説明

室内浄化装置

【課題】静電霧化装置を水蒸気量の多い雰囲気中に置くことができるようにして有効に機能させ、室内環境を良好にする。
【解決手段】室内浄化装置4は、大気を通過させて大気よりも酸素濃度の高い酸素富化空気を得る酸素富化膜と、得られた酸素富化空気を吐出する吐出管67bとを有する酸素富化装置48と、水に所定電圧を印加させて静電霧化する静電霧化装置47と、酸素富化装置48の吐出管67bが連通するダクト36とを備えている。静電霧化装置48は、吐出管67bの下流側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の室内に配設される室内浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水の粒子を帯電させて室内に供給するように構成された静電霧化装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この静電霧化装置は、電圧を印加することで水を分裂させてナノメーターサイズの超微細な粒子とするように構成されている。このような超微細な粒子は、長時間空気中に浮遊するとともに繊維等の中まで入り込みやすくなり、これにより、室内の除菌及び消臭効果を高いレベルで得ることができる。
【0003】
また、酸素富化膜を利用して高濃度の酸素を含む空気を生成して室内に供給するように構成された車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−137282号公報
【特許文献2】特開2006−341644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の静電霧化装置は、水を利用して除菌及び消臭効果を高いレベルで得ることができる点で有用であるが、水が無くなると機能しなくなるという欠点を持っている。この欠点を補うために特許文献1ではペルチェ素子を用い、ペルチェ素子の低温側に生成される凝縮水を静電霧化装置で利用している。
【0006】
しかしながら、例えば冬季のように空気が乾燥していると、ペルチェ素子の低温側が置かれる雰囲気中の水蒸気量が少なく、十分な凝縮水が得られないので、静電霧化装置を機能させることができない場合が起こり得る。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、静電霧化装置を水蒸気量の多い雰囲気中に置くことができるようにして有効に機能させ、室内環境を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、大気を通過させて大気よりも酸素濃度の高い酸素富化空気を得る酸素富化膜と、得られた酸素富化空気を吐出する吐出部とを有する酸素富化装置と、水に所定電圧を印加させて静電霧化する電極部を有する静電霧化装置と、上記酸素富化装置の吐出部が連通し、該吐出部から吐出される酸素富化空気を室内へ導く酸素富化空気用通路を構成する通路構成部とを備え、上記静電霧化装置の電極部は、上記酸素富化空気用通路において上記吐出部の連通部位よりも下流側に臨むように配置され、上記電極部で生成された帯電した水の粒子が上記酸素富化空気用通路を介して室内に供給されることを特徴とするものである。
【0009】
すなわち、酸素富化膜は、空気中の窒素に比べて酸素をよく通すとともに、水蒸気もよく通す性質を持っている。従って、酸素富化膜を通過した酸素富化空気は、大気に比べて単位体積当たりで比較して水蒸気を多く含み、この水蒸気を多く含む空気が酸素富化空気用通路を流れることになる。そして、静電霧化装置の電極部が酸素富化空気用通路において水蒸気を多く含む空気が流れる部分に臨むことになるので、帯電した微細な水の粒子が静電霧化装置によって生成され易くなる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、通路構成部は、酸素富化装置から排出される酸素濃度の低い空気が流通する低酸素空気用通路を有し、静電霧化装置は、電圧が印加されて生じる熱電効果により酸素富化空気の露点よりも低温となる低温部及び高温となる高温部を有する熱電素子を備え、該低温部により凝縮された酸素富化空気内の水を上記静電霧化装置の電極部に供給するように構成され、上記高温部が低酸素空気用通路に臨むように配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、酸素富化空気中の水蒸気を熱電素子の低温部により凝縮して電極部に供給することで、帯電した水の粒子が確実に得られるようになる。また、酸素富化装置から排出される酸素濃度の低い空気により熱電素子の高温部が冷却されるので、酸素濃度の低い空気を有効に利用することが可能になる。
【0012】
第3の発明は、第1または2の発明において、酸素富化装置と静電霧化装置とが連動することを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、静電霧化装置を作動させる際には、酸素富化装置により水蒸気を多く含む空気を静電霧化装置に供給することが可能になるので、静電霧化装置を常に有効に作動させることが可能になる。
【0014】
第4の発明は、第1または2の発明において、酸素富化装置の作動後に静電霧化装置が作動することを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、水蒸気を多く含む空気を流した状態で静電霧化装置を作動させることが可能になるので、静電霧化装置の作動直後から帯電した水の粒子が得られるようになる。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、酸素富化膜を通過して得られた酸素富化空気が流れる酸素富化空気用通路に静電霧化装置を配置したので、酸素富化空気中に多く含まれる水蒸気を静電霧化装置に供給できる。これにより、冬季のように大気の湿度が低くても、静電霧化装置を有効に機能させて帯電した水の粒子を室内に供給でき、室内環境を良好にできる。
【0017】
第2の発明によれば、熱電素子の低温部により凝縮した水を静電霧化装置に供給できるので、帯電した水の粒子を確実に得ることができる。また、酸素濃度の低い空気を有効に利用して熱電素子の低温部の温度を十分に低下させることができる。
【0018】
第3の発明によれば、酸素富化装置と静電霧化装置とを連動させることで、静電霧化装置を常に有効に作動させることができる。
【0019】
第4の発明によれば、酸素富化装置の作動後に静電霧化装置を作動させるようにしたので、静電霧化装置の作動直後から帯電した水の粒子を得ることができ、静電霧化装置を効率良く作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態にかかる空調装置の外観図である。
【図2】空調装置の概略構造を説明する図である。
【図3】空調装置のブロック図である。
【図4】静電霧化装置の斜視図である。
【図5】静電霧化装置の部分断面図である。
【図6】室内浄化装置の構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかる室内浄化装置4を備えた車両用空調装置1を示すものである。この空調装置1は、図示しない自動車に搭載可能に構成されており、自動車の室内前部に設けられたインストルメントパネル(図示せず)内に配置されて該インストルメントパネル及び車体に固定されている。
【0023】
上記インストルメントパネルの前端部には、フロントウインドガラス(図示せず)の内面に空調風を供給するためのデフロスタ吹出口(図示せず)が形成されている。また、インストルメントパネルの車両右側である運転席側及び左側である助手席側には、乗員の上半身に空調風を供給するための運転席側のサイドベント吹出口36a及び助手席側のサイドベント吹出口37aがそれぞれ設けられている。さらに、インストルメントパネルの左右略中央部には、2つのセンタベント吹出口35aが設けられている。
【0024】
上記空調装置1は、室内浄化装置4の他に、送風機ユニット2と、空調ユニット3と、制御装置5(図3に示す)とを備えている。上記送風機ユニット2は、インストルメントパネル内の助手席側に位置付けられ、上記空調ユニット3は、インストルメントパネル内の左右方向略中央部に位置付けられている。
【0025】
上記送風機ユニット2は、樹脂製の送風用ケーシング10を備えている。この送風用ケーシング10の上部には、図2にも示すように、室内に開口する内気導入口11と、室外に連通するダクト(図示せず)に接続される外気導入口12とが形成されている。送風用ケーシング10の内部には、上記内気導入口11と外気導入口12とを選択的に開閉する内外気切替ドア13が配設されている。図1に示すように、送風用ケーシング10の上部外面には、上記内外気切替ドア13を作動させる内外気切替用アクチュエータ14が取り付けられている。このアクチュエータ14は、上記制御装置5に接続されて、該制御装置5から出力される制御信号により作動するようになっている。このアクチュエータ14により内外気切替ドア13を作動させることで、空調装置1は、内気導入口11を開きかつ外気導入口12を閉じる内気循環モードと、内気導入口11を閉じかつ外気導入口12を開く外気導入モードとに切り替えられる。
【0026】
上記送風用ケーシング10内の下半部には、遠心式ファン16(図1にのみ示す)が回転軸を上下方向に向けた状態で収容されている。このファン16の下方には、ファン駆動モータ17が配置されている。このファン駆動モータ17は、送風用ケーシング10に取り付けられた状態で上記制御装置5に接続され、該制御装置5から出力される制御信号により作動するようになっている。ファン駆動モータ17の回転速度は制御装置5により設定される。上記ファン駆動モータ17が回転することにより、空気が上記内気導入口11または外気導入口12から送風用ケーシング10内に導入されるようになっている。この導入された空気は、送風用ケーシング10の下部における空調ユニット3側に形成された開口部(図示せず)から吹き出すようになっている。
【0027】
上記空調ユニット3は、樹脂製の空調用ケーシング20を備えている。このケーシング20の下部における送風機ユニット2側には、該送風機ユニット2の開口部に接続される開口部(図示せず)が形成されており、送風機ユニット2の空気が空調用ケーシング20内に導入されるようになっている。
【0028】
図2に示すように、上記空調用ケーシング20の内部には、冷却用熱交換器21と、加熱用熱交換器22とが収容されている。冷却用熱交換器21は、チューブアンドフィンタイプの熱交換器であり、冷凍サイクルの一要素である蒸発器で構成されている。冷凍サイクルは、上記冷却用熱交換器21の他に、冷媒を圧縮する圧縮機23と、圧縮機23から吐出された冷媒を冷却して凝縮させる凝縮器24と、冷媒の気液分離を促進させる受液器25と、冷媒の圧力を減圧する減圧弁26とを備えており、これらが冷媒配管27を用いて順に接続されて構成されている。上記圧縮機23は、エンジンEの動力により駆動されるようになっている。圧縮機23には、エンジンEの駆動力を断続するための電磁クラッチ23aが設けられている。この電磁クラッチ23aが制御装置5に接続され、該制御装置5から出力される制御信号により作動するようになっている。
【0029】
上記圧縮機23が作動すると冷却用熱交換器21に減圧された冷媒が流入し、該冷却用熱交換器21の表面温度が低下する。この冷却用熱交換器21の表面温度は、圧縮機23の作動状態等で上下する。この冷却用熱交換器21の表面温度は、該冷却用熱交換器21の空気流れ下流側の面に取り付けられた温度検出センサ28で検出されるようになっている。この温度検出センサ28は、上記制御装置5に接続されている。
【0030】
上記加熱用熱交換器22は、上記冷却用熱交換器21の空気流れ方向下流側に配置されている。この加熱用熱交換器22は、チューブアンドフィンタイプの熱交換器であり、エンジンEの冷却水が循環するヒータコアで構成されている。加熱用熱交換器22には、エンジンEの冷却水通路(図示せず)に連通するヒータ配管30が接続されている。また、空調用ケーシング20内には、冷却用熱交換器21を通過した空気を、加熱用熱交換器22に流さずに該加熱用熱交換器22の下流側へ導くバイパス通路31が設けられている。
【0031】
上記空調用ケーシング20内の冷却用熱交換器21と加熱用熱交換器22との間には、加熱用熱交換器22を通過する空気量を設定するエアミックスドア32が配設されている。空調用ケーシング20の外面には、図1に示すように、上記エアミックスドア32を作動させる温度制御用アクチュエータ33が取り付けられている。このアクチュエータ33は、上記制御装置5に接続され、該制御装置5から出力される制御信号により作動するようになっている。このアクチュエータ33によりエアミックスドア32を作動させることで、冷却用熱交換器21を通過した全空気のうち、加熱用熱交換器22を通過する空気量が設定される。そして、この加熱用熱交換器22を通過した空気と、それ以外のバイパス通路31を流れた空気とが、加熱用熱交換器22の下流側で混合し、これにより、空調風が生成される。つまり、エアミックスドア32の作動状態により空調風の温度が変更されるようになっている。
【0032】
上記空調用ケーシング20の上部における車両後側には、上記インストルメントパネルのセンタベント吹出口35aに接続されるセンタベントダクト35と、運転席側のサイドベント吹出口36aに接続される運転席側サイドベントダクト(通路構成部)36と、助手席側のサイドベント吹出口37aに接続される助手席側サイドベントダクト37とが取り付けられている。運転席側サイドベントダクト36は、室内浄化装置4の一部を構成するものであり、運転席側サイドベントダクト36内の通路は、後述する酸素富化空気が流れる酸素富化空気用通路36bである。
【0033】
また、上記空調用ケーシング20の上部における車両前側には、上記デフロスタ吹出口に接続されるデフロスタダクト38が取り付けられ、空調用ケーシング20の両側部には、運転席乗員の足元近傍及び助手席乗員の足元近傍まで延びるフットダクト39がそれぞれ取り付けられている。上記センタベントダクト35、運転席側サイドベントダクト36、助手席側サイドベントダクト37、デフロスタダクト38及びフットダクト39は樹脂製であり、これらダクト35〜39が有する送風通路を空調風が流れるようになっている。
【0034】
図2に示すように、上記空調用ケーシング20内のセンタベントダクト35及びサイドベントダクト36、37の上流端部近傍には、該上流端開口を開閉するベントドア40が配設されている。また、空調用ケーシング20内のデフロスタダクト38の上流端部近傍には、該上流端開口を開閉するデフロスタドア41が配設され、フットダクト39の上流端部近傍には、該上流端開口を開閉するフットドア42が配設されている。
【0035】
空調用ケーシング20の外面には、図1に示すように、上記ベントドア40、デフロスタドア41及びフットドア42を作動させる吹出モード切替用アクチュエータ43が配設されている。このアクチュエータ43は、上記制御装置5に接続され、該制御装置5から出力される制御信号により作動するようになっている。
【0036】
上記吹出モード切替用アクチュエータ43によりベントドア40を全開とし、かつデフロスタドア41及びフットドア42を閉じると、空調風がベント吹出口35a、36a、37aから吹き出すベントモードとなる。また、上記アクチュエータ43により、ベントドア40及びフットドア42を半分開き、かつデフロスタドア41を閉じると、バイレベルモードとなる。
【0037】
また、上記アクチューエータ43により、デフロスタドア41を開き、かつベントドア40及びフットドア42を閉じると、デフロスタモードとなる。尚、吹出モードは、アクチュエータ43の作動によって上記した吹出モード以外の吹出モードにすることも可能である。
【0038】
図6に示すように、上記室内浄化装置4は、静電霧化装置47と、酸素富化装置48と、送風機49とを備えており、図1に示すように、空調装置1の運転席側に配設されている。運転席側サイドベントダクト36の下部には、サブダクト56が隣接して設けられている。サブダクト56内には、低酸素空気用通路56aが形成されている。低酸素空気用通路56aの上流端及び下流端は共に室外に連通していて、サブダクト56には室外の大気が導入されるようになっている。
【0039】
静電霧化装置47は、運転席側サイドベントダクト36内を流れる空気に含まれる水蒸気を結露させて集め、この集めた水を帯電した微細な粒子S(図5にのみ示す)とするように構成されたものであり、図4にも示すように、結露水生成部50と、結露水貯留部51と、静電霧化部52とを備えている。結露水生成部50が静電霧化装置4の略下半部を構成しており、また、静電霧化部52が静電霧化装置4の略上半部を構成している。また、結露水貯留部51は、静電霧化装置4の結露水生成部50と静電霧化部52との間に位置している。
【0040】
上記結露水生成部50は、熱電効果を有する熱電素子としてのペルチェ素子53と、放熱用フィン54とを備えている。図6に示すように、放熱用フィン54は、サブダクト56内の低酸素空気用通路56aに臨むように配設される一方、静電霧化装置47の放熱フィン54以外の部分は運転席側サイドベントダクト36内の酸素富化空気用通路36bに臨むように配設されている。
【0041】
ペルチェ素子53は、周知のように、電圧を印加することで高温部53aと低温部53bができる素子である(図4及び図5に示す)。このペルチェ素子53は、円板状に形成され、略水平に延びるように配置されている。ペルチェ素子53の低温部53bは上面側に位置し、高温部53aは下面側に位置している。
【0042】
上記ペルチェ素子53は、図3に示すように、上記制御装置5に接続されている。制御装置5はペルチェ素子53に電圧を印加するように構成されている。制御装置5からの出力電圧は変化するようになっている。この制御装置5の出力電圧を、ペルチェ素子53の低温部53bの温度が周囲の空気の露点よりも低くなるように設定すると、該周囲の空気に含まれる水蒸気が低温部53bの表面に凝縮して結露水が生成されるようになる。
【0043】
上記放熱用フィン54の上端部は、上記ペルチェ素子53よりも大径の円板状に形成され、この円板状の部分が、図4に示すように、ペルチェ素子53の下面、即ち高温部53aに固定されている。この放熱用フィン54の通風方向は、サブダクト56の通風方向と略同じになるように設定されている。
【0044】
上記結露水貯留部51は、円筒部58と、円筒部58の中心線方向一端側の開口を閉塞する閉塞板部59とを備えている。円筒部58の外径は、ペルチェ素子53の径と略同じに設定されている。これら円筒部58及び閉塞板部59は、導電性を有する金属材料で構成されている。図5に示すように、閉塞板部59には、貫通孔59aが形成されており、空気が貫通孔59aを通って円筒部58の内外に流通するようになっている。円筒部58の中心線方向他端部が全周に亘ってペルチェ素子53の上面に密着した状態で固定されている。この円筒部58内に上記低温部53bで得られた結露水が貯留されるようになっている。
【0045】
上記円筒部58には、上記結露水貯留部51に貯留された結露水量を検出するための結露水量検出センサ60が設けられている。この結露水量検出センサ60は、水量を検出する際に用いられている周知のものであり、上記制御装置5に接続されている。
【0046】
上記静電霧化部52は、図5に示すように、上下方向に延びる細い棒状の放電電極(電極部)61と、該放電電極61を覆うカバー部62と、対極電極63とを備えている。上記放電電極61は、毛細管現象を生じ得る多孔質セラミックで構成され、上記閉塞板部59の略中心部に固定されている。放電電極61の上側は針状に形成され、下側は閉塞板部59を貫通し、結露水貯留部51の底面を構成しているペルチェ素子53の低温部53bに接するまで延びている。
【0047】
上記カバー部62は、非導電性の樹脂材料を成形してなるものであり、上記円筒部58と略同径の円筒状をなしている。このカバー部62の下端部が上記閉塞板部59の上面に固定されている。カバー部62の上端部は放電電極61よりも上方に位置している。図7にも示すように、カバー部62の周方向の所定領域には、複数の通風孔62aが上下方向に間隔をあけて形成されている。これら通風孔62aは空調風の流れ方向上流側に向いており、空調風が通風孔62aからカバー部62内に入りやすくなっている。
【0048】
上記対極電極63は、導電性を有する金属材料を上記カバー部62と略同径のリング状に成形してなるものであり、該カバー部62の上端部に固定されている。この対極電極63は制御装置5に構成されている高電圧発生部(図示せず)に接続されている。また、上記閉塞板部59は接地されている。
【0049】
図6に示すように、酸素富化装置48は、酸素富化膜を有する酸素富化ユニット66と、ポンプ67とを備えている。酸素富化ユニット66は、サブダクト56内に配設され、ポンプ67は、運転席側サイドベントダクト36内に配設されている。
【0050】
酸素富化膜は、有機高分子膜で構成されており、空気を通過させた際に膜を通過する分子の速度差を利用して酸素富化空気を得ることができるようになっている。この実施形態では、酸素富化膜として、無孔質のシリコン系高分子膜を用いているが、これに限るものではない。酸素富化膜の一方側の面と、他方側の面とで気圧差を設けることにより、空気を酸素富化膜に溶解させ、その空気が膜内を拡散するときの速度比により、酸素濃度の比較的高い酸素富化空気と、酸素濃度の比較的低い空気とに分離される。窒素に対する酸素の分離比は、約2.5である。また、酸素富化膜は、窒素よりも水蒸気をよく通し、窒素に対する水蒸気の分離比は、約22である。また、酸素富化空気とは、大気の酸素濃度よりも高い酸素濃度の空気をいい、本実施形態では、酸素濃度が約30%程度である。
【0051】
ポンプ67の吸引管67aは、酸素富化ユニット66における酸素富化膜の下流側空間に連通している。この吸引管67aにより、酸素富化膜を通過した酸素富化空気が吸引されるようになっている。ポンプ67の吐出管(吐出部)67bの下流端は、運転席側サイドベントダクト36内において静電霧化装置47よりも上流側に位置している。
【0052】
酸素富化ユニット66からは酸素富化空気以外の低酸素空気がサブダクト56に排出されるようになっている。
【0053】
送風機49は、サブダクト56内において酸素富化ユニット66よりも上流側に配設されている。この送風機49により、大気が酸素富化ユニット66に送られるとともに、酸素富化ユニット66から排出される低酸素空気がサブダクト56の下流側に送られて室外に排出される。
【0054】
ポンプ67及び送風機49は、制御装置5に接続され、制御装置5から出力される信号に基づいてON及びOFFが個別に切り替えられるようになっている。
【0055】
また、上記制御装置5には、室内浄化装置4のON/OFFスイッチ65が接続されている。制御装置5は、ON/OFFスイッチ65が操作されたことを検出すると、静電霧化装置47と、酸素富化装置48と、送風機49とを同時に作動させるように構成されている。
【0056】
上記制御装置5には、室内の温度を検出する内気温度センサ68や、各種操作スイッチ69が接続されている。各種操作スイッチ69としては、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ、内気循環スイッチ等がある。制御装置5は、これらセンサ68及びスイッチ69の入力信号に基づいて、空調風の目標温度を決定するように構成されている。そして、制御装置5は、空調風の温度が目標温度となるように、圧縮機23の電磁クラッチ23a及び温度調節用アクチュエータ33を制御する。また、制御装置5は、自動モードされているときには、空調風量が目標温度に見合った最適な風量となるようにファン駆動モータ17への印加電圧を変更し、また、最適な吹出モードとなるように各ドア40〜42を制御する。尚、上記吹出モードは、乗員が吹出モード切替スイッチで任意の吹出モードに切り替えることも可能である。
【0057】
次に、上記のように構成された空調装置1の動作について説明する。制御装置5は、自動モードにあるときには、設定温度や室内の温度状態に基づいて空調風の目標温度を決定して温度調節用アクチュエータ33を作動させるとともに、ファン駆動モータ17を回転させ、さらに、空調風の吹出モードを設定して吹出モード切替用アクチュエータ43を作動させる。
【0058】
また、この制御装置5は、ON/OFFスイッチ65がONにされたことを検出すると、酸素富化装置48のポンプ67と送風機49を作動させるとともに、ペルチェ素子53及び静電霧化部52に電圧を印加する。ペルチェ素子53に印加される電圧は、低温部53bが空調風の露点よりも低い温度となるように設定されており、この値は、シュミレーション等により空調風の温度や風量別に予め求められている値である。
【0059】
送風機49を作動させると室外の大気がサブダクト56に流入して酸素富化ユニット66に送られる。この大気は、ポンプ67の吸引力により酸素富化膜を通過していく。酸素富化ユニット66内で生成された酸素富化空気は、ポンプ67の吸引管67aにより吸引されて吐出管67bから運転席側サイドベントダクト36内に流入する。空調装置1の吹出モードがベントモードにあるときには、運転席側サイドベントダクト36内の酸素富化空気が空調風により下流側へ流れていく。
【0060】
運転席側サイドベントダクト36内の酸素富化空気は、静電霧化装置4のカバー部62の通風孔62aからカバー部62内に流れ込む。このカバー部62内に流れ込んだ空気が結露水貯留部51内の低温部53bで露点以下まで冷却され、空気に含まれている水蒸気が低温部53bの表面で凝縮して結露水が得られる。このとき、酸素富化空気は、大気に比べて単位体積当たりで比較して水蒸気を多く含んでいるので、冬季のように大気が乾燥していても、静電霧化装置4の結露水生成部50で結露水を早く生成することが可能になる。
【0061】
上記放電電極61の下端部が上記結露水貯留部51に貯留された結露水に接触すると、放電電極61は毛細管現象により結露水を上端側へと吸い上げる。この吸い上げられた結露水は、上記静電霧化部52に印加された電圧により放電電極61の上端部で分裂し、粒径がナノメーター(nm)サイズの微細な粒子になる。これら放電電極61と対極電極63との間では、凝縮水の分裂と同時にマイナスイオンが発生する。これにより、分裂した水の粒子は電荷を帯びて帯電した状態になる。このようにして生成された電荷を帯びた水の粒子は、通風孔62aからカバー部62内に流入した空調風により該カバー部62の上端開口部から外部に出て行った後、この空調風に乗って運転席側のベント吹出口36aから室内に広がっていく。
【0062】
一方、酸素富化ユニット66から排出される低酸素空気は、送風機49によりサブダクト56の下流側へ送られ、静電霧化装置47の放熱用フィン54に当たる。この低酸素空気より放熱用フィン54が冷却されてペルチェ素子35の高温部53aが効果的に冷却される。そして、低酸素空気はサブダクト56から室外へ排出される。
【0063】
上記制御装置5は、上記結露水量検出センサ60により結露水貯留部51の結露水が少なくなったことが検出されると、ペルチェ素子53に印加する電圧を高める。これにより、低温部53bの温度がより一層下がり、より多くの結露水を短時間で得て結露水貯留部51に貯留していくことが可能になり、結露水貯留部51の結露水が無くなってしまうのを回避することが可能になる。一方、結露水の貯留量が十分にあるときには結露水を新たに得る必要がないので、ペルチェ素子53に印加する電圧を下げる、または0にすることで、無駄な電力の消費が抑制される。
【0064】
以上説明したように、この実施形態によれば、酸素富化膜を通過して得られた酸素富化空気が流れる運転席側サイドベントダクト36に静電霧化装置47を配置したので、酸素富化空気中に多く含まれる水蒸気を利用して帯電した水の粒子を生成できる。これにより、冬季のように大気の湿度が低くても、静電霧化装置47を有効に機能させて帯電した水の粒子を室内に供給でき、室内環境を良好にできる。
【0065】
また、ペルチェ素子53の低温部53bにより酸素富化空気中の水蒸気を凝縮させることができるので、帯電した水の粒子を確実に得ることができる。また、低酸素空気を有効に利用してペルチェ素子53の低温部53bの温度を十分に低下させることができる。
【0066】
また、酸素富化装置48と静電霧化装置47とを連動させるようにしたので、酸素富化装置48で水蒸気を多く含む空気を生成し、この空気を静電霧化装置47に供給して静電霧化装置47を常に有効に作動させることができる。
【0067】
尚、上記実施形態では、酸素富化装置48と静電霧化装置47とを連動させるようにしているが、これに限らず、例えば、酸素富化装置48の作動後に静電霧化装置47を作動させるようにしてもよい。このようにすることで、水蒸気を多く含む空気を静電霧化装置47に流した状態で静電霧化装置47を作動させることが可能になるので、帯電した水の粒子を静電霧化装置47の作動直後から得ることができ、静電霧化装置47を効率良く作動させることができる。
【0068】
また、この実施形態では、結露水量検出センサ60で結露水貯留部51内に貯留されている結露水量を検出するようにしているが、結露水量検出センサ60で低温部53a表面の結露水量を直接検出するようにしてもよい。
【0069】
また、酸素富化装置48と静電霧化装置47とは、ON/OFFスイッチ65の操作でなく、空調装置1の運転開始と同時に作動させるようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、室内浄化装置4を空調装置1に一体に設けた場合について説明したが、これに限らず、室内浄化装置4は空調装置1とは別に構成して室内浄化装置4のみを室内に設けることも可能である。
【0071】
また、この実施形態では、本発明を車両に適用した場合について説明したが、本発明は、一般住居や、店舗、事務所等にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明にかかる室内浄化装置は、例えば、自動車の室内を浄化するのに用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 空調装置
4 室内浄化装置
5 制御装置
36 運転席側サイドベントダクト(通路構成部)
36a 酸素富化空気用通路
47 静電霧化装置
48 酸素富化装置
56 サブダクト
56a 低酸素空気用通路
61 放電電極(電極部)
66 酸素富化ユニット
67 ポンプ
67b 吐出管(吐出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気を通過させて大気よりも酸素濃度の高い酸素富化空気を得る酸素富化膜と、得られた酸素富化空気を吐出する吐出部とを有する酸素富化装置と、
水に所定電圧を印加させて静電霧化する電極部を有する静電霧化装置と、
上記酸素富化装置の吐出部が連通し、該吐出部から吐出される酸素富化空気を室内へ導く酸素富化空気用通路を構成する通路構成部とを備え、
上記静電霧化装置の電極部は、上記酸素富化空気用通路において上記吐出部の連通部位よりも下流側に臨むように配置され、
上記電極部で生成された帯電した水の粒子が上記酸素富化空気用通路を介して室内に供給されることを特徴とする室内浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の室内浄化装置において、
通路構成部は、酸素富化装置から排出される酸素濃度の低い空気が流通する低酸素空気用通路を有し、
静電霧化装置は、電圧が印加されて生じる熱電効果により酸素富化空気の露点よりも低温となる低温部及び高温となる高温部を有する熱電素子を備え、該低温部により凝縮された酸素富化空気内の水を上記静電霧化装置の電極部に供給するように構成され、
上記高温部が低酸素空気用通路に臨むように配置されていることを特徴とする室内浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の室内浄化装置において、
酸素富化装置と静電霧化装置とが連動することを特徴とする室内浄化装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の室内浄化装置において、
酸素富化装置の作動後に静電霧化装置が作動することを特徴とする室内浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−63101(P2011−63101A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214737(P2009−214737)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】