたソース−ドレイン経路と、共通に接続され、ゲート電圧Vgateにバイアスされたゲートと、を有する1以上のn型トランジスタ(そのうちの2つが、この例において示されている)によって、各々実現される。前述同様に、抵抗器116a及び116bは代替的に、幾つかのそのような、直列に接続されていて、ソース−ドレイン経路のうち選択されたものを、制御可能かまたはプログラム可能なやり方で、所望される場合にはショートさせるスイッチングトランジスタを有する、トランジスタによって実現されてもよい。
【0074】
そして本発明におけるこの実施形態に従えば、例えば図7に関連して説明した通り、抵抗器116a及び116bの各々が呈する抵抗が基準電圧ΔVの調整電流iTUNEへの比率に対応するよう、ゲート電圧Vgateはマスタ/スレーブ回路によって得られる。
ここで調整電流iTUNEは、変化する温度及び過程に亘って少なくとも1次のオーダーでは安定するように、電気容量と共に変化する。本発明における、この代替的実施形態に従い、この制御ループの周波数応答へと盛り込まれるゼロ周波数fzeroもまた、変化する過程及び温度に亘って1次のオーダーまでは一定である。
【0075】
更には、上述の通り、これら補償ネットワークによって確立されるゼロ周波数fzeroを、抵抗器116a及び116b内部のトランジスタ(上記のやり方で実装されているならば)のin及びoutを切り替えることにより、粗い感覚で調整することが可能である。更に、この補償は、外部の補償ネットワークと同程度に正確なやり方で、しかしながらオンチップ素子によって、達成される。結果として、この内部制御ループの安定した正確な補償のために、外部端子または素子は必要とされない。
【0076】
本発明は、特定の例示的実施形態に従って説明されてきたものではあるが、当然ながら、これら実施形態への、本発明の利点及び恩恵を得られるような修正及び代替が、本明細書及び図面を参照した当業者にとって明らかとなるであろう。そのような修正及び代替は請求の範囲に記載された本発明の範囲に属するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、従来のボイスコイルモータ制御及び駆動回路の、結線図形式での電気回路図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施形態に従って構築されるディスクドライブシステムの、ブロック形式での電気回路図である。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施形態に従った、図2のディスクドライブシステムにおけるサーボ制御とボイスコイルモータ制御機能のブロック形式での電気回路図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施形態に従った、ディスクドライブシステムのためのボイスコイルモータ制御機能の、ブロック形式及び結線図形式での電気回路図である。
【図5】図5aと図5bとは、本発明の好ましい実施形態に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能における加算ブロックの、それぞれブロック形式と結線図形式とでの電気回路図である。
【図6】図6は、本発明の好ましい実施形態に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能における調整可能なgmセルの、結線図形式での電気回路図である。
【図7】図7は、本発明の好ましい実施形態に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能におけるオンチップ補償ネットワーク中のバイアスを制御するためのマスタ回路の、ブロック形式及び結線図形式での電気回路図である。
【図8】図8は、本発明の好ましい実施形態の別の実装に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能における補償ネットワーク中の抵抗器の、結線図形式での電気回路図である。
【図9】図9は、本発明の好ましい実施形態に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能におけるオンチップ補償ネットワークのために調整電流を発生させるためのクロック回路の、結線図形式での電気回路図である。
【図10】図10は、本発明における別の好ましい実施形態に従った、ディスクドライブシステムのためのボイスコイルモータ制御機能の、ブロック形式及び結線図形式での電気回路図である。
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御の領域内にあって、より具体的には、ディスクドライブシステムにおけるボイスコイルモータの制御へと向けられている。
【0002】
発明の背景
本発明はモータ制御の領域内にあって、より具体的には、ディスクドライブシステムにおけるボイスコイルモータの制御へと向けられている。
【0003】
磁気ディスクドライブ技術は、最新のパーソナルコンピュータシステムにおいて支配的な不揮発性大容量記録技術であって、例えばポータブルデジタルオーディオプレーヤのような他の装置における大容量記録アプリケーションにとって重要な記録技術であり続けている。磁気ディスクドライブの領域において基本的であるように、ディスク円盤状記録媒体表面に配置された強磁性材料の層における、ある場所(「ドメイン」)を磁化することによって、データは書き込まれる。各々の磁化されたドメインは磁気双極子を形成し、その双極子の向きに対応する記録されたデータ値を有する。データビットのドメインへの「書き込み」は、物理的に磁気ディスクの近くに配置された小さな電磁石コイルへ電流を流すことによって、典型的には達成されるのであり、コイルを通るその電流の極性が、誘導される磁気双極子の向きを決定し、そしてディスクに書き込まれるデータ状態を決定する。最新のディスクドライブにおいて、磁気抵抗素子は、ディスク表面の選択された場所における磁気双極子の向きを感知し、そして記録されたデータ状態を読み出すために用いられる。典型的に、その書き込みコイルと磁気抵抗素子とは、読み出し/書き込み「ヘッド」の内部に、物理的に置かれる。
【0004】
従来のディスクドライブシステムにおいては、スピンドルモータがディスク円盤状記録媒体を回転させ、そして「ボイスコイル」モータが、モータからの遠位端において、読み出し/書き込みヘッドがその上に搭載されたアクチュエータアームを動かす。ボイスコイルモータはそのようにして、所望のアドレスに対応するディスク表面のトラックへと読み出し/書き込みヘッドを動かす。ディスク表面上の位置インジケータが感知され、そして所望の場所へのアクチュエータアーム位置の調節のために制御ループへとフィードバックされるという点において、従来のボイスコイルモータはサーボ制御されていた。典型的に、「外部」制御ループは、フィードバック位置信号をアクチュエータの所望の位置と比較するのであり、そしてこれらの値の差から、トルク指令値が得られる。所望の方向へアクチュエータアームを動かすためのモータトルクを生み出すボイスコイルモータへの駆動電流を生み出すために、トルク指令は用いられる。従来のボイスコイルモータ制御回路には、「内部」制御ループも併せて備えられており、そこにおいては、モータへ流される電流が感知され、そしてこのモータ電流の制御のために、フィードバックループに流される。
【0005】
図1は、ディスクドライブシステムにおけるボイスコイルモータのための従来の駆動回路を図解している。VCMデジタル/アナログ変換器(DAC)22は、ボイスコイルモータのための「外部」サーボ制御ループからデジタルトルク指令信号TRQ_CMDを受信し、そして抵抗器23を介して誤差増幅器24の負入力部へとアナログ信号を生み出す。誤差増幅器24は、その正入力部において基準電圧VREFを受信する。誤差増幅器24のシングルエンド出力は出力増幅器28に印加され、出力増幅器28は、その出力端子T3及びT4において差動出力電流iOUTを発生させる。この出力電流iOUTはモータMへと流され、モータMは、インダクタLm及び寄生抵抗Rmの形で、インピーダンスを出力増幅器28に与える。ループには、モータMと共に感知抵抗器31が含まれており、そしてこの抵抗器31を通した電圧は、感知増幅器32により、端子T5及びT6において感知される。感知増幅器32の出力は、抵抗器25を介して、VCM DACの出力において加算ノードに印加される。そのようなものとして、DAC22の出力部における所望のトルク信号への負のフィードバックとして、感知抵抗器31を通しての電圧が印加される。回路がバランスされている(すなわち、電流iOUTが、トルク指令信号TRQ_CMDに対応する所望の電流に等しい)場合、誤差増幅器24の負入力部における電圧は基準電圧VREFに一致するであろう。
【0006】
制御システムの技術分野において基本的であるように、モータMにより与えられるインピーダンスが、この内部制御ループの応答特性を決定する。具体的には、モータMのインダクタンスLmが、システムの応答が周波数と共に変化するようなこのループの周波数応答における「極」を定め、そして振動が起こりうる周波数を定める。その技術分野において既知である通り、制御ループの周波数応答がシステム要件を満たすことができるように、そして動作が不安定になることを回避するために、モータの周波数応答に対する補償を制御ループに実装することが可能である。図1における従来の回路では、そのような補償は、誤差増幅器24を介して接続されたR−Cネットワークを経由して実現される。この場合において、補償ネットワークには、抵抗器26及びコンデンサ27の直列ネットワークと並列接続されたコンデンサ25が含まれる。コンデンサ25、27及び抵抗器26の素子値は、モータMのインダクタンスLm及び抵抗Rmと、そして制御ループの動作周波数に対する所望の帯域幅(すなわち、その範囲に亘って制御ループが適正な応答を有するような周波数範囲)とに基づく。
【0007】
制御システムの技術分野において周知な通り、コンデンサ27は制御ループにおける積分器として役立つのであり、それは制御ループの周波数応答において、より低い周波数でのより高い利得を与える。制御ループ応答へと盛り込まれる90°位相シフト(及び対応しての位相マージンの減少)に対抗するべく、抵抗器26は、コンデンサ27を積分し、安定性を改善することにより、応答特性を平坦化する。コンデンサ25は、所望のカットオフ周波数を超えた高周波数における応答をロールオフする。
【0008】
図1に示すとおり、(抵抗器23及び25のような受動素子に加えて)VCM DAC22、誤差増幅器24、出力増幅器28、及び感知増幅器32が、単一の集積回路20へと実装される。従来のサイズとインピーダンスとであるボイスコイルモータMのために、コンデンサ25、27、及び抵抗器26の補償ネットワークに対して要求される素子値は、典型的には「オフチップ」で、集積回路20の外部において、実現されるものである。図1において示される通り、この補償ネットワークは、集積回路20の端子T1及びT2にまたがって接続されるのであり、また示されている通り、T1及びT2は、誤差増幅器24の入力及び出力部に接続される。これら素子は外部から接続されるので、それらの値を高精度で選択し、正確な補償を与えることができる。反対に、仮にコンデンサ25、27及び抵抗器26が「オンチップ」で実装されているとすれば、それらの素子値は10−20%程度変わりうるであろう。最新のボイスコイルモータ制御ループを適当に補償するためには、それを許容することはできない。
【0009】
誤差増幅器24の出力部におけるシングルエンド信号から駆動電流が得られ、シングルエンド入力を擬差動出力増幅器28へと駆動するという点において、この図1で示される従来のボイスコイル制御回路は、当該技術分野においては「シングルエンド」制御ループと称される。そのようにして、集積回路20の2つの外部端子にまたがった3つの外部素子によって、外部の補償ネットワークを実現することができる。
【0010】
しかしながら今日の技術動向においては、最新のディスクドライブシステムにおいてボイスコイルモータを駆動させるために、完全に差動的な電力段を使うことが、多く好まれる。ディスクドライブの(インチごとのトラックで測定される)記録密度は増加し続けており、これによりボイスコイルモータ制御ループのためのノイズ除去能力の改善が要求されている。加えて、ディスクドライブシステムの継続的小型化と共に、そして、例えばディスクドライブベースのポータブルデジタルオーディオプレーヤ中などでのバッテリー電源が好まれる傾向と共に、ディスクドライブコントローラ電子機器の電源電圧もまた低下する傾向にある。このように、電源電圧レベルがより低くなることによって、制御回路における線形スイングの「ヘッドルーム」は低減される。完全に差動的な制御ループ(例えば、差動出力増幅器を駆動する差動誤差増幅器)を使用することにより、電源、基板、または他の回路機能からのノイズ結合が望ましく除去されるであろうし、制御ループにおける全高調波ひずみが減少するであろう。併せて、必要とする線形スイング「ヘッドルーム」は、図1に示されるようなシングルエンドモータドライブに必要とされるそれの2分の1である。
【0011】
しかしながら、完全に差動的な制御回路のための、従来の外部「オフチップ」補償の実装には、2セットの補償素子が必要とされる。図1を参照すると、コンデンサ25、27及び抵抗器26から成る並列補償ネットワークの2つの実体が、完全な差動段のためには要求されるであろう。これにより当然ながら、シングルエンドの場合に比較して2倍の数の外部素子が必要とされ、そして2つの追加的集積回路端子ピンが必要とされる。素子における追加的経費、及び更に重要な、ピン数及び回路基板スペースにおける追加的経費は、特にデジタルオーディオプレーヤのような小型システムにおいては、禁止的に高額なものとなる可能性がある。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
従って、本発明の1つの目的は、例えばディスクドライブ中のボイスコイルモータのようなモータのフィードバック制御において、補償ネットワークを制御回路と一体化させることができるような回路、及びその動作方法を与えることである。
【0013】
本発明の更なる目的は、最適動作のためにオンチップ補償ネットワークを厳密に調整することができるような、回路及び方法を与えることである。
【0014】
本発明の更なる目的は、変化する製造過程や動作温度に亘って、補償が1次のオーダーまでは一定であるような、回路及び方法を与えることである。
【0015】
以下の明細書と図面とを併せて参照すれば、当該技術分野において通常の能力を有する者にとって、本発明における他の目的や利点が明らかとなるであろう。
【0016】
完全な差動的信号経路のために補償ネットワークが与えられるようなフィードバック制御回路へと、本発明を実装することができる。その補償ネットワークは、集積回路コンデンサ、及び直列に繋がれた一対の金属酸化膜半導体(MOS)トランジスタを含む。マスタ回路によって生成された電圧に追従する電圧において、MOSトランジスタのゲートへは共通のゲート電圧が印加される。調整された基準電流を伝導するように、補償ネットワークの装置に適合されゲート電圧で駆動されるMOSトランジスタが、マスタ回路には含まれる。補償ネットワークはそのようにして、変化する製造パラメータや動作温度に亘って少なくとも1次近似までは一定であるような補償を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施例の詳細な説明
本発明は、その好ましい実施形態に関連して、即ち、コンピュータまたは他のデジタルシステムのためのディスクドライブコントローラに実装されるものとして、説明される。そのようなアプリケーションにおいて用いられたとき、本発明は特に有益であろうと考えられるためである。しかしながら本発明は、本明細書中で説明されたものに限らず、別のアプリケーションにおいても重要な恩恵と利点とを与えうるということも、考慮に入れられている。従って、以下の説明は例示の目的のみにおいて与えられるのであって、請求の範囲に記載された通りである本発明の真の範囲を制限することを意図するものではないということが、理解されるべきである。
【0018】
図2は、本発明の好ましい実施形態が実装されるような、ディスクドライブシステムを備えたコンピュータの例を図解している。この例において、パーソナルコンピュータまたはワークステーション2は従来のやり方で実現されるのであり、適切な中央演算処理ユニット(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ビデオ及びサウンドカードまたは機能、ネットワークインターフェース能力、等を備えている。コンピュータ2の内部にはホストアダプタ3も含まれており、一方の側でコンピュータ2のシステムバスへと、そしてもう一方の側で、ディスクドライブコントローラ7が接続されるバスBへと、繋がっている。バスBは好ましくは従来の標準に従って実装されるのであって、その例としては、Enhanced Integrated Drive Electronics (EIDE)標準やSmall Computer System Interface (SCSI)標準が含まれる。併せて他のディスク記憶装置(ハードディスクコントローラ、フロッピー(登録商標)ディスクコントローラ等)やその他の周辺機器を、所望される通りに、そして従来のやり方で、バスBに接続してよい。代替的に、システム2は、例えばポータブルデジタルオーディオプレーヤ等の、よりスケールの小さいシステムであってよい。
【0019】
この例におけるディスクドライブコントローラ7は、ドライブ電子機器が、コンピュータ2内部のコントローラ基板そのものとしてよりも、ディスクドライブに物理的に実装されるような、ディスクドライブコントローラアーキテクチャに対応する。当然ながら、スケールのより大きいシステムにおいて、コントローラ7はコンピュータ2の内部に実装されていてよい。図1の一般化されたブロック図において、コントローラ7は、コンピュータ2と媒体自身との間のデータ経路中にデータチャネル4を含む、複数の集積回路を備える。ディスクドライブコントローラ7はまた、コントローラ13を備える。コントローラ13は、好ましくは、適切なメモリ資源(図示しない)を伴ったデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、または他のプログラム可能なプロセッサとして実装される。メモリ資源には、典型的には、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、例えばフラッシュメモリのような他の不揮発性記録装置のうちの幾つか、あるいは全てが含まれる。コントローラ13は、例えばアドレスマッピング、誤り訂正コーディング、及びデコード等のような機能を含む、ディスクドライブシステムの動作を制御する。バスBとデータチャネル4との間で繋がれたインターフェース回路、及びクロック生成回路等を含む他のカスタム論理回路も併せて、ディスクドライブコントローラ7内に備えることができる。
【0020】
ディスクドライブシステムのヘッドディスクアセンブリ20は、磁気的に記録されたデータの書き込みと読み出しとに関わる、電子部品及び機械部品を備える。この例において、ヘッドディスクアセンブリ20は、スピンドルモータ14の制御下で自身の軸の周りに回転する強磁性表面を(好ましくは両側に)有するような、1以上のディスク18を備える。複数の読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a、15bは、アクチュエータアーム17によって移動させることが可能であり、そして前置増幅器及び書き込みドライバ機能11に繋がれる。読み出しの側において、前置増幅器及び書き込みドライバ機能11は、ディスク読み出し動作中に、読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15bから感度電流を受信する。そして、これら感度電流に対応する信号を増幅して、ディスクドライブコントローラ7内のデータチャネル回路4へと送る。書き込みの側においては、前置増幅器及び書き込みドライバ機能内の書き込みドライバ回路は、データチャネル4から、ディスク18の特定の場所に書き込まれるべきデータを受信し、そしてこれらのデータを、読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15bを介したディスク18への書き込みのために適切な信号へと変換する。読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15b内の磁気抵抗読み出しヘッドにDCバイアスを印加するための回路を含み、また、一定の浮上高度を維持するために読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15bを制御可能に加熱するための浮上高度制御回路(Bloodworth等によるTexas Instruments Incorporatedに譲渡された出願に基づいて2005年5月19日に発行された、米国特許出願公開US2005/0105204 A1において説明されており、それは参照のためにここに組み込まれている)を併せて含む、他の回路機能を、前置増幅器及び書き込みドライバ機能11とラベルが付された機能ブロックに、併せて含めることができる。
【0021】
この例において、ディスクドライブコントローラ7は、スピンドル動作制御機能8及びボイスコイル動作制御機能10と通信するサーボ制御6を含む。スピンドル動作制御機能8は、サーボ制御6からの制御信号に従ってヘッドディスクアセンブリ20内のスピンドルモータ14を駆動し、一方でボイスコイル動作制御機能10は、そのような制御信号に従ってボイスコイルモータ12を駆動する。当該技術分野において既知である通り、スピンドルモータ14はディスク18をその軸の周りに回転させ、そしてボイスコイルモータ12はディスク18におけるアクチュエータアーム17の半径方向の位置を制御する。このようなやり方によって、データをディスク18における適切な物理的場所へと書き込むことができるように、またそこから読み出すことができるように、スピンドルモータ14及びボイスコイルモータ12は、コントローラ13により通信されるアドレス値に従って、読み出し/書き込みヘッドアセンブリ15a,15bをディスク18表面における所望の場所へ配置する。図1に示される通り、電力管理機能9は、コンピュータ2からPWR線上で電力を受け取るのであり、そして、ディスクドライブコントローラ7内部、及びヘッドディスクアセンブリ20内部におけるさまざまな電圧を発生させて制御する手段となるような、1以上の電圧調整器を備える。ディスクドライブシステムの小型化のために、及び製造コストを削減するために、サーボ制御6、スピンドル動作制御8、電力管理機能9、及びボイスコイル動作制御10の機能を単一の集積回路5へと組み込むことができる。
【0022】
今、図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態に従いボイスコイルモータ12によって推進される動作の制御における、サーボ制御6及びボイスコイル動作制御機能8の構造と動作とが、まさに説明される。本発明におけるこの実施形態に従えば、この制御機能には2つのフィードバックループが伴う。この例において、サーボ制御6は、所望の位置信号に比較しての、アクチュエータアーム17のディスク表面18からの相対的位置を監視することにより、「外部」制御ループを管理する。ボイスコイル動作制御機能10は、サーボ制御6により、その外部ループ制御機能から生み出されるトルク指令信号に比較しての、ボイスコイルモータ12に印加される電流(及び、ボイスコイルモータ12によってアクチュエータアーム17へかけられるトルク)を監視することにより、「内部」制御ループを管理する。
【0023】
本発明におけるこの実施形態では、サーボ制御6は、ディスクドライブコントローラ7内のコントローラ13より位置指令信号POS_CMDを受信する。POS_CMD信号は、サーボ制御6の詳細な構造に依存して、デジタルまたはアナログ領域のどちらのものであってもよい。サーボ制御6は併せて、ディスク18におけるアクチュエータアーム17の現在の半径方向の位置を示す信号を前置増幅器11から受信する、位置デコーダ38を備える。当該技術分野において既知である通り、最新のディスクドライブは一般的に、ディスク表面上にさまざまな半径で(例えば各トラックの間に)配置され、半径またはトラック位置を示す、読み出し/書込みヘッド15への信号を与えるような、位置インジケータを備える。位置デコーダ38は、その指示信号から、位置指令信号POS_CMDと比較するのに適正な形式で役に立つ位置信号をデコードすることができるような、サーボ制御6における回路に相当する。図3の実施形態において、加算機能35は、位置指令信号POS_CMDと位置デコーダ38により生み出されるフィードバック信号との差に対応する、誤差信号POS_ERRを発生させる。誤差信号POS_ERRはすなわち、アクチュエータアーム17の実際の位置と所望の位置との間の、現在の差に対応する。
【0024】
制御ループ補償機能36は誤差信号POS_ERRを受信し、外部制御ループにおける安定した周波数応答を保証すべく、従来のやり方で、アナログまたはデジタル領域のいずれかにおいて適切に、この信号をフィルターにかけるか、ないしは加工する。制御ループ補償機能36の出力、併せてサーボ制御6のボイスコイルモータ制御機能10への出力は、トルク指令TRQ_CMDである。本発明におけるこの実施形態に従えば、トルク指令TRQ_CMDとは、アクチュエータアーム17をその現在の位置から所望される位置へと動かすために、ボイスコイルモータ12によってかけられるべきトルクの方向と大きさとを示す、制御信号である。
【0025】
本発明におけるこの実施形態では、トルク指令信号TRQ_CMDはデジタル信号であり、VCM DAC40によって受信されるような信号であり、そしてボイスコイルモータドライバ42へ印加するために、アナログ領域へと変換される。以下で更なる詳細において説明される通り、ボイスコイルモータドライバ42は、トルク指令信号TRQ_CMDに応答して、そして感知電圧横断感知抵抗器44のフィードバック信号に応答して、出力電流iOUTを生み出す。感知電圧横断感知抵抗器44はボイスコイルモータ12と直列になっており、従って出力電流iOUTを伝導する。本発明におけるこの実施形態では、ボイスコイルモータドライバ42は完全に差動的な駆動段であり、従来のシングルエンドボイスコイルモータドライバよりも低い電源電圧を用いることを可能とし、そしてドライブ回路に要求される線形スイングヘッドルームを低減させる。
【0026】
図4は、本発明におけるこの好ましい実施形態に従ったボイスコイルモータ制御機能10の構造を更に詳細に図解している。上述の通り、VCM DAC40はデジタルトルク指令信号TRQ_CMDをサーボ制御6から受信し、それをアナログ信号DACOUTへと変換する。本発明におけるこの好ましい実施形態に従えば、VCM DAC40はまた、基準信号DACMIDを生み出す。基準信号DACMIDはプログラムされた、または一定の中間レベルないしはヌル信号へと設定された、アナログ信号である。当該技術分野において既知である通り、そしてその機能から明らかである通り、ボイスコイルモータ12によってかけられるトルクは、アクチュエータアーム17が移動するべき方向に依存して、いずれの極性であってもよい。従って、デジタルトルク指令信号TRQ_CMDに対応するアナログ信号DACOUTは、中間レベルないしはヌルのDACMID信号より上であっても、または下であってもよい。DACOUT、DACMID信号は、フィードバック信号SNS_N、SNS_Pと同様に、加算ブロック46へと印加される。
【0027】
このアナログ信号DACOUTの構成によって、ボイスコイルモータドライバ42の完全に差動的な構造にも関わらず、VCM DAC40を、完全に差動的なDACとしてよりもむしろ、シングルエンドデジタルアナログ変換器として構築することが可能となる。実際に、本発明におけるこの実施形態に従って、VCM DAC40を比較的単純に構築することができる。例えば従来の二重抵抗器列DACとして構築することができるのであり、その一例は、参照によってここに組み込まれている、1999年11月2日にTexas Instruments Incorporatedに対して与えられた米国特許第5,977,898号において説明されている。中間レベル出力信号DACMIDは、単にデジタルアナログ変換回路における固定された中間値として得ることができる。これにより、VCM DAC40における回路の複雑さとサイズとは大幅に低減され、そしてボイスコイルモータ制御機能10のコストと複雑さとが低減される。
【0028】
図4において示される通り、感知抵抗器44はボイスコイルモータ12と直列に接続され、電流iOUTを伝導する。ボイスコイル制御機能10の端子T5及びT6は、感知抵抗器44をまたいで接続され、感知増幅器52の入力に使用される。そして感知増幅器52は、差動信号をSNS_N,SNS_P線上に駆動する。その信号は、感知抵抗器44をまたがって感知される電圧に対応し、そしてボイスコイルモータドライバ42によって駆動される電流iOUTに対応する。加算ブロック46はSNS_N及びSNS_P線上の差動信号を受信し、そして図5a及び図5bに関連してこれから説明される通り、この信号をDACOUT及びDACMID線の差動信号と共に加算する。
【0029】
図5aは、本発明の好ましい実施形態に従った加算ブロック46の構造を図解している。図5aにおいて示される通り、gmセル60はDACOUT及びDACMID線において差動信号を受信し、そしてgmセル62は、SNSOUT_P及びSNSOUT_N線において差動信号を受信する。図5bから特に明らかとなる通り、gmセル60及び62の各々は高い入力インピーダンスを与える。gmセル60の高いインピーダンス入力により、加算ブロック46を、追加的バッファを必要とせずにVCM DAC40へ直接接続することが可能となる(あるいは二重抵抗器DACのような単純なDACからの接続であれば、それが必要とされたであろう)。加えて、gmセル62における高いインピーダンス入力により、感知増幅器52を比較的小さいものとして駆動することが可能となる。gmセル60及び62の各々における差動出力は、加算ノードSUMP及びSUMNに印加される。SUMP及びSUMNは、それぞれが抵抗器61及び63を介して、各々接地されている。図5aに示される通り、gmセル60及び62は各々差動的gmセルであり、セル60及び62の正出力部は抵抗器61において加算ノードSUMPに接続され、そしてセル60及び62の負出力部は抵抗器63において加算ノードSUMNに接続される。
【0030】
上述の通り、VCM DAC40は実質的にシングルエンドDACであり、その出力DACOUTは、中間レベル基準信号DACMIDから相対的に異なって与えられる。そのような、VCM DAC40の差動出力の強度は、SNS_P及びSNS_N線における差動信号の範囲の実質的に半分である。従って、gmセル60の相互コンダクタンスは、gmセル62におけるそれの2倍であるように構成される。この例においては、抵抗器61及び63の抵抗値をRとして、gmセル60を相互コンダクタンス1/Rを有するよう構築することができるのであり、gmセル62を相互コンダクタンス1/2Rを有するよう構築することができる。
【0031】
図5bは、本発明の好ましい実施形態に従い、加算ブロック46におけるgmセル60及び62の構造の特定の例を示す。本発明の範囲内において、他のgmセル回路構成を代わりに用いることによるgmセル60及び62の実現が可能であるということを、理解すべきである。
【0032】
本発明のこの実施形態において、gmセル60は1組の差動レッグを有する。1つのレッグは、そのゲートにおいて信号線DACOUTを受けるn型MOSトランジスタ66aを備え、もう1つのレッグは、そのゲートにおいて信号線DACMIDを受けるn型MOSトランジスタ66bを備える。トランジスタ66aのドレインは電流ソース671から電流i1を受けるよう接続されており、そしてそのソースとこの装置のボディノードとは電流ソース68aに接続されており、電流ソース68aは電流i1よりも大きい電流i2を地面に伝導する。同様に、トランジスタ66bのドレインは電流ソース672から電流i1を受け、そしてそのソースとトランジスタ66bにおけるボディノードとは電流ソース68bを通じて接続されており、電流ソース68bは電流i2を地面に伝導する。トランジスタ66aのドレインはまた、p型金属酸化膜半導体(MOS)トランジスタ64a1及び64a2のゲートに接続されており、それらトランジスタの各々は、電源電圧Vddにバイアスされた自身のソースを有する。トランジスタ64a2のドレインはトランジスタ66aのソースに接続され、そしてトランジスタ64a1のドレインは、SUMPノードにおいて抵抗器61に接続されている。同様に、トランジスタ66bのドレインはp型金属酸化膜半導体(MOS)トランジスタ64b1及び64b2のゲートに接続され、それらトランジスタの各々は、電源電圧Vddにバイアスされた自身のソースを有する。トランジスタ64b2のドレインはトランジスタ66bのソースに接続され、そしてトランジスタ64b1のドレインは、ノードSUMNにおいて抵抗器63に接続されている。抵抗器65はそのノードにおいて、トランジスタ66a及び66bのソース間に接続されている。抵抗器65は抵抗Rを有し、それは抵抗器61及び63の抵抗Rと等しい。加算ノードSUMNは抵抗器61を介して接地されており、加算ノードSUMPは抵抗器63を介して接地されている。好ましくは、トランジスタ64及び66は全て、お互いにサイズが一致する。
【0033】
図5bに示される通り、gmセル62はgmセル60と同一に構築されるのであり、ここにおいて詳細な説明はしない。gmセル62において、入力信号線SNS_P及びSNS_Nは、2つの差動レッグにおける向かい合ったn型MOSトランジスタのゲートに接続される。これらn型装置のソース間に接続された抵抗器69を備え、抵抗器69の抵抗が2R、すなわち抵抗器65,61,及び63における抵抗の2倍であるということにおいてのみ、gmセルの構造が異なる。このようにして、gmセル60の利得はgmセル62の利得の2倍となり、それにより、gmセル62に印加される完全に差動的な入力信号SNS_P及びSNS_Nとは反対に、入力信号DACOUTにおける(固定された中間レベルDACMIDに比較しての)シングルエンドの性質が補償される。
【0034】
動作において、トランジスタ66a及び66bの各々が、そのソースに接続されたボディノードを有するため、そしてトランジスタ66a及び66bの各々が、その対応する電流ソース671及び672から電流i1を伝導しなければならないため、トランジスタ66a及び66bの各々におけるゲート−ソース電圧(Vgs)は一定に留まらなければならない。そのようにして、信号線DACOUT及びDACMIDの電圧における如何なる違いをも、必然的に、抵抗器65をまたいで発現される。信号線DACOUTにおける電圧が信号線DACMIDにおける電圧に一致する、バランスされた状態において、抵抗器65をまたいでの電圧は発現しないのであり、従って、電流は抵抗器65を通じて伝導されない。トランジスタ64a2を通じて伝導される電流は、従って、電流i2と電流i1との間の差(すなわちi2−i1)に対応するのであり、トランジスタ64b2によって伝導される電流もまた、このバランスされた状態においては電流差i2−i1である。
【0035】
しかしながら、信号線DACOUT及びDACMIDにおいてゼロでない差動電圧が印加される場合、この差動電圧は抵抗器65をまたいで反映され、抵抗器に、対応する電流Δiを伝導させる。この電流Δiは当然ながら、電流ソース68a及び68bの影響を伝導固定電流i2として考慮に入れて、トランジスタ64a2及び64b2によって伝導される電流に反映されなければならない。例えば、DACOUT線における電圧がDACMID線における中間レベル電圧よりも高い場合、電流Δiは図5bにおいて、抵抗器65をまたいで左から右へと伝導されるであろう。トランジスタ64a2はこうして、電流[(i2−i1)+Δi]を伝導するであろうし、一方のトランジスタ64b2は電流[(i2−i1)−Δi]を伝導するであろう。トランジスタ64a1はトランジスタ64a2を通じての電流を映し出し、トランジスタ64b1はトランジスタ64b2を通じての電流を映し出すので、2つの差電流[(i2−i1)+Δi]及び[(i2−i1)−Δi]は加算ノードSUMP及びSUMNにそれぞれ印加され、抵抗器61及び63をまたいだ対応差動電圧を発現させる。gmセル62の動作も、その信号線入力SNS_P及びSNS_Nにおける差動電圧が結果的に抵抗器61及び63へと同様のやり方で印加される差動電流となるような、同様の動作である。しかしながら、抵抗器69はgmセル60における抵抗器65の2倍の抵抗を与えるので、gmセルによって生み出される差動電流は、同じ差動入力電圧に対してgmセル60により生み出される電流の2分の1であろう。従って、gmセル60及び62から抵抗器61への電流の合計は加算ノードSUMPにおける電圧を決定し、そしてgmセル60及び62から抵抗器63への電流の合計はまた、加算ノードSUMNにおける電圧を決定するであろう。そしてノードSUMP及びSUMNにおける差動電圧は、本発明のこの実施形態に従うところのgmセル60及び62への差動入力電圧の合計、を反映するであろう。
【0036】
gmセル60及び62からのこれら差動電流がお互いにバランスするようなバランス条件を、以下のように表すことができる:
1/2*(SNS_P−SNS_N)=(DACOUT−DACMID)
すなわち、gmセル60の利得はgmセル62の利得の2倍だからである。
加算ブロック46のこの構造は、VCM DAC40として用いられる典型的なシングルエンドDACの構造と互換性があり、感知増幅器52における出力電圧スイングは典型的に、DACMID線上の中間レベル値についての出力電圧スイングの2倍である。
こうして、加算ノードSUMP及びSUMNの間の差動電圧においての加算ブロック46の伝達関数を、以下のように表すことができる:
SUMP−SUMN=2(DACOUT−DACMID)−(SNS_P−SNS_N)
この表現から明らかな通り、装置が適切に適合されている限り(同じ集積回路において実装することによりそれらは適合されるであろう)、加算ブロック46の伝達関数は抵抗値及び他の素子値から独立している。
【0037】
図4に戻ると、SUMP及びSUMN線への差動電圧としての加算ブロック46の出力は、調整可能なgmセル48に印加され、gmセル48は出力部OUTP及びOUTNにおいて、出力部OUTP及びOUTNにおける差動電圧に対応する差動電流を生み出す。本発明における、この好ましい実施形態に従えば、調整可能なgmセル48は、回路中の別の場所において発生される利得調整電流igmTUNEに応答して、ループ帯域幅を、その相互コンダクタンスgmの関数として設定できるという意味で、調整可能である。
【0038】
図4において示される通り、利得調整電流igmTUNEは、ディスクドライブコントローラ7内部のプログラム可能な電流ソース47によって発生される。プログラム可能な電流ソース47は、基準電流igmTUNE(REF)に応答して、そして電流igmTUNEの基準電流igmTUNE(REF)への比率を選択するデジタル指令gm_TUNE_CMDに応答して、アナログ電流igmTUNEを発生させるための従来の回路である。本発明における、この好ましい実施形態に従えば、この基準電流igmTUNE(REF)、及び利得調整電流igmTUNEは、好ましくは、この内部制御ループの周波数応答及び帯域幅が、過程及び動作温度の変化に亘って少なくとも1次のオーダーまでは一定であるようにと、調整可能なgmセル48と同じ集積回路内のコンデンサの電気容量と共に変化する。以下で説明される通り、調整電流igmTUNEのレベルは、調整可能なgmセル48の相互コンダクタンスgmを制御し、そしてこの相互コンダクタンスgmは、ボイスコイル動作制御機能10のループ帯域幅における強力な因子である。このように、本発明における、この実施形態に従えば、この内部制御ループの性能を最適化できるように、利得調整電流igmTUNEのレベルはデジタル指令gm_TUNE_CMDを手段として調整可能であることが好ましい。制御ループの帯域幅は、調整電流igmTUNEがプリセットされるようにと、しかしながらファームウェアの変更により、調整電流igmTUNEを公称レベルから所望される通りに調節することができるようにと、典型的には公称レベルにプリセットされるであろうと考えられる。当業者であれば、図4に図解されているプログラム可能な電流ソース47のバリエーション、及びその代わりとなるものを、この利得調整電流igmTUNEを発生させるために、導くことができる。
【0039】
図6を参照して、本発明の好ましい実施形態に従うところの調整可能なgmセル48の構造が説明される。gmセル48の構造への、さまざまな従来型アプローチを代わりに用いることが可能であろうと考えられるが、しかしながら、図6において示される特定の構造は、それが調整可能であることに加えて、製造及び温度変化に亘るその安定性から、特に有利であると考えられる。調整可能なgmセル48はマスタ回路66を備え、マスタ回路66は、n型MOSトランジスタ76におけるテール電流と、スレーブ回路68内のn型MOSトランジスタ82における対応するテール電流を制御する。スレーブ回路68は加算ノードSUMP及びSUMNから差動電圧を受け取り、それに応じて、信号線OUTP及びOUTN上に出力差動電流を発生させる。
【0040】
マスタ回路66は、ソースがVdd電源電圧にバイアスされ、そしてゲートとドレインとがnpn型バイポーラトランジスタ72aのコレクタに接続された、p型MOSトランジスタ70aを含む、差動的gmセルを備える。この電流ミラーの第2のレッグは、ソースがVddであって、ゲートがトランジスタ70aのゲート及びドレインに接続されている、p型MOSトランジスタ70bを備える。トランジスタ70bのドレインはnpn型バイポーラトランジスタ72bのコレクタに接続されており、npn型バイポーラトランジスタ72bは、トランジスタ72aのエミッタと同様にテール電流トランジスタ76のドレインに接続されたエミッタを有する。トランジスタ76のソースは接地されている。npn型バイポーラトランジスタ72a及び72bのベースは、後述される通り、調整可能なgmセル48の相互コンダクタンスgmを決定する、固定されているかまたは調節された電圧である差動基準電圧ΔVを受け取る。トランジスタ72a及び72bは、サイズ、伝導度、及び他の特性がお互いに一致する。
【0041】
トランジスタ70bのドレインとバイポーラトランジスタ72bのコレクタとにおけるノードは、p型MOSトランジスタ75のゲートに接続されており、p型MOSトランジスタ75はVdd電源電圧においてソースを有し、またそのドレインはマスタ回路66内のトランジスタ76のゲートに接続されている。このノードはまた、スレーブ回路68内のn型MOSトランジスタ82のゲートに接続されており、そしてトランジスタ75をオン状態に維持するためにバイアス電流iBを伝導する電流ソース81を通じてバイアスされている。コンデンサ74はトランジスタ75のドレインとゲートとの間に繋がれている。加えて、トランジスタ70bのドレインとバイポーラトランジスタ72bのコレクタとにおけるこのノードはまた、電流igmTUNEを地面に伝導する電流ソース85に接続されている。電流ソース85は、プログラム可能な電流ソース47(図4)の一部であってよいし、そのような電流を映し出す電流ミラートランジスタであってよいし、または、そのような他の手段で、上述されたこの利得調整電流igmTUNEを提供するために構築されていてよい。このことは、本明細書を参照すれば当業者にとって明らかであろう。
【0042】
スレーブ回路68は、お互いにサイズが一致する、そしてそのサイズはマスタ回路66内のトランジスタ72a及び72bと一致する、npn型トランジスタ80a及び80bの差動的ペアを備える。トランジスタ80a及び80bのエミッタはお互いに接続されており、そして、トランジスタ76のゲートに接続されたゲートと接地されたソースとを有するn型MOSトランジスタ82のドレインに接続されている。トランジスタ80aのコレクタは出力ノードOUTNにおいてp型MOSトランジスタ78aのドレインに接続されており、そしてトランジスタ80bのコレクタは、出力ノードOUTPにおいてp型トランジスタ78bのドレインに接続されている。トランジスタ78a及び78bのソースはVdd電源電圧におかれており、それらのゲートは、共通モードフィードバックブロック84によって制御される。共通モードフィードバックブロック84は、当該技術分野において知られている通りの、出力ノードOUTP及びOUTNの共通モード電圧がDC動作範囲内で実質的に一定のままであることを保証するための、従来の共通モードフィードバック制御回路である。
【0043】
動作において、トランジスタ70bのゲート電圧はトランジスタ70aにスレーブされていることを考慮し、マスタ回路66は、差動基準電圧ΔVに応答して、そのバイポーラトランジスタ72a及び72bを通じて差動電流を発現させる。この差動電圧は、トランジスタ76により伝導されるテール電流を定めるために、利得調整電流igmTUNEを加算する。利得調整電流igmTUNEがマスタ回路66における不均衡を引き起こす限りにおいて、トランジスタ70bのドレイン電圧は変調(modulate)するであろう。それはトランジスタ76のゲート電圧を変調し、そしてそれ故に、トランジスタ76によって伝導されるテール電流を調節する。結局、トランジスタ76を通じてのテール電流は、差動基準電圧ΔVにより確立される差動電流が利得調整電流igmTUNEによりバランスされることになるようなバランス条件に達するまで、調節される。このバランス条件において、マスタ回路66は以下の通り明確に定まった相互コンダクタンスgmを有する:
【数1】
【0044】
こうして、この相互コンダクタンスは利得調整電流igmTUNEと基準差動電圧ΔVとにより定められ、そして以下に更なる詳細が説明される通り、デジタル指令gm_TUNE_CMDを手段として利得調整電流igmTUNEを制御することにより調整可能である(ΔVを固定したと仮定している)。
【0045】
トランジスタ76及び82のゲートがお互いに接続されており、そしてトランジスタ75のドレイン電圧によって制御されるために、このトランジスタ76により伝導されるテール電流はトランジスタ82を通じて映し出される。このように、マスタ回路66により定められるテール電流はまた、スレーブ差動回路68内のトランジスタ82により伝導されるテール電流でもある。そして、トランジスタ80a及び80bはトランジスタ72a及び72bと一致するために、スレーブ回路68の相互コンダクタンスgmはマスタ回路66のそれと一致し、従ってまた利得調整電流igmTUNEと基準差動電圧ΔVとにより定められ、そして利得調整電流igmTUNEを手段として調整可能である。SUMP及びSUMN線におけるその差動電圧信号はこうして、上述のマスタ回路66により設定された相互コンダクタンスにおいてのOUTP及びOUTN線における差動電流として反映される。
【0046】
図4に戻ると、調整可能なgmセル48の出力部におけるOUTP及びOUTN線は、出力増幅器50の差動入力部に接続されている。出力増幅器50は次に、ボイスコイルモータ12に端子T3及びT4を介して接続された、その差動出力部において、出力電流iOUTを生み出す。ボイスコイルモータ12はそれから、出力電流iOUT(どちらの極性であってもよい)を用いて駆動され、所望のトルク、及びアクチュエータアーム17における所望の回転並進(rotational translation)を生み出す。
【0047】
図4に示されている通りのボイスコイルモータ12に対する電気的等価物から明らかなように、そして当該技術分野において既知である通り、ボイスコイルモータ12のインダクタンスLmは、ボイスコイル動作制御機能10により制御される内部制御ループへの理想的でない周波数応答を与える。そのようなわけで、図4において示される通り、好ましくはループ補償がボイスコイルモータドライバ42の内部に備えられるか、またはそれに接続される。
【0048】
本発明におけるこの好ましい実施形態に従うところの、加算ブロック46及び調整可能なgmセル48を含む完全な差動段としての、ボイスコイルモータドライバ42の構造があるために、所望の補償をもたらすためには、お互いが直列接続され、そしてコンデンサCpと並列接続された、抵抗器RC及び積分コンデンサCCの単一の補償ネットワークのみを、差動出力線OUTP及びOUTNをまたいで利用すればよい。上述の通り、従来の完全な差動ボイスコイルモータドライブ機能は、1つが各々の差動線のためであるような、2つのそのような補償ネットワークを必要とした。本発明におけるこの実施形態に従えば、抵抗器RC及びコンデンサCC,CPによる、この補償ネットワークは、ボイスコイルモータドライバ42へ外部素子を用いて実現できる。この場合において、完全な差動ボイスコイルモータ制御機能の実現コストがこの観点から過度に増大しないようにと、2つの外部端子及びこれら3つの外部素子のみが必要とされるであろう。
【0049】
当該技術分野において基本的であるように、ボイスコイルモータ12の周波数応答は、「極」周波数fpoleを有するであろう:
【数2】
ここにおいてR44は感知抵抗器44の抵抗である。
従って、この極に対する内部制御ループの適切な補償には、抵抗器RC及びコンデンサCCの直列RCネットワークにより決定される「ゼロ」周波数fzeroが含まれるであろう。
【数3】
【0050】
このゼロ周波数fzeroは外部素子により正確に実現可能ではあるが、最新の集積回路における製造のばらつきにより、コンデンサCCの電気容量がおよそ10%程度、いずれかの方向へ変化し得るのであるし、そして従来の多結晶シリコンまたは拡散抵抗器Rrの抵抗値が、更に幅広く変化し得る。
【0051】
本発明における好ましい実施形態に従えば、お互いが直列に接続され、そしてコンデンサCpと並列に接続された、抵抗器RC及び積分コンデンサCCの十分に正確な補償ネットワークは、ボイスコイルモータドライバ42と共に「オンチップ」で実現可能であり、さらにはディスクドライブシステムの製造コストを削減する。加えて、本発明におけるこの実施形態に従えば、このネットワークにおける抵抗器RCを、温度や製造過程の変化に亘って少なくとも1次のオーダーまでは一定であるような周波数応答において「ゼロ」周波数を与えることができるように、実現可能である。
【0052】
図7は、本発明におけるこの実施形態に従い、お互いが直列に接続され、そしてコンデンサCpと並列に接続された、抵抗器91(抵抗RCを有する)及び積分コンデンサCCのオンチップ補償ネットワークの構造を図解している。本発明におけるこの実施形態に従えば、周波数ロールオフコンデンサCp及び高積分コンデンサCCは、以下に説明されるような、所望の特性により決定される電気容量値を有する集積回路コンデンサのための、従来のやり方により構築される。カットオフ周波数を超えての所望のロールオフ利得を提供するために、ロールオフコンデンサCpの値は従来のやり方で選択されるであろう。コンデンサCpはピコファラッド(picofarad, pF)程度の電気容量を有し、そのようなものはボイスコイルモータドライバ42と同じ集積回路内部において容易に実現可能と考えられる。本発明の、この実施形態における抵抗器91は、お互いが直列に接続されており、また積分コンデンサCCと直列になっているソース−ドレイン経路を有する、n型MOSトランジスタ90a及び90bのペアで構築される。補償抵抗器91を実現するために、このやり方で直列に接続されるトランジスタ90の数は、ボイスコイルモータ12の特性に依存して変わり得る。トランジスタ90a及び90bのゲートはお互いに共通して接続されており、ゲート電圧Vgateにバイアスされている。そのようにして、ゲート電圧Vgateは、トランジスタ90a及び90bにより与えられるソース−ドレイン抵抗、そして補償ネットワーク内の抵抗器91の抵抗RCを制御する。
【0053】
この直列なトランジスタ90の数はプログラム可能なように、例えば各々のトランジスタ90に並列に配置されたスイッチングトランジスタを手段として制御できると考えられる。図8は、この代替的なやり方における、抵抗器91’の構造を図解している。そのやり方においては、3つのトランジスタ90a,90b,90cが、直列に接続されたソース−ドレイン経路を有し、そしてそれらトランジスタのゲートは、お互いに共通して接続されており、ゲート電圧Vgateにバイアスされている。この例において、トランジスタ90b及び90cは、対応する各々のバイパスn型MOSトランジスタ93b及び93cのソース/ドレイン経路と並列に接続された、ソース/ドレイン経路を有する。トランジスタ93b及び93cのゲートは独立デジタル制御信号BYP_B,BYP_Cを受信する。そのようにして、抵抗器91’の抵抗RCは、トランジスタ93b及び93cのいずれか一方、またはその両方についての調整を行い、各々のトランジスタ90b及び90cのいずれか一方、またはその両方をショートさせることにより、制御可能である。ゼロでない最小の抵抗値RCは、補償のためには常に要求されるであろうと考えられるので、トランジスタ90aに並列に接続されているようなバイパストランジスタは存在しない。このようなやり方で、補償ネットワークにおける抵抗器91’の抵抗RCのデジタル制御が、この代替的実装により与えられる。
【0054】
本発明における好ましい実施形態に従えば、変化する過程及び温度に亘ってゼロ周波数fzeroが一定であることを保証するために、ゲート電圧Vgateがマスタ−スレーブ回路から発生される。図7に戻ると、このマスタ−スレーブ回路の「マスタ」側には、プログラム可能な電流ソース57の制御下において調整電流iTUNEを伝導する電流ソース90が備えられている。プログラム可能な電流ソース57は基準電流iTUNE(REF)を受信する。調整電流iTUNEは基準電流iTUNE(REF)に基づく。プログラム可能な電流ソース57はまた、調整電流iTUNEの基準電流iTUNE(REF)に対する比率を制御する、デジタル指令値TUNE_CMDを受信する。例えば、調整電流iTUNEがプログラム可能な電流ソース57内部を伝導する電流に比例するようにと、電流ソース90は電流ミラーに属するかもしれないし、あるいは、プログラム可能な電流ソース57は、従来のやり方によって電流ソース90の伝導を制御するために、制御信号(電圧または電流)を発行するかもしれない。本発明における、この好ましい実施形態に従えば、基準電流iTUNE(REF)、そして調整電流iTUNEは、例えば以下に説明がされるクロック発生器回路56内のコンデンサのような集積回路コンデンサの電気容量が変わるとともに変化する。変化する過程や温度に亘って、少なくとも1次のオーダーまでは一定であるようなゼロ周波数fzeroを得るために、そのようなコンデンサのサイズ及び誘電体における過程変化が電流ソース90により伝導される電流iTUNEに反映されるよう、調整電流iTUNEはボイスコイル動作制御機能10と同一の集積回路内で実現されるコンデンサの電気容量に基づくべきである。
【0055】
図9は、本発明におけるこの好ましい実施形態に従って、電気容量依存調整基準電流iTUNE(REF)を発生させるための、そして、調整可能なgmセル48の利得を制御するためにプログラム可能な電流ソース47(図4)に印加される電気容量依存基準電流igmTUNE(REF)を発生させるための、クロック発生器回路56の構造を図解する。当然ながら、これらの電流iTUNE(REF) 及びitmTUNE(REF)を発生させるために別の回路を用いてよいということは想定されているし、実際に、そのような回路がクロック発生器回路である必要はない。本明細書を参照した当業者であれば、そのような代わりの回路を容易に導き出せるであろう。しかしながら、そのようなクロック発生器回路は、ディスクドライブコントローラ7の動作のために他の理由から必要とされるので、本発明に従ってディスクドライブコントローラ機能を実現するときの効率性のためには、電流iTUNE(REF) 及びitmTUNE(REF)を併せて発生させるためにクロック発生器回路を用いることが特に便利であると考えられる。
【0056】
クロック発生器回路56は、調整可能なgmセル48及び出力増幅器50と同じ集積回路内に、本発明におけるこの実施形態に従って実現されるような、集積回路コンデンサ54、の充電及び放電に基づいて、出力クロック信号CLKを発生させる。コンデンサ54はVCC電源より、電流ソース50a及びスイッチ51aを介して(地面に対して)充電され、そしてスイッチ51b及び電流ソース50bを介して放電される。当該技術分野において既知である通り、この回路におけるスイッチ51a,51b,及び他のスイッチは、当然ながら従来のトランジスタを経由して実装される。本発明におけるこの実施形態に従えば、電流ソース50a及び50bの各々は、コンデンサ54を充電または放電し、従ってコンデンサ54の電気容量に依存するような電流に対応する、電流ICを伝導する。この電流ICは、出力クロック信号CLKに基づき、コンデンサ54の変化する電気容量に亘って所望の周波数のクロック信号CLKを与えるレベルへと電流ICが調節されるよう、電流トリム回路49によってトリム可能である。
【0057】
スイッチ51a及び51bは論理回路58により制御され、相補的に重複しないように動作する。スイッチ51a及び51bが動作する周波数は、コンデンサ54をまたいだ電圧が実質的には折れ線三角形型波形(piecewise−linear triangle waveform)となるように、コンデンサ54が充電されて放電されるRC時定数よりも相当に高いと考えられる。
【0058】
コンデンサ54は比較器55の負入力部へと接続されている。比較器55は、その正入力部において、抵抗分割器52から選択された電圧レベルを受け取る。抵抗分割器52は、基準電圧VREFと地面との間に接続された抵抗器の組として構成されている。抵抗分割器52内において、高い方の電圧ノードは、スイッチ53hiを介して、比較器55の正入力部に接続されており、低い方の電圧ノードはスイッチ53loを介して接続されている。スイッチ53hi及び53loは、相補的であって重複しないようなやり方で、論理回路により制御される。すなわちスイッチ51aが閉じられている間にはスイッチ53hiが閉じられており(コンデンサ54を充電する)、スイッチ51bが閉じられている間にはスイッチ53loが閉じられている(コンデンサ54を放電する)。このように、比較器55は実質的に、充電サイクルのために、併せて放電サイクルのために、コンデンサ54をまたいだ電圧を比較する対象としての、2つの基準レベルを有する。比較器55はこうして、スイッチ51a及び51bの切り替えの周波数に対応する矩形波信号を実質的に発生させる。この矩形波はバッファ57へと印加され、バッファ57はクロック信号CLKを生成する。クロック信号CLKはまた、論理回路58及び電流トリム49にフィードバックされる。
【0059】
上述の通り、クロック信号CLKの周波数が所望の周波数に一致するように、電流トリム49は、コンデンサ54が充電され、そして放電される電流ICを調節する。すなわち、コンデンサ54の電気容量が公称よりも高い場合には、電流ICは電流トリム49により増加され、コンデンサ54の電気容量が公称よりも低い場合には電流ICは減少される。従って、電流ICはコンデンサ54の電気容量が変わると共に変化する。
【0060】
この電流ICは、基準電流iTUNE(REF)及び基準電流igmTUNE(REF)を生み出すために、電流ミラー59を介して、映し出される。従って、これら電流iTUNE(REF)及びigmTUNE(REF)の各々は、電流ICの固定比率であって、そしてまた、コンデンサ54の電気容量が変わると共に変化する。電流iTUNE(REF)は図7におけるプログラム可能な電流ソース57へと印加され、プログラム可能な電流ソース57は次に電流ソース90を制御し、そして基準電流igmTUNE(REF)が図4におけるプログラム可能な電流ソース47へと印加されるか、またはこれを制御する。
【0061】
電流ソース90は、クロック発生器回路56の電流ミラー59の一部と対応してよいし、あるいは、コンデンサ54の電気容量に基づく調整電流iTUNEを伝導するように制御される。この調整電流は、自身のドレインと、そしてペアを成すn型MOSトランジスタ94のゲートと、に接続されたゲートを有するn型MOSトランジスタ92のドレインへの、調整電流iTUNEであって、トランジスタ92及び94のソースは接地されている。この電流の「スレーブ」レッグ内にあるトランジスタ94のドレインは、自身のドレインが演算増幅器98によってバイアスされており、自身のゲートが演算増幅器100によってバイアスされているような、n型MOSトランジスタ96のソースに接続されている。好ましくは、本発明におけるこの実施形態に従って、n型MOSトランジスタ96は、そのサイズ及び構造がトランジスタ90a及び90bの各々に一致する。演算増幅器98は、自身の出力部に繋がれた反転入力部と、基準電圧VREF+ΔV/2を受信する非反転入力部と、を有する。電圧VREFは、実質的には差動出力線OUTP及びOUTNにおける共通モード電圧に対応する基準電圧であり、電圧ΔVは数百ミリボルト(mV:millivolt)程度の定電圧である。演算増幅器100は、基準電圧VREF−ΔV/2を受信する非反転入力部と、トランジスタ96のソース及びトランジスタ94のドレインにおけるノードに繋がれた反転入力部と、そして電圧Vgateを駆動する出力部とを有する。Vgateは「スレーブ」レッグ内のトランジスタ96のゲートに印加され、併せてトランジスタ90a及び90bのゲートに印加される。
【0062】
動作において、トランジスタ92によって伝導される電流iTUNEは、トランジスタ96もまた電流iTUNEを伝導するようにと、トランジスタ94に映し出される(非常に高い入力インピーダンスを与える演算増幅器への入力である)。演算増幅器98は、トランジスタ96のドレインを基準電圧VREF+ΔV/2にバイアスする。他方、演算増幅器98は、基準電圧VREF−ΔV/2と等しくなるトランジスタ96のソースにおける電圧と結果的に一致するレベルにおいて、ゲート電圧Vgateを発現させる。そのようにして、トランジスタ96のソース−ドレイン電圧は、演算増幅器98及び100によって、強制的に電圧ΔVとされる。そしてトランジスタ96のソース−ドレイン電流は、トランジスタ92及び94の電流ミラーの動作により、強制的に電流iTUNEとされる。従って、トランジスタ94のソース−ドレイン抵抗はΔV/iTUNEであり、合計で抵抗器91の抵抗RCを成すトランジスタ90の各々の抵抗と同様である。
【0063】
電気容量CCを、過程及び温度の変化とともに変わる容量値を有するものとして、以下のように考えることができる。
【数4】
ここにおいて、C0は公称値であり、εは、温度及び過程の変化から生じる、この公称値C0からのわずかな変化である。既に論じたとおり、電流iTUNEは電気容量の変化を反映する基準電流iTUNE(REF)に比例して発生するのであり、電流iTUNE自身もまた電気容量の変化を反映する。
【数5】
ここにおいて、I0は電流iTUNEに対する公称値である。そのようにして、電流iTUNEは、少なくとも1次のオーダーに亘っては、電気容量CCの変化と共に変化する。そして上述の通り、電流iTUNEは、プログラム可能な電流ソース57か、または別のそのような回路を用いて調整可能である。
【0064】
上述の通り、トランジスタ90a及び90bはトランジスタ96と物理的に一致し、ほぼ同一の動作条件で(電圧VREFはほぼ、差動出力線OUTP及びOUTNにまたがった共通モード電圧である)、同一のゲート電圧を受信する。トランジスタ90の各々の実体はこうして、トランジスタ96におけるソース−ドレイン抵抗ΔV/ITUNEと同一のソース−ドレイン抵抗を与えるのであって、こうして抵抗RCが以下のように得られる:
【数6】
ここにおいてNは、組を成して抵抗器91を形成するトランジスタ90の数である(図7の例においてはN=2であり、図8の例においては、Nは1から3へと変化する)。結果として、電流iTUNEを調節することにより抵抗RCを調整可能であり、そして抵抗RCは過程や温度変化に起因して電気容量が変わることに逆比例して、変化する。
【0065】
既に論じた通り、抵抗器91及びコンデンサCCの直列RCネットワークにより決定されるゼロ周波数fzeroを導くことができる:
【数7】
または、上述された抵抗RC及びコンデンサ電気容量CCの表現を参照すれば、以下の通りとなる:
【数8】
【0066】
この表現から明らかな通り、ゼロ周波数fzeroは、過程パラメータまたは動作温度の変化に起因する公称からの変位εからは独立している。図8に関連して上述した通り、ボイルコイルモータ12の極における大きな変化が求められている場合には、N個の多数トランジスタ90を、抵抗器91’を形成するよう直列にし、それらトランジスタ90の1以上に対して並列にスイッチング装置93を与えて、ゼロ周波数fzeroがより幅広く(電流iTUNEのトリミングまたは調節により達成される調節レベルを超えて)変化するよう構成することが可能である。
【0067】
システムの周波数応答における極周波数fpoleを相殺するよう、ゼロ周波数fzeroは選択可能であると仮定し、そしてコンデンサCpの電気容量がコンデンサCCのそれと比較して小さいと仮定すれば、内部制御ループ帯域幅BWを以下のように表すことができる:
【数9】
ここでG(drv)は出力増幅器50の利得であり、G(sns)は感知増幅器52の利得であり、そしてgmは調整可能なgmセル48の利得である。コンデンサCCの電気容量は、そのオンチップ構造により固定されていると考えれば、デジタル指令TUNE_CMDの値の変化を介して電流igmTUNEを調節することで、調整可能なgmセル48の利得を調節することにより、ループ帯域幅は調節可能である。加えて、調整可能なgmセル48の利得gmは、それ自身がオンチップコンデンサ54の電気容量に依存する、その調整電流igmTUNEに依存するので、ループ帯域幅BWはまた、少なくとも1次のオーダーでは、過程の変化や動作温度の変化に亘って一定である。この内部制御ループにおけるDC利得Gm(ω=0)は、以下のように表すことができる:
【数10】
この、DCにおける相互コンダクタンス利得Gmは一定値に留まる。
【0068】
本発明におけるこの実施形態に従えば、たとえボイスコイルモータ制御機能10が完全に差動的な形式で実現されているとしても、そのボイスコイルモータ制御機能10の内部制御ループに対してオンチップ補償ネットワークが与えられる。従って、本発明に従えば、線形スイングヘッドルームを低減させ、より低い電源電圧を可能とするという重要な利点が得られるだけでなく、この補償ネットワークのオンチップでの実現により、ディスクドライブコントローラを実装するために要求される外部端子や外部素子の数を減らすことができ、結果として回路基板のスペースも削減される。更には、本発明におけるこの実施形態に従って得られる補償ネットワークはまた、過程や動作温度の変化に亘り、少なくとも1次のオーダーにおいては安定しており、実際にゼロ補償周波数は、比較的単純な回路技法を用いて調整可能である。
【0069】
本発明の代替的実施形態に従えば、その機能内部への各々の差動線に対してオンチップ補償が与えられるような、完全な差動ボイスコイルモータ制御機能110が与えられる。より具体的には、上述の本発明における第1の好ましい実施形態に備えられていたよりも、より単純な加算機能を用いることができる。それは2つの補償ネットワークを必要とするが、しかしながらそこにおいて、これら補償ネットワークはボイスコイルモータ制御機能110と共に「オンチップで」実現可能である。本発明におけるこの実施形態の更なる詳細な説明のために、図10へと注意が向けられる。
【0070】
本発明におけるこの実施形態に従えば、VCM DAC112の入力部においてデジタルトルク指令TRQ_CMDが受信される。TRQ_CMDは、ボイスコイルモータ120によって与えられるべきトルクの所望の極(方向)及び大きさに対応しており、ボイスコイルモータ120は前述同様、インダクタンスLm及びその寄生抵抗Rmによって表される。本発明におけるこの実施形態では、VCM DAC112は差動デジタルアナログ変換器であり、差動出力部を有し、加算ノードS1及びS2に、それぞれ抵抗器113a及び113bを介して接続されている。本発明における前述の実施形態と同様、感知抵抗器121が、ボイスコイルモータ120に直列に備えられている。端子T5及びT6は、感知抵抗器121の反対側に接続されている。差動感知増幅器122は端子T5及びT6に繋がれた差動入力部を有し、そして、その差動出力部において、感知抵抗器121をまたいでの差動電圧に対応して、差動信号を発生させる。感知増幅器122からの差動出力線は、抵抗器115a及び115bを介して、加算ノードS1及びS2に繋がれている。
【0071】
加算ノードS1及びS2は、差動誤差増幅器114のそれぞれの入力部に接続されている。誤差増幅器114の差動出力部は、出力増幅器118(これも差動増幅器である)の差動入力部に接続されている。出力増幅器118の差動出力部は端子T3に接続されており、そしてボイスコイルモータ120にまたがっている。本発明におけるこの実施形態に従えば、端子T3から端子T4への電流の極性が、VCM DAC112の出力部における差動信号の極性と同じになるように、差動誤差増幅器114と差動出力増幅器118との各々は反転している。
【0072】
動作において、VCM DAC112からの差動出力と、感知増幅器122の差動出力とは、加算ノードS1及びS2において加算される。この例において、先に示唆された極性を考えると、これら差動信号の極性はお互いに反対である。加算ノードS1及びS2にまたがっての差動電圧は、電流iOUTがトルク指令TRQ_CMDによって指令されるレベルに一致するようなバランス条件においてゼロとなるであろう。
【0073】
本発明におけるこの実施形態に従えば、ボイスコイルモータ120のリアクタンスLmに起因する、制御ループの周波数応答における極に対する補償は、差動誤差増幅器114の各々の入力部及び出力部をまたいで接続された補償ネットワークにより影響を受ける。より具体的には、抵抗器116aに直列な積分コンデンサCCと並列であるような、増幅器114の負入力部と増幅器114の正出力部との間の補償コンデンサCpにより、1つのそのような補償ネットワークは実現される。同様に、積分コンデンサCC及び抵抗器116bの直列ネットワークと並列であるような補償コンデンサCpが、差動誤差増幅器114の正入力部と負出力部との間に接続されている。抵抗器116a及び116bは、直列に接続されたソース−ドレイン経路と、共通に接続され、ゲート電圧Vgateにバイアスされたゲートと、を有する1以上のn型トランジスタ(そのうちの2つが、この例において示されている)によって、各々実現される。前述同様に、抵抗器116a及び116bは代替的に、幾つかのそのような、直列に接続されていて、ソース−ドレイン経路のうち選択されたものを、制御可能かまたはプログラム可能なやり方で、所望される場合にはショートさせるスイッチングトランジスタを有する、トランジスタによって実現されてもよい。
【0074】
そして本発明におけるこの実施形態に従えば、例えば図7に関連して説明した通り、抵抗器116a及び116bの各々が呈する抵抗が基準電圧ΔVの調整電流iTUNEへの比率に対応するよう、ゲート電圧Vgateはマスタ/スレーブ回路によって得られる。
ここで調整電流iTUNEは、変化する温度及び過程に亘って少なくとも1次のオーダーでは安定するように、電気容量と共に変化する。本発明における、この代替的実施形態に従い、この制御ループの周波数応答へと盛り込まれるゼロ周波数fzeroもまた、変化する過程及び温度に亘って1次のオーダーまでは一定である。
【0075】
更には、上述の通り、これら補償ネットワークによって確立されるゼロ周波数fzeroを、抵抗器116a及び116b内部のトランジスタ(上記のやり方で実装されているならば)のin及びoutを切り替えることにより、粗い感覚で調整することが可能である。更に、この補償は、外部の補償ネットワークと同程度に正確なやり方で、しかしながらオンチップ素子によって、達成される。結果として、この内部制御ループの安定した正確な補償のために、外部端子または素子は必要とされない。
【0076】
本発明は、特定の例示的実施形態に従って説明されてきたものではあるが、当然ながら、これら実施形態への、本発明の利点及び恩恵を得られるような修正及び代替が、本明細書及び図面を参照した当業者にとって明らかとなるであろう。そのような修正及び代替は請求の範囲に記載された本発明の範囲に属するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、従来のボイスコイルモータ制御及び駆動回路の、結線図形式での電気回路図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施形態に従って構築されるディスクドライブシステムの、ブロック形式での電気回路図である。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施形態に従った、図2のディスクドライブシステムにおけるサーボ制御とボイスコイルモータ制御機能のブロック形式での電気回路図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施形態に従った、ディスクドライブシステムのためのボイスコイルモータ制御機能の、ブロック形式及び結線図形式での電気回路図である。
【図5】図5aと図5bとは、本発明の好ましい実施形態に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能における加算ブロックの、それぞれブロック形式と結線図形式とでの電気回路図である。
【図6】図6は、本発明の好ましい実施形態に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能における調整可能なgmセルの、結線図形式での電気回路図である。
【図7】図7は、本発明の好ましい実施形態に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能におけるオンチップ補償ネットワーク中のバイアスを制御するためのマスタ回路の、ブロック形式及び結線図形式での電気回路図である。
【図8】図8は、本発明の好ましい実施形態の別の実装に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能における補償ネットワーク中の抵抗器の、結線図形式での電気回路図である。
【図9】図9は、本発明の好ましい実施形態に従った、図4のボイスコイルモータ制御機能におけるオンチップ補償ネットワークのために調整電流を発生させるためのクロック回路の、結線図形式での電気回路図である。
【図10】図10は、本発明における別の好ましい実施形態に従った、ディスクドライブシステムのためのボイスコイルモータ制御機能の、ブロック形式及び結線図形式での電気回路図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバックパラメータを感知するための、及び差動フィードバック信号を発生させるための、感知増幅器と、
差動入力信号と前記差動フィードバック信号とに対応する差動誤差信号を生み出すための加算回路と、
前記差動誤差信号を受信するための前記加算回路に繋がれた入力部を有し、前記差動誤差信号に応答して中間差動信号を与える1対の出力部を有する、差動利得段と、
前記中間差動信号に応答して差動出力信号を発生させるための差動出力増幅器と、
前記差動利得段における前記1対の出力部に繋がれた第1の補償ネットワークであって、
少なくとも1つのコンデンサと、
前記少なくとも1つのコンデンサに接続された伝導経路を備え、制御端子を備える、少なくとも1つのトランジスタから成る抵抗器と、
を含む、第1の補償ネットワークと、
調整電流を生み出すための調整電流回路と、
前記調整電流に応答して、前記第1の補償ネットワークにおける前記少なくとも1つのトランジスタの前記制御端子をバイアスするための、バイアス回路と、
を含む、差動フィードバック制御回路。
【請求項2】
前記差動利得段、前記差動出力増幅器、前記調整電流回路、前記バイアス回路、及び前記第1の補償ネットワークは、単一の集積回路内において実現され、
前記調整電流回路は、前記単一の集積回路内において形成されるコンデンサにおける変化と共に変化する前記調整電流を生み出す、
請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記調整電流回路は、
コンデンサと、
前記コンデンサに繋がれた制御可能な電流ソースを含む、充電及び放電回路と、
を含む、請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記第1の補償ネットワークの前記抵抗器は、
直列に接続された自己の伝導経路と、共通に接続された自己の制御端子と、を有する複数のトランジスタ、を含み、
前記バイアス回路は、前記調整電流に応答して、前記第1の補償ネットワークにおける前記複数のトランジスタの前記制御端子をバイアスする、
請求項1に記載の回路。
【請求項5】
前記複数のトランジスタは、直列接続された自己のソース−ドレイン経路と、共通に接続され前記バイアス回路によってバイアスされる自己のゲートと、を有するMOSトランジスタである、
請求項4に記載の回路。
【請求項6】
コントローラと、
前記コントローラに繋がれた、前記コントローラからの信号に応答してディスクドライブにおけるアクチュエータアームの所望の動作に対応するトルク指令信号を発生させるためのサーボ制御機能と、
集積回路内のボイスコイル動作制御機能であって、
前記トルク指令信号を差動信号に変換するための入力回路と、
ボイスコイルモータ駆動信号からフィードバックパラメータを感知するための、そして差動フィードバック信号を発生させるための感知増幅器と、
差動入力信号と前記差動フィードバック信号とに対応する差動誤差信号を生み出すための加算回路と、
前記差動誤差信号を受信するための前記加算回路に繋がれた入力部を有し、前記差動誤差信号に応答して中間差動信号を与える1対の出力部を有する、差動利得段と、
前記中間差動信号に応答して、差動ボイスコイルモータ駆動信号を発生させるための差動出力増幅器と、
前記差動利得段における前記1対の出力部に繋がれた第1の補償ネットワークであって、
少なくとも1つのコンデンサと、
前記少なくとも1つのコンデンサに接続された伝導経路を有し、制御端子を有する、少なくとも1つのトランジスタから成る、抵抗器と、
を含む、第1の補償ネットワークと、
を含む、ボイスコイル動作制御機能と、
調整電流を生み出すための調整電流回路と、
前記調整電流に応答して前記第1の補償ネットワークにおける前記少なくとも1つのトランジスタの前記制御端子をバイアスするためのバイアス回路と、
を含む、ディスクドライブコントローラ。
【請求項7】
フィードバックパラメータを感知するための、そして差動フィードバック信号を発生させるための、感知増幅器と、
差動入力信号と前記差動フィードバック信号とに対応する差動誤差信号を生み出すための加算回路と、
前記差動誤差信号を受信するための前記加算回路に繋がれた入力部を有し、前記差動誤差信号に応答して、調整電流に応答して調節可能な利得を有する中間差動信号を与える、1対の出力部を有する、調整可能な差動利得段と、
前記中間差動信号に応答して差動出力信号を発生させるための差動出力増幅器と、
前記調整電流を生み出すための調整電流回路と、
を含む、差動フィードバック制御回路。
【請求項8】
コントローラと、
前記コントローラに繋がれた、前記コントローラからの信号に応答してディスクドライブにおけるアクチュエータアームの所望の動作に対応するトルク指令信号を発生させるためのサーボ制御機能と、
集積回路内のボイスコイル動作制御機能であって、
前記トルク指令信号を受信する入力部を有し、前記トルク指令信号に対応する差動入力信号を与える出力部を有する、デジタルアナログ変換器と、
フィードバックパラメータを感知するための、そして差動フィードバック信号を発生させるための、感知増幅器と、
前記差動入力信号と前記差動フィードバック信号とに対応する差動誤差信号を生み出すための加算回路と、
前記差動誤差信号を受信するための前記加算回路に繋がれた入力部を有し、前記差動誤差信号に応答して、調整電流に応答して調節可能な利得を有する中間差動信号を与える、1対の出力部を有する、調整可能な差動利得段と、
前記中間差動信号に応答して差動出力信号を発生させるための差動出力増幅器と、
前記調整電流を生み出すための調整電流回路と、
を含む、ボイスコイル動作制御機能と、
を含む、ディスクドライブコントローラ。
【請求項1】
フィードバックパラメータを感知するための、及び差動フィードバック信号を発生させるための、感知増幅器と、
差動入力信号と前記差動フィードバック信号とに対応する差動誤差信号を生み出すための加算回路と、
前記差動誤差信号を受信するための前記加算回路に繋がれた入力部を有し、前記差動誤差信号に応答して中間差動信号を与える1対の出力部を有する、差動利得段と、
前記中間差動信号に応答して差動出力信号を発生させるための差動出力増幅器と、
前記差動利得段における前記1対の出力部に繋がれた第1の補償ネットワークであって、
少なくとも1つのコンデンサと、
前記少なくとも1つのコンデンサに接続された伝導経路を備え、制御端子を備える、少なくとも1つのトランジスタから成る抵抗器と、
を含む、第1の補償ネットワークと、
調整電流を生み出すための調整電流回路と、
前記調整電流に応答して、前記第1の補償ネットワークにおける前記少なくとも1つのトランジスタの前記制御端子をバイアスするための、バイアス回路と、
を含む、差動フィードバック制御回路。
【請求項2】
前記差動利得段、前記差動出力増幅器、前記調整電流回路、前記バイアス回路、及び前記第1の補償ネットワークは、単一の集積回路内において実現され、
前記調整電流回路は、前記単一の集積回路内において形成されるコンデンサにおける変化と共に変化する前記調整電流を生み出す、
請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記調整電流回路は、
コンデンサと、
前記コンデンサに繋がれた制御可能な電流ソースを含む、充電及び放電回路と、
を含む、請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記第1の補償ネットワークの前記抵抗器は、
直列に接続された自己の伝導経路と、共通に接続された自己の制御端子と、を有する複数のトランジスタ、を含み、
前記バイアス回路は、前記調整電流に応答して、前記第1の補償ネットワークにおける前記複数のトランジスタの前記制御端子をバイアスする、
請求項1に記載の回路。
【請求項5】
前記複数のトランジスタは、直列接続された自己のソース−ドレイン経路と、共通に接続され前記バイアス回路によってバイアスされる自己のゲートと、を有するMOSトランジスタである、
請求項4に記載の回路。
【請求項6】
コントローラと、
前記コントローラに繋がれた、前記コントローラからの信号に応答してディスクドライブにおけるアクチュエータアームの所望の動作に対応するトルク指令信号を発生させるためのサーボ制御機能と、
集積回路内のボイスコイル動作制御機能であって、
前記トルク指令信号を差動信号に変換するための入力回路と、
ボイスコイルモータ駆動信号からフィードバックパラメータを感知するための、そして差動フィードバック信号を発生させるための感知増幅器と、
差動入力信号と前記差動フィードバック信号とに対応する差動誤差信号を生み出すための加算回路と、
前記差動誤差信号を受信するための前記加算回路に繋がれた入力部を有し、前記差動誤差信号に応答して中間差動信号を与える1対の出力部を有する、差動利得段と、
前記中間差動信号に応答して、差動ボイスコイルモータ駆動信号を発生させるための差動出力増幅器と、
前記差動利得段における前記1対の出力部に繋がれた第1の補償ネットワークであって、
少なくとも1つのコンデンサと、
前記少なくとも1つのコンデンサに接続された伝導経路を有し、制御端子を有する、少なくとも1つのトランジスタから成る、抵抗器と、
を含む、第1の補償ネットワークと、
を含む、ボイスコイル動作制御機能と、
調整電流を生み出すための調整電流回路と、
前記調整電流に応答して前記第1の補償ネットワークにおける前記少なくとも1つのトランジスタの前記制御端子をバイアスするためのバイアス回路と、
を含む、ディスクドライブコントローラ。
【請求項7】
フィードバックパラメータを感知するための、そして差動フィードバック信号を発生させるための、感知増幅器と、
差動入力信号と前記差動フィードバック信号とに対応する差動誤差信号を生み出すための加算回路と、
前記差動誤差信号を受信するための前記加算回路に繋がれた入力部を有し、前記差動誤差信号に応答して、調整電流に応答して調節可能な利得を有する中間差動信号を与える、1対の出力部を有する、調整可能な差動利得段と、
前記中間差動信号に応答して差動出力信号を発生させるための差動出力増幅器と、
前記調整電流を生み出すための調整電流回路と、
を含む、差動フィードバック制御回路。
【請求項8】
コントローラと、
前記コントローラに繋がれた、前記コントローラからの信号に応答してディスクドライブにおけるアクチュエータアームの所望の動作に対応するトルク指令信号を発生させるためのサーボ制御機能と、
集積回路内のボイスコイル動作制御機能であって、
前記トルク指令信号を受信する入力部を有し、前記トルク指令信号に対応する差動入力信号を与える出力部を有する、デジタルアナログ変換器と、
フィードバックパラメータを感知するための、そして差動フィードバック信号を発生させるための、感知増幅器と、
前記差動入力信号と前記差動フィードバック信号とに対応する差動誤差信号を生み出すための加算回路と、
前記差動誤差信号を受信するための前記加算回路に繋がれた入力部を有し、前記差動誤差信号に応答して、調整電流に応答して調節可能な利得を有する中間差動信号を与える、1対の出力部を有する、調整可能な差動利得段と、
前記中間差動信号に応答して差動出力信号を発生させるための差動出力増幅器と、
前記調整電流を生み出すための調整電流回路と、
を含む、ボイスコイル動作制御機能と、
を含む、ディスクドライブコントローラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−534012(P2009−534012A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505577(P2009−505577)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/066343
【国際公開番号】WO2007/121189
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(502293614)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/066343
【国際公開番号】WO2007/121189
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(502293614)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】
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