説明

定着装置用のヒータ及びそれを備える定着装置と画像形成装置

【課題】定着装置の小型化を可能としつつ、突入電流を防止しながら、速やかに最高加熱出力に到達できる定着装置用のヒータを提供する。
【解決手段】印刷媒体に熱を供給するための定着装置用のヒータは、バルブと、負の抵抗温度係数と第1定格加熱出力を持ち、前記バルブ内で第1コイルを形成する第1発熱体と、正の抵抗温度係数と前記第1定格加熱出力より低い第2定格加熱出力を持ち、前記バルブ内に配置される第2発熱体とを含む。前記第2発熱体は、前記第1発熱体と隣接して配置されることにより、前記ヒータに電力が供給される初期段階で前記第2発熱体が前記第1発熱体を加熱して前記第1発熱体の抵抗を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、より詳細には、画像形成装置で使用される定着装置用のヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやファクシミリ、コピー機、複合機などのような画像形成装置は、電子写真方式を用いて印刷媒体に所定の画像を形成する。一般的に、このような画像形成装置で画像を形成するためには、帯電過程、露光過程、現像過程、転写過程、定着過程を経る。
【0003】
定着過程において使用される定着装置は、熱と圧力を印刷媒体に加えることにより、印刷媒体上にある未定着のトナーを定着する。一般的に、このような定着装置は、加熱ユニットと加圧ユニットとで構成され、加熱ユニットと加圧ユニットとは互いに接触しており、加熱ユニットと加圧ユニットとの間に定着ニブが形成される。印刷媒体がこのような定着ニブを通過する間に、熱と圧力とが印刷媒体に伝わり、それにより、未定着のトナーを定着できる。
【0004】
印刷媒体に熱を伝達するために、加熱ユニット内部にはヒータが配置される。現在、定着装置で主に用いられているヒータはハロゲンランプである。ハロゲンランプにはタングステンフィラメントが使われるが、タングステンフィラメントは常温で抵抗がかなり低い。従って、ハロゲンランプに電力が供給される初期段階で過度な突入電流(Inrush Current)が発生するようになる。このような過度な突入電流は急激な電圧変動とフリッカー(Flicker)現象を引き起こす。
【0005】
画像形成装置の主要品質中の一つは、早い一枚目の出紙時間(First Paper Out Time:FPOT)である。早いFPOTのためには、加熱ユニットの内部にあるヒータが発生する熱エネルギーを増加しなければならない。そのためにハロゲンランプにより大きい電力を供給すると、突入電流が更に大きく発生するという問題が生じる。
【0006】
このような問題を解消するために、加熱ユニットの内部に複数個のハロゲンランプを配置する方法があるが、このような解決方法は、定着装置の小型化を困難にする。消費者の要求により、画像形成装置は益々小型化が進められており、それにより、定着装置も小型化する傾向にある。それにより、定着装置に複数個のハロゲンランプを設定するだけのスペースが不足してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本特開第2006−294631号公報
【特許文献2】日本特開第2008−135264号公報
【特許文献3】日本特開第2003−215964号公報
【特許文献4】日本特開第2002−55554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、定着装置の小型化を可能としつつ、突入電流を防止できる定着装置用のヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明の一実施形態に係る印刷媒体に熱を供給するための定着装置用のヒータは、バルブと、負の抵抗温度係数と第1定格加熱出力を持ち、前記バルブ内で第1コイルを形成する第1発熱体と、正の抵抗温度係数と前記第1定格加熱出力より低い第2定格加熱出力を持ち、前記バルブ内に配置される第2発熱体とを含む。前記第2発熱体は、前記第1発熱体と隣接して配置されることにより、前記ヒータに電力が供給される初期段階で前記第2発熱体が前記第1発熱体を加熱して前記第1発熱体の抵抗を低減する。
【0010】
前記第1発熱体は炭素フィラメントを含み、前記第2発熱体はタングステンフィラメントを含んでよい。
前記第2発熱体は、前記第1発熱体の前記第1コイルと接触する複数のフィラメントを含み、前記複数のフィラメントは、互いに平行して前記第1発熱体の前記第1コイルの進行方向に沿って延長してよい。
前記第2発熱体を前記第1発熱体に取り付けるための複数の結合部材を更に含み、前記複数の結合部材は前記第1発熱体の前記第1コイルの進行方向に沿って配置されてよい。
前記第2発熱体は前記第1発熱体に接着され、前記第1発熱体の前記第1コイルの進行方向に沿って延長してよい。
前記第2発熱体は、前記第1発熱体の周囲に巻きつけられてよい。
前記第2発熱体は、前記バルブ内で第2コイルを形成してよい。
【0011】
前記第1コイルは、前記第2コイル内に配置されてよい。
前記第2コイルは、前記第1コイル内に配置されてよい。
前記第1及び第2コイルは、同一のコイル軸及び同一のコイル半径を持ち、前記第2コイルは、前記コイル軸に沿って前記第1コイルからオフセットして配置されてよい。
前記ヒータの加熱出力は、約600W以上約3000W以下であってよい。
【0012】
前記第1発熱体の前記第1定格加熱出力は約800Wであり、前記第2発熱体の前記第2定格加熱出力は約500Wであってよい。
前記第1及び第2発熱体は、電気的に並列又は直列接続されてよい。
【0013】
本発明の別の実施形態によると、画像形成装置と画像形成装置の定着装置は上述のような特徴を備えるヒータを含んでよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヒータに電力が供給される初期段階で第2発熱体が第1発熱体を加熱して第1発熱体の抵抗を低減するので、第1発熱体による突入電流を防止しながら、ヒータが速やかに最高加熱出力に到達できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】第1実施形態に係るヒータの概略的斜視図である。
【図3】図2に示されたヒータの一部の拡大図である。
【図4】第1実施形態において使われる炭素フィラメントの抵抗の温度特性を示すグラフである。
【図5】第1実施形態において使われるタングステンフィラメントの抵抗の温度特性を示すグラフである。
【図6】第1実施形態において、第1及び第2発熱体の抵抗の経時変化の測定結果を示すグラフである。
【図7】第1実施形態において、ヒータの加熱出力と加熱ローラの温度との経時変化の測定結果を示すグラフである。
【図8】第1実施形態と比較するための基準実施形態において、ヒータの加熱出力と加熱ローラの温度との経時変化の測定結果を示すグラフである。
【図9】第2実施形態において、ヒータの加熱出力と加熱ローラの温度との経時変化の測定結果を示すグラフである。
【図10】第3実施形態に係るヒータを概略図である。
【図11】第4実施形態に係るヒータを概略図である。
【図12】第5実施形態に係るヒータを概略図である。
【図13】第6実施形態に係るヒータを概略図である。
【図14】第7実施形態に係るヒータを概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。ここで説明される実施形態は、発明の理解を促すための例示であって、本発明はここで説明される実施形態から多様に変形されて実施できることを理解すべきである。なお、発明の理解を促すために、添付図面は実際の寸法で示されたものではなく、一部の構成要素のみを拡大して示す場合がある。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略図である。このような画像形成装置1は、プリンタ、ファクシミリ、コピー機、複合機などの多様な、印刷媒体に所定の画像を形成する装置のいずれかである。
【0018】
給紙装置10は、用紙のような印刷媒体を保存することができる。印刷媒体は、複数の移送ローラ11によって進行経路2に沿って移送される。帯電装置20は、感光体30を所定電位に帯電させることができる。光走査装置40は、感光体30に光41を走査して印刷データに対応する静電潜像を感光体30に形成することができる。
【0019】
現像装置50は、静電潜像の形成された感光体30にトナーを供給してトナー画像を形成することができる。現像装置50は、トナー収容部51と、トナー供給ローラ52と、現像ローラ53と、規制ブレード54とを含んでよい。
【0020】
トナー収容部51は、内部にトナーを収容する。トナー供給ローラ52は、トナー収容部51に収容されたトナーを現像ローラ53に供給し、それによって現像ローラ53にはトナー層が形成される。規制ブレード54は、このようなトナー層を均一にする。現像ローラ53上にあるトナー層は、電位差によって感光体30に形成された静電潜像に移動してトナー画像が現像される。
【0021】
転写装置60は、感光体30に形成されたトナー画像を印刷媒体に転写させることができる。クリーニング装置70は、転写過程が行なわれた後に、感光体30に残ったトナーを除去することができる。
【0022】
定着装置100は、熱と圧力を印刷媒体に加えることにより、印刷媒体上にある未定着のトナーを定着させることができる。トナーの定着された印刷媒体は、複数の移送ローラ11によって画像形成装置1の外部に排出され、それにより印刷過程が完了する。
【0023】
定着装置100は、加圧ユニット110と加熱ユニット120とを含んでよい。加圧ユニット110と加熱ユニット120とが接触する区間には、定着ニブ(N)が形成される。転写装置60を通ってきた印刷媒体上には未定着のトナーが存在するが、このような印刷媒体が定着ニブ(N)を通過する過程で、熱と圧力が印刷媒体に加わることにより、印刷媒体上にある未定着のトナーが定着できる。
【0024】
加圧ユニット110は、定着ニブ(N)を通過する印刷媒体に圧力を加えることができるように、弾性部材111によって加熱ユニット120側に加圧される。本発明の一実施形態においては、加圧ユニット110がローラタイプに構成されているが、加圧ユニット110はベルトタイプに構成されてよい。ベルトタイプの加圧ユニット110は、当業者にとって容易に理解できることであるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
加熱ユニット120は、定着ニブ(N)を通過する印刷媒体に熱を加え、加熱ローラ121と加熱ローラ121内に配置されるヒータ200とを含んでよい。ヒータ200は、印刷媒体に供給するための熱を生成し、ヒータ200が生成した熱は、加熱ローラ121を介して印刷媒体に伝わる。加熱ローラ121は、高温に加熱されるので、耐熱性材質で形成されることが望ましい。本発明の一実施形態では、加熱ユニット120が加熱ローラ121を用いたローラタイプで構成されているが、加熱ユニット120はベルトタイプで構成されてよい。即ち、この場合には、加熱ローラ121の代わりに加熱ベルトが使われる。ベルトタイプの加熱ユニット120は当業者にとって容易に理解できることであるため、詳細な説明は省略する。
【0026】
図2ないし図7を参照しながら、本発明の一実施形態に係るヒータ200をより詳細に説明する。
図2は、第1実施形態に係るヒータ200の概略的斜視図であり、図3は、図2に示されたヒータ200の一部の拡大図である。
【0027】
バルブ201は、円筒状であって、内部には不活性気体が密封されている。バルブ210は、耐熱性の材質で形成され、例えば、石英ガラスで形成されてよい。
【0028】
第1及び第2発熱体210、220は、バルブ201の内部に配置され、外部の電源から供給される電気エネルギーを熱に変換する。第1及び第2発熱体210、220の生成した熱は、加熱ローラ121を介して定着ニブ(N)を通過する印刷媒体に伝達されて未定着のトナーを定着させる。
【0029】
第1発熱体210は、バルブ201内でコイルを形成することにより、ヒータ200の長さ方向に沿って均一に加熱ローラ121に熱を伝達できる。ここで、第1発熱体210は、負の抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistance)を持つ。即ち、第1発熱体210の抵抗は、温度が上がるにつれ減少する特性がある。例えば、このような特性を有する物質は例えば炭素である。本発明の一実施形態では、炭素フィラメントが第1発熱体210として使われる。しかし、これは、単なる例示に過ぎず、第1発熱体210は負の抵抗温度係数を持つ多様な物質で形成できることを理解すべきである。
【0030】
図4は、本発明の第1実施形態において使われる炭素フィラメントの抵抗の温度特性を示すグラフである。図4で、横軸は炭素フィラメントの温度を示し、縦軸は炭素フィラメントの抵抗を示す。図4から分かるように、炭素フィラメントの抵抗は温度が上がるにつれ減少する。特に、常温で炭素フィラメントは、大きい抵抗を持つことに注目すべきである。
【0031】
第2発熱体220は、バルブ201内に配置され、正の抵抗温度係数を持つ。即ち、第2発熱体220の抵抗は温度が上がるにつれ上昇する特性を持つ。例えば、このような特性を有する物質は、タングステンである。本発明の第1実施形態では、タングステンフィラメントが第2発熱体220として使われる。しかし、これは単なる例示に過ぎず、第2発熱体220は正の抵抗温度係数を持つ多様な物質で形成できることを理解すべきである。
【0032】
図5は、本発明の第1実施形態において使われるタングステンフィラメントの抵抗の温度特性を示すグラフである。図5で、横軸はタングステンフィラメントの温度を示し、縦軸はタングステンフィラメントの抵抗を示す。図5から分かるように、タングステンフィラメントの抵抗は温度が上がるにつれ増加する。特に、常温でタングステンフィラメントは、小さい抵抗を持つことに注目すべきである。
【0033】
このような第1及び第2発熱体210、220は、電気的に並列接続、または直列接続される。
【0034】
図2に戻ると、コネクタ230は外部電源と接続され、第1及び第2発熱体210、220に電力を供給する。図2においては、一つのコネクタ230のみが示されているが、ヒータ200の図示していない反対側にも同一のコネクタ230が配置される。
【0035】
図3を参照すると、第1発熱体210のコイルの進行方向に沿って配置された複数の結合部材240は、第2発熱体220を第1発熱体210に取り付けるためのものである。このような複数の結合部材240によって第2発熱体220は、第1発熱体210と接触する。複数の結合部材240は、高温にさらされるため、複数の結合部材240は耐熱性材質で形成されることが望ましい。
【0036】
図3に示すように、本発明の第1実施形態で第2発熱体220は、第1発熱体210と接触する六つのタングステンフィラメントで構成される。六つのタングステンフィラメントのうち三つのフィラメントは、第1発熱体210のコイルの外側表面211に配置され、残りの三つのフィラメントは、第1発熱体210のコイルの内側表面212に配置される。このような六つのタングステンフィラメントは、互いに平行して第1発熱体210のコイルの進行方向に沿って延長する。
【0037】
本発明の第1実施形態に示すように、第1発熱体210として使われている炭素フィラメントが、比較的に大きな幅(W)を持つ場合は、六つのタングステンフィラメントを使用する。炭素フィラメントの幅(W)が小さい場合には、六つ未満のタングステンフィラメントを使用し、炭素フィラメントの幅(W)が十分に大きい場合には、六つを超えるタングステンフィラメントを使用できる。なお、タングステンフィラメントは、第1発熱体210のコイルの外側表面211と内側表面212のうち、いずれか一面のみに配置してもよい。
【0038】
本発明の第1実施形態に係るヒータ200の定格加熱出力は例えば1300Wに設計されている。ここで、第1発熱体210の定格加熱出力は800Wに設計されて第2発熱体220の定格加熱出力は第1発熱体210の定格加熱出力より低い500Wに設計されている。即ち、本発明の第1実施形態においては、第1発熱体210がメイン発熱体として作動し、第2発熱体220はサブ発熱体として作動する。負の抵抗温度係数を持つ第1発熱体210の定格加熱出力が、正の抵抗温度係数を持つ第2発熱体220の定格加熱出力より高いということに注目すべきである。
【0039】
図4に示すように、負の抵抗温度係数を持つ第1発熱体210は常温で高い抵抗を持つので、突入電流の発生を抑制できる。なお、早いFPOTを得るために、ヒータ200の加熱出力を高める場合、常温で高い抵抗を持つ第1発熱体210に割り当てられる加熱出力が、常温で低い抵抗を持つ第2発熱体220に割り当てられる加熱出力より大きいので、過度な突入電流の発生を防止できる。即ち、第1発熱体210が使われていない場合か、または、第1発熱体210に割り当てられる加熱出力が第2発熱体220に割り当てられる加熱出力より低い場合には、常温で低い抵抗を持つ第2発熱体220によって大きい突入電流が発生するという問題が生じるおそれがある。例えば、第1発熱体210の定格加熱出力が800Wに設定され、第2発熱体220の定格加熱出力が500Wに設定される本発明の第1実施形態に係るヒータ200においては、過度な突入電流が生じない。
【0040】
しかし、常温で高い抵抗を持つ第1発熱体210が存在するので、ヒータ200の反応時間が遅れるという問題が生じるおそれがある。即ち、ヒータ200に電力が供給される初期段階では、常温で高い抵抗を持つ第1発熱体210が生成する熱はそれほど多くないので、第1発熱体210が最高加熱出力に到達する時間が遅れる。これは、ヒータ200に電力が供給される初期段階で、第1発熱体210が加熱ローラ121に伝達される熱が少ないことを意味し、それによりFPOTも遅れる。
【0041】
これを改善するために、ヒータ200に電力が供給される初期段階では、常温で低い抵抗を持つ第2発熱体220が第1発熱体210を加熱する。即ち、図5に示すように、第2発熱体220は常温で低い抵抗を持つので、ヒータ220に電力が供給される初期段階で第2発熱体220は比較的多くの熱を生成できる。図3に示すように、第2発熱体220は第1発熱体210と接触しているので、第2発熱体220が生成した熱は、第1発熱体210の加熱にも使われる。第1発熱体210は負の抵抗温度係数を持つので、第2発熱体220が第1発熱体210を加熱することにより、第1発熱体210の抵抗は速いペースで低くなる。それにより、第1発熱体210は速やかに最高加熱出力に到達できる。
【0042】
図6ないし図8を参照しながら、ヒータ200の作動過程をより詳細に説明する。図6及び図7は、本発明の第1実施形態の実験結果を示すグラフであり、図8は、第1実施形態に比較するための基準実施形態の実験結果を示すグラフである。基準実施形態においては、第2発熱体220が存在せず、第1発熱体210のみが使われている。第1実施形態との同様の比較のために、基準実施形態の定格加熱出力は、第1実施形態と同様に1300Wに設定されている。
【0043】
図6は、第1及び第2発熱体210、220の抵抗の経時変化の測定結果を示すグラフである。図6で、横軸はヒータ200に電力が供給される時点から経過した時間を示し、縦軸は抵抗を示す。
図6で、第1発熱体210の抵抗は太い実線で示し、第2発熱体220の抵抗は細い実線で示している。図6における破線は、基準実施形態、すなわち、第2発熱体220が存在しない場合における第1発熱体210の抵抗の経時変化を示しており、図中の矢印で示すように、第1発熱体210の抵抗は、第2発熱体220の存在により、速やかに低下する。
【0044】
図7は、ヒータ200の加熱出力と加熱ローラ121の温度との経時変化の測定結果を示すグラフである。図7において、横軸はヒータ200に電力が供給開始される時点から経過した時間を示し、左側の縦軸は加熱ローラ121の温度を示し、右側の縦軸はヒータ200の加熱出力を示す。図7において、ヒータ200の加熱出力は細い実線で示し、加熱ローラ121の温度は太い実線で示している。
【0045】
図8は、基準実施形態の実験結果を図7と同様に示すグラフである。
【0046】
図8から分かるように、基準実施形態においては、最高加熱出力に到達する時間が約4秒かかり、電力が供給された時点から加熱ローラ121の温度が上昇し始める遅延時間(d)が約2.5秒かかる。図7から分かるように、第1実施形態では、最高加熱出力に到達する時間がかなり減り、電力が供給された時点から加熱ローラ121の温度が上昇し始める遅延時間(d)が約0.5秒かかる。このような差は、第1実施形態では、第2発熱体220が負の抵抗温度係数を持つ第1発熱体210を加熱して第1発熱体210の抵抗を速やかに低減するからである。
【0047】
図6は、このような現象を明確に示している。ヒータ200に電力が供給される初期段階で第2発熱体220が第1発熱体210を加熱することにより、負の抵抗温度係数を持つ第1発熱体210の抵抗が急激に減ることが確認できる。第1発熱体210の抵抗の急激な抵抗降下につれ、第1発熱体210は迅速に最高加熱出力に到達できる。
【0048】
図9は、第2実施形態に係るヒータの加熱出力と加熱ローラ121の温度との経時変化の測定結果を示すグラフである。第2実施形態に係るヒータの構造は上述の第1実施形態と同様であり、定格加熱出力が2100Wに変更されている。ここで、第1発熱体210の定格加熱出力は1300Wに設計され、第2発熱体220の定格加熱出力は800Wに設計されている。
【0049】
図9に示された実験結果は、図7に示された実験結果と似たようなパターンを示す。但し、第2実施形態では、ヒータの定格加熱出力が高いので、加熱ローラ121の昇温速度が速くなっている。なお、電力が供給された時点から加熱ローラ121の温度が上昇し始める遅延時間(d)が約0.45秒で、第1実施形態より約0.05秒早まっている。
【0050】
図10は、第3実施形態に係るヒータ200aの概略図である。第1実施形態において同様の機能を備える構成要素には同様の参照符号を与えて詳細な説明は省略する。
【0051】
第3実施形態と第1実施形態とが相違する点は、結合部材240が省略されていることである。その代わりに、第2発熱体220は第1発熱体210に接着されており、そのために多様な方式のボンディング工程のいずれかが実施される。第2発熱体220が第1発熱体210のコイルの進行方向に沿って延長することは、第1実施形態の場合と同様である。第1実施形態で結合部材240が存在しない区間では、第1及び第2発熱体210、220の間に微細な間隙が存在する場合がある。しかしながら、第3実施形態では、第2発熱体220が第1発熱体210に接着されているので、第2発熱体220は第1発熱体210に完全に密着する。従って、ヒータ200aに電力が供給される初期段階で第2発熱体220が生成した熱のうち、大量の部分が第1発熱体210を加熱するのに使われる。その結果、第1発熱体210の抵抗をより早く低減でき、第1発熱体210がより早く最高発熱出力に到達する。
【0052】
図11は、第4実施形態に係るヒータ200bの概略図である。第1実施形態において同様の機能を備える構成要素には同様の参照符号を与えて詳細な説明は省略する。
【0053】
第4実施形態では、第2発熱体220が第1発熱体210の周囲に巻きつけられる。第1及び第2発熱体210、220の間の摩擦力によって第2発熱体220が元の位置に固定される。従って、別途の結合部材240や別途の接着工程は不要となる。
【0054】
図12は、第5実施形態に係るヒータ200cの概略図である。第1実施形態において同様の機能を備える構成要素には同様の参照符号を与えて詳細な説明は省略する。
【0055】
第5実施形態では、第1発熱体210のように第2発熱体220もバルブ201内でコイルを形成する。第1発熱体210のコイルは、第2発熱体のコイル内に配置される。第2発熱体220が第1発熱体210と離れていることが上述の第1〜第4実施形態とは相違している。この場合、ヒータ200cに電力が供給される初期段階で第2発熱体220が生成した輻射熱が、第1発熱体210を加熱して第1発熱体210の抵抗を低減する。第1発熱体210を加熱するために、第2発熱体220は第1発熱体210から遠く離れず、第1発熱体210と隣接して配置されることが望ましい。第2発熱体220が第1発熱体210を均一に加熱するためには、第1発熱体210のコイルと第2発熱体220のコイルとは、同一のコイル軸を持つことが望ましい。
【0056】
図13は、第6実施形態に係るヒータ200dの概略図である。第1実施形態において同様の機能を備える構成要素には同様の参照符号を与えて詳細な説明は省略する。
【0057】
第6実施形態は、第2発熱体220がバルブ201内でコイルを形成する点では第5実施形態と似ている。しかしながら、第6実施形態では、第2発熱体220のコイルは、第1発熱体210のコイル内に配置される。第2発熱体220が第1発熱体210を均一に加熱するためには、第1発熱体210のコイルと第2発熱体220のコイルとは、同一のコイル軸を持つことが望ましい。
【0058】
図14は、第7実施形態に係るヒータ200eの概略図である。第1実施形態において同様の機能を備える構成要素には同様の参照符号を与えて詳細な説明は省略する。
【0059】
第7実施形態において、第1発熱体210のコイルと第2発熱体220のコイルとは、同一の半径と同一のコイル軸を持つ。但し、第2発熱体220のコイルは、第1発熱体210のコイルからオフセットして配置される。
【0060】
上述の実施形態では、ヒータ200、200a〜200eの定格加熱出力が1300Wと2100Wであった。しかし、これは単なる例示的なものに過ぎず、ヒータ200、200a〜200eの定格加熱出力は600W以上3000W以下であってよい。ヒータ200、200a〜200eの定格加熱出力が変化するとしても、過度な突入電流の発生を防止するために、第1発熱体210の定格加熱出力は、第2発熱体220の定格加熱出力より高く設定される。
【0061】
表1は、上述の第1〜第7実施形態と基準実施形態との実験結果をまとめた表である。

【表1】



【0062】
上記の表における遅延時間は、ヒータに電力が供給される時点から加熱ローラの温度が上昇し始める時間を示す。最大出力到達時間は、ヒータの加熱出力が測定された最大加熱出力の97.7%のレベルまでに到達するのにかかる時間を示す。
【0063】
第1〜第7実施形態のいずれもが、基準実施形態より遅延時間と最大出力到達時間が大幅に短縮されていることが確認できる。第2発熱体220と第1発熱体210とが接触する第1〜第4実施形態がより好適な結果を示しているが、これは、第2発熱体220が第1発熱体210とが接触することにより、より多くの熱が第1発熱体210を加熱するのに使われ、第1発熱体210の抵抗をより早く低減できたからである。
【0064】
昇温速度は、加熱ローラが単位時間当りに上昇した温度を示す。実験の結果、加熱ローラの温度が50℃から180℃までの区間では、ほとんど線形に上昇したため、上述の表の昇温速度は50℃から180℃までの区間で測定された結果である。第1〜第7実施形態のいずれもが、基準実施形態より昇温速度が上昇していることが確認できる。昇温速度は、第1〜第7実施形態で大きい偏差を示してはいないが、これは第2発熱体220が第1発熱体210を加熱して第1発熱体210の抵抗を低減する効果は、ヒータに電力が供給される初期段階で大きく作用するためである。即ち、加熱ローラの温度が50℃から180℃までの区間にある場合には、いずれの実施形態でも、第1発熱体210がかなり加熱された状態にあって、第1発熱体210の抵抗は低く維持され、第1〜第7実施形態の間で、第1発熱体210の抵抗は大きな偏差を示さない。第2実施形態の昇温速度が大きな値を持つことは、その定格加熱出力が他の実施形態の定格加熱出力より大きいからである。
【0065】
昇温速度の相対比は、各実施形態の昇温速度を基準実施形態の昇温速度で割った値を示す。例えば、基準実施形態の昇温速度が20.0℃/sであり、第1実施形態の昇温速度が28.0℃/sである場合、第1実施形態の昇温速度の相対比は1.40(=28.0/20.0)となる。
【0066】
KW当りの昇温速度は、昇温速度を測定された加熱出力(KW)で割った値を示す。第2実施形態は、他の実施形態よりも定格加熱出力が高いので、第2実施形態と他の実施形態とを同一線上で比較するために、KW当りの昇温速度が導入されている。例えば、第1実施形態の昇温速度は、28℃/sであり、実測加熱出力は1.115KWである場合、第1実施形態のKW当りの昇温速度は24(=28/1.115)℃/s・KW となる。
【0067】
発熱性能改善比は、各実施形態のKW当りの昇温速度を基準実施形態のKW当りの昇温速度で割った値を示す。
【0068】
実施形態の間で多少の差はあるが、遅延時間、最大出力到達時間、及び昇温速度が基準実施形態より改善されていることが上記の表から確認できる。従って、本発明の実施形態は、早いFTOPを達成することができる。なお、ヒータ200、200a〜200eの加熱出力をさらに高める場合、常温で高い抵抗を持つ第1発熱体210が存在することと、常温で高い抵抗を持つ第1発熱体210に割り当てられる加熱出力が常温で低い抵抗を持つ第2発熱体220に割り当てられる加熱出力より大きいことから、過度な突入電流の発生を防止できる。その結果、加熱121内に一つのヒータ200、200a〜200eが配置されたとしても、早いFTOPの達成と過度な突入電流の抑制が可能であるため、定着装置100の小型化に役立つ。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
2 印刷媒体の進行経路
10 給紙装置
11 移送ローラ
20 帯電装置
30 感光体
40 光走査装置
41 光
50 現像装置
51 トナー収容部
52 トナー供給ローラ
53 現像ローラ
54 規制ブレード
60 転写装置
70 クリーニング装置
100 定着装置
110 加圧ユニット
110 弾性部材
120 加熱ユニット
121 加熱ローラ
200、200a、200b、200c、200d、200e ヒータ
201 バルブ
210、220 第1、第2発熱体
230 コネクタ
240 結合部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に熱を供給するための定着装置用のヒータにおいて、
バルブと、
負の抵抗温度係数と第1定格加熱出力を持ち、前記バルブ内で第1コイルを形成する第1発熱体と、
正の抵抗温度係数と前記第1定格加熱出力より低い第2定格加熱出力を持ち、前記バルブ内に配置される第2発熱体と、
を含み、
前記第2発熱体は、前記第1発熱体と隣接して配置されることにより、前記ヒータに電力が供給される初期段階で前記第2発熱体が前記第1発熱体を加熱して前記第1発熱体の抵抗を低減することを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記第1発熱体は炭素フィラメントを含み、
前記第2発熱体はタングステンフィラメントを含むことを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記第2発熱体は、前記第1発熱体の前記第1コイルと接触する複数のフィラメントを含み、
前記複数のフィラメントは、互いに平行して前記第1発熱体の前記第1コイルの進行方向に沿って延長することを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項4】
前記第2発熱体を前記第1発熱体に取り付けるための複数の結合部材を更に含み、
前記複数の結合部材は前記第1発熱体の前記第1コイルの進行方向に沿って配置されることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項5】
前記第2発熱体は前記第1発熱体に接着され、前記第1発熱体の前記第1コイルの進行方向に沿って延長することを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項6】
前記第2発熱体は、前記第1発熱体の周囲に巻きつけられることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項7】
前記第2発熱体は、前記バルブ内で第2コイルを形成することを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項8】
前記第1コイルは、前記第2コイル内に配置されることを特徴とする請求項7に記載のヒータ。
【請求項9】
前記第2コイルは、前記第1コイル内に配置されることを特徴とする請求項7に記載のヒータ。
【請求項10】
前記第1及び第2コイルは、同一のコイル軸及び同一のコイル半径を持ち、
前記第2コイルは、前記コイル軸に沿って前記第1コイルからオフセットして配置されることを特徴とする請求項9に記載のヒータ。
【請求項11】
前記ヒータの加熱出力は、約600W以上約3000W以下であることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項12】
前記第1発熱体の前記第1定格加熱出力は約800Wであり、
前記第2発熱体の前記第2定格加熱出力は約500Wであることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項13】
前記第1及び第2発熱体は、電気的に並列又は直列接続されることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項14】
請求項1に係るヒータを含むことを特徴とする定着装置。
【請求項15】
請求項14に係る定着装置を含むことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−141610(P2012−141610A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283129(P2011−283129)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】