説明

容器の密閉構造

【課題】容器にかかる荷重によって容器が変形した場合でも、十分な密閉性を確保できる容器の密閉構造およびこれを用いた容器を提供する。
【解決手段】内部に収納部7を有する容器本体3の開口部9が蓋5によって塞がれる放射性物質収納容器における容器本体3および蓋5の対向する第一封止面を密閉する放射性物質収納容器のシール構造15であって、第一封止面に、内外に間隔を空けて配置され、それぞれ内外の密閉を行う内側シール17および外側シール19を備え、内側シール17は高面圧を要する密閉性の高いシール材で形成され、外側シール19は、変形に追従し易い弾力性の高いシール材で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋で容器本体の開口部が密閉される容器における蓋と容器本体との密閉性を確保する容器の密閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、放射性物質は、放射性物質収納容器の容器本体に設けられた開口部を通って収納部に収納され、蓋が開口部を塞ぐように取り付けられる。このとき、容器本体および蓋の対向する封止面間にシール等の密閉構造が設けられ、内部の収納部と外部環境とが密閉される。
この密閉構造は、たとえば、特許文献1あるいは特許文献2に示されるように、蓋と容器本体とのように、封止する対象間には基本的に1箇所シールされる構造とされている。
また、密閉性を良好とするために、1箇所の封止面に2箇所シールする、いわゆるダブルシールの構造が知られている。このダブルシールは、一般に同じシール材で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−89487号公報
【特許文献2】特開2008−107362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放射性物質が収納された放射性物質収納容器は、トラック等によって施設間で輸送されたり、貯蔵や埋設が行われる。ここで、放射性物質収納容器のトラック等への積載作業あるいは貯蔵施設や処分施設での取扱い作業では、放射性物質収納容器はクレーン等の搬送装置によって吊り上げられて搬送される。
このとき、放射性物質収納容器が搬送装置から落下する、あるいは、取り扱い中および搬送中にどこかに衝突する、等によって衝撃を受けると、容器本体あるいは蓋が変形し、密閉構造の密閉性能が低下する恐れがある。また、貯蔵中に他の物体の衝突を受けたり、長期的に荷重を受けて変形することも考えられる。
【0005】
特許文献1あるいは特許文献2に示される密閉構造あるいはダブルシールでは、これらの変形に伴い密閉性を確保できなくなる恐れがある。
このように、密閉性が確保できないと、収納物が漏洩することになるので、特に、放射性物質が漏洩する場合には、その処理が大変である。
【0006】
衝撃に対しては、地面等に緩衝体を施設あるいは容器自体に緩衝体を装備して緩和することが考えられるが、これら緩衝体を敷設できない場合もある。このため、一般的には、放射性物質収納容器を構成する容器本体および蓋の剛性を高めて落下等で衝撃が作用しても変形しないようすることが図られている。しかし、容器本体および蓋の剛性を高めると、肉厚の増加させることによって収納効率が低下する、あるいは高価な材料を用いて製品コストが増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、容器にかかる荷重によって容器が変形した場合でも、必要な密閉性を確保できる容器の密閉構造およびこれを用いた容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の第一態様は、内部に収納部を有する容器本体の開口部が蓋によって塞がれる容器における前記容器本体および前記蓋の対向する封止面を密閉する容器の密閉構造であって、前記封止面の内、延在する方向が略平行する封止面に、内外に間隔を空けて配置され、それぞれ内外の密閉を行う複数のシール部材を備え、前記シール部材の内、少なくとも1個は高面圧を要する密閉性の高いシール材で形成され、残りは、変形に追従し易い弾力性の高いシール材で形成されている容器の密閉構造である。
【0009】
本態様による容器の密閉構造は、容器本体および蓋の対向する封止面の内、延在する方向が略平行する封止面に、内外に間隔を空けて配置され、それぞれ内外の密閉を行う複数のシール部材を備え、これらのシール部材の内、少なくとも1個は高面圧を要する密閉性の高いシール材で形成され、残りは、変形に追従し易い弾力性の高いシール材で形成されているので、容器本体と蓋とは、通常は高面圧を要する密閉性の高いシール材によって密閉性を高めた状態で密閉することができる。しかも、複数のシール部材によって密閉されているので、容器本体と蓋とを十分に密閉することができる。
一方、外部から作用する荷重によって容器本体あるいは蓋が変形し、その変形が封止面を開く方向である場合には、高面圧を要する密閉性の高いシールは追従しづらいが、弾力性の高いシール材が容易に変形し、封止面を開く方向の変形に追従することができるので、十分な密閉性を確保することができる。
なお、延在する方向が略平行する封止面には、連続した面も含まれる。
【0010】
本発明の第二態様は、内部に収納部を有する容器本体の開口部が蓋によって塞がれる容器における前記容器本体および前記蓋の対向する封止面を密閉する容器の密閉構造であって、前記封止面の内、延在する方向が相互に交差する複数の封止面に、それぞれ内外の密閉を行う少なくとも1つのシール部材を備えている容器の密閉構造である。
【0011】
本態様による容器の密閉構造は、封止面の内、延在する方向が相互に交差する複数の封止面に、それぞれ内外の密閉を行う少なくとも1つのシール部材を備えているので、容器本体と蓋とは、通常は複数のシール部材によって密閉されている。このように、複数のシール部材で密閉されるので、容器本体と蓋とを十分に密閉することができる。
一方、複数のシール部材が密閉する封止面は、それぞれ異なる方向に延在しているので、外部から作用する荷重によって容器本体あるいは蓋が変形した場合、いずれかのシール部材でその変形による影響を抑制することができる。すなわち、たとえば、1つの封止面がそれに直交する方向に開くように変形された場合、この封止面の延在方向と交差する方向に延在している封止面では、間隔の変化がより小さくなるので、当該シール部材でその変形の影響を抑制して、密閉性を確保することができる。
このように、複数設置されたシール部材の封止面に直交する封止方向を異ならせているので、一方の封止面に設置されたシール部材の密閉性が大きく低下しても他方の封止面に設置されたシール部材の密閉性がそれをカバーすることができる。これにより、容器本体と蓋とが変形した場合でも、密閉構造は十分な密閉性を確保することができる。
なお、蓋の構造から考えて封止面が交差する角度は90°以内であることが好ましい。また、封止面は、交差する2つの面で形成されていてもよい。この場合、封止面の延在する方向は、交差角の半分に区画する中線に直交する方向である。
【0012】
本態様では、複数の前記封止面は、延在する方向が略直交するように形成されていてもよい。
【0013】
本態様では、前記シール部材の内、少なくとも1個は高面圧を要する密閉性の高いシール材で形成されていてもよい。
このようにすると、容器本体と蓋とは、通常は高面圧を要する密閉性の高いシール材によって密閉性を高めた状態で密閉することができる。
【0014】
本発明の第三態様は、内部に収納部を有し、外部に開口する開口部を有する容器本体と、前記開口部を塞ぐ蓋と、第一態様あるいは第二態様にかかる容器の密閉構造とが備えられている容器である。
【0015】
本態様にかかる容器では、第一態様あるいは第二態様にかかる容器の密閉構造が用いられているので、容器本体と蓋とを十分に密閉することができ、かつ、外部から作用する荷重によって容器本体あるいは蓋が変形した場合でも、十分な密閉性を確保することができる。したがって、漏洩が問題となる物品、たとえば、核燃料物質、放射性物質、放射性廃棄物、危険性物質等を収納して輸送する容器として用いるのに最適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる容器の密閉構造では、容器本体と蓋とを十分に密閉することができる。また、外部から作用する荷重によって容器本体あるいは蓋が変形した場合でも、十分な密閉性を確保することができる。
本発明にかかる容器では、漏洩が問題となる物品、たとえば、核燃料物質、放射性物質、放射性廃棄物、危険性物質等を収納して安全に輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる放射性物質収納容器を示す断面図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態にかかるシール構造の他の実施態様を示す部分拡大断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかるシール材の他の実施態様を示す部分斜視図である。
【図5】本発明の第二実施形態にかかるシール構造を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態にかかるシール構造の他の実施態様を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態にかかるシール構造のさらに他の実施態様を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明の第二実施形態にかかるシール構造のまたさらに他の実施態様を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
[第一実施形態]
以下に、本発明の第一実施形態にかかる放射性物質収納容器1について、図1〜図4を参照して説明する。
図1は、放射性物質収納容器1を示す断面図である。図2は、図1のA部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【0019】
放射性物質収納容器1は、放射性物質を輸送または貯蔵するためのものである。放射性物質収納容器1には、容器本体3と蓋5とが備えられている。
容器本体3は、水平断面が略正方形状の有底角筒形状をし、その筒内には収納部7が備えられ、一端部に外部に開口した開口部9が備えられている。容器本体3の水平断面形状は、矩形状、多角形状、たとえば、円形等の曲面形状であってもよく、略正方形状に限定されない。
【0020】
蓋5は、容器本体3の開口部9を塞いで密閉するものである。蓋5は、容器本体3と略同等の大きさの水平形状をし、収納部7に向く内壁に、開口部9を通って収納部7内に挿入される凸部11が形成されている。凸部11は、図2に示されるように容器本体3の内周面との間に微小間隔を空け、先端部は収納部7内へ挿入し易いように先端に向かい内側に傾斜するテーパ面とされている。
【0021】
蓋5の凸部11の外側は、容器本体3と接触し第一封止面13が形成されている。第一封止面13には、収納部7と外部空間とを密閉するシール構造(密閉構造)15が設置されている。
シール構造15には、第一封止面13の収納部7側に設置された内側シール(シール部材)17と、第一封止面13の内側シール17と間隔を空けた外側に設置された外側シール(シール部材)19とが備えられている。
内側シール17および外側シール19とは連続した第一封止面13に設置されているので、間隔が0の平行する封止面に設置されていることになる。
【0022】
内側シール17は、金属製Oリング(メタルガスケット)を装着したものであり、容器本体3の上面に全周に亘り設置されている。金属製Oリング(メタルガスケット)は、高面圧を要する密閉性の高い、言い換えると、シール部分の間隔変化に対する追従性が小さい反面密閉性が高い(以下、このことを「硬い」と表現することもある。)シール材である。
外側シール19は、ゴム製のOリングであり、シール部分の間隔変化に対する追従性が良好な弾力性の高いシール材で形成されている。外側シール19は、蓋5側に形成された溝に装着されている。なお、外側シール19は、図3に示されるように容器本体3側に形成された溝に装着されてもよい。
【0023】
内側シール17および外側シール19は、内外の位置を反対にしてもよい。
内側シール17としては、金属製Oリング(メタルガスケット)に限定されるものではなく、金属板の外周面にシール材を装着したジョイントガスケットなどの、シール部分の間隔変化に対する追従性が小さい反面密閉性が高いシール材を用いることができる。
外側シール19としては、ゴム製のOリングに限定されるものではなく、シール部分の間隔変化に対する追従性が良好な弾力性の高いシール材、たとえば、樹脂系材料製あるいは発泡系材料製のOリングでもよいし、図4に示されるようなリップ形のパッキンであってもよい。さらに、ばねを組み込んだシールを用いてもよい。
【0024】
蓋5は、容器本体3に複数のボルト21によって固定される。蓋5の外側外周には、ボルト21が取り付けられる。
蓋5には、ボルト21のネジ部が挿通される孔27が形成され、容器本体3には、ボルト21のネジ部が螺着される雌ネジ穴29が形成されている。
【0025】
ボルト21は、外側シール19の外側に設置され、その大きさおよび個数は、内側シール17および外側シール19が十分に圧縮され、十分な密閉性能を発揮できるように選定されている。
【0026】
収納部7には放射性物質が収容されている収容容器31が複数個収容される。収納部7には、収容容器31の自由な移動を抑制する図示を省略したガイドが装備されている。
収容容器31としては、金属製の円筒形状をしたドラム缶などである。この収容容器31は、放射性物質を収容している。
収容容器31に収容されるものとしては、放射性物質に限定されるものではなく、核燃料物質、放射性廃棄物、危険性物質等が収容される。また、収容部15には、収容容器31を用いずに放射性物質などを直接収容することができる。
【0027】
以上のとおり構成された放射性物質収納容器1のシール構造15の動作について説明する。
放射性物質収納容器1は、放射性物質を収納した状態で一時保管あるいは長期保管されることが考えられる。
本実施形態による放射性物質収納容器1のシール構造15は、容器本体3および蓋5の対向する第一封止面13に、内外に間隔を空けて密閉性を高める硬いシール材で形成された内側シール17および変形に追従し易い弾力性の高いシール材で形成された外側シール19が配置されているので、複数箇所でシールされることになり、容器本体3と蓋5とを十分に密閉することができる。また、内側シール17は密閉性を高める硬いシール材で形成されているので、容器本体3と蓋5とは内側シール17の硬いシール材によって密閉性を高めた状態で密閉することができる。
これらにより、保管時等の通常時に容器本体3と蓋5とは十分な密閉性を確保することができる。
【0028】
放射性物質収納容器1はトラック等によって施設間で輸送されたり、貯蔵や埋設が行われる。ここで、放射性物質収納容器1のトラック等への積載作業あるいは貯蔵施設や処分施設での取扱い作業では、放射性物質収納容器1はクレーン等の搬送装置によって吊り上げられて搬送される。
このとき、放射性物質収納容器1が搬送装置から落下する、あるいは、取り扱い中および搬送中にどこかに衝突する、等によって衝撃を受けると、容器本体3あるいは蓋5が変形し、シール構造15の密閉性能が低下する恐れがある。また、貯蔵中に他の物体の衝突を受けたり、長期的に荷重を受けたりして変形することも考えられる。
【0029】
外部から作用する荷重によって容器本体3あるいは蓋5が変形し、第一封止面13が変形する場合が考えられる。
その変形が第一封止面13に平行な方向であれば、容器本体3と蓋5との密閉性に大きな影響は及ぼさない。一方、その変形が第一封止面13を開く(容器本体3と蓋5とが開く)方向である場合には、内側シール17は硬いシールであるので、変形に追従しづらい。この場合、外側シール19が弾力性の高いシール材で形成されているので、容易に変形し、封止面13を開く方向の変形に追従することができる。これにより、容器本体3と蓋5との密閉性を、十分に確保することができる。
【0030】
このように、放射性物質収納容器1は、たとえ、搬送装置から落下したり、衝撃により変形したりしたとしても十分な密閉性を確保することができるので、その後の作業を安全に実施することができる。
したがって、放射性物質収納容器1は、漏洩が問題となる物品、たとえば、核燃料物質、放射性物質、放射性廃棄物、危険物質等を収納して安全に輸送することができる。
【0031】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態にかかる放射性物質収納容器1について、図5〜図8を用いて説明する。
本実施形態は、シール構造15の構成が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
【0032】
図5は、本実施形態にかかる放射性物質収納容器1のシール構造15を示す部分拡大断面図である。
本実施形態では、蓋5の凸部11と容器本体3の内周面とによって、第二封止面35が形成されている。
シール構造15には、第一封止面13に設置された第一シール(シール部材)37と、第二封止面35に設置された第二シール(シール部材)39とが備えられている。
第一封止面13の延在する方向と、第二封止面35の延在する方向と、は略直交し、すなわち、交差している。
【0033】
第一シール37は、金属製Oリング(メタルガスケット)を装着したものであり、容器本体3の上面に全周に亘り設置されている。金属製Oリング(メタルガスケット)は、高面圧を要する密閉性の高い、言い換えると、シール部分の間隔変化に対する追従性が小さい反面密閉性が高い(以下、このことを「硬い」と表現することもある。)シール材を用いることができる。
第二シール39は、ゴム製のOリングであり、シール部分の間隔変化に対する追従性が良好な弾力性の高いシール材で形成されている。第二シール39は、蓋5の凸部11側に形成された溝に装着されている。なお、第二シール39は、図6に示されるように容器本体3側に形成された溝に装着されてもよい。
【0034】
第一シール37および第二シール39は、内外の位置を反対にしてもよい。
第一シール37としては、金属製Oリング(メタルガスケット)に限定されるものではなく、金属板の外周面にシール材を装着したジョイントガスケットなどの、シール部分の間隔変化に対する追従性が小さい反面密閉性が高いシール材を用いることができる。
第二シール39としては、ゴム製のOリングに限定されるものではなく、シール部分の間隔変化に対する追従性が良好な弾力性の高いシール材、たとえば、樹脂系材料製あるいは発泡系材料製のOリングでもよいし、図4に示されるようなリップ形のOリングであってもよい。さらに、ばねを組み込んだシールを用いてもよい。
【0035】
以上のとおり構成された放射性物質収納容器1のシール構造15の動作について説明する。
放射性物質収納容器1は、放射性物質を収納した状態で一時保管あるいは長期保管されることが考えられる。
本実施形態による放射性物質収納容器1のシール構造15は、容器本体3および蓋5の対向する第一封止面13に密閉性を高める硬いシール材で形成された第一シール37が、容器本体3と蓋5の凸部とが対向する第二封止面35に変形に追従し易い弾力性の高いシール材で形成された第二シール39が配置されているので、複数箇所でシールされることになり、容器本体3と蓋5とを十分に密閉することができる。また、第一シール37は密閉性を高める硬いシール材で形成されているので、容器本体3と蓋5とは第一シール37の硬いシール材によって密閉性を高めた状態で密閉することができる。
これらにより、保管時等の通常時に容器本体3と蓋5とは十分な密閉性を確保することができる。
【0036】
放射性物質収納容器1はトラック等によって施設間で輸送されたり、貯蔵や埋設が行われる。ここで、放射性物質収納容器1のトラック等への積載作業あるいは貯蔵施設や処分施設への埋設作業では、放射性物質収納容器1はクレーン等の搬送装置によって吊り上げられて搬送される。
このとき、放射性物質収納容器1が搬送装置から落下する、あるいは、取り扱い中および搬送中にどこかに衝突する、等によって衝撃を受けると、容器本体3あるいは蓋5が変形し、シール構造15の密閉性能が低下する恐れがある。また、貯蔵中に他の物体の衝突を受けたり、長期的に荷重を受けたりして変形することも考えられる。
【0037】
外部から作用する荷重によって容器本体3あるいは蓋5が変形し、第一封止面13および第二封止面35が変形する場合が考えられる。
たとえば、容器本体3および蓋5の変形が第一封止面13を開く方向であると、第二封止面35は平行に移動することになる。したがって、第一封止面13に設置された第一シール37の密閉性は大きく低下するが、第二封止面35に設置された第二シール39により必要な密閉性を維持することができる。
【0038】
また、容器本体3および蓋5の変形が第二封止面35を開く方向であると、第一封止面13は平行に移動することになる。したがって、最大に開く第二封止面35に設置された第二シール39の密閉性は低下するが、第一封止面13に設置された第一シール37の密閉性は当初の密閉性を維持することができる。このとき、第二シール39は、弾力性の高いシール材で形成されているので、容易に変形し第二封止面35を開く方向の変形にある程度追従することができる。
さらに、容器本体3および蓋5の変形が上述の中間の方向であると、第二封止面35の開く大きさが最大のときよりも小さくなるので、第二シール39の追従性によって密閉性を確保することができる。
【0039】
このように、第一封止面13に直交する第一シール37の封止方向と第二封止面35に直交する第二シールの封止方向とを直交させているので、第一封止面13あるいは第二封止面35のいずれか一方に設置された第一シール37あるいは第二シール39のいずれか一方の密閉性が大きく低下しても他方の第一シール37あるいは第二シール39の密閉性がそれをカバーすることができる。これにより、容器本体3と蓋5とが変形した場合でも、シール構造15は十分な密閉性を確保することができる。
【0040】
このように、放射性物質収納容器1は、たとえ、搬送装置から落下したり、衝撃により変形したりしたとしても十分な密閉性を確保することができるので、その後の作業を安全に実施することができる。
したがって、放射性物質収納容器1は、漏洩が問題となる物品、たとえば、核燃料物質、放射性物質、放射性廃棄物、危険物質等を収納して安全に輸送することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、第一シール37としてシール部分の間隔変化に対する追従性が小さい硬いシール材で形成されたものを用いているが、これは図7に示されるようにシール部分の間隔変化に対する追従性が良好な弾力性の高いシール材で形成されているゴム製のOリングを用いてもよい。
また、シール部分の間隔変化に対する追従性が良好な弾力性の高いシール材としては、ゴム製のOリングに限定されるものではなく、シール部分の間隔変化に対する追従性が良好な弾力性の高いシール材、たとえば、樹脂系材料製あるいは発泡系材料製のOリングでもよいし、図4に示されるようなリップ形のパッキンであってもよい。さらに、ばねを組み込んだシールを用いてもよい。
【0042】
本実施形態では、第二封止面35は、蓋5の凸部11と容器本体3の内周面との間に形成されている、すなわち、第二封止面35の延在する方向が第一封止面13の延在する方向に直交するようにされているが、これに限定されるものではない。
たとえば、図8に示されるように、第二封止面35の容器本体3側の上面内周部を略45°に切欠き、第二封止面35の蓋5側を交差する2つの面で形成してもよい。
この場合、第二封止面35の延在する方向は、蓋5側を交差する2つの面が交差する交差角の半分に区画する中線に直交する方向である。この場合、第二封止面35は第一封止面13に対して略45°で交差することになる。
【0043】
このように、放射性物質収納容器1は、たとえ、搬送装置から落下したり、衝撃により変形したりしたとしても十分な密閉性を確保することができるので、その後の作業を安全に実施することができる。
したがって、放射性物質収納容器1は、漏洩が問題となる物品、たとえば、核燃料物質、放射性物質、放射性廃棄物、危険物質等を収納して安全に輸送することができる。
【0044】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 放射性物質収納容器
3 容器本体
5 蓋
7 収納部
9 開口部
13 第一封止面
15 シール構造
17 内側シール
19 外側シール
35 第二封止面
37 第一シール
39 第二シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収納部を有する容器本体の開口部が蓋によって塞がれる容器における前記容器本体および前記蓋の対向する封止面を密閉する容器の密閉構造であって、
前記封止面の内、延在する方向が略平行する封止面に、内外に間隔を空けて配置され、それぞれ内外の密閉を行う複数のシール部材を備え、
前記シール部材の内、少なくとも1個は高面圧を要する密閉性の高いシール材で形成され、残りは、変形に追従し易い弾力性の高いシール材で形成されていることを特徴とする容器の密閉構造。
【請求項2】
内部に収納部を有する容器本体の開口部が蓋によって塞がれる容器における前記容器本体および前記蓋の対向する封止面を密閉する容器の密閉構造であって、
前記封止面の内、延在する方向が相互に交差する複数の封止面に、それぞれ内外の密閉を行う少なくとも1つのシール部材を備えていることを特徴とする容器の密閉構造。
【請求項3】
複数の前記封止面は、延在する方向が略直交するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の容器の密閉構造。
【請求項4】
前記シール部材の内、少なくとも1個は高面圧を要する密閉性の高いシール材で形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の容器の密閉構造。
【請求項5】
内部に収納部を有し、外部に開口する開口部を有する容器本体と、前記開口部を塞ぐ蓋と、請求項1から4のいずれか1項に記載される容器の密閉構造とが備えられていることを特徴とする容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−46190(P2012−46190A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187262(P2010−187262)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】