説明

室圧制御システム

【課題】室圧調整する対象室間の室間連通口が開扉状態にあるとき、室間連通口において一方向き通過気流を形成するとともに、対象室と外部域との間での圧力の高低関係も所要の関係に保持できる室圧制御システムを提供する。
【解決手段】制御手段10は、室間連通口12の扉12aが閉扉状態にあるとき、各対象室用の設定通常室圧ppa,ppbを各対象室1a,1bの目標室圧pma,pmbにした状態で各対象室1a,1bについて室圧調整ダンパVa,Vbの開度調整による室圧調整制御を実行する閉扉モード制御を実施し、かつ、扉12aが開扉状態にあるとき、いずれか一方の対象室1aに対する室圧調整ダンパVaの開度を固定するとともに、他方の対象室1bの目標室圧pmbを気流形成用の設定室圧pmbに変更した状態で、他方の対象室1bについて室圧調整制御を実行する開扉モード制御を実施する構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室圧制御システムに関し、詳しくは、高圧側の対象室と低圧側の対象室との夫々に給気風路及び排気風路を接続するとともに、これら給気風路と排気風路とのうちのいずれか一方側の風路の夫々に各対象室に対する室圧調整ダンパを介装し、室圧センサによる対象室の検出室圧に応じ前記室圧調整ダンパの開度を調整して対象室の室圧を目標室圧に調整する室圧調整制御を各対象室について実行する制御手段を設けた室圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の室圧制御システムにおいて、高圧側対象室と低圧側対象室との間の室間連通口における扉の開閉を考慮したものとして、次の(イ),(ロ)の如きシステムが提案されている(図1参照)。
【0003】
(イ)扉12aが閉扉状態にあるときは、高圧側対象室用の設定通常室圧ppaを高圧側対象室1aの目標室圧pmaとし、かつ、それよりも低い低圧側対象室用の設定通常室圧ppbを低圧側対象室1bの目標室圧pmbとした状態で、各対象室1a,1bについて室圧調整ダンパVa,Vbの開度調整による上記の室圧調整制御を実行する。
一方、扉12aが開扉状態にあるときは、高圧側対象室1aの目標室圧pmaと低圧側対象室1bの目標室圧pmbとを互いに等しい目標室圧にした状態で、各対象室1a,1bについて室圧調整ダンパVa,Vbの開度調整による上記の室圧調整制御を扉12aが閉扉状態にあるときから継続して実行する(特許文献1参照)。
【0004】
(ロ)扉12aが閉扉状態にあるときは、高圧側対象室用の設定通常室圧ppaを高圧側対象室1aの目標室圧pmaとし、かつ、それよりも低い低圧側対象室用の設定通常室圧ppbを低圧側対象室1bの目標室圧pmbとした状態で、各対象室1a,1bについて室圧調整ダンパVa,Vbの開度調整による上記の室圧調整制御を実行する。
一方、扉12aが開扉状態にあるときは、各対象室1a,1bに対する上記室圧調整制御を休止した状態で各対象室1a,1bに対する室圧調整ダンパVa,Vbを風量調整ダンパとして用い、これら室圧調整ダンパVa,Vbの開度調整による風量調整と各対象室1a,1bに対して装備した定風量ダンパ装置5a,5bの自動風量調整機能とにより、扉12aの開度にかかわらず、室間連通口12における通過気流Kaを高圧側対象室1aから低圧側対象室1bに向かう一定風速の一方向き気流に維持する(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−83221号公報
【特許文献2】特開2006−292280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記(イ)の従来システムでは、扉12aが開扉状態にあるときも各対象室1a,1bに対する室圧調整制御を継続して両対象室1a,1bの室圧pa,pbを互いに等しい目標室圧に調整するから、両対象室1a,1bと外部域(隣接する廊下や別室など)との間での圧力の高低関係は扉12aの開閉にかかわらず汚染防止などの安全上で要求される関係に保持することができるものの、このように両対象室1a,1bの室圧pa,pbを互いに等しい室圧に調整することに対し、開扉状態の室間連通口12において生じる通過気流Kaの向きを制御することが難しい問題があった。
【0007】
また、上記(ロ)の従来システムでは逆に、扉12aが開扉状態にあるときにおいて室間連通口12aで生じる通過気流Kaの向きを所要の一方向きに維持し得るものの、扉12aが開扉状態にあるときには室圧調整ダンパVa,Vbを風量調整ダンパとして用いる風量調整制御の状態となって両対象室1a,1bの室圧pa,pbが調整されない状態になる為、両対象室1a,1bと外部域との間での圧力の高低関係を汚染防止などの安全上で要求される関係に確実に保持できない問題があった。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な制御形態を採ることにより、扉が開扉状態にあるときに、両対象室と外部域との間での圧力の高低関係を汚染防止などの安全上で要求される関係に確実に保持できるとともに、開扉状態の室間連通口において一方向きの通過気流も確実に形成できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は室圧制御システムに係り、その特徴は、
高圧側の対象室と低圧側の対象室との夫々に給気風路及び排気風路を接続するとともに、これら給気風路と排気風路とのうちのいずれか一方側の風路の夫々に各対象室に対する室圧調整ダンパを介装し、
室圧センサによる対象室の検出室圧に応じ前記室圧調整ダンパの開度を調整して対象室の室圧を目標室圧に調整する室圧調整制御を各対象室について実行する制御手段を設けた室圧制御システムであって、
高圧側対象室と低圧側対象室とを連通する室間連通口における扉の開閉を検出する開閉検出手段を設け、
前記制御手段は、この開閉検出手段の検出情報に基づき、
前記扉が閉扉状態にあるとき、高圧側対象室用の設定通常室圧を高圧側対象室の目標室圧にするとともに、それよりも低い低圧側対象室用の設定通常室圧を低圧側対象室の目標室圧にした状態で、高圧側対象室と低圧側対象室との夫々について前記室圧調整制御を実行する閉扉モード制御を実施し、
かつ、前記扉が開扉状態にあるとき、高圧側対象室と低圧側対象室とのうちのいずれか一方の対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度を固定するとともに、他方の対象室の目標室圧を前記室間連通口において一方向きの通過気流が形成される気流形成用の設定室圧に変更した状態で、他方の対象室について前記室圧調整制御を実行する開扉モード制御を実施する構成にしてある点にある。
【0010】
つまり、この構成によれば、室間連通口の扉が閉扉状態にあるときは閉扉モード制御の実施により、高圧側対象室の室圧を高圧側対象室に対する室圧調整制御で高圧側対象室用の設定通常室圧に調整するとともに、低圧側対象室の室圧を低圧側対象室に対する室圧調整制御で低圧側対象室用の設定通常室圧に調整する。
【0011】
したがって、扉が閉扉状態にあるときには、言うまでもなく、高圧側対象室と低圧側対象室との相互間での汚染を確実に防止できるとともに、両対象室と外部域との間での圧力の高低関係も汚染防止などの安全上で要求される関係に確実に保持できる(この点については先述した(イ),(ロ)の従来システムにおいても同様である)。
【0012】
一方、この種の室圧制御システムでは、室間連通口の扉が開かれると、各対象室に対する室圧調整制御にかかわらず各対象室の室圧は室間連通口による両対象室の連通により等しい室圧(ないしはほぼ等しい室圧)になるが、ここで、高圧側対象室と低圧側対象室とのうちいずれか一方の対象室に対する室圧調整ダンパの開度を固定した状態で、他方の対象室に対する室圧調整ダンパの開度を適当な開度に変化させると、それら室圧調整ダンパ夫々の通過風量の差分により、開扉状態の室間連通口において所望向きの一方向き通過気流を形成することができる。
【0013】
また、この際、他方の対象室に対する室圧調整ダンパの開度を適当な開度に変化させるのに、他方対象室の目標室圧を扉が閉扉状態にあるときの設定通常室圧から変更して、その目標室圧の変更に対する室圧調整制御上での室圧調整ダンパの開度調整により、他方対象室に対する室圧調整ダンパの開度を上記の如き適当開度に変化させるようにすれば、目標室圧を変更した状態での他方対象室に対する室圧調整制御により、連通状態にある両対象室の室圧をともに他方対象室に対する変更後の目標室圧に調整することができる。
【0014】
したがって、扉が開扉状態にあるときに採用する他方対象室の室圧として、一方の対象室に対する室圧調整ダンパの開度を固定した状態で他方の対象室に対する室圧調整制御を実行した際に、開扉状態にある室間連通口において所望向きの一方向き通過気流を形成でき、また、両対象室と外部域との間での圧力の高低関係も所望の関係に保持できる適当な気流形成用の設定室圧を選定すれば、扉が開扉状態にあるとき上記の開扉モード制御の実施により、開扉状態の室間連通口において所望向きの一方向き通過気流を形成するとともに、連通状態にある両対象室の室圧を外部域との所望の圧力高低関係を保持できる室圧に調整することができる。
【0015】
即ち、先述した(イ)の従来システムでは、扉が開扉状態にあるとき、両対象室の目標室圧を互いに等しくした状態で高圧側対象室と低圧側対象室との夫々について室圧調整制御を実行するため、開扉状態の室間連通口において生じる通過気流の向きを制御することが難しいが、上記構成によれば、扉が開扉状態にあるとき、開扉状態の室間連通口において所望向きの一方向き通過気流を確実に形成して維持しながら、連通状態にある両対象室と外部域との間での圧力の高低関係も汚染防止などの安全上で要求される所望の関係に保持することができ、この点で先述した(イ),(ロ)の如き従来システムに比べ一層優れた室圧制御システムとなる。
【0016】
なお、上記構成の実施において、扉が開扉状態にあるとき実施する開扉モード制御で高圧側対象室と低圧側対象室とのうちいずれか一方の対象室に対する室圧調整ダンパの開度を固定するのに、その固定開度は閉扉モード制御から開扉モード制御への切り換え時点の開度(即ち、扉が開かれたときの開度)あるいは適宜設定した開度のいずれであってもよい。
【0017】
また、開扉モード制御については、高圧側対象室に対する室圧調整ダンパの開度を固定するとともに低圧側対象室の目標室圧を気流形成用の設定室圧に変更した状態で、低圧側対象室について室圧調整制御を実行する制御形態と、これとは逆に低圧側対象室に対する室圧調整ダンパの開度を固定するとともに高圧側対象室の目標室圧を気流形成用の設定室圧に変更した状態で、高圧側対象室について室圧調整制御を実行する制御形態とを切り換え指令等に応じて適宜切り換え実施できるようにすれば、機能性や汎用性の面などで一層優れた室圧制御システムにすることができる。
【0018】
各対象室に対する室圧調整ダンパは給気風路の側に介装する構成、あるいは、排気風路の側に介装する構成のいずれを採用してもよく、また、給気風路と排気風路とのうち室圧調整ダンパの介装側とは異なる側の風路に、ダンパ開度の調整により通過風量を設定風量に調整する自動風量調整機能を備える定風量ダンパ装置を介装して、室圧調整機能を高めるようにしてもよい。
【0019】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、高圧側対象室を前記一方の対象室とし、かつ、低圧側対象室を前記他方の対象室とした状態で、前記扉が開扉状態にあるとき前記開扉モード制御として、高圧側対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度を固定するとともに、低圧側対象室の目標室圧を前記気流形成用の設定室圧に変更した状態で、低圧側対象室について前記室圧調整制御を実行する構成にしてある点にある。
【0020】
つまり、扉の閉扉に伴う開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰の際、開扉モード制御で開度固定していた前記一方の対象室に対する室圧調整ダンパについては、一方の対象室に対する室圧調整制御の再開に伴い、開扉モード制御の際の固定開度から一方対象室の室圧を一方対象室用の設定通常室圧に調整する開度(略言すれば、元の室圧調整開度)に開度変化する。
【0021】
また、開扉モード制御で目標室圧を気流形成用の設定室圧に変更していた他方の対象室に対する室圧調整ダンパについては、他方対象室の目標室圧が他方対象室用の設定通常室圧に復帰されるのに伴い、他方対象室の室圧を気流形成用の設定室圧に調整する開度から他方対象室の室圧を他方対象室用の設定通常室圧に調整する開度(略言すれば、元の室圧調整開度)に開度変化する。
【0022】
そして、これら開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰の際の開度変化を比べた場合、室圧を気流形成用の設定室圧に調整する開度から元の室圧調整開度に開度変化する他方対象室に対する室圧調整ダンパの開度変化よりも、開扉モード制御の際の固定開度から元の室圧調整開度に開度変化する一方の対象室に対する室圧調整ダンパの開度変化の方が一般に、各回の開度変化の変化幅が一定化したものとなる。
【0023】
また特に、開扉モード制御において一方の対象室に対する室圧調整ダンパの開度を先の閉扉モード制御から開扉モード制御への切り換え時点における開度(略言すれば、元の室圧調整開度)に固定する場合では、室圧を気流形成用の設定室圧に調整する開度から元の室圧調整開度に開度変化する他方対象室に対する室圧調整ダンパの開度変化よりも、上記固定開度から元の室圧調整開度に開度変化する(つまりは、元の室圧調整開度の近傍でのみの開度変化となる)一方の対象室に対する室圧調整ダンパの開度変化の方が一般に、各回の開度変化の変化幅が小さいものにもなる。
【0024】
したがって、高圧側対象室を前記一方の対象室として開扉モード制御で高圧側対象室に対する室圧調整ダンパの開度を固定する上記構成によれば、扉の閉扉に伴う開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰で各対象室の室圧を気流形成用の設定室圧から各対象室の設定通常室圧へ復帰させるのに、低圧側対象室に比べ高圧側対象室の方をより安定化した状態で円滑に室圧復帰させることができ、このことから、低圧側対象室よりも高圧側対象室の室圧調整の方が重要視される場合において特に好適な室圧制御システムとなる。
【0025】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、低圧側対象室を前記一方の対象室とし、かつ、高圧側対象室を前記他方の対象室とした状態で、前記扉が開扉状態にあるとき前記開扉モード制御として、低圧側対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度を固定するとともに、高圧側対象室の目標室圧を前記気流形成用の設定室圧に変更した状態で、高圧側対象室について前記室圧調整制御を実行する構成にしてある点にある。
【0026】
つまり、前述の如く、扉の閉扉に伴う開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰で各対象室の室圧を気流形成用の設定室圧から各対象室の設定通常室圧へ復帰させるのに、開扉モード制御において室圧調整ダンパの開度を固定する前記一方の対象室の方が他方の対象室に比べより安定化した状態で円滑に室圧復帰させることができる。
【0027】
したがって、低圧側対象室を前記一方の対象室として開扉モード制御で低圧側対象室に対する室圧調整ダンパの開度を固定する上記構成によれば、扉の閉扉に伴う開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰で各対象室の室圧を気流形成用の設定室圧から各対象室の設定通常室圧へ復帰させるのに、高圧側対象室に比べ低圧側対象室の方をより安定化した状態で円滑に室圧復帰させることができ、このことから、高圧側対象室よりも低圧側対象室の室圧調整の方が重要視される場合において特に好適な室圧制御システムとなる。
【0028】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
低圧側対象室が高圧側対象室とは別に、所定の室圧を有する第1別室と連通状態又は隣接状態にあることに対し、
前記気流形成用の設定室圧は前記第1別室が有する所定室圧と低圧側対象室用の設定通常室圧との間の範囲内の室圧にしてある点にある。
【0029】
つまり、この構成によれば、扉が開扉状態にあるとき開扉モード制御の実施により両対象室をともに気流形成用の設定室圧に調整することにおいて、両対象室の室圧が第1別室の所定室圧と低圧側対象室用の設定通常室圧との間の室圧に調整される。
【0030】
したがって、低圧側対象室に対して連通状態又は隣接状態にある第1別室と低圧側対象室との室圧の高低関係を扉が開扉状態にあるときにも扉が閉扉状態にあるときと同様の関係に保持することができ、これにより、低圧側対象室と第1別室との相互間での汚染も一層確実に防止することができる。
【0031】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
高圧側対象室が低圧側対象室とは別に、所定の室圧を有する第2別室と連通状態又は隣接状態にあることに対し、
前記気流形成用の設定室圧は前記第2別室が有する所定室圧と高圧側対象室用の設定通常室圧との間の範囲内の室圧にしてある点にある。
【0032】
つまり、この構成によれば、扉が開扉状態にあるとき開扉モード制御の実施により両対象室をともに気流形成用の設定室圧に調整することにおいて、両対象室の室圧が第2別室の所定室圧と高圧側対象室用の設定通常室圧との間の室圧に調整される。
【0033】
したがって、高圧側対象室に対して連通状態又は隣接状態にある第2別室と高圧側対象室との室圧の高低関係を扉が開扉状態にあるときにも扉が閉扉状態にあるときと同様の関係に保持することができ、これにより、高圧側対象室と第2別室との相互間での汚染も一層確実に防止することができる。
【0034】
なお、第4特徴構成と第5特徴構成との併行実施として、低圧側対象室が高圧側対象室とは別に所定の室圧を有する第1別室と連通状態又は隣接状態にあり、また、高圧側対象室が低圧側対象室とは別に所定の室圧を有する第2別室と連通状態又は隣接状態にあることに対し、前記気流形成用の設定室圧を第1別室が有する所定室圧と低圧側対象室用の設定通常室圧との間の範囲内で、かつ、第2別室が有する所定室圧と高圧側対象室用の設定通常室圧との間の範囲内の室圧にすれば、低圧側対象室とそれに連通又は隣接する第1別室との室圧高低関係、及び、高圧側対象室とそれに連通又は隣接する第2別室との室圧高低関係の両方について、扉が開扉状態にあるときも扉が閉扉状態にあるときと同様の関係に保持することができ、この点で一層機能性や汎用性に優れた室圧制御システムにすることができる。
【0035】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記給気風路と前記排気風路とのうち前記室圧調整ダンパの介装側とは異なる側の風路に、ダンパ開度の調整により通過風量を設定風量に調整する自動風量調整機能を備える定風量ダンパ装置を介装し、
前記制御手段は、前記扉が閉扉状態にあるとき前記定風量ダンパ装置を自動風量調整機能させ、かつ、前記扉が開扉状態にあるとき前記定風量ダンパ装置のダンパ開度を固定する構成にしてある点にある。
【0036】
つまり、給気風路と排気風路とのうち室圧調整ダンパの介装側とは異なる側の風路に上記の如き自動風量調整機能を備える定風量ダンパ装置を介装して、扉が閉扉状態にあるとき、閉扉モード制御の実施に対し定風量ダンパ装置を自動風量調整機能させるようにすれば、閉扉モード制御での室圧調整制御において対象室の室圧を一層精度良くかつ安定的に設定通常室圧に調整することができる。
【0037】
また、扉が開扉状態にあるとき、開扉モード制御の実施に対し定風量ダンパ装置の自動風量調整機能は維持したままでも前記第1特徴構成の実施上、特に問題とはならないが、上記の如く扉が開扉状態にあるとき、開扉モード制御の実施に対し定風量ダンパ装置のダンパ開度を固定するようにすれば、一方の対象室に対する室圧調整ダンパの通過風量と他方の対象室に対する室圧調整ダンパの通過風量との差分により形成する室間連通口における一方向き通過気流を風量面で一層安定的かつ確実に形成することができる。
【0038】
なお、この構成の実施において、扉が開扉状態にあるとき定風量ダンパ装置のダンパ開度を固定するのに、その固定開度は扉が開かれたときの開度(即ち、閉扉モード制御から開扉モード制御への切り換え時点の開度)、あるいは、適宜設定した開度のいずれであってもよい。
【0039】
また、上記構成の実施においては、給気風路と排気風路とのうち室圧調整ダンパの介装側とは異なる側の風路の夫々に定風量ダンパ装置を介装して、これら高圧側対象室に対する定風量ダンパ装置と低圧側対象室に対する定風量ダンパ装置と両方について、扉が閉扉状態にあるときには自動風量調整機能させ、かつ、扉が開扉状態にあるときにはダンパ開度を固定するようにするのが望ましい。
【0040】
なお、場合によっては、高圧側対象室に対する定風量ダンパ装置と低圧側対象室に対する定風量ダンパ装置とのうち、いずれか1つの定風量ダンパ装置についてのみ、扉が開扉状態にあるときダンパ開度を固定するようにしたり、あるいは、高圧側対象室と低圧側対象室とのうち、いずれか1つの対象室に対してのみ定風量ダンパ装置を装備して、この1つの定風量ダンパ装置について、扉が閉扉状態にあるとき自動風量調整機能させ、かつ、扉が開扉状態にあるときダンパ開度を固定するようにしてもよい。
【0041】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成の実施において好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、前記他方の対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度を前記閉扉モード制御の実施時に計測するとともに、その計測開度を判定用開度として記憶し、
その後、前記扉の閉扉に伴う前記開扉モード制御から前記閉扉モード制御への復帰の際は、前記他方の対象室の目標室圧を前記気流形成用の設定室圧から前記閉扉モード制御で採用する他方対象室用の設定通常室圧に戻した後、前記他方の対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度が前記室圧調整制御により前記判定用開度又はその近傍に復帰すると、前記一方の対象室に対する前記室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して前記一方の対象室に対する前記室圧調整制御を再開する構成にしてある構成にしてある点にある。
【0042】
つまり、この構成では、閉扉モード制御の際、他方対象室に対する室圧調整制御で調整されていた前記他方対象室に対する室圧調整ダンパの開度(即ち、他方対象室の室圧を他方対象室用の設定通常室圧に調整する開度)を上記判定用開度とする。
【0043】
そして、扉の閉扉に伴う開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰の際、他方対象室の目標室圧を気流形成用の設定室圧から他方対象室用の設定通常室圧に戻した後、他方対象室に対する室圧調整ダンパの開度が室圧調整制御上で上記の判定用開度(即ち、他方対象室の室圧を設定通常室圧に調整する元の開度)又はその近傍に復帰するのを待ち、この復帰後に一方の対象室に対する室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して一方の対象室に対する室圧調整制御を再開する。
【0044】
即ち、このことにより、他方対象室の室圧を他方対象室用の設定通常室圧にほぼ復帰させた後に、一方の対象室に対する室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して一方の対象室に対する室圧調整制御を再開することができ、これにより、例えば、開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰の際に、他方対象室の目標室圧を他方対象室用の設定通常室圧に戻すのと同時に、一方の対象室に対する室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して一方の対象室に対する室圧調整制御を再開するのに比べ、開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰の際に高圧側対象室に対する室圧調整ダンパと低圧側対象室に対する室圧調整ダンパとの両方が同時に復帰的な開度変化を行なう状態になって、そのことによる各対象室の同時の過渡的な不定室圧変化により一時的にせよ高圧側対象室と低圧側対象室との室圧逆転を招くといったことを一層確実かつ効果的に防止することができる。
【0045】
なお、この構成の実施にあたっては、閉扉モード制御の実施期間中に、他方側対象室に対する室圧調整ダンパの開度を連続的ないし定期的に計測して、時間経過に伴い最近の所定単位時間における計測開度の平均値を上記判定用開度として逐次更新するようにするのが望ましい。
【0046】
また場合によっては、閉扉モード制御の実施期間中に他方側対象室に対する室圧調整ダンパの開度を連続的ないし定期的に計測して、閉扉モード制御の実施全期間における計測開度の平均値や最近の計測開度を上記判定用開度にするようにしてもよい。
【0047】
本発明の第8特徴構成は、第1〜第6特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、前記扉の閉扉に伴う前記開扉モード制御から前記閉扉モード制御への復帰の際は、前記他方の対象室の目標室圧を前記気流形成用の設定室圧から前記閉扉モード制御で採用する他方対象室用の設定通常室圧に戻した後、設定復帰時間が経過すると、前記一方の対象室に対する前記室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して前記一方の対象室に対する前記室圧調整制御を再開する構成にしてある点にある。
【0048】
つまり、この構成では、扉の閉扉に伴う開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰の際、他方対象室の目標室圧を気流形成用の設定室圧から他方対象室用の設定通常室圧に戻した後、前述の如く他方対象室に対する室圧調整ダンパの開度が判定用開度(即ち、他方対象室の室圧を設定通常室圧に調整する元の開度)やその近傍に復帰するのを待つのに代え、他方対象室の目標室圧を気流形成用の設定室圧から他方対象室用の設定通常室圧に戻した後、設定復帰時間が経過するのを待ち、この設定復帰時間の経過後に一方の対象室に対する室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して一方の対象室に対する室圧調整制御を再開する。
【0049】
したがって、設定復帰時間として適当な時間を選定しておけば、前述と同様、他方対象室の室圧を他方対象室用の設定通常室圧にほぼ復帰させた後に、一方の対象室に対する室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して一方の対象室に対する室圧調整制御を再開することができて、各対象室の同時の過渡的な不定室圧変化により一時的にせよ高圧側対象室と低圧側対象室との室圧逆転を招くといったことを一層確実かつ効果的に防止することができる。
【0050】
なお、この構成の実施においては、開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰の際の他方対象室の室圧変化に基づき設定復帰時間を最適値に自動補正するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
図1は室圧制御システムのシステム構成を示し、1a〜1cは室圧調整対象の第1〜第3の対象室、Fsは主給気風路2を介して各対象室1a〜1cに空調用空気SAを供給する給気ファン、Feは主排気風路3を介して各対象室1a〜1cから室内空気RAを排出する排気ファンである。
【0052】
主給気風路2から各対象室1a〜1cに接続した分岐の給気風路4には夫々、定風量ダンパ装置5a〜5c及び給気用フィルタ6を介装してあり、定風量ダンパ装置5a〜5cは、それらのダンパ開度の調整により通過風量(ここでは、各対象室1a〜1cへの給気風量)を各々の設定風量に調整する自動風量調整機能を備えている。
【0053】
また、主排気風路3から各対象室1a〜1cに接続した分岐の排気風路7には夫々、排気用フィルタ8及び室圧調整ダンパVa〜Vcを介装してあり、これら室圧調整ダンパVa〜Vcはシステム制御器10からの指令に応じてダンパ制御器9a〜9cにより操作される。
【0054】
各対象室1a〜1cには、それら対象室1a〜1cの室圧pa〜pc(具体的には外部域との差圧)を検出する室圧センサ11を装備し、また、第1対象室1aと第2対象室1bとの間の室壁に人員通過用などの密閉扉付きの室間連通口12があることに対し、この室間連通口12における扉12aの開閉を検出する開閉検出手段としての扉センサ14を装備してある。
【0055】
なお、第2対象室1bと第3対象室1cとの間の室壁には物品受け渡し用などの小開口13があるが、この小開口13は第1対象室1aと第2対象室1bとの間の室間連通口12に比べ開口面積が小さく、第2対象室1bと第3対象室1cとを互いに異なる室圧状態に保持できる程度のものである。
【0056】
システムの制御を司る制御手段としてのシステム制御器10は、扉センサ14による扉12aの開閉検出に基づき、扉12aが閉扉状態にあるときには各対象室1a〜1cの室圧pa〜pcを各対象室1a〜1cに対して設定された設定通常室圧ppa,ppb,ppcに調整する「閉扉モード制御」を実施し、一方、扉12aが開扉状態にあるときには閉扉モード制御に代え、開扉状態にある室間連通口12において第1対象室1aから第2対象室1bに向かう一方向きの通過気流Kaを形成するとともに第1及び第2対象室1a,1bの室圧pa,pbを所要の室圧ppkに保持する「開扉モード制御」を実施する。
【0057】
第1対象室1aの設定通常室圧ppaは第2対象室1bの設定通常室圧ppbよりも高く、第1対象室1aと第2対象室1bとは高圧側対象室と低圧側対象室との関係にあり、 また、第3対象室1cの設定通常室圧ppcは、例えば第1対象室1aの設定通常室圧ppaと第2対象室1bの設定通常室圧ppbとの間の室圧(ppa>ppc>ppb)になっている。
【0058】
以上の構成において、システム制御器10は、扉12aが閉扉状態にあるとき上記の閉扉モード制御として、具体的には次の(A)〜(D)の制御動作を実行する構成にしてある(図2,図3参照)。
【0059】
(A)各対象室1a〜1cの目標室圧pma〜pmcとして、各対象室1a〜1cの設定通常室圧ppa,ppb,ppcを各対象室1a〜1cのダンパ制御器9a〜9cに指定する。換言すれば、各対象室1a〜1cの目標室圧pma〜pmcとして、高圧側対象室用の設定通常室圧ppa,低圧側対象室用の設定通常室圧ppb,中間圧対象室用の設定通常室圧ppcを各ダンパ制御器9a〜9cに指定する。
【0060】
(B)室圧センサ11による検出室圧pa〜pcと目標室圧pma〜pmcとの偏差に応じ室圧調整ダンパVa〜Vcの開度を調整して対象室1a〜1cの室圧pa〜pcを目標室圧pma〜pmc(ここでは、設定通常室圧ppa,ppb,ppc)に調整する室圧調整制御を各対象室1a〜1cのダンパ制御器9a〜9cに実行させる。
【0061】
(C)各対象室1a〜1cに対する定風量ダンパ装置5a〜5cを自動風量調整機能させる。
【0062】
(D)第2対象室1bに対する室圧調整ダンパVbの開度βを定期的に計測して、時間経過に伴い最近の単位時間当たりの計測開度βの平均値βavを判定用開度として逐次更新し、更新した判定用開度βavを記憶する。
【0063】
つまり、この閉扉モード制御においてシステム制御器10は、各対象室1a〜1cの設定通常室圧ppa,ppb,ppcを各対象室1a〜1cの目標室圧pma〜pmcにした状態で、また、各対象室1a〜1cに対する定風量ダンパ装置5a〜5cを自動風量調整機能させながら、上記の室圧調整制御を各対象室1a〜1cについて実行し、これにより、各対象室1a〜1cの室圧pa〜pcを各々の設定通常室圧ppa,ppb,ppc(ppa>ppc>ppb)に調整して、各対象室1a〜1cどうしの間での室圧の高低関係、並びに、各対象室1a〜1cと外部域との間での圧力の高低関係を所要の適切な関係に保持する。
【0064】
一方、システム制御器10は、扉12aが開扉状態にあるとき上記の開扉モード制御として、具体的には次の(E)〜(H)の制御動作を実行する構成にしてある(図2及び図4参照)。
【0065】
(E)第1対象室1aのダンパ制御器9aに対する指令により、高圧側対象室である第1対象室1aに対する室圧調整ダンパVaの開度を固定する。
【0066】
(F)高圧側対象室である第1対象室1aに対する定風量ダンパ装置5aのダンパ開度、及び、低圧側対象室である第2対象室1bに対する定風量ダンパ装置5bのダンパ開度を固定する。
【0067】
(G)低圧側対象室である第2対象室1bの目標室圧pmbを第2対象室1bの設定通常室圧ppbから気流形成用の設定室圧ppkに変更する。
【0068】
ここで、気流形成用の設定室圧ppkとしては、第1対象室1aに対する室圧調整ダンパVaの開度を固定した状態で第2対象室1bに対する室圧調整制御を実行した際に、開扉状態にある室間連通口12において高圧側対象室である第1対象室1aから低圧側対象室である第2対象室1bに向かう適度な風速の一方向き通過気流Kaを形成でき、また、それら第1及び第2対象室1a,1bと外部域との間での圧力の高低関係も所望の関係に保持できる室圧を選定してある。
【0069】
また、この気流形成用の設定室圧ppkは、低圧側対象室である第2対象室1bの設定通常室圧ppbと第3対象室1cの設定通常室圧ppcとの間の範囲内から選定(ppb<ppk<ppc)してある。
【0070】
なお、気流形成用の設定室圧ppkは、予め実施するシステム試運転などの検証により最適値を求めるようにするのが望ましい。
【0071】
(H)低圧側対象室である第2対象室1bについて、室圧センサ11による検出室圧pbと目標室圧pmbとの偏差に応じ室圧調整ダンパVbの開度を調整して第2対象室1bの室圧pbを目標室圧pmb(ここでは、気流形成用の設定室圧ppk)に調整する室圧調整制御を第2対象室1bのダンパ制御器9bに実行させる。
【0072】
なお、システム制御器10は、この開扉モード制御の実施に対し、第2対象室1bと小開口13を通じて連通状態にある第1別室としての第3対象室1cについては、閉扉モード制御の実施時と同様、第3対象室1cに対する定風量ダンパ装置5cを自動風量調整機能させながら、第3対象室1cの設定通常室圧ppcを目標室圧pmcとした状態で、室圧センサ11の検出室圧pcに基づき第3対象室1cに対する室圧調整ダンパVcの開度を調整して、第3対象室1cの室圧pcを第3対象室1cの設定通常室圧ppcに調整する室圧調整制御を第3対象室1cのダンパ制御器9cに実行させる。
【0073】
つまり、この開扉モード制御においてシステム制御器10は、高圧側対象室である第1対象室1aに対する室圧調整ダンパVaの開度を固定し、かつ、第1及び第2対象室1a,1bに対する定風量ダンパ装置5a,5bの開度を固定するとともに、低圧側対象室である第2対象室1bの目標室圧pmbを室間連通口12において一方向きの通過気流Kaを形成する気流形成用の設定室圧ppkに変更した状態で、低圧側対象室である第2対象室1bについて上記の室圧調整制御を実行し、これにより、連通状態にある第1対象室1a及び第2対象室1bの室圧pa,pbをともに気流形成用の設定室圧ppkに調整して、第1及び第2対象室1a,1bと外部域との間での圧力の高低関係を所要の適切な関係に保持しながら、開扉状態にある室間連通口12において高圧側対象室である第1対象室1aから低圧側対象室である第2対象室1bに向かう適度な風速の一方向き通過気流Kaを形成維持する。
【0074】
また、気流形成用の設定室圧ppkを第2対象室1bの設定通常室圧ppbと第3対象室1cの設定通常室圧ppcとの間の範囲内の室圧に選定してあることで、開扉モード制御の実施時においても第2対象室1bと第3対象室1cとの室圧pb,pcの高低関係を閉扉モード制御の実施時と同様の関係(pb<pc)に保持して、小開口13における通過気流Kbを第3対象室1cから低圧側対象室である第2対象室1bに向かう一方向きの通過気流に保持する。
【0075】
上記の閉扉モード制御及び開扉モード制御夫々の実施に加え、システム制御器10は更に、扉12aの閉じに伴い開扉モード制御から閉扉モード制御に復帰する際、「復帰安定化制御」を実施する構成にしてあり、具体的には、この復帰安定化制御としてシステム制御器10は次の(I)〜(K)の制御動作を実行する構成にしてある(図2及び図5参照)。
【0076】
(I)開扉状態にあった扉12aの閉じが扉センサ14により検出されると、先ず、開扉モード制御で目標室圧pmbを気流形成用の設定室圧ppkに変更していた第2対象室1bについて、その目標室圧pmbを閉扉モード制御で採用する第2対象室1bの設定通常室圧ppbに戻し、この状態で第2対象室1bに対する室圧調整制御を継続する。
【0077】
(J)上記の如く目標室圧pmbを復帰した状態での室圧調整制御上で、第2対象室1bに対する室圧調整ダンパVbの開度βが先の閉扉モード制御において最終的に更新した判定用開度βavの近傍(具体的には判定用開度βavについての設定許容範囲内)まで復帰するのを待つ。
そして、室圧調整ダンパVbの開度βが判定用開度βavの許容範囲内まで復帰すると、開扉モード制御で開度を固定していた第1対象室1aに対する室圧調整ダンパVaを開度固定状態から解除し、第1対象室1aに対する室圧調整制御、即ち、室圧センサ11の検出室圧paに基づき第1対象室1aに対する室圧調整ダンパVaの開度を調整して第1対象室1aの室圧paを目標室圧pma(ここでは設定通常室圧ppa)に調整する室圧調整制御を再開する。
【0078】
(K)第1対象室1aに対する室圧調整制御の再開に伴い、開扉モード制御でダンパ開度を固定していた第1及び第2対象室1a,1bに対する定風量ダンパ装置5a,5bをダンパ開度固定状態から解除して自動風量調整機能を再開させる。
【0079】
つまり、開扉モード制御から閉扉モード制御への復帰の際に、第1対象室1aに対する室圧調整ダンパVaと第2対象室1bに対する室圧調整ダンパVbとの両方が同時に復帰的な開度変化を行なう状態になって、そのことによる第1対象室1aと第2対象室1bとの同時の過渡的な不定室圧変化により一時的にせよ高圧側対象室である第1対象室1aと低圧側対象室である第2対象室1bとの室圧逆転を招くといったことを上記復帰安定化制御により防止する。
【0080】
なお、本実施形態で示した室圧制御システムにおいて、開扉モード制御の実施時に高圧側対象室である第1対象室1aに対する室圧調整ダンパVaの開度を固定するのに、その固定開度としては、閉扉モード制御から開扉モード制御への制御切り換え時点における室圧調整ダンパVaの開度、あるいは、適宜設定した開度のいずれを採用してもよい。
【0081】
〔別の実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
【0082】
前述の実施形態では、開扉モード制御において高圧側対象室である第1対象室1aに対する定風量ダンパ装置5aのダンパ開度、及び、低圧側対象室である第2対象室1bに対する定風量ダンパ装置5bのダンパ開度を固定するようにしたが、扉12aが開扉状態にあるときも、これら定風量ダンパ装置5a,5bの自動風量調整機能が適切に発揮されて、それら定風量ダンパ装置5a,5bにおける通過風量が各々の設定風量に安定的に維持される場合などでは、開扉モード制御においても、これら定風量ダンパ装置5a,5bをそのまま自動風量調整機能させるようにしてもよい。
【0083】
また、高圧側対象室である第1対象室1aに対する定風量ダンパ装置5aや低圧側対象室である第2対象室1bに対する定風量ダンパ装置5bを省略した構成において、扉12aの開閉に応じ閉扉モード制御と開扉モード制御とを択一的に実施するようにしてもよい。
【0084】
前述の実施形態では、低圧側対象室である第2対象室1bに対して所定の室圧ppcを有する第3対象室1cが第1別室として連通状態(又は隣接状態)にあることに対し、開扉モード制御において第2対象室1bの目標室圧pmbとする気流形成用の設定室圧ppkを第2対象室1bの設定通常室圧ppbと第3対象室1cが有する上記所定室圧ppcとの間の範囲内の室圧に選定したが、これに限らず、気流形成用の設定室圧ppkとしては、開扉モード制御において開扉状態にある室間連通口12で所望向きの一方向き通過気流Kaを安定的に形成でき、また、第1及び第2対象室1a,1bと外部域との間での圧力の高低関係を所要の関係に保持できる室圧であれば、どのような室圧であってもよい。
【0085】
また、高圧側対象室である第1対象室1aに対して所定の室圧ppdを有する第2別室が連通状態又は隣接状態である場合など、開扉モード制御で採用する気流形成用の設定室圧ppkとして、第1対象室1aの設定通常室圧ppaと第2別室が有する上記所定室圧ppdとの間の範囲内の室圧を採用してもよい。
【0086】
なお、前述の実施形態では第2対象室1bに対して連通状態又は隣接状態にある第1別室としての第3対象室1cが第2対象室1bの設定通常室圧ppbよりも高い室圧ppcを有する場合を示したが、第2対象室1bに対して連通状態又は隣接状態にある第1別室が有する室圧ppcや、第1対象室1aに対して連通状態又は隣接状態にある第2別室が有する室圧ppdは、第1対象室1aの設定通常室圧ppaや第2対象室1bの設定通常室圧ppbに対して高圧側の室圧あるいは低圧側の室圧のいずれであってもよい。
【0087】
前述の実施形態では、開扉モード制御の制御形態として、高圧側対象室である第1対象室1aに対する室圧調整ダンパVaの開度を固定するとともに、低圧側対象室である第2対象室1bの目標室圧pmbを閉扉モード制御で採用する設定通常室圧ppbから気流形成用の設定室圧ppkに変更した状態で、低圧側対象室である第2対象室1bについて室圧調整制御を実行する制御形態を採用した場合を示したが、これとは逆に、開扉モード制御の制御形態として、低圧側対象室である第2対象室1bに対する室圧調整ダンパVbの開度を固定するとともに、高圧側対象室である第1対象室1aの目標室圧pmaを閉扉モード制御で採用する設定通常室圧ppaから気流成用の設定室圧ppkに変更した状態で、高圧側対象室である第1対象室1aについて室圧調整制御を実行する制御形態を採用するようにしてもよい。
【0088】
また、これら2つの制御形態をシステム制御器10に対する切り換え指令の付与などにより適宜選択的に採用できるようにしてもよい。
【0089】
前述の実施形態では、高圧側対象室である第1対象室1a及び低圧側対象室である第2対象室1bの夫々に対する排気風路7の側に室圧調整ダンパVa,Vbを介装する場合を示したが、高圧側対象室である第1対象室1a及び低圧側対象室である第2対象室1bの夫々に対する給気風路4の側に室圧調整ダンパVa,Vbを介装する構成を採用してもよい。
【0090】
前述の実施形態では、復帰安定化制御として、開扉モード制御の際に目標室圧pmbを気流形成用の設定室圧ppkに変更していた側の対象室1bについて、その目標室圧pmbを閉扉モード制御で採用する設定通常室圧ppbに戻した後、その対象室1bに対する室圧調整ダンパVbの開度βが判定用開度βav又はその近傍(具体的には判定用開度βavについての設定許容範囲内)に復帰すると、開扉モード制御で室圧調整ダンパVaの開度を固定した側の対象室1aに対する室圧調整ダンパVaを開度固定状態から解除して、その対象室1aに対する室圧調整制御を再開するようにしたが、これに代え、復帰安定化制御として、開扉モード制御の際に目標室圧pmbを気流形成用の設定室圧ppkに変更していた側の対象室1bについて、その目標室圧pmbを閉扉モード制御で採用する設定通常室圧ppbに戻した後、設定復帰時間tが経過すると、開扉モード制御で室圧調整ダンパVaの開度を固定した側の対象室1aに対する室圧調整ダンパVaを開度固定状態から解除して、その対象室1aに対する室圧調整制御を再開するようにするなどしてもよい。
【0091】
なお、判定用開度βavの許容範囲(例えばβav±5%など)は適宜に設定変更が行えるようにしておくのが望ましい。
【0092】
本発明による室圧制御システムは、各々が室圧調整を要しかつ扉付きの室間連通口を有する高圧側対象室1aと低圧側対象室1bとを備えるクリーンルーム施設や実験施設などの種々の施設に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】室圧制御システムのシステム構成図
【図2】制御切り換えのフローチャート
【図3】閉扉モード制御のフローチャート
【図4】開扉モード制御のフローチャート
【図5】復帰安定化制御のフローチャート
【符号の説明】
【0094】
1a 高圧側対象室
1b 低圧側対象室
4 給気風路
7 排気風路
Va,Vb 室圧調整ダンパ
11 室圧センサ
pa,pb 室圧
pma,pmb 目標室圧
10 制御手段
12 室間連通口
12a 扉
14 開閉検出手段
ppa,ppb 設定通常室圧
Ka 通過気流
ppk 気流形成用の設定室圧
ppc 所定室圧
1c 第1別室
5a,5b 定風量ダンパ装置
βav 判定用開度
t 設定復帰時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側の対象室と低圧側の対象室との夫々に給気風路及び排気風路を接続するとともに、これら給気風路と排気風路とのうちのいずれか一方側の風路の夫々に各対象室に対する室圧調整ダンパを介装し、
室圧センサによる対象室の検出室圧に応じ前記室圧調整ダンパの開度を調整して対象室の室圧を目標室圧に調整する室圧調整制御を各対象室について実行する制御手段を設けた室圧制御システムであって、
高圧側対象室と低圧側対象室とを連通する室間連通口における扉の開閉を検出する開閉検出手段を設け、
前記制御手段は、この開閉検出手段の検出情報に基づき、
前記扉が閉扉状態にあるとき、高圧側対象室用の設定通常室圧を高圧側対象室の目標室圧にするとともに、それよりも低い低圧側対象室用の設定通常室圧を低圧側対象室の目標室圧にした状態で、高圧側対象室と低圧側対象室との夫々について前記室圧調整制御を実行する閉扉モード制御を実施し、
かつ、前記扉が開扉状態にあるとき、高圧側対象室と低圧側対象室とのうちのいずれか一方の対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度を固定するとともに、他方の対象室の目標室圧を前記室間連通口において一方向きの通過気流が形成される気流形成用の設定室圧に変更した状態で、他方の対象室について前記室圧調整制御を実行する開扉モード制御を実施する構成にしてある室圧制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、高圧側対象室を前記一方の対象室とし、かつ、低圧側対象室を前記他方の対象室とした状態で、前記扉が開扉状態にあるとき前記開扉モード制御として、高圧側対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度を固定するとともに、低圧側対象室の目標室圧を前記気流形成用の設定室圧に変更した状態で、低圧側対象室について前記室圧調整制御を実行する構成にしてある請求項1記載の室圧制御システム。
【請求項3】
前記制御手段は、低圧側対象室を前記一方の対象室とし、かつ、高圧側対象室を前記他方の対象室とした状態で、前記扉が開扉状態にあるとき前記開扉モード制御として、低圧側対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度を固定するとともに、高圧側対象室の目標室圧を前記気流形成用の設定室圧に変更した状態で、高圧側対象室について前記室圧調整制御を実行する構成にしてある請求項1記載の室圧制御システム。
【請求項4】
低圧側対象室が高圧側対象室とは別に、所定の室圧を有する第1別室と連通状態又は隣接状態にあることに対し、
前記気流形成用の設定室圧は前記第1別室が有する所定室圧と低圧側対象室用の設定通常室圧との間の範囲内の室圧にしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の室圧制御システム。
【請求項5】
高圧側対象室が低圧側対象室とは別に、所定の室圧を有する第2別室と連通状態又は隣接状態にあることに対し、
前記気流形成用の設定室圧は前記第2別室が有する所定室圧と高圧側対象室用の設定通常室圧との間の範囲内の室圧にしてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の室圧制御システム。
【請求項6】
前記給気風路と前記排気風路とのうち前記室圧調整ダンパの介装側とは異なる側の風路に、ダンパ開度の調整により通過風量を設定風量に調整する自動風量調整機能を備える定風量ダンパ装置を介装し、
前記制御手段は、前記扉が閉扉状態にあるとき前記定風量ダンパ装置を自動風量調整機能させ、かつ、前記扉が開扉状態にあるとき前記定風量ダンパ装置のダンパ開度を固定する構成にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の室圧制御システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記他方の対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度を前記閉扉モード制御の実施時に計測するとともに、その計測開度を判定用開度として記憶し、
その後、前記扉の閉扉に伴う前記開扉モード制御から前記閉扉モード制御への復帰の際は、前記他方の対象室の目標室圧を前記気流形成用の設定室圧から前記閉扉モード制御で採用する他方対象室用の設定通常室圧に戻した後、前記他方の対象室に対する前記室圧調整ダンパの開度が前記室圧調整制御により前記判定用開度又はその近傍に復帰すると、前記一方の対象室に対する前記室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して前記一方の対象室に対する前記室圧調整制御を再開する構成にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の室圧制御システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記扉の閉扉に伴う前記開扉モード制御から前記閉扉モード制御への復帰の際は、前記他方の対象室の目標室圧を前記気流形成用の設定室圧から前記閉扉モード制御で採用する他方対象室用の設定通常室圧に戻した後、設定復帰時間が経過すると、前記一方の対象室に対する前記室圧調整ダンパを開度固定状態から解除して前記一方の対象室に対する前記室圧調整制御を再開する構成にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の室圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−107136(P2010−107136A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281047(P2008−281047)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】