説明

定流量弁

【課題】流体の流れによって弁体にかかる抗力を利用することにより、流体の圧力変化の影響を受けにくく、かつ大流量にも適応可能な定流量弁を提供すること。
【解決手段】流体流路14に配設した弁体11に対して減圧前の流体の静圧がかかる弁体11の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積及び減圧後の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積がそれぞれ等しくなるようにすることで、弁体11の移動方向の面に流体の静圧が均等にかかるようにすることによって流体の静圧による差圧が作用しないように構成するとともに、流体の流れによって弁体11にかかる抗力を、この抗力と釣り合う方向に弁体11を付勢するばね13の付勢力とバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定流量弁に関し、特に、流体の流れによって弁体にかかる抗力を利用するようにした定流量弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流量を一定に保持するようにするために各種の定流量弁が提案されている。
ところで、従来の定流量弁には、動作原理に、固定オリフィスの差圧を利用するもの(特許文献1参照)、可変オリフィスの差圧とばねの釣り合いを利用するもの(特許文献2参照)、弾性体の変形を利用するもの(特許文献3及び4参照)等があった。
しかしながら、上記従来の定流量弁は、流体の圧力変化によって流体の流量が変動したり、大流量には適応できない等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−71432号公報
【特許文献2】特開平3−117788号公報
【特許文献3】特開平8−4943号公報
【特許文献4】特開平11−336922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の定流量弁の有する問題点に鑑み、流体の流れによって弁体にかかる抗力を利用することにより、流体の圧力変化の影響を受けにくく、かつ大流量にも適応可能な定流量弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本第1発明の定流量弁は、流体流路に配設した弁体に対して減圧前の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積及び減圧後の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積がそれぞれ等しくなるようにすることで、弁体の移動方向の面に流体の静圧が均等にかかるようにすることによって流体の静圧による差圧が作用しないように構成するとともに、流体の流れによって弁体にかかる抗力を、該抗力と釣り合う方向に弁体を付勢する弾性体の付勢力とバランスさせることにより、弁体の移動方向に沿って形成した流路開口部の断面積を変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたことを特徴とする。
【0006】
ここで、弾性体には、ばねのほか、ゴム状の弾性体等を用いることができる。
【0007】
また、同じ目的を達成するため、本第2発明の定流量弁は、流体流路に配設した弁体に対して減圧前の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積及び減圧後の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積をそれぞれ等しくなるようにすることで、弁体の移動方向の面に流体の静圧が均等にかかるようにすることによって流体の静圧による差圧が作用しないように構成するとともに、流体の流れによって弁体にかかる抗力を、該抗力と釣り合う方向に弁体を付勢する磁石の付勢力とにより動作、バランスさせることにより、弁体の移動方向に沿って形成した流路開口部の断面積を変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するよ
うにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本第1及び第2発明の定流量弁によれば、流体流路に配設した弁体を、流体の流れによって弁体にかかる抗力により動作、バランスさせることにより、弁体の移動方向に沿って形成した流路開口部の断面積を変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにすることにより、流体の圧力変化の影響を受けにくく、また、オリフィスや弾性体の変形を利用するものでないため大流量にも適応可能である。
【0009】
そして、弁体にかかる抗力を、抗力と釣り合う方向に弁体を付勢する弾性体や磁石の付勢力とバランスさせるようにすることにより、抗力と釣り合う方向に弁体の付勢する付勢手段を簡易に構成することができ、特に、付勢手段として磁石を用いた場合には、疲労による弾性体として用いるばねの破損の問題をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の定流量弁の第1実施例を示す構造説明図である。
【図2】本発明の定流量弁の第2実施例を示す構造説明図である。
【図3】本発明の定流量弁の第3実施例を示す構造説明図である。
【図4】本発明の定流量弁の第4実施例を示す構造説明図である。
【図5】本発明の定流量弁の第5実施例を示す構造説明図である。
【図6】本発明の定流量弁の第6実施例を示す構造説明図である。
【図7】本発明の定流量弁の第7実施例を示す構造説明図である。
【図8】本発明の定流量弁の第8実施例を示す構造説明図である。
【図9】本発明の定流量弁の第9実施例を示す構造説明図である。
【図10】本発明の定流量弁の第10実施例を示す構造説明図である。
【図11】本発明の定流量弁の第11実施例を示す構造説明図である。
【図12】本発明の定流量弁の第12実施例を示す構造説明図である。
【図13】本発明の定流量弁の第13実施例を示す構造説明図である。
【図14】本発明の定流量弁の第14実施例を示す構造説明図である。
【図15】本発明の定流量弁の第15実施例を示す構造説明図である。
【図16】本発明の定流量弁の第16実施例を示す構造説明図である。
【図17】本発明の定流量弁を適用した不活性ガス消火設備の一実施例を示す説明図である。
【図18】定流量弁の配設位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の定流量弁の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に、本発明の定流量弁の第1実施例を示す。
流体流路14に配設した弁体11を、流体の流れによって弁体11にかかる抗力Dにより動作、バランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
ここで、弁体11にかかる抗力Dは、次の式(1)により求めることができる。
D=(ρ/2)UFC
ρ:流体の密度
U:流体の速度
F:流体の流れに対して垂直な平面への弁体11の投影面積
:抗力係数(弁体11の形状、姿勢、表面の滑粗及びレイノルズ数Reによっ
て決まる無次元数)
そして、本実施例においては、弁体11にかかる抗力を、抗力Dと釣り合う方向に弁体11を付勢する弾性体としてのばね13(以下の実施例も同様)の付勢力とバランスさせるようにしている。
【0013】
より具体的には、この定流量弁1は、流体流路14に配設したカップ状の弁体11を、弁体11の一端側(外面側)11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側(内面側)11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11及び弁体支持体11eにかけて形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
【0014】
この定流量弁1は、流体流路14を流れる流体の速度(流量)が増加しようとすると、弁体11が流路開口部12の断面積を減少する方向に移動して平衡し、流体の速度(流量)が増加するのを抑え、一方、流体流路14を流れる流体の速度(流量)が減少しようとすると、弁体11が流路開口部12の断面積を増加する方向に移動して平衡し、流体の速度(流量)が減少するのを抑えることにより、流体の流量が略一定に保持される。
【実施例2】
【0015】
図2に、本発明の定流量弁の第2実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したカップ状の弁体11を、弁体11の一端側(外面側)11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側(内面側)11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11及び弁体支持体11eにかけて形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例3】
【0016】
図3に、本発明の定流量弁の第3実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したカップ状の弁体11を、弁体11の一端側(外面側)11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側(内面側)11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11及び弁体支持体11eにかけて形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例4】
【0017】
図4に、本発明の定流量弁の第4実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したカップ状の弁体11を、弁体11の一端側(外面側)11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側(内面側)11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流
体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11に形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体流路14を兼ねた流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例5】
【0018】
図5に、本発明の定流量弁の第5実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したカップ状の弁体11を、弁体11の一端側(外面側)11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側(内面側)11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11及び弁体支持体11eにかけて形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体流路14を兼ねた流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例6】
【0019】
図6に、本発明の定流量弁の第6実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したカップ状の弁体11を、弁体11の一端側(内面側)11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側(外面側)11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体支持体11eに形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例7】
【0020】
図7に、本発明の定流量弁の第7実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したカップ状の弁体11を、弁体11の一端側(外面側)11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側(内面側)11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11及び弁体支持体11eにかけて形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例8】
【0021】
図8に、本発明の定流量弁の第8実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したカップ状の弁体11を、弁体11の一端側(外面側)11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側(内面側)11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11及び弁体支持体11eにかけて形成したばね収容
室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例9】
【0022】
図9に、本発明の定流量弁の第9実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したリング状の弁体11を、弁体11の一端側11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体支持体11eに形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体流路14を兼ねた流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例10】
【0023】
図10に、本発明の定流量弁の第10実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設した鍔付円筒状の弁体11を、弁体11の鍔部11fの一端側11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の鍔部11fの他端側11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11の鍔部11f及び弁体支持体11e間に形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例11】
【0024】
図11に、本発明の定流量弁の第11実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設した弁体11を、弁体11の一端側11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11の他端側11bに形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例12】
【0025】
図12に、本発明の定流量弁の第12実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設した鍔付円筒体11gを備えた弁体11を、弁体11の鍔付円筒体11gの一端側11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の鍔付円筒体11gの鍔部11hにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、弁体11には流体通路11dを形成するとともに、ばね13を配設した弁体11の鍔付円筒体11gの鍔部11h及び弁体支持体11e間に形成したばね収容室11iは、本体ケーシング10に形成した通路15により大気と連通することにより、弁体11
に差圧が作用しないようにしている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例13】
【0026】
図13に、本発明の定流量弁の第13実施例を示す。
この定流量弁1は、流体流路14に配設した弁体11を、弁体11の一端側11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側11bにかかるばね13の付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、ばね13を配設した弁体11の他端側11bに形成したばね収容室11cと流体流路14とを、弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
ここで、ばね13は、調整部材16により、その付勢力の大きさを任意に調節することができるようにされており、これにより、流体の流量を増減、すなわち、付勢力の大きさを大きくすることにより、流体の流量を増加させ、一方、付勢力の大きさを小さくすることにより、流体の流量を減少させることができるようにしている。
また、弁体11は、ばね11jにより、所定の範囲に位置するように保持されている。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例14】
【0027】
図14に、本発明の定流量弁の第14実施例を示す。
本実施例は、弁体11にかかる抗力と釣り合う方向に弁体11を付勢する付勢手段として、上記各実施例のばね13に代えて、磁石16aを用いたもので、これにより、疲労によるばねの破損の問題をなくすことができるようにしたものである。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したリング状の弁体11を、弁体11の一端側11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側11bにかかる磁石16aの付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、磁石16aを配設した弁体支持体11eに形成した中間室11kと流体流路14とを、弁体11に形成した流体流路14を兼ねた流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
ここで、弁体11を付勢する付勢手段としての磁石16aは、弁体11の他端側11bと弁体支持体11eとに、同じ極同士、例えば、N極同士が対向するように配設するようにする。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例の定流量弁と同様である。
【実施例15】
【0028】
図15に、本発明の定流量弁の第15実施例を示す。
本実施例は、上記第14実施例と同様、弁体11にかかる抗力と釣り合う方向に弁体11を付勢する付勢手段として、磁石16bを用いたものである。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したリング状の弁体11を、弁体11の一端側11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の同じ一端側11aにかかる磁石16bの付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、弁体支持体11eに形成した中間室11kと流体流路14とを、弁体11に形成した流体流路14を兼ねた流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
ここで、弁体11を付勢する付勢手段としての磁石16bは、弁体11の一端側11aとその上流側の本体ケーシング10とに、異なる極、例えば、S極とN極が対向(本実施例においては、磁性体16cを介して対向)するように配設するようにする。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例及び第14実施例の定流量弁と同様である。
【実施例16】
【0029】
図16に、本発明の定流量弁の第16実施例を示す。
本実施例は、上記第14実施例及び第15実施例と同様、弁体11にかかる抗力と釣り合う方向に弁体11を付勢する付勢手段として、磁石16a、16bを用いたものである。
この定流量弁1は、流体流路14に配設したリング状の弁体11を、弁体11の一端側11aに流体の流れによってかかる抗力と、弁体11の他端側11bにかかる磁石16a及び弁体11の同じ一端側11aにかかる磁石16bの付勢力とをバランスさせることにより、弁体11の移動方向に沿って形成した流路開口部12の断面積を実質的に変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたものである。
そして、弁体支持体11eに形成した中間室11kと流体流路14とを、弁体11に形成した流体流路14を兼ねた流体通路11dにより連通することにより、弁体11に差圧が作用しないようにしている。
ここで、弁体11を付勢する付勢手段としての磁石16aは、弁体11の他端側11bと弁体支持体11eとに、同じ極同士、例えば、N極同士が対向するように配設し、一方、磁石16bは、弁体11の一端側11aとその上流側の本体ケーシング10とに、異なる極、例えば、S極とN極が対向(本実施例においては、磁性体16cを介して対向)するように配設するようにする。
なお、本実施例の動作は、上記第1実施例並びに第14実施例及び第15実施例の定流量弁と同様である。
【実施例17】
【0030】
図17に、本発明の定流量弁を適用した不活性ガス消火設備の一実施例を示す。
この不活性ガス消火設備は、複数、例えば、2つの消火区画6−1、6−2を有し、不活性ガス消火剤として、例えば、窒素ガスを使用し、これを加圧して高圧ガス容器に充填した状態(35℃において、18MPa)で消火設備内に保管することにより、消火剤貯蔵容器B1として利用する。この実施例の不活性ガス消火設備には、3本の消火剤貯蔵容器B1を備え、各消火剤貯蔵容器B1には、容器弁2を介して連結管3を接続し、さらに連結管3を1本の集合管4に接続し、この集合管4を各消火区画6−1、6−2まで延設した主配管5−1、5−2に接続する。主配管5−1、5−2には、選択弁9−1、9−2を配設し、消火区画6−1、6−2に選択的に不活性ガス消火剤を送るようにする。消火区画6−1、6−2まで延設した主配管5−1、5−2を、消火区画6−1、6−2内にそれぞれ配設した枝管7−1、7−2に接続し、この枝管7−1、7−2を消火区画6−1、6−2内の適所に複数個配設した消火剤噴射ヘッド8−1、8−2に接続する。
【0031】
ところで、通常、各消火区画6−1、6−2は、その容積が異なるため、当然、消火するのに必要となる不活性ガス消火剤の量も異なる。このため、主配管5−1、5−2の口径を各消火区画6−1、6−2の容積に応じて異ならせるほか、火災の際、消火対象となる消火区画6−1、6−2に対応した本数の消火剤貯蔵容器B1が開放されるように不活性ガス消火設備を構成する。
なお、図中、10−1、10−2は選択弁開放装置、11−1、11−2は起動用ガス容器、12−1、12−2は起動用ガス容器開放用のソレノイド、13−1、13−2は、選択弁9−1、9−2及び後述の定圧ガス源としての定圧ガス容器B2の開放をコントロールする起動用ガス管路で、選択弁開放装置10−1、10−2に接続され、その途中の適所に不還弁14−1、14−2を配設する。なお、これらの部材の末尾の数字1、2
は、消火区画の末尾の数字1、2にそれぞれ対応している。
【0032】
この場合において、容器弁2には、容器弁2の放出側の不活性ガス消火剤のガス圧Pを定圧ガス源のガス圧P1によって規定される基準ガス圧P0以下に規制する制圧弁を用いることが望ましい。
制圧弁には、消火剤貯蔵容器B1内の不活性ガス消火剤の圧力P2が、基準ガス圧P0以下に低下するまでは、制圧弁の放出側の不活性ガス消火剤のガス圧Pを基準ガス圧P0に保持する機能を有しているため、不活性ガス消火剤の放出により消火剤貯蔵容器内の不活性ガス消火剤の圧力P2が低下した場合でも、制圧弁の放出側の不活性ガス消火剤のガス圧Pが基準ガス圧P0に維持されることにより、不活性ガス消火剤の放出量を一定に保つことができる。
一方、制圧弁は、上記利点を有するものの、不活性ガス消火剤の放出量が設定放出時間内で大きく変動、具体的には、不活性ガス消火剤の放出開始時から不活性ガス消火剤の設定放出時間(例えば、1分間)の1/2が経過しない間に、消火剤貯蔵容器B1内の不活性ガス消火剤の圧力P2の低下に伴って不活性ガス消火剤の放出量が低下してしまい、不活性ガス消火設備の消火剤流通経路の容量を十分生かし切れていないという問題点や不活性ガス消火剤の放出開始時から短時間に大量の不活性ガス消火剤が放出されることとなるため、消火区画6−1、6−2内の内圧の上昇を防止するために設けられる避圧ダンパー16の容量(開口面積)を大きくする必要があるという問題点がある。
【0033】
そこで、本実施例においては、消火剤貯蔵容器B1から消火剤噴射ヘッド8に至る消火剤流通経路の適宜位置、本実施例においては、選択弁9−1、9−2の上流側の集合管4に上記定流量弁1を配設して不活性ガス消火剤の流量を制御することにより、不活性ガス消火剤の放出開始時から、不活性ガス消火剤の設定放出時間の少なくとも1/2、より好ましくは2/3が経過するまでの間、不活性ガス消火剤の放出量が略一定に保持されるようにしている。
【0034】
この場合、消火剤貯蔵容器B1内に貯蔵されている不活性ガス消火剤を有効に利用することができるように、不活性ガス消火剤の設定放出時間内に、消火剤貯蔵容器B1内に貯蔵されている不活性ガス消火剤の90%以上を放出するようにすることが望ましい。
【0035】
定流量弁1には、定流量弁1の導入側の不活性ガス消火剤のガス圧Pinの変動(低下)にかかわらず不活性ガス消火剤の放出量が略一定に保持する機能を有するものであれば、特にその構造は限定されるものではないが、図1〜図16に記載するような各種の定流量弁を用いることができる。
【0036】
なお、定流量弁1を配設する位置は、上記選択弁9−1、9−2の上流側の集合管4のほか、図18(a)に示すように、消火剤噴射ヘッド8と一体に配設したり、図18(b)に示すように、消火剤噴射ヘッド8の上流側の枝管7に配設したり、図18(c)に示すように、選択弁9の下流側の主配管5に配設したり、図18(d)に示すように、容器弁2の下流側の連結管3に配設したり、図18(e)に示すように、容器弁2と一体に配設する等、消火剤貯蔵容器B1から消火剤噴射ヘッド8−1、8−2に至る消火剤流通経路の任意の位置とすることができる。
【0037】
この不活性ガス消火設備は、消火剤貯蔵容器B1から消火剤噴射ヘッド8に至る消火剤流通経路の適宜位置に定流量弁1を配設して不活性ガス消火剤の流量を制御することにより、不活性ガス消火剤の放出開始時から、不活性ガス消火剤の設定放出時間の少なくとも1/2、さらに好ましくは、2/3が経過するまでの間、不活性ガス消火剤の放出量が略一定(ここで、「略一定」とは、±20%程度の変動を含むものとする。)に保持されるようにしたので、不活性ガス消火剤の放出開始時から不活性ガス消火剤の設定放出時間の
1/2、さらに好ましくは、2/3が経過しない間に、消火剤貯蔵容器B1内の不活性ガス消火剤の圧力P2の低下に伴って不活性ガス消火剤の放出量が低下することがなく、不活性ガス消火設備の消火剤流通経路の容量を十分生かすことができるとともに、不活性ガス消火剤の放出開始時から短時間に大量の不活性ガス消火剤が放出されないため、消火区画6−1、6−2内の内圧の上昇を防止するために設けられる避圧ダンパー16の容量(開口面積)を大きくする必要がない。
【0038】
また、本実施例においては、容器弁2に容器弁2の放出側の不活性ガス消火剤のガス圧Pを定圧ガス源のガス圧P1によって規定される基準ガス圧P0以下に規制する制圧弁を用いるとともに、消火剤貯蔵容器B1から消火剤噴射ヘッド8に至る消火剤流通経路の適宜位置に不活性ガス消火剤の流量を制御する上記定流量弁1を配設することにより、制圧弁(容器弁2)及び定流量弁1の下流側の不活性ガス消火剤のガス圧を順次減圧し、制圧弁(容器弁2)及び定流量弁1より下流側の二次側機器が必要とする耐圧を軽減するようにしているので、消火設備の二次側機器の耐圧グレードを上げる必要をなくし、設備費を低廉にすることができる。なお、制圧弁(容器弁2)及び定流量弁1による減圧の程度は、新設の消火設備の場合には、消火設備の二次側機器の耐圧グレードを含め総合的に設計するようにし、一方、既設の消火設備の場合には、既設の消火設備の二次側機器の耐圧グレードに合わせて設計するようにする。
なお、本実施例においては、制圧弁(容器弁2)を併用した例について説明したが、定流量弁1単独でも同様の効果を得ることができる。
【0039】
以上、本発明の定流量弁について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、例えば、弾性体には、ばねのほか、ゴム状の弾性体等を用いることができる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものであり、また、対象とする流体も、ガス、液体のいずれにも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の定流量弁は、流体の流れによって弁体にかかる抗力を利用することにより、流体の圧力変化の影響を受けにくく、かつ大流量にも適応可能であるという特性を有していることから、不活性ガス消火設備の定流量弁の用途に好適に用いることができるほか、ガス及び液体のいずれをも対象として各種用途の定流量弁に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 定流量弁
10 本体ケーシング
11 弁体
11c ばね収容室
11d 流体通路
11k 中間室
12 流路開口部
13 ばね(弾性体)
14 流体流路
15 通路
16a 磁石
16b 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路に配設した弁体に対して減圧前の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積及び減圧後の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積がそれぞれ等しくなるようにすることで、弁体の移動方向の面に流体の静圧が均等にかかるようにすることによって流体の静圧による差圧が作用しないように構成するとともに、流体の流れによって弁体にかかる抗力を、該抗力と釣り合う方向に弁体を付勢する弾性体の付勢力とバランスさせることにより、弁体の移動方向に沿って形成した流路開口部の断面積を変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたことを特徴とする定流量弁。
【請求項2】
流体流路に配設した弁体に対して減圧前の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積及び減圧後の流体の静圧がかかる弁体の上流側の面の受圧面積と下流側の面の受圧面積をそれぞれ等しくなるようにすることで、弁体の移動方向の面に流体の静圧が均等にかかるようにすることによって流体の静圧による差圧が作用しないように構成するとともに、流体の流れによって弁体にかかる抗力を、該抗力と釣り合う方向に弁体を付勢する磁石の付勢力とにより動作、バランスさせることにより、弁体の移動方向に沿って形成した流路開口部の断面積を変化させ、流体の圧力変化にかかわらず流体の流量を略一定に保持するようにしたことを特徴とする定流量弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−233592(P2012−233592A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173966(P2012−173966)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2009−297884(P2009−297884)の分割
【原出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000168676)株式会社コーアツ (14)
【Fターム(参考)】