説明

実用車用の圧縮空気タンクおよび製造方法

【課題】費用対効果が高くかつ簡単な方法で製造可能な、実用車用の圧縮空気タンクを提供する。
【解決手段】
本発明は、溶接されるアウターベースによって両端を封止される管状又は円筒状の筐体を具備する、実用車用の圧縮空気タンクに関する。少なくとも1つのアウターベースおよび/または筐体には孔が設けられる。スリーブが孔に対して溶接される。圧縮空気タンクの少なくとも内側には、内側コーティングが施される。筐体とアウターベースとの接触面は、互いに当接し、レーザ溶接を介して溶接材料を一切用いずに互いに溶接されることができるようになっている。スリーブは、レーザ溶接またはCD溶接によって孔に対して溶接される。タンクの内側コーティングは、粉体コーティングによって施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実用車用の圧縮空気タンク(請求項1のプレアンブルに対応)に関する。
【0002】
本発明はまた、圧縮空気タンクの製造方法(請求項22のプレアンブルに対応)と、当該製造方法を実施する圧縮空気タンク製造装置とに関する。
【背景技術】
【0003】
実用車用の圧縮空気タンクは現行の技術水準において既知であり、種々の機能のために、特に圧縮空気を実用車のエアサスペンションに供給するために用いられている。
【0004】
圧縮空気タンクを実用車に用いることで、非常に多くの消費者向け装置を提供することができる。圧縮空気式ブレーキシステムおよびエアサスペンションに加え、これらの消費者向け装置は、例えば、救命システム(例えば、エアバッグ)または実用車のタイヤ圧力を変更するシステムの形態をとり得る。しかし、圧力タンクは、実用車および乗用車の分野だけでなく、他の車両、例えば、鉄道車両に関しても用いられている。
【0005】
車両、特に、実用車に加圧ガス媒体を供給する圧力タンクは、例えば、独国実用新案公開第202005018579号明細書(特許文献1)に記載されているように既知である。
【0006】
従来の圧力タンクは、筒状または円筒状の周壁(筐体)を有しており、当該周壁の開口両端面が適切なキャップ(アウターベース)を用いて封止(一般的には溶接)されることによって、指定ガスを格納するためのキャビティが形成される。キャビティには、筐体のまたはこれらのアウターベースのポート(孔)を通じてガスが充填および/または排気される。
【0007】
特許文献1には、少なくとも1つのアウターベースが筐体と一体的に構成される、圧縮空気タンクの有利な一実施形態が記載されている。必要であれば、両方のアウターベースを周壁の一部と一体的に構成することもできる。
【0008】
概して言えば、圧縮空気タンクは、機械的負荷、物理的負荷(温度)、および化学的負荷に加え、内部圧力または外部圧力によって生じるさらなる機械的負荷に耐えなくてはならない。適切な圧力タンクの製造に一般的に用いられる材料は鋼である。鋼製タンクは基本的に、機械的強度、すなわち、圧縮強度が高く、温度耐性が良好であるという利点を有する。一方、鋼の、腐食性物質に対する化学的な耐性は比較的低い。鋼製タンクは外部の天候の影響も受け易いため、通常、外側コーティング(必要であれば、内側コーティングも)またはペイントコーティングが追加で施される。当該技術分野では、圧縮空気タンクの内側コーティングは、いわゆるウェットペイントコーティングによって施される。しかし、ウェットペイントコーティングでは、満足のいく結果が得られず、特に、費用対効果が高いコーティングが不可能である。さらに、既知の圧縮空気タンクでは、アウターベースと周壁(筐体)との接合部に、いわゆる汚れ溜まりエッジ(dirt-collecting edge)(薬品エッジ(chemical edge)とも称される)が形成されるという問題がある。微粒子、つまりは、汚染物質がこのエッジに付着することで、内側コーティングの適用が阻害される。アウターベースを筐体に接続することで形成される汚れ溜まりエッジは、例えば、特許文献1の図6において見られる。アウターベースは通常、内側にテーパしたビード(リードイン面取り部)を有しており、当該ビード上を筐体または周壁が摺動する。このビードによって、接触領域が形成され、これが次いでMAG溶接処理によって溶接されることで、アウターベースが筐体に接続される。
【0009】
アウターベースが筐体と独立して構成される、従来技術から既知である圧縮空気タンクでは、2本のこのような汚れ溜まりエッジが結果的に生じる。特許文献1の図1による実施形態によってこのような汚れ溜まりエッジは回避されるが、スリーブの製造のために費用が増すことになる。
【0010】
アウターベースを筐体に接続するためのMAG溶接処理の欠点は、比較的時間がかかることにある。
【0011】
従来技術から既知である圧縮空気タンクによるさらなる問題は、アウターベースまたは筐体の孔に対してまたは孔の周囲にスリーブを嵌めることにある。これらの孔は、配線の接続等の様々な目的を果たすものである。係る接続は、例えば、プラスチック製の圧縮空気タンクを示す独国実用新案公開第20023422号明細書(特許文献2)の図1に見られる。金属製の圧力タンクの構成では、一般的に、アウターベースまたは筐体の孔に対してスリーブを溶接するようになっている。ここで、スリーブもMAG溶接処理によって溶接される。これによる欠点は、MAG溶接処理には比較的時間がかかる上、溶接材料が必要であることから、スリーブの溶接によって費用の増加が招かれるということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国実用新案公開第202005018579号明細書
【特許文献2】独国実用新案公開第20023422号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解消すること、特に、費用対効果が高くかつ簡単な方法で製造可能な、実用車用の圧縮空気タンクを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、圧縮空気タンクの有利な製造方法と、当該方法を実施する圧縮空気タンク製造装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、実用車用の圧縮空気タンクが提供される(請求項1に対応)。
【0016】
また、実用車用、特に実用車のエアサスペンション用の圧縮空気タンクの製造方法が提供される(請求項22に対応)。
【0017】
さらに、上記製造方法を実施する圧縮空気タンク製造装置が提供される(請求項25に対応)。
【0018】
筐体とアウターベースとの接触面が、当該接触面が互いに対して直角または鈍角で当接し、接続がレーザ溶接によって溶接材料を用いずに実現されるように設計されることによって、従来技術において通常形成される汚れ溜まりエッジまたは薬品エッジを有しない圧縮空気タンクが提供される。すなわち、従来の、溶接接合部を用意するための、筐体が摺動するアウターベース上の内側にテーパした突出部またはビードが、本発明が提供する解決策によって省略される。
【0019】
本発明による解決策によって、突出部およびリセス(汚れ溜まりエッジまたは薬品エッジ)の形成が回避されるため、塗装およびコーティングに最適な表面がタンクの内側に提供される。したがって、高品質な塗装またはコーティングが達成される。また、残留物が内縁に溜まり、この残留物が運転中に配線を伝って配線の破断等の問題を引き起こす状況が回避される。
【0020】
アウターベースは、レーザ溶接によって形成される円周溶接線によって高速かつ確実な方法で筐体に接続することができる。レーザの利用を可能にするために、接続される接触面は、直角もしくは鈍角でまたは互いの寸法に沿って当接することができるように用意する。これにより接触面間に形成されるギャップを可能な限り小さくする必要がある。すなわち、接触面は、結果として生じるギャップが小さくなるように、すなわち、レーザ溶接に好適になるように正確に加工される。
【0021】
最適な溶接線の形成のために、レーザビームが光のギャップを生じずに2つの接触面間のギャップに当たるようにレーザをアライメントすることが有利であり得る。
【0022】
本発明の一実施形態では、相互にアライメントされた接触面が45°以下、好ましくは15°±5°の傾斜を有するようにすることができる。ここでは、相互にアライメントされた接触面は、好ましくは、同一の傾斜を有することができる。傾斜の作用効果は、アウターベースを筐体の端面に取り付けるときに2つの構成要素の自動センタリングが行われることである。傾斜は、接続される2つの構成要素間に一種の蟻継ぎ接合部が得られるように構成することができる。
【0023】
傾斜は、内側から外側へ昇降するように構成することができる。いずれの場合も、構成要素の自動センタリングが行われると同時に光のギャップが回避される。
【0024】
傾斜による欠点は、付加的な製造費用を招くことにある。したがって、接触面が傾斜を有しない、すなわち、接触面が、圧縮空気タンクの径方向平面に延びる、すなわち、圧力タンクの軸に対して垂直な平面に延びるものとすることが好ましい。
【0025】
筐体(折り曲げ後)に長手方向の溶接線を形成するのに、筐体の端面に対するアウターベースの溶接に加えてレーザも用いれば有利である。
【0026】
アウターベースを筐体に接続するための環状の溶接線を形成するのに、アウターベースと筐体との接触面を同時に溶接する2つのレーザヘッドを用いると有利である。これによって、速度面でのさらなる利点が得られる。
【0027】
圧縮空気タンクを製造するための全ての溶接接合部、すなわち、長手方向の溶接線および2つの環状の溶接線を、例えば、レーザによって溶接材料を用いずに形成することができる。この場合、構成要素が低温であるため、酸化層が形成されないことが1つの利点である。
【0028】
本発明によれば、さらに、上記スリーブは、レーザ溶接またはCD溶接によって上記孔に対して溶接される。
【0029】
これによって、従来技術と比較して実質的により高速にスリーブを溶接することができる。溶接材料の追加は不要になる。
【0030】
レーザ溶接のさらなる利点として、MAG溶接の際に常に形成される、外観を損なわせる溶接線ビードの形成が回避される。さらに、レーザ溶接の際、MAG溶接線の場合に頻繁に必要とされる溶接線の洗浄が不要であり、省略することができる。
【0031】
圧縮空気タンクは通常、1つまたは2つのアウターベースおよび/または筐体に設けられる、スリーブ付きの複数の孔を有する。ここで、孔の内径がスリーブの内径よりもいくらか大きいことが有利である。スリーブは、既知の方法で、好ましくは雌ねじを用いて構成することができる。スリーブは好ましくは、鋼または特殊鋼から成る。
【0032】
アウターベースの孔は、例えば、打ち抜きダイまたはパンチによって形成することができる。
【0033】
レーザによって、スリーブを径方向外部で円周方向に圧縮空気タンクに溶接することが有利である。
【0034】
一実施形態では、スリーブは、圧縮空気タンクとの間に、スリーブによって形成されるバリまたは環状突出部等が残るように構成される刻み目、面取り部または(好ましくは楔形の)溝等を有することができる。ここで、外部から照射されるレーザのレーザビームを、スリーブのバリまたは環状突出部が圧縮空気タンクの近接材料とともに溶接されるように刻み目、面取り部、または溝内を透過するものとすることができる。これによって、スリーブを、特に確実、高速かつロバストな方法で圧縮空気タンクに溶接することができる。圧縮空気タンクに対するスリーブの溶接がスリーブの下側において径方向外側に円周方向に実現されればさらに有利である。したがって、スリーブと圧縮空気タンクとの間に、汚染物質が侵入するギャップが形成されない。
【0035】
レーザを外部に照射することによるスリーブの溶接は、アウターベースおよび筐体の両方に対するスリーブの溶接に好適である。
【0036】
代替的または付加的には、特にスリーブをアウターベースの孔に対して溶接するために、レーザを内側から照射してもよい。ここで、レーザは好ましくは、スリーブの、径方向に可能な限り遠くに位置する環状表面を圧縮空気タンクに対して溶接することができる。したがって、スリーブと圧縮空気タンクとの間の径方向に拡がる周方向ギャップの形成がまた回避される。
【0037】
溶融縁は好ましくは、径方向に可能な限り遠くに延びる必要がある。
【0038】
アウターベースの内側にレーザを照射することによってスリーブを溶接することの1つの利点は、特に有利には圧縮空気タンクの材料によってスリーブが溶融することにある。本発明者らが発見したように、ここでは、溶接処理を特に確実な方法で管理することができる。この場合、レーザを特に容易にアウターベースの内側に照射することができるため、この処理は、スリーブをアウターベースに嵌合させるのに特に好適である。ここで、筐体内でレーザを溶接に用いることができないため、スリーブは好ましくは、アウターベースが筐体に溶接される前にアウターベースに溶接される。
【0039】
圧縮空気タンクの孔に対してまたは孔の周囲にスリーブを溶接するためのさらなるオプションとして、いわゆるCD溶接処理の利用がある。CD溶接処理は、キャパシタ放電溶接を意味する。CD溶接は、プロジェクション溶接の特殊形態であり、本発明者らが発見したように、スリーブと圧縮空気タンクとの接続において特別な利点を有する。圧縮空気タンクの適切な接地によって、スリーブを取り付けた後に数ミリ秒間適切に電流を印加することによって、圧縮空気タンク上の指定位置における恒久的かつ確実なスリーブの溶接を実現することができる。スリーブは、例えば、銅製のダイによって、圧縮空気タンク上の指定位置に取り付けることができる。次いで、スリーブは、適切な電流の印加によって圧縮空気タンクに対して溶接される。特別な利点は、適切な数の銅製のダイを用いることによって、複数のスリーブを単一の動作で同時に溶接することができることにある。
【0040】
本発明の特に有利な改良では、スリーブは、圧縮空気タンクに隣接する下側に、CD溶接によって圧縮空気タンクに接続される少なくとも1つの溶融縁を有することができる。したがって、スリーブと圧縮空気タンクとの接続は、面を介した溶接ではなく、単に(好ましくは環状の)円周溶融縁を、圧縮空気タンクの近接材料に対して溶接することによって実現される。この文脈では、本発明者らは、スリーブの面を介した溶接は、スリーブの下側の溶融縁の構成と比較して不利であることを認識している。溶融縁は有利には、径方向外側(可能な限り遠く)でスリーブの下側を環状に包囲する。これによって、圧縮空気タンクの上側とスリーブの下側との間の径方向に拡がる周方向ギャップの形成は回避される。必要であれば、複数の円周溶融縁を形成するか、または複数の溶融点または溶融線をスリーブの下側に形成することができる。これによって、圧縮空気タンクに対するスリーブの溶接は、溶融縁によってスリーブの製造費用は増えるものの、さらに改善される。
【0041】
2本の環状の円周溶融縁を形成すると有利である。この場合、一方の溶融縁はスリーブの下側を径方向外側で包囲するように構成し、他方の溶融縁は、当該スリーブの下側を径方向内側で包囲するように構成することができる。これによって、汚れまたは汚染物質がスリーブの真下に侵入することが回避される。必要であれば、複数、例えば、5本の円周溶融縁を設けてもよい。
【0042】
電流が印加されたときにスリーブが圧縮空気タンクに対して押圧されることを保証するようにスリーブを圧縮空気タンクに対して弾性的に付勢するダイを有する、CD溶接処理を行うための装置が提供されることが有利である。これによって、溶接処理がさらに改善される。好ましくは、ばねのわずかな事前張力によってスリーブを押圧する。
【0043】
スリーブが、その少なくとも一部を孔に挿入することができる形状を有することが特に有利である。好ましくは、ここでは、スリーブは、スリーブの下側が、隣接する圧縮空気タンクの内側と実質的に同一平面になるまで、圧縮空気タンクの筐体の孔または一方のアウターベースの孔に挿入することができる。これによって、汚れ溜まりエッジまたは薬品エッジの形成が回避される。例えば、孔の内径よりもスリーブの外径をわずかに小さくすることによって、スリーブを孔に挿入することができる。必要であれば、圧入を行ってもよい。代替的に、スリーブが、孔に挿入される突出部、ボス、テーパまたは段を有するようにしてもよい。これによって、スリーブが外部から孔に対して取り付けられ、かつテーパまたはスリーブ突出部のみが孔に入り込むように、スリーブが全体的に孔の内径よりも大きい外径を有することができる。したがって、スリーブを、圧縮空気タンクの外側において実質的に平坦のままにして、外部からタンクに溶接することができる。
【0044】
スリーブがレーザによって溶接されるかまたはCD溶接によって溶接されるかにかかわらず、孔を包囲する、筐体および/またはアウターベースの領域は、平坦であるかまたは平坦化されていることが有利であることが判っている。筐体およびアウターベースは通常、湾曲している。このことは、従来より、許容され、フィラーワイヤを用いることで適切に補償されてきた。しかし、本発明者らは、スリーブの溶接は、スリーブが溶接される領域が湾曲していないことで大幅に改善されることを認識している。特に有利には、スタンピングツールによって平坦部を形成することができる。
【0045】
本発明によれば、タンクの内側コーティングは、パウダーコーティングによって施される。既知の圧力タンクにおいては、ウェットコーティング処理(ウェットペインティング)によってコーティングが施される。これは、タンクの内側の突出部およびエッジに起因して、ウェットコーティング処理のみが完全な内側コーティングを保証することができるように思われていたため必要とされていた。しかし今や、本発明によって、タンクの内側の汚れ溜まりエッジ等の形成が回避されるようになっているため、パウダーコーティング処理の利点を利用することができる。
【0046】
この文脈において、パウダーコーティングを、好ましくは摩擦帯電(tribo charge)によってタンクの内側に対して静電的に施すことが有利である。本発明者らは、パウダーコーティング処理は特に好適であるが、実現の段階で問題を生じる可能性があることを認識している。溶接前の筐体およびアウターベースのパウダーコーティングはあまり好適でないことが判っている。より有利には、パウダーコーティングは、筐体とアウターベースとが互いに溶接されてから初めて施す。この場合、粉体を圧力タンクに導入する必要があるという課題が生じる。さらに、完全かつ確実なコーティングを達成するために、タンクの内側に粉体を確実に付着させる必要がある。ここで、本発明者らは、静電パウダーコーティング処理によって、特に好ましくは摩擦帯電によってこれが最良に達成されることを認識している。概して、静電パウダーコーティング処理はコロナ帯電および摩擦帯電の両方によって理解される。コロナ帯電は高電圧処理である。摩擦帯電の場合、粉体粒子が表面に沿って高速で駆動されることで帯電が行われる。粉体を圧縮空気タンクに導入するために、トリボランス(tribo lance)を用いることができる。ここでは、好ましくは、スリーブ開口または圧縮空気タンクの複数の孔のうちの1つ、好ましくは圧縮空気タンクのアウターベースの複数の孔のうちの1つをアクセス開口として用いることができる。トリボランスの先端のノズルまたはスプレーヘッドによって、摩擦によって帯電される粉体を圧力タンクの内部に噴射することができる。帯電によって、粉体は圧縮空気タンクの内側に付着する。
【0047】
静電帯電そして内壁への付着というプロセスは基本的に既知である。本発明者らは、本発明の圧縮空気タンクによって圧縮空気タンクの内部における最適、確実かつ均一な粉体の分布が得られることを認識している。これは特に、本発明によって圧縮空気タンクの内部の形状が突出部およびリセスを有しないように形成されているためである。
【0048】
本発明によれば、トリボランスをまず、十分に離れたところで駆動して圧縮空気タンクに入れ、アクセス開口から離れた、圧縮空気タンクの端に粉体コーティングを施すことができる。粉体の均一な分布が保証されるように、粉体を噴射しながらトリボランスを引き抜く。
【0049】
内側コーティングは、次いで、150°C〜250°C、好ましくは200°C(±10°C)の温度で乾燥させることができる。
【0050】
実用車両用の圧縮空気タンクを製造するための本発明による方法は、まず、シートブランクを折り曲げて円筒状または筒状の筐体を形成する。さらに、2つのアウターベースを延伸またはスタンピングによって作製し、筐体の端面に溶接する。好ましくは、互いに溶接する前に、少なくとも1つのアウターベースおよび/または筐体に、スリーブを溶接する孔を設ける。ここでは、スリーブは、筐体をアウターベースと結合する前に溶接することができるが、後で溶接してもよい。圧縮空気タンクの少なくとも内側には内側コーティングを施す。本発明によれば、ここでは、内側コーティングは、パウダーコーティングによって施される。さらに、本発明によれば、直角または鈍角で互いに当接し、レーザ溶接によって溶接材料なしで互いに接合されるように筐体とアウターベースとの接触面が設計される。本発明によれば、さらに、スリーブがレーザ溶接またはCD溶接によって孔に取り付けられる。
【0051】
圧縮空気タンクの内側にパウダーコーティングを施すための特に好ましい装置は、請求項25に記載している。ここでは、上記装置は、ランス、好ましくは圧縮空気タンクへ挿入されるスプレーヘッドを有するトリボランスを有することが好ましい。また、上記装置は、ランス用のアクセス開口を形成するためにアウターベースの孔へ挿入される、内孔を有するボルトを有する必要がある。また、アクセス開口が下方へアライメントされるように圧縮空気タンクを収容するためのビームを設ける必要がある。さらに、コーティング粉体の供給の際にアクセス開口を通じてランスを出し入れするための装置を設ける必要がある。
【0052】
ランスの、ボルトに導入される部分と、スプレーヘッドとが、20mm以下、好ましくは15mm以下の直径を有することが有利であることが判明している。これによって、スプレーヘッドを有するランスを、ボルトの内孔を通じて特に容易に圧縮空気タンクに挿入することができる。
【0053】
上記装置は有利には、圧縮空気タンクの内側を前処理するための装置を有する。ここで、前処理は、圧縮空気タンクの内側の洗浄、例えば、脱脂、洗浄、化学物質の除去を含み得る。したがって、コーティング処理が改善される。
【0054】
トリボランスは、例えば、プラスチック、好ましくは、ポリアミドまたはポリエチレン製とすることができる。好ましくは、ビームは、複数の圧縮空気タンク、例えば、12個の圧縮空気タンクを収納することができるように構成される。ここで、設けるトリボランスの数とボルトの数とを一致させることが有利であり得る。
【0055】
圧縮空気タンクはまず、ビームに対して固定することが有利である。この後、内孔が設けられているボルトをアクセス開口に挿入することができる。ここで、ボルトは好ましくは、ランスを挿入することができる挿入補助具(lead-in aid)、例えば、漏斗を有することができる。
【0056】
上記装置は、塗布された粉体を、150°〜250°C、好ましくは200°C(±10°C)の温度で乾燥させるように設計される装置を有することができる。この処理は基本的に従来技術から既知である。
【0057】
トリボランスは、Teflon(登録商標)製としてもよく、またはTeflon(登録商標)を含有してもよい。スプレーヘッドは、好ましくは、全方向に、すなわち、径方向および前後方向に噴射するように構成される。
【0058】
請求項1および22はそれぞれ、本発明の特に有利な実施形態と、圧縮空気タンクの特に有利な製造方法とを請求する。特徴1.1〜1.3と方法ステップ22.1〜22.3とを組み合わせることによって、それぞれの利点が互いに補填し合って作用効果が強化されるため、特に有利な圧縮空気タンクが提供される。ただし、請求項1の特徴1.1、1.2および1.3ならびに請求項22の方法ステップ22.1、22.2および22.3はそれぞれ、本質的に1つの発明を構成すること、すなわち、特徴1.1、1.2および1.3ならびに特徴22.1、22.2および22.3はそれぞれ、本発明による解決策を構成するために組み合わせる必要はないことに留意されたい。この信念に基づいて、特徴1.1、特徴1.2および特徴1.3(それぞれがプレアンブルと組み合わされる)は、それ自体で独立した発明の解決策を構成し、必要に応じて他の請求項に引用される。請求項22の特徴22.1、22.2および22.3も同様に当てはまる。これらの特徴は、無論、有利には組み合わせてもよい。
【0059】
また、本願は、スリーブに関する、2つの独立した発明の実施形態を包含する。出願人は、この点に関して、請求項9に記載のように下側に少なくとも1つの円周溶融縁を有するスリーブを請求する権利を有する。また、出願人は、この点に関して請求項5に従って設計されるスリーブを独立して請求する権利を有する。
【0060】
本願はまた、必要であれば請求項14〜17とに組み合わされる請求項13に記載のように、スリーブに関する発明に関する第3の実施形態を包含する。出願人は、この点に関して、対応のスリーブを請求する権利を有する。
【0061】
本発明による圧縮空気タンクは、任意に選択されたガスに好適である。
【0062】
必要であれば、圧縮空気タンクは、特許文献1の図6に示されるように、筐体と一体的に構成されるアウターベースを有することができる。
【0063】
本発明の有利な改良および実施形態はさらなる従属請求項に記載する。本発明の例示的な実施形態を、図面を参照しながら以下に概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】圧縮空気タンクの斜視図である。
【図2】圧縮空気タンクの縦断面図である。
【図3】圧縮空気タンクのアウターベースの上面図である。
【図4】アウターベースの接触面と筐体の接触面との接触平面領域における、図2の詳細IVで示された圧縮空気タンクの選択部分の拡大縦断面図である。
【図5】スリーブが孔に対して溶接されている、アウターベースの領域の断面図である。
【図6】レーザによって圧縮空気タンクに対して溶接するためのスリーブの特に好適な設計を示す図である。
【図7】レーザを外部に照射することによって圧縮空気タンクに対して溶接するためのスリーブのさらに好適な設計を示す図である。
【図8】レーザを内側に照射することによってアウターベースに対して溶接されるスリーブが外部に取り付けられるアウターベースの内側の図である。
【図9】CD溶接処理に用いられる溶融縁を有するスリーブの下側の図である。
【図10】トリボランス が挿入された圧縮空気タンクの概略縦断面図である。
【図11】圧力タンクの内側コーティングのための有利な装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
実用車用の圧縮空気タンクは現行の技術水準から十分に既知であるため、それらの基本的な動作方法および実用車への実装方法については、以下で詳述せず、特許文献1および特許文献2を参照するに留める。
【0066】
本発明による圧縮空気タンク1は、例えば、70barを超える高圧力に耐えるのに好適である。
【0067】
図1および図2は、筒状または円筒状の筐体2および2つのアウターベース3から形成される、実用車用の圧縮空気タンク1を示す。筐体2は、例えば、対応した大きさのシートブランクを折り曲げることによって作製することができる。アウターベース3は、延伸またはスタンピングによって基本的に既知の方法で作製することができる。
【0068】
例示的な実施形態では、アウターベース3は、受け皿型の形状を有するか、または凹部を有する。
【0069】
筐体2およびアウターベース3の材料として、種々の材料が好適であり、例示的な実施形態では、筐体2およびアウターベース3は金属から形成されており、好ましくは、鋼若しくは特殊鋼またはこれらの合金から形成される。原理上は、圧縮空気タンク1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成してもよい。
【0070】
例示的な実施形態では、圧縮空気タンク1の長さは、200mm〜1400mmである。タンクは最短で200mm〜300mm、最長で1300mm〜1400mmに構成することが有利であることが判っている。
【0071】
図1〜図3から明らかなように、圧縮空気タンク1は、筐体2と2つのアウターベース3の一方との両方に孔4を有する。当該孔4は、消費装置等への配線接続、または凝縮水の排出に用いることができる。孔4にはそれぞれスリーブ5が設けられる。スリーブ5のリードアウト領域に雌ねじを施し、延在する配線に簡単に接続することができるようにすることができる。圧縮空気タンク1の内側1aには、内側コーティング6が施されている。内側コーティング6の適用方法を示す図10および図11には図示していない。
【0072】
特に図1〜図4から明らかなように、筐体2は接触面2aを、アウターベース3は接触面3aを有しており、これらの接触面2aおよび3aは、互いに対して(直角または鈍角で)当接するように設計されている。筐体2およびアウターベース3は、接触面2aおよび3aにおいて、溶接材料を用いずにレーザ溶接によって互いに溶接することができる。この目的で用いられるレーザ7を図4に概略的に示す。例示的な実施形態では、レーザ7は2つのレーザヘッドを有しており、これによって、アウターベース3と筐体2との接触面2aおよび3aが同時に溶接される。代替的に、3つ以上のレーザを用いてもよいことは言うまでもない。
【0073】
筐体2の材料厚が2.2mm±0.5mmだと有利であることが判っている。
【0074】
図4(a)は、接触面2aおよび3aが、圧縮空気タンク1の径方向延長平面に関して傾いている、すなわち、タンクの半径に対して或る角度を有する例を示す。したがって、傾斜8が形成されており、この傾斜は、45°以下、好ましくは15°であり得る。これによって、アウターベース3の筐体2に対する自動センタリングが達成される。
【0075】
傾斜8の形成のために、例示的な実施形態では、筐体2の縁またはアウターベース3の縁をスタンピング(掘削加工)している。
【0076】
図4(b)は、図4(a)に対する接触面2aおよび3aの代替的な実施形態として、圧縮空気タンク1の径方向延長平面に関して傾いていない、すなわち、径方向延長平面に沿って延びている例を示す。したがって、接触面2aおよび3aは、直線または平坦な構成で互いに対して当接している。すなわち、互いに対して傾きがない。本実施形態は、図4(a)に示す実施形態よりも好ましい。
【0077】
筐体2およびアウターベース3の孔4は、好ましくは打ち抜きによって形成することができる。ここで、孔4(複数可)は内側から外側へ打ち抜かれている。次に、スタンピングダイを用いて(方法は詳述しない)孔4の周囲の領域に平坦部9を設けることができる。平坦部9を図3に概略的に示す。例示的な実施形態では、平坦部9は、全ての孔4に設けられる。
【0078】
スリーブ5は、圧縮空気タンク1の外側から孔4に対して取り付け、近接材料に対して溶接することができる。
【0079】
図5〜図9に係る例示的な実施形態では、孔の内径は、スリーブ5の内径よりも大きくされている。
【0080】
例示的な実施形態では、圧縮空気タンク1に対するスリーブ5の溶接は、レーザ溶接またはCD溶接によって実現される。
【0081】
例示的な実施形態では、スリーブ5は金属、好ましくは鋼または特殊鋼から成る。
【0082】
図5によれば、スリーブ5は、実質的に均一な外周を有するようになっている。必要であれば、端面の縁をわずかに面取りしてもよい。図5によれば、ここでは、レーザ7が外側から、すなわち、アウターベースまたは筐体2の外側に照射される。レーザ7は、径方向にかつ環状の円周構成において可能な限り遠くからスリーブ5を圧縮空気タンク1の近接材料に対して溶接することを意図されている。レーザ7によって形成される溶接線10の有利な位置決めは、図5に概略的に示している。
【0083】
図6は、図5によって説明したレーザ溶接処理を行うためのスリーブ5の特に好適な形態を示す。ここで、スリーブ5は、刻み目または溝11を有する。当該刻み目または溝11は、スリーブ5によって形成されるバリまたは環状突出部12が刻み目または溝11と、圧縮空気タンク1の外側との間に残るように、スリーブ5の周壁に形成される。外部から照射されるレーザ7のレーザビームは、スリーブ5のバリまたは環状突出部12を圧縮空気タンク1の近接材料とともに溶融または溶接するように、好ましくは、刻み目または溝11内へ透過する。結果として生じる溶接線10の好ましく行われた位置決めを、図6の破線によって示している。刻み目は、楔形の形状を有することで、楔形の溝の真下に、圧縮空気タンクの基材に溶接するためのバリまたは環状突出部が残るようにしてもよい。代替的には、スリーブ5の下側はまた、周方向に面取りされてもよい。
【0084】
図7(a)〜図7(c)は、スリーブの特に好適な3つの形態を示す。図7(a)〜図7(c)は、スリーブ5を圧縮空気タンク1に溶接するための特に好適な解決策も示す。
【0085】
図7(a)〜図7(c)から明らかなように、スリーブ5の好適な実施形態では、スリーブ5は、孔4の内径よりも小さい外径を有するようにされている。したがって、スリーブ5の少なくとも軸方向長さの一部を孔4に導入または挿入することができ、これを溶接する。
【0086】
図7(a)は、スリーブ5がその軸方向長さにわたって実質的に一定の外径を有する、一実施形態を示す。ここで、スリーブ5は、端面を孔4に挿入されて溶接される。好ましくは、スリーブ5は、スリーブ5の、孔4に挿入される下側がアウターベース3または筐体2の内側に対して実質的に面一になる、孔4の位置まで挿入することができる。
【0087】
図7(a)に係るスリーブ5の溶接は、外側および/または内側にレーザ7を照射することによって実現することができる。図7(a)では、外側に形成された溶接線10が示されている。
【0088】
図7(a)に示す解決策の利点は、スリーブ5を、特に費用対効果の高い方法で、好ましくは旋削部として形成することができることにある。
【0089】
図7(b)および図7(c)に示されている実施形態によれば、スリーブ5は、孔4に面する下側に、テーパおよび/または軸方向に突出する突出部および/またはボス13を有する。ここで、テーパおよび/または突出部および/またはボス13は、少なくともスリーブ5と反対の端が、孔4の内径によりも小さい外径を有する。したがって、スリーブ5は、図7(b)および図7(c)に示すように、そのテーパ、突出部またはボス13によって孔4に挿入されることができる。
【0090】
図7(b)および図7(c)に示される実施形態によれば、テーパ、突出部またはボス13はスリーブ5と一体になっている。図7(b)および図7(c)からも明らかなように、テーパ、突出部またはボス13の外径の形状は、好ましくは、孔4の内縁の形状に適合される。したがって、テーパ13を特に容易に孔4に挿入することができる。レーザ溶接において、光のギャップがなくなることがさらに保証される。
【0091】
図7(b)および図7(c)から明らかなように、テーパ、突出部またはボス13は、少なくともほぼ完全に孔4を塞ぐ外径を有する。両方の実施形態において、溶接線10は内部および/また外部から形成することができる。図7(b)および図7(c)では、レーザ溶接によって外部から溶接線10が形成されており、本実施形態は好ましいものである。
【0092】
図7(b)から明らかなように、本実施形態では、スリーブは、斜めの形状を有するテーパ、突出部またはボス13を有する。テーパ、突出部またはボス13は、テーパ、突出部またはボス13の外径がその自由端に向かって先細になるように面取りされた外縁を有する。ここで、面取り部の角度αは、例えば、30°〜70°、好ましくは60°とすることができる。面取り部があるおかげで、自動センタリングが達成される。
【0093】
図7(c)は、スリーブ5の特に好ましい実施形態を示す。ここで、テーパ、突出部またはボス13は、実質的に一定の外径を有する段として構成されている。スリーブ5は、旋削部として形成することができる。したがって、アウターベース3のまたは筐体2の孔4に面取り部を形成する必要がない。しかしながら、代替的に、面取り部をアウターベースに追加することができる。
【0094】
アウターベース3または筐体2の面取り部をなくすことで、特に簡単かつ費用対効果が高い方法でパンチングによって孔4を形成することができる。
【0095】
図7(b)に示す実施形態および図7(c)に示す実施形態によれば、テーパ13の下側が、孔4の領域においてアウターベース3のまたは筐体2の内側と実質的に同一平面となるように形成することができる。
【0096】
図5および図6による実施形態より優る、図7(a)〜図7(c)に示す実施形態の利点は、スリーブ5の形態および構成のおかげで、圧縮空気タンク1の内側の窪みがなくなるため、圧縮空気タンク1内に汚れ溜まりエッジが形成されないことにある。
【0097】
原則的に、図7(a)〜図7(c)に示す例示的な実施形態は、他の実施形態に関してすなわち本発明に関して示したさらなる特徴と組み合わせることができる。
【0098】
図8に、圧縮空気タンク1に対するスリーブ5の代替的な溶接を概略的に示す。この例では、アウターベース3の内側に対してレーザ7が照射されることとなっている。したがって、圧縮空気タンク1の外部に取り付けられたスリーブ5は、アウターベース3の内側に対するレーザ7の作用によって孔4に対して溶接される。好ましくは、レーザ7は、スリーブ5の径方向外側の環状表面を圧縮空気タンク1の近接材料に対して溶接するように照射される。径方向外側の環状表面は、図8に破線によって示されている。スリーブ5の内径は、孔4の内径よりも小さいため、スリーブ5の内縁が孔4の内縁に重なる。本発明によれば、レーザによって、スリーブ5の1つのみの環状表面を圧縮空気タンクの近接材料に対して溶接するのではなく、2つ以上の環状表面を圧縮空気タンクの近接材料に対して溶接してもよい。
【0099】
図9は、スリーブ5を、孔4または圧縮空気タンク1に対して溶接するためのさらなるオプションを示す。このために、CD溶接処理を用いる。スリーブ5は、圧縮空気タンク1上の指定された位置に取り付けられ、短期間の電流の印加またはCD溶接処理によって圧縮空気タンク1の近接材料に対して溶接される。図9から明らかなように、スリーブ5は、下側5aに円周溶融縁14を有する。ここで、溶融縁14は環状の形状を有する。溶融縁14は、CD溶接処理によって圧縮空気タンクに接続または溶融される。好ましくは、溶融縁14は楔形の形状を有する。すなわち、スリーブ5の下側5aから圧縮空気タンク1へ徐々に縮小している。必要であれば、2つ以上の溶融縁14を、スリーブ5の下側5aに形成してもよい。溶融縁14がスリーブ5の下側5aを径方向外側で環状に包囲することが有利である。
【0100】
例示的な実施形態に示される圧縮空気タンク1は、圧縮空気タンクの内側1aに内側コーティング6を有する。当該内側コーティング6は、パウダーコーティング処理によって形成される。例示的な実施形態では、パウダーコーティングは圧縮空気タンクの内側1aに対して静電的に施され、この目的で、摩擦帯電が利用される。図10から明らかなように、例示的な実施形態では、パウダーコーティングがトリボランス(摩擦帯電用の槍状の物体)15によって圧縮空気タンク1に導入される。ここで、トリボランスは、スプレーヘッド16を有しており、当該スプレーヘッド16は、径方向および前後方向の両方に粉体を供給する。これを図10に示す。
【0101】
パウダーコーティングを行う特に好適な装置を図11に示す。ここで、複数の圧縮空気タンク1を収容するようにビーム17が設けられる。スプレーヘッド16を有するトリボランスが圧縮空気タンク1毎に設けられる。また、内孔を有するボルト18が設けられる。ボルト18は、アウターベース3の孔4に挿入されることで、トリボランス15用のアクセス開口を提供する。ボルト18に導入される、トリボランスの部分とスプレーヘッド16とは、好ましくは、外径が、20mm以下、特に好ましくは15mm以下であることが意図されている。図11に示す装置は、コーティング粉体を供給する際にアクセス開口を通じてトリボランスを出し入れするための装置19も有する。図11によれば、圧縮空気タンクの内側1aを前処理するための装置がさらに設けられる。塗布した粉体を150°C〜250°C、好ましくは200°Cの温度で乾燥させるための装置21も設けられる。ビーム17は、適切なサスペンションの取付けによって可動させることができる。
【0102】
ビーム17は、圧縮空気タンク1の上部および下部の両方を固定する。複数の圧縮空気タンク1は同時に処理される。
【0103】
例示的な実施形態では、圧縮空気タンク1の外側にもパウダーコーティングが施される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接されるアウターベースによって両端を封止された筒状または円筒状の筐体を具備し、少なくとも1つのアウターベースおよび/または前記筐体に孔が設けられ、スリーブが前記孔に対して溶接され、前記圧縮空気タンクの少なくとも内側には内側コーティングが施される、実用車用の圧縮空気タンクであって、
1.1 前記筐体と前記アウターベースとの接触面が、互いに対して直角または鈍角で当接し、レーザ溶接によって溶接材料を用いずに互いに溶接されるように設計され、
1.2 前記スリーブは、レーザ溶接またはキャパシタ放電(CD)溶接によって前記孔に対して溶接され、
1.3 前記圧縮空気タンクの前記内側コーティングは、パウダーコーティングによって施されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮空気タンクであって、
前記接触面は、前記圧縮空気タンクの径方向平面に延びることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項3】
請求項1に記載の圧縮空気タンクであって、
前記接触面は、45°以下、好ましくは15°±5°の傾斜を有することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記レーザは、アウターベースと前記筐体との前記接触面を同時に溶接する2つのレーザヘッドを有することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記スリーブは、前記圧縮空気タンクとの間に前記スリーブによって形成されるバリまたは環状突出部が残るように構成される刻み目、面取り部または溝を有することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項6】
請求項5に記載の圧縮空気タンクであって、
外部から照射されるレーザのレーザビームが、前記スリーブの前記バリまたは環状突出部が前記圧縮空気タンクの前記近接材料とともに溶融するように、前記刻み目、面取り部または溝内へ透過することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記スリーブが前記孔の外側に対して溶接され、
前記レーザが前記アウターベースの内側に照射されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項8】
請求項7に記載の圧縮空気タンクであって、
前記レーザによって、前記スリーブの径方向外側の環状表面が前記圧縮空気タンクの前記近接材料に対して溶接されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記スリーブは、前記圧縮空気タンクに隣接する下側に、少なくとも1つの、CD溶接によって前記圧縮空気タンクに接続または溶接される少なくとも環状の円周溶融縁を有することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項10】
請求項9に記載の圧縮空気タンクであって、
前記溶融縁は、環状形状を有し、前記スリーブの前記下側を径方向外側で包囲することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記スリーブは、前記孔の内径よりも小さい外径を有することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項12】
請求項11に記載の圧縮空気タンクであって、
前記スリーブの軸方向における少なくとも一部が前記孔に挿入され、溶接されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記スリーブは前記孔に面する下側に、少なくとも前記スリーブとは反対の端に、前記孔の内径よりも小さい外径を有するテーパおよび/または軸方向に突出する突出部および/または軸方向に突出するボスを有することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項14】
請求項13に記載の圧縮空気タンクであって、
前記テーパ、突出部またはボスの前記外径の形状は、前記孔の内縁の形状に適合されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項15】
請求項13または14に記載の圧縮空気タンクであって、
前記テーパ、突出部またはボスは、前記孔を少なくとも完全に塞ぐ外径を有することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記テーパ、突出部またはボスは、前記外径が自由端に向かって徐々に縮小するように面取りされた外縁を有することを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項17】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記テーパ、突出部またはボスは、一定の外径を有する段として構成されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記筐体および/または前記アウターベースの前記孔を包囲する領域は、平面であるかまたは平坦化されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項19】
請求項18に記載の圧縮空気タンクであって、
前記平坦部は、スタンピングツールによって形成されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の圧縮空気タンクであって、
前記パウダーコーティングが、好ましくは摩擦帯電によって、前記圧縮空気タンクの前記内側に対して静電的に施されることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項21】
請求項20に記載の圧縮空気タンクであって、
前記内側コーティングは、150°C〜250°C、好ましくは200°Cの温度で乾燥させられることを特徴とする
圧縮空気タンク。
【請求項22】
シートブランクを折り曲げることによって筒状または円筒状の筐体が形成され、2つのアウターベースが延伸またはスタンピングによって作製されて前記筐体の端面に溶接され、少なくとも一方のアウターベースおよび/または前記筐体にはスリーブが溶接される孔が設けられ、前記圧縮空気タンクの少なくとも内側には内側コーティングが施される、実用車用、特に実用車のエアサスペンション用の圧縮空気タンクの製造方法であって、
22.1 前記筐体と前記アウターベースとの接触面が、互いに対して直角または鈍角で当接し、レーザ溶接によって溶接材料を用いずに互いに溶接されるように設計され、
22.2 前記スリーブは、レーザ溶接またはCD溶接によって前記孔に対して溶接され、
22.3 前記内側コーティングは、パウダーコーティングによって施されることを特徴とする
圧縮空気タンク製造方法。
【請求項23】
請求項22に記載の圧縮空気タンク製造方法であって、
前記パウダーコーティング処理は、好ましくは摩擦帯電を用いる、静電パウダーコーティング処理であることを特徴とする
圧縮空気タンク製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の圧縮空気タンク製造方法であって、
前記圧縮空気タンクの前記内側への粉体の塗布のためにトリボランスが用いられることを特徴とする
圧縮空気タンク製造方法。
【請求項25】
請求項22に記載の圧縮空気タンク製造方法を実施する圧縮空気タンク製造装置であって、
25.1 前記圧縮空気タンクに挿入されるスプレーヘッドを有するランスと、
25.2 前記ランス用のアクセス開口を提供するために、前記アウターベースの前記孔に挿入される、内孔を有するボルトと、
25.3 前記アクセス開口が下方にアライメントされるように前記圧縮空気タンクを収容するためのビームと、
25.4 コーティング粉体を供給する際に、前記アクセス開口を通じて前記ランスを出し入れするための装置とを具備することを特徴とする
圧縮空気タンク製造装置。
【請求項26】
請求項25に記載の圧縮空気タンク製造装置であって、
前記圧縮空気タンクの前記内側を前処理するための装置を有することを特徴とする
圧縮空気タンク製造装置。
【請求項27】
請求項25または26に記載の圧縮空気タンク製造装置であって、
前記塗布された粉体を150°C〜250°C、好ましくは200°Cの温度で乾燥させるための装置を有することを特徴とする
圧縮空気タンク製造装置。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか一項に記載の圧縮空気タンク製造装置であって、
前記ボルト内に導入される前記ランスの一部は、前記スプレーヘッドと合わせて、20mm以下、好ましくは15mm以下の外径を有することを特徴とする
圧縮空気タンク製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−512997(P2012−512997A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541439(P2011−541439)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067405
【国際公開番号】WO2010/070044
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511148835)エアハルト ウント ゾーネ ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】ERHARD & SOEHNE GMBH
【Fターム(参考)】