説明

定着装置ならびにそれを備えた画像形成装置

【課題】印刷開始直前の連続した長尺状被記録媒体の弛みを無くすために、プラーにより長尺状被記録媒体を張るが、この際に生じる駆動側プラー汚れの被記録媒体への転移を抑制して、印刷品質の向上が図れる定着装置を提供する。
【解決手段】プレヒータ13、加熱ローラ14と加圧ローラ15、駆動側プラー16aと従動側プラー16bを備え、プラー16により、印刷開始前にプレヒータ13とプラー16の間の連続紙7の弛みをとる用紙張りを行い、印刷時に連続紙7を駆動側プラー16aと従動側プラー16bの間で挟持して搬送する定着装置において、印刷開始前でかつ用紙張り後に、駆動側プラー16aが連続紙7との間で滑りが生じないようにする手段37,40,41,43を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば連続紙(以下、単に用紙と略記する)などの連続した長尺の被記録媒体を使用するレーザビームプリンタなどの画像形成装置に係り、特にそれに用いる定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の定着装置としては、表面に未定着のトナー像を担持した用紙を吸引することによって密着させて予熱する加熱手段を有するプレヒータと、加熱ローラと加圧ローラの間で用紙を挟持して搬送しながら加熱・加圧して、トナー像を用紙に定着させ、その用紙を後方に搬送するプラーを備えた定着装置が知られている。
【0003】
前記プレヒータおよび加熱ローラの内部には熱源として複数本のシーズヒータ、ヒータランプなどの加熱手段が設置され、一般に印刷速度の速い画像形成装置や高連量用紙をサポートしている画像形成装置になればなるほど、トナー像の定着に必要な熱容量が増すために、プレヒータおよび加熱ローラは高温にしなければならない。
【0004】
特に用紙で両面印刷をする場合、片面印刷の画像形成装置を2台設置して、1台目の画像形成装置で表面印刷を行い、反転装置で用紙を裏返した後、2台目の画像形成装置で裏面印刷を行う際には、1台目の画像形成装置で印刷された用紙の表面がプレヒータ面に接することになる。
【0005】
高連量用紙(厚紙)の場合では、このプレヒータの温度も高くすることから、印刷停止時などの過渡的な温度変化が生じる時はさらにプレヒータの温度は高温になる場合がある。このようなことから、1台目の画像形成装置で印刷した面のトナーが2台目画像形成装置のプレヒータの表面に融着して、プレヒータが汚れたり、また、このプレヒータの汚れが冷えないまま後方の駆動側プラーに付着して、プラーが汚れる場合もある。
【0006】
この駆動側プラーに汚れが発生すると、予め印刷開始前に行なうプレヒータとプラーの間の用紙の弛み取りをこのプラーで行うため、プラーの汚れによって用紙も汚れてしまう。これは、プラーにより用紙を張った後に用紙は停止したままの状態になるが、駆動側プラーは駆動力が高いままであるため用紙を擦り、駆動側プラーの汚れを用紙の一定箇所に局部的に擦り付けてしまい、印刷品質を損ねるという不具合が発生する。
【0007】
この両面印刷は、折り畳み用のミシン目が入ったボックス紙を使用して印刷する場合は、1台目の画像形成装置で表面印刷を行った後、スタッカからボックス紙を取り出して、その後に裏面印刷を行う場合もあることから、単独の画像形成装置でもプラー汚れにより画像品質を損ねる場合があり、その対策が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の画像形成装置は、高印刷速度、低コスト、高画質、様々な種類の用紙への対応が求められており、定着装置においては、より高温での対応、処理能力が求められ、特に高連量用紙(厚紙)での定着強度の向上要求は強い。このような状況下において、前述したプラー汚れによる印刷品質の低下は、避けなければならない課題である。
【0009】
下記特許文献1には、カット紙を排出するシート排出機構において、排出ローラにバネが設けられ、このバネがトルクリミッターの機能を果たしている。これは、シート排出時にローラ体とフランジ部とが回転軸と一体になって回転するとともに、排出シートでジャムなどが発生した場合など駆動ローラに所定値以上の負荷が加えられたときには、前記ローラ体とバネにより付勢されたフランジ部の接合面と、あるいは係止爪と溝部とがスリップしてローラ体およびフランジ部の回転が停止するもので、排出ローラとシート排出口との隙間への異物の挟み込み防止と、ジャム紙の除去を容易にしたものであり、前記バネの付勢力は一定である。また、後述する本発明のように、用紙を吸引したプレヒータとプラーとの間に生じる用紙の弛み除去を行うものではない。
【0010】
下記特許文献2に開示されている給紙装置では、給紙ローラの端部にバネが設けられており、給紙ローラの回転軸の回転を停止させるタイミングが多少早くなっても、前記バネによってレジストローラとのタイミング調整ができるようになっており、レジストローラの給紙不良を回避しようとするものであるが、バネ力は一定になっている。
【0011】
下記特許文献3に開示されている給紙装置では、2分割できる搬送ローラが用いられており、長期間使用した搬送ローラに変形、変質、破損などが生じた場合に、この搬送ローラを分割して取り出すことによって、搬送ローラの取り出しならびに装着が簡単かつ迅速にできるようにしたものである。後述する本発明のように、特定の負荷でローラが停止するものではなく、また、段階的に駆動力が伝達する機構でもない。
また特許文献1〜3の装置は、いずれもカット紙使用の装置であって、後述する本発明のように、連続した長尺状被記録媒体を使用するものではない。
【0012】
本発明の目的は、印刷開始直前の連続した長尺状被記録媒体の弛みを無くすために、プラーにより長尺状被記録媒体を張るが、この際に生じる駆動側プラー汚れの被記録媒体への転移を抑制して、印刷品質の向上が図れる定着装置ならびにそれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明は、
例えば連続紙などの連続した長尺状の被記録媒体を吸引することにより表面に密着させる例えば後述のサクションプレート、サクションホース、サクションボックス、サクションブロアなどからなる密着手段、およびその被記録媒体を予熱する加熱手段を有するプレヒータと、
そのプレヒータの被記録媒体搬送方向下流側に配置されて、加熱手段を内蔵した加熱ローラ、およびその加熱ローラに対して離接可能に設けられた加圧ローラからなる定着ローラと、
その定着ローラの被記録媒体搬送方向下流側に配置されて、駆動側プラーと従動側プラーからなるプラーを備え、
トナー像を担持した前記被記録媒体を前記プレヒータの表面から加熱ローラと加圧ローラの間を通すことによりトナー像を被記録媒体に定着し、
前記プラーにより、印刷開始前に前記プレヒータと前記プラーの間の被記録媒体の弛みをとる被記録媒体張りを行い、印刷時に前記被記録媒体を前記駆動側プラーと従動側プラーの間で挟持して搬送する定着装置を対象とするものである。
【0014】
そして、前記印刷開始前でかつ被記録媒体張り後に、前記駆動側プラーが前記被記録媒体との間で滑りが生じないようにする例えば後述のコイルバネ、ソレノイド、制御部などからなる手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は前述のような構成になっており、駆動側プラー汚れの被記録媒体への転移を抑制して、印刷品質の向上が図れる定着装置ならびにそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係るプラー部の拡大平面図である。
【図2】そのプラー部を備えた定着装置の概略構成図である。
【図3】本実施例におけるプラーコイルバネの押付力とプラー張力との関係を示す特性図である。
【図4】本実施例における印刷開始前から印刷終了後までの駆動側プラーの負荷許容レベル、ならびに駆動側プラーモータ、ソレノイド駆動、用紙送り信号のオン/オフ状態を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施例に係るレーザビームプリンタの全体構成を説明するための概略構成図である。
【図6】2台のレーザープリンタで両面印刷する場合のシステム構成を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図とともに説明する。
(レーザビームプリンタの概略構成)
図5は、本発明の実施例に係る電子写真方式のレーザビームプリンタの全体的な構成を説明するための概略構成図である。
【0018】
同図において1はレーザビームプリンタであり、そのコントローラ22からの印刷動作開始信号に基づいて感光体ドラム21が矢印方向に回転する。感光体ドラム21はレーザビームプリンタ1の印刷速度に相当する速度で回転し、印刷動作が終了するまで回転を続ける。感光体ドラム21が回転を開始すると、コロナ帯電器2に高電圧が印加され、感光体ドラム21の表面に例えば正の電荷が均一に帯電される。
【0019】
回転多面鏡3は、レーザビームプリンタ1に電源が投入されると直ちに回転を開始し、電源が投入されている間、高精度に定速回転が維持される。半導体レーザからなる光源4から出力されたレーザビームは、回転多面鏡3で反射し、fθレンズ5を通じて感光体ドラム21を走査しながら照射する。ドットイメージに変換された文字データや画像データがレーザビームのオン/オフ信号としてコントローラ22からレーザビームプリンタ1に送られると、感光体ドラム21の表面にレーザビームが照射される部分と照射されない部分とが形成され、所謂、静電潜像が形成される。
【0020】
この静電潜像を保持した感光体ドラム21の領域が現像装置6と対向する位置に到達すると、静電潜像にトナーが供給され、前述のレーザビームの照射により感光体ドラム21上の電荷が消失した部分が、例えば正電荷に帯電したトナーが静電気により吸引されて、感光体ドラム21上にトナー像が形成される。
【0021】
用紙ホッパー11に収納されている長尺状の連続紙7は、用紙搬送トラクタ8によって感光体ドラム21上に形成されたトナー像が転写位置に到達するタイミングに合わせて、感光体ドラム21と転写器10の間に向けて搬送される。感光体ドラム21上に形成されたトナー像は、用紙7の背面側にトナー像と逆極性の電荷を付与する転写器10の作用によって用紙7上に吸引される。
用紙7は、上流側の用紙搬送トラクタ8、転写器10、下流側の用紙搬送トラクタ9およびバッファプレート24を経て、定着装置12に搬送される。
【0022】
定着装置12に到着した用紙7は、内部に複数本のヒータ46(図2参照)を有するプレヒータ13で予熱された後、内部に複数本のヒータランプ25を有する加熱ローラ14と加圧ローラ15とからなる一対の定着ローラによって形成されるニップ部により加熱・加圧されながら挟持・搬送され、トナー像が用紙7に溶融定着される。
【0023】
加熱ローラ14と加圧ローラ15によって送り出された用紙7は、用紙送り出しローラであるプラー16によってスタッカテーブル19側へ送り出され、ミシン目入りの用紙7はスイングフィン17の揺動動作によってミシン目に沿って交互に折り分けられ、さらに、回転するパドル18で折り畳み状態が整えられながら、スタッカテーブル19上に積み重ねられる。
【0024】
感光体ドラム21で転写位置を通過した領域は清掃装置20で清掃され、次の印刷動作に備えられる。
図中の符号23は、印刷動作中のレーザビームプリンタ1の状態に基づく情報を表示する表示画面である。また、符号26は、加熱ローラ14の表面に接触可能で、かつ巻き取り可能に設けられたウェブ部材で、加熱ローラ14の表面への離型剤や潤滑油の塗布を行なうためのものである。
【0025】
このようにして表面印刷を行った後、前記スタッカテーブル19から表面印刷済みの用紙7を取り出し、それを用紙ホッパー11にセットし、再びこのレーザビームプリンタ1を用いて裏面印刷を行う。
【0026】
(定着装置の概略構成)
次に図2を用いて定着装置12の概略構成について説明する。
前述のように静電転写によりトナー像が担持された用紙7は、プレヒータ13上を通過することで予熱され、加熱ローラ14と加圧ローラ15の間のニップ部を通過することにより加熱・加圧されながら挟持・搬送され、トナー像が用紙7に定着される。図中の矢印Xは用紙7の搬送方向を示している。
【0027】
プレヒータ13には、複数本のサクションホース29を介してフィルタ入りのサクションボックス30ならびにサクションブロア33が接続されている。印刷待機時や印刷時は、サクションホース29、サクションボックス30ならびにサクションブロア33により、用紙7をプレヒータ13上に吸引している。サクションブロア33の動作は、コントローラ32によって制御されている。
【0028】
加圧ローラ15と、プレヒータ13と、そのプレヒータ13の用紙搬送方向上流側に配置されているサクションプレート27は一体に連結されており、この一体物はサクションプレート27の揺動軸28を支点として揺動ベース(図示せず)により矢印31の方向に揺動可能になっている。
【0029】
実線で示しているように印刷待機時(非印刷時)には、加圧ローラ15はプレヒータ13とともに加熱ローラ14から離れた位置に待機している。印刷開始前には、退避時などでプレヒータ13とプラー16の間で弛んだ用紙7の弛みをとり、印刷開始とともに加圧ローラ15は加熱ローラ14に圧接するようになっている。図中の点線は、印刷時の状態を示している。
【0030】
(プラー部付近の概略構成)
次に図1を用いてプラー部付近の概略構成について説明する。
図2に示すように用紙送り出しローラであるプラー16は、駆動側プラー16aと従動側プラー16bで構成されている。前記駆動側プラー16aは、複数のスリーブ36と、外周部にゴム層を有する複数のゴムローラ39とから構成され、図に示すようにスリーブ36とゴムローラ39は交互に配置されている。それぞれのスリーブ36とゴムローラ39の間は機械的に連結されておらず、単に接触しているだけである。ゴムローラ39の外径は、スリーブ36の外径よりも大きく設計されている。
【0031】
各スリーブ36は、用紙7の幅方向に配置された1本の駆動シャフト34の略全長にわたって形成された溝35に嵌合して、駆動シャフト34の軸方向に沿って変位可能になっており、駆動シャフト34と共に回転する。スリーブ36はプラーコイルバネ37により押付方向38に押し付けられ、スリーブ36の側面が隣のゴムローラ39の側面に圧接することにより、ゴムローラ39への動力伝達が行なわれてゴムローラ39が回転する。従って、ゴムローラ39の内径は駆動シャフト34の外径よりも若干大径になっており、ゴムローラ39は駆動シャフト34に遊嵌されている。同図に示すように、各ゴムローラ39に対向して前記従動側プラー16bが回転自在に軸支されている。用紙7は、従動側プラー16bとゴムローラ39の間で挟持されている。
【0032】
プラーコイルバネ37のスリーブ36とは反対側の端部にはストッパ40が連結され、ストッパ40はベアリング(図示せず)を介して駆動シャフト34に支持されている。ストッパ40の位置が変更できるようにストッパ40にはソレノイド41が接続しており、ソレノイド41のオン/オフ制御するための制御部43が設けられている。
【0033】
本実施例では、プラーコイルバネ37によるスリーブ36への押付力を下げるときにソレノイド41に通電して(オンして)、ストッパ40をソレノイド41側に引き寄せる構成になっている。矢印42はストッパ40をソレノイド41側に引き寄せる方向を示している。このようにソレノイド41によりストッパ40の位置を変更することにより、プラーコイルバネ37によるスリーブ36への押付力を調整することができ、それによってプラー張力すなわち用紙7の搬送力が制御可能となる。
【0034】
図中の符号44は、駆動シャフト34に固定された抜け止めリングである。
【0035】
図3は、そのプラーコイルバネ37の押付力Fとプラー張力T(用紙7の搬送力)との関係を示す特性図である。
プラーコイルバネ37の押付力を種々変えてそのときのプラー張力Tを測定し、図に示すようにその測定値をプロットして、プラーコイルバネ37の押付力Fとプラー張力Tの関係を求めた。その結果、プラーコイルバネ37の押付力Fにより、プラー16はプラー駆動領域、プラー駆動/空転共存領域、プラー空転領域の3つの領域があることが分かった。
【0036】
プラーコイルバネ37のスリーブ36への押付力が従来設定位置のように高い場合、スリーブ36の側面がゴムローラ39の側面に強く接触しており、スリーブ36に対してゴムローラ39は空転せず、印刷開始前の用紙張り時にゴムローラ39の汚れを用紙7側に転移させてしまう。
【0037】
このプラーコイルバネ37のスリーブ36への押付力が従来の約半分程度で低い場合は、スリーブ36の側面がゴムローラ39の側面に弱く接触するため、スリーブ36とゴムローラ39の間で滑りが生じ、スリーブ36に対してゴムローラ39は空転し、印刷開始前の用紙張り時にゴムローラ39の汚れを用紙7側に転移させることはない。
【0038】
そのために本発明では、印刷開始直前にソレノイド41によりプラーコイルバネ37のストッパ40の位置を変え、すなわちストッパ40をソレノイド41側に引き寄せ、プラーコイルバネ37のスリーブ36への押付力が従来の約半分以下になるように制御している。印刷開始直前のプラーコイルバネ37の押付力設定位置を図3中に示しており、この設定によりプラー16aを確実に空転させることができる。
【0039】
図4は、印刷開始前から印刷終了後までの駆動側プラーの負荷許容レベル、ならびに駆動側プラーモータ、ソレノイド駆動、用紙送り信号のオン/オフ状態を示すタイミングチャートである。
【0040】
同図に示すように、ソレノイド41をオン駆動してプラーコイルバネ37による押付力を下げ、駆動側プラー16aの負荷許容レベルをHighからLowに下げておいて、駆動側プラー16aの駆動モータをオンして、用紙7の弛み取りを行う。
【0041】
その後、用紙送り信号のオンで印刷が開始されると同時に、ソレノイド41をオフしてプラーコイルバネ37による押付力を上げ、駆動側プラー16aの負荷許容レベルをLowからHighに上げて、用紙7への搬送力を増やし、印刷を開始する。
【0042】
本実施例では、印刷停止時にも駆動側プラー16aによる印刷汚れも考えられるため、印刷停止時にも同様の動作を行っている。
すなわち印刷停止時は、用紙送り信号のオフで印刷が停止されると同時に、ソレノイド41をオン駆動してプラーコイルバネ37による押付力を下げ、駆動側プラー16aの負荷許容レベルをHighからLowに下げて用紙7への搬送力を減らし、駆動側プラー16aの駆動モータをオフした後、ソレノイド41をオフする。このようにすることにより、駆動側プラー16aの用紙7への擦りは無くなり、印刷汚れは発生しなくなる。
【0043】
なお、用紙7の弛み取り状態を保持する意味で、駆動側プラー16aの駆動シャフト34の逆転防止手段としてワンウェイクラッチなどを組み込んでおいた方がよい。
【0044】
印刷開始前の用紙弛みをとる際の用紙搬送力は、用紙7の弛みをとるだけであるから、駆動側プラー16aの搬送力はLowレベルで十分である。この搬送力は、駆動側プラー16aが空転しだすプラーコイルバネ37の押付力で設計したとしても、一般のバネの製作精度誤差は10%あることと、スリーブ36の側面とゴムローラ39の側面との面接触状態、表面物性のばらつきや変化を考慮すると、押付力を変更しない精度の高い設計は難しく、その意味で図3には駆動側プラー16aの駆動と空転の双方が存在する領域が、駆動領域と空転領域との間にあるので、空転領域のLowレベルは、駆動側プラー16aがマージンをもって空転することが望ましい。
本実施例では、印刷開始前の用紙張り時は、プラーコイルバネ37の押付力を印刷時の押付力の略半分のLowレベル以下として、駆動側プラー16aの駆動力を下げ、用紙7の搬送力(プラー張力)も印刷時の略半分としている。
【0045】
(2台のレーザープリンタで両面印刷をするシステム構成)
図6は、2台の片面印刷のレーザープリンタ1a,1bを使い、用紙7に両面印刷する場合のシステム構成を示した概略構成図である。
【0046】
レーザープリンタ1a,1bの構成や動作などは図5で説明したレーザープリンタ1と略同じなので、重複する説明は省略する。2台のレーザープリンタ1a,1bの中間に反転装置であるターンバー45が配置されている。用紙7の搬送方向上流側に配置されている1台目のレーザープリンタ1aで用紙7の表側に印刷が施され、その印刷された用紙部分がターンバー45を通過するときに表裏が反転され、2台目のレーザープリンタ1bで用紙7の裏側に印刷が施される。
【0047】
この実施例では用紙7にミシン目が入ったボックス紙を使用しているが、ロール紙を使用することもできる。この場合、1台目のレーザープリンタ1aの前にロール紙用の前処理機(アンワインダー)を配置し、2台目のレーザープリンタ1bの後にロール紙用の後処理機(リワインダー)を配置して印刷することが多い。
【0048】
この実施例のように、2台のレーザープリンタを使い、用紙に両面印刷する場合での2台目側プラー汚れに基づく印刷品質の低下を防止することができる。
【0049】
また、図5の実施例のように1台のレーザープリンタのみでの両面印刷や、裏面にプレプリントがある圧着はがきなどのプレプリントインキの乾きが悪い用紙の場合でも、プラー部での汚れによる印刷品質を損ねることがあるが、本発明はそのような場合にも適用でき、印刷品質の向上が図れる。
【0050】
従来の定着装置では、印刷開始前の用紙張り時も印刷時と同じプラー駆動力となっており、用紙張り時は超過した駆動力であるため、用紙を張った後も駆動側プラーが駆動して、停止している用紙と駆動側プラーが擦れ、駆動側プラーの汚れが用紙側の一定箇所に集中して転移し、印刷品質を損ねることがあった。本発明はこのような欠点を解消して、印刷品質の向上が図れる。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、1b:レーザビームプリンタ、
7:連続用紙(被記録媒体)、
12:定着装置、
13:プレヒータ、
14:加熱ローラ、
15:加圧ローラ、
16:プラー、
16a:駆動側プラー、
16b:従動側プラー、
27:サクションプレート、
29:サクションホース、
30:サクションボックス、
33:サクションブロア、
34:駆動シャフト、
35:溝、
36:スリーブ、
37:コイルバネ、
39:ゴムローラ、
40:ストッパ、
41:ソレノイド、
43:制御部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2008−230799号公報
【特許文献2】特開2003−72965号公報
【特許文献3】特開昭60−61435号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した長尺状の被記録媒体を吸引することにより表面に密着させる密着手段、およびその被記録媒体を予熱する加熱手段を有するプレヒータと、
そのプレヒータの被記録媒体搬送方向下流側に配置されて、加熱手段を内蔵した加熱ローラ、およびその加熱ローラに対して離接可能に設けられた加圧ローラからなる定着ローラと、
その定着ローラの被記録媒体搬送方向下流側に配置されて、駆動側プラーと従動側プラーからなるプラーを備え、
トナー像を担持した前記被記録媒体を前記プレヒータの表面から加熱ローラと加圧ローラの間を通すことによりトナー像を被記録媒体に定着し、
前記プラーにより、印刷開始前に前記プレヒータと前記プラーの間の被記録媒体の弛みをとる被記録媒体張りを行い、印刷時に前記被記録媒体を前記駆動側プラーと従動側プラーの間で挟持して搬送する定着装置において、
前記印刷開始前でかつ被記録媒体張り後に、前記駆動側プラーが前記被記録媒体との間で滑りが生じないようにする手段を設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記駆動側プラーは、
前記被記録媒体の幅方向に配置された駆動シャフトと、
その駆動シャフトと一体に回転し、かつ、前記駆動シャフトの軸方向に変位可能なスリーブと、
そのスリーブの側面が側面に押し付けられて、前記駆動シャフトの駆動力が前記スリーブを介して伝達されるゴムローラを備え、
前記被記録媒体張り後に駆動側プラーが被記録媒体との間で滑りが生じないようにする手段は、
前記スリーブの側面をゴムローラの側面に押し付けるためのコイルバネと、
そのコイルバネの押付力を印刷時の押付力よりも低い押付力に変更できる押付力変更手段を備えていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の定着装置において、
前記押付力変更手段が、
前記コイルバネの前記スリーブとは反対側の端部に接続されたストッパと、
そのストッパの位置を前記駆動シャフトの軸方向に沿って変更するためのソレノイドと、
そのソレノイドのオン/オフ制御を行なう制御部を備えていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の定着装置において、
前記駆動シャフト上に前記スリーブと前記ゴムローラが交互に複数配置されており、各ゴムローラと対向するように前記従動側プラーが配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114077(P2013−114077A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260833(P2011−260833)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】