説明

官能性炭化水素ポリマーおよびその生成法

式(IIIc)の化合物を反応させる段階を含む、式(IIIe)の化合物の合成方法、および式(XXXa)の官能性ポリマーを開示する。式(IIIc)、(IIIe)、および(XXXa)における変数は、本明細書において定義する。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年11月17日提出の米国特許仮出願第60/859,883号の恩典を主張する。前述の出願の全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府による支援
本発明は、全体または部分的に、米国科学財団(National Science Foundation)からの助成金CHE-0548466による支援を受けた。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
官能性ポリマーは、表面改変、接着、薬物送達、ポリマーブレンドの適合化、モーターオイル添加物、高重合体への低分子量前駆体、ポリマー性マクロ開始剤としての使用などの多くの重要な技術分野における、それらの適用の可能性により、非常に興味が持たれる。
【0004】
ポリマーの制御された均一サイズに加えて、リビング重合は官能性ポリマーの調製のための最も単純で最も便利な方法を提供する。アニオン重合において様々な末端官能基化ポリマーが合成され、成功しているが、ビニルモノマーのリビングカチオン重合によって合成された末端官能基化ポリマー(任意の所与のポリマーまたはオリゴマー鎖の末端に選択的に位置する官能基を有するポリマー)は比較的少ない。リビングカチオン重合により官能性ポリマーを調製するために、官能性開始剤からの開始および官能性停止剤による停止の2つの基本的方法がある。
【0005】
前述の目標を達成するために両方が用いられている。しかし、イオン重合において、重合の過程で多くの非保護官能基が干渉するため、重合後の官能基化が好ましい。さらに、官能性開始剤法は二官能性および多官能性ポリマーの調製のために効率的なカップリング/連結剤を必要とし、これらは容易に入手できない。ポリマーを官能基化するために報告された方法は、厳密な合成経路を含み、高価である。今日までに報告された方法は、複雑、面倒かつ高価であり、したがって商業的には実施されていない。したがって、公知の方法の制限を克服する高品質の官能性ポリマーの新規調製法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一つの態様において、本発明は、式(IIIc)

の化合物を反応させて、X1をNu1で求核置換する段階を含む、式(IIIe)

の化合物の合成方法である。
式(IIIc)および(IIIe)において、R1は、それぞれの場合に、独立にHまたはC1-C4アルキル、アルコキシまたは置換もしくは無置換アリールであり;R2は、それぞれの場合に、独立にH、X2、-CH2X2、-CHX22、-CX23、-C≡N、または-NO2であり;nは2以上の整数であり;X1およびX2は、それぞれの出現時に、独立にハロゲンであり;Nu1はN3-、NH2-、HC2CH2-O-、HO-、RaO-、チミン、-CH2-C(O)OHから選択され、ここでRaはC1-C12アルキルまたはポリマーもしくはコポリマー断片である。
【0007】
一つの態様において、式(IIIe)の化合物は式(IIIb)で表され、一方、式(IIIc)は式(III)で表される:


【0008】
別の態様において、本発明は、ハロアリル末端基を有する式(IIIc)のエンドキャップポリマーを塩基存在下で加水分解し、それにより式(VIa)の化合物を生成する段階を含む、式(VIa)のヒドロキシル官能性ポリマーの合成方法である:


【0009】
一つの態様において、式(IIIc)の化合物は前掲の式(III)で表され、一方、式(VIa)の化合物は式(VI)で表される:


式(VIa)の変数は式(IIIc)および(IIIe)に関して上で定義したとおりである。
【0010】
別の態様において、本発明は式(XXXa)の官能性ポリマーである:


【0011】
式(XXXa)の変数は以下に示すとおりである:nは2以上の整数であり;kは1以上の整数であり;Lは開始剤残基であり;R1は、それぞれの場合に、独立にHまたはC1-C4アルキル、アルコキシまたは置換もしくは無置換アリールであり;R2は、それぞれの場合に、独立にHまたは電子吸引基、例えば、X2、CH2X2、CHX22、-CX23、-C≡N、-NO2であり;かつX1およびX2は、それぞれの出現時に、独立にハロゲンであり;Nu2はN3-、NH2-、HC2CH2-O-、HO-、RaO-(ここでRaはC1-C12アルキルまたはポリマーもしくはコポリマー断片である)、チミン、-CH2-C(O)OH、-C(O)N3、-NHC(O)OR、-C(O)NHR、-NHC(O)NHR(ここでRはC1-C12アルキルである)、あるいはペプチド-NH-から選択される。
【0012】
本発明は、ハロアリル官能性ポリマーの求核置換による官能性炭化水素ポリマーの調製を含む。また、ハロアリル官能性ポリマーは、2006年4月7日提出の米国特許出願第11/400,059号で開示されたとおり、リビングカチオン重合と、続く1,3-ブタジエンでのキャッピングにより、容易かつ経済的に調製することができる。この出願の全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の例示的態様の説明を以下に示す。
【0014】
用語の定義
本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、特に記載がないかぎり、式CnH2n+1の直鎖または分枝飽和一価炭化水素基を意味する。典型的にはnは1〜1000であり、より典型的にはnは1〜100である。アルキルは-OH、-SH、ハロゲン、アミノ、シアノ、ニトロ、C1-C12アルキル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12アルコキシ、C1-C12ハロアルコキシまたはC1-C12アルキルスルファニルで置換されていてもよい。いくつかの態様において、アルキルは1つまたは複数のハロゲン、ヒドロキシル、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニルもしくはC2-C12アルキニル基、C1-C12アルコキシ、またはC1-C12ハロアルキルで置換されていてもよい。アルキルなる用語は、シクロアルキルも意味しうる。
【0015】
本明細書において用いられる「シクロアルキル」なる用語は、飽和環式炭化水素、すなわちすべての環原子が炭素である化合物を意味する。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、シクロアルキルは1つまたは複数のハロゲン、ヒドロキシル、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニルもしくはC2-C12アルキニル基、C1-C12アルコキシ、またはC1-C12ハロアルキルで置換されていてもよい。
【0016】
本明細書において用いられる「ハロアルキル」なる用語は、1つまたは複数のF、Cl、Br、またはIで置換されているアルキルを含み、ここでアルキルは上で定義している。
【0017】
本明細書において用いられる「アルコキシ」なる用語は、「アルキル-O-」基を意味し、ここでアルキルは上で定義している。アルコキシ基の例にはメトキシまたはエトキシ基が含まれる。
【0018】
本明細書において用いられる「アリール」なる用語は、炭素環式芳香族基を意味する。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。アリール基の例には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、フルオランチルまたはフルオレニルなどの置換されていてもよい基が含まれる。アリール上の適当な置換基の例には、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-C12アルキル、C2-C12アルケンまたはC2-C12アルキン、C3-C12シクロアルキル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12アルコキシ、アリールオキシ、アリールアミノまたはアリール基が含まれる。
【0019】
本明細書において用いられる「アリールオキシ」なる用語は、「アリール-O-」基を意味し、ここでアリールは上で定義している。アリールオキシ基の例には、フェノキシまたはナフトキシ基が含まれる。
【0020】
本明細書において用いられるアリールアミンなる用語は、「アリール-NH-」、「アリール-N(アルキル)-」、または「(アリール)2-N-」基を意味し、ここでアリールおよびアルキルは上で定義している。
【0021】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」なる用語は、1つまたは複数のヘテロ原子(O、S、またはN)を含む芳香族基を意味する。ヘテロアリール基は単環式または多環式、例えば、1つまたは複数の炭素環式芳香族基もしくは他の単環式ヘテロアリール基に縮合している単環式ヘテロアリール環でありうる。本発明のヘテロアリール基には、1つまたは複数のオキソ部分で置換されている環系も含まれる。ヘテロアリール基の例には、ピリジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プリニル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、ジヒドロキノリル、テトラヒドロキノリル、ジヒドロイソキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ベンゾフリル、フロピリジニル、ピロロピリミジニル、およびアザインドリルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0022】
前述のヘテロアリール基はC-結合型であってもN-結合型であってもよい(そのような結合型が可能である場合)。例えば、ピロール由来の基はピロール-1-イル(N-結合型)であってもピロール-3-イル(C-結合型)であってもよい。
【0023】
ヘテロアリールに適した置換基は、アリール基に関して上で定義したとおりである。
【0024】
アルキル、シクロアルキルに適した置換基には、ハロゲン、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシが含まれる。
【0025】
アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルにおける置換可能な炭素原子に適した置換基のさらなる例には、-OH、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、および-I)、-R、-OR、-CH2R、-CH2OR、-CH2CH2ORが含まれるが、それらに限定されるわけではない。Rはそれぞれ独立にアルキル基である。
【0026】
いくつかの態様において、アリール、ヘテロアリールまたはアリールアルケニルのアリール部分における置換可能な炭素原子に適した置換基には、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニルまたはC2-C12アルキニル基、C1-C12アルコキシ、アリールオキシ基、アリールアミノ基およびC1-C12ハロアルキルが含まれる。
【0027】
加えて、前述の基は=O、=S、=N-アルキルで置換されていてもよい。
【0028】
本発明の文脈において、アミノ基は一級(-NH2)、二級(-NHRp)、または三級(-NRpRq)であってもよく、ここでRpおよびRqはアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、および二環式炭素環基のいずれかであってもよい。
【0029】
本明細書において用いられる「ペプチド」なる用語は、アミノ酸のアミドポリマーを意味し、ここでモノマーは天然または人工のいずれかでありうる。
【0030】
エンドキャップポリマーの合成
様々な態様において、本発明はリビングポリオレフィンカチオン、典型的にはポリイソオレフィンカチオン、さらにより典型的にはリビングポリイソブチレンカチオン(PIB+)をキャッピング剤で「キャップ」する方法を用いる。
【0031】
キャッピング剤には、置換されていてもよい共役ジエンおよび置換されていてもよいブタジエンなどの、置換されていてもよいオレフィンが含まれうる。別の例として、無置換ブタジエンを用いることもできる。
【0032】
「リビング」カチオンポリオレフィンは、一般には、末端カチオン基を有する任意のポリオレフィンであり、これは典型的には当業者に公知の多くのリビング重合法の一つによって調製されるため、「リビング」ポリマーと呼ぶ。様々な態様において、ポリオレフィン、例えば、ポリイソオレフィン、ポリマルチオレフィンまたはポリ(置換もしくは無置換ビニリデン芳香族化合物)、より典型的にはポリイソブチレンを、置換されていてもよい共役ジエン、例えば、ブタジエンと反応させてポリマーを「キャップ」することができ、ここでキャップはハロゲン化物末端基である。適当なポリオレフィンには、C4-C18ポリイソモノオレフィン、C4-C14ポリマルチオレフィン、およびポリ(置換もしくは無置換ビニリデン芳香族化合物)、例えば、C4-C10ポリイソモノオレフィン、またはより典型的にはC4-C8ポリイソモノオレフィンが含まれうる。ポリイソブチレンは好ましいイソオレフィンポリマーの一例である。
【0033】
これらのポリマーカルボカチオンを生成しうる一組の反応条件は、溶媒中でオレフィンモノマーを開始剤(通常は有機エーテル、有機エステル、または有機ハロゲン化物)および共開始剤を含む開始系と接触させることである。共開始剤は典型的には開始剤の濃度と等しい、または典型的にはそれより2〜40倍高い濃度で用いる。共開始剤の例には、BCl3、TiCl4、AlBr3、ならびにMe3Al2Br3、MeAlBr2、およびMe2AlBrなどのハロゲン化有機アルミニウムのうち1つまたは複数が含まれる。
【0034】
重合は典型的には、開始剤および共開始剤の濃度に応じて、約-10〜約-100℃、典型的には約-50〜約-90℃の温度範囲で約10〜約120分間行うことができる。
【0035】
いったん所望のリビングポリマーが得られれば、キャッピング剤、例えば、置換されていてもよいブタジエンを、リビング鎖末端の濃度と同じから約10倍まで、典型的にはリビング鎖末端の濃度の約1〜約5倍、さらにより典型的にはリビング鎖末端の濃度の約1〜約2倍の濃度で重合媒質に加えることができる。ブタジエンは一般には、リビング鎖末端およびブタジエンの濃度に応じて約10分〜約5時間、リビングポリマーと反応させる。本質的に100%のキャッピングを達成するのに必要な時間は、開始剤、共開始剤およびブタジエン濃度によって変動することになる。開始剤濃度が高いほど時間は短く、約20分であるが、開始剤濃度が低いと100%のキャッピングを達成するのに10時間を要することもある。
【0036】
好ましい態様において、本発明の方法(モノマーを重合してリビングポリマーを調製する)を通常の重合装置における重合ゾーンで、希釈剤存在下または非存在下で実施することができる。適当な重合条件は典型的には、約-100〜約10℃、好ましくは約-80〜約0℃の範囲の温度で、約1〜約180分の範囲の期間を含む。典型的には、重合反応混合物を、例えば通常の混合手段を用いた撹拌に供してもよい。
【0037】
本発明の方法において用いるリビングポリマーは、用いるオレフィン原料(chargestock)に応じて、例えば、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどでありうる。本発明のリビングポリマーの好ましい数平均分子量(Mn)は、約500〜約2,000,000、一般には約2,000〜約100,000、またはいくつかの態様においては約1500〜約5000の範囲でありうる。好ましくは、ポリマーの数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が約1.0〜約1.5、典型的には約1.0〜約1.2の範囲となるように、ポリマーは狭い分子量分布を有する。ポリマーを重合ゾーン流出液から回収し、通常の方法によって終了することができる。一つの態様において、本明細書に記載の技術に従ってエンドキャップポリマーを合成することにより、官能基化された、ポリマー鎖へのブタジエンのモノ付加生成物を非常に高収率(最大約100%)で得られる。
【0038】
スキーム(I)は、本発明によって用いられる出発原料(下記の式(III))の調製のための好ましい工程を例示している。具体的には、スキーム(I)は、リビングポリイソブチレン鎖に1,3-ブタジエンをモノ付加し、成長するポリマー鎖をクロロアリル基でキャッピングする工程を例示している。

【0039】
2006年4月7日提出の米国特許出願第11/400,059号, “Capping Reactions in Cationic Polymerization;Kinetic and Synthetic Utility”に記載のとおり、選択した条件下では停止がブタジエンの成長よりも速く(kt>>kp)、カルボカチオンがオレフィンと反応してもっぱら[1:1]付加物を生じることが明らかにされている。本明細書において用いられる「より速い」なる用語は、他の点は類似の条件下で、少なくとも10倍速い、好ましくは少なくとも100倍速い、より好ましくは1000倍速いことを意味する。
【0040】
本発明の反応のいくつかの態様は、スキーム(I)におけるカルボカチオンへの共役ジエン分子の付加よりも速いハロゲン化による停止を含み、それによりハロゲン化エンドキャップ基を有するエンドキャップポリマーを生成する。そのような反応の一例は、式(I):

のポリマーと、エンドキャッピング試薬としての式(II)

の置換されていてもよい共役ジエンとの、ルイス酸存在下での反応であり、それによりハロゲン化エンドキャップ基を有する式(III)

のエンドキャップポリマーを生成する。
【0041】
式(I)から(III)において:nは2以上の整数であり;R1は、それぞれの場合に、独立にHまたはC1-C4アルキル、アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、イソブトキシなどの直鎖もしくは分枝C1-C12アルコキシ、または置換もしくは無置換アリール、例えば、C6-C18アリール、好ましくはC1-C4直鎖もしくは分枝アルキル、ハロゲン、またはC1-C4アルコキシで置換されていてもよいフェニルであり;かつR2は、それぞれの場合に、独立にHまたは電子吸引基、例えば、X2、CH2X2、CHX22、-CX23、-C≡N、-NO2であり;かつX1およびX2は、それぞれの出現時に、独立にハロゲン(F、Cl、Br、またはI)である。
【0042】
前述の式(I)および(III)は一官能性ポリマーを示しているが、本発明の方法および化合物は、式(Ia)および(IIIa):



で表される多官能性ポリマーを含む。
式(Ia)および(IIIa)を含む本明細書において用いられるLは、クミル、ジクミルもしくはトリクミルの塩化物、メチルエーテルまたはエステルを開始剤として用いる場合、クミル、ジクミルおよびトリクミルなどの開始剤残基である。他の例には、2,4,4,6-テトラメチルヘプチレンまたは2,5-ジメチルヘキシレンが含まれ、これらは2,6-ジクロロ-2,4,4,6-テトラメチルヘプタンまたは2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサンを開始剤として用いる場合に現れる。他の多くのカチオン性の一官能性および多官能性開始剤が当技術分野において公知である。kは1以上の整数である。当業者であれば、以下に示す合成スキームはすべて、式(Ia)および(IIIa)の化合物を用いて実施し、したがって多官能性ポリマーを生成しうることを理解するであろう。
【0043】
一つの態様において、式(III)および(IIIa)の化合物はそれぞれ構造式(IIIc)および(IIId)で表される:


本明細書において用いられる、不飽和炭素-炭素結合を形成する炭素原子上の置換基であって、そのような炭素原子への結合が記号

で示される置換基は、シスまたはトランス置換基のいずれかでありうる。式(IIIc)および(IIId)における変数の残りの値および好ましい値は、式(III)および(IIIa)に関して上で定義したとおりである。
【0044】
本発明の反応を実行するのに適した溶媒は、例えば、9未満の誘電率を有する少なくとも1つの成分を含む溶媒である。好ましくは、溶媒は7未満の誘電率を有する少なくとも1つの成分を含む。または、溶媒は誘電率9以上の極性溶媒を有する少なくとも1つの溶媒と、誘電率6未満の少なくとも1つの非極性溶媒との混合物を含む。適当な溶媒の例には、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、塩化メチル、塩化n-ブチル、ジクロロメタン、トルエン、およびクロロホルムのうち1つまたは複数が含まれる。
【0045】
別の態様において、ブロモアリル-キャップポリマーを、続く加水分解で用いることができる。そのようなブロモ官能基化ハロアリルの合成は、例えば、式(IV)

のポリマーをエンドキャッピング試薬としての式(II)

の置換されていてもよい共役ジエンと、金属臭化物ルイス酸存在下で反応させ、それによりハロゲン化されたエンドキャップ基を有する式(V)

のエンドキャップポリマーを生成することにより達成することができる。
式(IV)および(V)の変数は式(I)から(III)に関して上で定義したとおりである。
【0046】
一つの態様において、式(V)の化合物は構造式(Va)で表される:


式(Va)における変数の値および好ましい値は、式(I)から(III)に関して上で定義したとおりである。
【0047】
ハロアリル官能性ポリマーの加水分解
一般式(III)のハロアリル官能性ポリマーを、下記のスキーム(II)に従い、塩基(例えば、水酸化アルカリ、炭酸アルカリなどの無機塩基、または水酸化テトラブチルアンモニウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン、ホスファゼン塩基、例えば、N'-tert-ブチル-N,N,N',N',N'',N''-ヘキサメチルホスホルイミド酸トリアミドなどの有機塩基)による単純な加水分解に供して、一般式(VI)のヒドロキシル官能性炭化水素ポリマーを生成することができる:


【0048】
一つの態様において、式(III)の化合物は式(IIIc)で表すことができ、一方、式(VI)の化合物は構造式(VIa)で表される:


式(VIa)における変数の値および好ましい値は、式(VI)について上で定義したとおりである。
【0049】
試薬が可溶性で、かつ反応しない、任意の適当な溶媒または溶媒混合物を用いることができる。反応は最も一般的には溶媒混合物中で行う。出発原料を、好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル性溶媒に溶解する。例えば、溶媒はTHFまたはTHFと水との混合物でありうる。加水分解に無機塩基を用いる場合、ポリマーが可溶であるが水とは混和性である有機溶媒(例えばTHF)の混合物が好ましい。または、4級アンモニウム塩などの相転移触媒またはクラウンエーテルを用いてもよい。
【0050】
加水分解で用いる適当な塩基には無機塩基が含まれ、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いることができる。加水分解で用いる塩基の濃度は(重量パーセントで)、例えば、約0.5〜約95%、例えば:0.5%、1%、1.5%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%でありうる。
【0051】
加水分解は、約50〜約150℃の温度で実施することができる。例えば、加水分解は、50〜60℃、60〜70℃、70〜80℃、80〜90℃、90〜100℃、100〜110℃、110〜120℃、120〜130℃、130〜140℃、140〜150℃の温度で実施することができる。他の態様において、加水分解は約65℃、約100℃、または約130℃で実施することができる。
【0052】
加水分解は、約30分〜約48時間の任意の時間実施することができる。例えば、加水分解は、0.5〜2時間、2〜4時間、4〜6時間、6〜8時間、8〜10時間、10〜12時間、12〜14時間、14〜16時間、16〜18時間、18〜20時間、20〜22時間、22〜24時間、24〜30時間、30〜36時間、36〜42時間、42〜48時間の期間実施することができる。特定の態様において、加水分解は2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、26時間または48時間実施することができる。
【0053】
スキーム(II)において、X1はCl、Br、またはIでありうる。好ましくは、X1はClまたはBrである。より好ましくは、X1はBrである。一つの態様において、スキーム(II)のX1はClである。
【0054】
加水分解段階で用いる無機塩基の例は水酸化カリウムである。加水分解は、約80〜約120℃の温度、好ましくは90〜110℃で実施する。または、温度は約100〜約150℃、好ましくは120〜140℃である。反応は約12〜約36時間の期間、好ましくは20〜28時間実施する。KOHの濃度は約1〜約25重量%、好ましくは約1〜10重量%である。
【0055】
より好ましくは、X1はClであり、KOH濃度は1〜10重量%であり、加水分解は90〜110℃で20〜28時間実施する。さらにより好ましくは、X1はClであり、KOH濃度は1〜10重量%であり、加水分解は120〜140℃で20〜28時間実施する。
【0056】
別の態様において、スキーム(II)のX1はBrである。加水分解段階で用いる無機塩基の例は水酸化カリウムである。加水分解は、約60〜約100℃の温度、好ましくは55〜75℃で実施する。または、加水分解は約100〜約150℃、好ましくは120〜140℃の温度で実施する。反応は約1〜約10時間の期間、好ましくは2〜5時間実施する。KOHの濃度は約0.5〜約60重量%、好ましくは約40〜60重量%である。または、KOHの濃度は0.5〜1.5%である。より好ましくは、X1はBrであり、KOH濃度は40〜60重量%であり、加水分解は55〜75℃で20〜28時間実施する。さらにより好ましくは、X1はBrであり、KOH濃度は0.5〜1.5重量%であり、加水分解は120〜140℃で2〜5時間実施する。
【0057】
ハロアリル官能性ポリマーの求核置換
加水分解に加えて、一般式(III)のハロアリル官能性ポリマーを、様々な求核剤による求核攻撃に供することができる。したがって、一つの態様において、本発明は、求核置換による式(III)の化合物の誘導体の合成方法である。この誘導体化の一般合成経路を以下のスキーム(III)に示す:


【0058】
スキーム(III)において、求核剤Nu1は、式(III)の化合物およびNu1が溶解可能であり、かつ安定性を維持できる溶媒中で、式(III)の化合物と反応可能な任意の求核試薬である。好ましくは、Nu1はN3-、NH2-、HC2CH2-O-、HO-、RaO-、チミン、-CH2-C(O)OHから選択され、ここでRaはC1-C12アルキルまたはポリマーもしくはコポリマー断片である。本明細書において用いられる「ポリマー」または「コポリマー」なる用語は、重合と呼ぶ工程によってモノマーの連結により構築される高分子を意味する。本明細書において用いられるこれらの用語は、低分子量のオリゴマーを含む。ポリマーまたはコポリマー断片の非限定な例には、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリエーテル、およびラクチド、グリコリドまたはε-カプロラクトンのポリマーまたはコポリマーなどのポリエステルが含まれる。C1-C12アルキルの例はメチル、エチルである。
【0059】
本発明の特定の態様において、式(IIIb)の化合物をさらに反応させて、Nu1部分をNu2部分で置換する。(以下の記載参照。)したがって、一つの態様において、本発明は式(IIIf)の化合物である:


【0060】
Nu2はN3-、NH2-、HC2CH2-O-、HO-、RaO-、チミン、-CH2-C(O)OH、-C(O)N3、-NHC(O)OR、-C(O)NHR、-NHC(O)NHR、またはペプチド-NH-から選択され、ここでRaはC1-C12アルキルまたはポリマーもしくはコポリマー断片であり(式(IIIb)に関して上で定義したとおり)、RはC1-C12アルキルである。
【0061】
一つの態様において、式(III)の化合物は式(IIIc):

で表すことができ、一方、式(IIIb)の化合物は式(IIIe):

で表される。
この態様において、Nu1部分のNu2部分による置換は、その後の反応の結果、式(IIIg):

の化合物を生じることになる。
式(IIIe)および(IIIg)における変数の値および好ましい値は、式(IIIb)および(IIIf)に関して上で定義したとおりである。
【0062】
以下に記載する反応の一般的条件は当技術分野において公知で、例えば、March, “Advanced Organic Chemistry - Reactions, Mechanisms and Structure”, 5th Edition, John Wiley & Sons, (2001)に記載されており、その関連する部分は参照により本明細書に組み入れられる。本発明の好ましい態様を以下に記載する。
【0063】
式(III)のハロアリル-キャップポリマーを前述のとおりに得た。ハロアリル-キャップポリマー(III)を一段階の方法を用いて水酸化物、アルコキシド(例えば、メトキシド)、アジド、アミン、アルデヒド、酸およびプロパルギル官能基に定量的に変換した。
【0064】
Nu1がNu2に置換される態様において、1つまたは複数の追加段階を用いる。例えば、カルボキシレート(XV)誘導体の改変を用いてカルボニルアジド(XVI)を合成することができ(スキーム(X)参照)、これは尿素、ウレタンおよびアミド鎖延長剤を結合するためのビルディングブロックとして作用しうる(スキーム(XI))。さらに、ペプチドをカルボニルアジド中間体に、緩和な条件下で効果的に結合することもできる(スキーム(XI))。スキーム(XII)に従ってトリアゾール誘導体(XXI)を合成するために、スキーム(VI)に従って得たプロピニルオキシ誘導体(XII)をさらに用いることができる。
【0065】
したがって、一つの態様において、本発明は式(X):

の化合物の合成方法である。
式(X)における変数の値および好ましい値は、式(III)に関して上で定義したとおりである。N-3はアジドの任意の可溶性型、例えば、金属アジド(NaN3、KN3など)を意味する。
【0066】
一つの態様において、式(III)の化合物は式(IIIc)で表すことができ、一方、式(X)の化合物は式(Xa)で表される:


式(Xa)における変数の値および好ましい値は、式(X)に関して上で定義したとおりである。
【0067】
スキーム(IV)の反応の反応条件は以下のとおりである:一つは無水THFであり他の一つは無水極性非プロトン性溶媒である溶媒の混合物中、25〜75℃の温度範囲で、反応を窒素またはアルゴン雰囲気下にて実施した。例えば、反応を、ニトロメタン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、もしくはジオキサンなどの極性非プロトン性溶媒、またはその混合物中で実施する。好ましくは、溶媒は83.3%:16.7%のTHF/DMF混合物である。反応の温度は典型的には約25〜約100℃、好ましくは約25〜約75℃、例えば、50℃である。
【0068】
別の態様において、本発明はスキーム(V)に従った式(XI)の化合物の合成方法である:


N-3はアジドの任意の可溶性型、例えば、金属アジド(NaN3、KN3など)を意味し、Mはアルカリ金属(Na、Kなど)である。
式(XI)における変数の値および好ましい値は、式(III)に関して上で定義したとおりである。
【0069】
一つの態様において、式(III)の化合物は式(IIIc)で表すことができ、式(X)の化合物は式(Xa)で表すことができ、一方、式(XI)の化合物は式(XIa)で表される:


式(XIa)における変数の値および好ましい値は、式(XI)に関して上で定義したとおりである。
【0070】
化合物(III)から(XI)への合成経路は任意の適当なアミノ化試薬により実施することができる。好ましくは、アミノ化試薬はカリウムフタルイミドであり、続いてヒドラジン水和物および塩基性溶液中での加水分解を行う。反応は好ましくは無水THFおよび無水極性非プロトン性溶媒の混合物中、窒素またはアルゴン雰囲気下、66〜100℃の温度範囲で12〜24時間実施する。例えば、反応を、ニトロメタン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、もしくはジオキサンなどの極性非プロトン性溶媒、またはその混合物中で実施する。好ましくは、溶媒は75%:25%のTHF/DMF混合物である。
【0071】
化合物(X)から(XI)への合成経路はLiAlH4、NaBH4、H2/PdまたはNiおよびPPh3などの任意の適当な還元試薬により実施することができる。好ましくは、還元試薬はPPh3である。反応は好ましくは極性プロトン性溶媒中で実施する。極性溶媒は、水またはアルコールなどの極性プロトン性溶媒;THF、ジオキサンなどのエーテル性溶媒のうち1つまたは複数でありうる。例えば、溶媒はTHFおよび水の混合物でありうる。好ましくは、THFおよび水の91%:9%の混合物を用いる。
【0072】
別の態様において、本発明はスキーム(VI)に従った式(XII)の化合物の合成方法である:


式(XII)における変数の値および好ましい値は、式(III)に関して上で定義したとおりである。
【0073】
一つの態様において、式(III)の化合物は式(IIIc)で表すことができ、一方、式(XII)の化合物は式(XIIa)で表される:


式(XIIa)における変数の値および好ましい値は、式(XII)に関して上で定義したとおりである。
【0074】
スキーム(VI)の反応の反応条件は以下のとおりである:ニトロメタン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、もしくはジオキサンなどの極性非プロトン性溶媒、またはその混合物中、塩基、すなわち水素化ナトリウム、KOH、NaOHなどの存在下、不活性雰囲気下、20〜100℃の温度範囲。好ましくは、塩基としてKOHを用いる場合、溶媒は無水THFであり、温度は70℃である。
【0075】
別の態様において、本発明はスキーム(VII)に従った式(XII)の化合物の合成方法である:


式(XIII)における変数の値および好ましい値は、式(III)に関して上で定義したとおりであり、RaはC1-C12アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)またはポリマーもしくはコポリマー断片、例えば、ポリエチレンオキシド(PEG)およびラクチド、グリコリドまたはε-カプロラクトンのポリマーまたはコポリマーなどのポリエステルである。
【0076】
一つの態様において、式(III)の化合物は式(IIIc)で表すことができ、一方、式(XIII)の化合物は式(XIIIa)で表される:


式(XIIIa)における変数の値および好ましい値は、式(XIII)に関して上で定義したとおりである。
【0077】
反応は最も一般的にはPEGを除いてアルコール性溶媒中で実施する。PEGの場合、好ましい溶媒は、テトラヒドロフランなどの非プロトン性極性溶媒である。テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル性溶媒が好ましくは共溶媒として用いられる。例えば、溶媒はTHFおよびメタノールまたはエタノールなどのアルコールの混合物でありえ、溶媒は極性非プロトン性および極性プロトン性混合物でなければならない。
【0078】
スキーム(VII)において、反応は好ましくは塩基によって触媒される。適当な塩基には無機塩基が含まれ、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いることができる。好ましくは、溶媒は83.3%:16.7%のTHF/MeOH混合物である。反応の温度は典型的には約66〜約100℃、好ましくは70℃である。
【0079】
別の態様において、本発明はスキーム(VIII)に従った式(XIV)の化合物の合成方法である:


式(XIV)における変数の値および好ましい値は、式(III)に関して上で定義したとおりである。
【0080】
一つの態様において、式(III)の化合物は式(IIIc)で表すことができ、一方、式(XIV)の化合物は式(XIVa)で表される:


式(XIVa)における変数の値および好ましい値は、式(XIV)に関して上で定義したとおりである。
【0081】
スキーム(VIII)の反応の反応条件は以下のとおりである:極性非プロトン性溶媒ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)および水の混合物、25〜100℃の温度範囲。スキーム(VIII)において、反応は好ましくは塩基によって触媒される。適当な塩基には無機塩基が含まれ、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いることができる。好ましくは、塩基としてKOHを用い、溶媒はTHFおよび水の混合物であり、温度は70℃である。
【0082】
別の態様において、本発明は式(XV)の化合物の合成方法であり、スキーム(IX)に従って式(III)の化合物およびマロン酸ジメチルから出発する:


式(XV)における変数の値および好ましい値は、式(III)に関して上で定義したとおりである。
【0083】
一つの態様において、式(III)の化合物は式(IIIc)で表すことができ、一方、式(XV)の化合物は式(XVa)で表される:


式(XVa)における変数の値および好ましい値は、式(XV)に関して上で定義したとおりである。
【0084】
スキーム(IX)の反応の反応条件は以下のとおりである:極性非プロトン性溶媒、25〜100℃の温度範囲、不活性(窒素またはアルゴン)雰囲気下。好ましくは、溶媒は無水THFであり、温度は70℃である。
【0085】
別の態様において、本発明は式(XVI)の化合物の合成方法であり、スキーム(X)に従って式(XV)の化合物から出発する:


前述のとおり、N-3は任意の可溶性アジドの型、例えば、金属アジドを意味する。
【0086】
一つの態様において、式(XV)の化合物は式(XVa)で表すことができ、一方、式(XVI)の化合物は式(XVIa)で表される:


式(XVIa)における変数の値および好ましい値は、式(XVI)に関して上で定義したとおりである。
【0087】
化合物(XV)から化合物(XVI)への合成経路の反応条件は以下のとおりである:極性非プロトン性溶媒、すなわちTHF中、塩基、すなわちトリエチレンアミンまたはピリジン存在下、-10〜30℃の温度範囲、不活性雰囲気下。好ましくは、溶媒はTHFであり、塩基はトリエチルアミンであり、温度範囲は0〜25℃である。
【0088】
別の態様において、本発明はスキーム(XI)の反応に従った、式(XVII)、(XVIII)、(XIX)および(XX)の化合物のいずれかの合成方法であり、ここで「rt」は室温を意味する:


式(XVII)〜(XX)における変数の値および好ましい値は、式(III)に関して上で定義したとおりである。スキーム(XI)において、RはC1-C12アルキルである。
【0089】
一つの態様において、式(XVI)の化合物は式(XVIa)で表すことができ、一方、式(XVII)〜(XX)の化合物は式(XVIIa)〜(XXa)で表される:


式(XVIIa)〜(XXa)における変数の値および好ましい値は、式(XVI)〜(XX)に関して上で定義したとおりである。
【0090】
化合物(XVI)から化合物(XVII)〜(XX)への合成経路の反応条件は以下のとおりである:極性非プロトン性溶媒中、25〜100℃の温度範囲内。
【0091】
別の態様において、本発明は式(XXI)の化合物の合成方法であり、スキーム(XII)に従って式(XII)の化合物から出発する:


【0092】
式(XXI)における変数の値および好ましい値は、式(III)に関して上で定義したとおりである。スキーム(XII)において、Rbは置換されていてもよいアルキル(例えばC1-C20アルキル)、置換されていてもよいアリール(例えばC6-C20アリール、好ましくは、C1-C4直鎖もしくは分枝アルキルまたはハロゲンで置換されていてもよいフェニル)、置換されていてもよいヘテロアリール(例えばC6-C20ヘテロアリール)またはポリマーもしくはコポリマー断片である。好ましくは、ポリマーまたはコポリマーは水に可溶性で、かつ/または25℃よりも高いガラス転移温度もしくは融解温度を有し、かつ/または生分解性である。ポリマーの非限定的例には、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリエーテル、およびポリラクチドなどのポリエステルが含まれる。
【0093】
一つの態様において、式(XII)の化合物は式(XIIa)で表すことができ、一方、式(XXI)の化合物は式(XXIa)で表される:


式(XXIa)における変数の値および好ましい値は、式(XXI)に関して上で定義したとおりである。
【0094】
スキーム(XII)の反応の反応条件は以下のとおりである:極性非プロトン性溶媒および水の混合物中、20〜66℃の温度範囲内。
【0095】
または、式(XXI)はブロックコポリマーであり、ここでRbはポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0096】
前述のとおり、化合物(IIIa)および(IIId):

を本発明の方法において用いることができる。
変数Lは式(IIIa)に関して上で定義した。これらの化合物を出発原料として用いる場合、下記の例は本発明の様々な態様を表す。
【0097】
一つの態様において、本発明は式(XXXIVa)の化合物である


式(XXXIVa)の化合物の一つの態様は式(XXXIV)で表される:


式(XXXIV)および(XXXIVa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XII)に関して上で定義したとおりである。
【0098】
別の態様において、本発明は式(XXXVa)で表される化合物である:


式(XXXVa)の化合物の一つの態様は式(XXXV)で表される


式(XXXV)および(XXXVa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XXI)に関して上で定義したとおりである。
【0099】
一つの態様において、本発明は式(XXXVIa)の化合物である:


式(XXXVIa)の化合物の一つの態様は式(XXXVI)で表される:


式(XXXVI)および(XXXVIa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XIII)に関して上で定義したとおりである。
【0100】
一つの態様において、本発明は式(XXXVIIa)の化合物である:


式(XXXVIIa)の化合物の一つの態様は式(XXXVII)で表される:


【0101】
式(XXXVII)および(XXXVIIa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XIV)に関して上で定義したとおりである。
【0102】
一つの態様において、本発明は式(XXXVIIIa)の化合物である:


式(XXXVIIIa)の化合物の一つの態様は式(XXXVIII)で表される:


【0103】
式(XXXVIII)および(XXXVIIIa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XV)に関して上で定義したとおりである。
【0104】
一つの態様において、本発明は式(XXXIXa)の化合物である:


式(XXXIXa)の化合物の一つの態様は式(XXXIX)で表される:


【0105】
式(XXXIX)および(XXXIXa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XVI)に関して上で定義したとおりである。
【0106】
一つの態様において、本発明は式(XLa)の化合物である:


式(XLa)の化合物の一つの態様は式(XL)で表される:


【0107】
式(XL)および(XLa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XVII)に関して上で定義したとおりである。
【0108】
一つの態様において、本発明は式(XLIa)の化合物である:


式(XLIa)の化合物の一つの態様は式(XLI)で表される:


【0109】
式(XLI)および(XLIa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XVIII)に関して上で定義したとおりである。
【0110】
一つの態様において、本発明は式(XLIIa)の化合物である:


式(XLIIa)の化合物の一つの態様は式(XLII)で表される:


【0111】
式(XLII)および(XLIIa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XIX)に関して上で定義したとおりである。
【0112】
一つの態様において、本発明は式(XLIIIa)の化合物である:


式(XLIIIa)の化合物の一つの態様は式(XLIII)で表される:


【0113】
式(XLIII)および(XLIIIa)の変数の値および好ましい値は、式(IIIa)および(XX)に関して上で定義したとおりである。
【0114】
製造物品
α,ω-PIB-ジオール、ジアミンまたは二酸(または対応する多官能性PIB)は、ポリウレタン、ポリエステルもしくはポリアミドの熱可塑性エラストマーまたはエラストマー改変プラスチックへの有用な中間体である。α,ω-PIB-ジアミン(または対応する多官能性PIB)はエポキシ樹脂を硬化する、または硬化エポキシ樹脂の性質を改変するために用いてもよい。アジドおよびアルキン官能基を含む末端官能性PIBを、シャープレス型のクリック反応(1,3双極子付加環化)によるブロックコポリマーのモジュラー合成において用いることができる。チミン官能性PIBを、UV光触媒光二量化によって鎖伸張または架橋することができる。PIB-ブロック-PEOなどのPIBに基づく両親媒性ブロックコポリマーは、界面活性剤として有用である。
【0115】
前述の本発明のポリマーは改善された性質を示す。例えば、ソフトセグメントのための材料として現在用いられているポリマー性ジオール、すなわち、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールおよびポリジエンジオールから得た熱可塑性ポリウレタンは、重度の制限を受ける。ポリエステルベースのポリウレタンは加水分解を受けやすく、ポリエーテル成分はインビボで酸化的分解を受け、かつポリジエンは熱および酸化安定性が低い。これに対して、PIBはすぐれた熱、酸化および生体安定性を有する。
【0116】
本発明の熱可塑性ポリウレタン、ポリエステルまたはポリアミドは、有望な新しい熱可塑性エラストマー、他のポリマー材料および生体材料である。いくつかの態様において、製造物品は挿入可能または埋め込み可能な医療装置、例えば、カテーテル、気管内チューブ、気管切開チューブ、創傷排液装置、創傷被覆材、ステントコーティング、インプラント、静脈内カテーテル、医療用接着剤、シャント、胃瘻チューブ、医療用チューブ、心血管製品、心臓弁、ペースメーカーリードコーティング、ガイドワイヤ、または採尿装置である。治療剤が放出される医療装置において、特定の組成物は適切な放出特性も示すことになり、したがって、これらの材料は医療薬物溶出物品(eluting articles)および薬物溶出コーティングとしても有用である。
【0117】
いくつかの態様において、本発明の熱可塑性ポリウレタン、ポリエステルまたはポリアミドは、例えば、射出成形および押出成形により、溶融加工することができる。この方法のために用いる組成物は成形のために単独で、または任意の他の溶融加工可能な材料と合わせて用いることができる。
【0118】
本発明の熱可塑性ポリウレタン、ポリエステルまたはポリアミドは、あらかじめ形成した物品上にコーティングすることもできる。コーティング剤として用いる場合、当技術分野において公知の方法を含む任意の手段によってコポリマーを塗布することができる。例えば、本発明の熱可塑性ポリウレタン、ポリエステルもしくはポリアミドを含む組成物を溶液から物品に刷毛で塗る、もしくは噴霧することができ、または物品を本発明のコポリマーを含む溶液に浸漬することができる。
【0119】
実施例
PIB-アリルClおよびα,ω-ジクロロアリルPIB(Clアリル-PIB-アリルCl)の合成
まず、イソブチレン(IB)をヘキサン/塩化メチル60/40(v/v)中、-80℃で、[IB]=0.04M、[2-クロロ,2,4,4-トリメチルペンタン、TMPCl]=0.01M、[2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、DTBP]=0.006Mおよび[TiCl4]=0.036Mを用いて60分間重合し、次いで1,3-ブタジエン(BD)、[BD]=0.04Mを-80℃で加えた。6時間後、あらかじめ冷却したメタノールで反応を停止した。リビングポリイソブチレン(PIB)鎖末端から1,3-ブタジエンへの定量的交差反応と、続いて即時の停止(BDの複数付加なし)および1,4-付加物の選択的生成が得られた(IBの変換=100%、Mn,GPC=3200、Mn,NMR=2800、PDI=1.07)。生成物の1H NMR分析により、もっぱらPIB-アリルCl(VII)の生成が見られた:


【0120】
Clアリル-PIB-アリルClを、TMPClの代わりに5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼンを用いて、同様に合成した。
【0121】
ハロゲン交換反応
ハロゲン交換反応を、トルエン/アセトン混合物(65/35、ν/ν)中、大過剰の無水LiBr([LiBr]/[PIB-アリルCl]=200)を用い、乾燥窒素雰囲気下で行った。典型的な実験は以下のとおりである:二頚丸底フラスコにPIB-アリルCl(5g、1%w/v)、LiBr(31g)、トルエン(325mL)、およびアセトン(175mL)を入れ、撹拌しながら還流した。12時間後、溶液を室温まで冷却した。次いで、溶媒を減圧下で蒸発させた。過剰のLiBrを、蒸留水で洗浄することにより除去した。ポリマーをHex/メタノール系を用いて二回沈澱させることにより精製した。生成物の1H NMR分析により、ClのBrへの完全な変換が見られた。
【0122】
PIB-アリルX(X=ClまたはBr)の加水分解
典型的な実験において、0.5gのPIB-アリルXを10mLのテトラヒドロフランに溶解した。次に、1〜10mlのKOH水溶液(1、5、10および50%)を加え、反応を所定の温度で所定の時間行った。テトラヒドロフランの沸点よりも高温での実験は、加圧反応器内で行った。反応後、ヘキサンを加え、溶液を水で中性になるまで洗浄した。溶液を無水NaSO4で乾燥し、ロータリーエバポレーターでヘキサンを蒸発させてポリマーを回収した。生成物を1H NMRおよびFTIR分光法で特徴づけた。
【0123】
結果
PIB-アリルCl、24時間、100℃

PIB-アリルCl、24時間、130℃

PIB-アリルBr、24時間、還流温度(65℃)

PIB-アリルBr、24時間、130℃

【0124】
Xアリル-PIB-アリルXの加水分解
典型的な実験において、10mLのTHFに溶解した0.1gのジハロアリルPIBをParr加圧反応器(容量125mL)に入れ、10mlの1%KOH溶液を加えた。次いで、反応物を加熱し、反応を130℃で進行させた。所定の時間の後、反応器を室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。ポリマーをヘキサンに溶解し、蒸留水で洗浄した。有機層を、無水硫酸ナトリウムを通過させて乾燥し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をヘキサン/メタノール中での再沈殿により精製し、ポリマーを真空下で乾燥した。1H NMR分光法により、Brアリル-PIB-アリルBrについては3時間、Clアリル-PIB-アリルClについては24時間で完全な加水分解が達成された。
【0125】
PIB-アリル-メトキシドの合成
無水THF(10mL)を、還流冷却器を取り付けた100mLの三頚丸底フラスコに入れた。持続的窒素気流を反応の経過中維持した。これにPIB-アリル-クロリド(200mg、0.07mmol)を加え、混合物を均質な溶液が得られるまで撹拌した。無水MeOHを溶液に、混濁するまで滴下した。さらに3〜4滴の無水THFを混合物に加え、澄明溶液を得た。反応混合物にKOH(180mg、3.21mmol)を加え、混合物を5時間還流した。反応を停止し、室温まで冷却した。過剰のTHFを蒸留し、得られた粘着性の塊をヘキサンに溶解し、メタノール中で再沈殿させた。この工程を3回繰り返して無機不純物を除去した。次いで、固体を真空下に置いて痕跡量の溶媒を除去した。
【0126】
物理的状態:粘着性の固体、収率:87%、NMR(CDCl3、ppm、δ):5.75、5.55、3.90、3.35、2.05、1.45、1.1。
【0127】
PIB-ブロック-PEGの合成
PIB-アリル-クロリド(200mg、0.07mmol)を無水THF(20mL)に溶解し、これにPEG-OH(420mg、0.21mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気下に置き、これを常に撹拌しながらKOH(960mg、17.5mmol)を加えた。撹拌中の混合物を48時間還流した。反応を停止し、室温まで冷却した。混合物をろ過し、ろ液を減圧下に置いて溶媒を蒸発させた。残渣をクロロホルムに溶解し、水で洗浄して過剰のPEG-OHを除去した。有機層を、硫酸ナトリウムを通過させ、蒸発させて粘着性の白色液体を得た。1H NMR試験により、PIB-アリル-クロリドに対して100%の変換が達成された。
【0128】
改変法において、1:1当量のPIB-アリル-クロリドおよびPEG-OHを、窒素雰囲気下、0℃から周囲温度の温度範囲で、250モル当量の水素化ナトリウムおよび50当量の臭化テトラブチルアンモニウムと共に16時間反応させた。1H NMRスペクトルにより、PIB-アリル-クロリドに対して93%のカップリング効率が見られた。
【0129】
PIB-アリル-アジドの合成
無水THF(10mL)を、還流冷却器を取り付けた100mLの三頚丸底フラスコに入れた。持続的窒素気流を反応の経過中維持した。これにPIB-アリル-クロリド(200mg、0.07mmol)を加え、混合物を均質な溶液が得られるまで撹拌した。無水DMFを溶液に、沈澱が生じるまで滴下した。さらに無水THFを混合物に加え、澄明溶液を得た。撹拌中の混合物にNaN3(200mg、3.08mmol)を加え、混合物を50℃で3時間加熱し、室温で8時間撹拌した。反応を停止し、室温まで冷却した。過剰のTHFを蒸留し、得られた粘着性の塊をヘキサンに溶解し、メタノール中で再沈殿させた。この工程を3回繰り返して無機不純物を除去した。次いで、生成物を室温で真空乾燥した。
【0130】
物理的状態:粘着性の固体;収率:91%;NMR(CDCl3、ppm、δ):5.82、5.55、3.74、2.08、1.45、1.15;FT-IR(薄膜、cm-1):2952(-CH str)、2097(-N3 str)、1472、1389、1366、1231、762。
【0131】
PIB-アリル-フタルイミドの合成
PIB-アリル-クロリド(272mg、0.095mmol)を無水THF(9mL)に溶解し、これに3mLの無水DMFを加え、混合物を室温で撹拌した。撹拌中の混合物にフタルイミドカリウム(278mg、1.5mmol)を加え、混合物を窒素雰囲気下で12時間還流した。反応を停止し、室温まで冷却した。過剰のTHFを蒸発させ、残った粘着性の塊にメタノールを加えた。生じた沈澱を分離し、ヘキサンに溶解した。溶液をろ過し、ろ液をメタノール中で再沈殿させた。得られた粘着性の固体をヘキサンおよびメタノールを用いての溶解および再沈殿法によりさらに精製した。
【0132】
物理的状態:粘着性の固体;収率:83%;NMR(CDCl3、ppm、δ):7.9、7.7、5.85、5.5、4.3、2.0、1.4、1.0。
【0133】
フタルイミドからPIB-アリル-アミンへの脱保護
PIB-アリル-フタルイミド(210mg、0.07mmol)をTHF(10mL)に溶解し、これにヒドラジン水和物(190mg、3.8mmol)を加え、混合物を24時間還流した。反応を停止し、室温まで冷却した。混合物に水2mL中のKOH(320mg)の溶液を加え、さらに30分間撹拌した。THFを減圧下で蒸発させ、これにメタノールを加えた。得られた沈殿を、ヘキサンに溶解しメタノール中で再沈殿させることにより、さらに精製した。
【0134】
物理的状態:粘着性の固体;NMR(CDCl3、ppm、δ):5.6、3.3、2.7、2.0、1.4、1.0。
【0135】
PIB-アリル-カルボン酸の合成
Na(112mg、4.87mmol)を窒素雰囲気下に置いた三頚丸底フラスコ(A)に入れた。系の温度を、氷浴を用いて0℃に維持した。これを持続的に撹拌しながら、無水メタノール(2mL)をナトリウムが溶解するまで滴下した。窒素雰囲気下に置いた別の100mL丸底フラスコ(B)に、無水THF(10mL)と、続いてジメチルマロネート(522mg、5.67mmol)を入れた。ここでナトリウムメトキシド溶液をフラスコ(B)にシリンジを用いて移し、混合物を室温で30分間撹拌した。溶液の色は乳白色になり、ジメチルマロネートのナトリウム塩の生成を示す。これに無水THF(2mL)中のPIB-アリル-Cl(270mg、0.09mmol)を撹拌しながらゆっくり加えた。混合物を12時間還流した。反応を停止し、室温まで冷却した。溶液に希HClを加えてpH 4まで酸性化した。過剰のTHFを減圧下で蒸発させた。塊をメタノールに加え、液体部分をデカンテーションした。粘着性の固体を、溶媒としてのヘキサンおよび非溶媒としてのメタノールを用いた溶解および沈殿法によりさらに精製した。ポリマーを20mLのTHFにさらに溶解し、溶液を撹拌しながら3mLの濃HClを滴下した。次いで、混合物を24時間還流した。生成物を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、THFを蒸発させた。粘着性の塊をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウムを通過させ減圧下で濃縮して、白色粘着性の固体を得た。
【0136】
物理的状態:粘着性の固体;NMR(CDCl3、ppm、δ):5.65、5.4、2.7、2.0;FT-IR(薄膜、cm-1):2953(-CH str)、1717(-COOH str)、1471、1389、1366、1231、762。
【0137】
PIB-アリル-ブロミドからのPIB-アリル-マロン酸エステルの合成
PIB-アリル-ブロミド(172mg、0.06mmol)を15mLの無水THFに溶解し、これに2mLの無水アセトニトリルを加えた。溶液にK2CO3(215mg、1.55mmol)を加え、混合物を還流した。還流混合物にマロン酸メチル(210mg、1.6mmol)を加え、還流を20時間続けた。次いで、反応を停止し、室温まで冷却した。混合物をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた塊を、ヘキサンに溶解しメタノール中で再沈殿させることにより精製した。
【0138】
物理的状態:粘着性の白色固体;NMR(CDCl3、ppm、δ):5.6、5.35、3.75、3.45、2.65、1.95、1.4、1.0。
【0139】
PIB-アリル-クロリドのプロパルギル誘導体の合成
PIB-アリル-クロリド(212mg、0.074mmol)を10mLの無水THFに溶解し、これにKOH(230mg、4.1mmol)と、続いてプロパルギルアルコール(252mg、4.5mmol)を加えた。混合物を18時間還流した。反応の進行を5、10および18時間後に1H NMR分光法を用いてチェックし、それぞれ50、72および100%の変換を示した。次いで、反応を停止し、室温まで冷却した。過剰のTHFを減圧下で蒸発させた。得られた粘着性の塊をヘキサンに溶解し、メタノール中で沈殿させた。この工程を3回繰り返し、白色粘着性の沈殿物を高真空下に置いてポリマーマトリクスに取り込まれた痕跡量の溶媒を除去した。
【0140】
物理的状態:粘着性の固体;収率:92%;NMR(CDCl3、ppm、δ):5.8、5.55、4.2、4.1、2.45、2.0、1.4、1.0。
【0141】
等価物
本発明をその例示的態様に関して特に示し、記載してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、その中で形状および細部における様々な変更がなされうることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IIIc)の化合物

を反応させて、X1をNu1で求核置換する段階を含む、式(IIIe)の化合物の合成方法:

式中、
R1は、それぞれの場合に、独立にHまたはC1-C4アルキル、アルコキシまたは置換もしくは無置換アリールであり;
R2は、それぞれの場合に、独立にH、X2、-CH2X2、-CHX22、-CX23、-C≡N、または-NO2であり;
nは2以上の整数であり;
X1およびX2は、それぞれの出現時に、独立にハロゲンであり;かつ
Nu1はN3-、NH2-、HC2CH2-O-、HO-、RaO-、チミン、-CH2-C(O)OHから選択され、ここでRaはC1-C12アルキルまたはポリマーもしくはコポリマー断片である。
【請求項2】
式(IIIc)の化合物を以下のスキームに従って反応させ、X1を-OHで求核置換する、請求項1記載の方法:


【請求項3】
式(IIIc)の化合物を以下のスキームに従って反応させ、X1をN3-で求核置換する、請求項1記載の方法:


【請求項4】
式(Xa)の化合物を還元して式(XIa)の化合物を生成する段階をさらに含む、請求項3記載の方法:


【請求項5】
式(IIIc)の化合物を以下のスキームに従って反応させ、X1を-NH2で求核置換する、請求項4記載の方法:


【請求項6】
式(IIIc)の化合物を以下のスキームに従って反応させ、X1を-OCH2CCHで求核置換する、請求項1記載の方法:


【請求項7】
式(XIIa)の化合物を以下のスキームに従ってRbN3と反応させ、式(XXIa)の化合物を得る段階をさらに含む、請求項6記載の方法:

式中、Rbは置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたはポリマーもしくはコポリマー断片である。
【請求項8】
Rbが、それぞれハロゲン、-OH、-CN、-NH3によって置換されていてもよい、直鎖もしくは分枝アルキルCnH2n+1(n=1〜100)、またはフェニル、ベンジル、チオフェニル、またはPEGである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式(IIIc)の化合物を以下のスキームに従って反応させ、X1を-ORaで求核置換する、請求項1記載の方法:

式中、RaはC1-C12アルキルまたはポリマーもしくはコポリマー断片である。
【請求項10】
RaがPEG断片である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
Raがメチル、エチルまたはポリエチレンオキシド断片である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
式(IIIc)の化合物を以下のスキームに従って反応させ、X1をチミンで求核置換する、請求項1記載の方法:


【請求項13】
式(IIIc)の化合物を以下のスキームに従って反応させ、X1を-CH2-COOHで求核置換する、請求項1記載の方法:


【請求項14】
式(XVa)の化合物を以下のスキームに従ってアジドと反応させ、式(XVIa)の化合物を生成する段階をさらに含む、請求項13記載の方法:


【請求項15】
式(XVIa)の化合物をアルコールR-OHと反応させ、式(XVIIa)の化合物を生成する段階をさらに含む、請求項14記載の方法:

式中、RはC1-C12アルキルである。
【請求項16】
式(XVIa)の化合物を式R-NH2のアミンと反応させ、式(XVIIIa)の化合物を生成する段階をさらに含む、請求項14記載の方法:


【請求項17】
式(XVIa)の化合物を式R-NH2のアミンと反応させ、式(XIXa)の化合物を生成する段階をさらに含む、請求項14記載の方法:


【請求項18】
式(XVIa)の化合物をペプチドと反応させ、式(XXa)の化合物を生成する段階をさらに含む、請求項14記載の方法:


【請求項19】
ハロゲン化エンドキャップ基を有する式(IIIc)のエンドキャップポリマーを塩基存在下で加水分解し、それにより式(VIa)の化合物を生成する段階

を含む、式(VI)のヒドロキシル官能性ポリマーの合成方法:
式中、
R1は、それぞれの場合に、独立にHまたはC1-C4アルキル、アルコキシまたは置換もしくは無置換アリールであり;
R2は、それぞれの場合に、独立にH、X2、-CH2X2、-CHX22、-CX23、-C≡N、または-NO2であり;
nは2以上の整数であり;かつ
X1およびX2は、それぞれの出現時に、独立にハロゲンである。
【請求項20】
式(IIIc)のポリマーがポリイソブチレンである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
式(IIIc)のポリマーがC4-C7イソモノオレフィンポリマーである、請求項19記載の方法。
【請求項22】
X1がClまたはBrである、請求項19記載の方法。
【請求項23】
エンドキャップ基

がクロロアリル基である、請求項19記載の方法。
【請求項24】
エンドキャップ基

がブロモアリル基である、請求項19記載の方法。
【請求項25】
式(I)

のカチオンリビングポリマーを、エンドキャッピング試薬としての式(II)

の置換されていてもよい共役ジエンと、ルイス酸存在下、溶媒中で反応させ、
それによって、追加の共役ジエン分子の付加よりも速いハロゲン化により溶媒が停止を引き起こし、それによりハロゲン化エンドキャップ基を有する式(IIIc)

のエンドキャップポリマーを生成することにより、式(IIIc)のポリマーを生成する段階をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項26】
カチオン重合可能なモノマーを共開始剤存在下で反応させることにより、式(I)のカチオンリビングポリマーを生成する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
共開始剤が、BCl3、TiCl4、およびハロゲン化有機アルミニウムのうち1つまたは複数である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
ハロゲン化による停止が、追加の共役ジエン分子の付加よりも少なくとも10倍速い、請求項25記載の方法。
【請求項29】
溶媒が、約9未満の誘電率を有する少なくとも1つの成分を含む、請求項25記載の方法。
【請求項30】
溶媒が、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、塩化メチル、塩化n-ブチル、ジクロロメタン、トルエン、およびクロロホルムのうち1つまたは複数から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項31】
X1がClである、請求項19記載の方法。
【請求項32】
加水分解を約80〜約120℃の温度で実施する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
加水分解を約100〜約150℃の温度で実施する、請求項31記載の方法。
【請求項34】
加水分解を12〜36時間の間実施する、請求項31記載の方法。
【請求項35】
加水分解を1〜25重量%の水酸化アルカリ金属の存在下で実施する、請求項31記載の方法。
【請求項36】
X1がClであり、加水分解を約80〜約120℃の温度で、12〜36時間の間、1〜25重量%の水酸化アルカリ金属の存在下で実施する、請求項19記載の方法。
【請求項37】
水酸化アルカリ金属濃度が1〜10重量%であり、加水分解を90〜110℃で20〜28時間実施する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
X1がClであり、加水分解を100〜150℃の温度で、12〜36時間の間、1〜25重量%の水酸化アルカリ金属の存在下で実施する、請求項19記載の方法。
【請求項39】
水酸化アルカリ金属濃度が1〜10重量%であり、加水分解を120〜140℃で20〜28時間実施する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
X1がBrである、請求項19記載の方法。
【請求項41】
加水分解を60〜100℃の温度で実施する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
加水分解を100〜150℃の温度で実施する、請求項40記載の方法。
【請求項43】
加水分解を1〜10時間の間実施する、請求項40記載の方法。
【請求項44】
加水分解を0.5〜60重量%の水酸化アルカリ金属の存在下で実施する、請求項41記載の方法。
【請求項45】
X1がBrであり、加水分解を60〜100℃の温度で、12〜36時間の間、0.5〜60重量%の水酸化アルカリ金属の存在下で実施する、請求項19記載の方法。
【請求項46】
水酸化アルカリ金属濃度が40〜60重量%であり、加水分解を55〜75℃で20〜28時間実施する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
X1がBrであり、加水分解を約100〜約150℃の温度で、12〜36時間の間、0.5〜60重量%の水酸化アルカリ金属の存在下で実施する、請求項19記載の方法。
【請求項48】
水酸化アルカリ金属濃度が0.5〜1.5重量%であり、加水分解を120〜140℃で20〜28時間実施する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
式(XXX)の官能性ポリマー:

式中
nは2以上の整数であり;
kは1以上の整数であり;
Lは開始剤残基であり;
R1は、それぞれの場合に、独立にHまたはC1-C4アルキル、アルコキシまたは置換もしくは無置換アリールであり;かつ
R2は、それぞれの場合に、独立にHまたはX2、CH2X2、CHX22、-CX23、-C≡N、-NO2であり、ここでX2は、それぞれの出現時に、独立にハロゲンであり;
Nu2は、N3-、NH2-、HC2CH2-O-、HO-、RaO-(RaはC1-C12アルキルまたはポリマーもしくはコポリマー断片である)、チミン、-CH2-C(O)OH、-C(O)N3、-NHC(O)OR、-C(O)NHR、-NHC(O)NHR(RはC1-C12アルキルである)、またはペプチド-NH-から選択される。
【請求項50】
式(XXXI)で表される、請求項49記載の化合物:


【請求項51】
式(XXXIIa)で表される、請求項50記載の化合物:


【請求項52】
式(XXXIIIa)で表される、請求項49記載の化合物:


【請求項53】
式(XXXIVa)で表される、請求項49記載の化合物:


【請求項54】
式(XXXVa)で表される、請求項49記載の化合物:

式中、Rbは置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたはポリマーもしくはコポリマー断片である。
【請求項55】
Rbが、それぞれハロゲン、-OH、-CN、または-NH3によって置換されていてもよい、直鎖もしくは分枝アルキルCnH2n+1(n=1〜100)、またはフェニル、ベンジル、チオフェニル;あるいはPEGである、請求項54記載の化合物。
【請求項56】
Rbがポリマーまたはコポリマーである、請求項54記載の化合物。
【請求項57】
式(XXXVIa)で表される、請求項49記載の化合物:

式中、Raはメチル、エチルまたはポリエチレンオキシド断片である。
【請求項58】
RaがPEG断片である、請求項49記載の化合物。
【請求項59】
Raがメチル、エチルまたはポリエチレンオキシド断片である、請求項49記載の化合物。
【請求項60】
式(XXXVIIa)で表される、請求項49記載の化合物:


【請求項61】
式(XXXVIIIa)で表される、請求項49記載の化合物:


【請求項62】
式(XXXIXa)で表される、請求項49記載の化合物:


【請求項63】
式(XLa)で表される、請求項49記載の化合物:

式中、RはC1-C12アルキルである。
【請求項64】
式(XLIa)で表される、請求項49記載の化合物:

式中、RはC1-C12アルキルである。
【請求項65】
式(XLIIa)で表される、請求項49記載の化合物:

式中、RはC1-C12アルキルである。
【請求項66】
式(XLIII)で表される、請求項49記載の化合物:


【請求項67】
式(III)の化合物

を反応させて、X1をNu1で求核置換する段階を含む、式(IIIb)の化合物

の合成方法:
式中、
R1は、それぞれの場合に、独立にHまたはC1-C4アルキル、アルコキシまたは置換もしくは無置換アリールであり;
R2は、それぞれの場合に、独立にH、X2、-CH2X2、-CHX22、-CX23、-C≡N、または-NO2であり;
nは2以上の整数であり;
X1およびX2は、それぞれの出現時に、独立にハロゲンであり;かつ
Nu1は、N3-、NH2-、HC2CH2-O-、HO-、RaO-、チミン、-CH2-C(O)OHから選択され、ここでRaはC1-C12アルキルまたはポリマーもしくはコポリマー断片である。
【請求項68】
ハロゲン化エンドキャップ基を有する式(III)のエンドキャップポリマーを、塩基存在下で加水分解し、それにより式(VI)の化合物を生成する段階

を含む、式(VI)のヒドロキシル官能性ポリマーの合成方法:
式中
R1は、それぞれの場合に、独立にHまたはC1-C4アルキル、アルコキシまたは置換もしくは無置換アリールであり;
R2は、それぞれの場合に、独立にH、X2、-CH2X2、-CHX22、-CX23、-C≡N、または-NO2であり;
nは2以上の整数であり;かつ
X1およびX2は、それぞれの出現時に、独立にハロゲンである。

【公表番号】特表2010−510348(P2010−510348A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537136(P2009−537136)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/012948
【国際公開番号】WO2008/060333
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509138084)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ ロウエル (1)
【Fターム(参考)】