説明

容器加圧装置

【課題】エア供給ノズルへ至るエア通路およびペットボトルの口部に接近する対向部材の結露を防止する。
【解決手段】エアを供給する圧縮エア供給配管84と、この圧縮エア供給配管から送られたエアを吹き出すエア供給ノズル62と、このエア供給ノズルに設けられ、ペットボトル2の口部に接近してボトル2内を、密封に近い極力洩れの少ない状態にする対向部材76とを備えている。前記エア供給ノズルは、内部雰囲気が外部よりも高温のチャンバ内に設置されている。さらに、前記エア供給配管を通るエアを加温するヒータを設け、エア供給ノズルに送るエアを加熱している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器加圧装置に係り、特に、軽量の樹脂製容器をエアコンベヤによって搬送する際に変形した場合等に、この容器内にエアを吹き込んで加圧することによって元の形状に復帰させる容器加圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル等の樹脂製容器の軽量化に伴い、次第に容器の肉厚が薄くなっており、容器自体の強度が弱くなってきている。このような樹脂製容器は、通常、ボトル成型機によって成型された後、エアコンベヤによって搬送されて、リンサやフィラ、キャッパ等の各種容器処理機に順次送られ、各処理機において所定の処理が行われるが、エアコンベヤでの搬送中においては、容器は吊り下げ状態にて前後する容器が当接しながらエア噴射の推進力で前進されるようになっており、容器処理機への導入部等の減速箇所では順次前方の容器を押圧するため、特に肉厚の薄い容器では、強度不足から容器が変形してしまう場合があった。このような変形した容器は、見栄えが悪くなるばかりでなく後に液体を充填する際に、溢れたり容量不足を生ずるという問題がある。そこで、変形した容器を修復する装置がすでに提案されている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された変形プラスチックボトルの修正方法では、プラスチックボトルの内部にノズル装置によって空気を噴射させ、このボトルを空気洗浄するボトル洗浄装置において、変形プラスチックボトルを修正するようになっており、ノズル装置によりプラスチックボトルを密閉し、それより噴射される空気でプラスチックボトルを加圧する工程を設けたものである。
【0004】
また、特許文献2に記載された脆弱容器の充填前処理方法は、脆弱容器の開口部を密封状態に保つ密封工程と、密封工程で密封された脆弱容器内に空気を送給し、脆弱容器を大気圧以上に加圧する加圧工程を備えており、前記加工工程にて脆弱容器の内圧を上昇させることにより、脆弱容器の潰れおよび凹みを除去するようにしている。
【特許文献1】特開平1−281922号公報(第2−3頁、図3)
【特許文献2】特開平11−11588号公報(第3−5頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように容器内にエアを吹き込んで加圧することによって変形した容器を復元する装置を、高い清浄度に維持された雰囲気内で殺菌もしくは滅菌状態の容器に内容物を充填する、アセプティック充填ラインを構成するアセプティックチャンバ内に設置した場合には、チャンバ内は容器滅菌のための滅菌剤が昇温されて噴霧され、また、容器洗浄のために温水が噴射されているために、外部雰囲気よりも高温多湿な環境にあり、容器内にエアを吹き込むための配管やノズルには、チャンバ内の温度と内部を流通している常温(外部雰囲気温度)のエアとの温度差から表面に結露が生じてしまう。結露が生じると、滴が落下して容器の内外面に付着してしまう場合があるが、このように滴が付着した場合には、付着した部分としない部分とで滅菌効果にバラツキが生じてしまい滅菌ムラとなってしまう。そこで、アセプティックチャンバ内に、前記のようにエアを容器内に吹き込んで復元する装置を設置する場合には、エアの供給管やエア供給ノズルの結露を防止する対策を講ずる必要がある。本発明は、容器内を加圧して変形を復元する装置をアセプティックチャンバ内に設置した場合に、結露の発生を防止することができる容器加圧装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
さらに、前記特許文献1の構成では、ボトルテーブル7に載置されたプラスチックボトル2の開口部40に、ノズル装置35を下降させ突起部材39を押圧させて開口部40を密閉するようにしている。また、特許文献2の構成では、容器搬送板32に載置された容器Bの開口部B1にノズル装置34を下降させて装着部38が密嵌するようになっている。前記各特許文献のボトルテーブル7や容器搬送板32に容器を載置した状態でノズルを下降させる構成では、潰れや凹みが激しい場合には口部が真上を向かず斜め方向を向き、上方開口部に対してノズルを正しく位置させることができない場合がある。これに対して、前記特許文献2では、薄肉の蛇腹構造をなすゴム製の密接部材38fを設けるようにしている。しかしながら、激しい凹みや潰れの発生頻度が低い場合にも同様に構成することは無駄であり、また、薄肉の蛇腹構造をなすゴム製の密接部材では耐久性が低く、さらに、蛇腹構造では洗浄性が悪くなるという問題がある。また、上端の口部を上方から押圧して密封する場合では、肉厚の薄い容器の場合は潰れるおそれがある。胴部に凹みが生じている容器ではさらに強度が低下しており、特に潰れ易いという問題がある。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、容器の首部を支持した状態で給気ノズルを口部に対する吹き込み位置に位置させるようにしたことにより、胴部が激しく潰れている場合でも、首部を支持した状態では口部が斜め上方を向くことはなく、常に確実に口部に対して給気ノズルを位置させることができる容器加圧装置を提供することができる。また、口部を上方から強く押圧して密封する場合にも薄肉の胴部が潰れてしまうおそれのない容器加圧装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明は、気体が供給される給気管と、この給気管から供給される気体を吹き出す給気ノズルとを備え、給気ノズルから樹脂製容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧する容器加圧装置において、前記給気管および給気ノズルの結露を防止する結露防止手段を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記結露防止手段として、前記給気管に供給される気体を加熱するヒータを設け、このヒータによって昇温させた気体を給気管へ供給し、給気ノズルから吹き出すことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記給気ノズルに向けて無菌エアを吹き付ける噴射ノズルを設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記給気ノズルを加温する加温手段を設け、加温することで給気ノズルの結露を防止するようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記ヒータによって昇温させた気体を、前記噴射ノズルから噴射することを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記給気管および給気ノズルを、内部雰囲気が外部よりも高温となるチャンバ内に設置して、チャンバ内で給気ノズルから樹脂製容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧することを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、気体が供給される給気管と、この給気管から供給される気体を吹き出す給気ノズルとを備え、給気ノズルから樹脂製容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧する容器加圧装置において、樹脂製容器の首部を支持して容器を吊り下げ支持する支持部材と、支持部材に首部を支持された樹脂製容器の口部に対し、前記給気ノズルを相対的に昇降させる昇降手段とを備え、前記昇降手段により、給気ノズルを樹脂製容器の口部に対する吹き込み位置に位置させて、容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の容器加圧装置は、アセプティックチャンバ内など外部雰囲気とは異なる環境に設置した場合でも、結露が生じることを確実に防止して、容器の滅菌ムラ等の発生を抑制することができる。また、容器の首部を支持することで、口部に対して給気ノズルを正しく位置させて加圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
気体が供給される給気管と、この給気管から供給された気体を吹き出す給気ノズルとを備えており、この給気ノズルから樹脂製容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧するものであり、さらに、給気管および給気ノズルの結露を防止する結露防止手段を設けたという構成により、給気管および給気ノズルの結露を防止するという目的を達成する。
【実施例1】
【0017】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係る容器加圧装置を備えたアセプティック充填ラインの全体の構成を簡略化して示す平面図、図2は、容器加圧装置の縦断面図である。この実施例では、図示しないボトル成型機で成型された多数の樹脂製容器(この実施例ではペットボトル)2を、導入エアコンベヤ4によって連続的に搬送し、連続して配置された複数のチャンバからなるアセプティックチャンバ(以下、これら各チャンバを第1チャンバ6、第2チャンバ8、第3チャンバ10、第4チャンバ12および第5チャンバ14と呼ぶ)内に導入し、順次受け渡しを行いながら各チャンバ6、8、10、12、14内に設置された各処理機(この実施例では滅菌機、リンサ、フィラ、キャッパ)においてそれぞれ所定の処理を行った後、第5チャンバ14から排出側のエアコンベヤ16に引き渡して次の工程に送るようになっている。これらアセプティックチャンバ6、8、10、12、14は、全体としてはボトルを搬送するための開口を除いて外部雰囲気から遮断され、内部に無菌エアが吹き込まれて外部よりも陽圧に維持されている。また、これら各チャンバは、フィラを設置した第4チャンバ12が最も圧力が高く、次いでリンサを設置した第3チャンバ10とキャッパを設置した第5チャンバ14はこれよりも低く、滅菌機を設置した第2チャンバ8はさらに低く、導入部となる第1チャンバ6が最も低くなるように圧力状態が調整されている。
【0018】
このアセプティック充填ラインで処理されるペットボトル2は、図3に示すように、胴部2aの上方に、上端に向かって次第に径が細くなるテーパ状の肩部2bを介して首部2cが設けられている。この首部2cの上端に口部2dが開口しており、また、首部2cの中間部の外周にフランジ2eが形成されている。首部2cは、肩部2b、胴部2aおよび底部2fよりも剛性が高く、後に説明するように、この首部2cに形成されたフランジ2eの上方または下方をグリッパによって把持することができる。
【0019】
ペットボトル2を搬送する導入エアコンベヤ4は、外部から加圧したエアが送り込まれるエアダクト4aを有しており、このエアダクト4aの下部中央に、ペットボトル2の搬送路4bが形成されている。この搬送路4bの両側壁には、下流側へ向けて開口する多数のエア噴出口4cが設けられており、エアダクト4a内の加圧エアを噴射するようになっている。また、搬送路4bの下面側には、ペットボトル2の口部2dの外径よりもやや広く、しかも、フランジ2eの外径よりも狭い間隔で配置された一対の平行なガイドレール4dが設けられている。このエアコンベヤ4によって搬送されるペットボトル2は、フランジ2eの下面側を両側のガイドレール4dによって支持され、首部2cのフランジ2eよりも上方に、エア噴出口4cから噴射された加圧エアを吹き付けられて下流側に搬送される。このエアコンベヤ4の下流部の、第1導入ホイール18への受渡位置の手前にスクリュー5が設けられており、その外周に形成された螺旋溝によってペットボトル2の前後の間隔を第1導入ホイール18のグリッパ53の間隔に広げた後受け渡しを行うようになっている。
【0020】
導入エアコンベヤ4の下流端に接続された第1チャンバ6には、複数の導入ホイール(以下、第1導入ホイール18、第2導入ホイール20および第3導入ホイール22と呼ぶ)が配置されており、導入エアコンベヤ4によってエア搬送されてこの第1チャンバ6内に導入されたペットボトル2は、図示矢印A方向に搬送されて第1導入ホイール18、第2導入ホイール20および第3導入ホイール22に順次受け渡される。これら3つの導入ホイール18、20、22のうちの中間に位置する第2導入ホイール20に、後に説明する容器加圧装置が設けられている。
【0021】
第3導入ホイール22は、第1チャンバ6と第2チャンバ8とを仕切る隔壁24に形成された開口(図示せず)内に配置されており、第1チャンバ6内の第2導入ホイール20から受け取ったペットボトル2を、回転搬送して第2チャンバ8内に導入する。第2チャンバ8内には、第1の処理機である滅菌機26が設置されており、第3導入ホイール24から引き渡されたペットボトル2を回転搬送する間に滅菌を行う。この実施例では、滅菌機26で、高温の滅菌ガスをペットボトル2の内外面に吹き付けて滅菌している。滅菌ガスとしては、120°C程度に加熱した無菌エアにミスト状の過酸化水素水等の滅菌作用を有する溶液を混入したものや、これら滅菌性、殺菌性の薬液を含む蒸気等が使用される。
【0022】
第2チャンバ8と第3チャンバ10とを仕切る隔壁27に形成された開口に中間ホイール(以下、第1中間ホイール28と呼ぶ)が配置されており、第2チャンバ8内の滅菌機26で滅菌されたペットボトル2は、この中間ホイール28を介して次の第3チャンバ10内に搬入される。この第3チャンバ10には第2の処理機であるリンサ30が設置されており、前記滅菌機26で滅菌されたペットボトル2の洗浄が行われる。この実施例では、リンサ30は70°C程度に加温された温水や滅菌または殺菌作用を有する薬液でペットボトル2の内外面を洗い流す。なお、滅菌機26およびリンサ30では、ペットボトル2の首部を支持して回転方向へ搬送しながら各処理を行う。
【0023】
リンサ30での洗浄処理が済んだペットボトル2は、第3チャンバ10と第4チャンバ12との間の隔壁32に形成された開口内に配置されている第2中間ホイール34を介して、第4チャンバ12内に設置されている第3の処理機であるフィラ36に供給される。フィラ36内に供給されたペットボトル2は、回転搬送される間に液体が充填され、第4チャンバ12と第5チャンバ14との間を仕切る隔壁38に形成された開口部内に配置されている第3の中間ホイール40を介して、次の第5チャンバ14内に設置されている第4の処理機であるキャッパ42に引き渡される。フィラ36で液体が充填され、このキャッパ42でキャッピングが行われたペットボトル2は、第5チャンバ14内に配置されている第1排出ホイール44および第2排出ホイール46に順次受け渡された後、第5チャンバ14から排出されて前記排出エアコンベヤ16に引き渡されて次の工程に送られる。前記第2チャンバ8や第3チャンバ10は、滅菌機26やリンサ30を設けてあるので、チャンバ内が外部よりも高温で湿度も高くなっている。また、第1チャンバ6は、最も圧力が低いため、前記第2チャンバ8および第3チャンバ10からの雰囲気が流れ込み高温で多湿になっている。なお、これらアセプティックチャンバ内においては、ペットボトル2は首部2cのフランジ2eの上部と下部を交互に把持されて、複数の導入ホイール、各容器処理機とそれらの各中間ホイール、複数の排出ホイール間で順次受け渡されながら、首部2cを支持された状態で吊り下げ搬送されるようになっている。
【0024】
次に、図2により本発明の一実施例に係る凹みや潰れの生じた容器を復元する容器加圧装置の構成について説明する。容器加圧装置は前記第1チャンバ6内に配置されている第2導入ホイール20に設けられており、図1のB位置からC位置の間でペットボトル2内を加圧するようになっている。第1チャンバ6の底面6aに貫通孔6aaが形成され、この孔6aaを上下に貫通して直立した円筒部材48が固定されている。この固定円筒部材48の内部に、ベアリング50を介して回転軸52が回転自在に支持されている。回転軸52の上部外周に円板状の第2導入ホイール20が取り付けられており、回転軸52の回転によって一体的に回転する。この第2導入ホイール20の外周部に、容器の首部を支持する支持部材として円周方向等間隔で複数のグリッパ54が設けられている。この実施例のグリッパ54は、一対のグリップ部材をスプリング等の弾性部材によって互いに引き付けておき、それら両グリップ部材間にペットボトル2の首部2cを押し込むことにより挟持するようになっている。第1導入ホイール18のグリッパ53は、フランジ2eの上部を保持するようになっており、第2導入ホイール20のグリッパ54は、前記第1導入ホイール18のグリッパ53から、ペットボトル2を受け取ってそのフランジ2eの下部側を把持する。なお、グリッパ54は前記構成に限定されるものではなく、その他の構成のグリッパを用いるようにしても良く、首部2cを把持せずにフランジ2eの下面を支持して、ペットボトル2を単に吊り下げた状態で支持するものでも良い。
【0025】
第2導入ホイール20の、前記各グリッパ54の半径方向内方側に、それぞれ貫通孔が形成され、その貫通孔の上面側に円筒状の支持筒56が固定されている。これら各支持筒56内に直立したロッド58が昇降可能に支持されている。各昇降ロッド58の上端に、水平な取付板60を介して給気ノズル(エア供給ノズル)62が取り付けられており、これらエア供給ノズル62は昇降ロッド58の昇降に伴って一体的に昇降する。各エア供給ノズル62は、それぞれ前記各グリッパ54に把持されたペットボトル2の真上に位置するようになっている。
【0026】
前記固定円筒部材48の外周に、水平の円形プレート64が固定され、この水平プレート64の上面に円筒状のカム66が配置されている。一方、前記各昇降ロッド58の下端には、カムフォロア68が取り付けられており、前記円筒状カム66のカム面に係合している。従って、回転軸52の回転によって第2導入ホイール20が回転し、この第2導入ホイール20に支持されている各昇降ロッド58が回転軸52を中心に回転すると、昇降ロッド58の下端に設けたカムフォロア68が円筒状カム66のカム面に沿って移動しつつ昇降し、これに伴って昇降ロッド58および前記エア供給ノズル62が昇降する。
【0027】
エア供給ノズル62は、昇降ロッド58の上端に水平の取付板60を介して取り付けられており、図4に示すように、取付板60の下面側に固定された保持筒70内にブッシュ72を介して上下に摺動可能な通路部材74と、この通路部材74の下端に形成されたフランジ74aの下面側に取り付けられている対向部材76を備えている。前記保持筒70の下端とフランジ74aの上面との間に緩衝用スプリング78が介装され、通路部材74および対向部材76を下方へ付勢している。通路部材74の、取付板60よりも上方に突出している部分の外周面にストッパ80が固定されており、緩衝用スプリング78による通路部材74の下降限を規制している。エア供給ノズル62が下降して対向部材76がペットボトル2の口部等に当接した際の衝撃をこの緩衝用スプリング78によって吸収する。なお、このエア供給ノズル62は、全体としてステンレスによって製作されており、対向部材76だけが、容器2の口部に傷を付けず、また、密封する場合の密閉性を向上させるためにシリコーン製になっている。
【0028】
前記通路部材74の内部はエア通路74bになっており、この通路部材74の下端のフランジ74aと前記対向部材76の内部に、エア通路74bを介して供給されてきたエアを絞って噴射する小径通路82aを有するステンレス製のノズル部材82が設けられている。この対向部材76を昇降させる円筒状カム66および昇降ロッド58等からなる昇降機構によって、請求項に記載した昇降手段が構成されている。この昇降手段によってグリッパ54と対向部材76とを接近させて、エア供給ノズル62を容器2の口部2dに対する吹き込み位置に位置させる。本実施例では、対向部材76と容器2の口部2dの接触を避けて、口部2dを密封せずに対向部材76を口部2dに接触しない最大限まで接近させて、密封に近い極力洩れの少ない状態で気体を吹き込むようにしており、この状態での最接近した口部2dに対するエア供給ノズル62の位置を吹き込み位置としている。この際、容器2はフランジ2eの下面をグリッパ54で支持しているため、胴部2aの潰れの有無や程度に係わらず容器2を常に同じ姿勢で支持することができ、対向部材76を口部2dに接触させない最大限まで接近させて位置させることができる。なお、対向部材76を口部2dに押圧させて密封するよう構成することも可能であり、この場合には、押圧した状態の口部2dに対するエア供給ノズル62の位置が吹き込み位置となる。この際、口部2dに対する下方への押圧力は、フランジ2eの下面をグリッパ54で支持することにより受けられ、胴部2aに作用することはなく、胴部2aが潰れることはない。なお、昇降手段による対向部材76と支持部材であるグリッパ54の接近は、対向部材76を昇降する構成に限らず、同様の昇降機構を用いてグリッパ54を昇降させても良いし、対向部材76とグリッパ54の両方を昇降させるよう構成しても良い。
【0029】
通路部材74内のエア通路74bの上端は、エア供給用のチューブ84に接続されている。各エア供給ノズル62に接続されたエア供給用チューブ84の他端は、図2に示すように、前記回転軸52の上端に取り付け筒86を介して固定されている分配マニホールド88に接続されており、上方から送られてきたエアはこの分配マニホールド88によって各エア供給ノズル62に分配供給される。各エア供給用チューブ84はフレキシブルチューブであり、前記昇降ロッド58および通路部材74の上下動に追従することができる。
【0030】
前記各エア供給ノズル62に供給されるエアは、図5に示すように、圧縮エア供給管90を介して図示しない圧縮エア供給源(図5の左方に接続されている)から送られる。圧縮エア供給配管90には、無菌フィルタ92およびヒータ94が接続されており、その上流側に開閉弁96が設けられ、下流側は二つの通路90a、90bに分岐している。分岐した一方のメイン通路90aはレギュレータ98および開閉弁100を介して、前記第1チャンバ6の天面6b(図2参照)に取り付けたロータリジョイント102に接続されている。このロータリジョイント102のチャンバ内部側の回転部が無菌フィルタ104を介して前記分配マニホールド88に接続されている。なお、本発明は、これら供給された気体を流通させる通路のうち、ロータリジョイント102より下流の、無菌フィルタ104、分配マニホールド88、エア供給用チューブ84およびこれらを連結する各配管からなるチャンバ6内に配置された給気管を対象に結露の発生を防止するものである。
【0031】
エア供給ノズル62、特に下端に設けた対向部材76は、開口状態で搬送されるペットボトル2の直上に配置され、口部に最も接近する部分であるため、結露が発生することを最も避けなければならないので、エア供給ノズル62の移動経路の下方側に、対向部材76の結露を防止する結露防止手段を設けている。この実施例では、結露防止手段として対向部材76の下面に向けてエアを噴射する斜め方向の噴射ノズル106を設けている(図4参照)。前記圧縮エア供給配管90の下流側の分岐通路90bは、前記メイン通路90aと同様にレギュレータ108および開閉弁110が設けられており、この分岐通路90bが噴射ノズル106に接続されている。よって、噴射ノズル106から噴射されるエアは、無菌フィルタ92を通過した無菌エアであり、ヒータ94で昇温されている。この噴射ノズル106は、図1に示すように、第2導入ホイール20が第1導入ホイール18から受け取って回転搬送し、第3導入ホイール22に引き渡すペットボトル2と干渉しないように、ペットボトル2の搬送経路以外の部分に設けられている。
【0032】
前記構成の容器加圧装置の作動について説明する。図示しないボトル成型機によって成形されたペットボトル2は、導入エアコンベヤ4によって搬送されて第1チャンバ6内に導入される。第1チャンバ6内には、複数の導入ホイール18、20、22が配置されており、導入されたペットボトル2は、各導入ホイール18、20、22によって首部を支持され回転搬送されつつ順次受け渡しが行われる。第2導入ホイール20には容器加圧装置が設けられており、この容器加圧装置によって、ペットボトル2は内部にエアを吹き込まれて加圧される。導入エアコンベヤ4では、ペットボトル2の首部2cに形成されているフランジ2eの下面側を支持し、後方からエアを吹き付けることによりペットボトル2を搬送する。その搬送過程でペットボトル2同士が衝突する等により変形してしまう場合がある。このようなペットボトル2は、各処理機(滅菌機26、リンサ30、フィラ36およびキャッパ42)内に搬入される前に、第2導入ホイール20に設けられている容器加圧装置で元の形状に復元される。
【0033】
第1導入ホイール18のグリッパ53から第2導入ホイール20に引き渡されたペットボトル2は、第2導入ホイール20のグリッパ54に把持されて回転搬送される。グリッパ54がエア吹き込み開始位置Bに到達すると、円筒状カム66のカム面の形状に従ってカムフォロア68が下降するとともに、昇降ロッド58および取付板60を介してこれと一体のエア供給ノズル62が下降する。エア供給ノズル62の下端には対向部材76が取り付けられており、この対向部材76と下方のグリッパ54とを接近させることにより、対向部材76の下面がペットボトル2の口部に接近してペットボトル2の口部2dに対する吹き込み位置に位置する。
【0034】
運転中は、圧縮エア供給配管90の上流側の開閉弁96および下流側の分岐したメイン通路90aの開閉弁100を開放してあり、エア供給ノズル62に圧縮エアを供給している。供給される圧縮エアは、開放した上流側の開閉弁96および無菌フィルタ92を通った後、ヒータ94を通過して加熱される。加熱されて昇温された圧縮エアは、レギュレータ98により圧力を調整され、下流側の開閉弁100を通過して、第1チャンバ6の天面6bに設置されたロータリジョイント102に送られる。さらに、第1チャンバ6内の無菌フィルタ104により再度浄化されたエアは、分配マニホールド88によって分配されて各エア供給チューブ84からエア供給ノズル62に送られる。送られたエアは、エア供給ノズル62の通路部材74の内部に形成されたエア通路74bを通り、さらに、ノズル部82の小径通路82aからペットボトル2内に吹き込まれてこのペットボトル2内を加圧する。ペットボトル2が変形していた場合には内部側からの圧力で正常な形状に復帰する。ペットボトル2およびエア供給ノズル62が加圧終了位置Cに到達すると、円筒状カム66により昇降ロッド58およびエア供給ノズル62が上昇して、対向部材76がペットボトル2の口部から離れてペットボトル2内を開放する。なお、この実施例では、運転中は、エア供給ノズル62から常時無菌化され昇温された圧縮エアが吹き出されている。
【0035】
前述のようにアセプティックチャンバ内は滅菌機26やリンサ30を設置しているため外部雰囲気より高温多湿の環境にあり、常温のエアを送ると温度差により無菌フィルタ104、分配マニホールド88、エア供給用チューブ84等からなる供給管やエア供給ノズル62の内部が、チャンバ内の温度に対して冷却されて表面に結露を生じてしまうが、この実施例では、圧縮エア供給配管90に設けたヒータ94によってエアを加熱してから供給しているので、結露の発生を防止することができる。この実施例では、容器加圧装置を設置している第1チャンバ6内の雰囲気温度が60°C程度で、供給される圧縮エアの温度は50〜60°C程度に設定している。なお、チャンバ内の温度は滅菌条件等により変更されるので、供給する圧縮エアの温度は50〜60°Cに限るものではなく、チャンバ内の温度付近まで加温すればよい。
【0036】
第2導入ホイール20で、変形していたペットボトル2は修復され、正常なペットボトル2はそのまま第3の導入ホイール22に引き渡される。第3導入ホイール22に保持されたペットボトル2は、第1チャンバ6から第2チャンバ8内に導入され、第2チャンバ8内に設置されている滅菌機26に供給されて滅菌される。
【0037】
一方、グリッパ54が把持していたペットボトル2を第3ホイール22に引き渡した後、第2導入ホイール20に設けられたエア供給ノズル62は、回転移動して噴射ノズル106の位置に到達する。この噴射ノズル106には、前記圧縮エア供給配管90の分岐通路90bが接続されており、ヒータ94で加熱されたエアがレギュレータ108および開閉弁110を通って供給され、エア供給ノズル62の下端に設けられている対向部材76の下面に吹き付けられる。前記加圧用のエアがヒータ94によって昇温されて供給されているので、結露の発生は低く抑えられ水滴の落下等は防止されるが、対向部材76はペットボトル2の口部2dに対向して最接近する部位であるため、僅かでも対向部材76の表面に結露が生じていると好ましくないので、ペットボトル2に対向する下面側に昇温された無菌エアを吹き付けて結露が発生しないようにしている。すなわち、本実施例では、対向部材76に昇温された無菌エアを吹き付けることで、対向部材76を容器加圧装置を設置した第1チャンバ6内の温度付近まで加温し、結露の発生を防止するようにしている。また、無菌エアを噴射するので対向部材76やアセプティックチャンバ内の雰囲気を汚染することはない。本実施例では結露防止手段として、噴射ノズル106、ヒータ94、噴射ノズル106にエアを供給する分岐通路90b等により、対向部材76を加温する加温手段が構成されている。なお、ペットボトル2への充填を行う生産運転を開始する前の準備工程においてはヒータ94による加熱が充分でない場合があるので、このような運転開始前には対向部材76に無菌の圧縮エアを吹き付けて、結露による水滴を噴射圧にて吹き飛ばすことで対向部材76の表面を乾燥させておくようにすることが好ましい。なお、無菌エアを吹き付けて対向部材76の表面を乾燥させて結露を防止する結露防止手段としては、高温の無菌エアで蒸発させること、無菌エアの噴射圧で吹き飛ばすこと、乾燥させたドライ無菌エアを用いて乾燥させること等が含まれる。
【0038】
第2チャンバ8内で滅菌機26に供給されて滅菌されたペットボトル2は、第1中間ホイール28に保持されて第3チャンバ10内に設置されているリンサ30に送られて洗浄される。その後、ペットボトル2は、第2中間ホイール34を介して第4チャンバ12内のフィラ36に送られて液体を充填され、続いて、第3中間ホイール40を介してキャッパ42に送られてキャッピングが行われる。充填およびキャッピングが行われたペットボトル2は、第1排出ホイール44および第2排出ホイール46を介して排出エアコンベヤ16に引き渡されて次の工程に送られる。
【0039】
なお、前記実施例では、圧縮エア供給源から圧縮エアを供給しているが、圧縮エアに限るものではなく、口部2dに対向部材76を押圧させて密封するよう構成した場合には、加圧していないエアを密封した容器内に送り込み、変形した容器を復元できる圧力まで加圧してもよい。また、対向部材76に結露が生じることを防止する結露防止手段として、対向部材76に加熱した空気を吹き付ける噴射ノズル106を設けたが、対向部材76を加温する加温手段としては、このように昇温したエアを吹き付ける構成に限るものではなく、例えば、対向部材76を直接加熱するヒータをエア供給ノズル62の移動経路の直下に設けるようにしても良い。この場合も、ペットボトル2の搬送経路以外の部分に設けることは言うまでもない。また、対向部材76を直接加熱するヒータを外部に設けるだけでなく、対向部材76の内側に内蔵するようにしても良い。さらに、結露防止手段の加温手段としては、エア供給ノズル62から加熱した圧縮エアを常時吹き出させることにより、対向部材76を加温させるようにしたものも含まれる。さらに、前述のように高温の滅菌ガスや蒸気を扱う滅菌機や、温水や加温した薬液を扱うリンサが配置されていない場合にも、内部に設けたフィラやキャッパ等の機器から発生する熱によりチャンバ内部は外部雰囲気よりも高温となるため、このような装置構成に対しても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】容器加圧装置を備えたアセプティック充填ラインの全体の構成を示す平面図である。(実施例1)
【図2】容器加圧装置の縦断面図である。
【図3】エアコンベヤおよびエアコンベヤによって搬送される容器を示す図である。
【図4】前記容器加圧装置に設けられたエア供給ノズルの縦断面図である。
【図5】前記エア供給ノズルおよび給気管にエアを供給するエア供給配管の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
2 樹脂製容器(ペットボトル)
2c 容器の首部
2d 口部
54 支持部材(グリッパ)
62 給気ノズル(エア供給ノズル)
66 カム(昇降手段)
68 カムフォロア(昇降手段)
90 給気管(圧縮エア供給管)
94 ヒータ
106 結露防止手段(噴射ノズル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が供給される給気管と、この給気管から供給される気体を吹き出す給気ノズルとを備え、給気ノズルから樹脂製容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧する容器加圧装置において、
前記給気管および給気ノズルの結露を防止する結露防止手段を備えたことを特徴とする容器加圧装置。
【請求項2】
前記結露防止手段として、前記給気管に供給される気体を加熱するヒータを設け、このヒータによって昇温させた気体を給気管へ供給し、給気ノズルから吹き出すことを特徴とする請求項1に記載の容器加圧装置。
【請求項3】
前記給気ノズルに向けて無菌エアを吹き付ける噴射ノズルを設けたことを特徴とする請求項2に記載の容器加圧装置。
【請求項4】
前記給気ノズルを加温する加温手段を設け、加温することで給気ノズルの結露を防止するようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の容器加圧装置。
【請求項5】
前記ヒータによって昇温させた気体を、前記噴射ノズルから噴射することを特徴とする請求項3に記載の容器加圧装置。
【請求項6】
前記給気管および給気ノズルを、内部雰囲気が外部よりも高温となるチャンバ内に設置して、チャンバ内で給気ノズルから樹脂製容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の容器加圧装置。
【請求項7】
気体が供給される給気管と、この給気管から供給される気体を吹き出す給気ノズルとを備え、給気ノズルから樹脂製容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧する容器加圧装置において、
樹脂製容器の首部を支持して容器を吊り下げ支持する支持部材と、支持部材に首部を支持された樹脂製容器の口部に対し、前記給気ノズルを相対的に昇降させる昇降手段とを備え、
前記昇降手段により、給気ノズルを樹脂製容器の口部に対する吹き込み位置に位置させて、容器内に気体を吹き込んで容器内部を加圧することを特徴とする容器加圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−30645(P2010−30645A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196094(P2008−196094)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【出願人】(508231212)サントリービバレッジプロダクツ株式会社 (2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】