説明

実質的に均一な厚さを有するコーティング層を形成するための方法、およびダイコータ

本発明によって、コーティング層を形成するための方法を提供する。この方法は、第1のダイブロック(12)と、第2のダイブロック(14)と、第1のダイブロックおよび第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナ(40)とを含むダイコータを組立てる工程であって、複数のファスナの各々が、第1のダイブロックと第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、第1のダイブロックおよび第2のダイブロックが、内部マニホルド(16)およびコーティングスロット(18)を設けるように構成される工程と、コーティング材料を内部マニホルドおよびコーティングスロットを通して押出す工程とを含む。ファスナの圧縮力を調整すること、オフセットブラケット(80)を使用すること、ダイボルト位置を調整すること、ダイオーバハングを調整すること、不均一なシム(30)を設けること、またはそれらの組合せによって、コーティングスロットの長さに沿ってより均一なコーティングスロットを提供するように、コーティングスロットを調整することができる。付加的にダイコータが説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に均一な厚さを有するコーティング層を形成するための方法、および実質的に均一な厚さを有するコーティング層を形成するために使用することができるダイコータに関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング製品の製造において、実質的に均一な厚さを有するコーティングを得ることがしばしば望ましい。これは、光学用途または電子用途の製品に特にあてはまる。
【0003】
電子物品、テープ物品、光学物品、写真物品、フォトサーモグラフィ物品、サーモグラフィ物品、研磨物品、接着物品、ディスプレイ物品、および製薬物品などの高品質物品の製造は、連続的に移動する基材またはウェブ上へのコーティング材料の薄いフィルムの塗布を伴う。薄いフィルムは、ディップコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング、巻線ロッドコーティング、ならびにダイコーティングを含むさまざまな技術を用いて塗布することができる。ダイコータとしては、とりわけ、ナイフコータ、スロットコータ、スライドコータ、流体ベアリング(fluid bearing)コータ、スライドカーテンコータ、ドロップダイカーテンコータ、および押出コータが挙げられる。多くのタイプのダイコータが、エドワード・コーヘン(Edward Cohen)およびエドガー・グトフ(Edgar Gutoff)、現代のコーティングおよび乾燥技術(Modern Coating and Drying Technology)、VCHパブリッシャーズ(Publishers)、ニューヨーク州(NY)、1992年、ISBN 3−527−28246−7、ならびにグトフ(Gutoff)およびコーヘン(Cohen)、コーティングおよび乾燥欠陥:トラブルシューティング動作問題(Coating and Drying Defects:Troubleshooting Operating Problems)、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク州(NY)、ISBN 0−471−59810−0などによって文献に記載されている。
【0004】
ダイコータは、一般に、第1のダイブロックおよび第2のダイブロックを使用してマニホルドキャビティおよびダイスロットを形成する装置を指す。圧力下でのコーティング流体は、マニホルドキャビティを通って、コーティングスロットの外に流れて、コーティング材料のリボンを形成する。コーティング層の均一性は、コーティングスロットを横切る圧力の均一性、コーティングスロットを横切るコーティング材料の流れの均一性、コーティング材料(または押出物)が通るコーティングスロットの精度を含むいくつかの要因による。コーティングを、1つの層または2つ以上の重ねられた層として塗布することができる。基材が連続ウェブの形態であることが通常好都合であるが、基材を、連続した別個のシートに形成してもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コーティング均一性を向上させるために、ダイスロットまたはコーティングスロットを変えるように、ダイブロックをともに保持する力を調整することを提供する。所与のコーティング材料および流量について、ならびによく設計されたマニホルドおよびコーティングスロットまたはダイスロットを有するダイについて、最良のコーティング均一性が均一なダイスロットから生じることが予期される。液体レオロジーおよび流れに対するマニホルド設計の不適合について、不均一なスロットが、コーティング均一性のために最良のものであるかもしれない。この説明は、コーティングスロットを均一にすることに焦点を当てるが、コーティングスロットの別の最適プロファイルが他の場合(レオロジーおよび流量がマニホルド設計に対する良好な適合でない場合など)の目標であることが可能であること、およびこれらの方法を用いて、その最適スロットプロファイルを達成することができることが理解される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって、コーティング層を形成するための方法を提供する。この方法は、第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、第1のダイブロックおよび第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナとを含むダイコータを組立てる工程であって、複数のファスナの各々が、第1のダイブロックと第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、第1のダイブロックおよび第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成される工程と、コーティング材料を内部マニホルドおよびコーティングスロットを通して押出す工程とを含む。
【0007】
コーティング層を形成するための方法は、コーティングスロットが約2%以内の高さ均一性を有するプロファイルを備えるように、ダイコータを調整する工程を含む。コーティングスロットに、約2%以内の高さ均一性を有するプロファイルを与えるための1つの技術は、複数のファスナのうちの少なくとも1つにかかる圧縮力を調整することを含む。この方法の代替実施形態は、オフセットブラケットを設けることを含み、複数のファスナのうちの少なくとも2つが、オフセットブラケットを通って延在する。オフセットブラケットは、第1のダイブロックと第2のダイブロックとの間の圧縮力を、オフセットブラケットを伴わずに与えられる圧縮力とは異なるように分配する。この方法の付加的な代替実施形態は、複数のファスナのうちの少なくとも1つの位置を調整して、第1のダイブロックと第2のダイブロックとの間の圧縮力の分布を変更することを含む。別の代替実施形態は、不均一な厚さを有するシムを使用して、第1のダイブロックと第2のダイブロックとの間の圧縮力を補償することを含む。
【0008】
本発明によってダイコータを提供する。ダイコータは、第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、第1のダイブロックおよび第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナとを含む。複数のファスナの各々は、第1のダイブロックと第2のダイブロックとの間の圧縮力を与える。第1のダイブロックおよび第2のダイブロックは、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成される。ダイコータは、少なくとも約3%の、複数のファスナのうちの少なくとも1つと複数のファスナのうちの別の1つとの間の圧縮差を含むことができる。さらに、ダイコータはオフセットブラケットを含むことができる。さらに、ダイコータ不均一なシムを含むことができる。
【0009】
本発明によって、実質的に均一な厚さを有するコーティング層を形成するための方法を提供する。実質的に均一な厚さを有するコーティング層は、低グレード用途の場合約プラスまたはマイナス20%以内、および高グレード用途の場合約プラスまたはマイナス0.5%以内の厚さ均一性を有するコーティング層であることができる。この方法は、コーティングスロットが約2%以内の高さ均一性を有するプロファイルを備えるように、ダイコータを調整する工程を含むことができる。さらに、この方法は、不均一なプロファイルを有するコーティングスロットを提供するように、ダイコータを調整する工程を含むことができる。不均一なプロファイルを与えることによって、不均一なコーティング層をもたらすダイコータの他の設計特徴を補償することが可能であり、それにより、所望の厚さ均一性としての結果として生じるコーティング層をもたらすことが予期される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明によって、基材上の実質的に均一な厚さを有するコーティング層を達成するための技術を提供する。「実質的に均一な厚さ」という句は、相対的な用語であり、特定の用途のための基材上のコーティング層の所望の精度によることが理解されるべきである。特定の物品について、他の物品についてより、コーティング層を横切って均一な厚さのより高い公差をもたらすことが望ましいことが予期される。本発明による技術は、特定の用途のための所望の公差または厚さ均一性を達成するのを助けるために提供する。コーティング層の厚さ均一性は、マスキングテープなどの低グレード用途の場合、約プラスまたはマイナス20%以内にもたらすことができ、光学ディスプレイおよび精密研磨製品のためのコーティングなどの高グレード用途の場合、約プラスまたはマイナス0.5%以内にもたらすことができる。コーティングの厚さ均一性は、コーティングを横切る均一性を指し、コーティングの厚さは、着色半透明コーティングについて、グレタグマクベス(Gretag Macbeth)からのモデルD200−IIという名称の光学濃度計などの光学濃度計を使用することなどによって定められる。コーティング層の均一性は、平均厚さ、およびその平均厚さからの平均偏差に基いて計算される。「コーティングを横切る」への言及は、コーティングの塗布の方向に直角な方向を指す。
【0011】
基材上のコーティング層の厚さ均一性は、いくつかの要因の結果であると考えられる。要因の2つは、ダイの幅を横切って圧力および流れを十分に分配するために所望のサイズを有するダイ内のマニホルドキャビティを設計すること、ならびに、コーティング材料に十分な粘度を与えて、それが所望の態様でダイを通って流れることを可能にすることを含む。コーティング層の厚さ均一性に影響を及ぼすと考えられる別の要因は、ダイコータのコーティングスロットのスロットプロファイルである。コーティングスロットは、コーティング材料が、ダイコータを出るとき流れるスロットである。比較的均一なスロットプロファイルを与えることによって、基材上のコーティング層の厚さ均一性を向上させることができると考えられる。均一なスロットプロファイルを、コーティングスロットを横切って比較的均一なスロット高さを有し、かつ「スマイルプロファイル」または「渋面(frown)プロファイル」またはいくつかの他の曲線状もしくは不均一なスロットプロファイルとして特徴づけることができるスロット構成がないと特徴づけることができる。スマイルプロファイルを、コーティングスロットの中心において、コーティングスロットの端部におけるより低いスロット高さを有すると特徴づけることができる。渋面プロファイルを、コーティングスロットの中心において、コーティングスロットの端部におけるより高いスロット高さを有すると特徴づけることができる。「より低い」および「より高い」という相対的な用語が、まっすぐコーティングスロットを見ている人の見方に基いていることが理解されるべきである。簡単にするため、「比較的均一なスロット高さ」という句の代わりに「高さ均一性」という句を用いてもよい。
【0012】
いくつかの要因が、コーティングスロットの高さ均一性に影響を及ぼすと考えられる。これらの要因は、ダイコータを形成するダイブロックの内部応力、コーティングスロットの高さに影響を及ぼすために使用されるシムの一致するおよび/または一致しない厚さ、コーティングスロットを形成するダイブロックによってもたらされるオーバハングの程度、ならびにコーティングスロットを準備するために用いられる精度のレベルを含む。一致する厚さを有するシムを設けるための技術が、2001年12月19日に米国特許商標庁に出願された米国特許出願公開第2003/0116881 A1号明細書によって開示されている。米国特許出願公開第2003/0116881 A1号明細書の開示全体はこの参照をもって本明細書に記載されたものとする。
【0013】
いくつかの技術が、均一なスロットプロファイルの欠如に寄与する要因に対処するために利用可能である。これらの技術は、単独でまたは組合せて用いることができ、ダイコータをともに保持するために使用されるファスナにかかるトルクまたは圧縮力を調整すること、オフセットブラケットを使用して、ダイコータ内の応力を調整すること、ファスナ位置を変更して、ダイコータ内の応力を調整すること、ダイオーバハングを調整すること、および一致しない厚さを有するシムを設けて、ダイコータ内の応力を補償することを含む。
【0014】
ここで図1および図2を参照すると、例示的なダイコータが参照番号10で示されている。ダイコータ10は、スロットコータとして特徴づけることができる。さらに、ダイコータ10は、容易に調整可能であることが意図されるスロットを有さないので、「固定スロット設計」ダイコータとして特徴づけることができる。スロットの調整を提供するボルトまたは他の機構を含むダイが利用可能であることが認められる。スロットコータの特徴を説明するが、当業者は、どのようにスロットコータの特徴を本発明による他のタイプのダイコータに適用するかを理解するであろう。
【0015】
ダイコータ10は、マニホルドキャビティ16およびコーティングスロット18を形成するように互いに対して配列された第1のダイブロック12および第2のダイブロック14を含む。マニホルドキャビティ16は、コーティング材料をコーティングスロット18に供給するために設けられる。ダイコータ10の使用の間、コーティング材料は、圧力下で、入口ポート19を介してマニホルドキャビティ16内に、マニホルドキャビティ16を通って、コーティングスロット18を通って、基材(図示せず)上に流れ、コーティング層を形成する。コーティングスロット18を通るコーティング材料の異なる流量をもたらすことがあるマニホルドキャビティ16の圧力降下を軽減または低減するのを助けるために、コーティング材料全体にわたってより均一な圧力分布を作るように、マニホルドキャビティ16のサイズを調整することができることが一般に知られている。
【0016】
ダイコータ10との関連において、ダイスロットのいくつかのパラメータを定義することができる。スロット幅「W」は、ダイコータ10の第1の端部20からダイコータ10の第2の端部22まで、ダイ面24を横切って延在するコーティングスロット18の寸法を指す。図1に示されているように、第1の端部20および第2の端部22は、コーティングスロット18の幅を規定する第1の端部スロット表面21および第2の端部スロット表面23を含む。スロット長さ「L」は、マニホルドキャビティ出口26からコーティングスロット出口28までの距離を指す。スロット高さ「H」は、コーティングスロット出口28における第1のダイブロックスロット表面31と第2のダイブロックスロット表面32との間の距離を指す。スロット高さ「H」は、シム30の使用によって制御することができる。シム30は、スロット高さ「H」に対応する高さまたは厚さを有することができる。さらに、シム30は、スロット高さを増加させるために使用される場合、スロット高さ「H」より小さい厚さを有することができる。第1の端部スロット表面21および第2の端部スロット表面23を、シム30として設けることができる。ダイコータがシムを含む必要がないことが理解されるべきである。すなわち、コーティングスロットを、第1のダイブロックおよび第2のダイブロックの組合せの結果として形成することができる。たとえば、第1のダイブロックおよび第2のダイブロックを、コーティングスロットを形成するように機械加工することができる。ダイコータがシムを含まない場合、第1の端部スロット表面および第2の端部スロット表面を、第1のダイブロックおよび/または第2のダイブロックの結果として形成することができる。
【0017】
第1のダイブロック12および第2のダイブロック14を、複数のファスナ40によってともに保持することができる。ダイコータ10は、前方列のファスナ42と、後方列のファスナ44とを含む。前方列のファスナ42は、コーティングスロット18に最も近い列のファスナを指し、後方列のファスナ44は、コーティングスロット18から離れて最も遠い列のファスナを指す。ダイコータ10は、第1のコーナファスナ46と、第2のコーナファスナ48とを含む。ダイコータが、コーナファスナを含んでも含まなくてもよく、付加的な列のファスナを含んでも含まなくてもよいことが理解されるべきである。
【0018】
前方列のファスナ42および後方列のファスナ44は、コーティングスロット18の後ろに、第1のダイブロック12と第2のダイブロック14との間に延在して設けられ、「後ろに」という方向は、ダイ面24はダイコータ10の前とみなされ、ダイ後面25は、ダイコータ10の後ろとみなされることに関してである。前方列のファスナ42および後方列のファスナ44は、シム30を通って延在して設けられ、マニホルドキャビティ16を通って延在しない。第1のコーナファスナ46および第2のコーナファスナ48は、第1のダイブロック12と、シム30と、第2のダイブロック14との間に、コーティングスロット18のサイドまで延在する。複数のファスナ40は、コーティングスロット18の直接「後ろに」でないが、代わりに、コーティングスロット18の横に設けられた第1の端部ファスナ50および51ならびに第2の端部ファスナ52および53を含む。第1のサイドファスナ50および第2のサイドファスナ52を、前方列のファスナ42の一部とみなすことができ、第1のサイドファスナ51および第2のサイドファスナ53を後方列のファスナ44の一部とみなすことができる。
【0019】
図1に示されたダイコータ10が、複数のファスナ40によってともに保持された典型的なダイコータを表すだけであることが理解されるべきである。例示的なダイコータは、より少ないまたはより多いファスナを含むことができ、スロット幅「W」より小さいまたはより大きいコーティングスロット幅を有することができ、ダイコータ10と異なった他の寸法を有することができる。
【0020】
ファスナ40を、第1のダイブロック12および第2のダイブロック14を通って延在し、かつダイブロックをともに保持するボルトとして設けることができ、したがって、コーティング材料がマニホルドキャビティ16およびコーティングスロット18を通るとき、それらは互いに対して動かない。従来のダイコータにおいて、ボルトが、たとえばトルクレンチを使用して、所定のトルク値に締付けられる。結果として、ファスナは、トルクレンチが設定されたトルク値に対応するほぼ同じトルク値に締付けられることが多い。2つ以上のボルトの間のトルクの変化は、トルクレンチの正確さを反映するであろう。
【0021】
ファスナ40にかけられたトルクまたは圧縮力の結果として、第1のダイブロック12および第2のダイブロック14内に内部応力が生じると考えられる。適切に設計された内部キャビティおよび比較的一致するシム厚さを有するダイコータの場合、ファスナにかけられた比較的一致するトルクまたは圧縮力の結果として生じた内部応力が、一致しないスロットプロファイルをもたらすことがあると考えられる。一致しないスロットプロファイルを、スマイルプロファイル、渋面プロファイル、またはいくつかの他の曲線状もしくは不均一なプロファイルを示すスロットとして明示することができる。均一なスロットプロファイルを、スロットの幅を横切って約2%未満の高さ均一性を有するスロットとして特徴づけることができる。高さ均一性は、約1%未満であることができ、約0.5%未満であることができる。高さ均一性を、総表示振れ(total indicated runout)(TIR)を、スロットの平均高さ(スロットの幅を横切って)で割り、100を乗じたものとして計算することができる。総表示振れは、スロットの幅を横切るスロットの最大高さと最小高さとの間の差である。スロットの高さは、マサチューセッツ州エーアのキャパシテック(Capacitec of Ayer, Massachusetts)から入手可能なキャパシテック・ゲージ(Capacitec Gage)などのスロット測定ゲージを使用して測定することができる。一般に、ダイコーティングに使用されるスロットは、高さが約1ミルから約30ミル(30ミル=762ミクロン)であり、幅が、約200インチ(5.08メートル)未満、しばしば100インチ(2.54メートル)未満であることができる。コーティングスロットに均一なプロファイルを与えることによって、およびダイコータの他の特徴を適切に設計することによって、結果として生じるコーティング層が、不均一なスロットプロファイルと対照的に均一なスロットプロファイルを有するコーティングスロットを通るコーティング材料の結果として、より均一な厚さを示すことが予期される。
【0022】
ベキ乗則流体についてのスロット内の流れとスロットジオメトリとの間のこの関係は、下記式に反映することができ、
【数1】

ここで、Q/Wは単位幅あたりの流れであり、Hはスロット高さであり、ΔPはスロットの入口と出口との圧力差であり、Lはスロット長さであり、Kはコンシステンシー指数であり、nはベキ乗則指数である。ニュートン流体の場合、n=1およびK=μ、ニュートン粘度。この関係は、バード(Bird)、アームストロング(Armstrong)、およびハッサガー(Hassager)、ポリマー液体の動力学(Dynamics of Polymeric Liquids)、第1巻、ワイリー&サンズ(Wiley&Sons)、ニューヨーク州(NY)、1987年 ISBN 0−471−80245−X(第1巻)に説明されている。
【0023】
図2に示されたダイ実施形態において、ダイスロット高さ「H」の均一性は、スロット表面31および32の各々の平坦さを反映する総表示振れ(TIR)による。さらに、ダイスロット高さの均一性は、シム30の厚さのTIRによる。
【0024】
「TIR」の測定値は、表面の公差、精密さ、および平坦さの表示である。TIRは、測定されている物品の最大値から測定されている物品の最小値を引いたものに等しい。
【0025】
スロット均一性を示すために、スロットがtの表示振れを有する場合、スロットからの流れのパーセント均一性は、下記に等しく、
【数2】

ここで、Hおよびnは上で定義された通りである。パーセント均一性値は、(最大流れ−最小流れ)/平均流れ×100%として計算される。0%は、完全に均一なクロスウェブプロファイルに対応する。
【0026】
ここで図3(a)および図3(b)を参照すると、コーティングスロット60の例示的なスマイルプロファイルおよび渋面プロファイルが、それぞれ参照番号62および64で示されている。図3(a)および図3(b)で提供された図が、同じ縮尺で描かれていないが、スマイルプロファイル62および渋面プロファイル64によって意味されるものを示すように描かれていることが理解されるべきである。スロット幅「W」は、スロット60を横切る距離として提供され、スロット高さ「H」は、一致しないスロットプロファイルの結果として変わる距離として提供される。図3(a)によれば、スロット高さ「H」は、中間69と比較して端部66および68でより大きい。図3(b)によれば、高さ「H」は、端部66および68でより中間69でより大きい。スマイルプロファイルおよび渋面プロファイルが一般的であるが、波状外観を有する他のタイプのプロファイルに遭遇することがあり、より一致するまたは均一なスロットプロファイルをもたらすように本発明によって対処することができる。
【0027】
本出願人は、より一致するスロットプロファイルをもたらすために、内部応力を低減するように、および/または内部応力を補償するように、ダイブロック内の内部応力に対処するための技術を見出している。これらの技術は、単独でまたは組合せて用いることができ、特定の応力を補償するために、ファスナにかかるトルクまたは圧縮力を調整すること、オフセットブラケットを使用すること、ファスナ位置を調整すること、および一致しない厚さを有するシムを設けることを含む。
【0028】
ダイボルトトルク
第1のダイブロック12と第2のダイブロック14との間の圧縮力の不均一なレベルをファスナ40に与えることによって、均一なスロットプロファイルの損失に寄与するダイコータ10内の特定の応力を低減することが可能である。ファスナがボルトとして設けられる場合、圧縮のレベルを、ボルトにかかるトルクの特性によって反映することができる。
【0029】
ファスナを、前方列のファスナ42、後方列のファスナ44、第1のサイドファスナ46、および第2のサイドファスナ48として特徴づけることができる図1および図2に示された構成を有するダイコータ10の場合、ファスナ40をボルトと呼ぶことができ、圧縮力をトルクと呼ぶことができる。より一致するスロットプロファイルを達成するために、一致しないスロットプロファイルに対処するように、ボルトにかかる相対トルクを調整することができる。ボルトにかかるトルクの調整を、締付けをもたらすために使用されるトルクレンチの正確さより大きい、2つ以上のボルトの間のトルク差に反映することができる。一般に、トルクレンチは、しばしば2〜3%の正確さを示す。トルクが、より一致するスロットプロファイルをもたらすように調整されている場合、ボルトの少なくとも2つの間のトルクの差は、約3%より大きく、約5%より大きいことができる。
【0030】
既存のスロットプロファイルを検査すると、ファスナ40にかかるトルクを、より均一なスロットプロファイルをもたらすように調整することができる。スロットの検査は、スロットの高さをその幅に沿って測定することを指す。スロットの高さは、マサチューセッツ州エーアのキャパシテックから入手可能なキャパシテック・ゲージなどのスロット測定ゲージを使用して測定することができる。均一なスロットプロファイルがないことを観察すると、ファスナを、より均一なスロットプロファイルをもたらすように調整することができる。
【0031】
コーティングスロット18がスマイルプロファイルを示す場合、いくつかの調整を行って、スマイルプロファイルを低減または除去することができる。これらの調整を個別にまたは組合せて行うことができる。これらの調整は、(a)中心前列ボルト70におけるトルクを低減することと、(b)中心後列ボルト72にかかるトルクを増加させることと、(c)中心前列ボルト70に対して端部前列ボルト74にかかるトルクを増加させることと、(d)中心後列ボルト72に対して端部後列ボルト76にかかるトルクを低減することと、(e)前コーナボルト78にかかるトルクを増加させることとを含む。コーティングスロットが渋面プロファイルを示す場合、いくつかの技術を用いて、渋面プロファイルを低減または除去することができる。これらの技術を単独でまたは組合せて用いることができる。これらの技術は、(f)中心前列ボルト70にかかるトルクを増加させることと、(g)中心後列ボルト72にかかるトルクを減少させることと、(h)中心前列ボルト70に対して端部前列ボルト74にかかるトルクを減少させることと、(i)中心後列ボルト72に対して端部後列ボルト76にかかるトルクを増加させることと、(j)前コーナボルト78にかかるトルクを減少させることとを含む。
【0032】
この説明は、中心前列ボルト70、中心後列ボルト72、端部前列ボルト74、および端部後列ボルト76に言及するが、この言及が、ボルトの、互いに対する一般的な配置を反映することが意図されることが理解されるべきである。すなわち、他のダイコータが、より多いまたはより少ない、ボルトまたはファスナを有してもよく、位置の特徴づけは、より一般的な位置を反映することが意図され、厳密で精密な位置を反映することが意図されない。当業者は、どのボルトまたはファスナが、前列ボルトまたはファスナ、または後列ボルトまたはファスナとみなされるか理解し、当業者は、どのファスナが、中心ボルトまたはファスナ、および端部ボルトまたはファスナとみなされるか理解するであろう。さらに、当業者は、ファスナの列への言及が、ファスナの直線を意味するようにあまり文字どおりにとられるべきでないことを理解するであろう。ファスナの列は、千鳥配列構成または非直線構成で設けられたファスナを指すことができる。
【0033】
いくつかの一般的な技術を実施して、より均一なスロットプロファイル、または2列以上のファスナ(またはボルト)を収容するダイを提供することができる。これらの技術は、単独でまたは組合せて用いることができ、(k)前列ボルトにかかるトルクを増加させて、ボルトの近傍においてコーティングスロットを減少させることと、(l)前列ボルトにかかるトルクを減少させて、ボルトの近傍においてコーティングスロットを増加させることと、(m)後列ボルトにかかるトルクを増加させて、ボルトの近傍においてコーティングスロットを増加させることと、(n)後列ボルトにかかるトルクを減少させて、ボルトの近傍においてコーティングスロットを減少させることとを含む。「近傍」への言及が、ボルトまたはファスナの前に設けられたコーティングスロット特徴を指すことが理解されるべきである。
【0034】
ファスナまたはボルトにかかる圧縮またはトルクを調整することによってコーティングスロットの高さの制御を向上させるために、ダイ組立てボルトねじ山、およびダイパーツのねじ山は、きれいであり、良好な状態であり、おそらくは適切な潤滑剤またはアンチシーズコンパウンド(anti−seize compound)で潤滑しなければならない。また、できるだけ平坦であるように製造されたダイパーツを使用することが有利である。シムが使用される場合、引用により本明細書に援用する米国特許出願公開第2003/0116881 A1号明細書に記載されたような、より均一なシムを使用することができる。
【0035】
オフセットブラケット
ここで図4を参照すると、ダイコータ10上での使用のための例示的なオフセットブラケットが参照番号80で提供される。一般に、オフセットブラケットの使用は、より均一なスロットプロファイルを達成するようにダイコータ10内の力を再分配するために、ファスナまたはボルトにかかる圧縮力またはトルクを変更する技術と同様である。さらに、ダイボルトトルク技術およびオフセットブラケット技術の組合せを用いて、所望のスロットプロファイルを達成することができることが理解されるべきである。さらに、当業者は、さまざまな代わりに設計されたオフセットブラケットを、本発明によって使用することができることを理解するであろう。
【0036】
オフセットブラケット80は、前方脚82と、後方脚84と、前方脚82と後方脚84との間に設けられた開口部86と、オフセットアーム88とを含む。前方ファスナまたはボルト90は、オフセットアーム88を通って、第1のダイブロック12内に延在する。後方ファスナまたはボルト92は、後方脚84を通って、第1のダイブロック12内に延在する。したがって、オフセットブラケット80は、それぞれ後方脚84および前方脚82の位置に対応する力fBおよびfFに対抗する力FbおよびFfを第1のダイブロック12に与える。
【0037】
オフセットアーム88が前方脚82の前方に延在するので、オフセットブラケット80を外部オフセットブラケットとして特徴づけることができる。代わりに設計された外部オフセットブラケットが、後方脚84の後ろに延在するオフセットアームを有することができる。さらに、内部オフセットブラケットが、前方脚82と後方脚84との間に延在するオフセットアームを有するであろう。
【0038】
オフセットブラケット80を、少なくとも1つの前方ファスナまたはボルト90と少なくとも1つの後方ファスナまたはボルト92との間に延在するように設けることができる。したがって、複数のオフセットブラケットを、対応する前方ファスナまたはボルトと後方ファスナまたはボルトとの間に延在させて、ダイコータ10のために設けることができる。
【0039】
一般に、オフセットブラケット80は、オフセットブラケット80を伴わずに達成されるのと異なった、ダイコータ10内の力の再分配を提供する。ダイコータ10内の力を調整することによって、より一致するスロットプロファイルを達成することができることが予期される。
【0040】
代替的なオフセットブラケット100および102が、それぞれ図5(a)および図5(b)に示されている。オフセットブラケット100および102は、前方ファスナまたはボルト90および後方ファスナまたはボルト92によって第1のダイブロック12に取付けられて示されている。オフセットブラケット100は、前方脚103と、後方脚104と、オフセットアーム106とを含む。オフセットアーム106が前方脚103と後方脚104との間にあるので、オフセットブラケット100を内部オフセットブラケットと呼ぶことができる。オフセットアーム106は、前方ファスナまたはボルト90から前方脚103までの距離に基いた距離を有すると特徴づけることができる。オフセットアームが後方ファスナまたはボルト92と後方脚104との分離に基いている代替的なオフセットブラケットを設けることができる。オフセットブラケット102は、前方脚112と、後方脚114と、オフセットアーム116とを含む。オフセットアーム116は、後方脚114と後方ファスナまたはボルト92との間の距離に等しい距離を有すると特徴づけることができる。オフセットブラケット102を外部オフセットブラケットと呼ぶことができる。ファスナと脚との間の距離を、ファスナおよび脚によって与えられる力の中心に基いて計算することができることが理解されるべきである。力測定の中心の表示が図に提供されている。
【0041】
オフセットブラケットを、所望の力をダイコータの特定の領域に与えるように設計することができる。一般に、オフセットブラケット80の場合、値OFは、前方ファスナまたはボルト90と内部キャビティ16との間の距離であり、値SBは、前方ファスナまたはボルト90と後方ファスナまたはボルト92との間の距離であり、OBの値は、後方ファスナまたはボルト92とダイ後面25との間の距離であり、Tfrontの値は、前方ファスナまたはボルト90にかかるトルクであり、Tbackは、後方ファスナまたはボルト92にかかるトルクである。ファスナからの距離が、ファスナの力の中心に基いて測定されることが理解されるべきである。これらの値を使用して、オフセットブラケット、および各ファスナまたはボルトにかかるトルクを、次の式に従って選択することができる。
【数3】

【0042】
オフセットブラケットは、前方列からのファスナの少なくとも1つおよび後方列からのファスナの少なくとも1つによって寄与されるような力の再分配をもたらす。オフセットブラケットが付加的なファスナを含むことができること、およびいくつかのオフセットブラケットを使用してダイコータ内の力を再分配することができることが理解されるべきである。
【0043】
ダイボルト位置
均一なダイスロットを提供するための別の技術は、ダイコータ内の所望の応力構成をもたらすようにダイボルト間隔を再設計することを含む。図2を参照すると、OFは、前方ファスナまたはボルト90と内部マニホルド16との間の距離を指し、OBは、後方ファスナまたはボルト92とダイ後面25との間の距離を指し、SBは、前方ファスナまたはボルト90と後方ファスナまたはボルト92との間の距離を指す。スマイルスロットプロファイルとみなすことができるスロットプロファイルを回避するために、OFの値を増加させることができ、OBの値を減少させることができる。渋面スロットプロファイルとみなすことができるスロットプロファイルを回避するために、OFの値を減少させることができ、OBの値を増加させることができる。より均一なスロットプロファイルをもたらすようにファスナまたはボルトの位置を調整するための付加的な技術は、2列以上のファスナを使用して、コーティングスロット均一性を調整することを可能にすること、およびOFの値がOBの値とほぼ同じであるように対称にファスナを名目上隔置することを含む。
【0044】
ダイオーバハング
本発明の別の実施形態において、ダイ頂部のオーバハングを低減することが、好ましくは、ダイスロットの固有の「スマイル」プロファイルを最小にすることが認められる。オーバハング「OH」は、ダイマニホルド後部17の後ろからダイのスロットの前縁28までの距離である。図2は、標準ダイ上のオーバハングを示す。一般に、オーバハングを減少させて、スマイルプロファイルの低減をもたらすことができる。
【0045】
不均一なシム
ダイコータ内の応力を調整するための別の技術は、より均一なスロットプロファイルをもたらすために、ダイコータ内に見出される力を補償する不均一なシムを設けることを含む。不均一なシムは、クラウン研削(crown grinding)能力を有するグラインダ(すなわち、「クラウングラインダ(crown grinder)」)の使用の結果として準備することができる。結果として生じるダイコータが均一なスロットプロファイルを有するように、ダイコータ内に見出される力を補償するように、必要に応じてシムの厚さを変えることができる。精密グラインダは、約0.0ミル(0.0ミクロン)から約6ミル(152ミクロン)の範囲内の厚さ変化で、クラウンプロファイルまたは逆クラウンプロファイルを研削する能力を有する。シムを研削するための技術が、米国特許出願公開第2003/0116881 A1号明細書に開示されており、シムの製造に関連する開示は、この参照をもって本明細書に含まれるものとする。
【0046】
一般に、所望の均一なスロットプロファイルをもたらすようにダイコータを設計するための「ダイボルト位置」基準および「ダイオーバハング」基準を用いることが望ましいであろう。「ダイボルトトルク」および「オフセットブラケット」を用いる技術を、所望の均一なスロットプロファイルをもたらすための治療法として用いることができる。すなわち、異なるダイボルトトルクの使用および/またはオフセットブラケットの使用が、不均一なスロットプロファイルを補償して、より均一なスロットプロファイルをもたらすことができる。ダイボルト位置およびダイオーバハングを選択する技術が、一般に、ダイコータを設計するための設計基準であることが一般に予期される。
【0047】
コーティングスロットを変更するためのこれらの技術を用いて、そうでなければ不均一なコーティングをもたらすことがある他の設計基準を補償する不均一なコーティングスロットを作ることができることがさらに理解されるべきである。たとえば、コーティングスロットが、不均一なスロットを提供するように調整されない限り、小さすぎる内部キャビティ、および/または粘性のもしくは十分に粘性でないコーティング材料が、不均一なコーティングをもたらすことがある。ここで説明された技術を、均一なスロットプロファイルおよび不均一なスロットプロファイルをもたらすための両方に用いることができる。これらの技術を用いて、基材上により均一なコーティング厚さを生じさせることができることが理解されるべきである。
【実施例】
【0048】
実施例1
表1は、本発明の向上した結果を例示する。表は、約119ミリメートル(4.7インチ)の最大ダイオーバハングが、より長いオーバハングと関連する固有の問題を防止することを示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1のデータは、より均一なスロットプロファイルをもたらすために依存してもよい一般的な設計基準を反映する。たとえば、ダイコータのオーバハングを約119ミリメートル(4.7インチ)未満として提供することができる。さらに、(オーバハング/厚さ比)3(オーバハングの長さとオーバハングを収容するダイブロックの厚さとの比を3乗したもの)は約9未満であることができる。さらに、(オーバハング/厚さ比)3とモジュラス(オーバハングを収容するダイブロックのモジュラス)との比は約4.35×10-112/N(3.0×10-7in2/lb)未満であることができる。
【0051】
実施例2
最初、ダイを図1および図2のように組立て、46.1N・m(34ft−lb)をダイ組立てボルトすべてに付与した。コーティングスロット高さを、マサチューセッツ州エーアのキャパシテック(Capacitec of Ayer, Massachusetts)から入手可能なキャパシテック・ゲージ(Capacitec Gage)を使用して測定した。結果として生じるダイスロットは、コーティングダイの右側でより低く傾斜した「スマイル」プロファイルに対応する。
【0052】
結果は、ダイの右スロット上でより低く傾斜した「スマイル」プロファイルに対応して、図6に示されている。
【0053】
実施例3
実施例2からのダイを、本発明の方法を用いて調整し、中心前ボルトにかかるトルクを6.8N・m(5ft−lb)に低減した。これは望まれない「スマイル」プロファイルの除去をもたらした。この実施例の結果は図6に報告されている。
【0054】
実施例4
6.8N・m(5ft−lb)が小さいトルクであり、ねじ摩擦のような機械的制限によって実際のダイ組立て力をより大きい変化にするので、図4に示されているようなオフセットブラケットを使用することが望まれた。最初、図4のオフセットブラケットを使用する以外は、ダイを図1および図2のように組立てた。オフセットブラケットを、ダイ頂部に作用する力が前および後ボルト列上で対称かつ同じであるように製造した。
【0055】
これを達成するために、前および後ボルトにかかる適切なボルトトルクを選択した。このため、ボルト力がトルクに比例し、
【数4】

であることと、本発明者らが選択した新たなブラケットパッドは、ダイの後ろからの後ボルト空間OBと同じだけマニホルドからオフセットされていることと、ブラケットを回転させるように作用する力が平衡し、
【数5】

であることと、を仮定すると、
【数6】

となる。
【0056】
B=48.16mm(l.896インチ)、OF=10.97mm(0.432インチ)、OB=23.83mm(0.938インチ)の寸法を有する、図4に示されているような標準スロット押出ダイの場合、したがって、Tback=46.1N・m(34ft−lb)について、Tfront=26.7N・m(l9.7ft−lb)である。トルクレンチの正確さによって、Tfront=27.1N・m(20ft−lb)を用いた。
【0057】
結果は、ブラケットを計算されたトルクにおいて使用することによって、スロットを平坦にすることができる(「スマイル」を除去する)ことを示す。これは、ブラケットがより大きいボルトトルク(27.1N・m(20ft−lb))において適しており、前列中心6ボルト上でより小さいトルク(約6.8N・m(5ft−lb))を用いるだけより、ブラケットで、より良好なシーリングおよびより一致するダイ組立てのためのより大きい組立て力をもたらすこと意味する。
【0058】
この実施例の結果は図6に報告されている。
【0059】
実施例5
ボルトにかかるトルクを、ダイ面を横切って均一なスロットプロファイルをもたらすように調整する以外は、実施例4を繰返した。ダイボルトトルクを本発明の方法によって、最適化された値にさらに調整することによって、オフセットブラケットを備えたダイに残っているダイスロットプロファイルの傾斜を除去し、コーティングダイスロットを、マサチューセッツ州エーアのキャパシテックから入手可能なキャパシテック・ゲージを使用して測定した。次のトルクを与えた。
右前コーナ 0N・m(0ft−lb)
左前コーナ 46.1N・m(34ft−lb)
前列(LからR) 46.1,27.1,6.8,6.8,27.1,40.7,46.1N・m(34,20,5,5,20,30,34ft−lb)
後列(LからR) 46.1,46.1,46.1,54.2,54.2,46.1,46.1,46.1N・m(34,34,34,40,40,34,34,34ft−lb)
【0060】
この実施例の結果は図6に報告されている。
【0061】
上記明細書、実施例、およびデータは、本発明の構成の製造および使用の完全な説明をもたらす。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの実施形態を行うことができるので、本発明は特許請求の範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ダイコータの上面図である。
【図2】図1の線2−2に沿った断面図である。
【図3a】ダイコータのコーティングスロットの例示的なスマイルプロファイルを示す縮尺の異なる図である。
【図3b】ダイコータのコーティングスロットの例示的な渋面プロファイルを示す縮尺の異なる図である。
【図4】オフセットブラケットを含む、図2に従うダイコータの断面図である。
【図5a】代替的なオフセットブラケットの断面図である。
【図5b】代替的なオフセットブラケットの断面図である。
【図6】実施例2〜5のスロット高さのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層を形成するための方法であって、
第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナとを含むダイコータを組立てる工程であって、
(a)前記複数のファスナの各々が、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、
(b)前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成される、工程と、
前記複数のファスナのうちの少なくとも1つにかかる前記圧縮力を調整して、前記コーティングスロットが約2%以内の高さ均一性を有するプロファイルを備えるようにする工程と、
コーティング材料を前記内部マニホルドおよび前記コーティングスロットを通して押出す工程とを含む方法。
【請求項2】
前記複数のファスナが、前方列のファスナと、後方列のファスナとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ダイコータが、前記前方列のファスナからの少なくとも1つのファスナおよび前記後方列のファスナからの少なくとも1つのファスナの圧縮力を調整するためのオフセットブラケットをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングスロットの高さ均一性が約1.5%以内である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティングスロットの高さ均一性が約1%以内である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のファスナのうちの少なくとも2つのトルク差が約3%より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
スロット測定ゲージを使用して前記コーティングスロットの高さを測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ダイコータが約119ミリメートル(4.7インチ)未満のオーバハングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ダイコータが、オーバハングと、第1のダイブロック厚さとをさらに有し、ダイオーバハングと前記第1のダイブロック厚さとの比の3乗が約9未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナとを含むダイコータであって、
(a)前記複数のファスナの各々が、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、
(b)前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成され、
(c)前記複数のファスナのうちの少なくとも2つのトルク差が約3%より大きい、ダイコータ。
【請求項11】
前記複数のファスナが、前方列のファスナと、後方列のファスナとを含む、請求項10に記載のダイコータ。
【請求項12】
前記前方列のファスナからの少なくとも1つのファスナと前記後方列のファスナからの少なくとも1つのファスナとの間で前記圧縮力を調整するためのオフセットブラケットをさらに含む、請求項11に記載のダイコータ。
【請求項13】
前記コーティングスロットの高さ均一性が約1.5%以内である、請求項10に記載のダイコータ。
【請求項14】
前記コーティングスロットの高さ均一性が約1%以内である、請求項10に記載のダイコータ。
【請求項15】
前記複数のファスナのうちの少なくとも2つのトルク差が約5%より大きい、請求項10に記載のダイコータ。
【請求項16】
前記ダイコータが約119ミリメートル(4.7インチ)未満のオーバハングを有する、請求項10に記載のダイコータ。
【請求項17】
前記ダイコータが、オーバハングと、第1のダイブロック厚さとをさらに含み、オーバハングと前記第1のダイブロックの厚さとの比の3乗が約9未満である、請求項10に記載のダイコータ。
【請求項18】
コーティング層を形成するための方法であって、
第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、オフセットブラケットと、前記第1のダイブロック、前記第2のダイブロックおよび前記オフセットブラケットをともに保持する複数のファスナとを含むダイコータを組立てる工程であって、
(a)前記複数のファスナの各々が、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、
(b)前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成され、
(c)前記複数のファスナのうちの少なくとも2つが、前記オフセットブラケットを通って延在し、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の前記圧縮力を、前記オフセットブラケットを伴わずに与えられる圧縮力とは異なるように分配する工程と、
コーティング材料を前記内部マニホルドおよび前記コーティングスロットを通して押出す工程とを含む方法。
【請求項19】
前記オフセットブラケットが、前記複数のファスナのうちの少なくとも2つと係合するように構成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コーティングスロットの高さ均一性が約2%未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記コーティングスロットの高さ均一性が約1%未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記オフセットブラケットが外部オフセットブラケットを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記オフセットブラケットが内部オフセットブラケットを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナと、オフセットブラケットとを含むダイコータであって、
(a)前記複数のファスナの各々が、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、
(b)前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成され、
(c)前記複数のファスナのうちの少なくとも2つが、前記オフセットブラケットを通って延在し、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の前記圧縮力を、前記オフセットブラケットを伴わずに与えられる圧縮力とは異なるように分配する、ダイコータ。
【請求項25】
前記オフセットブラケットが、オフセットアームと、前方脚と、後方脚とを含み、前記複数のファスナのうちの少なくとも1つが、前記オフセットアームを通って延在し、前記前方脚および前記後方脚を通って延在しない、請求項24に記載のダイコータ。
【請求項26】
前記コーティングスロットの高さ均一性が約1.5%以内である、請求項24に記載のダイコータ。
【請求項27】
前記コーティングスロットの高さ均一性が約1%以内である、請求項24に記載のダイコータ。
【請求項28】
前記複数のファスナのうちの少なくとも2つのトルク差が約3%より大きい、請求項24に記載のダイコータ。
【請求項29】
コーティング層を形成するための方法であって、
第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナとを含むダイコータを組立てる工程であって、
(a)前記複数のファスナの各々が、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、
(b)前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成される、工程と、
前記複数のファスナのうちの少なくとも1つの位置を調整して、前記コーティングスロットが約2%以内の高さ均一性を有するプロファイルを備えるようにする工程と、
コーティング材料を前記コーティングスロットの前記内部マニホルドを通して押出す工程とを含む方法。
【請求項30】
コーティング層を形成するための方法であって、
第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、シムと、前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナとを含むダイコータを組立てる工程であって、
(a)前記複数のファスナの各々が、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、
(b)前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成される、工程と、
不均一な厚さを有するように前記シムを選択して、前記コーティングスロットが約2%以内の高さ均一性を有するプロファイルを備えるようにする工程と、
コーティング材料を前記内部マニホルドおよび前記コーティングスロットを通して押出す工程とを含む方法。
【請求項31】
第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナとを含むダイコータであって、
(a)前記複数のファスナの各々が、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、
(b)前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成され、
(c)前記ダイコータが約119ミリメートル(4.7インチ)未満のオーバハングを含み、
(d)前記ダイコータにおける、オーバハングと前記第1のダイブロックの厚さとの比の3乗が約9未満である、ダイコータ。
【請求項32】
前記ダイコータが、約4.35×10-112/N(3.0×10-7in2/lb)未満の、(オーバハング/厚さ比)3とモジュラスとの比を含む、請求項31に記載のダイコータ。
【請求項33】
実質的に均一な厚さを有するコーティング層を形成するための方法であって、
第1のダイブロックと、第2のダイブロックと、前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックをともに保持する複数のファスナとを含むダイコータを組立てる工程であって、
(i)前記複数のファスナの各々が、前記第1のダイブロックと前記第2のダイブロックとの間の圧縮力を与え、
(ii)前記第1のダイブロックおよび前記第2のダイブロックが、内部マニホルドおよびコーティングスロットを形成するように構成される、工程と、
前記コーティングスロットが不均一なプロファイルを備えるように前記ダイコータを調整する工程と、
コーティング材料を前記内部マニホルドおよび前記コーティングスロットを通して押出して、実質的に均一なコーティングを提供する工程とを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−505737(P2007−505737A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527076(P2006−527076)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030579
【国際公開番号】WO2005/028123
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】