説明

実装装置

【課題】この発明は装置本体に対するカセットの受け渡しを容易行なうことができるようにした実装装置を提供することにある。
【解決手段】基板3を受ける受け部材6を有する装置本体1と、受け部材に対向する位置に上下駆動可能に設けられ受け部材上に位置決めされた基板に仮圧着された電子部品5を加圧して圧着する圧着ツール7と、シート15が装着される繰り出し軸及びこの繰り出し軸に装着されたシートを巻き取る巻き取り軸とを有するカセット12と、装置本体に設けられカセットを装置本体にセットするとき、カセットを装置本体内のセット位置に移動させることができるよう支持する受け渡し部材41とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板に電子部品を加圧して圧着する実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、基板としての液晶セルには接着材料としての異方性導電部材を介して電子部品であるTCP(Tape Carrier Package)が圧着される。上記液晶セルは、2枚のガラス板をシール剤を介して所定の間隔で接着し、これらガラス板間に液晶を封入するとともに、各ガラス板の外面にそれぞれ偏光板を貼着して構成される。そして、上記構成の液晶セルには、縁部上面にテープ状の上記異方性導電部材を圧着し、この異方性導電部材上に上記TCPを仮圧着した後、本圧着するようにしている。
【0003】
基板にTCPを仮圧着したり、本圧着する場合、実装装置が用いられる。実装装置は、周知のように装置本体を有し、この装置本体には受け部材(バックアップ)及びこの受け部材の上方に上下駆動される圧着ツールが設けられている。
【0004】
異方性導電部材を介してTCPが貼着された基板の縁部下面を、バックアップ部材の上端面に載置した後、上記圧着ツールを下降させることで、上記TCPを上記基板に仮圧着或いは本圧着するようにしている。
【0005】
基板にTCPを本圧着する場合、異方性導電部材を加熱硬化させるために、上記圧着ヘッドは高温度に加熱されている。そのため、TCPが圧着ヘッドによって加圧加熱されると、異方性導電部材が加熱されて溶融し、その一部がTCPからはみ出して圧着ヘッドに付着することがある。
【0006】
圧着ヘッドに異方性導電部材が付着すると、圧着ヘッドによってTCPを均一に加圧することができなくなる加圧不良を招いたり、圧着ヘッドに付着していた異方性導電部材がTCPに転移して汚れの原因になるなどのことがあり、好ましくない。
【0007】
そこで、TCPを本圧着する場合、TCPと圧着ヘッドとの間にシリコン樹脂製やフッ素樹脂製の耐熱性を有するシートを介在させることで、TCPを加圧加熱する際に、溶融した異方性導電部材が圧着ヘッドに付着するのを防止するようにしている。
【0008】
圧着時にTCPと圧着ヘッドとの間に上記シートを介在させる手段としては、装置本体にカセットを装着し、このカセットに設けられたシートを介して圧着ヘッドによってTCPを基板に加圧するということが行なわれている。このような技術は特許文献1に示されている。
【0009】
ところで、最近では基板が大型化しているため、それに応じて圧着時にTCPと圧着ヘッドとの間に介在させるシートの幅寸法も大きくなってきている。シートの幅寸法が大きくなると、カセットが大型化及び高重量化する。
【0010】
大型で、高重量のカセットを装置本体にセットする場合、作業者が一人で上記カセットを持ってセットするようにしたのでは、作業者に掛かる負担が大きくなり、作業性が悪いということがある。
【0011】
そこで、従来はカセットを上記装置本体に受け渡すための台車を用いるようにしている。この台車の上面の幅方向両端には、幅方向と交差する方向に沿って一対のレールが設けられ、このレールの一端にカセットを載置した後、台車を装置本体の前面に寄せ、カセットをレール沿ってスライドさせて装置本体にセットするということが行なわれていた。
【特許文献1】特開2001−28382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、台車を用いてカセットを装置本体にセットするようにすると、カセットを装置本体にセットした後は上記台車が不要となる。そのため、カセットをセットした後には台車を片付けなければならないから、その作業が生産性の低下を招いたり、煩わしいということがあるばかりか、台車を片付けるために収納スペースが必要になるということがあった。しかも、カセットの大型化にともない、台車も大型化するため、そのことによっても台車の取り扱いが煩わしいということがある。
【0013】
この発明は、台車を用いずに装置本体にカセットを容易にセットすることができるようにした実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、基板に設けられた電子部品をシートを介して加圧して上記基板に圧着する実装装置であって、
上記基板を受ける受け部材を有する装置本体と、
上記受け部材に対向する位置に上下駆動可能に設けられ上記受け部材上に位置決めされた上記基板の上記電子部品を加圧して圧着する圧着ツールと、
上記シートが装着される繰り出し体及びこの繰り出し体に装着されたシートを巻き取る巻き取り体とを有するカセットと、
上記装置本体に設けられ上記カセットをこの装置本体にセットするとき、上記カセットを装置本体内のセット位置に移動させることができるよう支持する受け渡し手段と
を具備したことを特徴とする実装装置にある。
【0015】
上記受け渡し手段は、
上記装置本体の前面の幅方向両端部に一端を支点として回動可能に設けられた一対の受け渡し部材と、
一端を上記装置本体に枢着した第1のアーム及び上記第1のアームにスライド可能に設けられこの第1のアームから突出させた一端が上記受け渡し部材に枢着された第2のアームとから構成され、上記第1、第2のアームを伸長させながら上記受け渡し部材を水平に回動上昇させたときにこの受け渡し部材を水平な状態で倒伏不能に支持する支持機構とからなることが好ましい。
【0016】
上記装置本体内には、上記カセットをセットするときにこのカセットをスライドさせる一対のレールが設けられ、上記一対の受け渡し部材は上記装置本体の幅方向及び高さ方向において上記レールと対応する位置に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、装置本体に受け渡し手段を設けたから、この受け渡し手段にカセットを載置してから移動させることで、装置本体にセットできるから、台車を用いずにカセットのセットが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実装装置の概略的構成を示し、この実装装置は装置本体1を備えている。この装置本体1には、水平方向である、X方向とY方向とに駆動されるXYテーブル2が設けられている。このXYテーブル2にはたとえば液晶セルなどの基板3が一側縁部をXYテーブル2の上面から突出させた状態で供給載置され、真空吸着などの手段によって保持固定されるようになっている。この基板3の一側縁部には異方性導電部材4を介して電子部品としてのTCP5が仮圧着されている。
【0019】
上記装置本体1には、上記XYテーブル2に保持された基板3の一側縁部の下面を上端面によって受ける受け部材6が設けられている。この受け部材6の上端面に支持された基板3の縁部にはTCP5が仮圧着されていて、このTCP5は圧着ツール7によって本圧着されるようになっている。
【0020】
上記圧着ツール7は加圧ヘッド8の下面に設けられている。この加圧ヘッド8は、リニアガイド9によってZ方向、つまり上下方向にスライド可能に設けられ、Z駆動源10によってZ方向に駆動されるようになっている。
【0021】
上記装置本体1の幅方向両端部で、上記受け部材6よりもわずかに上方の高さ位置には、一対のレール部材11が水平方向に沿って設けられている。装置本体1には、上記レール部材11に沿ってカセット12を着脱することができるようになっている。カセット12を装置本体1に装着すると、所定の位置で上記カセット12に設けられたストッパ(図示せず)が上記装置本体1に設けられた当接部(図示せず)に当接する。それによって、上記カセット12が位置決めされるようになっている。
【0022】
上記カセット12は、図1と図2に示すように連結軸13によって所定の間隔で連結された矩形状の一対の側板14を有する。連結軸13は少なくとも上記側板14の四隅部を連結している。
【0023】
一対の側板14の長手方向一端部にはシリコン樹脂製やフッ素樹脂製の耐熱性を有するシート15が巻装された繰り出し体としての繰り出し軸16が上記側板14に対して回転可能かつ着脱可能に設けられている。
【0024】
上記側板14の長手方向他端部には上記繰り出し軸16に巻装されたシート15を、複数の中継ローラ17を介して巻き取る巻き取り体18が設けられている。この巻き取り体18は図2と図3に示すように巻き取りドラム19を有する。この巻き取りドラム19の両端には端部軸21が突設されている。
【0025】
一方の端部軸21には、その端面に開放した筒状の中空部22が形成されている。この中空部22には中継軸23がばね24を介して突没可能に設けられている。この中継軸23の一端部には上記端部軸21に形成された長孔25にスライド可能に係合した第1のピン26が設けられ、他端部には第2のピン27が設けられている。したがって、上記中継軸23は上記第1のピン26が長孔25に沿ってスライドする範囲で軸方向に突没可能になっている。他方の端部軸21には第3のピン28が設けられている。
【0026】
一対の側板14の巻き取り体18が装着される部位には、それぞれ支持軸31が図示しない軸受によって回転可能に支持されている。各支持軸31の側板14の端面側に突出した一端には外周面に開放した係合溝33を有する受け具34が設けられている。そして、巻き取りドラム19は、一対の受け具34に、上記中継軸23と他方の端部軸21とを、上記ばね24の付勢力に抗して弾性的に係合させることで、回転可能かつ着脱可能に取着されている。
【0027】
上記中継軸23が装着される一方の支持軸31の上記側板14の外面に突出した端部には従動歯車36が嵌着されている。この従動歯車36は、カセット12をレール部材11に沿って装置本体1の所定の位置に装着したとき、この装置本体1に設けられた駆動モータ37の回転軸38に嵌着された駆動歯車39に噛合するようになっている。
【0028】
装置本体1にカセット12を装着したとき、上記カセット12に設けられた従動歯車36は上記駆動モータ37の回転軸38に設けられた駆動歯車39に対して垂直方向下方、つまり装置本体1にカセット12を着脱する水平方向に対して直交する上下方向の下方に位置して上記駆動歯車39に噛合するようになっている。
【0029】
そして、装置本体1の所定の位置にカセット12が装着されると、このカセット12に設けられたシート15の繰り出し軸16と巻き取りドラム19との間に位置する部分が基板3に仮圧着されたTCP5の上方に対向位置するようになっている。
【0030】
図4と図5に示すように、上記装置本体1の前面の幅方向両端部には、上記一対のレール部材11と対応する位置に、上記カセット12の受け渡し手段を構成する、帯板状の一対の受け渡し部材41が設けられている。この受け渡し部材41は、一端が装置本体1の前面の幅方向両端にヒンジ42によって回動可能に連結されている。一対の受け渡し部材41はそれぞれ支持機構43によって図4に実線で示す下方に倒伏した状態から同図に鎖線で示す上昇方向に回動させることで、水平に保持することができるようになっている。
【0031】
上記支持機構43は装置本体1の前面に一端が枢着された第1のアーム44を有する。この第1のアーム44は扁平な鞘状をなしていて、この内部には第2のアーム45がスライド可能に収容されている。第1のアーム44の他端から突出した第2のアーム45の一端は上記受け渡し部材41の他端部の下面に設けられたブラケット46にピン47によって回動可能に連結されている。
【0032】
上記第1のアーム44の側面には長孔48が長手方向に沿って形成されている。この長孔46には上記第2のアーム45の他端部に設けられたストッパピン49がスライド可能に係合している。それによって、第2のアーム45は第1のアーム44に対して所定の範囲でスライドさせることができるようになっている。
【0033】
さらに、第1のアーム44には、第2のアーム45を、第1のアーム44から所定の位置まで突出させたときに、その位置で第2のアーム45が没入方向にスライドするのを阻止するラッチ機構(図示せず)が設けられている。
【0034】
すなわち、上記受け渡し部材41を下方に倒伏した状態から上昇方向に回動させてほぼ水平にすると、その位置で上記ラッチ機構が作動して上記受け渡し部材41を倒伏不能に保持できる。水平状態にある受け渡し部材41を、水平状態よりもわずかに上方へ回動させると、上記ラッチ機構による保持状態が解除される。それによって、上記受け渡し部材41を倒伏させることができるようになっている。
なお、図5に示すように上記受け渡し部材41を水平に起立させたときに上面となる面には、長手方向に所定間隔で複数のローラ50が設けられている。ローラ50の上端は上記レール部材11の上面よりもわずかに高い位置に設定されている。
【0035】
このような構成の実装装置において、装置本体1にカセット12を装着するには、まず、図4に実線で示すように倒伏状態にある受け渡し部材41を、同図に鎖線で示すように起立方向に回動上昇させる。
【0036】
受け渡し部材41を回動上昇させると、第2のアーム45が第1のアーム44に対してスライドし、第1のアーム44から突出する。そして、受け渡し部材41がほぼ水平に起立すると、その位置で図示せぬラッチ機構によって第2のアーム45が第1のアーム44に対して没入方向にスライド不能に保持される。つまり、受け渡し部材41は水平な状態で下降不能に保持される。
【0037】
受け渡し部材41を水平に保持したならば、作業者は図4と図5に鎖線で示すようにカセット12を一対の受け渡し部材41の上面に載置する。つまり、カセット12の幅方向両端部を一対の受け渡し部材41の上面のローラ48上に載置する。そして、作業者はローラ50を転動させながらカセット12を介して押し込み、受け渡し部材41からレール部材11に受け渡し、さらにカセット12に設けられたストッパ(図示せず)が装置本体1に設けられた当接部(図示せず)に当たるまで押し込めば、カセット12を装置本体1内の所定の位置にセットすることができる。
【0038】
カセット12を装置本体1内の所定の位置にセットしたならば、上記受け渡し部材41を水平状態から上方へ回動上昇させ、ラッチ機構による第2のアーム45の保持状態を解除する。それによって、受け渡し部材41をほぼ垂直な状態に倒伏させることができるから、カセット12を装置本体1内にセットした後、上記受け渡し部材41が邪魔にならないよう、折り畳むことができる。
【0039】
このようにしてカセット12をセットしたならば、基板3に仮圧着された電子部品5を本圧着する実装作業が行なわれる。実装作業に際し、カセット12に装着されたシート15が繰り出し軸16から巻き取り軸18に順次巻き取られ、シート15の新たな部分が受け部材6と圧着ツール7との間に介在する。それによって、電子部品5の実装を確実に行なうことができる。
【0040】
カセット12に装着されたシート15を使い切ったならば、そのカセット12を装置本体1から取り出し、新たなカセット12をセットすることになる。装置本体1からカセット12を取り出す場合にも、受け渡し部材41を水平に起立させたならば、カセット12をレール部材11上に沿ってスライドさせて装置本体1から取り出し、上記受け渡し部材41上に載せる。その位置で、作業者はカセット12を運び出して新たなカセット12を受け渡し部材41上に載置し、上述したように装置本体1内にセットすればよい。
【0041】
このように、装置本体1に受け渡し部材41を設けたことで、従来のように台車を用いずに装置本体1に対してカセット12を受け渡しすることができる。上記受け渡し部材41は装置本体に起伏可能に設けられている。そのため、不使用時には倒伏させておくことができるから、台車を用いた場合のように不使用時に邪魔になるようなことがない。
【0042】
なお、本実施の形態ではカセットを装置本体の前面から受け渡し部材によってセットする例で説明したが、受け渡し部材を装置本体の側面に設け、カセットを横方向にスライドさせてセットする構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の一実施の形態の実装装置の概略的構成を示す側面図。
【図2】装置本体に装着されたカセットと駆動モータとの関係を示す一部省略した平面図。
【図3】巻き取り体の従動歯車が設けられた一端部の平面図。
【図4】装置本体の前面の受け渡し部材が設けられた部分を拡大した側面図。
【図5】一対の受け渡し部材を水平の起上させた状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0044】
1…装置本体、3…基板、5…TCP(電子部品)、6…受け部材、7…圧着ツール、11…レール部材、12…カセット、15…シート、41…受け渡し部材(受け渡し手段)、44…第1のアーム(支持機構)、45…第2のアーム(支持機構)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた電子部品をシートを介して加圧して上記基板に圧着する実装装置であって、
上記基板を受ける受け部材を有する装置本体と、
上記受け部材に対向する位置に上下駆動可能に設けられ上記受け部材上に位置決めされた上記基板の上記電子部品を加圧して圧着する圧着ツールと、
上記シートが装着される繰り出し体及びこの繰り出し体に装着されたシートを巻き取る巻き取り体とを有するカセットと、
上記装置本体に設けられ上記カセットをこの装置本体にセットするとき、上記カセットを装置本体内のセット位置に移動させることができるよう支持する受け渡し手段と
を具備したことを特徴とする実装装置。
【請求項2】
上記受け渡し手段は、
上記装置本体の前面の幅方向両端部に一端を支点として回動可能に設けられた一対の受け渡し部材と、
一端を上記装置本体に枢着した第1のアーム及び上記第1のアームにスライド可能に設けられこの第1のアームから突出させた一端が上記受け渡し部材に枢着された第2のアームとから構成され、上記第1、第2のアームを伸長させながら上記受け渡し部材を水平に回動上昇させたときにこの受け渡し部材を水平な状態で倒伏不能に支持する支持機構とからなることを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項3】
上記装置本体内には、上記カセットをセットするときにこのカセットをスライドさせる一対のレールが設けられ、上記一対の受け渡し部材は上記装置本体の幅方向及び高さ方向において上記レールと対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項2記載の実装装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−54368(P2006−54368A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235961(P2004−235961)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】