説明

定義された粒径を有する結晶性シクレソニドの製造方法

本発明は有利な粒径を有する結晶性シクレソニドの新規の製造方法および特に局所的な使用のための製剤を製造するための使用に関する。新規の方法により得られる結晶性シクレソニドは有利な空気力学的な特性を有しており、かつさらにその後の機械的な微粉化を行うことなく吸入可能であるか、もしくは経鼻的に投与される製剤をさらに製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利な粒径および粒径分布を有する結晶性シクレソニドを製造するための新規の方法および特に局所的に使用するための製剤を製造するための使用に関する。新規の方法により得られる結晶性シクレソニドは、特に吸入可能であるか、もしくは経鼻的に投与される製剤をさらに製造するために有利な特性を有する。
【0002】
公知の技術的背景
US4605517は、ステロイドを有機溶剤中に溶解し、得られた溶液を、ステロイドにとっての非溶剤を混合することにより該ステロイドを沈澱させ、かつ混合の時間および混合の間の撹拌の程度を制御することからなる、制御された粒径のステロイド化合物を製造する方法に関する。
【0003】
Sjoestroem等[J. Pharm. Sci.(1993)、82(6)、584〜9]は、水中油型エマルション中で沈澱させることにより、水難溶性の活性化合物の小さい粒子を製造するための方法を記載している。この目的のために、ステロイドの酢酸コレステリルおよびβ−シトステロールを有機溶剤中に溶解し、かつ界面活性剤の存在下で水によりエマルションが製造された。有機溶剤の蒸発により25nmまでの小さい粒径を有するステロイドが沈澱する。
【0004】
Hem等[J.Pharm.Sci.(1967)、56(2)、229〜233)は、超音波に曝露する際のヒドロコルチゾンの結晶化の機構を記載している。
【0005】
EP142309A2は、有機溶剤中で溶解し、かつ活性化合物にとっての非溶剤と混合することにより活性化合物を製造することを記載している。エポスタンはこの目的のためにジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解され、かつ水が添加された。このようにして得られた沈殿物は狭い粒径範囲内にある粒径を有する。
【0006】
Ruch等[Journal of Colloid and Interface Science(2000)、229(1)、207〜211]は、超音波浴中で沈澱させることによりマイクロメートルサイズの範囲のブデソニド粒子を製造することを記載している。この目的のために、超音波に曝露されるブデソニド溶液に、沈澱が得られるまで水を添加するか、またはブデソニドが溶剤混合物中に溶解している場合には、より揮発性の溶剤を室温で蒸発させる。
【0007】
WO90/03782は、固体を液状の担体溶剤中に溶解して注入溶液を形成し、かつ該注入溶液を超臨界の流体、圧縮され、液化された気体または濃密な蒸気である非溶剤に添加することにより、微分散した固体を製造するための方法に関する。
【0008】
WO92/08730は、有機物質、特にステロイドを結晶化するための方法を記載する。この目的のために、ステロイドを親油性溶剤、親水性溶剤および表面活性物質からなる三成分の混合物中に溶解し、かつ結晶化させる。これにより前決定可能で、かつ均質な粒径が機械的な手段によらずに得られるといわれている。
【0009】
WO00/38811は、定義された粒径分布を有する結晶性粒子、特に吸入のために適切なサイズを有する粒子を製造するための装置を記載している。
【0010】
シクレソニドは、化学名16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R)]を有する化合物のためのINN(国際一般的名称(International Nonproprietary Name))である。ブチル、イソプロピル、s−ブチル、シクロヘキシルまたはフェニル基を環式アセタール環上に有する、消炎作用を有するシクレソニドおよびその他のエピマーのプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン16,17−アセタール21−エステルの製造、およびそのC−21ヒドロキシル基がアセチル基またはイソブチリル基によりアセタール化されることは、DE−A4129535に開示されている。分離用高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により、R/S混合物から出発してそれぞれのRエピマーを単離することが記載されている。国際特許出願WO98/09982A1は、分別結晶化によりシクレソニドのRエピマーのエピマー富化のための方法を記載している。この目的のために、R/S混合物の形のシクレソニドを適切な水混和性有機溶剤中に沸点で溶解し、水を添加し、かつ混合物を室温に冷却する。しかしこのようにして得られた、Rエピマーが富化されたシクレソニドは、次いで吸入することができる製剤のために必要な粒径および分布を得るために、機械的な微粉化を行わなくてはならない。活性化合物を吸入可能な製剤へとさらに直ちに加工するために適切な粒径および分布を有する形ですでに方法の生成物として得ることが、シクレソニドの化学合成の間に所望される。このことによって付加的な機械的微粉化を省略することが可能となり、ひいては機械的な微粉化の可能な欠点[たとえば汚染の危険性、小さすぎる粒子の形成、結晶性構造と比較して微粉化生成物の非晶質の構造に基づいた水の吸収の増加]を回避することができる。
【0011】
発明の記載
ところで意外なことに、水混和性の溶剤中でのシクレソニドの溶解およびその後のこのシクレソニド溶液の、水への添加により、WO98/09982A1に記載された方法により得られるシクレソニドと比較して、吸入のために適切な粒径を有する結晶性シクレソニドが得られることが判明した。従って吸入可能な製剤へのその後の加工において機械的微粉化を省略することが可能である。
【0012】
従って本発明は、
a)適切な水混和性の有機溶剤中の式Iの化合物の溶液を製造し、
b)a)で得られた溶液を水に添加し、かつ
c)形成された式Iの化合物の沈殿物を単離する
工程を含む、定義された粒径を有する結晶形の式I
【0013】
【化1】

の化合物を製造する方法に関する。
【0014】
式Iの化合物は、化学名16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]を有する化合物である。この化合物のRエピマー(C−22における絶対配置に基づいて)は、INN(国際一般的名称)シクレソニドを有する。式Iの化合物という用語は、本発明によれば、純粋なRエピマー、純粋なSエピマー、および任意の混合比でのR/Sエピマー混合物および式Iの化合物の製薬学的に認容可能な溶媒和化合物も含む。
【0015】
本発明の方法のための手順は有利には、主としてRエピマーの形(C−22における絶対配置に基づく)の式Iの化合物から出発する。主としてエピマー純粋な形とは、本発明によればこの関連で、Rエピマーが少なくとも90%、有利には少なくとも95%、特に少なくとも97%、とりわけ有利には99%存在することを意味する。主としてRエピマーの形の式Iのこのような化合物は、たとえばWO02/38584に記載されている合成方法と同様に行い、かつ引き続きアシル化を行うか、または国際特許出願WO98/09982に記載されているような式Iの化合物のR/Sエピマー混合物の分離HPLCもしくは分別結晶化により得ることができる。
【0016】
本発明による方法を実施するために、式Iの化合物を適切な水混和性有機溶剤中に溶解する。本発明により挙げることができる適切な水混和性有機溶剤は、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、N−プロパノールおよびイソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)またはジメチルホルムアミド(DMF)および任意の混合比でのこれらの混合物である。溶剤がこの間に10℃から溶剤の沸点までの温度、有利には15℃から溶剤の沸点より10℃低い温度までの温度、特に15℃〜35℃、とりわけ有利には20℃〜25℃を有し、かつ溶剤は極めて有利には室温である(つまり溶剤の温度は方法を実施する部屋の温度に相応する)ことは有利である。その後のこの溶液の、水への添加は有利には撹拌下で、かつ溶剤の温度を維持しながら行う。添加は特に有利には滴加により行う。水の温度は本発明によれば有利には10℃〜50℃、好ましくは15℃〜40℃、特に有利には20℃〜30℃である。有利な実施態様では、水は室温(つまり方法を実施する部屋の温度に相応する水の温度)である。式Iの化合物を溶解するために使用される溶剤の量は、溶剤の性質および温度に依存する。式Iの化合物が完全に溶解するために少なくとも十分な、有利にはそれよりも若干多くの溶剤を使用することが有利である。本発明の方法において使用される水の量は有利には、溶解した式Iの化合物が定量的な形で水の添加後に沈澱するように選択する。
【0017】
形成された沈殿物を本発明により有利には溶液から沈殿物を除去することにより、特に沈殿物の濾過、水による沈殿物の洗浄およびその後の乾燥により単離する。
【0018】
本発明の方法は定義された粒径を有する式Iの化合物を生じる。定義された粒径は本発明によれば吸入のために適切な粒径および粒径分布である。吸入のために適切な形とは、1〜10μm、有利には1〜5μmの範囲、特に有利には1〜3μmの空力学的な直径を有する粒径を意味する。この関連において有利な製剤は、粒径の測定が10以下、有利には7.5、極めて有利には3、特に有利には2のX60[単位:μm]を示すものである。1.8〜2.0の範囲のX60が特に本発明により強調すべきである。粒径の測定におけるX60とは、全ての粒子の全体積の50%に関して粒径が上記の値より小さいことを意味する。粒径分布の測定は、たとえば、公知の方法により固体物質のレーザー回折により可能である。粒径分布を、たとえばSympatec HELOS−LASER回折検出器または相応する装置(Sympatec HELOS−LASER回折検出器の装置パラメータはたとえば次のとおりに設定することができる:測定時間(5s)、時間基準(1000ms)、参照測定時間(5s)、測定範囲/レンズ(R2 0.25/0.45、87.5μm)、出発条件(開始ボタン後0.000s)、分散モジュール(RHODOS+VIBRI)、測定モード(HRLD)、床高さ(2mm)、出力(50%)、分散圧力(3.50バール、実際に測定される圧力の許容される変化は3.30バール〜3.70バールおよびフラオンホーファー(Fraunhofer)の回折図の評価)において使用されるような、乾燥測定法により測定することが本発明によれば有利である。
【0019】
本発明によれば、1.5μm〜7.5μm、有利には1.75μm〜6.5μm、特に有利には1.85μm〜5.5μm、とりわけ2μm〜5μm(この範囲はそのサイズにより、吸入の際に直接口もしくは喉の中に付着しないか、またはその粉末度により再び吐き出されない、吸入可能なフラクションを示す)の範囲の粒径を有する粒子の最大割合を有する式Iの化合物の結晶性の吸入可能な形が有利である。本発明の例示的な実施態様は、粒子の最大55%[体積]が、1.85μm以下であり、少なくとも75%[体積]が4.5μm以下である式Iの化合物の結晶性の吸入可能な形である。化合物は有利には微粉化された形ではない。本発明によれば微粉化された形とは、化合物に機械的な微粉化工程(たとえば機械的な粉砕)を行うことを意味する。
【0020】
式Iの化合物は自体公知の方法により、たとえばDE−A4129535に記載されているように製造することができる。あるいは式Iの化合物は式II
【0021】
【化2】

の相応する21−ヒドロキシ化合物から出発して、適切なアシル化剤を用いたアシル化により製造することもできる。このような21−ヒドロキシ化合物はたとえばWO95/24416およびWO02/38584の例のために記載されている。アシル化はこの場合、当業者に公知の方法により、たとえばWO98/09982に記載されているように行うことができる。
【0022】
従って本発明はさらに、
a)式IIの化合物を適切なアシル化剤によりアシル化することにより式Iの化合物を製造し、
b)適切な水混和性有機溶剤中の化合物の溶液に水を添加することにより、または適切な水混和性有機溶剤と水とからなる混合物中の式Iの化合物の懸濁液を加熱することにより、a)で得られた式Iの化合物を結晶化し、
c)得られるRエピマーが富化された式Iの化合物の沈殿物を水/溶剤混合物から除去し、
d)所望の場合には工程b)を繰り返し、
e)適切な水混和性有機溶剤中の、c)で得られた化合物の溶液を製造し、
f)e)で得られた溶液を水に添加し、かつ
g)形成された式Iの化合物の沈殿物を単離する
工程を含む、定義された粒径を有する結晶形の式I
【0023】
【化3】

の化合物を製造する方法にも関する。
【0024】
本発明の方法の工程a)、b)およびc)を実施するために、式IのR/Sエピマー混合物を、有利には高めた温度で、特に使用される溶剤の沸点で適切な水混和性有機溶剤中に溶解する。この溶液への水のその後の添加は有利には撹拌しながら、かつ高めた温度を、特に沸点を維持しながら行い、その際、水の添加が完了した後に、有利に室温への冷却は撹拌しながら行う。あるいは、式IのR/Sエピマー混合物は水と、適切な水混和性有機溶剤との混合物中に懸濁し、かつ加熱、特に溶剤混合物の沸点への加熱により溶解することができる。引き続き溶液を撹拌下に、有利には室温に冷却する。冷却は有利にはゆっくり、好ましくは2〜10時間かけて行う。その後の分別結晶化は有利には結晶核(たとえば種結晶)の添加により影響を与えることができ、有利にはいずれの場合でも式Iの純粋なRエピマーの種結晶を使用する。本発明の方法の工程b)のために挙げることができる適切な水混和性有機溶剤の例は、アセトン、または特にアルコール、たとえばイソプロパノール、n−プロパノール、メタノールおよび、有利にはエタノール、および任意の混合比でのこれらの混合物である。式IのR/Sエピマー混合物0.18モルを溶解するために適切な水混和性有機溶剤を190〜700ml、有利には300〜400ml使用することは有利である。水混和性有機溶剤に対する水の体積による比率は有利には0.1〜1[v/v]、特に0.25〜0.75[v/v]の範囲である。
【0025】
溶液からの式IのRエピマーが富化されたR/Sエピマー混合物のその後の除去[工程c)]は、当業者に公知の方法で、特に濾過により行う。
【0026】
本発明の方法のための手順は有利には、Rエピマーがすでに富化された、たとえばRエピマー含有率が≧75%、特に≧85%である式Iの化合物から出発する。工程a)におけるアシル化はさらに当業者に公知の方法で、たとえば無水イソブチル酸のような適切なアシル化剤によるアシル化により実施例に記載されているように行う。
【0027】
本発明による方法により得られた、定義された粒径を有する式Iの結晶性化合物は次いでさらに製剤へと加工することができ(有利にはその後の微粉化工程を行わない)、その際、適切であればその他の薬学的活性化合物と組み合わせる。式Iの化合物は製剤中でそのまま、または有利には適切な医薬品添加剤と組み合わせて、たとえば錠剤、被覆錠剤、カプセル、坐剤、硬膏、乳剤、懸濁剤、ゲルまたは液剤の形で使用し、その際、活性化合物の含有率は有利には0.1〜95%である。有利に挙げられる製剤は、肺を通じて、および粘膜を通じて、特に鼻粘膜を通じて局所適用するためのものである。
【0028】
所望の製剤のために適切な添加剤は、当業者には自身の専門知識に基づいて周知である。溶剤、ゲル形成剤、軟膏基剤およびその他の活性化合物担体以外に、たとえば酸化防止剤、分散剤、乳化剤、保存剤、可溶化剤または浸透性促進剤を使用することが可能である。
【0029】
本発明による方法により得られた式Iの化合物を、有利には吸入される形で気道の疾患の治療のために投与する。この目的のために、式Iの化合物を粉末として直接、あるいは該粉末を含有する溶液または懸濁液の噴霧として投与する。物質はこの目的のために有利にはエアゾールの形で吸入することにより投与し、その際、固体、液体または混合された組成物のエアゾール粒子は0.5〜10μm、有利には2〜6μmの直径を有する。
【0030】
エアゾールはたとえば圧力操作されるノズルネブライザーまたは超音波ネブライザーにより発生させることができるが、しかし有利には噴射ガス操作により計量されるエアゾールまたは吸入カプセルからの微粉化活性化合物の噴射ガスによらない使用により発生させることができる。
【0031】
使用される吸入器システムに依存して、製剤は活性化合物以外に、必要な添加剤、たとえば噴射ガス(たとえばHFA 134aまたは227)、溶剤(たとえばエタノール)、界面活性物質、乳化剤、安定剤、保存剤、噴霧剤、付形剤(たとえば粉末吸入器のためのラクトース)、または、適切である場合には、その他の活性化合物を含有する。
【0032】
吸入のため、または鼻粘膜への投与のため、および製造のために適切なシクレソニドの製剤はたとえばUS6120752、US6264923、WO01/028562、WO01/028563またはDE19541689に記載されている。製剤は当業者に公知の方法により製造することができる。通常、活性化合物(つまり式Iの化合物、所望の場合にはその他の活性化合物と組み合わせて)を、1もしくは複数の添加剤を含有する担体と混合する。この場合、活性化合物は一般に固体および/または液体の担体中に微分散しており、かつ次いでその後に所望の製剤へと加工される。
【0033】
吸入の目的のために、最適な粒径のエアゾールを発生し、かつ患者にとってできる限り適切な吸入技術を使用して投与することができる多数の装置が入手可能である。計量されるエアゾールのための付属品(スペーサ、エキスパンダ)および洋なし型の容器(たとえばNebulator(R)、Volumatic(R))および自動送り出し作動器(Autohaler(R))の使用以外に、一連の技術的解決手段が特に粉末吸入器(たとえばDiskhaler(R)、Rotadisk(R)、Turbohaler(R)またはEP0505321、EP407028、EP650410、EP691865、EP725725、WO99/21601、US6120752またはUS6264923に記載されている技術)に関して入手可能であり、これらによって活性化合物の最適な投与を行うことができる。
【0034】
経鼻的な投与のための製剤の組成および製造に関して、たとえばWO01/28562およびWO01/28563を参照する。
【0035】
以下の例は本発明を制限することなくさらに詳細に説明する。RTは室温、minは分、hは時間、m.p.は融点およびabs.は無水を表す。
【0036】
実施例
1.定義された粒径を有する結晶性16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]の製造
16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]を表に指示されている温度で適切な量のエタノール中に溶解する。該溶液を、温度を維持し、かつ強力に撹拌しながら、記載の水温で記載の量の水に滴加する。沈殿物を吸引により濾別し、水で洗浄し、かつ乾燥させる。
【0037】
表のX60はSympatec HELOS−LASER回折検出器または同等の装置中で乾燥測定法により測定する[パラメータ:測定時間(5s)、時間基準(1000ms)、参照測定時間(5s)、測定範囲/レンズ(R2 0.25/0.45、87.5μm)、出発条件(開始ボタン後0.000s)、分散モジュール(RHODOS+VIBRI)、測定モード(HRLD)、床高さ(2mm)、出力(50%)、分散圧力(3.50バール、実際に測定される圧力の、許容される変化は3.30バール〜3.70バールおよびフラオンホーファーの回折図の評価)]。WO98/09982に記載されている結晶化法と比較して、エピマーの富化は観察されない。
【0038】
【表1】

【0039】
2.WO98/09982に記載されている方法による16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]のエピマー富化
2.1 16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)](以下ではAとよぶ(粗生成物、油状物、R/Sエピマー比約90/10))316g(584ミリモル)をabs.エタノール1.1l中に溶解し、かつ沸騰させながら、水700mlを添加する。該混合物を強力に撹拌しながらRTにし、かつ沈殿物を吸引により濾別し、abs.エタノール/水:2/1 500mlで洗浄し、かつ50℃で5時間、真空炉中で乾燥させる。
【0040】
収率:A 237g(438ミリモル、75%)、R/Sエピマー比約95/5。
m.p.:199〜201℃。
【0041】
生成物をabs.エタノール900ml中に溶解し、かつ沸騰させながら水650mlを添加し、かつ生成物を上記のとおりに単離する。
【0042】
収率:A 209g(386.5ミリモル、88%)、R/Sエピマー比約97/3。
m.p.:201〜203℃。
【0043】
生成物をabs.エタノール800ml中に溶解し、かつ沸騰させながら水450mlを添加し、かつ生成物を上記のとおりに単離する。
【0044】
収率:A 178g(329ミリモル、85%)、R/Sエピマー比約98.5/1.5。
m.p.:205〜206℃。
【0045】
生成物をabs.エタノール600ml中に溶解し、かつ沸騰させながら水350mlを添加し、かつ生成物を上記のとおりに単離する。
【0046】
収率:A 161g(298ミリモル、90.5%)、R/Sエピマー比>99.5/0.5。
m.p.:206.5〜207℃。
【0047】
2.2 A(R/Sエピマー比約89/11)1.5g(2.77ミリモル)をabs.メタノール3ml中に溶解し、かつ沸騰させながら、水1mlを添加する。該混合物を撹拌しながらRTにし、かつ沈殿物を吸引により濾別し、少量のメタノール/水=3/1により洗浄し、かつ上記のとおりに乾燥させる。
【0048】
収率:A 1.21g(80.6%)、R/Sエピマー比約93:7。
【0049】
2.3 A(R/Sエピマー比約91.5/8.5)5g(9.25ミリモル)を沸騰しているイソプロパノール15ml中に溶解し、かつ水10mlを添加する。該混合物を撹拌しながらRTにし、かつ沈殿物を吸引により濾別し、少量のイソプロパノール/水=2/1により洗浄し、かつ上記のとおりに乾燥させる。
【0050】
収率:A 4g(80%)、R/Sエピマー比約94:6。
【0051】
2.4 A(R/Sエピマー比約89/11)1.5g(2.77ミリモル)を沸騰しているアセトン4ml中に溶解し、かつ水1mlを添加する。該混合物を撹拌しながらRTにし、かつ沈殿物を吸引により濾別し、少量のアセトン/水=2/1により洗浄し、かつ上記のとおりに乾燥させる。
【0052】
収率:A 1.12g(75%)、R/Sエピマー比約95:5。
【0053】
3. WO98/09982に記載されている方法による分別結晶化により得られる16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]のX60
以下の表は、WO98/09982(例2を参照のこと)に記載された方法により得られた16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]に関するX60値を含む。X60値は適切な方法により測定される。エタノール/水の欄は、結晶化のために使用される体積による水に対するエタノールの比率に関する。
【0054】
【表2】

【0055】
結果:WO98/09982に記載されている方法により得られた16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]は、明らかにより高いX60値を有する。これらの値は吸入のために適切な粒径のX60値の範囲ではない。
【0056】
4. アシル化による式Iの出発化合物の製造
A.16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]
16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11.21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]10gおよび炭酸カリウム6gをアセトン50ml中に懸濁させ、かつ撹拌しながら、無水イソブチル酸4.4mlを添加し、かつ混合物を還流下で2.5h加熱する。RTに冷却した後、水100mlを該懸濁液にゆっくり添加する。生成物を吸引により濾別し、水で洗浄し、かつ乾燥させる。Rエピマーの富化は上記のとおりに行う。
【0057】
粗生成物の収率:16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]11.4g(理論値の99.3%)。
【0058】
式Iの化合物のエピマー比の測定
エピマー比をHPLCにより測定する。
【0059】
HPLC条件:
カラム材料:Hypersil C18.5μm、125×4.6mm、
検出器波長:242nm、
試料濃度:0.5〜1.5mg/ml、
負荷体積:20μl、
流速:1m/分、
炉の温度:20℃、
化合物A:溶離剤:水(45%)/エタノール(55%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)適切な水混和性有機溶剤中の式Iの化合物の溶液を製造し、
b)a)で得られた溶液を水に添加し、かつ
c)形成された式Iの化合物の沈殿物を単離する
工程を含む、定義された粒径を有する結晶形の式I
【化1】

の化合物を製造する方法。
【請求項2】
適切な水混和性有機溶剤がアルコールである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
メタノール、エタノール、N−プロパノールまたはこれらの任意の混合比での混合物の群からアルコールを選択する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
エタノールが関与する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
アセトン、テトラヒドロフランまたはジメチルホルムアミドが関与する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
適切な水混和性有機溶剤の温度が溶剤の沸点より15℃〜10℃低い範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
適切な水混和性有機溶剤の温度が、方法を実施する室温に相応する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
水の温度が10〜50℃である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
水の温度が方法を実施する室温に相応する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
式Iの化合物が化学名16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン[11ベータ,16アルファ(R,S)]を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
式Iの化合物がほぼRエピマーの形である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
式Iの化合物中のRエピマーの比率が95%を上回る、請求項11記載の方法。
【請求項13】
シクレソニドが関与する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
工程c)の後で得られた沈殿物がほぼ乾燥している、請求項1記載の方法。
【請求項15】
a)式II
【化2】

の化合物を適切なアシル化剤によりアシル化することにより式Iの化合物を製造し、
b)適切な水混和性有機溶剤中の化合物の溶液に水を添加することにより、または適切な水混和性有機溶剤と水とからなる混合物中の式Iの化合物の懸濁液を加熱することにより、a)で得られた式Iの化合物を結晶化し、
c)得られるRエピマーが富化された式Iの化合物の沈殿物を水/溶剤混合物から除去し、
d)所望の場合には工程b)を繰り返し、
e)c)で得られた化合物の、適切な水混和性有機溶剤中の溶液を製造し、
f)e)で得られた溶液を水に添加し、かつ
g)形成された式Iの化合物の沈殿物を単離する
工程を含む、定義された粒径を有する結晶形の請求項1記載の式Iの化合物を製造する方法。
【請求項16】
粒径が10以下のX60により特徴付けられる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
粒径が1.8〜2.0の範囲のX60により特徴付けられる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
工程b)およびe)で使用される有機溶剤が同一の溶剤である、請求項15記載の方法。
【請求項19】
化合物が吸入可能な形である、その後の微粉化工程を行わない、請求項1の記載により得られる式Iの化合物。
【請求項20】
式Iの化合物の粒径が1.8〜2.0の範囲のX60を有する、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
化合物が微粉化された形でない、請求項19または20記載の化合物。
【請求項22】
10以下のX60により特徴付けられる粒径を有する結晶性シクレソニド。
【請求項23】
1.8〜2.0の範囲のX60により特徴付けられる粒径を有する結晶性シクレソニド。
【請求項24】
シクレソニドが微粉化された形でない、請求項22または23記載の結晶性シクレソニド。
【請求項25】
化合物が固体粒子として製薬学的に認容可能な添加剤と一緒に存在する、請求項19から24までのいずれか1項記載の化合物を含有する製剤。
【請求項26】
化合物の水性懸濁液である、請求項25記載の製剤。
【請求項27】
ドライパウダーである、請求項25記載の製剤。

【公表番号】特表2006−521332(P2006−521332A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505496(P2006−505496)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050373
【国際公開番号】WO2004/085460
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(390019574)アルタナ ファルマ アクチエンゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】ALTANA Pharma AG
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2、 D−78467 Konstanz、 Germany
【Fターム(参考)】