説明

実環境におけるイベントをシミュレートするためのシステム

静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを包含する実環境におけるイベントをシミュレートするためのシステム:a)イベントが行われる期間内に、静的オブジェクトに対する実環境の動的オブジェクトの位置を絶えず決定し続ける位置特定ユニット;b)環境の動的オブジェクトおよび静的オブジェクトを記述するデータを記憶する記憶要素;c)(b1)静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを記述する記憶要素からのデータと、(b2)ある一定の瞬間における、環境の静的オブジェクトと動的オブジェクトの相互位置を指示する位置特定ユニットからのデータとを処理する、シミュレーションソフトウェアがロードされている処理要素;d)処理要素による処理の結果としてシミュレートされた環境上に選択された視点からのシミュレートされたビューを表示する表示要素;e)前述の期間を同時に決定する、ある範囲の連続した瞬間にわたって、処理要素および表示要素の機能を繰り返す制御手段、を開示する。位置特定ユニットは衛星ナビゲーションシステムまたは衛星ナビゲーションシステムに関連したシステムを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般にはコンピュータゲームの分野に関する。より詳細には、本発明は、静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを包含する実環境におけるイベントをシミュレートするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
この種のシステムは先行技術により既知のものである。一例がEP0773514(特許文献1)に記載されている。この先行技術システムは、具体的には、比較的制限された区域で行われる試合、スポーツイベントなどをシミュレートするためのものである。試合中の選手または競争者はそれぞれトランスポンダを所持し、球技におけるボールなどの他の動くオブジェクトにも、その内部または表面にトランスポンダが設置されている。試合が行われる区域のすぐ近くには、様々なトランスポンダから信号を受信する何台かの受信機が設置されている。各トランスポンダは、個々のトランスポンダを認識することができるように、識別コードを送信する。送信される信号は何台かの受信機によって受信されるため、位相測定に基づいて個々のトランスポンダの正確な位置を決定することができる。この種の位置特定手段自体は公知であり、これ以上の説明を要するものではない。様々な受信機によって獲得されるデータは様々な位置を計算するためにプロセッサに転送され、位置決定データは、シミュレートされる動的オブジェクトが、それらが実環境において動くのと同様にシミュレートされる環境においても動くように実環境のシミュレーションを表示するための表示手段を制御するのに使用される。
【0003】
各イベントの前に、動くオブジェクトのそれぞれにトランスポンダを設置する必要があり、少なくとも3台(好ましくは正確さを高めるためにもっと多く)の受信機を、イベントが行われる区域のすぐ近くに設置する必要がある。
【0004】
別の先行技術システムがW09846029(特許文献2)に記載されている。このシステムでは、位置特定手段は、イベントが行われる区域の周りの固定点に設置された何台かのテレビカメラを備えるビデオシステムとして実施される。
【0005】
各カメラは、動的オブジェクトそれぞれについての情報を提供し、各カメラは異なる視点を有し、様々な動的オブジェクトを異なる視角から見るため、この情報から、どの時点においても、動的オブジェクトそれぞれの正確な位置を計算することができる。カメラの台数が多いほど、より正確な位置を決定することができるが、所望の結果を得るためにより多くの計算を行うことが必要になる。各イベントの前にカメラを一定の場所に設置する必要があり、実環境に関連したこれら一定の場所それぞれの正確な位置を非常に正確に決定する必要がある。
【0006】
FR2726370(特許文献3)には、試合における選手またはスポーツイベントにおける競争者のそれぞれの瞬間的位置に関するデータを提供するシステムが記載されている。これらのシステムの目的は、実環境のシミュレーションを獲得するのに十分なデータを集めることではない。実際の目的は、試合またはスポーツイベントの経過を追跡する審判員または他の役員に、必要な場合に、正しい判断を行うのに十分なデータを提供することである。2つの態様が示されている。一方の態様では、前述の第1の文献に記載されているようなトランスポンダが使用され、第2の態様では、前述の第2の文献に記載されているようなテレビシステムが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP0773514
【特許文献2】W09846029
【特許文献3】FR2726370
【発明の概要】
【0008】
前記先行技術システムの欠点は、イベントが行われる前に、区域の周りにテレビカメラまたは無線受信機を設置する必要があることである。これらの機器の相互の位置は、非常に正確に調整され、または測定される必要がある。イベントの後、カメラまたは受信機は取り外される必要がある。特に、テレビカメラの態様では、様々な画像から所望の位置データを獲得するために、相当な計算能力が必要である。
【0009】
そこで本発明の一目的は、先行技術システムの欠点が解消される改善されたシステムを提供することである。
【0010】
本発明は、静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを包含する実環境におけるイベントをシミュレートするためのシステムであって、a)イベントが行われる期間内に、前記静的オブジェクトに対する前記動的オブジェクトの位置を実環境において絶えず決定し続ける位置特定手段と、b)前記環境の動的オブジェクトおよび静的オブジェクトを記述するデータを記憶する記憶手段と、c)b1)静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを記述する前記記憶手段からのデータと、b2)ある一定の瞬間における、環境の静的オブジェクトと動的オブジェクトの相互位置を指示する位置特定手段からのデータとを処理する、シミュレーションソフトウェアがロードされている処理手段と、d)処理手段による処理の結果としてシミュレートされた環境上に選択された視点からのシミュレートされたビューを表示する表示手段と、e)前述の期間を同時に決定する、ある範囲の連続した瞬間にわたって、c)およびd)に示す手段の機能を繰り返す制御手段とを含むシステムに関するものである。
【0011】
本発明は、静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを包含する実環境におけるイベントをシミュレートするシステムおよびプロセスに関するものである。位置特定手段は、イベントが行われる期間内に、前記静的オブジェクトに対する動的オブジェクトの位置を実環境において絶えず決定し続ける。電気的、磁気的、光学的記憶などの記憶手段は、前記環境の動的オブジェクトおよび静的オブジェクトを記述するデータを記憶する。コンピュータプロセッサなどのプロセッサは、位置特定手段と記憶手段に動作可能な状態で接続されている。プロセッサは、静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを記述する記憶手段からのデータと、ある一定の瞬間における、環境の静的オブジェクトと動的オブジェクトの相互位置を指示する位置特定手段からのデータとを処理する。処理手段には、シミュレーション命令コード、すなわちソフトウェアをロードすることができる。
【0012】
プロセッサには、グラフィックディスプレイなどのディスプレイが動作可能な状態で接続されている。ディスプレイは、プロセッサによる処理の結果として、シミュレートされた環境上に、選択された視点からのシミュレートされたビューを表示する。態様によっては、人工知能エンジンが、動的オブジェクトの一つまたは複数との相互作用を選択的に管理する。制御手段は、プロセッサとディスプレイとに動作可能な状態で接続されている。制御手段は、前述の期間を同時に決定する、ある範囲の連続した瞬間にわたってプロセッサおよびディスプレイの機能を繰り返す。態様によっては、位置特定手段は、衛星ナビゲーションシステムを含む。態様によっては、環境データベースは、競技会が開催される特定の環境を知った後に、環境のシミュレーションを実環境にて選択されたものに合わせることができるように事前に記憶された、いくつかの予想される競技環境に関するデータを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図1】本発明によるシステムの第1の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい態様の詳細な説明
前記目的に従い、本発明は、静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを包含する実環境におけるイベントをシミュレートするためのシステムであって、a)イベントが行われる期間内に、前記静的オブジェクトに対する前記動的オブジェクトの位置を実環境において絶えず決定し続ける位置特定手段と、b)前記環境の動的オブジェクトおよび静的オブジェクトを記述するデータを記憶する記憶手段と、c)b1)静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを記述する前記記憶手段からのデータと、b2)ある一定の瞬間における、環境の静的オブジェクトと動的オブジェクトの相互位置を指示する位置特定手段からのデータとを処理する、シミュレーションソフトウェアがロードされている処理手段と、d)処理手段による処理の結果としてシミュレートされた環境上に選択された視点からのシミュレートされたビューを表示する表示手段と、e)前述の期間を同時に決定するある範囲の連続した瞬間にわたって、c)およびd)に示す手段の機能を繰り返す制御手段とを備え、前記位置特定手段が衛星ナビゲーションシステム、または衛星ナビゲーションシステムに関連したシステムを備えることを特徴とするシステムを提供する。
【0015】
そのような衛星ナビゲーションシステムは先行技術により公知である。広範に使用されているのはGPS(全地球測位システム)である。GPS受信機は一般に利用することができ、例えば、船での航海などで測量操作を支援するのに使用される。GPSは、Navstar(衛星作動周期調整と測距を用いた航法)と呼ばれる旧来のシステムに基づくものである。GPSシステムは、米国軍事当局によって運営されている。Glonassと呼ばれる類似のシステムは、ロシア政府当局によって所有、運営されている。
【0016】
さらに正確さを高めるためには、いわゆるディファレンシャルGPS(DGPS)受信機が公知である。DGPSの使用は、その位置が正確に知られている局所的基準により可能となる。前記基準に基づいてGPSデータに修正を加えることによって、全体的な精度を著しく改善することができる。
【0017】
競技会における競争者または試合における選手を位置決めするためのGPSの使用は、従来技術により既知である。第1の従来技術システムはNL9301186に記載されている。
【0018】
このオランダの文献によれば、競技会における各競争者または試合における各選手は、適切な手段によって送信機に接続されているGPS受信機を所持する。様々な衛星から受信される信号に基づき前記受信機によって計算される位置データは、送信機に転送され、中央局に送信される。中央局はこのようにしてすべての競争者または選手に関する位置データを受信し、このデータは、審判員または他の判定員もしくは管理員によって、正しい判断を行うために使用される。言い換えると、位置データは、シミュレートされた選手が実環境における実際の選手と全く同様にふるまう、シミュレートされた実環境の生成を制御するためには使用されない。
【0019】
別の先行技術システムがUS5731788に記載されている。この場合にも、競争者はそれぞれ、各競争者の位置データを中央局に送信するための送信機に接続されたGPS受信機を所持し、中央局では前記データを、イベントの経過をより詳細に追跡するのに使用することができる。またこの場合にも、シミュレートされた実環境において競争者をシミュレートするために位置データを使用することについては何も記載されていない。
【0020】
原則として、シミュレートされた環境をユーザから見えるようにするために任意のディスプレイを使用することができる。しかし、PC画面などではなく、例えば、US5674127に記載されているようなより洗練された表示装置を使用することもできる。この特許は複数のユーザのゲームを説明するものであり、実環境のシミュレーションとは関係がない。
【0021】
シミュレートされた環境を提供するのに必要なすべての手段を(例えば、制御のために)実環境のすぐ近くに配置することもできるが、これらの手段は、一般には、別の場所に設置される。
【0022】
従って本発明の一具体的態様は、記憶手段、処理手段、表示手段および制御手段が実環境から遠く離れた場所にあるユーザ端末として設置されること、ならびに位置特定手段から記憶手段に位置データを転送するのに転送手段が使用されることを特徴とする。
【0023】
より一般的には、システムは、システムの各ユーザごとに、記憶手段、処理手段、表示手段および制御手段が実環境から遠く離れた場所にあるユーザ端末として設置され、位置特定手段からすべての前記記憶手段に位置データを転送するのに転送手段が使用されるように実施される。
【0024】
実際の競技環境からシミュレーションシステムに位置データを転送するための伝送媒体は、インターネットによって実施されることが好ましい。その大きな利点は、位置データをある特定のサイトで提供することができること、およびごく少数から非常に多数に至るまで様々な数のユーザがこのサイトにログインし、位置データを各自のシステムへと取り込むことができることである。インターネットを利用することの欠点としては、位置データが実際の競技会で記録される瞬間と位置データがシステムで提供される瞬間までの間にある一定の遅延が発生することが考えられる。別の欠点としては、人気のある実際の競技会の場合に、サイトにログインしようとする人があまりにも多いために過負荷状態が生じ、ユーザの一部に必要なデータを提供することができなくなる可能性が高いことがあげられる。
【0025】
この欠点を解消しようとする場合には、転送媒体として(有線または無線の)電話網を利用することが好ましい。その場合にも、一定の遅延が電話網を介して発生するが、該遅延は、特に競技環境がシステムからあまり遠く離れていない場合には、無視し得る程度のものとみなすことができる。
【0026】
位置データがシステムにおいて、シミュレートされた環境内における競技会が実際の競技会と時間的に一致するように使用されることは、必ずしもあらゆる状況下において必要であるとは限らない(前述の通信遅延は別として)。また、すべての位置データを対応する時間データと一緒に適切な記憶媒体上に記憶すること、および該記憶媒体を転送媒体として使用することも可能である。この態様では、ユーザは、自分のシステムをいつでも活動化することができ、過去に行われた競技会に「参加」することができる。
【0027】
最後に示した態様では、記憶媒体は、コンパクトディスク(CDと略記される)(または類似の製品、またはそこから派生した製品)によって構成されることが好ましい。他の記憶媒体には、ハード・ディスク・ドライブ、ネットワークで接続された記憶、および、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、フラッシュメモリなどの電子記憶が含まれる。
【0028】
システムを長期間にわたって最新に保つためには、競争者に関するデータを更新することが必要になる。実際には、いつも同じ競争者が次の競技会に参加するとは限らない。適応を可能にするために、システムは、所定の競技会についての競争者を知った後に、シミュレートされた環境内において、実際の競争者のシミュレーションを合わせることができるように、複数の予想される競争者に関するデータが記憶されている競争者データベースを備えることが好ましい。
【0029】
そのように、あるデータベースに複数の競争者に関するデータを書き込むこともできるが、ある一定の期間には、実際の試合の競争者がいずれにせよデータベースに記憶され、一定の時間の後には、新しいデータを追加することが必要になるものと想定される。その点に関しては、データベースに含まれない競争者に関するデータを、競争者データベースに記憶されるように、適切な転送媒体を介して適切なソースから追加できることが好ましい。
【0030】
競技会は必ずしも常に同じ環境において、または同じトラック上で開催されるとは限らないため、前述の特許請求の範囲のいずれか一項記載のシステムは、競技会が開催される特定の環境を知った後に、前記環境のシミュレーションを選択された実環境にあわさせることができるように、いくつかの予測される競技環境に関するデータが記憶されている環境データベースを備えることが好ましい。
【0031】
一般に、特定のスポーツもしくは競技会のためのトラックの数または特定のイベントのための環境には制限がある。環境を追加することまたは削除することは、可能性が高くはないがあり得ないことではない。その場合には、環境データベースに包含されない環境に関するデータを、該環境データベースに記憶されるように、適切なソースから適切な転送媒体を介してシステムに転送することができることが好ましい。
【0032】
環境のシミュレーションを可能な限りリアルなものにするために、環境のシミュレーションを、適切な手段によって実環境上で撮影される画像によって実現し得ることが好ましい。
【0033】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0034】
図1に、本発明によるシステムの第1の態様を示す。システムは、表示画面12、キーボード14およびジョイスティック16を備えるコンピュータ10を備える。コンピュータ10には、システムの画面12上で競技環境をシミュレートするためのソフトウェアがロードされている。この競技環境は、何名かの競争者が開始位置と終了位置の間を移動することができる所定のトラックを備える。トラックは、実際には、シミュレートされる競技環境における競争者のうちの1人であるシステムのユーザの視点から表示される。この瞬間には、表示ユニット12の画面は、自動車レーストラックの一部を示しており、ユーザの前方左側には別の競争者が見えている。ユーザは、ジョイスティック16によって、またはハンドルなどの別の入力装置によって、自分の速度および方向に影響を及ぼすことができる。
【0035】
前述のような種類のシステムは一般にはいわゆるコンピュータゲームまたはコンピュータアニメーションとして公知であり、これによってユーザは、あたかも自分がレースに参加しているかのように競争することができる。
【0036】
本発明に従って、錯覚の「現実性」を著しく改善するために、画面12上のシミュレーションと実際のサーキットからの実際の試合との間の関係が確立される。図1では、実際のサーキットが20で指示されており、このサーキットでは、特に、競争者22、24および26とのレースが行われている。競争者はそれぞれ、サーキットの競争者の瞬間的位置に関するデータを中央ポスト28に連続して送信できるようにするための装置を所持している。位置データは、例えば、そのうちの1台が図の30で示される何台かのGPS衛星によって、それ自体の位置を正確に求めることのできる、各車両に設置されたGPS受信機によって収集することができる。したがって、GPS受信機によって供給されるデータは、トラック20上の各競争者の位置をいつでも正確に特定することができる。次にこれらの位置データを、通信ネットワーク32を介してコンピュータ10に送信することができる。この用途におけるコンピュータ10には、画面12上で実際のトラック20を、正確に、きわめて高い現実味を帯びたコンテンツを用いてシミュレートすることのできるソフトウェアがロードされている。システムのユーザは、自分が実際のトラック20上で運転しているようなイメージを持つ。さらにソフトウェアは、それらの競争者22、24、26などが実際に存在している実際のトラック20上の位置に対応するシミュレートされたトラック上の位置において、他の競争者が画面上でシミュレートされるように実施される。シミュレートされたトラック20上のユーザが、例えば、実際の競争者22よりわずかに遅れた位置にいる場合、実際のトラック20上では、これを仮想競争者34によって示すことができる。前記仮想競争者34の役割を果たすシステムのユーザには、自分の画面上で、図1に22aで示すシミュレートされた実際の競争者22が見える。
【0037】
以上では、位置を特定するのにGPS受信機が使用されるものと想定されている。一方、必ずしもすべてのGPS受信機がこの用途に適するとは限らない。通常GPS受信機は、数十メートルの精度で位置を特定する。しかし、修正が加えられた場合、精度はさらに上がって数センチメートルになる。修正手段の一例は、例えば、そのようなものとして公知であるいわゆるDGPSシステムなどである。本発明の範囲内においては、好ましくは、そのような修正を伴う受信機が適用される。しかしながら他方で、例えば、レーザ測定、トラックロード内トランスポンダなどに基づく他の位置決定手段を使用することも可能である。したがって、様々な種類の位置決定手段が公知であり、詳細は不要であると思われる。
【0038】
データネットワーク32は電話網を含み得、それによって有線と無線両方の電話網、および場合によっては、これらの組み合わせが考えられる。電話網の利点は、実際のサーキット20上の実際の競技会と画面12上のシミュレートされる競技会とがほぼ時間的に一致することである。しかし、電話網を使用することの欠点は、一般に、例えば、2時間にわたる競技会全体に参加するための費用が大幅に増大し得ることである。したがって、電話網ではなく、例えば、インターネットを使用する方が好ましい。ユーザは、インターネット接続を有する必要があり、この接続を介し、連続して可能な限り最小限の遅延で実際の競技会におけるすべての競争者の位置データを提供する特定のサイトにログインすることができる必要がある。これらの位置データは、コンピュータ10上で走るソフトウェアに絶えずロードされる。その後前記コンピュータ10は、画面12上で、画面12上のシミュレートされたレースが実際のサーキット20上の実際のレースとほぼ時間的に一致するようにシミュレーションを行うことができる。この方法の利点は、サイトが十分な接続を提供することができ、十分なアクセス可能性を有する場合に、多数のユーザが同時に、自分のシステムを用いて、サーキット20上の実際のレースに「参加」し得ることである。
【0039】
インターネットではなく、テレビ網による利用も可能である。その場合位置データは、文字多重放送システムによってユーザに転送される。最終的には、コンピュータディスプレイの代わりにシミュレーションを視覚化するのにテレビ受信機の画面を使用することができる。
【0040】
これまでは、シミュレートされる競技会が自動車レースに関連するものであると想定してきた。しかし、本発明はそれだけに限定されるものではない。本発明は、自動車レースではなく、モーターレース、自転車競技、ランニング競技、競馬、モーターボートや帆船によるレース、軍事演習などに関するものとすることもできる。さらに競技会は、レースをある一定の周回数にわたって行うための、図のサーキット20のような閉じたサーキットで行われる必要はない。その代わりに、トラックは、ある開始点とある終了点の間の1本のトラックからなるものとすることもできる。このようにして、システムの画面上で、例えば、ツール・ド・フランスなどの自転車競技のトラックをシミュレートすることもできる。しかし、はるかに長いトラックのトラックデータをコンピュータに記憶する必要があるため、コンピュータのメモリキャパシタに、より多大な要求を課すことになるのは明らかである。
【0041】
競技会は常に同じトラック上で行われるとは限らないため、コンピュータ10は、いくつかの競技環境を記憶するための記憶手段を有することが好ましい。それによってシステムのユーザは、レースがどこで開催されているかにかかわらず、メモリから正しい環境を呼び出すことができるためレースに参加することができる。
【0042】
同様に、システム10は、ある瞬間に実際の競技会に参加している競争者に従って複数の実際の競争者に関するデータが記憶されるメモリを備え、競争者の個々のデータをメモリから呼び出すことができ、そのデータを用いて実際に参加している競争者を画面上でシミュレートすることができることが好ましい。
【0043】
実世界の動的オブジェクトとシミュレートされたオブジェクトの間の相互作用を管理するために、コンピュータ10上で走るソフトウェアは、人工知能(AI)エンジンを含む。態様によっては、AIエンジンは、仮想競争者34と実際の競争者22のシミュレーションとの衝突を管理する(すなわち、防止する)ための衝突検出を含む。これは、仮想競争者34、実際の競争者22、または仮想競争者34および実際の競争者22それぞれの周りの相互作用境界によって達成することができる。相互作用境界は、速度および方位に従って範囲、形状、または範囲および形状両方が変化し得る、仮想競争者34から投影された多角形トンネルとして定義することができる。
【0044】
仮想競争者34が瞬間的に、シミュレートされた競争者22の位置に近づきすぎた位置を取るときには、多角形トンネルのうちの一つがシミュレートされた競争者22と交差し、衝突の可能性を識別する。これが発生すると、AIエンジンは、シミュレートされた実際の競争者22の制御権を一時的に取得し、自律モードで動作させる。AIエンジンは、トラック20上の特定の地点において仮想競争者34を追い越す方が賢明であるかどうか、およびそのトラック上の位置が与えられた場合にその追越しを知覚し得る速度で行うことができるかどうか判定する追越しシーケンスを開始することができる。AIエンジンが、シミュレートされた実際の競争者22に自律的に仮想競争者34を追い越させることにした場合、AIエンジンは、そのような追越しシーケンスを行い、仮想競争者34を追い越す。追越しシーケンスは、フレームごとにシーケンスの再計算を行うことによって実施することができる。自律的なシミュレートされた実際の競争者22が追越し手順を完了すると、シミュレートされた競争者22は、スムーズで現実的な移行を可能にするように、一連のフレームを超えたところにあるその時点におけるトラック20上の実際の競争者22の実際の位置に再配置される。自律的なシミュレートされた実際の競争者22がトラック20上の実際の競争者22の位置に到達した後で、シミュレートされた実際の競争者22は再度、実際の競争者22から獲得された位置データ(例えば、GPSデータ)によって扱われる。
【0045】
そのような追越しシーケンスの代替として、またはこれに加えて、AIエンジンは、シミュレートされた実際の競争者22が少なくとも一時的にAIエンジンによって制御される別のシナリオを実施することもできる。態様によっては、シミュレートされた実際の競争者22のそのような自律的制御は、仮想競争者34に応答して行われる。好ましくは、そのような仮想競争者34とシミュレートされた実際の競争者22の間のAIエンジン制御による相互作用は、仮想競争者34に、仮想競争者34とシミュレーション内の実際の競争者22の1名または複数との間の現実的な相互作用を提供するように実施される。
【0046】
例示的な態様では、仮想競争者34は、ユーザ入力が結果的に通常は仮想競争者34とシミュレートされた実際の競争者22の間の非現実的な相互作用(例えば、衝突事故)をもたらすはずの場合でさえも、仮想競争者34のユーザ制御を犠牲にすることなくユーザ入力に応答し続ける。むしろ、AIエンジンは、ディスプレイ内におけるシミュレートされた実際の競争者22の位置が、少なくとも一時的には、実際の競争者22の実際の位置と異なるようにシミュレートされた実際の競争者22を制御するのを仮定することによって、そのような潜在的相互作用を処理する。適当な期間の後、条件が許せば、AIエンジンは、シミュレートされた実際の競争者22を、トラック20上の実際の競争者22の実際の位置に対応する位置に戻す。AIエンジンの例示的な動作はレースカーの相互作用の状況の範囲内で説明されているが、AIエンジンは、仮想競争者と実際の競争者のシミュレーションの間の相互作用を同様に扱うこともできる。
【0047】
態様によっては、AIエンジンは追加機能を含む。例えば、実質的なデータ供給停止が生じ得る状況(例えば、損失データが待ち時間より大きく、データ補間が不可能である場合)では、影響を受けるシミュレートされた実際の競争者22はそれぞれ、AIエンジンによって一時的に自律モードで制御される。AIエンジンは、シミュレートされた実際の競争者22を、最新の公知の方向位置から制御パスに変換する。態様によっては、制御パスは、所与のトラック20について以前に求められた予測される最善のパスである。自律的制御は、フレームごとのプロセスとしてデータ供給停止の間中ずっと続き、最新の公知の速度、方位、および加速度を継続する。一方、シミュレーションソフトウェアは、引き続き有効なデータを受け取ろうとする。有効なデータの受信を再開した後で、AIエンジンは、自律的に制御されたシミュレートされた実際の競争者22を、トラック20上の実際の競争者22の実際の位置に移行させる。この場合もやはり、制御パスから実際の競争者22の実際の位置へのこの移行を、AIエンジンにより、フレームごとのプロセスを使用したスムーズで、現実的な方法で行うことができる。
【0048】
前述の各態様では、シミュレートされる試合および実際の試合がほぼ同期されて行われるものと仮定している。しかし、それが常に必要であるとは限らない。好ましい一態様では、対応する時間測定値と共に競技会中に収集されるすべての位置データが、競技会中に適切な記憶手段に記憶される。前記記憶手段は、転送媒体として機能することもでき、すべてのデータが記憶された後で、システムに転送することもでき、ユーザがずっと後になってからいつでもレースに参加するために使用することができる。ますます多くのパーソナルコンピュータがCDプレーヤを備えるようになってきているため、記憶手段としては、好ましくは、コンパクトディスクが使用される。前記コンパクトディスクはシステム内の有意な製品を構成するため、該コンパクトディスクには添付の特許請求の範囲によって別の権利が主張されるものである。
【0049】
通信手段としてインターネットが使用される一態様におけるシステムの別の重要な構成要素が、ユーザが位置データを獲得するためにそこにログインする必要のあるインターネットサイトである。位置データを提供するためのサイトであり、そのことを特徴とするこのサイトについても、添付の特許請求の範囲によって別の権利が主張されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを包含する実環境におけるイベントをシミュレートするためのシステムであって、
a)イベントが行われる期間中に、静的オブジェクトに対する動的オブジェクトの位置を実環境において絶えず決定し続ける位置特定手段と、
b)環境の動的オブジェクトおよび静的オブジェクトを記述するデータを記憶する記憶手段と、
c)b1)静的オブジェクトおよび動的オブジェクトを記述する記憶手段からのデータと、
b2)ある一定の瞬間における、環境の静的オブジェクトと動的オブジェクトの相互位置を指示する位置特定手段からのデータと
を処理する、位置特定手段と記憶手段とに動作可能な状態で接続された、シミュレーションソフトウェアがロードされている処理手段と、
d)処理手段による処理の結果として、シミュレートされた環境上に選択された視点からのシミュレートされたビューを表示する、処理手段へ動作可能な状態で接続された表示手段と、
e)動的オブジェクトの一つまたは複数との相互作用を選択的に管理するように適合された人工知能エンジンと、
f)前述の期間を同時に決定するある範囲の連続した瞬間にわたって、処理手段および表示手段の機能を繰り返す、処理手段と表示手段とに動作可能な状態で接続された制御手段と
を備え、
位置特定手段が衛星ナビゲーションシステムを備え、かつ、
競技会が開催される特定の環境を知った後に、環境のシミュレーションを、実環境で選択された環境へ合わせられるように、いくつかの予想される競技環境に関するデータが記憶されている環境データベースを備える、システム。
【請求項2】
記憶手段、処理手段、表示手段および制御手段が、実環境から遠く離れた場所にあるユーザ端末として設置されること、ならびに位置特定手段から記憶手段に位置データを転送するために転送手段が使用されることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
システムの各ユーザごとに、記憶手段、処理手段、表示手段および制御手段が、実環境から遠く離れた場所にあるユーザ端末として設置されること、ならびに位置特定手段からすべての記憶手段に位置データを転送するために転送手段が使用されることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
転送手段としてインターネットが使用されることを特徴とする、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
転送手段として電話網が使用されることを特徴とする、請求項2記載のシステム。
【請求項6】
競技会の全期間において、すべての位置データが対応する時間データと共にメモリに記憶され、該メモリが競技会後に転送媒体として使用することができることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
メモリがコンパクトディスクによって構成されていることを特徴とする、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
特定のイベントまたは競技会の競争者を知った後に、シミュレートされる環境内で、実際の競争者のシミュレーションを合わせることができるように、複数の予測される競争者に関するデータが記憶されている競争者データベースを備えることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
競争者データベースに存在しない競争者に関するデータを、該競争者データベースに記憶されるように、転送媒体を介して適切なソースからシステムに転送することができることを特徴とする、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
競争者データベースが、ユーザ端末に統合されていることを特徴とする、請求項8記載のシステム。
【請求項11】
環境データベースに包含されていない環境に関するデータを、該環境データベースに記憶されるように、適切な転送手段によって適切なソースからシステムに転送することができることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
環境データベースが、ユーザ端末に統合されていることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
実環境のシミュレーションを該実環境から撮影される画像によって実現することができることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
実際の競技会中に発生する少なくともいくつかのイベントが、シミュレートされる競技会中の適切な時点において画像を表示することができるように、別個の画像データとしてメモリCDにそれぞれ記憶されることを特徴とする、請求項4記載のシステム。
【請求項15】
その中に動的オブジェクトを有する環境の少なくとも一部のシミュレーションを表示するための表示手段が、仮想現実ヘルメットによって構成されることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
実際の競技会の少なくとも一部の間の、実際の競技会に対する少なくとも複数の競争者の位置データおよび対応する時間データを備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステムにおける適用のためのコンパクトディスク。
【請求項17】
シミュレートされた環境上における、選択された視点からのシミュレートされたビューが、動的オブジェクトと競争する仮想競争者からのビューに対応するものである、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
人工知能エンジンが、仮想競争者と一つまたは複数の動的オブジェクトとの相互作用を管理する、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
人工知能エンジンが、仮想競争者に応答して、一つまたは複数の動的オブジェクトの個々の位置を制御する、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
人工知能エンジンが、仮想競争者と、少なくとも一つの動的オブジェクトとの距離が閾値距離より小さいことに応答して、該少なくとも一つの動的オブジェクトを自律的に制御する、請求項19に記載のシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2011−517979(P2011−517979A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504550(P2011−504550)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005144
【国際公開番号】WO2009/127927
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510274946)アイオープナー メディア ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】