説明

定着装置、画像形成装置

【課題】定着品質が高く、IHヒータが持つ高効率という特性を十分発揮できる消費電力の少ない定着装置、及び該定着装置を有する画像形成装置、の提供。
【解決手段】記録材を加熱する加熱部と、電磁誘導作用により該加熱部を発熱させるIHヒータと、前記加熱部に対向し記録材を前記加熱部に押圧する押圧部と、前記加熱部に接し、前記IHヒータの下流側且つ前記加熱部と前記押圧部とで形成されるニップ領域の上流側に配設され、内装された補助ヒータにより前記加熱部を加熱する補助加熱部材と、該補助加熱部材の温度を測定する補助加熱部温度センサと、前記IHヒータの下流側且つ前記補助加熱部材の上流側に配設され、前記加熱部の温度を測定する加熱部温度センサと、を有していることを特徴とする定着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
定着装置及び該定着装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導作用を応用したIH(Induction Heating)ヒータは、入力電力に対して被加熱材を加熱する効率が高いこと、又、被加熱材を直接且つ局部的に加熱できること、しかし被加熱材が高温の場合前記効率が低下してしまうこと、が従来より一般的に知られている。
【0003】
このような、入力電力に対して被加熱材を加熱する効率が高く、被加熱材が高温の場合前記効率が低下してしまう、という特徴を持つIHヒータを利用した従来の定着装置について図5を参照して説明する。
【0004】
従来の定着装置4’は、加熱ベルト51と、加熱ベルト51を電磁誘導作用により発熱させるIHヒータ52と、加熱ベルト51を加熱する補助加熱ローラ55と、加熱ベルト51の表面温度を測定する加熱ベルト温度センサ59と、を有している。
【0005】
そして、仕向け地等の事情で定着に使用できる電力が少なくなっても、IHヒータ52を小型なものに交換せずに、定着に必要な熱量をIHヒータ52の上流側に位置する補助加熱ローラ55の加熱で補填しようとするものである。
【0006】
具体的には、IHヒータ52における電力不足による熱量を補うため、加熱ベルト温度センサ59で測定した温度に応じて補助加熱ローラ55に内装された補助ヒータ551の発熱量を予め調整し、補助加熱ローラ55で加熱ベルト51の不足熱量を補填するようにしてある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−139674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の定着装置は、ニップ領域Nにおいてトナー像を定着することにより低下した加熱ベルト51の温度を補助加熱ローラ55により高めることはできるが、補助加熱ローラ55がニップ領域Nの下流側且つIHヒータ52の上流側に配置されているため、IHヒータ52の上流側で加熱ベルト51が既に高温となってしまう。
【0009】
しかし、この時の加熱ベルト51の温度は定着を行うにはまだ十分ではなく、IHヒータ52により定着に十分な温度に加熱する必要がある。
【0010】
しかし、被加熱材が高温の場合前記効率が低下してしまうというIHヒータの特性により、補助加熱ローラ55により加熱されて既に高温となった加熱ベルト51の温度を再加熱するときの効率は低下しており、IHヒータが持つ高効率という特性を十分発揮できず、結果として消費電力が増加してしまう、という問題点があった。
【0011】
また、ベルト式の定着装置において、小サイズ用紙を多量に定着処理すると、定着ベルトの、用紙搬送部分の温度は用紙に熱が持ち去られるため低下し、用紙搬送部分の外側の温度は用紙に熱が持ち去られないため上昇してしまい、このため定着ベルトの軸方向の温度が不均一となってしまうことが一般的に知られている。
【0012】
定着ベルトの軸方向の温度が不均一となってしまった場合、次に大サイズの用紙を定着処理した時に、大サイズ用紙の、前に定着処理した小サイズ用紙の用紙搬送部分と用紙搬送部分の外側部分との境界で、光沢が明瞭に異なってしまい、定着品質異常(例えば光沢ムラ)として認知されてしまうことも知られている。
【0013】
特許文献1に記載の定着装置は、定着ベルトの軸方向の温度が均一とならないことに対する考慮が払われておらず、定着品質異常(例えば光沢ムラ)が発生してしまう可能性があるという問題点があった。
【0014】
本発明は前述の問題点に鑑み、定着品質が高く、IHヒータが持つ高効率という特性を十分発揮できる消費電力の少ない定着装置、及び該定着装置を有する画像形成装置、の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1.記録材を加熱する加熱部と、
電磁誘導作用により該加熱部を発熱させるIHヒータと、
前記加熱部に対向し記録材を前記加熱部に押圧する押圧部と、
前記加熱部に接し、前記IHヒータの下流側且つ前記加熱部と前記押圧部とで形成されるニップ領域の上流側に配設され、前記加熱部を加熱する補助加熱部材と、
該補助加熱部材の温度を測定する補助加熱部温度センサと、
前記IHヒータの下流側且つ前記補助加熱部材の上流側に配設され、前記加熱部の温度を測定する加熱部温度センサと、を有していることを特徴とする定着装置。
【0016】
2.前記加熱部温度センサは、前記加熱部における記録材搬送方向に対する直交方向の中央部側の温度を測定する加熱部中央センサと、使用可能な最大サイズの記録材の通紙領域の端部より内側に位置し前記加熱部における前記直交方向の端部側の温度を測定する加熱部端部センサと、を有していることを特徴とする前記1に記載の定着装置。
【0017】
3.前記加熱部は、記録材を加熱するベルト状をした加熱ベルトと、前記加熱ベルトを一方で巻架し、前記加熱ベルトを介して前記IHヒータに対向するバックアップローラと、前記加熱ベルトを他方で巻架する加熱側ニップローラと、を有し、
前記IHヒータは前記加熱ベルトを発熱させ、
前記補助加熱部材は前記加熱ベルトを加熱し、
前記加熱部中央センサと前記加熱部端部センサとは、前記加熱ベルトの表面温度を測定し、
前記押圧部は、記録材を前記加熱側ニップローラに向けて押圧する加圧側ニップローラを有する、ことを特徴とする前記2に記載の定着装置。
【0018】
4.前記加熱部は記録材を加熱する加熱ローラを有し、
前記IHヒータは前記加熱ローラを発熱させ、
前記補助加熱部材は前記加熱ローラを加熱し、
前記加熱部中央センサと前記加熱部端部センサとは、前記加熱ローラの表面温度を測定し、
前記押圧部は、記録材を前記加熱ローラに向けて押圧する加圧側ニップローラを有する、ことを特徴とする前記2に記載の定着装置。
【0019】
5.トナー画像を形成する画像形成部と、該画像形成部により形成されたトナー画像を記録材に定着する前記1〜4のいずれか1項に記載の定着装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【0020】
6.前記加熱部温度センサは、前記加熱部における記録材搬送方向に対する直交方向の中央部側の温度を測定する加熱部中央センサと、使用可能な最大サイズの記録材の通紙領域の端部より内側に位置し前記加熱部における前記直交方向の端部側の温度を測定する加熱部端部センサと、を有し、
前記加熱部中央センサの測定値と前記加熱部端部センサの測定値とのうち、高い方の測定値と低い方の測定値との間の値に前記加熱ローラを加熱する目標温度を設定し、
該目標温度と前記補助加熱部温度センサの測定値とが一致するように前記補助加熱部材の発熱量を制御する制御部を有することを特徴とする前記5に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0021】
上記発明により、定着品質が高く、IHヒータが持つ高効率という特性を十分発揮できる消費電力の少ない定着装置、及び該定着装置を有する画像形成装置、の提供を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】画像形成装置の説明図。
【図2】定着装置の第1の実施形態の説明図(側面図)。
【図3】加熱ベルトと補助加熱ローラと補助ローラ温度センサと加熱ベルト温度センサと用紙との直行方向Xの関係を示す図。
【図4】定着装置の第2の実施形態の説明図(側面図)。
【図5】従来の定着装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
各構成の説明の前に文言の説明をする。
【0024】
定着装置に関する、上流とは加熱ベルト又は加熱ローラの任意の1点が移動してくる側を指し、下流とは加熱ベルト又は加熱ローラの任意の1点が移動していく側を指す。
【0025】
また、用紙が搬送される方向と平行な方向を平行方向Yと称し、ニップ領域において記録材が搬送される面の延長平面に対して直交する方向を直交方向Xと称する。
【0026】
図1は、画像形成装置の説明図である。
【0027】
画像形成装置の一例として以下タンデム型フルカラー複写機と称せられる画像形成装置Aを例に取り説明する。
【0028】
自動原稿搬送装置Dは、給紙トレイD1に積載された原稿Sを1枚ずつピックアップして原稿読み取り領域rに搬送し、原稿読み取り領域rで画像の情報が読み込まれた原稿Sを排紙トレイD2に排出する。
【0029】
原稿画像読取部1は、光源11及び、移動可能な走査ユニット12と、原稿画像をラインイメージセンサ13に結像する光学系14とを有している。
【0030】
例えば静止光学系型読取動作の場合は、走査ユニット12を原稿読み取り領域rに固定して、自動原稿搬送装置Dにより搬送される原稿Sの画像を読み取る。又、移動光学系型読取動作の場合は、走査ユニット12を移動して、原稿画像読取部1の上に裁置された原稿の画像を読み取る。
【0031】
ラインイメージセンサ13により光電変換された原稿画像のアナログ信号は、図示しない画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色毎のデジタル画像データとなる。
【0032】
第1の像担持体としてのドラム状の感光体21(21Y、21M、21C、21K)の周囲に、各色のデジタル画像データに基づく潜像を形成する露光部22(22Y、22M、22C、22K)と、各色に対応する潜像をトナーで現像する現像部23(23Y、23M、23C、23K)と、感光体21を一様に帯電する帯電部24(24Y、24M、24C、24K)と、中間転写体26に転写されずに感光体21の表面に残留したトナーを除去するクリーニング部25(25Y、25M、25C、25K)と、がそれぞれ配置してある。
【0033】
ここで、感光体21と露光部22と現像部23とが、トナー画像を形成する画像形成部2を形成している。
【0034】
また、各感光体21(21Y、21M、21C、21K)に対向して、ローラ261、262、263、264により回転可能に張架された半導電性エンドレスベルト状の中間転写体26が配置され、中間転写体26は図示しない駆動装置によりローラ263を介して矢印b方向に駆動されている。
【0035】
各感光体21に担持された各色のトナー像は、1次転写ローラ27(27Y、27M、27C、27K)の押圧により中間転写体26に順次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
【0036】
記録材に転写されず中間転写体26に残留したトナーはクリーニング部28により除去される。
【0037】
給紙部3は用紙収納部材である複数の給紙カセット31を有し、給紙カセット31の内部には記録材が収容されている。
【0038】
該記録材としては、樹脂シート、シート状の紙、等が挙げられ、以下記録材を用紙Pと称する。
【0039】
収容された用紙Pは給紙ローラ32により1枚ずつピックアップされ、複数の搬送ローラ33及びレジストローラ34を経て転写領域35まで搬送され、2次転写ローラ36の押圧により搬送された用紙Pに中間転写体上の合成されたトナー画像が一括転写される。
【0040】
トナー画像が転写された用紙Pは中間転写体26から曲率分離され、定着装置4によりトナー画像が用紙Pに定着される。
【0041】
そして、トナー画像が定着された用紙Pは排紙ローラ37に挟持されて、排出口38から装置外部に排出される。
【0042】
なお、上述した動作は画像形成装置全体を制御する制御部Cにより制御されている。
【0043】
以上、タンデム型フルカラー複写機を例に挙げて説明したが、モノクロ複写機に定着装置4を適用できることは言うまでもない。
【0044】
図2は、定着装置の第1の実施形態の説明図(側面図)である。
【0045】
図において、片面に画像形成が行われる場合は図示右側に位置する前工程で用紙Pの図示上面にトナー画像が形成され、両面に画像形成が行われる場合は用紙Pの図示上面に最新のトナー画像が形成されている。
【0046】
定着装置4の第1の実施形態である定着装置4aは、用紙Pを加熱する加熱部5と、加熱部5に用紙Pを押圧する押圧部6と、を有している。
【0047】
そして、加熱部5には、用紙Pを加熱するベルト状をした加熱ベルト51と、電磁誘導作用により加熱ベルト51を発熱させるIHヒータ52と、加熱ベルト51を一方で巻架し、IHヒータ52に対向するバックアップローラ53と、加熱ベルト51を他方で巻架する加熱側ニップローラ54と、加熱ベルト51に接し、IHヒータ52の下流側且つ加熱側ニップローラ54の上流側に配設され、加熱ベルト51を加熱する補助加熱ローラ55と、加熱ベルト51の表面温度を測定する加熱ベルト温度センサ59と、が配設されており、押圧部6には加熱側ニップローラ54と対向してニップ領域Nを形成する加圧側ニップローラ61が配設されている。
【0048】
そして、定着装置4aの入口41に搬送された未定着の用紙Pは入口ガイド板42に案内されニップ領域Nに至り、ニップ領域Nで加熱部5と押圧部6とにより加熱・圧着されトナー像が用紙Pに定着される。そして、定着済みの用紙Pが排出ガイド板43に案内されて排紙口44から排出される。
【0049】
以下に上記の各構成部材について詳細に説明する。
【0050】
加熱ベルト51はリング状の薄いベルトで、磁性金属の薄板(例えば30〜50μm厚のニッケル、鉄等)を基体とし、磁性金属の薄板の表面に厚さ50〜300μm、硬度JIS−Aで5〜40度のシリコンゴムが被覆され、シリコンゴムの表面にPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)又はPTFE〔ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)〕、或いはそれらの混合材料がコーティングされており、前記の磁性金属の薄板である磁性金属層511がIHヒータ52により発熱する。
【0051】
なお、バックアップローラ53と加熱側ニップローラ54、或いはそのいずれかを回転駆動する不図示の駆動部により加熱ベルト51は矢印c方向に駆動されている。
【0052】
IHヒータ52は、所定の間隔を隔ててバックアップローラ53に対向して配設されており、内装されたIHコイル521が高周波電力(例えば20〜40kHz)を出力する高周波電源522に接続されている。
【0053】
IHコイル521は高周波電力が印加されることにより高周波の磁力線を発生し、該磁力線が加熱ベルト51の磁性金属層511を貫通することにより磁性金属層511に渦電流Iが発生し、発生した渦電流Iと磁性金属層511の持つ電気抵抗RとによりW=I×Rで示されるジュール熱が加熱ベルト51(磁性金属層511)内部に発生する。
【0054】
バックアップローラ53は、直径が30〜50mmのローラで、非磁性金属(例えばアルミニウム、SUS等)を基体とし、該基体の表面に耐熱性非磁性樹脂材〔例えばシリコンゴム、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等〕が被覆或いはコーティングされている。
【0055】
そして、IHヒータ52とバックアップローラ53とは移動可能な支持部材532上に設けられており、IHヒータ52とバックアップローラ53とを載置した支持部材532が弾性部材531(例えば圧縮ばね)により加熱側ニップローラ54の反対側に向けて付勢されている。
【0056】
IHヒータ52とバックアップローラ53とが支持部材532上に設けられているため、支持部材532の位置が変化してもIHヒータ52とバックアップローラ53との間隙、即ちIHヒータ52と加熱ベルト51との間隙は一定に保たれ、IHヒータ52の出力に対する加熱ベルト51の発熱量は一定に保たれる。
【0057】
加熱側ニップローラ54は、直径が50〜70mmのローラで、金属(例えばアルミニウム、鉄、SUS等)よりなる芯金の表面に、弾性体(例えば、厚さ2〜15mm、JIS−Aで5〜40度の硬度のシリコンゴム)を被覆し、その表面に離型層(例えばPFA又はPTFE、或いはそれらの混合材料)がコーティングされている。
【0058】
加熱ベルト51を加熱する補助加熱部材である補助加熱ローラ55は、直径が16〜25mmの円筒状のローラで、内部に補助ヒータ551を有しており、上流に位置するIHヒータ52で加熱された加熱ベルト51を補助的に再加熱するローラである。
【0059】
補助加熱ローラ55は伝熱特性の高い金属(例えばアルミニウム等)よりなる円筒状の芯金の表面に、離型層(例えばPFA又はPTFE、或いはそれらの混合材料)がコーティングされている。
【0060】
なお補助加熱ローラ55は、芯金を伝熱特性の高い金属で構成することにより、補助加熱ローラ55の直行方向Xにおける熱の移動を容易とし、それにより直行方向Xにおける温度が均一になるようにしている。
【0061】
そして、直行方向Xの温度が不均一な加熱ベルト51が接触した時、直行方向Xの温度が均一な補助加熱ローラ55と直行方向Xの温度が不均一な加熱ベルト51との間で熱の授受を行い加熱ベルト51の直行方向Xの温度が均一となるようにしてある。
【0062】
以下、加熱ベルト51と補助加熱ローラ55等の直行方向X(幅方向、軸方向)における温度の様子を温度分布とも称する。
【0063】
以上説明したように補助加熱ローラ55は、加熱ベルト51の補助加熱機能と、加熱ベルト51の直行方向Xの温度を均一にする機能とを有している。
【0064】
補助加熱ローラ55に内装する補助ヒータ551は、ハロゲンランプが好適に用いられハロゲンランプにより補助加熱ローラ55を加熱する。
【0065】
補助加熱ローラ55はリング状の加熱ベルト51の外側に設けられており、補助加熱ローラ55と加熱ベルト51との接触面553の長さlが長くなるように、接触面553がバックアップローラ53と加熱側ニップローラ54との共通接線G(破線)より内側(図示左側)に位置するようにしてある。
【0066】
なお、補助加熱ローラ55は加熱ベルト51に長時間に亘って伝熱できれば良く、接触面553の位置が共通接線G(破線)の外側に来るように、補助加熱ローラ55を加熱ベルト51の内側に配設しても良い。
【0067】
補助ローラ温度センサ56は、補助加熱ローラ55の表面温度を測定する非接触型の温度センサで、サーミスタ、小型の熱伝対を複数接続したサーモパイル等が好適に用いられる。
【0068】
加熱部温度センサである加熱ベルト温度センサ59は、IHヒータ52の下流側且つ補助加熱ローラ55の上流側に配設されており、加熱ベルト51の温度を測定する。
【0069】
そして、加熱ベルト温度センサ59は、加熱ベルト51における用紙搬送方向に対する直交方向の中央部側の表面温度即ち、加熱ベルト51の幅方向中央部側の表面温度を測定する加熱部中央センサ591と、使用可能な最大サイズの記録材の通紙領域の端部より内側に位置し、加熱ベルト51における前記直交方向の端部側の温度即ち、加熱ベルト51の幅方向端部側の温度を測定する加熱部端部センサ592と、を有している。
【0070】
加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592とは非接触型の温度センサで、サーミスタ、小型の熱伝対を複数接続したサーモパイル等が好適に用いられる。そして、制御部Cは加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592との測定値に基づいて補助加熱ローラ55を加熱する目標温度Tを算出している。
【0071】
加圧側ニップローラ61は、直径が50〜70mmのローラで、金属例えばアルミニウム、鉄、SUS等よりなる芯金の表面に、弾性体(例えば、厚さ0.5〜5mm、JIS−Aで5〜40度の硬度のシリコンゴム)を被覆し、その表面に離型層(例えばPFA又はPTFE、或いはそれらの混合材料)がコーティングされている。
【0072】
そして、加圧側ニップローラ61を加熱側ニップローラ54に向けて付勢する弾性部材(例えば圧縮ばね)62により、加熱側ニップローラ54に巻架された加熱ベルト51に用紙Pを500〜1500Nの力で押圧する。
【0073】
加熱ベルト51を回転駆動する手段として、バックアップローラ53と加熱側ニップローラ54、或いはそのいずれかを回転駆動する不図示の駆動部を設ける構成について説明したが、補助加熱ローラ55に不図示のワンウエイクラッチとワンウエイクラッチを駆動する不図示のモータを設け、該モータによりワンウエイクラッチを介して補助加熱ローラ55を回転駆動しても良い。
【0074】
ワンウエイクラッチにより、通常は前記駆動部により加熱ベルト51がバックアップローラ53等を介して回転され、補助加熱ローラ55は従動するが、前記駆動部が故障して停止したような場合、前記モータにより補助加熱ローラ55を介して加熱ベルト51を回転可能とできる。そして加熱ベルト51の停止による加熱ベルト51の異常加熱を防止可能とできる。
【0075】
以下に、補助加熱ローラ55による加熱ベルト51の直行方向Xにおける温度の均一化について図3を参照して説明する。
【0076】
図3は、加熱ベルトと補助加熱ローラと補助ローラ温度センサと加熱ベルト温度センサと用紙との直行方向Xの関係を示す図である。
【0077】
図3は図2で示す補助加熱ローラ55近傍を側面側(図2・図示右側)から見た図で、説明の理解を容易にするため、加熱部端部センサ592は用紙搬送の基準位置CLを中心にして左右対称な位置に1対配置したものとして説明する。
【0078】
直行方向Xにおいて、1対の加熱部端部センサ592の取付け間隔w1より狭い幅の用紙を小サイズ用紙PSと称し、1対の加熱部端部センサ592の取付け間隔幅w1より広い幅の用紙を大サイズ用紙PLと称する。
【0079】
先ず、加熱ベルト51と補助加熱ローラ55とが接触する接触面553における加熱ベルト51と補助加熱ローラ55との熱の授受関係について説明する。
【0080】
加熱ベルト51の温度に対して補助加熱ローラ55の温度が高いほど加熱ベルト51に多くの熱を供給して加熱ベルト51の温度を上昇させる。又、加熱ベルト51の温度に対して補助加熱ローラ55の温度が低いほど加熱ベルト51から多くの熱を吸収し加熱ベルト51の温度を低下させる。
【0081】
従って、加熱ベルト51の直行方向Xにおける温度が不均一な場合に、補助加熱ローラ55の温度を加熱ベルト51の高い温度と低い温度との間にすることで、加熱ベルト51の低温部は補助加熱ローラ55に加熱され、加熱ベルト51の高温部は補助加熱ローラ55に吸熱され、加熱ベルト51の温度を均一にすることが可能となる。
【0082】
このため本願発明においては、加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592との測定値に基づいて補助加熱ローラ55を加熱する目標温度Tを算出する。そして、補助加熱ローラ55の温度が算出した目標温度Tになるように補助ヒータ551の発熱量を制御する。
【0083】
即ち、加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592とが測定した温度のうち、高い方の温度(例えば220℃)と低い方の温度(例えば180℃)との間の温度(例えば200℃)を目標温度Tとして設定する。そして、設定した目標温度Tになるように、該目標温度Tより補助ローラ温度センサ56の測定値が高い場合は補助ヒータ551をOFF或いは入力電力を減少させる。
【0084】
又、該目標温度Tより補助ローラ温度センサ56の測定値が低い場合は補助ヒータ551をON或いは入力電力を増加させる。
【0085】
これにより、加熱ベルト51の高温部と低温部との間の温度となった補助加熱ローラ55に加熱ベルト51が接触することにより、加熱ベルト51と補助加熱ローラ55との間で熱の授受が行われ、加熱ベルト51の直行方向Xにおける温度が均一となる。
【0086】
例えば、小サイズ用紙PSが連続して搬送されている場合、加熱ベルト51はニップ領域N(不図示)において、小サイズ用紙PSが通過する小サイズ通過範囲wPSでは用紙に熱が持ち去られ徐々に温度が低下し、小サイズ用紙PSが通過しない小サイズ非通過範囲wPS’では用紙Pに熱が持ち去られず徐々に温度が上昇し、直行方向Xの温度の不均一を生ずる。
【0087】
なお、加熱側ニップローラ54(不図示)と補助加熱ローラ55等の端部はローラを回転可能に支持する支持部58から熱が逃げ、結果として加熱ベルト51の端部の温度を低下させる要因となるが、支持部58による温度低下は小サイズ非通過範囲wPS’における温度上昇に比べ小さいため無視できる。
【0088】
加熱ベルト51は補助加熱ローラ55の上流側に位置するIHヒータ52で加熱されるが、加熱ベルト51の上述した直行方向Xの不均一な温度は、直行方向Xに均一な加熱を行うIHヒータ52では解消されず、加熱ベルト51は上述した直行方向Xに不均一な温度分布を持ったまま補助加熱ローラ55に向かって進んで行く。
【0089】
加熱ベルト51の温度が低下した小サイズ通過範囲wPSに接する補助加熱ローラ55の部分は徐々に温度が低下しようとする(例えば180℃)。又、加熱ベルト51の温度が上昇した小サイズ非通過範囲wPS’に接する補助加熱ローラ55の部分は徐々に温度が上昇しようとする(例えば200℃)。
【0090】
加熱ベルト51のニップ領域N直前の直行方向Xにおける温度を均一にするため、補助加熱ローラを加熱する目標温度Tを、自動的に、加熱部中央センサ591の測定値(例えば180℃)より高く、且つ加熱部端部センサ592の測定値(例えば200℃)より低い値に更新する。
【0091】
具体的には、加熱部中央センサ591の測定値(例えば180℃)と加熱部端部センサ592の測定値(例えば200℃)との中間の温度(例えば190℃)より低く、加熱部中央センサ591の測定値(例えば180℃)より高い温度を算出し(例えば185℃)、目標温度Tを算出した値(例えば185℃)に更新する。
【0092】
なお、第1回目の定着が行われる前は目標温度Tとして予め決められた温度(例えば200℃)が設定される。
【0093】
補助ヒータ551はその発熱量が制御部Cにより制御されており、補助ローラ温度センサ56による補助加熱ローラ55の温度測定値が算出した更新値(例えば185℃)に等しくなるように制御される。
【0094】
これにより、加熱ベルト51の温度が高い端部は、より温度が低い補助加熱ローラ55の端部に吸熱され、加熱ベルト51の温度が低い中央部は、温度がより高い補助加熱ローラ55の中央部に加熱され、加熱ベルト51の小サイズ通過範囲wPSと小サイズ非通過範囲wPS’との温度分布の不均一さが改善される。即ち加熱ベルト51の温度分布が均一となる。
【0095】
加熱ベルト51の温度分布が均一となることにより、次に大サイズの用紙が定着される時、或いはより小さなサイズの用紙が定着される時に、小サイズ通過範囲wPSと小サイズ非通過範囲wPS’との境界で光沢の差がなくなり高品位の画像が提供できる。
【0096】
例えば、大サイズ用紙PLが連続して搬送されている場合ニップ領域N(不図示)において、加熱ベルト51は大サイズ用紙PLが通過する大サイズ通過範囲wPLでは、用紙Pに熱が持ち去られ徐々に温度が低下する。
【0097】
又、補助加熱ローラ55の端部58はローラを回転可能に支持する支持部58から熱が逃げるためその温度が下がり、結果として加熱ベルト51の大サイズ通過範囲wPLより外側部分の温度は、大サイズ通過範囲wPLの温度に比べてより低くなる。
【0098】
上述した大サイズ通過範囲wPLの温度低下に対して、大サイズ通過範囲wPLより外側部分の温度低下は無視できず、これ等のため直行方向Xの温度の不均一を生ずる。
【0099】
加熱ベルト51は補助加熱ローラ55の上流側に位置するIHヒータ52で加熱されるが、加熱ベルト51の上述した直行方向Xの不均一な温度は、直行方向Xに均一な加熱を行うIHヒータ52では解消されず、加熱ベルト51は上述した直行方向Xの不均一な温度分を持ったまま補助加熱ローラ55に向かって進んで行く。
【0100】
温度が低下した加熱ベルト51の大サイズ通過範囲wPLに接する補助加熱ローラ55の部分は徐々に温度が低下しようとする(例えば180℃)。又、より温度が低下した加熱ベルト51の大サイズ通過範囲wPLの外側に接する加熱ベルト51の部分は徐々に温度がより低下しようとする(例えば160℃)。
【0101】
加熱ベルト51のニップ領域N直前の直行方向Xにおける温度を均一にするため、補助加熱ローラを加熱する目標温度Tを、自動的に、加熱部中央センサ591の測定値(例えば180℃)より低く、且つ加熱部端部センサ592の測定値(例えば160℃)より高い値に更新する。
【0102】
具体的には、加熱部中央センサ591の測定値(例えば180℃)と加熱部端部センサ592の測定値(例えば160℃)との中間の温度(例えば170℃)より高く、加熱部中央センサ591の測定値(例えば180℃)より低い温度を算出し(例えば175℃)、目標温度Tを算出した値(例えば175℃)に更新する。
【0103】
なお、第1回目の定着が行われる前は目標温度Tとして予め決められた温度(例えば200℃)が設定される。
【0104】
補助ヒータ551は、制御部Cにより発熱が制御されており、補助ローラ温度センサ56による補助加熱ローラ55の温度測定値が算出した更新値(例えば175℃)に等しくなるように制御される。
【0105】
これにより、加熱ベルト51の温度が端部より高い中央部は、より温度が低い補助加熱ローラ55の中央部に吸熱され、加熱ベルト51の温度が中央部よりなお低い端部は、温度がより高い補助加熱ローラ55の端部に加熱され、加熱ベルト51の大サイズ通過範囲wPLと大サイズ非通過範囲wPL’との温度分布の不均一さが改善される。即ち加熱ベルト51の温度分布が均一となる。
【0106】
加熱ベルト51の温度分布が均一となることにより、次により大きなサイズの用紙が定着される時、或いはより小さなサイズの用紙が定着される時に、用紙の通過範囲と用紙の非通過範囲との境界で光沢の差がなくなり高品位の画像が提供できる。
【0107】
加熱部端部センサ592を複数対又は1対設けても、或いは1個のみ設けても良い。
【0108】
複数対設けることにより、各種のサイズに対応して細かく補助加熱ローラを加熱する目標温度Tを設定可能となる。又、1個設けることにより装置を簡素化できる。
【0109】
以上説明したように、IHヒータ52の下流側且つ定着を行うニップ領域Nの上流側に加熱ベルト51を加熱する補助加熱ローラ55と、加熱ベルト51の中央部の表面温度を測定する加熱部中央センサ591と、加熱ベルト51の端部の表面温度を測定する加熱部端部センサ592と、を設け、加熱部中央センサ591の測定値と加熱部端部センサ592の測定値との間の温度に補助加熱ローラの目標温度Tを設定し、補助ローラ温度センサ56による補助加熱ローラ55の温度測定値が設定した目標温度Tに等しくなるように補助ヒータ551を制御することにより、加熱ベルト51の温度分布の不均一を抑制でき、直行方向Xに光沢ムラのない均一な定着品質を有する画像の出力を提供可能とした。
【0110】
なお、補助ヒータ551が補助加熱ローラ55の略全長に亘る1本のヒータであることを前提にして説明したが、補助加熱ローラ55の中央部分を加熱する中央ヒータ(不図示)と、補助加熱ローラ55の端部を加熱する端部ヒータ(不図示)とに分割しても良い。
【0111】
この場合制御部Cは、例えば加熱ベルト51の端部の温度低下が大きい場合は端部ヒータを加熱する目標温度Tを現在値より上昇させる一方で、加熱ベルト51の中央部の温度上昇が大きい場合は中央ヒータを加熱する目標温度を現在値より下げさせる。
【0112】
このように、加熱ベルト51の直行方向Xの温度分布に応じて補助加熱ローラ55の温度を直行方向Xに細かく調整が可能となり、加熱ベルト51の直行方向Xの温度分布の不均一を効果的に抑制できる。
【0113】
また、測定した加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592との測定値をそれぞれ複数個(例えば10個)順次記憶しておき、該複数個の測定値の移動平均を順次行い、加熱部中央センサ591の移動平均値と加熱部端部センサ592との移動平均値とをそれぞれ算出する。
【0114】
そして、算出した加熱部中央センサ591の最新の移動平均値と、加熱部端部センサ592の最新の移動平均値と、の間の温度を算出し、現在使用している目標温度Tに対して、算出した温度を、補助加熱ローラを加熱する最新の目標温度Tとして更新しても良い。
【0115】
上述したように移動平均を行うことにより、加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592との温度測定における外乱の影響を排除でき、安定した定着が可能となる。
【0116】
また、加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592との温度測定値に対する補助加熱ローラを加熱する目標温度Tを格納した目標温度テーブル(表1参照)を不図示のメモリに予め格納しておき、加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592との温度測定値から目標温度Tを参照しても良い。
【0117】
【表1】

【0118】
例えば、加熱部中央センサ591の測定温度が165℃で加熱部端部センサ592の測定温度が195℃の場合、中央部測定温度欄の160〜170未満項と、端部測定温度欄の190〜200未満項を参照して180℃を得る。
【0119】
そして、目標温度テーブルで参照した目標温度値(例えば180℃)に基づいて補助ヒータ551の発熱量を制御する。
【0120】
この場合は、加熱部中央センサ591と加熱部端部センサ592とのとの間の温度を算出する必要がなく、制御部Cの制御が簡素化できる。
【0121】
以下に加熱ベルト51から用紙Pを分離する構成について図2を参照して説明する。
【0122】
用紙Pに担持され加熱ベルト51により溶融されたトナー像は、ニップ領域Nを通過後加熱ベルト51に付着したまま加熱ベルト51に巻き込まれ易く、このような場合は用紙の搬送異常となってしまう。
【0123】
このため、ニップ領域N近傍に空気を吹き付けて、加熱ベルト51から用紙Pを分離させる空気吹き付け部7を設ける。
【0124】
空気吹き付け部7は、常時空気をニップ領域Nに向けて吹き付ける第1空気吹き付け部71と、用紙先端部P1がニップ領域Nに進入する直前から用紙先端部P1がニップ領域Nを通過し終わるまで空気をニップ領域Nに向けて吹き付ける第2空気吹き付け部72とを有している。
【0125】
第1空気吹き付け部71は、常時作動するファン711(例えばシロッコファン)と、ファン711により発生した空気流をニップ領域N近傍まで流してニップ領域Nに向けて吹き付ける第1ノズル712と、を有しており、第1空気吹き付け部71は加熱ベルト51により加熱された定着後のトナー画像の温度を下げると共に、加熱ベルト51から用紙Pを分離する機能を有している。
【0126】
なお、消費電力削減の観点から制御部Cにより用紙Pがニップ領域Nを通過時にファン711を作動させるようにしても良い。
【0127】
第2空気吹き付け部72は、不図示のコンプレッサから送られる空気A1をON/OFFする電磁弁721と、空気A1をニップ領域N近傍まで流してニップ領域Nに向けて吹き付ける第2ノズル722と、を有しており、第2空気吹き付け部72は加熱ベルト51から用紙Pを分離する機能を有している。
【0128】
第1ノズル712の開口部は300mm×1〜3mm程度の開口で、15〜50m/s程度の風速の空気を噴き出す。
【0129】
なお、電磁弁721は制御部Cにより用紙先端部P1がニップ領域Nに進入する直前から用紙先端部P1がニップ領域Nを通過し終わるまでONとされている。
【0130】
以上説明したように空気吹き付け部7を設けることにより、トナー画像の温度を下げつつ非接触で用紙Pを分離可能とした。また、特にカラーのトナー画像のようにトナー量が多い場合、定着により溶融したトナー画像に分離爪等による接触痕の発生を防止した。
【0131】
また、両面印刷のように用紙Pの図示下側(裏面)にもトナー画像が形成される場合は裏面のトナー画像が加圧側ニップローラ61に巻き込まれる可能性があるため、加圧側ニップローラ61に当接して加圧側ニップローラ61から用紙Pを分離させる分離手段である分離爪73を設ける。
【0132】
分離爪73は各種の用紙サイズに応じて複数個が直行方向Xに並んで配設してあり、個々の分離爪73がそれぞれ支軸731を中心にして揺動可能となっている。そして、弾性部材732(例えば引っ張りバネ)により先端部7311が加圧側ニップローラ61に向けて付勢され、先端部7311が加圧側ニップローラ61の表面に当接するようになっている。
【0133】
分離爪7311はポリイミド樹脂で成形され、用紙Pの分離性と剥離性を上げるため表面にPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)がコーティングされており、先端部が半径0.05mm程度以下の円弧状を為している。
【0134】
以上説明したように、加圧側ニップローラ61側にも、用紙Pを分離させる分離手段である分離爪73を設けることにより、両面印刷時にも用紙Pを確実に分離可能とした。
【0135】
なお、モノクロの画像形成装置においては、トナー量もカラーに比べて少ないため、空気吹き付け部7に替えて分離爪73を加熱ベルト51側に設けても良い。
【0136】
図4は定着装置の第2の実施形態の説明図(側面図)である。
【0137】
第2の実施形態の定着装置4bは、第1の実施形態の定着装置4aの加熱部5が異なる以外は第1の実施形態の定着装置4aと同様な構成をしている。
【0138】
このため、加熱ローラ57、と補助加熱ローラ55’と、補助ローラ温度センサ56’とについて説明する。なお、他の構成については第1の実施形態と略同様な構成をしているので詳細な説明を省略する。
【0139】
第2の実施形態の定着装置4bの説明に入る前に、その考え方について説明する。
【0140】
IHヒータ52’は加熱ローラ57の芯金571を発熱させるが、芯金571より外側に位置する離型層573と弾性層572とは非磁性体であるため発熱できない。
【0141】
また、離型層573と弾性層572とは伝熱特性が低く、特に時間当たりの出力枚数が多い高速機において、IHヒータ52’で加熱された加熱ローラ57の部分がニップ領域Nに到達する時間内には、発熱した芯金571の熱はその一部しか離型層573まで到達できず、結果として加熱ローラ57の温度がトナー像を確実に溶融する温度に到達できない。
【0142】
このため第2の実施形態の定着装置4bは、離型層573と弾性層572と芯金571とを補助加熱ローラ55’で加熱して、ニップ領域Nでトナー像を確実に溶融する温度に上昇させようとするものである。
【0143】
加熱部5は、用紙Pを加熱する加熱ローラ57と、電磁誘導作用により加熱ローラ57を発熱させるIHヒータ52’と、加熱ローラ57に接し、IHヒータ52の下流側且つニップ領域Nの上流側に配設され、加熱ベルト51を加熱する補助加熱ローラ55’と、補助加熱ローラ55’の表面温度を測定する補助ローラ温度センサ56’と、加熱ローラ57の表面温度を測定する加熱ローラ温度センサ59’を有している。
【0144】
また、押圧部6は、加熱ローラ57と対向してニップ領域Nを形成する加圧側ニップローラ61を有している。
【0145】
加熱ローラ57は、直径が50〜70mmのローラで、磁性金属例えばニッケル、鉄等よりなる芯金571と、芯金571の表面に弾性体(例えば、厚さ2〜15mm、JIS−Aで5〜40度の硬度のシリコンゴム)を被覆した弾性層572と、弾性層572の表面に離型材(例えばPFA又はPTFE、或いはそれらの混合材料)がコーティングされた離型層573と、を有している。
【0146】
そして、加熱ローラ57は駆動部(不図示)により矢印d方向に回転駆動されており、磁性金属で構成された芯金571がIHヒータ52’により発熱し、加熱ローラ57が直接用紙Pのトナー画像を加熱・溶融させる。
【0147】
IHヒータ52’は、所定の間隔を隔てて加熱ローラ57に対向して配設されている以外は前述のIHヒータ52と同様な構成を有するので詳細な説明は省略する。
【0148】
補助加熱ローラ55’は、IHヒータ52’により加熱された加熱ローラ57を補助ヒータ551’により補助的に加熱する以外は前述の補助加熱ローラ55と同様な構成を有するので詳細な説明は省略する。
【0149】
補助ローラ温度センサ56’は、補助加熱ローラ55’の表面温度を測定し、前述の補助ローラ温度センサ56と同様な構成を有するので詳細な説明は省略する。
【0150】
加熱ローラ温度センサ59’は、IHヒータ52’の下流側且つニップ領域Nの上流側に、加熱ローラ57と対向して配置され、加熱ローラ57の表面温度を測定する。
【0151】
なお、加熱ローラ温度センサ59’は前述の加熱ベルト温度センサ59と同様に複数で構成され、加熱ローラ57の中央部と端部側とに配置されている。
【0152】
加圧側ニップローラ61は、加熱ローラ57に対向して配設され、用紙Pを加熱ローラ57に直接押圧する以外は前述した加圧側ニップローラ61と同様な構成をしているため詳細な説明を省略する。
【0153】
そして制御部Cは、中央部と端部側とに配置された加熱ローラ温度センサ59’の各測定値に基づいて前述した第1の実施形態の定着装置4aと同様にして目標温度Tを得る。
【0154】
そして、第1の実施形態の定着装置4aと同様にして、補助ローラ温度センサ56’による補助加熱ローラ55’の温度測定値が得た目標温度Tに等しくなるように補助ヒータ551’を制御する。
【0155】
なお、以上説明した定着装置4(定着装置4a及び定着装置4b)の動作は画像形成装置Aの制御部Cにより実行される。
【符号の説明】
【0156】
2 画像形成部
4 定着装置
5 加熱部
6 加圧部
7 空気吹き付け部
4a 第1の実施形態の定着装置
4b 第2の実施形態の定着装置
51 加熱ベルト
52、52’ IHヒータ
53 バックアップローラ
54 加熱側ニップローラ
55、55’ 補助加熱ローラ
56、56’ 補助ローラ温度センサ
59 加熱ベルト温度センサ
61 加圧側ニップローラ
591 加熱部中央センサ
592 加熱部端部センサ
A 画像形成装置
N ニップ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を加熱する加熱部と、
電磁誘導作用により該加熱部を発熱させるIHヒータと、
前記加熱部に対向し記録材を前記加熱部に押圧する押圧部と、
前記加熱部に接し、前記IHヒータの下流側且つ前記加熱部と前記押圧部とで形成されるニップ領域の上流側に配設され、前記加熱部を加熱する補助加熱部材と、
該補助加熱部材の温度を測定する補助加熱部温度センサと、
前記IHヒータの下流側且つ前記補助加熱部材の上流側に配設され、前記加熱部の温度を測定する加熱部温度センサと、を有していることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加熱部温度センサは、前記加熱部における記録材搬送方向に対する直交方向の中央部側の温度を測定する加熱部中央センサと、使用可能な最大サイズの記録材の通紙領域の端部より内側に位置し前記加熱部における前記直交方向の端部側の温度を測定する加熱部端部センサと、を有していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱部は、記録材を加熱するベルト状をした加熱ベルトと、前記加熱ベルトを一方で巻架し、前記加熱ベルトを介して前記IHヒータに対向するバックアップローラと、前記加熱ベルトを他方で巻架する加熱側ニップローラと、を有し、
前記IHヒータは前記加熱ベルトを発熱させ、
前記補助加熱部材は前記加熱ベルトを加熱し、
前記加熱部中央センサと前記加熱部端部センサとは、前記加熱ベルトの表面温度を測定し、
前記押圧部は、記録材を前記加熱側ニップローラに向けて押圧する加圧側ニップローラを有する、ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱部は記録材を加熱する加熱ローラを有し、
前記IHヒータは前記加熱ローラを発熱させ、
前記補助加熱部材は前記加熱ローラを加熱し、
前記加熱部中央センサと前記加熱部端部センサとは、前記加熱ローラの表面温度を測定し、
前記押圧部は、記録材を前記加熱ローラに向けて押圧する加圧側ニップローラを有する、ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
トナー画像を形成する画像形成部と、該画像形成部により形成されたトナー画像を記録材に定着する請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記加熱部温度センサは、前記加熱部における記録材搬送方向に対する直交方向の中央部側の温度を測定する加熱部中央センサと、使用可能な最大サイズの記録材の通紙領域の端部より内側に位置し前記加熱部における前記直交方向の端部側の温度を測定する加熱部端部センサと、を有し、
前記加熱部中央センサの測定値と前記加熱部端部センサの測定値とのうち、高い方の測定値と低い方の測定値との間の値に前記加熱ローラを加熱する目標温度を設定し、
該目標温度と前記補助加熱部温度センサの測定値とが一致するように前記補助加熱部材の発熱量を制御する制御部を有することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−83525(P2012−83525A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229378(P2010−229378)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】