定着装置および画像形成装置
【課題】小サイズの記録部材の定着工程においても加熱ローラの両端部領域の温度上昇を抑制することを可能とする構造を備える、定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】離型層221は、第1通過領域L1と、この第1通過領域L1を芯部材223の軸方向の両側から挟み込む位置に設けられる第2通過領域L2とを有し、第2通過領域L2の離型層221の熱の放射率は、第1通過領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きく設けられている。
【解決手段】離型層221は、第1通過領域L1と、この第1通過領域L1を芯部材223の軸方向の両側から挟み込む位置に設けられる第2通過領域L2とを有し、第2通過領域L2の離型層221の熱の放射率は、第1通過領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きく設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関し、特に、記録部材上に形成されたトナー像を定着させる定着装置および当該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等に設けられる定着装置では、表面にトナー像が形成された記録部材が導入され、この記録部材が定着装置の内部に設けられた加圧ローラと加熱ローラとにより挟持される領域を通過することにより、記録部材上のトナー像が加熱されて記録部材へと定着する。
【0003】
従来、定着装置において、加圧ローラや加熱ローラから放射される熱損失を少なくするため、たとえば、加圧ローラや加熱ローラの周辺を熱放射(輻射)反射板で覆うなどの手段が講じられてきた。しかしながら、熱放射(輻射)反射板を設けることにより、定着装置が大型化するという不都合が生じていた。
【0004】
このような不都合を回避するべく、特許文献1では、加熱ローラの表面に5μm〜10μm厚さの離型層が設けられている。この離型層は、定着装置における定着温度に対応する赤外線の波長域の放射率が0.65以下となるように、良好な熱伝導率を示す金属であるニッケルにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を混合した複合材料で構成される。このような材料によって離型層を構成することにより、加熱ローラの表面から放射される熱量(放射エネルギ)を抑えることが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−080952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、小サイズの記録部材(たとえば、B5縦サイズ)に形成されたトナー像の定着時には、加熱ローラの記録部材の接しない加熱ローラの両端部領域においては、記録部材により熱量が奪われないため、記録部材が通過する加熱ローラの中央領域に比較して両端部領域の温度が上昇する傾向にある。
【0007】
この傾向は、記録部材の搬送速度が上昇すればするほど顕著となるため、加熱ローラの両端部領域の温度上昇を抑制するためには、記録部材の搬送速度を低下させる必要がある。しかし、記録部材の搬送速度を低下させた場合には、画像形成装置の画像形成処理能力(生産性)を低下させることになる。このような課題は、特許文献1に記載されたような技術を用いた場合には、顕著に現れる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、画像形成装置の画像形成処理能力(生産性)を低下させることなく、小サイズの記録部材の定着工程においても加熱ローラの両端部領域の温度上昇を抑制することを可能とする構造を備える、定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に基づいた定着装置においては、加圧ローラと加熱ローラとを備え、異なる幅を有する複数枚の記録部材を上記加圧ローラと上記加熱ローラとにより挟持される領域を通過させて、上記記録部材上のトナー像を加圧および加熱して上記記録部材に上記トナー像を定着させる定着装置であって、上記加熱ローラは、加熱源と、上記加熱源を内包する円筒形状の芯部材と、上記記録部材に接し、上記芯部材に形成される離型層とを含み、上記離型層は、最小幅を有する上記記録部材が接触する第1接触領域と、上記第1接触領域を含み、最小幅を有する上記記録部材よりも大きい幅を有する上記記録部材が接触する第2接触領域と、上記第2接触領域において、上記第1接触領域の両側に位置する第3接触領域とを有し、上記第3接触領域の上記離型層の熱の放射率は、上記第1接触領域の上記離型層の熱の放射率よりも大きく設けられている。
【0010】
他の形態においては、上記第3接触領域は、上記第1接触領域の膜厚さよりも厚く設けられる領域を有する。
【0011】
他の形態においては、上記離型層は、上記離型層よりも熱の放射率が小さい低熱放射率材料を含有し、上記第1接触領域の上記低熱放射率材料の含有率は、上記第3接触領域の上記低熱放射率材料の含有率よりも大きい。
【0012】
他の形態においては、上記芯部材の表面粗さは、上記第1接触領域に対応する表面粗さよりも、上記第3接触領域に対応する表面粗さの方が大きく設けられている。
【0013】
この発明に基づいた画像形成装置においては、上述の定着装置を有する。
【発明の効果】
【0014】
この発明に基づいた定着装置および画像形成装置によれば、画像形成装置の画像形成処理能力(生産性)を低下させることなく、小サイズの記録部材の定着工程においても加熱ローラの両端部領域の温度上昇を抑制することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態における画像形成装置の構成を説明する図である。
【図2】実施の形態における画像形成装置のブロック図である。
【図3】実施の形態における定着装置の斜視図である。
【図4】図3中IV−IV線矢視断面図である。
【図5】実施の形態における定着装置に採用される加熱ローラの全体図である。
【図6】図5中VI−VI線矢視断面図である。
【図7】実施の形態における定着装置に採用される加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図8】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図9】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図10】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図11】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図12】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図13】他の実施の形態における定着装置に採用される加熱ローラの、図5中VI−VI線矢視に相当する断面図である。
【図14】さらに他の実施の形態における定着装置に採用される加熱ローラの、図5中VI−VI線矢視に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいた各実施の形態における定着装置および画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0017】
本実施の形態では、画像形成装置の一例として、カラー画像を形成するタンデム型のカラープリンタが示されている。なお、本発明に従った画像形成装置は、定着装置を備えていればよく、モノクロプリンタであっても良い。
【0018】
[画像形成装置100の全体構成]
図1は、本実施の形態における定着装置110を備えた画像形成装置100の構成を説明する図である。図1を参照して、画像形成装置100は、外観を構成する外装カバー101を備え、画像形成装置100の内部でプリントされた記録部材(以下、転写用紙と称する。)が排出口108から搬出される。
【0019】
画像形成装置100は、画像形成のために、それぞれが回転する4つの感光体104と、感光体104のそれぞれの転写位置にて形成されるトナー像を順次積層して転写する中間転写ベルト105と、中間転写ベルト105の移動面まわりに設定される転写位置に設けられた転写ローラ106とを有する。
【0020】
転写位置には、給紙ローラ103を用いて、給紙カセット102に格納されている転写用紙が搬送される。給紙カセット102には図示しないが転写用紙の有無を検出するセンサが設けられており、給紙カセット102がセットされていない場合や、転写用紙が無くなった場合には、図示しない表示パネル等でユーザに通知される。
【0021】
画像形成装置100では、転写用紙に印字する画像データに基づいて、感光体104に静電潜像が形成される。感光体104に形成された静電潜像が現像によりトナーで顕像化され、中間転写ベルト105に順次に積層される。中間転写ベルト105上に静電転写され合成し終わったトナー像は、転写位置にて転写ローラ106からの静電的な吸引に基づき、転写用紙の上に静電的に一括して転写される。
【0022】
トナー像が転写された転写用紙は、定着装置110を通過する。定着装置110の通過により、トナー像が転写された転写用紙には、熱と圧力とが加えられ転写用紙上のトナー像が定着する。当該工程により転写用紙上への画像形成が完了する。その後、転写用紙は、排出口108から排出される。
【0023】
[画像形成装置100のブロック図]
図2は、画像形成装置100のブロック図である。図2を参照して、画像形成装置100は、当該画像形成装置100の動作を全体的に制御する中央制御部1を含む。中央制御部1は、CPU(Central Processing Unit)を含む。
【0024】
画像形成装置100は、中央制御部1が実行するプログラム等のデータを含むROM(Read Only Memory)3と、中央制御部1がプログラムを実行する際のワーキングエリアとなるRAM(Random Access Memory)2と、中央制御部1がプログラムを実行する際の設定値等の各種のデータを記憶するメモリ4と、画像形成装置100の状態を表示する表示部および外部から情報を入力するためのボタン等の入力部とを含む操作部5と、ネットワーク9Aを介して外部の機器との間で通信をする際のインターフェイスとなるネットワークI/F(インターフェイス)9とを含む。
【0025】
画像形成装置100においては、感光体104への静電潜像の形成、中間転写ベルト105の回転、転写ローラ106の回転、給紙ローラ103の回転、給紙カセット102における転写用紙の有無等のセンサによる検出信号の処理など、画像形成動作において静電潜像を形成して現像し、給紙カセット102の転写用紙に対してトナー像を転写し、定着装置110に転写用紙を導入するまで処理、および、定着装置110を経た転写用紙を排出口108から排出するまでの処理が、画像形成部6によって実行される。画像形成部6の動作は、中央制御部1によって制御される。
【0026】
定着装置110は、当該定着装置110の動作を全体的に制御する定着装置制御部310を含む。定着装置110では、定着装置制御部310は、各種センサ315の検出出力に基づき、ハロゲンヒータ313(加熱源)および各種モータ314の動作を制御する。
【0027】
[定着装置110の構成]
図3は、本実施の形態に従う各実施の形態における定着装置の斜視図であり、図4は、図3中IV−IV線矢視断面図である。
【0028】
図3および図4を参照して、定着装置110は、その外郭を覆うハウジング28を含む。定着装置110では、ハウジング28の上部側(転写用紙の搬送方向下流側)に搬出口24が設けられ、反対側の下部側(転写用紙の搬送方向上流側)に搬入口26が設けられる。
【0029】
搬入口26には、ガイド部材42が設けられている。なお、ガイド部材42を駆動機構に駆動されるよう構成すれば、搬入口26を開閉するシャッタとして機能させることも可能である。
【0030】
ハウジング28の内部には、加圧ローラ(加圧部材)20と、ハロゲンヒータ313を内蔵する加熱ローラ(加熱部材)22とが設けられる。
【0031】
ハウジング28の下部側の搬入口26から搬入された転写用紙は、加圧ローラ20および加熱ローラ22により挟持される領域を通過する。これにより、転写用紙上のトナー像が加圧および加熱され、転写用紙にトナー像が定着する。その後、転写用紙は、搬出口24から定着装置110外へと送り出される。
【0032】
定着装置110では、転写用紙は、加圧ローラ20と加熱ローラ22とにより、ニップ領域を形成するように圧接される。当該ニップ領域は、転写用紙の通紙時に転写用紙以外の領域で隙間が生じないように形成される。
【0033】
再び、図2を参照して、定着装置110では、加熱ローラ22の表面温度を検出する図示せぬ温度センサが備えられている。定着装置制御部310は、当該温度センサによって検出される温度に基づいて、ハロゲンヒータ313のオン/オフを制御する。
【0034】
また、定着装置制御部310は、定着装置110に転写用紙が導入されるタイミングに応じて、加熱ローラ22および加圧ローラ20を回転させる図示せぬモータ(各種モータ314に含まれる)の駆動を制御する。
【0035】
[加熱ローラ22の構成]
図5は、定着装置110に採用される加熱ローラ22の全体図であり、図6は、図5中VI−VI線矢視断面図である。図5および図6を参照して、加熱ローラ22は、外径直径が約30mm程度の円柱状の外観形状を有している。当該円柱の内部には、ハロゲンヒータ313が設けられている。加熱ローラ22には、このハロゲンヒータ313を内包するように、中空円筒状の芯部材223が設けられている。芯部材223の外周上には、厚さが約40μm程度の離型層221が設けられている。
【0036】
芯部材223は、アルミニウム等の、良好な熱伝導特性を有した材料からなる。離型層221は、本実施の形態では、赤外線の波長2〜10μmの波長域における透過率が高い材料によって構成されている。このような材料としては、たとえば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を挙げることができる。
【0037】
加圧ローラ20と加熱ローラ22とを有する定着装置110では、ハロゲンヒータ313から放射された熱放射により、加熱ローラ22の内部の芯部材223が加熱され、熱伝導により離型層221が加熱される。この離型層221の表面より転写用紙および定着装置110の内部・外部へと伝熱する。定着部で発生する熱は、転写用紙上のトナー像を溶融するために用いられる。それ以外は、加熱ローラ22の表面からの熱放射により加熱ローラ22外に熱放射される。
【0038】
ここで、図5に示すように、加熱ローラ22は、最小幅を有する記録部材が接触する第1接触領域L1と、この第1接触領域L1を含み、最小幅を有する記録部材よりも大きい幅を有する記録部材が接触する第2接触領域L2と、第2接触領域L2において、第1接触領域L1の両側に位置する第3接触領域L3とを有する。
【0039】
最大用紙を連続して接触させた場合には、加熱ローラ22から放射される熱は、第3接触領域L3の全体において均一に転写用紙により熱が奪われるため、加熱ローラ22に部分的に温度上昇する領域は生じない。しかし、最小用紙を連続して接触させた場合には、加熱ローラ22の第1接触領域L1においては、転写用紙により熱が奪われるものの、第3接触領域L3においては、転写用紙が接触しないために、転写用紙に熱が奪われることがない。
【0040】
そのため、記録部材が接触する加熱ローラの第1接触領域L1に比較して両側の第3接触領域L3の温度が上昇する傾向にある。この傾向は、定着装置110および画像形成装置100の消費電力エネルギの低減を目的として、加熱ローラ22に放熱抑制機能を設けた場合には顕著に現れることとなる。
【0041】
そこで、本実施の形態における加熱ローラ22においては、図7に示す構造を採用している。図7は、加熱ローラ22の軸線に沿った断面図である。この加熱ローラ22は、芯部材223の表面に設けられた離型層221の膜厚さを、第1接触領域L1の厚さよりも、両側の第3接触領域L3の厚さの方が厚くなるように設けられている。厚さの差(t3)は、5μm以上であると良い。
【0042】
このように、離型層221の膜厚さを、第1接触領域L1の厚さよりも、両側の第3接触領域L3の厚さの方が厚くなるように設けることで、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率は、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくなる。その結果、最小用紙を連続して接触させた場合にも、第1接触領域L1よりも第3接触領域L3の方が冷めやすくなり、第3接触領域L3の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0043】
なお、加熱ローラ22において、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率が、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくなる他の構成として、以下の図8から図12に示す構成が挙げられる。以下、図8から図12を参照しながら説明する。なお、図8から図12は、それぞれ他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【0044】
図8を参照して、図7に示した第3接触領域L3における離型層221の膜厚さは、第3接触領域L3の全体にわたって均一の厚さとなるように設けられていたが、図8に示す加熱ローラ22においては、第1接触領域L1に接する側の第3接触領域L3の膜厚さが最も厚く、外側に向かうにしたがって第3接触領域L3の膜厚さが徐々に小さくなるテーパ形状を有している。
【0045】
この構成により、第1接触領域L1に接する側の第3接触領域L3における離型層221の熱の放射率が最も高くなり、外側に向かうにしたがって徐々に放射率を低下させることが可能となる。
【0046】
図9を参照して、この図9に示す加熱ローラ22の構成は、図8に示す構成とは逆である。図9に示す加熱ローラ22においては、第1接触領域L1に接する側の離型層221の第3接触領域L3の膜厚さは、第1接触領域L1の離型層221の膜厚さと同じであり、外側に向かうにしたがって第3接触領域L3の膜厚さが徐々に大きくなるテーパ形状を有している。
【0047】
この構成により、第1接触領域L1に接する側の第3接触領域L3から外側に向かうにしたがって徐々に放射率を高めることが可能となる。
【0048】
図10を参照して、この加熱ローラ22の構成は、第1接触領域L1の離型層221にのみ、離型層221よりも熱の放射率が小さい低熱放射率材料221aを含有させている。低熱放射率材料221aの放射率は0.5以下であると良い。低熱放射率材料221aの離型層221への添加量は、5質量%〜20質量%であると良い。
【0049】
低熱放射率材料221aとしては、金属または金属合金等が良く、具体的には、アルミ、銅、銀等が挙げられる。また、低熱放射率材料221aは、第1接触領域L1の離型層221に均一に分散されていると良い。転写用紙と接する離型層221の最表面には、低熱放射率材料221aの粒子が析出していないことが好ましい。
【0050】
この構成によっても、離型層221の第1接触領域L1の放射率と、第3接触領域L3の放射率とを比較した場合には、第3接触領域L3の放射率の方が高くなる。その結果、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率は、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくすることが可能となる。
【0051】
なお、図10に示す加熱ローラ22においては、第3接触領域L3の離型層221に、離型層221よりも熱の放射率が小さい低熱放射率材料221aを含有させていない場合を示しているが、図11に示すように、離型層221の第1接触領域L1と第3接触領域L3とに含有させる低熱放射率材料221aの割合を、第3接触領域L3よりも第1接触領域L1の方が多くなるようにすることによっても、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率を、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくすることが可能である。
【0052】
図12を参照して、この加熱ローラ22の構成は、芯部材223の表面粗さにおいて、第1接触領域L1に対応する位置の表面粗さよりも、第3接触領域L3に対応する位置の表面粗さの方が大きく設けられている。たとえば、第1接触領域L1に対応する位置の表面粗さは、Ra=0.1μm以下、第3接触領域L3に対応する位置の表面粗さは、Ra=0.4μm以上であると良い。なお、Raは、中心線平均粗さを示す。
【0053】
このように、第3接触領域L3に対応する芯部材223の表面粗さを、第1接触領域L1に対応する領域の芯部材223の表面粗さよりも粗くすることで、放射面積が増加し、放射量が多くなる。その結果、芯部材223に形成される離型層221にもこの影響が反映され、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率を、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくすることが可能となる。
【0054】
なお、上述の加熱ローラ22は、芯部材223に離型層221を形成する場合について説明しているが、より放熱抑制機能を高める構成として、図13に示すように、芯部材223と離型層221との間に、弾性層222を設ける構成や、図14に示すように、さらに弾性層222と離型層221との間に低熱放射層225を設ける構成の採用も可能である。
【0055】
弾性層222には、シリコンゴムやフッ素ゴム等の、耐熱性弾性ゴムを用いると良い。また、低熱放射層225は、アルミニウムや銅、銀などの、熱の放射率の低い材料で構成されると良い。なお、低熱放射層225の放射率としては、鉄などが用いられた場合の0.3程度であれば好ましく、上記アルミニウムや銅、銀などのように0.1以下であればさらに好ましい。また、低熱放射層225の放射率は、その表面が平滑であるほど低くなることから、低熱放射層225の表面は鏡面仕上げされていることが好ましい。
【0056】
以上、本実施の形態における定着装置110およびこの定着装置を用いた画像形成装置100によれば、定着装置110に採用される加熱ローラ22おいて、離型層221は、第1接触領域L1と、この第1接触領域L1を芯部材223の軸方向の両側から挟み込む位置に設けられる第3接触領域L3とを有し、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率は、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きく設けられている。
【0057】
これにより、小サイズの記録部材の定着工程においても加熱ローラ22の両第3接触領域L3の温度上昇を抑制することを可能とする。
【0058】
なお、図1に示す画像形成装置においては、定着装置110の配置に対して、記録部材を縦方向(下から上方向)に搬送する場合を示しているが、本発明はこの搬送方向に限定されるものではない。たとえば、記録部材を横方向(左右方向)に搬送する構成を採用する定着装置および画像形成装置に対しても、本発明の構成を採用することが可能である。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 中央制御部、4 メモリ、5 操作部、6 画像形成部、20 加圧ローラ、22 加熱ローラ、24 搬出口、26 搬入口、28 ハウジング、42 ガイド部材、100 画像形成装置、101 外装カバー、102 給紙カセット、103 給紙ローラ、104 感光体、105 中間転写ベルト、106 転写ローラ、108 排出口、110 定着装置、221 離型層、221a 低熱放射率材料、222 弾性層、223 芯部材、225 低熱放射層、310 定着装置制御部、313 ハロゲンヒータ、314 各種モータ、315 各種センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関し、特に、記録部材上に形成されたトナー像を定着させる定着装置および当該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等に設けられる定着装置では、表面にトナー像が形成された記録部材が導入され、この記録部材が定着装置の内部に設けられた加圧ローラと加熱ローラとにより挟持される領域を通過することにより、記録部材上のトナー像が加熱されて記録部材へと定着する。
【0003】
従来、定着装置において、加圧ローラや加熱ローラから放射される熱損失を少なくするため、たとえば、加圧ローラや加熱ローラの周辺を熱放射(輻射)反射板で覆うなどの手段が講じられてきた。しかしながら、熱放射(輻射)反射板を設けることにより、定着装置が大型化するという不都合が生じていた。
【0004】
このような不都合を回避するべく、特許文献1では、加熱ローラの表面に5μm〜10μm厚さの離型層が設けられている。この離型層は、定着装置における定着温度に対応する赤外線の波長域の放射率が0.65以下となるように、良好な熱伝導率を示す金属であるニッケルにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を混合した複合材料で構成される。このような材料によって離型層を構成することにより、加熱ローラの表面から放射される熱量(放射エネルギ)を抑えることが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−080952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、小サイズの記録部材(たとえば、B5縦サイズ)に形成されたトナー像の定着時には、加熱ローラの記録部材の接しない加熱ローラの両端部領域においては、記録部材により熱量が奪われないため、記録部材が通過する加熱ローラの中央領域に比較して両端部領域の温度が上昇する傾向にある。
【0007】
この傾向は、記録部材の搬送速度が上昇すればするほど顕著となるため、加熱ローラの両端部領域の温度上昇を抑制するためには、記録部材の搬送速度を低下させる必要がある。しかし、記録部材の搬送速度を低下させた場合には、画像形成装置の画像形成処理能力(生産性)を低下させることになる。このような課題は、特許文献1に記載されたような技術を用いた場合には、顕著に現れる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、画像形成装置の画像形成処理能力(生産性)を低下させることなく、小サイズの記録部材の定着工程においても加熱ローラの両端部領域の温度上昇を抑制することを可能とする構造を備える、定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に基づいた定着装置においては、加圧ローラと加熱ローラとを備え、異なる幅を有する複数枚の記録部材を上記加圧ローラと上記加熱ローラとにより挟持される領域を通過させて、上記記録部材上のトナー像を加圧および加熱して上記記録部材に上記トナー像を定着させる定着装置であって、上記加熱ローラは、加熱源と、上記加熱源を内包する円筒形状の芯部材と、上記記録部材に接し、上記芯部材に形成される離型層とを含み、上記離型層は、最小幅を有する上記記録部材が接触する第1接触領域と、上記第1接触領域を含み、最小幅を有する上記記録部材よりも大きい幅を有する上記記録部材が接触する第2接触領域と、上記第2接触領域において、上記第1接触領域の両側に位置する第3接触領域とを有し、上記第3接触領域の上記離型層の熱の放射率は、上記第1接触領域の上記離型層の熱の放射率よりも大きく設けられている。
【0010】
他の形態においては、上記第3接触領域は、上記第1接触領域の膜厚さよりも厚く設けられる領域を有する。
【0011】
他の形態においては、上記離型層は、上記離型層よりも熱の放射率が小さい低熱放射率材料を含有し、上記第1接触領域の上記低熱放射率材料の含有率は、上記第3接触領域の上記低熱放射率材料の含有率よりも大きい。
【0012】
他の形態においては、上記芯部材の表面粗さは、上記第1接触領域に対応する表面粗さよりも、上記第3接触領域に対応する表面粗さの方が大きく設けられている。
【0013】
この発明に基づいた画像形成装置においては、上述の定着装置を有する。
【発明の効果】
【0014】
この発明に基づいた定着装置および画像形成装置によれば、画像形成装置の画像形成処理能力(生産性)を低下させることなく、小サイズの記録部材の定着工程においても加熱ローラの両端部領域の温度上昇を抑制することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態における画像形成装置の構成を説明する図である。
【図2】実施の形態における画像形成装置のブロック図である。
【図3】実施の形態における定着装置の斜視図である。
【図4】図3中IV−IV線矢視断面図である。
【図5】実施の形態における定着装置に採用される加熱ローラの全体図である。
【図6】図5中VI−VI線矢視断面図である。
【図7】実施の形態における定着装置に採用される加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図8】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図9】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図10】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図11】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図12】実施の形態における定着装置に採用される他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【図13】他の実施の形態における定着装置に採用される加熱ローラの、図5中VI−VI線矢視に相当する断面図である。
【図14】さらに他の実施の形態における定着装置に採用される加熱ローラの、図5中VI−VI線矢視に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいた各実施の形態における定着装置および画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0017】
本実施の形態では、画像形成装置の一例として、カラー画像を形成するタンデム型のカラープリンタが示されている。なお、本発明に従った画像形成装置は、定着装置を備えていればよく、モノクロプリンタであっても良い。
【0018】
[画像形成装置100の全体構成]
図1は、本実施の形態における定着装置110を備えた画像形成装置100の構成を説明する図である。図1を参照して、画像形成装置100は、外観を構成する外装カバー101を備え、画像形成装置100の内部でプリントされた記録部材(以下、転写用紙と称する。)が排出口108から搬出される。
【0019】
画像形成装置100は、画像形成のために、それぞれが回転する4つの感光体104と、感光体104のそれぞれの転写位置にて形成されるトナー像を順次積層して転写する中間転写ベルト105と、中間転写ベルト105の移動面まわりに設定される転写位置に設けられた転写ローラ106とを有する。
【0020】
転写位置には、給紙ローラ103を用いて、給紙カセット102に格納されている転写用紙が搬送される。給紙カセット102には図示しないが転写用紙の有無を検出するセンサが設けられており、給紙カセット102がセットされていない場合や、転写用紙が無くなった場合には、図示しない表示パネル等でユーザに通知される。
【0021】
画像形成装置100では、転写用紙に印字する画像データに基づいて、感光体104に静電潜像が形成される。感光体104に形成された静電潜像が現像によりトナーで顕像化され、中間転写ベルト105に順次に積層される。中間転写ベルト105上に静電転写され合成し終わったトナー像は、転写位置にて転写ローラ106からの静電的な吸引に基づき、転写用紙の上に静電的に一括して転写される。
【0022】
トナー像が転写された転写用紙は、定着装置110を通過する。定着装置110の通過により、トナー像が転写された転写用紙には、熱と圧力とが加えられ転写用紙上のトナー像が定着する。当該工程により転写用紙上への画像形成が完了する。その後、転写用紙は、排出口108から排出される。
【0023】
[画像形成装置100のブロック図]
図2は、画像形成装置100のブロック図である。図2を参照して、画像形成装置100は、当該画像形成装置100の動作を全体的に制御する中央制御部1を含む。中央制御部1は、CPU(Central Processing Unit)を含む。
【0024】
画像形成装置100は、中央制御部1が実行するプログラム等のデータを含むROM(Read Only Memory)3と、中央制御部1がプログラムを実行する際のワーキングエリアとなるRAM(Random Access Memory)2と、中央制御部1がプログラムを実行する際の設定値等の各種のデータを記憶するメモリ4と、画像形成装置100の状態を表示する表示部および外部から情報を入力するためのボタン等の入力部とを含む操作部5と、ネットワーク9Aを介して外部の機器との間で通信をする際のインターフェイスとなるネットワークI/F(インターフェイス)9とを含む。
【0025】
画像形成装置100においては、感光体104への静電潜像の形成、中間転写ベルト105の回転、転写ローラ106の回転、給紙ローラ103の回転、給紙カセット102における転写用紙の有無等のセンサによる検出信号の処理など、画像形成動作において静電潜像を形成して現像し、給紙カセット102の転写用紙に対してトナー像を転写し、定着装置110に転写用紙を導入するまで処理、および、定着装置110を経た転写用紙を排出口108から排出するまでの処理が、画像形成部6によって実行される。画像形成部6の動作は、中央制御部1によって制御される。
【0026】
定着装置110は、当該定着装置110の動作を全体的に制御する定着装置制御部310を含む。定着装置110では、定着装置制御部310は、各種センサ315の検出出力に基づき、ハロゲンヒータ313(加熱源)および各種モータ314の動作を制御する。
【0027】
[定着装置110の構成]
図3は、本実施の形態に従う各実施の形態における定着装置の斜視図であり、図4は、図3中IV−IV線矢視断面図である。
【0028】
図3および図4を参照して、定着装置110は、その外郭を覆うハウジング28を含む。定着装置110では、ハウジング28の上部側(転写用紙の搬送方向下流側)に搬出口24が設けられ、反対側の下部側(転写用紙の搬送方向上流側)に搬入口26が設けられる。
【0029】
搬入口26には、ガイド部材42が設けられている。なお、ガイド部材42を駆動機構に駆動されるよう構成すれば、搬入口26を開閉するシャッタとして機能させることも可能である。
【0030】
ハウジング28の内部には、加圧ローラ(加圧部材)20と、ハロゲンヒータ313を内蔵する加熱ローラ(加熱部材)22とが設けられる。
【0031】
ハウジング28の下部側の搬入口26から搬入された転写用紙は、加圧ローラ20および加熱ローラ22により挟持される領域を通過する。これにより、転写用紙上のトナー像が加圧および加熱され、転写用紙にトナー像が定着する。その後、転写用紙は、搬出口24から定着装置110外へと送り出される。
【0032】
定着装置110では、転写用紙は、加圧ローラ20と加熱ローラ22とにより、ニップ領域を形成するように圧接される。当該ニップ領域は、転写用紙の通紙時に転写用紙以外の領域で隙間が生じないように形成される。
【0033】
再び、図2を参照して、定着装置110では、加熱ローラ22の表面温度を検出する図示せぬ温度センサが備えられている。定着装置制御部310は、当該温度センサによって検出される温度に基づいて、ハロゲンヒータ313のオン/オフを制御する。
【0034】
また、定着装置制御部310は、定着装置110に転写用紙が導入されるタイミングに応じて、加熱ローラ22および加圧ローラ20を回転させる図示せぬモータ(各種モータ314に含まれる)の駆動を制御する。
【0035】
[加熱ローラ22の構成]
図5は、定着装置110に採用される加熱ローラ22の全体図であり、図6は、図5中VI−VI線矢視断面図である。図5および図6を参照して、加熱ローラ22は、外径直径が約30mm程度の円柱状の外観形状を有している。当該円柱の内部には、ハロゲンヒータ313が設けられている。加熱ローラ22には、このハロゲンヒータ313を内包するように、中空円筒状の芯部材223が設けられている。芯部材223の外周上には、厚さが約40μm程度の離型層221が設けられている。
【0036】
芯部材223は、アルミニウム等の、良好な熱伝導特性を有した材料からなる。離型層221は、本実施の形態では、赤外線の波長2〜10μmの波長域における透過率が高い材料によって構成されている。このような材料としては、たとえば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を挙げることができる。
【0037】
加圧ローラ20と加熱ローラ22とを有する定着装置110では、ハロゲンヒータ313から放射された熱放射により、加熱ローラ22の内部の芯部材223が加熱され、熱伝導により離型層221が加熱される。この離型層221の表面より転写用紙および定着装置110の内部・外部へと伝熱する。定着部で発生する熱は、転写用紙上のトナー像を溶融するために用いられる。それ以外は、加熱ローラ22の表面からの熱放射により加熱ローラ22外に熱放射される。
【0038】
ここで、図5に示すように、加熱ローラ22は、最小幅を有する記録部材が接触する第1接触領域L1と、この第1接触領域L1を含み、最小幅を有する記録部材よりも大きい幅を有する記録部材が接触する第2接触領域L2と、第2接触領域L2において、第1接触領域L1の両側に位置する第3接触領域L3とを有する。
【0039】
最大用紙を連続して接触させた場合には、加熱ローラ22から放射される熱は、第3接触領域L3の全体において均一に転写用紙により熱が奪われるため、加熱ローラ22に部分的に温度上昇する領域は生じない。しかし、最小用紙を連続して接触させた場合には、加熱ローラ22の第1接触領域L1においては、転写用紙により熱が奪われるものの、第3接触領域L3においては、転写用紙が接触しないために、転写用紙に熱が奪われることがない。
【0040】
そのため、記録部材が接触する加熱ローラの第1接触領域L1に比較して両側の第3接触領域L3の温度が上昇する傾向にある。この傾向は、定着装置110および画像形成装置100の消費電力エネルギの低減を目的として、加熱ローラ22に放熱抑制機能を設けた場合には顕著に現れることとなる。
【0041】
そこで、本実施の形態における加熱ローラ22においては、図7に示す構造を採用している。図7は、加熱ローラ22の軸線に沿った断面図である。この加熱ローラ22は、芯部材223の表面に設けられた離型層221の膜厚さを、第1接触領域L1の厚さよりも、両側の第3接触領域L3の厚さの方が厚くなるように設けられている。厚さの差(t3)は、5μm以上であると良い。
【0042】
このように、離型層221の膜厚さを、第1接触領域L1の厚さよりも、両側の第3接触領域L3の厚さの方が厚くなるように設けることで、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率は、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくなる。その結果、最小用紙を連続して接触させた場合にも、第1接触領域L1よりも第3接触領域L3の方が冷めやすくなり、第3接触領域L3の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0043】
なお、加熱ローラ22において、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率が、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくなる他の構成として、以下の図8から図12に示す構成が挙げられる。以下、図8から図12を参照しながら説明する。なお、図8から図12は、それぞれ他の加熱ローラの軸線に沿った断面図である。
【0044】
図8を参照して、図7に示した第3接触領域L3における離型層221の膜厚さは、第3接触領域L3の全体にわたって均一の厚さとなるように設けられていたが、図8に示す加熱ローラ22においては、第1接触領域L1に接する側の第3接触領域L3の膜厚さが最も厚く、外側に向かうにしたがって第3接触領域L3の膜厚さが徐々に小さくなるテーパ形状を有している。
【0045】
この構成により、第1接触領域L1に接する側の第3接触領域L3における離型層221の熱の放射率が最も高くなり、外側に向かうにしたがって徐々に放射率を低下させることが可能となる。
【0046】
図9を参照して、この図9に示す加熱ローラ22の構成は、図8に示す構成とは逆である。図9に示す加熱ローラ22においては、第1接触領域L1に接する側の離型層221の第3接触領域L3の膜厚さは、第1接触領域L1の離型層221の膜厚さと同じであり、外側に向かうにしたがって第3接触領域L3の膜厚さが徐々に大きくなるテーパ形状を有している。
【0047】
この構成により、第1接触領域L1に接する側の第3接触領域L3から外側に向かうにしたがって徐々に放射率を高めることが可能となる。
【0048】
図10を参照して、この加熱ローラ22の構成は、第1接触領域L1の離型層221にのみ、離型層221よりも熱の放射率が小さい低熱放射率材料221aを含有させている。低熱放射率材料221aの放射率は0.5以下であると良い。低熱放射率材料221aの離型層221への添加量は、5質量%〜20質量%であると良い。
【0049】
低熱放射率材料221aとしては、金属または金属合金等が良く、具体的には、アルミ、銅、銀等が挙げられる。また、低熱放射率材料221aは、第1接触領域L1の離型層221に均一に分散されていると良い。転写用紙と接する離型層221の最表面には、低熱放射率材料221aの粒子が析出していないことが好ましい。
【0050】
この構成によっても、離型層221の第1接触領域L1の放射率と、第3接触領域L3の放射率とを比較した場合には、第3接触領域L3の放射率の方が高くなる。その結果、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率は、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくすることが可能となる。
【0051】
なお、図10に示す加熱ローラ22においては、第3接触領域L3の離型層221に、離型層221よりも熱の放射率が小さい低熱放射率材料221aを含有させていない場合を示しているが、図11に示すように、離型層221の第1接触領域L1と第3接触領域L3とに含有させる低熱放射率材料221aの割合を、第3接触領域L3よりも第1接触領域L1の方が多くなるようにすることによっても、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率を、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくすることが可能である。
【0052】
図12を参照して、この加熱ローラ22の構成は、芯部材223の表面粗さにおいて、第1接触領域L1に対応する位置の表面粗さよりも、第3接触領域L3に対応する位置の表面粗さの方が大きく設けられている。たとえば、第1接触領域L1に対応する位置の表面粗さは、Ra=0.1μm以下、第3接触領域L3に対応する位置の表面粗さは、Ra=0.4μm以上であると良い。なお、Raは、中心線平均粗さを示す。
【0053】
このように、第3接触領域L3に対応する芯部材223の表面粗さを、第1接触領域L1に対応する領域の芯部材223の表面粗さよりも粗くすることで、放射面積が増加し、放射量が多くなる。その結果、芯部材223に形成される離型層221にもこの影響が反映され、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率を、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きくすることが可能となる。
【0054】
なお、上述の加熱ローラ22は、芯部材223に離型層221を形成する場合について説明しているが、より放熱抑制機能を高める構成として、図13に示すように、芯部材223と離型層221との間に、弾性層222を設ける構成や、図14に示すように、さらに弾性層222と離型層221との間に低熱放射層225を設ける構成の採用も可能である。
【0055】
弾性層222には、シリコンゴムやフッ素ゴム等の、耐熱性弾性ゴムを用いると良い。また、低熱放射層225は、アルミニウムや銅、銀などの、熱の放射率の低い材料で構成されると良い。なお、低熱放射層225の放射率としては、鉄などが用いられた場合の0.3程度であれば好ましく、上記アルミニウムや銅、銀などのように0.1以下であればさらに好ましい。また、低熱放射層225の放射率は、その表面が平滑であるほど低くなることから、低熱放射層225の表面は鏡面仕上げされていることが好ましい。
【0056】
以上、本実施の形態における定着装置110およびこの定着装置を用いた画像形成装置100によれば、定着装置110に採用される加熱ローラ22おいて、離型層221は、第1接触領域L1と、この第1接触領域L1を芯部材223の軸方向の両側から挟み込む位置に設けられる第3接触領域L3とを有し、第3接触領域L3の離型層221の熱の放射率は、第1接触領域L1の離型層221の熱の放射率よりも大きく設けられている。
【0057】
これにより、小サイズの記録部材の定着工程においても加熱ローラ22の両第3接触領域L3の温度上昇を抑制することを可能とする。
【0058】
なお、図1に示す画像形成装置においては、定着装置110の配置に対して、記録部材を縦方向(下から上方向)に搬送する場合を示しているが、本発明はこの搬送方向に限定されるものではない。たとえば、記録部材を横方向(左右方向)に搬送する構成を採用する定着装置および画像形成装置に対しても、本発明の構成を採用することが可能である。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 中央制御部、4 メモリ、5 操作部、6 画像形成部、20 加圧ローラ、22 加熱ローラ、24 搬出口、26 搬入口、28 ハウジング、42 ガイド部材、100 画像形成装置、101 外装カバー、102 給紙カセット、103 給紙ローラ、104 感光体、105 中間転写ベルト、106 転写ローラ、108 排出口、110 定着装置、221 離型層、221a 低熱放射率材料、222 弾性層、223 芯部材、225 低熱放射層、310 定着装置制御部、313 ハロゲンヒータ、314 各種モータ、315 各種センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ローラと加熱ローラとを備え、異なる幅を有する複数枚の記録部材を前記加圧ローラと前記加熱ローラとにより挟持される領域を通過させて、前記記録部材上のトナー像を加圧および加熱して前記記録部材に前記トナー像を定着させる定着装置であって、
前記加熱ローラは、加熱源と、前記加熱源を内包する円筒形状の芯部材と、前記記録部材に接し前記芯部材に形成される離型層と、を含み、
前記離型層は、最小幅を有する前記記録部材が接触する第1接触領域と、前記第1接触領域を含み、最小幅を有する前記記録部材よりも大きい幅を有する前記記録部材が接触する第2接触領域と、前記第2接触領域において、前記第1接触領域の両側に位置する第3接触領域とを有し、
前記第3接触領域の前記離型層の熱の放射率は、前記第1接触領域の前記離型層の熱の放射率よりも大きく設けられている、定着装置。
【請求項2】
前記第3接触領域は、前記第1接触領域の膜厚さよりも厚く設けられる領域を有する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記離型層は、前記離型層よりも熱の放射率が小さい低熱放射率材料を含有し、
前記第1接触領域の前記低熱放射率材料の含有率は、前記第3接触領域の前記低熱放射率材料の含有率よりも大きい、請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記芯部材の表面粗さは、前記第1接触領域に対応する表面粗さよりも、前記第3接触領域に対応する表面粗さの方が大きく設けられている、請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の定着装置を有する、画像形成装置。
【請求項1】
加圧ローラと加熱ローラとを備え、異なる幅を有する複数枚の記録部材を前記加圧ローラと前記加熱ローラとにより挟持される領域を通過させて、前記記録部材上のトナー像を加圧および加熱して前記記録部材に前記トナー像を定着させる定着装置であって、
前記加熱ローラは、加熱源と、前記加熱源を内包する円筒形状の芯部材と、前記記録部材に接し前記芯部材に形成される離型層と、を含み、
前記離型層は、最小幅を有する前記記録部材が接触する第1接触領域と、前記第1接触領域を含み、最小幅を有する前記記録部材よりも大きい幅を有する前記記録部材が接触する第2接触領域と、前記第2接触領域において、前記第1接触領域の両側に位置する第3接触領域とを有し、
前記第3接触領域の前記離型層の熱の放射率は、前記第1接触領域の前記離型層の熱の放射率よりも大きく設けられている、定着装置。
【請求項2】
前記第3接触領域は、前記第1接触領域の膜厚さよりも厚く設けられる領域を有する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記離型層は、前記離型層よりも熱の放射率が小さい低熱放射率材料を含有し、
前記第1接触領域の前記低熱放射率材料の含有率は、前記第3接触領域の前記低熱放射率材料の含有率よりも大きい、請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記芯部材の表面粗さは、前記第1接触領域に対応する表面粗さよりも、前記第3接触領域に対応する表面粗さの方が大きく設けられている、請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の定着装置を有する、画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−103613(P2012−103613A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253999(P2010−253999)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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