説明

室内便器収納構造および居室

【課題】 車輪付き家具を移動することで簡単にトイレスペースを確保し、この家具の移動跡に現れる洋式水洗便器を使用可能にすると共に、普段は遮蔽されて洋式水洗便器が見えず、また、前記トイレスペースが地震時における避難スペースにもなり、狭いスペースを有効活用可能である室内便器収納方法および室内便器収納構造ならびに居室を提供すること。
【解決手段】 室内1の隅部1aに配置した洋式水洗便器2を、床上1dを移動可能な車輪付き家具8における少なくとも背面側および/または一側面側に開口状の前記洋式水洗便器2が収納可能な大きさの便器収納部9内に遮蔽状に収納し、この家具8を正面側あるいは他側面側に移動することで前記洋式水洗便器2が使用可能に露呈し且つ家具8の移動跡のトイレスペースSが形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の隅部に配置された洋式水洗便器の収納構造ならびに居室に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に掲載されている家具調圧送便器がある。これの構成は、少なくとも洗浄水を貯留するロータンクと、排水を溜める汚水タンク及び排水を圧送する圧送ポンプを隠蔽状に内装させ、家具調に外装仕上げしたものである。また、底側に移動可能に車輪を設けたことが記載され、さらに、前記圧送ポンプに接続された排水用ホースを、内部に隠蔽状に収納可能に構成したことが記載されている。
そして、外観が家具調に形成されて室内に設置しても不潔感がなく、他の家具と一体感をなして室内に良好に設置することができるものとなる。また、容易に設置場所を移動させて移設することができるものとなる。また、排水用ホースをも内部に隠蔽させて良好な家具調に仕上げることができ、所定場所に設置後に容易に排水用ホースを取り出して排水管等に接続し、室内に容易に家具調圧送便器の設置が可能となる効果があるとしている。
ところが、かかる家具調圧送便器では、洗浄水を貯留するロータンクと、排水を溜める汚水タンク及び排水を圧送する圧送ポンプを内装した一体型であるために、各タンクは一定以上の容量のものになって大型化し、しかも、ロータンクへの洗浄水の給水作業や排水用ホースを取り出して排水管等に接続する作業を要し、衛生面からも慎重な作業になるし、また、排水用ホースが屋内を這うことになって見た目の印象が悪い。
【特許文献1】特開2004−5749
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする課題は、第1には、車輪付き家具を移動することで簡単にトイレスペースを確保し、この家具の移動跡に現れる洋式水洗便器を該便器の前および/または前横の手摺り部を掴んだり肘を置く等して、洋式水洗便器に座ったり立ち上がったりする際に体力的な負担が大きい高齢者や肥満の人等でも比較的にたやすく動いて使用可能にすると共に、普段は遮蔽されて洋式水洗便器が見えず、また、前記トイレスペースが地震時における避難スペースにもなり、狭いスペースを有効活用可能である室内便器収納構造を、第2には、さらに、洋式水洗便器前部と手摺り部との間の間隔を体の大きさに応じて調整して、もっとも使い易いように手摺り部位置を調整可能である室内便器収納構造を、第3には、さらに、車輪付き家具の移動が容易である室内便器収納構造を、第4には、家具そしてトイレスペースさらに避難スペースを共有し、日常生活を支障なく送ることが可能であると共に地震等の緊急時に備えがある居室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記した課題を達成するため、以下の構成にしたことを特徴とする。
1.室内に、該室内の隅部に配置した洋式水洗便器と、前記洋式水洗便器が収納可能な大きさの便器収納部を底面側と背面側と一側面側の少なくとも背面側に開口して形成してある車輪付き家具を有し、この車輪付き家具を洋式水洗便器に対して接離する方向に床上を移動および停止状態にロック可能に形成すると共に、該家具における背面側および/または一側面側に手摺り部を配設してあることを特徴とする。
2.前記した1において、手摺り部を、家具の間隔調整手段より洋式水洗便器前部との間の間隔を拡縮調整可能に移動自在に形成してあることを特徴とする。
3.前記した1または2において、車輪付き家具が、室内のガイドレールに沿い床上を移動可能であることを特徴とする。
本発明の居室では以下の構成にしたことを特徴とする。
4.前記した1〜3のいずれか1記載の室内便器収納構造を有していることを特徴とする。
【0005】
本発明における室内の隅部に配置される洋式水洗便器は、床据え付けタイプのものであってもよいし、壁に取り付け固定される壁取付タイプのものでもよい。また、局部洗浄乾燥装置付きのものでもよいし、便座が加温可能なものであってもよい。
家具は、車輪付きのものになり、椅子(長椅子を含む)、洋箪笥,和箪笥,整理箪笥,茶箪笥等の各種の箪笥、戸棚、書棚等が挙げられ、上からの荷重に強い構造にしてあるものが望ましい。車輪は、家具の移動方向が自由である旋回可能なキャスタータイプあるいは移動方向が一方向に規制されるコロタイプのもの等が挙げられる。この車輪による家具の移動および停止は、各車輪に備えられているブレーキを個別に操作して行なうタイプのものであってもよいし、家具あるいは手摺り部に備えられているレバー等でコントロールケーブルを経て遠隔操作して行なうタイプのものでもよく、この場合は取り扱い操作しやすくなる。たとえば、車輪がロックされた状態を、レバーを引く等の操作をすることでロック解除し得るようにしてもよいし、また、車輪のロックピンをソレノイドで駆動させてロック解除するようにしてある電動タイプのものでもよい。
かかる家具における便器収納部は、少なくとも洋式水洗便器を収納可能な大きさに開口されるが、さらに、洋式水洗便器に接続する給水管等の配管、洋式水洗便器における局部洗浄乾燥装置の洗浄・乾燥等の各種スイッチ類がある操作盤等を含めて遮蔽可能に開口形成していてもよい。また便器収納部は、洋式水洗便器が床据え付けタイプのものである場合、少なくとも底面側を含めて背面側に開口形成されることになり、洋式水洗便器が壁取付タイプのものである場合には少なくとも背面側に開口形成されていればよく、底面側は開口してもしなくともよい。
また、家具における手摺り部は、家具が椅子である場合には背凭れ上縁部あるいは肘掛部を手摺り部としてもよいし、この背凭れ上縁部あるいは肘掛部さらには箪笥等の背面側あるいは側面側に指掛け溝あるいは指掛け孔を形成するか棒状体あるいは板状体等を配設して手摺り部を形成するようにしてもよい。また、手摺り部は、固定式でも、洋式水洗便器前方に向けて引き出しあるいは揺動可能なものでも、洋式水洗便器前部との間の間隔を調整可能に形成してあるものでもよい。かかる手摺り部の間隔調整手段は、体の大きさに応じて洋式水洗便器前部との間の間隔を調整可能なものであればよい。
ガイドレールは、洋式水洗便器に対して家具を接離可能な方向に誘導可能であればよく、壁面あるいは天井もしくは床に配設してもよい。
居室とは、寝室を含む屋内の全ての居住空間を指す。
【発明の効果】
【0006】
A.請求項1により、車輪付き家具を移動することで簡単にトイレスペースが確保でき、この家具の移動跡に現れる洋式水洗便器を該便器の前および/または前横の手摺り部を掴んだり肘を置く等して、洋式水洗便器に座ったり立ち上がったりする際に体力的な負担が大きい高齢者や肥満の人等でも比較的にたやすく動いて使用できる。そして、使用後には家具を戻すことにより、洋式水洗便器が家具で遮蔽されて見えなくなるので、訪問者は洋式水洗便器があることさえ気付かず違和感がない。また、前記トイレスペースは移動させた家具と壁面との間に確保されるので、地震時における避難スペースとしても有用であり、狭いスペースを有効活用できる。
B.請求項2により、さらに、手摺り部との間の間隔を体の大きさに応じて調整することができ、老若男女を問わず各人がもっとも使い易いように調整できる。
C.請求項3により、さらに、車輪付き家具が予期せぬ方向に動くようなことがなく、動きが方向づけられていて移動が容易である。
D.請求項4により、家具そしてトイレスペースさらに避難スペースを共有していることで、日常生活を支障なく送ることができると共に地震等の緊急時にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図5には本発明の室内便器収納構造における実施の1形態を例示しており、寝室1の隅部1aに洋式水洗便器2を正面の壁面部1bに沿うように横向きに据え付けてある。また、洋式水洗便器2近くの壁面部1bには換気扇18を備えて臭気等が抜け易くしてある。
洋式水洗便器2は、局部洗浄乾燥機能付きの据え置きタイプのもので、正面の壁面部1bの給水管3から吐水レバー付き洗浄水タンク2aを経てボール面2bに給水可能にしてある。この洋式水洗便器2脇の正面の壁面部1bにはペーパーホルダー4および略L字状手摺り杆5ならびに局部洗浄乾燥装置(図示セズ)における洗浄・乾燥等の各種スイッチ類がある操作盤6を使い易い位置関係に適宜配設してある。
そして、洋式水洗便器2の直上の天井部1cには左右一対のガイドレール7を正面の壁面部1b際から手前に向けて前後方向に垂設し、この左右平行状のガイドレール7に沿い床部1d上の洋箪笥8を正面側および背面側(前後方向)に移動可能に配設してある。
【0008】
洋箪笥8は、上面側の左右側縁に断面略L状の凹部8aを設け、この左右の凹部8aにそれぞれ遊合状のガイドレール7に誘導されて前後方向に移動可能に形成してある。また、洋箪笥8における底面側の四隅には車輪8bを固設して床部1d上を移動しやすくしてあると共に、左右側面の操作レバー8vを操作することでコントロールケーブルを経て車輪8bをロックおよびロック解除して移動および停止可能にしてあり、背面側には便器収納部8cを底面側を含めて開口して形成してある。便器収納部8cは、隅部1aの洋式水洗便器2及び壁面部1bのペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6を収納して遮蔽可能な大きさに形成してある。
便器収納部8c内におけるほぼ中間の床上60cm程度の高さに横棒状手摺り杆8iを備えてある。この横棒状手摺り杆8iはホルダー8j内すなわち便器収納部8c内から洋式水洗便器2の前部2cの前側すなわち同便器の使用時に手あるいは腕を掛けやすい位置にまで引き出しおよび押し戻し可能に設けてある。そして、横棒状手摺り杆8iは洋式水洗便器2の前部2cとの間の間隔を拡縮調整可能に形成してある。具体的には、ベース部8kにホルダー8jを配設して間隔調整手段8mにより左右方向に移動およびロック可能に配設してある。また、便器収納部8c内におけるホルダー8j後端近くに縦棒状手摺り杆8uを配設してある。
【0009】
間隔調整手段8mは、ホルダー8jのアーム部8nにおける左右方向の長孔8pにレバー8rのネジ部8sを通し、該ネジ部8sをベース部8kのネジ孔8tに螺合してあり、このレバー8rを回して締めつけてベース部8kにアーム部8nを固定することで、横棒状手摺り杆8iを洋式水洗便器2の前部2cの適宜間隔をおいた前位置にロック自在であると共に、レバー8rを逆回しして緩めてホルダー8jを左右に移動させることで、横棒状手摺り杆8iと洋式水洗便器2の前部2cとの間隔を調整自在にしてある。
また、洋箪笥8の正面側には、観音開きの扉8dを開閉することで洋服等を出し入れ可能な収納部8e、引き違いの戸8fを開閉することで小物等を出し入れ可能な収納部8g、引出し8hを設けてある。
かかる洋箪笥8は、上からの荷重に強いように構造化し、地震等で天井が落ちた場合でも該天井を受け止めて正面の壁面部1bとの間に避難空間9を確保し得るように形成してある。
【0010】
これにより、洋箪笥8がガイドレール7に案内されて後方へ移動して、背面側が正面の壁面部1bに添接した状態では、便器収納部8c内に洋式水洗便器2,ペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6が収納されて外から見えないように遮蔽されることになる(図4参照)。
そして、洋箪笥8がガイドレール7に案内されて前方へ移動して、背面側が正面の壁面部1bから離れて洋式水洗便器2がこれを使用可能なまでに現れた状態では、洋式水洗便器2,ペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6が全て使用可能に見えるように現れてトイレスペースSが形成され且つ避難空間9が確保されることになる(図3参照)。また、略L字状手摺り杆5に左手を、縦棒状手摺り杆8uに右手を、それぞれ掛けることにより、洋式水洗便器2に対する立ち座り動作がし易くなる。また、横棒状手摺り杆8iを引き出して両手あるいは両腕を掛けることにより、洋式水洗便器2に対する立ち座り動作がし易くなる。さらに、レバー8r操作により、洋式水洗便器2の前部2cと横棒状手摺り杆8iとの間の間隔を体の大きさに応じて使いやすく調整可能である。
【0011】
図6〜図9には本発明の室内便器収納構造の他の1形態を例示しており、構成は前記した図1の態様のものと基本的に同一であるため、共通している構成の説明については符合を準用して省略し、相違する構成について説明する。
寝室1の右奥の隅部1aに洋式の水洗便器2を正面の壁面部1bに沿うように横向きに据え付けてある。
洋式水洗便器2は、局部洗浄乾燥機能付きの据え置きタイプのもので、右側面の壁面部1bの給水レバー付き給水管3からボール面2bに給水可能にしてある。この洋式水洗便器2脇の正面の壁面部1bにはペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6を使い易い位置関係に適宜配設してある。
そして、正面の壁面部1bにおけるペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6よりも高い位置にはガイドレール10を壁面部1bに沿い左右方向に配設し、この左右方向のガイドレール10に沿い床部1d上の整理箪笥11を左右方向に移動可能に配設してある。
【0012】
整理箪笥11は、上面側の後側縁に突条11aを垂設し、この突条11aが溝部10aに遊合状のガイドレール10に誘導されて左右方向に移動可能に形成してある。また、整理箪笥11における底面側の前二隅には車輪11bを固設して床部1d上を移動しやすくしてあると共に、正面右側の操作レバー11fを操作することでコントロールケーブルを経て車輪11bをロックおよびロック解除して移動および停止可能にしてあり、背面側および右側面側ならびに底面側を開口して便器収納部11cを形成してある。この便器収納部11cは、隅部1aの洋式水洗便器2及び壁面部1bのペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6を収納して遮蔽可能な大きさに形成してある。
便器収納部11c内における右側面側には横バー状手摺り杆11gを配設し、洋式水洗便器2の使用時に両手あるいは両腕を掛けられるように形成してある。
また、整理箪笥11の正面側には、引き違いの戸11dを開閉することで小物等を出し入れ可能な収納部11eを設けてある。
かかる整理箪笥11は、上からの荷重に強いように構造化し、地震等で天井が落ちた場合でも該天井を受け止めて正面および右側面の壁面部1bとの間に避難空間12を確保し得るように形成してある。
【0013】
これにより、整理箪笥11がガイドレール10に案内されて右方へ移動して、右側面側が右側面の壁面部1bに添接した状態では、便器収納部11c内に洋式水洗便器2,ペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6が収納されて外から見えないように遮蔽されることになる(図6参照)。
そして、整理箪笥11がガイドレール10に案内されて左方へ移動して、右側面側が右側面の壁面部1bから離れて洋式水洗便器2がこれを使用可能なまでに現れた状態では、洋式水洗便器2,ペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6が全て使用可能に見えるように現れてトイレスペースSが形成され且つ避難空間12が確保されることになる(図8参照)。また、横バー状手摺り杆11gに両手あるいは両腕を掛けることにより、洋式水洗便器2に対する立ち座り動作がし易くなる。さらに、操作レバー11f操作により、洋式水洗便器2の前部2cと横バー状手摺り杆11gとの間の間隔を体の大きさに応じて使いやすく調整可能である。
【0014】
図10〜図13には本発明の室内便器収納構造の他の1形態を例示しており、構成は前記した図1の態様のものと基本的に同一であるため、共通している構成の説明については符合を準用して省略し、相違する構成について説明する。
寝室1の隅部1aに洋式の水洗便器2を正面の壁面部1bに沿うように横向きに据え付けてある。
洋式水洗便器2は、正面の壁面部1bの給水レバー付き給水管3からボール面2bに給水可能にしてある。このボール面2bへの給水は、操作盤6における給水ボタンを押すことによっても行なえるようにしてある。
洋式水洗便器2脇の正面の壁面部1bにはペーパーホルダー4および略L字状手摺り杆5ならびに局部洗浄乾燥装置(図示セズ)における洗浄・乾燥等の各種スイッチ類がある操作盤6を使い易い位置関係に適宜配設してある。
そして、床部1d上には椅子13を洋式水洗便器2に対して接離可能に正面側および背面側(前後方向)に移動可能に配設してある。
【0015】
椅子13は、底面側の四隅に車輪13aを固設して床部1d上を前後方向に移動しやすくしてあると共に、左右側面の操作レバー13kを操作することでコントロールケーブルを経て車輪13aをロックおよびロック解除して移動および停止可能にしてあり、背面側には便器収納部13bを底面側を含めて開口して形成してある。この便器収納部13bは、隅部1aの洋式水洗便器2及び正面の壁面部1bのペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6を収納して遮蔽可能な大きさに形成してある。また、椅子13の背凭れ上縁部13cには、凹窪状手摺り部13dおよび凹状収納部13eを設け、凹窪状手摺り部13dは、洋式水洗便器2の使用時に左手を掛けられるように形成してある。凹状収納部13eには花器14を出し入れ可能にして花を飾れるように形成してある。
椅子13の背凭れ裏側における便器収納部13b内には縦棒状手摺り杆13gを配設し、座部13h裏の左側縁内にはホルダー13iを配設して、このホルダー13iから横棒状手摺り杆13jを洋式水洗便器2の前方すなわち同便器の使用時に手を掛けやすい位置にまで引き出しおよび押し戻し可能に形成してある。
横棒状手摺り杆13jはホルダー13i内すなわち便器収納部13b内から洋式水洗便器2の前部2cの前側すなわち同便器の使用時に手あるいは腕を掛けやすい位置にまで引き出しおよび押し戻し可能に設けてある。そして、横棒状手摺り杆13jは洋式水洗便器2の前部2cとの間の間隔を拡縮調整可能に形成してある。具体的には、座部13h裏にホルダー13iを配設して間隔調整手段13mにより左右方向に移動およびロック可能に配設してある。
【0016】
間隔調整手段13mは、ホルダー13iのアーム部13nにおける左右方向の長孔13pにレバー13rのネジ部13sを通し、該ネジ部13sを座部13h裏のネジ孔13tに螺合してあり、このレバー13rを回して締めつけて座部13h裏面にアーム部13nを固定することで、横棒状手摺り杆13jを洋式水洗便器2の前部2cの適宜間隔をおいた前位置にロック自在であると共に、レバー13rを逆回しして緩めてホルダー13iを左右に移動させることで、横棒状手摺り杆13jと洋式水洗便器2の前部2cとの間隔を調整自在にしてある。
かかる椅子13は、上からの荷重に強いように構造化し、地震等で天井が落ちた場合でも該天井を受け止めて正面の壁面部1bとの間に避難空間15を確保し得るように形成してある。
また、座部13hには蓋部13uを下方の洋式水洗便器2におけるボール面2bの直上に位置するように配設し、この蓋部13uを外した後の開口部13vを通じて座部13hに座ったままでもボール面2bに排泄し得るようにしてある。この蓋部13uおよび開口部13vは設けずともよい。
【0017】
これにより、椅子13が後方へ移動して、背面側が正面の壁面部1bに添接した状態では、便器収納部13b内に洋式水洗便器2,ペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6が収納されて外から見えないように遮蔽されることになる(図12参照)。
そして、椅子13が前方へ移動して、背面側が正面の壁面部1bから離れて洋式水洗便器2がこれを使用可能なまでに現れた状態では、洋式水洗便器2,ペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6が全て使用可能に見えるように現れてトイレスペースSが形成され且つ避難空間15が確保されることになる(図10参照)。また、略L字状手摺り杆5に右手を、凹窪状手摺り部13dあるいは縦棒状手摺り杆13gに左手を、それぞれ掛けることにより、洋式水洗便器2に対する立ち座り動作がし易くなる。また、横棒状手摺り杆13jを引き出して両手あるいは両腕を掛けることにより、洋式水洗便器2に対する立ち座り動作がし易くなる。また、操作レバー13k操作により、洋式水洗便器2の前部2cと横棒状手摺り杆13jとの間の間隔を体の大きさに応じて使いやすく調整可能である。また、体調が悪くて椅子13を動かし難い場合には、蓋部13uを外して座部13hに座ったまま排泄することもできる。
【0018】
図14〜図17には本発明の室内便器収納構造の他の1形態を例示しており、構成は前記した図6の態様のものと基本的に同一であるため、共通している構成の説明については符合を準用して省略し、相違する構成について説明する。
寝室1の右奥の隅部1aに洋式の水洗便器2を正面の壁面部1bに沿うように横向きに据え付けてある。
洋式水洗便器2は、局部洗浄乾燥機能付きの据え置きタイプのもので、右側面の壁面部1bの給水レバー付き給水管3からボール面2bに給水可能にしてある。この洋式水洗便器2脇の正面の壁面部1bにはペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6を使い易い位置関係に適宜配設してある。
そして、正面の壁面部1bにおけるペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6よりも高い位置にはガイドレール16を壁面部1bに沿い左右方向に配設し、この左右方向のガイドレール16に沿い床部1d上の長椅子17を左右方向に移動可能に配設してある。
【0019】
長椅子17は、背凭れ上面の後側縁に突条17aを垂設し、この突条17aが溝部16aに遊合状のガイドレール16に誘導されて左右方向に移動可能に形成してある。また、長椅子17における底面側の前二隅には車輪17bを固設して床部1d上を移動しやすくしてあると共に、肘掛部17d正面の操作レバー17jを操作することでコントロールケーブルを経て車輪17bをロックおよびロック解除して移動および停止可能にしてあり、背面側および右側面側ならびに底面側を開口して便器収納部17cを形成してある。この便器収納部17cは、隅部1aの洋式水洗便器2及び壁面部1bのペーパーホルダー4,略L字状手摺り杆5,操作盤6を収納して遮蔽可能な大きさに形成してある。また、長椅子17の肘掛部17dには突状手摺り部17eを突設し、洋式水洗便器2の使用時に両手を掛けられるように形成してある。座部17fにおける左端には座部兼用蓋17gを開閉することで凹状収納部17hに物を出し入れ可能に形成してある。
椅子13の肘掛部17d内には横バー状手摺り杆17iを配設し、洋式水洗便器2の使用時に両手を掛けられるように形成してある。
かかる長椅子17は、上からの荷重に強いように構造化し、地震等で天井が落ちた場合でも該天井を受け止めて正面および右側面の壁面部1bとの間に避難空間18を確保し得るように形成してある。
【0020】
これにより、長椅子17がガイドレール16に案内されて右方へ移動して、右側面側が右側面の壁面部1bに添接した状態では、便器収納部17c内に洋式水洗便器2,ペーパーホルダー4,手摺り杆5,操作盤6が収納されて外から見えないように遮蔽されることになる(図16参照)。
そして、長椅子17がガイドレール16に案内されて左方へ移動して、右側面側が右側面の壁面部1bから離れて洋式水洗便器2がこれを使用可能なまでに現れた状態では、洋式水洗便器2,ペーパーホルダー4,手摺り杆5,操作盤6が全て使用可能に見えるように現れてトイレスペースSが形成され且つ避難空間18が確保されることになる(図14参照)。また、突状手摺り部17eあるいは横バー状手摺り杆17iに両手をそれぞれ掛けることにより、洋式水洗便器2に対する立ち座りがし易くなる。
さらに、操作レバー17j操作により、洋式水洗便器2の前部2cと横バー状手摺り杆17iとの間の間隔を体の大きさに応じて使いやすく調整可能である。また、突状手摺り部17eは長椅子17を右側面の壁面部1bから離す際の手掛け部としても働くことになる。
【0021】
図18には本発明の室内便器収納構造における手摺り部の他の1形態を例示しており、手摺り板19を帯状の平板に形成して腕を乗せやすくしてあり、また、長手方向の側縁に沿い長孔19aを開けて形成した握り部19bを手で握り易くし、板面に肘を掛けて体重を乗せやすくしてある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の室内便器収納構造における実施の1形態を例示し、洋箪笥を前に出した状態の平面図。
【図2】正面図。
【図3】側面図。
【図4】洋箪笥を後側に動かして洋式水洗便器を遮蔽した状態の縦断面図。
【図5】間隔調整手段の部分拡大縦断面図。
【図6】本発明の室内便器収納構造における実施の他の1形態を例示し、整理箪笥を左側に動かした状態の正面図。
【図7】平面図
【図8】整理箪笥を右側に動かして洋式水洗便器を遮蔽した状態の縦断面図。
【図9】部分拡大縦断面図。
【図10】本発明の室内便器収納構造における実施の他の1形態を例示し、椅子を前に出した状態の平面図。
【図11】正面図。
【図12】椅子を後側に動かして洋式水洗便器を遮蔽した状態の縦断面図。
【図13】間隔調整手段の部分拡大縦断面図。
【図14】本発明の室内便器収納構造における実施の他の1形態を例示し、長椅子を左側に動かした状態の正面図。
【図15】平面図。
【図16】長椅子を右側に動かして洋式水洗便器を遮蔽した状態の縦断面図。
【図17】部分拡大縦断面図。
【図18】手摺り部の他の実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0023】
1 寝室(室内)
1a 隅部
1b 壁面部
1c 天井部
1d 床部
2 洋式水洗便器
2a 洗浄水タンク
2b ボール面
3 給水管
4 ペーパーホルダー
5 手摺り杆
6 操作盤
7,10,16 ガイドレール
8 洋箪笥(家具)
8a 凹部
8b,11b,13a,17b 車輪
8c,11c,13b,17c 便器収納部
8d 扉
8e,8g,11e 収納部
8f,11d 戸
8h 引出し
8m,13m 間隔調整手段
8r レバー
8v,11f,13k,17j 操作レバー
9,12,15,18 避難空間
10a.16a 溝部
11 整理箪笥(家具)
11a 突条
11g,17i 横バー状手摺り杆
13 椅子(家具)
13c 背凭れ上縁部
13d 凹窪状手摺り部
13e,17h 凹状収納部
13g 縦棒状手摺り杆
13h 座部
13i ホルダー
13j 横棒状手摺り杆
13m 間隔調整手段
13n アーム部
13p 長孔
13r レバー
13s ネジ部
13t ネジ孔
13u 蓋部
13v 開口部
14 花器
17 長椅子(家具)
17a 突条
17d 肘掛部
17e 突状手摺り部
17f 座部
17g 座部兼用蓋
19 手摺り板
19a 長孔
S トイレスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に、該室内の隅部に配置した洋式水洗便器と、前記洋式水洗便器が収納可能な大きさの便器収納部を底面側と背面側と一側面側の少なくとも背面側に開口して形成してある車輪付き家具を有し、この車輪付き家具を洋式水洗便器に対して接離する方向に床上を移動および停止状態にロック可能に形成すると共に、該家具における背面側および/または一側面側に手摺り部を配設してあることを特徴とする室内便器収納構造。
【請求項2】
手摺り部を、家具の間隔調整手段より洋式水洗便器前部との間の間隔を拡縮調整可能に移動自在に形成してあることを特徴とする請求項1記載の室内便器収納構造。
【請求項3】
車輪付き家具が、室内のガイドレールに沿い床上を移動可能であることを特徴とする請求項1または2記載の室内便器収納構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の室内便器収納構造を有することを特徴とする居室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−202832(P2007−202832A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25778(P2006−25778)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【特許番号】特許第3884466号(P3884466)
【特許公報発行日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成17年10月20日〜21日に開催された「2005東京発明展」にて展示
【出願人】(599026821)株式会社エマン (3)
【出願人】(599026832)株式会社一川木工所 (3)
【Fターム(参考)】