説明

容器回転型造粒装置及び造粒システム

【課題】造粒物を構成する粒子間の結合強度を向上させることが可能な容器回転型造粒装置及び造粒システムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の容器回転型造粒装置10によれば、回転パン12内で転動する粒子群にプラズマフレームF1が噴射されることで、粒子が溶融してそれら粒子同士が固着する。つまり、造粒物を構成する粒子間の結合強度を、バインダ液により結合した従来のものより向上することができる。これにより、製造後の造粒物の破壊を防止することができる。また、プラズマ中のイオン又はラジカルの作用で造粒物の表面に被膜(コーティング)が形成された場合には、その皮膜による粒子間の架橋により、造粒物をより破壊され難くすることができる。さらに、バインダ液を使用しないから、造粒後の乾燥工程が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転容器の回転により、回転容器に収容した粒子を互いに固着させて造粒を行う容器回転型造粒装置及び造粒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の造粒装置として、回転容器に収容した粒子群にバインダー液を噴霧しながら粒子を転動させることで、粒子と粒子との間にバインダー液の架橋を形成して造粒を行う造粒装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】特許庁、”標準技術集”、農薬製剤技術(B−1−(3)造粒、成形技術)、[online]、[平成19年10月18日検索]、インターネット[URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/index.htm]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した従来の造粒装置で製造された造粒物は粒子間の結合が十分ではなく、その後の乾燥工程において造粒物を撹拌しながら乾燥させた場合に、造粒物が壊れ易いという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、造粒物を構成する粒子間の結合強度を向上させることが可能な容器回転型造粒装置及び造粒システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る容器回転型造粒装置は、上面が開放した円筒形又は円錐形の回転容器を中心軸が重力方向に対して傾斜した状態にしてその中心軸回りに回転駆動すると共に、回転容器内に収容した粒子が互いに固着して所定の粒径以上まで成長した場合に、回転容器の内面を転動して回転容器外へと落下するように回転容器の回転速度を設定した容器回転型造粒装置であって、回転容器内の粒子に向けてプラズマフレームを噴射して粒子同士を互いに固着させるためのプラズマトーチを備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の容器回転型造粒装置において、プラズマフレームのラジカルを測定するラジカル測定装置と、ラジカルが一定の値になるようにプラズマトーチへのプラズマフレーム生成用ガスの供給量又は供給圧力又はプラズマ発生用電力を調節するプラズマ制御装置とが備えられたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の容器回転型造粒装置において、プラズマトーチは、プラズマフレームの先端が回転容器内の粒子群の表面に位置するように配置されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の容器回転型造粒装置において、回転容器からの粒子の排出量を計測する排出量計測手段と、排出量計測手段の計測結果に基づき回転容器から排出された分の粒子を回転容器に補充する粒子補充装置とを備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の容器回転型造粒装置において、プラズマトーチに供給されるプラズマフレーム生成用ガスは窒素であるところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明に係る造粒システムは、上面が開放した円錐形の回転容器を中心軸が重力方向に対して傾斜した状態にしてその中心軸回りに回転駆動すると共に、回転容器内に収容した第1の粒子群の中に核となる第2の粒子が付与され、その第2の粒子の表面に第1の粒子が固着して所定の粒径以上まで成長した場合に、回転容器の内面を転動して回転容器外へと落下するように回転容器の回転速度を設定した容器回転型造粒装置と、回転容器内の第1の粒子に向けてプラズマフレームを噴射して第1の粒子の第2の粒子に対する付着性を高めるためのプラズマトーチと、回転容器の上方に配置され、第2の粒子を回転容器に向けて1粒ずつ落下させる核粒子供給装置と、核粒子供給装置と回転容器との間に設けられ、核粒子供給装置から落下した第2の粒子を加熱して第1の粒子に対する付着性を高めるための筒形加熱炉とを備えたところに特徴を有する。なお、本発明における「1粒」とは、複数の粒子が強固に凝集して見かけ上「1粒」となったものも含まれる。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載の造粒システムにおいて、核となる第2の粒子は、複数の核構成粒子を合体してなり、核粒子供給装置は、筒形加熱炉の上面開口から側方に離れた位置に配置されて、それぞれ核構成粒子を1粒ずつ落下させることが可能な複数の核構成粒子供給装置と、核構成粒子供給装置から落下した核構成粒子を帯電させるための強制帯電手段と、核構成粒子供給装置から落下した核構成粒に風圧を付与して、全ての核構成粒子供給装置からの核構成粒子を筒形加熱炉の上面開口の真上又は筒形加熱炉の上部内側に集めて互いに電気的に付着させるための風圧移動手段とを備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1及び5の発明]
上記のように構成した請求項1の発明に係る容器回転型造粒装置によれば、回転容器内で転動する粒子にプラズマフレームが噴射されると、粒子が溶融して付着性が生じ、周囲の粒子との接触により粒子同士が固着して造粒物が製造される。これにより、造粒物を構成した粒子間の結合強度を従来より向上させることができ、造粒後の破壊を防ぐことができる。
【0013】
ここで、プラズマトーチへ供給するプラズマフレーム生成用ガスの種類に応じて、造粒物にイオンを注入したり被膜を形成することも可能である。例えば、請求項5の発明のように、プラズマフレーム生成用ガスを窒素とした場合には、プラズマ中の窒素イオンが造粒物に注入され、窒化物の被膜を形成することが可能である。また、プラズマフレーム生成用ガスを酸素とすれば、酸素イオンの注入や酸化物皮膜の形成が可能であり、プロパンガスやメタンガスとすれば炭素イオンの注入や炭化物皮膜の形成が可能である。そして、これら被膜が造粒物の粒子間に架橋されるので、造粒物をより破壊され難くすることができる。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、プラズマフレームの状態が安定し、造粒物の性状のばらつきを抑えることができる。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、回転容器内の粒子群の表面がプラズマフレームによって加熱されるので、回転容器の内壁面への粒子の固着を防止することができる。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、回転容器内の粒子量が適正に保たれ、連続的に造粒物を製造することができる。
【0017】
[請求項6の発明]
請求項6の発明に係る造粒システムによれば、核粒子供給装置から1粒ずつ落下した第2の粒子は、筒形加熱炉を通過する過程で加熱され、高温状態で回転容器内の第1の粒子群の中へと付与される。回転容器内の第1の粒子はプラズマフレームによって予熱されて第1の粒子の第2の粒子に対する付着性が高められており、その第1の粒子群の中に第2の粒子が付与されると、それら第1又は第2の粒子の少なくとも何れかが溶融して、核としての第2の粒子の表面に第1の粒子が固着した造粒物が製造される。これにより、造粒物を構成した第1の粒子と第2の粒子との間の結合強度を従来より向上させることができ、造粒後の破壊を防ぐことができる。なお、第1の粒子と第2の粒子の物性を異ならせると、それら異なる物性を併せ持った造粒物を製造することができる。
【0018】
[請求項7の発明]
請求項7の発明によれば、核構成粒子供給装置から下方に排出された核構成粒子に風圧が付与されて、それら複数の核構成粒子が筒形加熱炉の真上又は筒形加熱炉の上部内側に集められる。それら集められた核構成粒子の何れかは、強制帯電手段によって帯電しているので、集められた核構成粒子同士を電気的に付着させた状態で筒形加熱炉に送り込むことができる。ここで、核構成粒子の物性を異ならせることで、それら異なる物性を併せ持った第2の粒子を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、図1〜11に基づいて本発明の容器回転型造粒装置10について説明する。
図1に示すように、容器回転型造粒装置10は、原料の粒子群(粉粒体)を回転パン12(本発明の「回転容器」に相当する)内で転動させて、粒子同士が結合した造粒物を生成するための転動造粒器11と、回転パン12へと原料の粒子群を補充する粒子補充装置20とを備えている。なお、粒子は、無機粒子(金属粒子)、有機粒子の何れでもよい。
【0020】
まず、粒子補充装置20について説明する。図2に示すように、粒子補充装置20は、原料の粒子群を収容した粒子群収容容器21を備えている。粒子群収容容器21は、大径筒部22と小径筒部23と粒子排出筒部24とを備え、下方に向かうに従って縮径した構造になっている。大径筒部22の側壁の下端部と、小径筒部23の側壁の上端部との間は平板状の水平段差壁25によって接続されており、粒子排出筒部24は小径筒部23の外側に螺合固定されている。そして、粒子排出筒部24の下面開口から粒子が排出される。
【0021】
粒子群収容容器21の上端は開放しており、その上端外周面に螺合された上端キャップ26にて閉じられている。上端キャップ26の上面中央にはモータ27が固定載置されている。モータ27に連結された回転軸27Aは、上端キャップ26を貫通して大径筒部22及び小径筒部23でその中心軸に沿って延びている。回転軸27Aは、中間部より下側が段付き状に細くなった六角柱状をなしており、その太軸部の下端部には容器内円盤28が一体回転可能に取り付けられている。
【0022】
容器内円盤28は、水平段差壁25の上面に重ねて配置され、その水平段差壁25のうち、小径筒部23の上面開口とその周囲を覆うように、大径筒部22内に遊嵌している。具体的には、容器内円盤28は大径筒部22の内径よりも小径でかつ、小径筒部23の内径よりも大径な平らな円板で構成されており、水平段差壁25の上面から上方に離して水平に取り付けられている。
【0023】
この容器内円盤28上に堆積した粒子群を、容器内円盤28の周縁部と大径筒部22の側壁との間の環状隙間に掻き出すために、大径筒部22の内側には上面待ち受けガイド29が設けられている。図2に示すように上面待ち受けガイド29は、L字状に屈曲した板状をなしている。上面待ち受けガイド29の水平板29Aは、容器内円盤28の上面に隣接配置され、水平板29Aの基端部から垂直上方に延びた垂直板29Bが上端キャップ26に固定されている。
【0024】
そして、水平板29Aの先端側の平面を回転軸27Aの側面に当接させて取り付けることで、容器内円盤28の回転方向に対して水平板29Aが傾斜し、容器内円盤28の回転時に、容器内円盤28上の粒子群が水平板29Aに堰き止められて容器内円盤28の外縁部に向けて案内される。また、水平板29Aの基端部は、容器内円盤28の外縁部より外側位置まで延びているので、水平板29Aに案内された粒子群を水平段差壁25の外縁部、即ち、水平段差壁25の上面のうち容器内円盤28の外縁部に沿って設けられた環状堆積部25Aへと流下させる。さらに、上面待ち受けガイド29が粒子群収容容器21内の粒子群を撹拌するので、大径筒部22内で粒子群が固化することを防ぐことができる。これにより、容器内円盤28上の粒子群を安定して環状堆積部25Aへと流下させることが可能となる。
【0025】
上面待ち受けガイド29によって環状堆積部25Aへと流下した粒子群は、容器内円盤28と水平段差壁25との間で所定の安息角を有した粒子群の山を形成する。この粒子群の山の安息角は、粒子群の種類によって一定となり、容器内円盤28から水平段差壁25へと過剰な粒子群が供給されないようにすることができる。即ち、容器内円盤28と水平段差壁25の上面との間で粒子群を堰き止めて、小径筒部23に粒子群が雪崩れ込まないようにすることができる。
【0026】
環状堆積部25Aに堆積した粒子群の山は、その山裾部分が大径筒部22内で回転する容器内旋回部材30によって削り取られて小径筒部23へと送り込まれる。容器内旋回部材30は、回転軸27Aに固定されており、図4に示すように回転軸27Aが貫通した軸心プレート31から側方に片持ち梁状の集粒羽32と散粒羽33とが延びている。これら集粒羽32と散粒羽33とが水平段差壁25の上面に摺接しつつ水平面内で回転する(図3参照)。
【0027】
集粒羽32は、容器内旋回部材30の回転方向(図4の矢印の方向)とは逆側に膨らむように複数の平板をつなげた屈曲構造をなす一方、散粒羽33は、容器内旋回部材30の回転方向に対して傾斜した状態で軸心プレート31から大径筒部22の側壁に向かって真っ直ぐ延びている。また、図示されていないが、集粒羽32は、その先端が大径筒部22の側壁と隣接した位置まで延びており、散粒羽33はそれより短くなっている。
【0028】
そして、集粒羽32によって、環状堆積部25Aに堆積した粒子群を中心側に誘導して小径筒部23へと送り込むと共に、散粒羽33により、集粒羽32が取り込み過ぎた粒子群を外側に移動して逃し、次に集粒羽32が通過したときに小径筒部23内に取り込み、小径筒部23内の粒子群にかかる圧力を安定させ易くしている。また、集粒羽32と散粒羽33とが協働して粒子群を撹拌して、環状堆積部25Aにおける粒子群の塊を粉砕する効果も奏する。
【0029】
図4に示すように、容器内旋回部材30の軸心プレート31のうち集粒羽32の付け根部分には、軸心プレート31から斜めに切り起こされた補助ガイド壁34が形成されている。補助ガイド壁34は、集粒羽32による粒子群の誘導方向に向かって徐々に下るように傾斜している。そして、集粒羽32に誘導されてその基端部に達した粒子群は、補助ガイド壁34によって小径筒部23へと強制的に落とされる。
【0030】
容器内旋回部材30には、軸心プレート31から下方に向かって延びた複数の旋回脚部35,36が一体に設けられている。図3に示すように、これら旋回脚部35,36は何れも小径筒部23内に配置され、そこで旋回可能となっている。
【0031】
第1の旋回脚部35は、軸心プレート31のうち散粒羽33の付け根部分と、集粒羽32の付け根部分とにそれぞれ対をなして設けられている。第1の旋回脚部35は、帯板状をなしており、下方に向かうに従って容器内旋回部材30の旋回方向の後方へ向かうように斜めに(詳細には、鉛直方向に対して約30度傾いて)延びている。
【0032】
第2の旋回脚部36は、軸心プレート31のうち散粒羽33の付け根部分から垂下しており、第1の旋回脚部35とほぼ同じ幅の帯板状をなしている。
【0033】
これら両旋回脚部35,36が小径筒部23内を旋回することにより、小径筒部23内での粒子群の固化や凝集が防止されている。
【0034】
図3に示すように、粒子群収容容器21のうち、第1及び第2の旋回脚部35,36の下端部より下方には、1対のスクリーン壁37,38が上下に間隔を開けて重ねて設けられている。
【0035】
図6に示すように、上段のスクリーン壁37は、薄肉円板に複数の粒子通過孔37Aが貫通形成された構造をなす。これら粒子通過孔37Aは、大径筒部22から小径筒部23へと送り込まれた粒子群同士が付着(架橋)して形成されたアーチにより閉塞されると共に、その粒子群アーチが崩れた状態で粒子群が通過可能な大きさになっている。具体的には、上段のスクリーン壁37に取り付けられた超音波振動子37Bの振動によってアーチが破壊され、粒子が下段のスクリーン壁38へと落下するように構成されている。なお、本実施形態において、上段のスクリーン壁37は、粒子通過孔37Aの大きさやその数及び配置を異ならせた複数種類のものが用意されており(例えば、図9参照)、粒子の粒径等に応じて適宜選択して取り付けることが可能となっている。
【0036】
一方、下段のスクリーン壁38は、中心部に1つだけ粒子通過孔38Aが形成されている。図7に示すように粒子通過孔38Aは、下方に向かって縮径したすり鉢状をなし、最も小径な部分の内径が、原料の粒子P1の平均粒径の数倍程度となっている(図8参照)。これにより、極微少量ずつ(例えば、1〜3粒ずつ)粒子を排出可能となっている。また、下段のスクリーン壁38には超音波振動子38Bが取り付けられており、万が一、粒子通過孔38Aが詰まった場合には、超音波振動子38Bの振動によって粒子を強制落下させて、詰まりを解消することが可能となっている。なお、下段のスクリーン壁38としては、図10に示すように、粒子の平均粒径の数倍程度の粒子通過孔38Aを、上段のスクリーン壁37の粒子通過孔37Aの数より多く備えたものも用意されており、適宜選択して取り付けることが可能となっている。
【0037】
図3に示すように、各スクリーン壁37,38は、何れも粒子排出筒部24の側面に開放したスリット24A,24Aから挿抜可能となっている、上段のスクリーン壁37は、その周縁部が小径筒部23の下端部と粒子排出筒部24の内周段差面との間で挟まれており、下段のスクリーン壁38は、その周縁部が粒子排出筒部24の内周面に形成された溝部に係合している。なお、スクリーン壁37,38を板厚方向から挟んで密着した1対のOリングによって、各スリット24A,24Aと各スクリーン壁37,38との間の隙間からの粒子の漏出が防止されている。
【0038】
図3に示すように、下段のスクリーン壁38の上面には、スクレーパ40が備えられている。スクレーパ40は、上段のスクリーン壁37を貫通した回転軸27A(細軸部)の下端部に着脱可能に固定されている。図5に示すように、スクレーパ40は、回転軸27Aの外側に嵌合する円柱部41と、その円柱部41の下面から片持ち梁状に張り出した帯板部42とから構成されており、帯板部42は回転方向の後方に向かって膨らむように湾曲している。スクレーパ40は、下段のスクリーン壁38の上面に摺接しつつ旋回し、上段のスクリーン37を通過して下段のスクリーン壁38に落下した粒子群を、その中心部へと掻き集めて、粒子通過孔38Aから粒子補充装置20の下方に落下させる構成となっている。
【0039】
以上が粒子補充装置20の説明である。なお、図1に示すように、粒子補充装置20は、ブラケット39Aを介して計量装置39から吊り下げられており、原料の粒子群の排出量が、粒子補充装置20全体の重量の減少量として計測されている。
【0040】
次に転動造粒器11について説明する。図1に示すように転動造粒器11は、粒子補充装置20の真下に配置されている。転動造粒器11は、重力方向(鉛直方向)に対して傾斜した回転軸13Aの一端に回転パン12が固定され、回転軸13Aの他端にモータ13が連結されている。回転パン12は、底部に向かうに従って縮径した円錐筒形状をなしており、排出口12Aが斜め上方に開放している。回転軸13Aは、支持盤14の上台14Aに傾斜して取り付けられており、上台14Aはヒンジ14Cを介して下台14Bに回動可能に軸支されている。そして、下台14Bの一端と上台14Aの一端との間に挟まれた伸縮シャフト14Dによって、回転パン12(回転軸13A)の傾斜角度を調節可能となっている。
【0041】
粒子補充装置20から落下した粒子は、回転パン12の底部寄り位置に供給され、回転パン12の回転によりそれら粒子群が回転パン12内で転動する。その過程で粒子群を構成する粒子同士が付着して雪だるま式に成長することで造粒物が製造される。なお、造粒物の大きさは、回転パン12(回転軸13A)の傾斜角度や回転速度を変更することで適宜変更することができる。
【0042】
ここで、本実施形態の回転パン12は円錐筒形状をなしているので、その内径差によって周速度差が生じ、回転パン12内に落下した直後の比較的小さい粒子は回転パン12の内面を転動して底側へ移動し、造粒が進行して大型化するに従って回転パン12の内面を転動して排出口12A側に移動する。そして、所定の大きさになった造粒物は排出口12Aからオーバーフローして自然に排出される。つまり、回転パン12内で分級作用が起きて造粒物の大きさを揃えることができる。なお、この分級作用の原理については公知であるので(坂下攝著「入門粉体トラブル工学」(株式会社工業調査会、1998年10月1日発行)の「4.2容器回転型重力流動」を参照)、詳細な説明は省略する。
【0043】
回転パン12の排出口12Aの下方には計量装置45(本発明の「排出量計測手段」に相当する)が設けられている。回転パン12から排出された造粒物はトレイ45Aに集められ、この計量装置45で計量される。その計量結果に基づき、造粒物として回転パン12から排出された分の粒子群が粒子補充装置20から補充される。これにより、回転パン12内の粒子群の量が適正に保たれ、連続的に造粒物を製造することができる。
【0044】
さて、転動造粒器11には、回転パン12内で転動する粒子群にプラズマフレームF1を噴射するプラズマトーチ15が備えられている。プラズマトーチ15は、石英製のプラズマ発生管16と、その外側に設けられた誘導コイル17とを備え、誘導コイル17に高周波電力を印加するための電源18がマッチング回路19を介して接続されている。
【0045】
プラズマ発生管16は下端開放の円筒状をなし、鉛直方向に対して傾斜して設けられている。図示されていないが、プラズマ発生管16は二重管構造をなしており、その内外管の間に冷却水或いは冷却用ガスが流されている。プラズマ発生管16の内側には、その上端部からプラズマフレーム生成用ガス(例えば、水素、ヘリウム、窒素、酸素、ネオン、アルゴン及びそれらの混合ガス)が導入され、その状態で誘導コイル17に高周波電力が印加されると、プラズマフレーム生成用ガスがプラズマ状態になって、プラズマ発生管16の下端開口から回転パン12内へとプラズマフレームF1が噴射される。
【0046】
図11に示すように、プラズマトーチ15は、プラズマフレームF1の先端部が、回転パン12内で転動する粒子群の表面に位置するように配置されている。つまり、回転パン12内に堆積した粒子群のうち、回転パン12の内面に近い位置にある粒子には、プラズマフレームF1の熱が伝わり難くなっているので、粒子が回転パン12の内壁面に固着することを防止することができる。また、比較的温度の低いプラズマフレームF1の先端部を粒子群の表面から離したことで、過加熱による粒子の液状化や蒸発を防ぐことができる。
【0047】
ここで、プラズマトーチ15は、プラズマフレームF1の先端部が、回転パン12内で転動する粒子群のうち、比較的粒径の小さい(他の粒子と固着していない未反応の)粒子に優先的に当たるような位置に配置するとより好ましい。具体的には、図12に示すように、回転パン12の内壁面との摩擦によって上方に引き揚げられた粒子群の上端部分にプラズマフレームF1の先端部が位置するように配置すると、比較的粒径の小さい粒子にプラズマフレームF1が優先的に当たって効率的に造粒を行うことができる。
【0048】
図11に示すように、プラズマ発生管16の下端開口の近傍には、プラズマフレームF1中のラジカル量を測定するラジカル測定装置51が配設されている。ラジカル測定装置51は、例えば、特定波長の赤外線レーザーをプラズマフレームF1に照射する構成となっており、そのレーザーがラジカルに吸収されて強度が変化することを利用して、ラジカルの密度等を計測すると共に、その測定結果を制御装置50(本発明の「プラズマ制御装置」に相当する)に出力している。制御装置50は、計測されたラジカル量に応じてガス流量バルブ52の開度を変化させて、ラジカル量がほぼ一定になるように、プラズマ発生管16に導入するプラズマフレーム生成用ガスの流量又は供給圧力を調節する。これにより、プラズマフレームF1を一定状態に保つことができ、造粒物の性状のばらつきを抑えることができる。ここで、誘導コイル17に印加するプラズマ発生用の高周波電力を一定の周期でパルス変調させて、そのデューティー比を変化させることでラジカル量を制御してもよい。また、ラジカル量が不足した場合に、外部に備えた図示しないラジカル発生源にて発生させたラジカルをプラズマフレームF1の中に注入するようにしてもよい。
【0049】
なお、プラズマトーチ15におけるプラズマの発生方式は、上述の誘導結合方式(コイル方式)に限定するものではなく、容量結合方式(平行平板型)でもよい。また、マイクロ波、直流電流、グロー放電等を利用して発生させる方式でもよい。また、造粒する粒子の材質に応じて、高温プラズマと低温プラズマとを使い分けることが好ましい。高温プラズマは、金属や無機物等の比較的融点の高い粒子の溶融結合に適し、低温プラズマは、有機・高分子等の比較的融点の低い粒子の溶融結合や表面改質による付着性の向上に適している。
【0050】
次に、本実施形態の容器回転型造粒装置10の作用について説明する。
回転パン12がモータ13によって回転駆動されると、回転パン12内で転動する粒子群のうち、比較的小さい未反応の粒子は回転パン12の底側に集められて転動し、その粒子群の表面に位置する粒子にプラズマフレームF1が当てられる。プラズマフレームF1が当たった粒子は、少なくとも表層部が溶融して付着性が高まり、周囲の粒子が付着する。これにより、複数の粒子が互いに付着した造粒物が形成される。造粒物は、回転パン12内で転動することで雪だるま式に大型化するに従い回転パン12の排出口12A側に移動し、プラズマフレームF1から徐々に離れていく。この過程で造粒物は冷却されて固化し、粒子同士が強固に固着する。そして、所定の大きさ(粒径)以上に成長した造粒物は、回転パン12の内面を転動して排出口12Aから排出される。なお、回転パン12の回転速度、傾斜角度、プラズマの状態、その他、造粒条件を最適化することで、プラズマに含まれるイオンやラジカルの作用により、造粒物にイオンを注入したり、表面に被膜を形成することも可能である。具体的には、プラズマフレーム生成用ガスを窒素とすれば、窒素イオンを注入したり窒化物の被膜を形成することが可能である。また、プラズマフレーム生成用ガスを酸素とすれば、酸素イオンを注入したり酸化物の皮膜を形成することが可能であり、プロパンガスやメタンガスとすれば炭素イオンを注入したり炭素皮膜を形成することが可能である。
【0051】
このように本実施形態によれば、回転パン12内で転動する粒子群にプラズマフレームF1が噴射されると粒子が溶融してそれら粒子同士が固着する。つまり、造粒物を構成する粒子間の結合強度を、バインダ液により結合した従来のものより向上することができる。これにより、製造後の造粒物の破壊を防止することができる。また、プラズマ中のイオン又はラジカルの作用で造粒物の表面に被膜(コーティング)が形成された場合には、その皮膜による粒子間の架橋により、造粒物をより破壊され難くすることができる。さらに、バインダ液を使用しないから、造粒後の乾燥工程が不要となる。
【0052】
[第2実施形態]
図13〜図15に基づいて、本発明の造粒システム100について説明する。この造粒システム100は、上記第1実施形態の容器回転型造粒装置10と、核粒子供給装置60と、筒形加熱炉70とを備えてなる。
【0053】
図13に示すように、容器回転型造粒装置10(粒子補充装置20及び転動造粒器11)と、核粒子供給装置60及び筒形加熱炉70の主要部は何れも装置収容ケース101内に収容されている。装置収容ケース101は内部仕切壁102によって上側部屋103と下側部屋104とに仕切られており、下側部屋104に容器回転型造粒装置10と筒形加熱炉70とが収容され、上側部屋103に核粒子供給装置60が収容されている。また、核粒子供給装置60と筒形加熱炉70と回転パン12は鉛直線上に配置されており、粒子補充装置20は回転パン12の斜め上方に配置されている。粒子補充装置20から排出された粒子は、図示しない送給パイプを通って、回転パン12の上方から落下するように構成されている。なお、核粒子供給装置60から供給される「核粒子」(本発明の「第2の粒子」に相当する)と区別するために、粒子補充装置20から供給される粒子(本発明の「第1の粒子」に相当する)を、以下、「子粒子」という。
【0054】
核粒子供給装置60は、造粒物の核となる核粒子群を収容した粒子群収容容器61を備えている。粒子群収容容器61は、粒子補充装置20に備えた粒子群収容容器21と同一構造をなしており、下段のスクリーン壁38に備えた粒子通過孔38Aは、核粒子を1粒ずつ排出可能となっている。粒子群収容容器61は、ブラケット39Aを介して計量装置39から吊り下げられており、核粒子群の排出量が、核粒子供給装置60の重量の減少量として計測されている。なお、本実施形態において、核粒子は、粒子補充装置20から供給される子粒子とは異なる物性を有したものである。
【0055】
核粒子供給装置60の鉛直下方には、筒形加熱炉70が備えられている。筒形加熱炉70は、転動造粒器11に備えたプラズマトーチ15と同様の構成であり、内部仕切壁102から垂下した石英製のプラズマ発生管71と、その外側に設けられた誘導コイル72とを備え、誘導コイル72に高周波電力を印加するための電源73がマッチング回路74を介して接続されている。
【0056】
プラズマ発生管71は上下の両端が開放した円筒状をなし、プラズマ発生管71の上端部には粒子導入管75が接続されている。粒子導入管75は、内部仕切壁102から上側部屋103内に直立して上方に開放している。図14に示すように、粒子導入管75の上端部は漏斗形状をなしており、核粒子供給装置60から下方に排出された核粒子を、上側部屋103に導入されたキャリヤガスと共にプラズマ発生管71内へと導入するように構成されている。
【0057】
また、粒子導入管75には、プラズマ発生管71内にプラズマ発生用ガス(例えば、水素、ヘリウム、窒素、酸素、ネオン、アルゴン及びそれらの混合ガス)を導入するための複数のガス導入管76が設けられている。図14及び図15に示すように、ガス導入管76は、粒子導入管75の側方に開放したガス導入口76Aから、粒子導入管75の内周面の接線方向に延びており、ガス導入管76を通って粒子導入管75に流入したプラズマ生成用ガスが、粒子導入管75の上面開口から導入されるキャリヤガスと共にプラズマ発生管71の下端開口へ向かう旋回流となるように構成されている。なお、本実施形態では、粒子導入管75の上端寄り位置と、下端寄り位置とにそれぞれ1対のガス導入管76,76が設けられており、上側のガス導入管76,76(図14には一方のガス導入管76のみが示されている)には一定流量でプラズマ生成用ガスが供給される。これに対し、下側のガス導入管76,76(図14には一方のガス導入管76のみが示されている)に供給されるプラズマ生成用ガスの流量はガス流量バルブ52によって変更可能となっている。なお、図示されていないが、プラズマ発生管71は二重管構造をなしており、その内外管の間に冷却水或いは冷却用ガスが流されている。
【0058】
この筒形加熱炉70の誘導コイル72に高周波電力が流されると、プラズマ発生管71内のガス(キャリヤガス、プラズマ生成用ガス)がプラズマ状態になり、そのプラズマの芯部を核粒子が降下する過程で核粒子に加熱処理が行われる。具体的には、プラズマの熱により核粒子が溶融する。また、プラズマ中に生成したイオンやラジカルの作用により、核粒子にイオンを注入したり被膜を形成することも可能である。プラズマを通過すると核粒子の温度は下がるが、依然として溶融状態又は高温状態を保ったまま、回転パン12へと供給される。
【0059】
ここで、プラズマ発生管71の下端開口の近傍には、プラズマ中のラジカル量を測定するラジカル測定装置51が配設されており、その測定結果が制御装置50に取り込まれている。制御装置50は、計測されたラジカル量に応じてガス流量バルブ52の開度を変化させて、ラジカル量がほぼ一定になるように、プラズマ発生管71に導入するプラズマ生成用ガスの流量又は供給圧力を調節する。これにより、筒形加熱炉70にて発生するプラズマを一定状態に保持することができる。なお、誘導コイル72に印加するプラズマ発生用の高周波電力を一定の周期でパルス変調させて、そのデューティー比を変化させることでラジカル量を制御してもよい。
【0060】
ここで、筒形加熱炉70におけるプラズマ発生方式は、上述の誘導結合方式(コイル方式)に限定するものではなく、容量結合方式(平行平板型)でもよい。また、マイクロ波、直流電流、グロー放電等を利用して発生させる方式でもよい。さらに、プラズマの熱を利用するものに限定するものではなく、核粒子の少なくとも表層部を溶融状態或いは溶融直前の高温状態として回転パン12に供給可能なものであればよい。例えば、核粒子を可燃性ガスの燃焼炎(ガスバーナー)の中を通過させたり、高温の熱風の中を通過させるようにしてもよい。筒形加熱炉70の熱源や温度は、粒子の材質に応じて適宜設定すればよい。以上が、筒形加熱炉70に関する説明である。以上が造粒システム100の構成に関する説明であって、以下、本実施形態の作用を説明する。
【0061】
回転パン12内には予め所定量の子粒子が収容され、回転パン12の回転により転動しており、その転動状態の子粒子群は、プラズマトーチ15によって加熱(予熱)されている。具体的には、子粒子同士が付着しない(子粒子の表面が溶融しない)程度に加熱されており、溶融状態或いは高温状態の核粒子と接触したときには子粒子が容易に溶融するように、核粒子に対する付着性が予め高められている。
【0062】
核粒子供給装置60から落下した核粒子は、筒形加熱炉70を通過することで少なくとも表層部が溶融した状態又は高温状態で回転パン12内の子粒子群の中に落下する。すると、その核粒子の熱によって周囲の子粒子が溶融され、核粒子の表面に複数の子粒子が固着する。そして、回転パン12の回転に伴う転動により、核粒子の表面全体が複数の子粒子によって覆われた造粒物が製造される。
核粒子の表面全体が複数の子粒子によって覆われると、さらなる子粒子の付着は規制されると共に、その時点で造粒物は所定の粒径以上となり、回転パン12から排出される。なお、核粒子1つに対して付着する(造粒物1つ当たりの)子粒子の量はほぼ一定なので、回転パン12から排出された造粒物の重量から造粒物として排出された子粒子の量を概算することができ、その分の子粒子が粒子補充装置20から補充される。
【0063】
このように本実施形態の造粒システム100によれば、核粒子とその周囲を覆うように固着した子粒子とからなる造粒物が製造され、それら核粒子と子粒子とが溶融固着しているので、粒子間の結合強度を従来のものより向上させることができる。また、核粒子と子粒子の物性を異ならせることで、それら異なる物性を併せ持つ造粒物を製造することができる。また、筒形加熱炉70のプラズマ発生管71中でガスが旋回流となるので、核粒子がプラズマ発生管71の内壁面に付着することが防がれる。
【0064】
[第3実施形態]
この第3実施形態は、核粒子供給装置の構成が、上記第2実施形態と異なる。即ち、一次粒子で構成された核粒子ではなく、複数の核構成粒子を合体してなる核粒子を生成するために、本実施形態の核粒子供給装置は、核構成粒子を供給する複数(本実施形態では2つ)の核構成粒子供給装置80,80と、それら核構成粒子を帯電させるためのイオナイザ85,85(本発明の「強制帯電手段」、「風圧移動手段」に相当する)とを備えている。
【0065】
図16に示すように、2つの核構成粒子供給装置80,80は、装置収容ケース101の上側部屋103内で、粒子導入管75の上面開口の側方に離れた位置に横並びに配置されている。核構成粒子供給装置80は、核構成粒子を収容した粒子群収容容器81を備えている。粒子群収容容器81は、粒子補充装置20に備えた粒子群収容容器21と同一構造をなしており、下段のスクリーン壁38に備えた粒子通過孔38Aは、核構成粒子を1粒ずつ排出可能となっている。また、核構成粒子供給装置80は、計量装置39に載置された支持台39Bによって計量装置39の上方に保持されており、核構成粒子供給装置80からの核構成粒子の排出量は、核構成粒子供給装置80の全体の重量減少量として計測されている。
【0066】
イオナイザ85は、例えば、コロナ放電を利用してガス中の気体分子を電離し、正又は負の気体イオンを生成する。気体イオンの生成方式は、コロナ放電以外に放射線や熱電離を利用した方式があるが、それらの気体イオンの生成原理については公知であるので(JIS B9929:2006「空気中のイオン密度測定方法」を参照)詳細な説明は省略する。
【0067】
イオナイザ85は、生成した気体イオンを含むガスを、装置収容ケース101内に挿入されたノズル85Aから噴射する。図17に示すように、ノズル85Aは、核構成粒子供給装置80から落下する核構成粒子の落下経路の側方に配置されかつ、その落下経路に向けられており、落下途中の核構成粒子の側方から気体イオンを含むガスを吹き付ける。これにより、核構成粒子に気体イオンが付着し、それら核構成粒子が正又は負に帯電する。ここで、イオナイザ85が生成する気体イオンは、筒形加熱炉70のプラズマ中に生成する気体イオンと同じでもよいし、異なっていてもよい。なお、イオナイザ85は、ガスの噴射をオンオフ切り替えできるようになっており、ガスを噴射せずに気体イオンだけを放出することもできる。
【0068】
本実施形態では、一方(図17における左側)の核構成粒子供給装置80から落下する核構成粒子に対しては、イオナイザ85から正の気体イオンを含むガスが吹き付けられ、他方(図17における右側)の核構成粒子供給装置80から供給される核構成粒子に対しては、イオナイザ85から負の気体イオンを含むガスが吹き付けられる。
【0069】
図17に示すように、両イオナイザ85,85のノズル85A,85Aは、2つの核構成粒子供給装置80,80の並び方向で対向しており、両イオナイザ85,85のノズル85A,85Aから噴射されるガスにより、帯電した核構成粒子が、反対極性の核構成粒子に向かって気体搬送される。そして、2つの核構成粒子供給装置80,80の中間位置、即ち、粒子導入管75の上面開口の真上で、互いに反対極性に帯電した核構成粒子同士が合流してそれらが静電吸着し、複数の核構成粒子が合体した核粒子が生成される。この核粒子は、上側部屋103に導入されたキャリヤガスによって筒形加熱炉70へと流入し、筒形加熱炉70を通過する過程で核構成粒子同士が溶融結合する。これにより、回転パン12に到達する前及び、転動造粒器11における造粒工程において、核粒子が複数の核構成粒子に再分裂することが防がれる。なお、筒形加熱炉70を通過する前の核粒子は、反対極性の核構成粒子が1対1で吸着した形態となるようにしてもよいし(図18(A)参照)、一方の核構成粒子1つに対して他方の核構成粒子が複数個吸着した形態となるようにしてもよい(図18(B)〜(D)参照)。図18(D)に示すように、一方の核構成粒子の周囲を複数の他方の核構成粒子で覆った形態として筒形加熱炉70を通過させると、所謂、コアシェル構造(芯部と外殻部とからなる2層構造)の核粒子を生成することが可能となる。なお、これらの形態は、核構成粒子の粒径や核構成粒子に付着する気体イオンの量(帯電量)によって制御することが可能である。
【0070】
本実施形態によれば、核構成粒子に気体イオンを付着させることで核構成粒子同士を帯電させているので、粒子同士の衝突や摩擦によって帯電させた場合にように、核構成粒子が破壊されることがない。そして、核構成粒子の物性を異ならせることで、それら異なる物性を併せ持った核粒子及び造粒物を生成することができる。
【0071】
[第4実施形態]
この第4実施形態は、図19〜図23に示されており、粒子群収容容器の構成を上記第1〜第3実施形態と異ならせたものである。この粒子群収容容器90は、スクリーン壁91を1枚だけ備えている。スクリーン壁91は、図21に示すように、回転軸27Aを中心とした円周上に複数の粒子通過孔91Aを備えた構成をなしており、各粒子通過孔91Aの径は、粒子の粒径の数倍程度の大きさとなっている。
【0072】
また、容器内旋回部材95は、図20に示すように軸心プレート31から集粒羽32が張り出しかつ旋回脚部36が垂下した構造をなしており、集粒羽32が粒子群収容容器90の水平段差壁25の上面に摺接しつつ旋回して、粒子群を小径筒部23に取り込むと共に、旋回脚部36が小径筒部23内で旋回して小径筒部23内の粒子群を撹拌するようになっている。
【0073】
さらに、回転軸27Aの下端部に固定されたスクレーパ40の帯板部42は回転方向の後側に膨らむように「く」の字状に屈曲している。詳細には、帯板部42は、円柱部41の外周面の接線と平行に回転方向の後側に延び、複数の粒子通過孔91A同士を結んで描かれる円(図21の2点鎖線で示された円)との交差部分で屈曲して径方向外側に真っ直ぐ延びている。
【0074】
なお、スクリーン壁91とスクレーパ40の組合せは、これに限るものではなく、例えば、図22に示すように、長短1対の帯板部42,42を備えたスクレーパ40と、それら帯板部42,42が交互に粒子通過孔91Aを横切るように(2つの粒子通過孔91Aから同時に粒子が排出されないように)複数の粒子通過孔91Aを配置したスクリーン壁91との組み合わせでもよい。或いは、図23に示すように、円柱部41の外周面のうち、回転方向の後側にオフセットした位置から小径筒部23の内面に向かって真っ直ぐ延びた帯板部42,42を対にして備えたスクレーパ40と、それら各帯板部42,42がほぼ同時にそれぞれ1つの粒子通過孔91Aを横切るように(2つの粒子通過孔91Aからほぼ同時に粒子が排出されるように)複数の粒子通過孔91Aを配置したスクリーン壁91との組み合わせでもよい。
[他の実施形態]
【0075】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0076】
(1)前記実施形態において、回転パン12内で転動する粒子群にバインダ液を噴霧するバインダ供給装置を備えていてもよい。つまり、バインダ液とプラズマフレームF1とを併用してもよい。
【0077】
(2)前記実施形態において、回転パン12は、円錐筒形状をなしていたが、扁平な円筒構造でもよい。
【0078】
(3)上記第3実施形態では、核構成粒子供給装置80を2つ備えていたが、3つ以上の核構成粒子供給装置80を備えて、3つ以上の異なる核構成粒子が合体した核粒子を生成するようにしてもよい。
【0079】
(4)上記第3実施形態では、2つの核構成粒子供給装置80,80のそれぞれの下方にイオナイザ85,85を配置して、正に帯電した核構成粒子と負に帯電した核構成粒子とを静電吸着させていたが、一方の核構成粒子供給装置80の下方だけにイオナイザ85を設け、他方の核構成粒子供給装置80の下方には、気体イオンを含まないガスを吹き出すノズルを配置してもよい。ここで、仮に、他方の核構成粒子供給装置80から落下した粒子が電気的に中性であっても、一方の核構成粒子供給装置80から落下した粒子が正又は負に帯電していれば、それら粒子同士を静電吸着させることは可能である。これは、電気的に中性な粒子であっても、外部の正電荷に吸引又は負電荷と反発して粒子内で電子が移動(誘電分極)するからである。
【0080】
(5)上記第3実施形態において、核構成粒子供給装置80,80から排出された核構成粒子を、粒子導入管75の上方へと案内する筒状又は樋状の粒子案内部材を設けてもよい。そして、粒子案内部材との接触又は摩擦によって、核構成粒子を帯電させるようにしてもよい。
【0081】
(6)前記第2及び第3実施形態において、筒形加熱炉70を図24に示すように上下2段に備えていてもよい。
【0082】
(7)前記第1〜第3実施形態において、容器内旋回部材30における第1の旋回脚部35を、図25に示すように、散粒羽33側と集粒羽32側とにそれぞれ3つずつ備えていてもよい。
【0083】
(8)上記第2及び第3実施形態では、核粒子の熱によって子粒子が溶融して核粒子の周囲に付着する構成であったが、プラズマフレームF1で予熱された子粒子の熱によって核粒子の表層部が溶融して、それらが溶融固着するように構成してもよい。
【0084】
(9)前記実施形態において、粒子が有機・高分子材料である場合に、プラズマフレームF1による粒子の表面改質(架橋層の形成、反応性官能基の導入、エッチングなど)を促進して、粒子同士の付着性を向上させるために、図26に示すように、回転パン12内で転動する粒子群に各種イオン(例えば、ヘリウムイオン、窒素イオン、酸素イオン)を付与するイオン注入ノズル97を設けてもよい。イオン注入ノズル97は、プラズマトーチ15から離した位置に配置すればよい。
【0085】
(10)イオナイザ以外の公知な帯電処理装置によって、核構成粒子を帯電させてもよい。
【0086】
(11)上記実施形態では、プラズマフレーム中のラジカル量が一定になるようにして、プラズマを一定状態に保持していたが、他のパラメータ(プラズマ中のイオン密度や電子密度)が一定になるように制御して、粒子同士を互いに固着させるために必要なプラズマが一定状態になるようにしてもよい。
【0087】
(12)粒子導入管75の上部に、粒子を結合させるためのイオナイザ85を粒子導入管75の上端開口に向け下方向に取りけて、常時粒子導入管75に静電気イオン風を発生させておき、粒子供給装置80から下方に排出された粒子にガス風圧を付与して、粒子導入管75の静電気イオン風へ移動させ、粒子導入管75への静電気イオン風に静電吸着されるように粒子を直接当て帯電させて、粒子同士を静電吸着させ、粒子導入管75に導いてもよい。
【0088】
(13)上記実施形態において、粒子は、回転パン12の底部寄り位置に供給され、回転パン12の回転によりそれら粒子群が回転パン12内で転動するが、粒子の種類によっては、摩擦係数が小さく粒子が回転パン12の回転数に伴わない場合が有る。その場合は回転パン12の内面粒子接触面に凹凸または段差を設け摩擦力を増しても良い。粒子接触面凹凸、段差の形状(凹のみ、凸のみ、深さ、高さ、大きさ、配列、形状)の度合いは、粒子の特性に合わせ適時調整し、回転パン12の回転数に近くなる様、効率を上げるのが望ましい。
【0089】
(14)上記実施形態では、粒子補充装置20から回転パン12へと補充された粒子量を計量装置39にて計量していたが、予め求めた検量線量に従って粒子の補充量を制御する方法でもよい。
【0090】
(15)上記第3実施形態において、イオナイザ85は、生成した気体イオンを含むガスを、装置収容ケース101内に挿入されたノズル85Aから噴射する構成であったが、ガスを噴射せず気体イオンのみを放出する構成とし、核構成粒子間に働く静電気だけで、全ての核構成粒子供給装置80,80からの核構成粒子を筒形加熱炉70の上面開口の真上又は筒形加熱炉70の上部内側に集めて互いに電気的に付着させるようにしてもよい。
【0091】
(16)上記第1実施形態では、粒子補充装置20は、ブラケット39Aを介して計量装置39から吊り下げられていたが、上記第2実施形態の核構成粒子供給装置80のように、計量装置39に載置された支持台39Bによって計量装置39の上方に保持されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1施形態に係る容器転動型造粒装置の概念図
【図2】粒子補充装置の断面図
【図3】粒子補充装置の拡大断面図
【図4】容器内旋回部材の斜視図
【図5】スクレーパの斜視図
【図6】上段のスクリーン壁の斜視図
【図7】下段のスクリーン壁の断面斜視図
【図8】下段のスクリーン壁の断面図
【図9】上段のスクリーン壁の斜視図
【図10】下段のスクリーン壁の斜視図
【図11】転動造粒器の拡大断面図
【図12】回転容器内におけるプラズマフレームの噴射位置を示した正面図
【図13】第2実施形態に係る造粒システムの概念図
【図14】粒子導入管の断面図
【図15】粒子導入管の平面図
【図16】第3実施形態に係る造粒システムの概念図
【図17】核構成粒子に気体イオンを吹き付けている状態の造粒システムの概念図
【図18】(A)2つの核構成粒子が合体した核粒子の概念図、(B)3つの核構成粒子が合体した核粒子の概念図、(C)5つの核構成粒子が合体した核粒子の概念図、(D)一方の核構成粒子を他方の核構成粒子が覆った核粒子の概念図核粒子の概念図
【図19】第4実施形態に係る粒子群収容容器の断面図
【図20】容器内旋回部材の斜視図
【図21】スクリーン壁及びスクレーパの平面図
【図22】スクリーン壁及びスクレーパの変形例を示した平面図
【図23】スクリーン壁及びスクレーパの変形例を示した平面図
【図24】変形例に係る造粒システムの部分拡大図
【図25】変形例に係る容器内旋回部材を備えた粒子群収容容器の部分断面図
【図26】(A)変形例に係る回転容器の正面図、(B)変形例に係る回転容器の正面図
【符号の説明】
【0093】
10 容器回転型造粒装置
11 転動造粒器
12 回転パン(回転容器)
15 プラズマトーチ
20 粒子補充装置
45 計量装置(排出量計測手段)
50 制御装置(プラズマ制御装置)
51 ラジカル測定装置
60 核粒子供給装置
70 筒形加熱炉
80 核構成粒子供給装置
85 イオナイザ(強制帯電手段、風圧移動手段)
100 造粒システム
F1 プラズマフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開放した円筒形又は円錐形の回転容器を中心軸が重力方向に対して傾斜した状態にしてその中心軸回りに回転駆動すると共に、前記回転容器内に収容した粒子が互いに固着して所定の粒径以上まで成長した場合に、前記回転容器の内面を転動して前記回転容器外へと落下するように前記回転容器の回転速度を設定した容器回転型造粒装置であって、
前記回転容器内の前記粒子に向けてプラズマフレームを噴射して前記粒子同士を互いに固着させるためのプラズマトーチを備えたことを特徴とする容器回転型造粒装置。
【請求項2】
前記プラズマフレームのラジカルを測定するラジカル測定装置と、前記ラジカルが一定の値になるように前記プラズマトーチへのプラズマフレーム生成用ガスの供給量又は供給圧力又はプラズマ発生用電力を調節するプラズマ制御装置とが備えられたことを特徴とする請求項1に記載の容器回転型造粒装置。
【請求項3】
前記プラズマトーチは、前記プラズマフレームの先端が前記回転容器内の前記粒子群の表面に位置するように配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の容器回転型造粒装置。
【請求項4】
前記回転容器からの粒子の排出量を計測する排出量計測手段と、前記排出量計測手段の計測結果に基づき前記回転容器から排出された分の粒子を前記回転容器に補充する粒子補充装置とを備えたことを特徴とする請求項3に記載の容器回転型造粒装置。
【請求項5】
前記プラズマトーチに供給されるプラズマフレーム生成用ガスは窒素であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の容器回転型造粒装置。
【請求項6】
上面が開放した円錐形の回転容器を中心軸が重力方向に対して傾斜した状態にしてその中心軸回りに回転駆動すると共に、前記回転容器内に収容した第1の粒子群の中に核となる第2の粒子が付与され、その第2の粒子の表面に第1の粒子が固着して所定の粒径以上まで成長した場合に、前記回転容器の内面を転動して前記回転容器外へと落下するように前記回転容器の回転速度を設定した容器回転型造粒装置と、
前記回転容器内の前記第1の粒子に向けてプラズマフレームを噴射して前記第1の粒子の第2の粒子に対する付着性を高めるためのプラズマトーチと、
前記回転容器の上方に配置され、前記第2の粒子を前記回転容器に向けて1粒ずつ落下させる核粒子供給装置と、
前記核粒子供給装置と前記回転容器との間に設けられ、前記核粒子供給装置から落下した前記第2の粒子を加熱して前記第1の粒子に対する付着性を高めるための筒形加熱炉とを備えたことを特徴とする造粒システム。
【請求項7】
前記核となる前記第2の粒子は、複数の核構成粒子を合体してなり、
前記核粒子供給装置は、前記筒形加熱炉の上面開口から側方に離れた位置に配置されて、それぞれ前記核構成粒子を1粒ずつ落下させることが可能な複数の核構成粒子供給装置と、
前記核構成粒子供給装置から落下した前記核構成粒子を帯電させるための強制帯電手段と、
前記核構成粒子供給装置から落下した前記核構成粒子に風圧を付与して、全ての核構成粒子供給装置からの前記核構成粒子を前記筒形加熱炉の上面開口の真上又は前記筒形加熱炉の上部内側に集めて互いに電気的に付着させるための風圧移動手段とを備えたことを特徴とする請求項6に記載の造粒システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2009−106852(P2009−106852A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281664(P2007−281664)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(302055139)
【Fターム(参考)】