説明

定着器及びこれを備えた画像形成装置

【課題】幅狭の記録紙の連続通紙による紙幅外領域の過昇温を抑制して定着不良を避けることができるようにする。
【解決手段】記録紙上のトナーを熱定着させる加熱ベルト21を加熱するために、熱放射指向性を有する発熱体を備えたカーボンランプヒータ25を設け、このカーボンランプヒータからの放射熱の加熱ベルトに対する照射方向を変化させるために、カーボンランプヒータの角度を調整する角度調整機構32を設けると共に、カーボンランプヒータからの放射熱を反射して加熱ベルトに照射させる反射板38を設け、カーボンランプヒータからの放射熱を直接加熱ベルトに照射させる第1の角度で、加熱ベルト上の全加熱領域を加熱し、反射板を介して加熱ベルトに照射させる第2の角度で、幅狭の記録紙が通過する紙幅領域のみを加熱するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式などによるプリンタ、ファクシミリ装置、複写機、及び複合機などの画像形成装置に用いられる定着器及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにより記録紙に画像を形成する画像形成装置(プリンタ、ファクシミリ、複写機及び複合機など)等においては、感光体から記録紙上に転写された未定着のトナーを熱と圧力により記録紙に定着させる定着器が設けられている。
【0003】
この種の定着器では、加熱体(ローラやベルト)を加熱する発熱体にタングステンを用いたハロゲンランプヒータが広く採用されてきたが、近年、炭素系発熱材料により形成された発熱体を用いたカーボンランプヒータの採用が提案されている。このカーボンランプヒータは、温度変化に伴う抵抗値の変動が小さいため、電源投入時の電流が定格動作時に比して小さくなり、いわゆる電源投入時の突入電流が抑制されるので、電流制御回路の構成を簡素化することができるなどの利点を有している。
【0004】
ところで、画像形成装置の定着器では、加熱体の端部からの放熱により中央部に比して端部の温度が低くなる問題があり、この問題は、カーボンランプヒータを用いた定着器においても同様であり、このような端部からの放熱により軸方向の温度分布が不均一になることを避けるため、従来、炭素系発熱体を、幅寸法や断面積が端部と中央部とで異なるように形成して、端部の発熱量を中央部の発熱量に比して増大させるようにした技術が知られている(特許文献1・2参照)。
【特許文献1】特開2002−31975号公報
【特許文献2】特開2003−215965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、画像形成装置では各種の寸法の記録紙が用いられるが、最大通紙幅より小さいサイズの記録紙が連続通紙されると、加熱体において、その記録紙が通過する紙幅領域の外側の紙幅外領域では記録紙との接触により熱が奪われないため、紙幅領域との間の温度差が徐々に拡大し、紙幅領域が温度制御により所定の定着温度に保持されるのに対して、紙幅外領域は定着温度を超えて上昇する過昇温が発生するので、熱ダメージを受けてしまう。また、この紙幅外領域に過昇温が発生した後に、最大通紙幅の記録紙が通紙されると、加熱体の紙幅外領域の過昇温部分にトナーが焼きついてしまい、ホットオフセットなどの定着不良を招くことから、これらを避けることが望ましい。
【0006】
ところが、前記の従来技術では、定着処理すべき記録紙の幅に応じて加熱領域を調整することができないため、紙幅外領域の過昇温の問題に対応することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、幅狭の記録紙の連続通紙による紙幅外領域の過昇温を抑制して定着不良を避けることができるように構成された定着器及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の定着器及びこれを備えた画像形成装置は、記録紙上のトナーを熱定着させる加熱体と、この加熱体を加熱する熱放射指向性を有する発熱体と、この発熱体からの放射熱の前記加熱体に対する照射方向を変化させる機械的な駆動手段とを有し、定着処理すべき記録紙が幅狭のものである場合に、その記録紙が通過する紙幅領域に、前記発熱体による前記加熱体上の加熱領域が制限されるように前記駆動手段を制御するようにした構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加熱体上の加熱領域を定着処理すべき幅狭の記録紙が通過する紙幅領域に制限するため、幅狭の記録紙の連続通紙による紙幅外領域の過昇温を抑制して定着不良を避けることができる。また、発熱体からの放射熱の加熱体に対する照射方向を変化させて加熱領域を調整するため、単一の発熱体で構成することができ、発熱体の発熱量を電気的に制御する発熱体制御装置の構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、記録紙上のトナーを熱定着させる加熱体と、この加熱体を加熱する熱放射指向性を有する発熱体と、この発熱体からの放射熱の前記加熱体に対する照射方向を変化させる機械的な駆動手段とを有し、定着処理すべき記録紙が幅狭のものである場合に、その記録紙が通過する紙幅領域に、前記発熱体による前記加熱体上の加熱領域が制限されるように前記駆動手段を制御するようにした構成とする。
【0011】
これによると、加熱体上の加熱領域を定着処理すべき幅狭の記録紙が通過する紙幅領域に制限するため、幅狭の記録紙の連続通紙による紙幅外領域の過昇温を抑制して定着不良を避けることができる。また、発熱体からの放射熱の加熱体に対する照射方向を変化させて加熱領域を調整するため、単一の発熱体で構成することができ、発熱体の発熱量を電気的に制御する発熱体制御装置の構成を簡素化することができる。
【0012】
前記課題を解決するためになされた第2の発明は、前記第1の発明において、前記発熱体は、炭素系発熱材料によるフィルム状をなし、平面状の熱放射面を備えた構成とする。
【0013】
これによると、良好な熱放射指向性を有するため、加熱体の温度状態をより一層適切に制御することができる。
【0014】
この場合、発熱体は、ポリオキサジアゾールなどからなる高分子フィルムを不活性ガス雰囲気中で熱処理してグラファイト化し、さらに必要に応じて圧延処理したものが好適である。
【0015】
前記課題を解決するためになされた第3の発明は、前記第1・第2の発明において、前記発熱体からの放射熱を反射して前記加熱体に照射させる反射板を有し、前記発熱体が、その発熱体からの放射熱を直接前記加熱体に照射させる第1の角度と、前記発熱体からの放射熱を前記反射板を介して前記加熱体に照射させる第2の角度とに回動可能に設けられ、前記発熱体の第1・第2の角度による加熱領域が互いに異なるように前記反射板が形成された構成とする。
【0016】
これによると、発熱体からの放射熱を反射板で反射させることで加熱領域を変化させるため、加熱体上の加熱領域を効率良く調整することができる。
【0017】
前記課題を解決するためになされた第4の発明は、前記第3の発明において、前記反射板は、前記発熱体からの放射熱を偏向して前記加熱体に照射する傾斜部を備え、前記発熱体の第1の角度で前記加熱体上の全加熱領域を加熱し、前記発熱体の第2の角度で前記加熱体上の紙幅領域を加熱するようにした構成とする。
【0018】
これによると、簡単な構成で加熱領域幅を調整することができる。
【0019】
前記課題を解決するためになされた第5の発明は、前記第4の発明において、前記発熱体は、前記加熱体上の紙幅領域に対応する第1の発熱部と、前記加熱体の全加熱領域に対応する第2の発熱部とを備え、この第1・第2の発熱部が回動方向に角度をずらして設けられ、前記発熱体の第1の角度で前記第1・第2の発熱部を前記加熱体に対向させて前記加熱体上の全加熱領域を加熱し、前記発熱体の第2の角度で前記第1の発熱部を前記加熱体に対向させると共に前記第2の発熱部を前記反射板に対向させて前記加熱体上の紙幅領域を加熱するようにした構成とする。
【0020】
これによると、反射板を利用して加熱領域を調整する第2の角度でも、第1の発熱部からの放射熱が直接に加熱体の紙幅領域に照射されるため、加熱体上の紙幅領域を効率良く加熱することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明が適用される画像形成装置を示す概略構成図である。図2は、図1に示した定着器を詳しく示す断面図である。図3は、図2に示した定着器の下面図である。
【0023】
この画像形成装置は、帯電、露光、現像、転写及び定着の各プロセスを経て記録紙に画像を形成する画像形成部1を備え、この画像形成部1には、紙収容部2に収容された記録紙Sが逐次送り込まれ、ここで所要の画像が形成された記録紙Sが排紙部3に排出される。
【0024】
画像形成部1は、イエロー、マゼンタ、シアン、及び黒の各色ごとのトナー像を形成する複数のプロセスユニット5〜8と、この各プロセスユニット5〜8内の各感光体ドラム5a〜8aの作像面に対して露光用の光束を走査するレーザ・スキャニング・ユニット(以下LSUという)9と、各プロセスユニット5〜8内の各感光体ドラム5a〜8a上に作像された各色ごとのトナー像が順次転写されて合成される中間転写ベルト10とを有し、各色ごとの感光体ドラム5a〜8aが中間転写ベルト10に沿って並んで配置されたタンデム型の構造となっている。
【0025】
各プロセスユニット5〜8内では、各帯電器5b〜8bにより均一に帯電させた各感光体ドラム5a〜8aの作像面に対してLSU9から露光用のレーザ光が走査されることで静電潜像が形成され、この各感光体ドラム5a〜8aの静電潜像が、各現像器5c〜8cから供給される各色のトナーで現像されて各色ごとの単色トナー像が各感光体ドラム5a〜5aの作像面に形成される。現像器5c〜8cにはトナーボトル16〜19から各色のトナーが補給される。
【0026】
中間転写ベルト10の内側には、中間転写ベルト10を加圧して各感光体ドラム5a〜8a上のトナー像を中間転写ベルト10に転写する各色ごとの1次転写ローラ11〜14が設けられており、中間転写ベルト10上で各色ごとのトナー像が合成されてカラー画像が得られる。中間転写ベルト10の端部側方には、中間転写ベルト10上のトナー像を記録紙Sに転写する2次転写ローラ15が配設されている。
【0027】
この2次転写ローラ15によりトナー像が転写された記録紙Sは、定着器20に搬送されて熱及び圧力の作用により記録紙S上のトナー像を記録紙Sに定着させる処理が行われる。
【0028】
定着器20は、図2に示すように、記録紙S上のトナー像を熱定着させる加熱ベルト(加熱体)21と、この加熱ベルト21が巻き掛けられる定着ローラ22及びテンションローラ23と、定着ローラ22に対する加熱ベルト21の巻き掛け部分に対向配置されて記録紙Sを加圧する加圧ローラ24と、定着ローラ22及びテンションローラ23の間の加熱ベルト21の部分に対向配置されて加熱ベルト21を加熱するカーボンランプヒータ25とを有しており、定着ローラ22に対する加熱ベルト21の巻き掛け部分と加圧ローラ24とによるニップ部に記録紙Sが送り込まれる。
【0029】
テンションローラ23及び加圧ローラ24は、フレーム材27に回転自在に軸支されている。定着ローラ22は、フレーム材27に固定された支軸28により揺動自在に支持された加圧アーム29に回転自在に軸支されており、この加圧アーム29は、遊端部に係止された加圧ばね30により横向きに付勢されている。これにより定着ローラ22が加熱ベルト21を介して加圧ローラ24に圧接し、また加熱ベルト21に所要の張力が付与される。
【0030】
加圧ローラ24は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動され、これに連動して加熱ベルト21が矢印方向に走行動作し、同時に定着ローラ22及びテンションローラ23が矢印方向に回転動作する。
【0031】
この画像形成装置では各種の寸法の記録紙が用いられ、図3に示すように、例えば記録紙の最大通紙幅をA3サイズの短辺の寸法とし、これより小寸な幅の記録紙、例えばA4サイズの記録紙は幅方向の中央部を通過する。カーボンランプヒータ25は、加熱ベルト21の幅方向に平行に配置され、加熱ベルト21の全長に渡って延在し、最大通紙幅に対応する最大加熱幅(全加熱領域)内で加熱ベルト21を加熱する。
【0032】
ここで、最大通紙幅より小さいサイズの記録紙が連続通紙されると、その記録紙が通過する紙幅領域の外側の紙幅外領域では記録紙との接触により熱が奪われないため、紙幅領域との間の温度差が徐々に拡大し、紙幅領域が温度制御により所定の定着温度に保持されるのに対して、紙幅外領域は定着温度を超えて上昇する過昇温が発生する。このような紙幅外領域の過昇温の問題を解決するため、以下に示すようにカーボンランプヒータ25を構成して加熱ベルト21の加熱を制御する。
【0033】
カーボンランプヒータ25は、中心線周りに回動可能に設けられ、図2に示したように、角度調整機構(駆動手段)32により角度(例えば45度の範囲)が調整されるようになっている。この角度調整機構32は、カーボンランプヒータ25の端部に同軸的に連結されたピニオン33と、このピニオン33が歯合するラック34と、このラック34を1方向に付勢するばね35と、このばね35の付勢力に抗してラック34を逆方向に駆動するソレノイド36とを有しており、ソレノイド36のオンオフによりカーボンランプヒータ25が第1・第2の2つの角度に調整される。
【0034】
カーボンランプヒータ25の近傍には、カーボンランプヒータ25からの放射熱を反射して加熱ベルト21に照射させる反射板38が設けられている。この反射板38は、図3に示したように、カーボンランプヒータ25の長手方向に対して平行に配置された平行部38aと、カーボンランプヒータ25の長手方向に対して傾斜して配置されかつ所定の曲面(例えば凸状曲面)を有する傾斜部38b・38cとを有しており、傾斜部38b・38cは、平行部38aの両側に設けられ、カーボンランプヒータ25からの放射熱を長手方向の中心側に偏向して加熱ベルト21に照射する。
【0035】
図4は、図1に示した画像形成装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。全体制御部41は、画像形成部1に送り込まれる記録紙の幅を判別する紙幅判別部42を有しており、紙幅に関する信号がカーボンランプヒータ制御部(制御手段)43に出力される。
【0036】
カーボンランプヒータ制御部43は、主制御部44、発熱量制御部45、及び角度制御部46を有している。主制御部44では、加熱ベルト21の幅方向の中心部及び端部の温度をそれぞれ検出する温度センサ47・48からの温度信号が入力され、この加熱ベルト21の実測温度に基づいて、所定の目標温度の達成に要する発熱量(通電時間)に関する信号が発熱量制御部45に出力される。発熱量制御部45では、位相制御によりカーボンランプヒータ25に対する印加電力が制御される。
【0037】
またカーボンランプヒータ制御部43の主制御部44では、全体制御部41から紙幅に関する信号が入力され、紙幅、及び温度センサ47・48により検出された加熱ベルト21の温度に基づいて、カーボンランプヒータ25の目標角度に関する信号が角度制御部46に出力される。角度制御部46では、目標角度に基づいてソレノイド36に対する通電がオンオフされる。
【0038】
図5は、図2に示したカーボンランプヒータを軸線に沿って切断して示す断面図である。図6は、図5に示した発熱体の模式的な斜視図である。図7は、図5に示したカーボンランプヒータを軸線に直交する平面で切断して示す断面図であり、(A)に図5のA−A線で切断した断面を、(B)に図5のB−B線で切断した断面をそれぞれ示す
【0039】
カーボンランプヒータ25は、図5に示すように、細長い板状の発熱体51と、この発熱体51を収容する円管状のケーシング52と、発熱体51の端部を保持する保持ブロック53と、発熱体51を緊張させるテンションばね54とを有している。テンションばね54には接続部材55を介してリード線56が接続されており、導電性のテンションばね54及び保持ブロック53を介して発熱体51に電力が供給される。
【0040】
発熱体51は、炭素系発熱材料によるフィルム状をなすものであり、ポリオキサジアゾールなどからなる高分子フィルムを不活性ガス雰囲気中で熱処理してグラファイト化し、さらに必要に応じて圧延処理したものが好適である。これによると、フィルム状に薄く形成することができ、表裏の平面状の熱放射面から主に厚さ方向に熱が放射され、厚さ方向に直交する向きには殆ど熱が放射されないため、優れた熱放射指向性を有している。特にここではテープ状の炭素系発熱材を軸方向からみてL字形状に折り曲げて製作される。
【0041】
ケーシング52は、石英ガラスなどの熱線透過性材料で形成されている。ケーシング52内には発熱体51の酸化を防止するためにアルゴンガスなどの不活性ガスが封入されている。
【0042】
発熱体51は、図6に示すように、加熱ベルト21における幅狭の記録紙(ここではA4)が通過する紙幅領域に対応する第1の発熱部61と、最大加熱幅に対応する第2の発熱部62とを備えている。
【0043】
第2の発熱部62には、長手方向の両端に幅広部62a・62bが形成され、第1の発熱部61に対応する位置には、幅狭部62cが形成されている。これにより第1の発熱部61と第2の発熱部62の幅狭部62cとからなる中間領域と、第2の発熱部62の幅広部62a・62bからなる端領域とで、断面積が概ね等しく、長手方向の単位長さ当たりの抵抗値が概ね同一になり、発熱量を長手方向に概ね均一とすることができる。
【0044】
第1の発熱部61と第2の発熱部62とは、図7(A)・(B)に示すように、概ね直交するように形成され、ケーシング52における第1・第2の発熱部61・62の挟角側の部分には、無用な方向に熱が放射されることを阻止する反射膜71が形成されており、この反射膜71と相反する側の熱放射面61a・62aからそれぞれ、互いに直交する向きに熱が放射される。
【0045】
図8は、図6に示した発熱体による加熱状況を示す模式的な斜視図である。図9は、図2に示した加熱ベルトの温度分布を示す図である。
【0046】
図8(A)に示すように、発熱体51の第1の角度では、第1の発熱部61の熱放射面が加熱ベルト21の表面に対して斜め(例えば45度)に対向し、この第1の発熱部61からの放射熱が加熱ベルト21の紙幅領域に照射される。第2の発熱部62の熱放射面も加熱ベルト21の表面に対して斜め(例えば45度)に対向し、この第2の発熱部62からの放射熱が加熱ベルト21の紙幅外領域に照射される。
【0047】
これにより、図8(A)に示すように、加熱ベルト21の紙幅領域及び紙幅外領域が共に加熱される。そして、加熱開始時における第2の発熱部62だけからの放射熱により加熱された加熱ベルト領域には通紙させずに、第1の発熱部61と第2の発熱部62との放射熱により加熱された加熱ベルト領域から通紙させるように制御する。このため、図9(A)に示すように、通紙幅全域で均一な温度分布を実現することができる。
【0048】
また、図8(B)に示すように、発熱体51の第2の角度では、第1の発熱部61の熱放射面が加熱ベルト21の表面に対して正対し、この第1の発熱部61からの放射熱が加熱ベルト21の紙幅領域に照射される。一方、第2の発熱部62の熱放射面は反射板38の方向に向くため、この第2の発熱部62からの放射熱は、反射板38により反射され、特に幅広部62a・62bからの放射熱が、反射板38の両端部で所定の曲面と傾斜角とを有する傾斜部38b・38cにより斜め内向きに反射されて加熱ベルト21の紙幅領域に照射される。
【0049】
これにより、加熱ベルト21の紙幅領域のみが加熱される。このため、図9(B)に示すように、紙幅領域が昇温し、紙幅外領域は加熱されないため、従来のように、幅狭の記録紙に対する加熱処理が連続して継続された際に生じる紙幅外領域の過昇温を確実に防止することができる。
【0050】
図10は、図2に示したカーボンランプヒータに設けられる発熱体の別の例を示す模式的な斜視図である。図11は、図10に示した発熱体による加熱状況を示す模式的な斜視図である。
【0051】
この発熱体101では、前記の例と同様に、加熱ベルト21における幅狭の記録紙が通過する紙幅領域に対応する第1の発熱部103と、最大加熱幅に対応する第2の発熱部104とを備え、長手方向の両端に電圧が印加されるが、ここでは、第1・第2の発熱部103・104に、一定間隔をおいて切り欠き106が形成されており、この切り欠き106の底側で発熱体101の長手方向に連続した部分107に主に電流が流れて発熱し、この通電発熱部分107は断面積が小さく、長手方向の単位長さ当たりの抵抗値が大きくなるため、発熱量が増大する。また、切り欠き106により突片状に形成された部分108では、電流量が小さく、主に通電発熱部分からの熱伝導により昇温し、この伝熱昇温部分108からも通電発熱部分107と同様に熱が放射される。一方、第1・第2の発熱部103・104の幅狭の紙幅領域における突片状に形成された部分108の表面は、第2の発熱部104の幅狭の紙幅外領域における突片状に形成された部分108の表面の略半分であり、かつ第1・第2の発熱部103・104ごとに長手方向に対して交互に形成されている。
【0052】
この構成では、図11(A)に示すように、発熱体101の第1の角度では、第1の発熱部103からの放射熱が加熱ベルト21の紙幅領域に照射され、また第2の発熱部104からの放射熱が加熱ベルト21の紙幅領域及び紙幅外領域に照射され、紙幅領域及び紙幅外領域が共に加熱される。このとき、第1・第2の発熱部103・104の幅狭の紙幅領域における突片状に形成された部分108の表面は、第2の発熱部104の幅狭の紙幅外領域における突片状に形成された部分108の表面の略半分であり、かつ第1・第2の発熱部103・104ごとに長手方向に対して交互に形成されているので、加熱ベルト21の紙幅領域と紙幅外領域とへの放射熱が等しくなり、通紙幅全域で均一な温度分布とすることができる。
【0053】
また、図11(B)に示すように、発熱体101の第2の角度では、第1の発熱部103からの放射熱が加熱ベルト21の紙幅領域に照射される。他方、第2の発熱部104は反射板38の方向に向くため、この第2の発熱部104からの放射熱は、反射板38により反射され、このとき第2の発熱部104の長手方向の中間部から放射された熱は、反射板38の平行部38aにより反射されて加熱ベルト21の紙幅領域に照射され、第2の発熱部104の長手方向の両端部から放射された熱は、反射板38の両端部で所定の曲面と傾斜角とを有する傾斜部38b・38cにより斜め内側に反射されて加熱ベルト21の紙幅領域に照射され、これにより紙幅領域のみが加熱されて、紙幅領域が昇温し、幅狭の記録紙の連続通紙による紙幅外領域の過昇温を抑制することができる。
【0054】
なお、この例では、発熱体において、長手方向の単位長さ当たりの抵抗値を大きくして発熱量を増大させるために切り欠きを形成したが、この他に、孔を開設したり、あるいは通電経路を幅方向に迂回させて長く形成することでも同様の効果が得られる。
【0055】
図12は、図1に示した定着器の別の例を示す断面図である。これは、記録紙S上のトナーを熱定着させる加熱ローラ(加熱体)121が直接、加圧ローラ122との間に記録紙Sを挟み込むニップ部を形成する、いわゆる1軸式の定着器であり、加圧ローラ122は、支軸124により揺動自在に支持された加圧アーム125に回転自在に軸支されており、この加圧アーム125の遊端部に係止された加圧ばね126により加熱ローラ121に圧接する向きに付勢されている。加熱ローラ121の内部には温度センサ127が設けられている。
【0056】
加熱ローラ121の外面近傍には、カーボンランプヒータ25及び反射板38が配置されており、前記の例と同様にして、カーボンランプヒータ25からの放射熱が直接、あるいは反射板38を介して加熱ローラ121の外周面に照射されて加熱ローラ121が加熱される。
【0057】
図13は、図2に示したカーボンランプヒータに設けられる発熱体の別の例による加熱状況を示す模式的な斜視図である。この発熱体131は、全体が平板状に形成されており、図13(A)に示すように、発熱体131の第1の角度では、発熱体131の熱放射面が加熱ベルト21に対向し、発熱体131からの放射熱が加熱ベルト21の紙幅領域及び紙幅外領域に照射され、紙幅領域及び紙幅外領域が共に加熱されて、通紙幅全域で均一な温度分布とすることができる。
【0058】
一方、図13(B)に示すように、発熱体131の第2の角度では、発熱体131の熱放射面が反射板38に対向し、発熱体131の軸方向の中間部から放射された熱は、反射板38の平行部38aにより反射されて加熱ベルト21の紙幅領域に照射され、発熱体131の両端部から放射された熱は、反射板38の両端部で所定の曲面と傾斜角とを有する傾斜部38b・38cにより斜め内側に反射されて加熱ベルト21の紙幅領域に照射され、これにより紙幅領域のみが加熱されて、紙幅領域が昇温し、幅狭の記録紙の連続通紙による紙幅外領域の過昇温を抑制することができる。
【0059】
なお、前記の例では、カーボンランプヒータ25を回動させて、加熱ベルト21の全加熱領域を加熱する第1の状態と、幅狭の記録紙が通過する紙幅領域のみを加熱する第2の状態とに切り替えるものとしたが、反射板を回動させることで第1の状態と第2の状態とを切り替えるように構成することも可能である。この場合、全体が平板状の第1の反射板と、前記の反射板38と同様に、平行部とその両側の傾斜部とを備えた第2の反射板とを移動可能に設け、第1の状態では、カーボンランプヒータ25からの放射熱を受ける位置に第1の反射板を移動させ、第2の状態では、カーボンランプヒータ25からの放射熱を受ける位置に第2の反射板を移動させるようにすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にかかる定着器及びこれを備えた画像形成装置は、幅狭の記録紙の連続通紙による紙幅外領域の過昇温を抑制して定着不良を避けることができる効果を有し、電子写真方式などによるプリンタ、ファクシミリ装置、複写機、及び複合機などの画像形成装置に用いられる定着器及びこれを備えた画像形成装置などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明が適用される画像形成装置を示す概略構成図
【図2】図1に示した定着器を詳しく示す断面図
【図3】図2に示した定着器の下面図
【図4】図1に示した画像形成装置の制御部の概略構成を示すブロック図
【図5】図2に示したカーボンランプヒータを軸線に沿って切断して示す断面図
【図6】図5に示した発熱体の模式的な斜視図
【図7】図5に示したカーボンランプヒータを軸線に直交する平面で切断して示す断面図
【図8】図6に示した発熱体による加熱状況を示す模式的な斜視図
【図9】図2に示した加熱ベルトの温度分布を示す図
【図10】図2に示したカーボンランプヒータに設けられる発熱体の別の例を示す模式的な斜視図
【図11】図10に示した発熱体による加熱状況を示す模式的な斜視図
【図12】図1に示した定着器の別の例を示す断面図
【図13】図2に示したカーボンランプヒータに設けられる発熱体の別の例による加熱状況を示す模式的な斜視図
【符号の説明】
【0062】
20 定着器
21 加熱ベルト(加熱体)
25 カーボンランプヒータ
32 角度調整機構(駆動手段)
33 ピニオン
34 ラック
36 ソレノイド
38 反射板、38a 平行部、38b・38c 傾斜部
42 紙幅判別部
43 カーボンランプヒータ制御部
46 角度制御部
47・48 温度センサ
51 発熱体
61 第1の発熱部、61a 熱放射面
62 第2の発熱部、62b 熱放射面
71 反射膜
101 発熱体
103 第1の発熱部
104 第2の発熱部
121 加熱ローラ(加熱体)
127 温度センサ
131 発熱体
S 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙上のトナーを熱定着させる加熱体と、
この加熱体を加熱する熱放射指向性を有する発熱体と、
この発熱体からの放射熱の前記加熱体に対する照射方向を変化させる機械的な駆動手段とを有し、
定着処理すべき記録紙が幅狭のものである場合に、その記録紙が通過する紙幅領域に、前記発熱体による前記加熱体上の加熱領域が制限されるように前記駆動手段を制御するようにしたことを特徴とする定着器。
【請求項2】
前記発熱体は、炭素系発熱材料によるフィルム状をなし、平面状の熱放射面を備えたことを特徴とする請求項1に記載の定着器。
【請求項3】
前記発熱体からの放射熱を反射して前記加熱体に照射させる反射板を有し、
前記発熱体が、その発熱体からの放射熱を直接前記加熱体に照射させる第1の角度と、前記発熱体からの放射熱を前記反射板を介して前記加熱体に照射させる第2の角度とに回動可能に設けられ、
前記発熱体の第1・第2の角度による加熱領域が互いに異なるように前記反射板が形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の定着器。
【請求項4】
前記反射板は、前記発熱体からの放射熱を偏向して前記加熱体に照射する傾斜部を備え、
前記発熱体の第1の角度で前記加熱体上の全加熱領域を加熱し、前記発熱体の第2の角度で前記加熱体上の紙幅領域を加熱するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の定着器。
【請求項5】
前記発熱体は、前記加熱体上の紙幅領域に対応する第1の発熱部と、前記加熱体の全加熱領域に対応する第2の発熱部とを備え、この第1・第2の発熱部が回動方向に角度をずらして設けられ、
前記発熱体の第1の角度で前記第1・第2の発熱部を前記加熱体に対向させて前記加熱体上の全加熱領域を加熱し、前記発熱体の第2の角度で前記第1の発熱部を前記加熱体に対向させると共に前記第2の発熱部を前記反射板に対向させて前記加熱体上の紙幅領域を加熱するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の定着器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の定着器を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−186907(P2009−186907A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29037(P2008−29037)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】