説明

定着装置及びそれを用いた画像形成装置

【課題】転写材上の液体現像剤像を定着強度ムラ、光沢ムラの発生を防止して定着する定着装置とそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】定着装置において、転写手段により液体現像剤像が転写された転写材を熱定着する第1の定着ローラと、前記第1の定着ローラにより定着された転写材を熱定着する第2の定着ローラと、を有し、前記第1の定着ローラ、前記第2の定着ローラのそれぞれの平均表面粗さをRz1、Rz2としたとき、Rz1>Rz2の関係を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写材に転写された液体現像剤像を加熱定着する定着装置とそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転写材上に転写された液体現像剤像を熱定着するための定着装置として、転写材搬送方向の上流側から下流側方向に順に、溶媒析出手段としてのプレ加熱部、キャリア除去手段としてのキャリア除去部、加熱定着手段としての加熱定着部を配した定着装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−167456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術の定着装置においては、プレ加熱手段の表層がフッ素コート系、PVFEコートなどの表面エネルギーの低い材料で形成されているため、ムラ状にキャリアが噴出し、キャリア浸透量にムラを生じ、加熱定着部を通過後に定着強度ムラ、または、光沢ムラが発生する場合がある。
【0004】
また、従来技術の定着装置においては、加熱定着部の表層がフッ化シリコーンゴム、RTVシリコーンゴム、ポリ4フッ化エチレン等の表面エネルギーの低い材料で形成されているため、加熱定着手段の表層とトナー層の間、または、トナー層中のキャリア存在量にムラが生じ、キャリア多量部分は高熱伝導率で定着強度が高く高光沢となり、キャリア少量部分は含有空気のため低熱伝導率で定着強度が低く低光沢というように、定着強度ムラ、光沢ムラが発生する場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、転写材上の液体現像剤像を定着強度ムラ、光沢ムラの発生を防止して定着する定着装置とそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、定着装置において、転写手段により液体現像剤像が転写された転写材を熱定着する第1の定着ローラと、前記第1の定着ローラにより定着された転写材を熱定着する第2の定着ローラと、を有し、前記第1の定着ローラ、前記第2の定着ローラのそれぞれの平均表面粗さをRz1、Rz2としたとき、Rz1>Rz2の関係を有することを特徴とする。噴出キャリアは平均表面粗さの大きい第1の定着ローラの凹部に集まり分断され、分断された状態の噴出キャリアは、平均表面粗さの小さい第2の定着ローラで転写材に浸透し、トナー層に含まれるキャリア量はより均一化し、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生を低減することができる。
【0007】
本第2発明は、本第1発明の定着装置において、前記第2の定着ローラの平均表面粗さを液体現像剤の固形分トナーの平均粒子径より小さくしたものである。トナー厚がつぶれてトナー層表面粗さが小さくなってもトナー層表面全体に均一な圧力がかかり、熱伝達が均一化するので、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生をより低減することができる。
【0008】
本第3発明は、本第1または第2発明の定着装置において、前記第1の定着ローラの平均表面粗さを液体現像剤の固形分トナーの平均粒子径より大きくしたものである。第1の定着ローラの表層の凹部が噴出キャリアをすっぽり包んで溢れることが低減され、噴出キャリアの分断、細分化がより確実になり、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生をより低減することができる。
【0009】
本第4発明は、本第1〜第3発明のいずれかの定着装置において、前記第1の定着ローラにキャリア吸収部材を当接させたものである。第1の定着ローラの表層に付着、残留しているキャリアが除去されるので、第1の定着ローラの表層の凹部による噴出キャリアの分断、細分化がより確実になり、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生をより低減することができる。
【0010】
本第5発明は、本第4発明の定着装置において、前記キャリア吸収部材をパッドまたはローラとしたものである。第1の定着ローラの表層に付着、残留しているキャリアが除去されるので、第1の定着ローラの表層の凹部による噴出キャリアの分断、細分化がより確実になり、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生をより低減することができる。
【0011】
本第6発明は、本第1〜第5発明のいずれかの定着装置において、前記第2の定着ローラにブレードを当接させたものである。第2の定着ローラの表層に付着、残留しているキャリア量ムラが均一化され、第2の定着ローラニップ内におけるトナー層に含有するキャリア量がより均一化し、熱伝達が均一化し、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生をより低減することができる。
【0012】
本第7発明は、画像形成装置において、回転可能に設けられかつ静電潜像が形成される潜像担持体と、前記静電潜像を液体現像剤で現像して前記潜像担持体上に液体現像剤像を形成する現像装置と、前記潜像担持体上の液体現像剤像を中間転写ベルトに転写する一次転写装置と、前記中間転写ベルト上の液体現像剤像を転写材に転写する二次転写装置と、転写材上の液体現像剤像を定着する定着装置と、を少なくとも備え、前記定着装置として、本第1〜第6発明のいずれかの転写装置を搭載し、かつ、前記中間転写ベルトの平均表面粗さをRz3、前記第1の定着ローラの平均表面粗さRz1の関係をRz1>Rz3としたことを特徴とする。二次転写の際にキャリア層の泣き別れがより均一化し、二次転写後の転写材上のトナー層含有キャリア量が均一化し、第1の定着ローラ通過時のムラ状キャリア噴出のムラを低減でき、第1の定着ローラ表層の凹部が噴出キャリアをすっぽり包んで溢れることが低減され、噴出キャリアの分断、細分化がより確実になり、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生をより低減することができる。
【0013】
本第8発明は、本第7発明の画像形成装置において、前記転写材の平均表面粗さRz4と第1の定着ローラの平均表面粗さRz1の関係をRz1>Rz4としたものである。二次転写における転写電界が液体現像剤層により均一にかかり、二次転写の際にキャリア層の泣き別れがより均一化し、二次転写後の転写材上のトナー層含有キャリア量が均一化し、第1の定着ローラ通過時のムラ状キャリア噴出のムラを低減でき、第1の定着ローラ表層の凹部が噴出キャリアをすっぽり包んで溢れることが低減され、噴出キャリアの分断、細分化がより確実になり、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生をより低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を模式的にかつ部分的に示す図である。
【0015】
図1に示すように、この例の画像形成装置は、タンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の潜像担持体である感光体200Y,200M,200C,200Kを備えている。ここで、各感光体200Y,200M,200C,200Kにおいて、200Yはイエローの感光体、200Mはマゼンタの感光体、2C00はシアンの感光体、200Kはブラックの感光体を表す。また、他の部材についても同じように、部材の符号にそれぞれ各色のY,M,C,Kを添えて各色の部材を表す。各感光体200Y,200M,200C,200Kは、図1に示す例ではいずれも、感光体ドラムから構成されている。画像形成ステーションの構成は同様であるので、以下、イエロー画像形成ステーションについて説明する。
【0016】
感光体200Yは、作動時に図1に矢印aで示すように時計回りに回転するようにされている。感光体200Yの周囲には、それぞれ、それらの回転方向上流側から順に、帯電部材300Y、露光装置400Y、現像装置180Y、感光体スクイーズ装置360Y、一次転写装置390Y、除電装置800Yが配されている。
【0017】
また、画像形成装置は、中間転写媒体である無端状の中間転写ベルト100を備えている。この中間転写ベルト100は図示しないモータの駆動力が伝達される駆動ローラ162および従動ローラ492に張架されて図1において矢印bに示される反時計回りに回転可能に設けられている。また、駆動ローラ162と従動ローラ492は互いに各感光体200(Y,M,C,K)のタンデム配置方向に沿って離間して配設されている。更に、中間転写ベルト100は従動ローラ492に所定のテンションが付与されて、たるみが除去されるようになっている。
【0018】
一次転写装置390Yより中間転写ベルト100の回転方向下流側の一次転写装置390Yの近傍には、中間転写ベルトスクイーズ装置110Yが配設されている。更に、中間転写ベルト100のベルト駆動ローラ162側には二次転写装置160が設けられ、また中間転写ベルト100の従動ローラ492側には中間転写ベルトクリーニング装置490が設けられている。
【0019】
なお、図示しないが、この例の画像形成装置は、二次転写を行う従来の一般的な画像形成装置と同様に、二次転写装置160より用紙搬送方向上流側に例えば紙等の用紙を収納する用紙収納装置と、この用紙収納装置からの用紙を二次転写装置160へ搬送供給するレジストローラ対とを備えている。また、この画像形成装置は、二次転写装置160より用紙搬送方向下流側に定着装置500および排紙トレイを備えている。
【0020】
帯電部材300Yは、図示しない電源装置から液体現像剤の帯電極性と同極性のバイアスがそれぞれ印加される。そして、帯電部材300Yは、感光体200Yを帯電するようになっている。また、露光装置400Yは、それぞれ、帯電された感光体200Y上に、例えばレーザ走査光学系等からレーザ光を照射することによって静電潜像を形成するようになっている。
【0021】
現像装置180Yは、現像剤供給部と、現像ローラ184Yと、トナー帯電用コロナ帯電器186Yを備えている。
【0022】
現像剤供給部は、トナー粒子および不揮発性液体キャリアからなる液体現像剤を収納する現像剤容器と、攪拌ローラ182Yと、アニロクスローラ183Yと、現像剤規制ブレード185Yとを備えている。
【0023】
現像剤容器内に収納される液体現像剤において、トナーとしては、トナーに使用される公知の熱可塑性樹脂中へ同じく公知の顔料等の着色剤を分散させた例えば平均粒径1〜10μmの粒子を用いることができる。液体キャリアとして、高粘性高濃度の液体現像剤の場合は、例えば、シリコーンオイル、鉱物油など、トナーの帯電を逃がさない絶縁油であればどのようなものを使用しても良い。
【0024】
攪拌ローラ182Yは、現像剤容器内の液体現像剤を均一に攪拌しアニロクスローラ183Yに供給するローラである。アニロクスローラ183Yは、円筒状の部材で表面に微細かつ一様に螺旋状の溝を形成したローラである。溝の寸法は、例えば、溝ピッチが約170μm、溝深さが約30μmに設定される。もちろん、溝の寸法はこれらの値に限定されることはない。アニロクスローラ183Yは、現像ローラ184Yと同じ方向で図1において矢印で示す反時計まわりに回転するようにされている。なお、アニロクスローラ183Yは、現像ローラ184Yと連れ回りで回転するようにすることもできる。すなわち、アニロクスローラ183Yの回転方向は、限定されず任意である。
【0025】
現像剤規制ブレード185Yは、それぞれ、アニロクスローラ183Yの表面に当接して設けられている。現像剤規制ブレード185Yは、アニロクスローラ183Yの表面に当接する、ウレタンゴム等からなるゴム部と、このゴム部を支持する金属等の板とから構成されている。そして、現像剤規制ブレード185Yは、アニロクスローラ183Yの溝部以外の表面に付着する液体現像剤をゴム部で掻き落として除去する。したがって、アニロクスローラ183Yは、溝部内に付着する液体現像剤のみを現像ローラ184Yに供給するようになっている。
【0026】
現像ローラ184Yは、例えば鉄等金属シャフトの外周部に、導電性ウレタンゴム等の弾性体と樹脂層やゴム層を備えたものである。現像ローラ184Yは感光体200Yに当接され、かつ図1において矢印で示すように反時計まわりに回転するようにされている。
【0027】
トナー帯電用コロナ帯電器186Yは、電圧を印加されて、固形分トナー粒子のプラス帯電促進、及び現像ローラ184Y上に固形分トナー粒子を押し付ける機能を有する。
【0028】
感光体スクイーズ装置360Yは、感光体200Yと現像ローラ184Yとの当接部(ニップ部)より感光体200Yの回転方向下流側に設置されている。そして、感光体スクイーズ装置360Yは、感光体200Y上の液体キャリアを除去するようになっている。
【0029】
一次転写装置390Yは、中間転写ベルト100を感光体200Yに当接させる一次転写用のバックアップローラを備えている。バックアップローラは、トナー粒子の帯電極性と逆極性の例えば約−200Vが印加されて、感光体200Y上のイエローナー像(液体現像剤像)を中間転写ベルト100に一次転写する。
【0030】
除電装置800Yは、矢印方向に光照射を行い、感光体200Yの残留電荷を除去する。
【0031】
中間転写ベルトスクイーズ装置110Yは、中間転写ベルトスクイーズローラ112Yに、中間転写ベルト100を介してバックアップローラ111Yが当接した構成であり、中間転写ベルトスクイーズローラ112Yに固形分トナーと同極性のバイアスを印加し、固形分トナーを中間転写ベルト100に押し付ける仕組みになっている。中間転写ベルトスクイーズローラ112Yに付着したキャリアを不図示のブレードで掻き取り、キャリア分は回収し、不図示の装置でトナー貯留槽181Yに戻す。
【0032】
Y、M、C、K色毎に順次一次転写を実施し、中間転写ベルト100上にフルカラーの液体現像剤像を形成する。
【0033】
図示しない給紙カセットから用紙が給紙され、矢印c方向へ二次転写装置160に突入し、フルカラーの液体現像剤像が中間転写ベルト100から用紙に転写される。
【0034】
二次転写後の中間転写ベルト100をクリーニングするために、従動ローラ492側に中間転写ベルトクリーニング装置490が配置される。中間転写ベルトクリーニングローラ491が中間転写ベルト100を介して従動ローラ492に当接する。中間転写ベルトクリーニングローラ491には、バイアスが印加され、中間転写ベルト100上の残留トナーを静電吸着により除去する。
【0035】
矢印d方向に排出された用紙上のフルカラーの液体現像剤像は定着装置500を通過して、矢印f方向に定着、排出される。
【0036】
図2は、本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態を模式的にかつ部分的に示す図である。この実施形態は、図1に示される画像形成装置と二次転写装置160の構成のみが相違するので、構成の異なる二次転写装置160の構成についてだけ説明する。
【0037】
中間転写ベルト100は、駆動ローラ162と従動ローラ164に巻き掛けられる。二次転写装置160は、第1二次転写ローラ161(−1.2kV印加)と、第2二次転写ローラ163(−1.2kV印加)と、テンションローラ165に巻き掛けられる無端状の転写材支持ベルト166を有する。第1二次転写ローラ161は、中間転写ベルト100、転写材支持メルト166を介して駆動ローラ162(接地)に当接し、第2二次転写ローラ163は、中間転写ベルト100、転写材支持メルト166を介して従動ローラ164(接地)に当接し、ロングニップを形成する。
【0038】
図3は、実施例1〜4に用いた定着装置500の概略を示す図である。定着装置500は、液体現像剤像1が転写された転写材2の搬送方向の上流側に配された第1定着ローラ501と、第1加圧ローラ511から構成される第1の定着手段と、その下流側に配された第2定着ローラ521と第2加圧ローラ531から構成される第2定着手段を有する。
【0039】
第1定着ローラ501(直径60mm、有効長さ330mm)は、第1定着ローラ芯金504(アルミ、2mm厚)に第1定着ローラ弾性層503(シリコーンゴム、2mm厚)、第1定着ローラ表層502(PFA、100um厚)が被覆され、第1定着ローラ芯金504内に第1定着ローラ加熱源505(ハロゲンランプ、700W)が配される。
【0040】
第1加圧ローラ511(直径60mm、有効長さ330mm)は、第1加圧ローラ芯金514(アルミ、2mm厚)に第1加圧ローラ弾性層513(シリコーンゴム、2mm厚)、第1加圧ローラ表層512(PFA、100um厚)が被覆され、第1加圧ローラ芯金514内に第1加圧ローラ加熱源515(ハロゲンランプ、300W)が配される。
【0041】
第2定着ローラ521(直径60mm、有効長さ330mm)は、第2定着ローラ芯金524(アルミ、2mm厚)に第2定着ローラ弾性層523(シリコーンゴム、2mm厚)、第2定着ローラ表層522(PFA、100um厚)が被覆され、第2定着ローラ芯金524内に第2定着ローラ加熱源525(ハロゲンランプ、700W)が配される。
【0042】
第2加圧ローラ531(直径60mm、有効長さ330mm)は、第2加圧ローラ芯金534(アルミ、2mm厚)に第2加圧ローラ弾性層513(シリコーンゴム、2mm厚)、第2加圧ローラ表層532(PFA、100um厚)が被覆され、第2加圧ローラ芯金534内に第2加圧ローラ加熱源535(ハロゲンランプ、300W)が配される。
【0043】
第1定着ローラ501に第1定着ローラ当接ローラ541(直径18mm)が当接する。第1定着ローラ当接ローラ541は、第1定着ローラ当接ローラシャフト543(ステンレス)に第1定着ローラ当接ローラ表層542(耐熱不織布、2mm厚)を被覆した。
【0044】
第2定着ローラ521に支持部材544に支持された第2定着ローラ当接ブレード545(ウレタンゴム、3mm厚、有効長325mm、圧接荷重4kg)を当接する。
【0045】
1は未定着トナー層、2は転写材である。矢印gは、転写材搬送方向で用紙搬送速度を200mm/sec、画像形成速度をA4横で50ppmとした。矢印H1は、第1定着ローラ501の回転方向、矢印H2は、第1加圧ローラ511の回転方向、矢印H3は、第2定着ローラ521の回転方向、矢印H4は、第2加圧ローラ531の回転方向、矢印kは、第1定着ローラ当接ローラ541の回転方向を示す。
【0046】
第1定着ローラ501と第1加圧ローラ511との圧接荷重を60kgとし、第2定着ローラ521と第2加圧ローラ531との圧接荷重を60kgとした。第1定着ローラ501、第1加圧ローラ511、第2定着ローラ521、第2加圧ローラ531の温度は不図示の温度センサにより検知され、それに基づいて、第1定着ローラ加熱源505、第1加圧ローラ加熱源515、第2定着ローラ加熱源525、第2加圧ローラ加熱源535がON/OFF制御される。各々の制御目標温度は、第1定着ローラ501が100℃、第1加圧ローラ511が80℃、第2定着ローラ521が160℃、第2加圧ローラ531
が100℃とした。
【0047】
図4は、実施例6に用いた定着装置の概略を示す図である。図3に示される定着装置が、第1定着ローラ501に第1定着ローラ当接ローラ541を当接し、第2定着ローラ521に第2定着ローラ当接ブレード545を当接させたのに対して、図4に示される定着装置では、第1定着ローラ501に第1定着ローラ当接パッド551を当接させた点以外の構成は同じなので、図3に示される定着装置と異なる構成のみを説明する。
【0048】
第1定着ローラ501に第1定着ローラ当接パッド551を当接する。第1定着ローラ当接パッド551は、パッド支持部材552(ステンレス)により支持される吸収パッド553(不織布)により構成される。
【0049】
図6、図7は、第1、第2定着ローラ、中間転写ベルトの表層材の平均表面粗さ、第1定着ローラへの当接部材の有無等の条件を変えた実施例1〜9と比較1、2の定着強度ムラ、光沢ムラの発生を測定したものである。
【0050】
画像形成装置としては、図1、図2に示される画像形成装置を用い、評価画像として、キャリア噴出による定着強度ムラ、光沢ムラは、トナー層に含まれるキャリア量が多く、かつ、キャリア浸透量の少ない紙が最も起きやすいので、3色べた画像をパールコート紙(三菱製紙製)にプリントしたものを用いた。
【0051】
定着強度ムラ、光沢ムラの測定方法としては、一般の光沢計は計測範囲が広く光沢ムラが平均化されてしまう。そこでOD値測定器を用いる。(グレタークマクベス社製、スペクトロアイは直径4.5mmの円内が計測範囲)
【0052】
光沢計もOD値測定器も照射光に対する特定方向の反射強度を測定している。定着強度
ムラ、光沢ムラが存在すると照射光が散乱され、反射光のばらつきが生じる。したがって、OD値にもばらつきが生じる。
【0053】
(1)サンプルの異なるn箇所のOD値:C1、C2、・・・Cnを測定する。
(2)OD値の平均値Ca=ΣCn/nを求める。
(3)OD値の平均値からのずれの自乗平均Vc=Σ(Cn−Ca)^2/nを求める。
(4)光沢ムラの指標=SN比と呼称、単位db
η=10×log(Ca^2/Vc)
定着強度ムラ、光沢ムラの目視判断(定着強度ムラはメディングテープ貼り付けてはがしたときにムラ状にトナーが取れる事で判断)とηはほぼ相関がとれ、ムラがひどいときはηが小さくなる。測定精度を上げるため、nは10以上を推奨する。
【0054】
液体現像剤は、粘度30〜2000m(Pa・s)の高粘度キャリアであるシリコーンオイル、鉱物油などトナーの帯電性を逃さない絶縁油中に固形分(帯電している)を分散させたものを使用した。液体現像剤のトナー粒子の粒径分布の測定は、マールバーン社製、マスターサイザー2000を使用して行って、体積平均粒径が3.4umのものを用いた。図5に体積平均粒径の測定結果を示す図である。
【0055】
平均表面粗さの測定は、ミツトヨ社製、SJ201を使用し、粗い表面はPFA平滑表面にブラスト加工により形成した。
【0056】
実施例1〜4の定着装置は、図3に示されるものを使用し、実施例5の定着装置は、図3から第2定着ローラ当接ブレード545を省いたものを使用し、実施例6の定着装置は、図4に示されるものを使用し、実施例7〜9、比較例1,2は、図4から第1定着ローラ当接パッドを省いたものを使用した。
【0057】
図8(a)(b)は、実施例1〜9の共通した作用効果を説明するための図である。図7(a)に示されるように、平均表面粗さの大きい第1定着ローラ表層502の凹部に噴出キャリアに集まり、分断、細分化される。図8(b)に示されるように、平均表面粗さの小さい第2定着ローラ表層522によりトナー層の表面粗さが小さくなり、分断、細分化された噴出キャリアが分断細分化されたまま転写材に浸透し、トナー層に含まれるキャリア量がより均一化し、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生を低減することができる。
【0058】
図9(a)(b)は、比較例1を説明するための図である。図9(a)に示されるように、第1定着ローラ表層502の平均表面粗さが小さいので、噴出キャリアは、第1定着ローラ表層502の凹部から溢れ出し、隣接噴出キャリアと表面張力で合体してmmオーダレベルの目立ちやすい海島を形成する。図9(b)に示されるように、第2定着ローラ表層522の平均表面粗さは小さいので、噴出キャリアはmmオーダレベルの目立ちやすい海島のまま転写材に浸透し、トナー層に含まれるキャリア量もmmオーダレベルの海島ムラができ、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生が増加する。
【0059】
図10(a)(b)は、比較例2を説明するための図である。図10(a)に示されるように、平均表面粗さの大きい第1定着ローラ表層502の凹部に噴出キャリアに集まり、分断、細分化される。図10(b)に示されるように、第2定着ローラ表層522の平均表面粗さは大きいので、第2定着ローラ表層522の凹部がトナー層表面に接触することができず、大きな空気隙間ができてしまうという現象や、第2定着ローラ表層522の凹部に噴出キャリアがすっぽり入ってしまう圧力がかからずキャリアが転写材に浸透しないため、トナー層含有キャリア量ムラが増大し、定着後のトナー層の定着強度ムラ、光沢ムラの発生が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10:画像形成装置、200(Y、M、C、K):感光体、400(Y、M、C、K):露光装置、300(Y、M、C、K):帯電部材、180(Y、M、C、K):現像装置、100:中間転写ベルト、160:二次転写装置、500:定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写手段により液体現像剤像が転写された転写材を熱定着する第1の定着ローラと、前記第1の定着ローラにより定着された転写材を熱定着する第2の定着ローラと、を有し、前記第1の定着ローラ、前記第2の定着ローラのそれぞれの平均表面粗さをRz1、Rz2としたとき、Rz1>Rz2の関係を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第2の定着ローラの平均表面粗さを液体現像剤の固形分トナーの平均粒子径より小さくした請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1の定着ローラの平均表面粗さを液体現像剤の固形分トナーの平均粒子径より大きくした請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第1の定着ローラにキャリア吸収部材を当接させた請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項5】
前記キャリア吸収部材をパッドまたはローラとした請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第2の定着ローラにブレードを当接させた請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項7】
回転可能に設けられかつ静電潜像が形成される潜像担持体と、前記静電潜像を液体現像剤で現像して前記潜像担持体上に液体現像剤像を形成する現像装置と、前記潜像担持体上の液体現像剤像を中間転写ベルトに転写する一次転写装置と、前記中間転写ベルト上の液体現像剤像を転写材に転写する二次転写装置と、転写材上の液体現像剤像を定着する定着装置と、を少なくとも備え、前記定着装置として、前記請求項1〜6のいずれか1つに記載の転写装置を搭載し、かつ、前記中間転写ベルトの平均表面粗さをRz3、第1の定着ローラの平均表面粗さRz1の関係をRz1>Rz3としたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記転写材の平均表面粗さRz4と第1の定着ローラの平均表面粗さRz1の関係をRz1>Rz4とした請求項7に記載の画像形成装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−198569(P2009−198569A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37353(P2008−37353)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】