説明

容器殺菌装置

【課題】電子線照射装置の照射面から電子線を照射する照射区間において、照射面と樹脂製ボトルとの距離を一定に保って搬送する。
【解決手段】回転体14の外周部に円周方向等間隔でグリッパが設けられ、樹脂製ボトル8のネック部を保持して搬送する。回転体14に対してグリッパを回転させる回転手段と、電子線照射装置の照射面12aとの距離を一定に保つ進退動手段を備えている。電子線の照射区間Aで、進退動手段によってグリッパを半径方向に進退動させることにより、樹脂製ボトル8と電子線の照射面12aとの距離を一定に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ式容器搬送装置のグリッパに保持されて回転搬送される容器に、電子線照射装置から電子線を照射して殺菌する容器殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器搬送装置のグリッパに保持されて搬送される容器に、電子線照射装置から電子線を照射して殺菌を行う容器殺菌装置は従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された電子線殺菌装置は、回転体の周囲に円周方向等間隔で複数の容器保持手段(グリッパ)が設けられており、これら各容器保持手段によって容器を保持し、回転体の回転によって容器を回転搬送する。そして、回転体の搬送経路に電子線照射装置が配置されており、前記容器保持手段に保持されて搬送される容器に電子線を照射して殺菌を行うようになっている。
【特許文献1】特開2007−29709号公報(第3−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の電子線殺菌装置では、電子線を照射する電子線照射装置の照射面が、前記特許文献1に記載された発明の構成だけでなく、一般的に平面状になっている。一方、前記のようなロータリ式の容器搬送装置では、容器の搬送経路が円弧状であり、容器の移動に伴って、電子線照射装置の照射面と容器の被照射面との間の距離が変化ししまう。このように、容器の照射面からの距離が変化すると、容器に照射される電子線量が変動して効果的な殺菌が行えず好ましくないという問題があった。
【0004】
また、搬送されて殺菌される容器が、例えば角形の形状をしている場合には、電子線の照射を受ける被照射面の、電子線照射装置の照射面に対する角度が、円弧状の搬送経路を通って移動していく間に、次第に変化していくため、照射効率が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、容器が電子線照射装置の照射面から電子線の照射を受ける照射区間において、容器と照射面との距離を一定に維持することができる容器殺菌装置を提供することを目的とするものである。また、例えば、被照射物が角形の容器の場合には、照射区間において照射面と容器の被照射面との角度を平行な状態に維持することができる容器殺菌装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転体の外周に設けられて容器を保持するグリッパと、前記回転体を回転させる駆動手段と、平面状の照射面を有し、前記グリッパによって保持されて搬送される容器に電子線を照射する電子線照射手段と、前記グリッパを照射面に対して進退動させる進退動手段とを備え、前記照射面から電子線を照射する照射区間における、照射面と前記容器の被照射面との距離をほぼ一定に維持するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に記載した発明は、前記グリッパを回転体に対して回転させる回転手段を設け、前記照射区間に、前記照射面と前記容器の被照射面とが一定の方向で対向するように、前記グリッパを回転させる領域を形成したことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、請求項3に記載した発明は、前記照射区間で、前記グリッパをほぼ180度回転させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器殺菌装置は、電子線照射装置の照射面から電子線の照射を受ける照射区間で、前記照射面と容器の被照射面との距離をほぼ一定に維持するようにしたので、効率よく電子線を照射して殺菌を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
駆動手段によって回転駆動される回転体の外周に設けられたグリッパと、このグリッパを回転体に対して回転させる回転手段と、平面状の照射面を有し、前記グリッパに保持されて搬送される容器に電子線を照射する電子線照射装置とを備えており、前記照射面から容器に対して電子線を照射する照射区間では、照射面と前記容器の被照射面との距離をほぼ一定に維持するようにするという構成により、照射面からの電子線を容器の被照射面に効率よく照射するという目的を達成する。
【実施例1】
【0011】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係る容器殺菌装置の、電子線による殺菌を行う殺菌チャンバーの内部を示す平面図、図2は前記殺菌チャンバー内に設置されたロータリ式容器搬送装置の要部の縦断面図、図3は容器を把持するグリッパの進退動および回転動作を行う駆動機構を示す平面図である。
【0012】
この実施例に係る容器殺菌装置の、殺菌チャンバー2内に設置されている容器搬送装置4のグリッパ6によって保持される容器8は、樹脂製ボトルであり、図2に示すように、ネック部8a(傾斜した肩部8bよりも上方の小径の部分全体をネック部と呼ぶ)の下部寄りにフランジ8cが形成されている。このグリッパ6は、樹脂製ボトル8のネック部8aのフランジ8cよりも上方側を把持し、この容器搬送装置4の上流側と下流側にそれぞれ配置されている入口ホイールおよび出口ホイール(いずれも図示せず)に設けられ、前記グリッパ6との間で樹脂製ボトル8の受け渡しを行う容器保持手段10は、フランジ8cよりも下方側を保持する。なお、この実施例では、横断面がほぼ正方形の角形の樹脂製ボトル8(図1および図3参照)を搬送して殺菌する場合について説明する。但し、角形の樹脂製ボトル8に限るものではなく、通常の丸形ボトルやその他の形状のボトルにも適用できることはいうまでもない。
【0013】
前記殺菌チャンバー2内に搬入される樹脂製ボトル8は、図示しないエア搬送コンベヤによって連続的に搬送され、インフィードスクリュー等によって所定の間隔に切り離されて、前記殺菌チャンバー2の上流側に配置された導入チャンバー内に搬入される。導入チャンバー内には、ロータリ式の供給ホイールが設置され、この供給ホイールの容器保持手段によって保持されて回転搬送され、殺菌チャンバー2内の入口側に配置された入口ホイールに受け渡されて、殺菌チャンバー2内に供給される。殺菌チャンバー2内の入口ホイールは円周方向等間隔で前記容器保持手段10(図2参照)が設けられており、樹脂製ボトル8は、これら容器保持手段10によってフランジ8cの下方側を保持されて搬送される。
【0014】
殺菌チャンバー2内の入口ホイールから、容器搬送装置4に樹脂製ボトル8の受け渡しが行われる。この実施例では、入口ホイールの容器保持手段10によってフランジ8cの下方側を保持されている樹脂製ボトル8は、容器搬送装置4のグリッパ6によってフランジ8cの上部側を保持される。容器搬送装置4のグリッパ6によって保持されて回転搬送される樹脂製ボトル8は、後に説明するように電子線の照射を受けて殺菌された後、殺菌チャンバー2内の、容器搬送装置4の下流側に配置された出口ホイールの容器保持手段10に引き渡されて回転搬送され、殺菌チャンバー2内から排出されて次の工程に送られる。なお、容器搬送装置4以外の図示していない前記搬送経路は、一例であり、その他の構成であっても良いことはいうまでもない。
【0015】
前記殺菌チャンバー2は、樹脂製ボトル8を電子線の照射により殺菌する際に、電子線やX線(制動X線)が外部に漏れないように遮蔽する鉛製壁面から構成されている。殺菌チャンバー2の正面側(図1の上方側)に、電子線照射装置(全体の図示は省略して、電子線を照射する照射窓12だけを示している)が設置されている。電子線照射装置は、周知のように、真空チャンバー内の真空中でフィラメントを加熱して熱電子を発生させ、高電圧によって電子を加速して高速の電子線ビームにしてから、照射窓に取り付けてあるTi等の金属製の窓箔を通して大気中に取り出して、照射面12a(照射窓12の電子線を照射する側の面を照射面と呼ぶことにする)の開口範囲の前方の電子線照射区間A内に位置させた被照射物品(この実施例では樹脂製ボトル8)に電子線を当てて殺菌等の処理を行う。
【0016】
この実施例に係る容器殺菌装置のロータリ式容器搬送装置4は、前記照射面12aの前方の電子線を照射する区間Aにおけるグリッパ6の動作に特徴を有している。このグリッパ6を備えた容器搬送装置4の構成について説明する。回転体14を構成する回転円板16の外周部に円周方向等間隔で前記グリッパ6が設けられている。この回転円板16の外周寄りに、各グリッパ6が取り付けられた水平なロッド18を進退動可能に支持する2箇所のガイドローラ組立体20(図4参照)が配置されている。水平ロッド18は回転体14の放射方向に進退動するので、各ロッド18を支持する2箇所のガイドローラ組立体20、20は、回転体14の中心を通る半径方向の線上に配置されている。
【0017】
ガイドローラ組立体20は、回転円板16の外周に連結された環状プレート22上に配置されており、環状プレート22上の基台24に、回転体14の接線方向を向いた水平ピン26が固定されている。この水平ピン26の両端に、それぞれく字状に折り曲げられた取付板28の下部が直立した状態で固定され、外方に折り曲げられた上部には、それぞれ傾斜した状態のピン30、30が固定され、これら両傾斜ピン30、30の他端にく字状の取付板32が連結されている。これら3本のピン(水平ピン26と2本の傾斜ピン30、30)は、互いに60度の角度をなすように配置され、各ピン26、30、30の外周にボールベアリング(ガイドローラ)34、36、36が嵌着されており、これら3箇所のガイドローラ(水平ガイドローラ34、傾斜ガイドローラ36、36)によって断面が6角形状の進退動ロッド18の下面と上方の傾斜した両側面が支持されて、放射方向に進退動できるようになっている。
【0018】
水平な進退動ロッド18の先端(回転体14の半径方向外方側の端部)に、円筒状のケース38が垂直に取り付けられている。この円筒状ケース38の内部に、ボールベアリング40、40を介して垂直な軸42が回転自在に支持されている。この垂直軸42の下端に、前記グリッパ6が取り付けられている。このグリッパ6の詳細は説明しないが、平行な2枚の板ばね6aの下端に互いに向かい合う保持部を有するグリップ部材6bが取り付けられており、これら一対のグリップ部材6b間に前方側(図2の右側)から樹脂製ボトル8のネック部8aを押し込むと、板ばね6aが外方に拡がり、両グリップ部材6b間に樹脂製ボトル8が挿入される。その後、両板ばね6aの弾性によりグリップ部材6bが復帰して樹脂製ボトル8のネック部8aを把持するようになっている。この実施例では、図示しない入口ホイールに設けられた容器保持部材10が樹脂製ボトル8のネック部8aのフランジ8cより下方側を保持し、前述のグリッパ6が、フランジ8cよりも上方側をグリップする。
【0019】
前記進退動ロッド18の後端部(回転体14の半径方向内方側)の下面側に設けたスプリング取付部18aと、回転円板16の外周に連結された環状プレート22上に固定したスプリング取付部22aとの間に引っ張りバネ44が装着されて、進退動ロッド18を回転体14の半径方向外方側に向けて常時付勢している。また、進退動ロッド18の後端部上面側にカムフォロア46が取り付けられている。前記回転体14の上方に配置された固定側の取付プレート48の下面側外周部に進退動用カム50が取り付けられており、前記進退動ロッド18のカムフォロア46が、前記引っ張りバネ44の付勢力によって押し付けられている。従って、回転体14が回転すると、カムフォロア46が進退動用カム50のカム面50a(図3参照)に沿って移動し、この進退動カム50の形状に応じて水平ロッド18が進退動する。
【0020】
この実施例では、進退動用カム50は、図3に示すように、グリッパ6に保持されて搬送されている角形の樹脂製ボトル8が、電子線照射装置の照射面12aの前方側の電子線照射区間Aを移動している間は、照射面12aとほぼ平行な直線上を移動するような形状のカム面50a(図3参照)を有している。
【0021】
前記垂直な回転軸42の上端に、ピニオンギヤ52が固定されている。また、前記進退動ロッド18の先端に固定されている円筒状ケース38の上端に、水平な支持プレート54が固定されている。この支持プレート54上に支点ピン56が固定され、この支点ピン56にセグメントギヤ58の中間部が回転自在に支持されている。このセグメントギヤ58が前記垂直な回転軸42のピニオンギヤ52に噛み合っている。さらに、セグメントギヤ54の後方側の端部上面にカムフォロア60が取り付けられている。一方、前記固定側の取付プレート48の上面側には回転用カム62が固定されており、前記カムフォロア60の下方側に固定されたスプリング取付部58aと、前記支持プレート54上のスプリング取付部54aとの間に介装された引っ張りバネ64によって、セグメントギヤ58の後端のカムフォロア60が回転用カム62のカム面62a(図3参照)に弾接している。従って、回転体14が回転すると、カムフォロア60が回転用カム62のカム面62aに沿って移動し、この回転用カム62の形状に応じてセグメントギヤ58が回動し、ピニオンギヤ52およびグリッパ6が取り付けられている垂直な回転軸42を回転させる。
【0022】
図1および図3に示すようにこの実施例では、角形の樹脂製ボトル8の殺菌を行うようになっており、電子線照射装置の照射面12aの前方の電子線照射区間Aを樹脂製ボトル8が通過する際の、樹脂製ボトル8の方向を規制するように回転用カム62の形状が設定されている。照射面12aの前方の電子線照射区間Aの、第1の領域Bでは、その樹脂製ボトル8の一つの面が電子線照射装置の照射面12aと平行な状態で搬送されるようにピニオンギヤ52を回転させる。グリッパ6を回転させずに樹脂製ボトル8を搬送すると、照射面12aと角形樹脂製ボトル8の一つの面との相対角度が、傾斜した状態で次第に変化していくが(図3の符号8Aで示す樹脂製ボトル参照)、セグメントギヤ58とピニオンギヤ52および回転カム62等からなる回転手段によってグリッパ6を回転させることにより樹脂製ボトル8の一つの面が照射面12aと平行な状態を維持した状態で搬送することができる。続く第2の領域Cでは、グリッパ6に保持されている樹脂製ボトル8をほぼ180度回転させる。この領域Cでは、回転用カム62が、セグメントギヤ58を大きく回動させてピニオンギヤ52を180度回転させるようなカム形状をしている。そして、最後の第3領域Dでは、樹脂製ボトル8の、前記第1の領域Bで照射面12a側を向いていた面と逆側の面を照射面12aとほぼ平行な状態を維持して搬送するように、回転用カム62の形状を設定している。なお、前記第2の領域Cで樹脂製ボトル8を保持したグリッパを180度回転させるようにしたが、この180度の回転動作を1回だけではなく、2回または3回以上行うようにしても良い。
【0023】
以上の構成に係る容器殺菌装置の作動について説明する。外部から殺菌チャンバー2内に搬入され、入口ホイール(図示せず)の容器保持手段10に保持された樹脂製ボトル8は、容器搬送装置4への受渡位置でグリッパ6に引き渡される。これらグリッパ6は、電子線照射装置の照射面12aの前方に位置する電子線の照射区間Aでは、後に説明するように進退動および回転(自転)等の動作を行うが、照射区間12以外では、一対のグリップ部材6b、6bの、樹脂製ボトル8受け入れ側(図2の右側)を回転体14の半径方向外方側に向けて移動している。グリッパ6が受渡位置に到達すると、前記容器保持手段10によってネック部8aのフランジ8cよりも下方を保持されている樹脂製ボトル8が、両グリップ部材6b、6bの間に押し込まれる。このとき、両グリップ部材6b、6bは、板ばね6a、6aの弾性によって一旦両側に開き、その間に樹脂製ボトル8が挿入された後、復帰してこの樹脂製ボトル8のネック部8aのフランジ8cよりも上方側をグリップする。
【0024】
樹脂製ボトル8を保持したグリッパ6が、回転体14の回転により電子線の照射区間Aに接近すると、ピニオンギヤ52に噛み合っているセグメントギヤ58の後端に取り付けられたカムフォロア60が回転用カム62のカム面62aに係合する。続いて、下端にグリッパ6が取り付けられている垂直な回転軸42が挿通された円筒状ケース38が固定されている水平ロッド18のカムフォロア46が、進退動用カム50のカム面50aに係合する。
【0025】
セグメントギヤ58のカムフォロア60が、回転用カム62上を移動して、電子線照射区間Aの第1の領域Bに入ると、カムフォロア60がカム面62aを移動するにつれてセグメントギヤ58が僅かずつ回動し、ピニオンギヤ52を回転させていくことにより、ピニオンギヤ52が取り付けられている回転軸42の下端に固定されたグリッパ6を回転させ、樹脂製ボトル8の前記照射面12a側を向いている面を照射面12aとほぼ平行な状態を維持したまま移動させる(図3の符号8B、8C、8Dで示す樹脂製ボトル8参照)。
【0026】
グリッパ6がさらに移動して照射区間Aの第2の領域Cに入ると、回転用カム62の形状の変化によりセグメントギヤ58が大きく回動し、ピニオンギヤ52を180度回転させる。この実施例では、セグメントギヤ58の一端から他端までピニオンギヤ52が噛み合って移動すると、ピニオンギヤ52がほぼ180度回転するようになっている。このピニオンギヤ52の回転によって回転軸42の下端のグリッパ6も180度回転し、樹脂製ボトル8の、前記第1の領域Bで照射面12a側を向いていた面を後方側(回転体14の半径方向内方側)に向ける(図3の符号8D、8DE、8E、8EF、8Fで示す樹脂製ボトル8参照)。
【0027】
グリッパ6が照射区間Aの第3の領域Dに入ると、回転用カム62のカム面62aを移動するにつれてセグメントギヤ58が僅かずつ回動し、ピニオンギヤ52を回転させることにより、回転軸42の下端に固定されたグリッパ6を回転させ、樹脂製ボトル8の照射面12a側を向いた面を照射面12aとほぼ平行な状態を維持したまま移動させる(図3の符号8F、8G、8Hで示す樹脂製ボトル8参照)。このように、樹脂製ボトル8が照射面12aの前方を通過する際に、照射面12aと樹脂製ボトル8の被照射面とが一定の方向で対向する領域を形成したことにより、角形の樹脂製ボトル8の場合でも効率的に電子線を照射して殺菌することができる。
【0028】
一方、水平ロッド18の後端に取り付けられたカムフォロア46は、進退動用カム50のカム面50aに係合する。このカム面50aは、電子線の照射区間Aでは照射面12aと平行なほぼ一直線の形状をしているので、水平ロッド18の先端に支持されているグリッパ6がカム形状50aに応じて半径方向内方側に引き込まれ、照射面12aと平行してほぼ直線状に移動する。このようなグリッパ6を進退動させる機構がないと、グリッパ6に保持された樹脂製ボトル8は、回転体14の外周に沿って円弧状の軌跡を描いて移動するので、移動に伴って照射面12aとの距離が変動してしまうため、樹脂製ボトル8に対して均等な電子線の照射を行うことができないが、本実施例では、照射面12aに対して一定の距離を保って樹脂製ボトル8を移動させることができ、照射面12aからの電子線の照射量を均一化することができる。なお、グリッパ6を進退動させる機構は、カム50によるスライド機構に限定されるものではなく、リンク機構を用いた構成等であっても良い。また、電子線の照射を受けた樹脂製ボトル8は、その後容器搬送装置4から排出されるが、樹脂製ボトル8を保持しているグリッパ6が、前記照射区間Aの第2の領域Cで180度回転されているので、樹脂製ボトル8を排出する際には、180度逆回転させてグリッパ6を供給時と同じ方向を向けるようになっている
【実施例2】
【0029】
図5および図6は、第2の実施例に係る容器殺菌装置に設けられた容器搬送装置104の要部を示す縦断面図、およびグリッパ106の斜視図である。図5は前記第1実施例の図2に対応する図であり、グリッパ106の形状と、このグリッパ106を回転させる回転手段(この実施例ではサーボモータ170)の構成が異なっている。その他の部分の構成は同一なので、相違する部分についてだけ説明し、その他の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
第1実施例では、グリッパ6が取り付けられている垂直な回転軸42の上端に固定されたピニオンギヤ52と、このピニオンギヤ52に噛み合うセグメントギヤ58と、セグメントギヤ58を回動させる回転用カム62等によってグリッパ6の回転手段が構成されていたが、この第2実施例では、サーボモータ170によってグリッパ106を回転させるようにしている。回転体14の半径方向に進退動する水平ロッド18の先端に固定されている円筒状ケース38の上端に、ブラケット172を介してサーボモータ170が下向きに取り付けられている。このサーボモータ170の駆動軸170aに駆動ギヤ174が固定されて前記ピニオンギヤ52に噛み合っている。なお、グリッパ106を回転体14の半径方向に進退動させる進退動手段(進退動用カム50、カムフォロア46、スプリング44およびガイドローラ組立体20等からなる)は、前記第1実施例と同一の構成になっている。
【0031】
この実施例のグリッパ106は、図6に示すように、コ字状の枠体の開放部側を下に向けて前記回転軸42に取り付けてある。前記枠体の両脚部106A、106Bの下端に、樹脂製ボトル8のネック部8aを保持する円弧状の保持面106Aa、106Baを有するグリップ部106Ab、106Bbが設けられている。両脚部106A、106Bはバネ性を有しており、両側のグリップ部106Ab、106Bb間に樹脂製ボトル8のネック部8bを押し付けると両グリップ部106Ab、106Bbが外側に開いて、その間に樹脂製ボトル8のネック部8aを挿入することができる。その後、両グリップ部106Ab、106Bbは両脚部106A、106Bの弾性によって復帰して樹脂製ボトル8のネック部8aを保持する。このグリッパ106は、前面側と後面側(両脚部106A、106Bの間の開放している二つの面)とが全く同一の形状をしており、前後のいずれの方向からも樹脂製ボトル8を挿入することができる。
【0032】
この実施例では、グリッパ106を回転(自転)させる回転手段としてサーボモータ170を用いているので、グリッパ106の回転移動(公転)に伴って任意の角度回転させることができ、前記第1実施例と同様に、電子線殺菌装置の照射面12aと、樹脂製ボトル8の被照射面とを一定の方向で対向させた状態にして移動させることができる。つまり、角形の樹脂製ボトル8で有れば、その一つの面を照射面12aと平行な状態のまま移動させることができる。また、前記第1実施例のグリッパ6は、一方向から樹脂製ボトル8を挿入するようになっているので、電子線の照射区間Aで180度回転させて反転させた場合には、樹脂製ボトル8の排出および次の樹脂製ボトル8の保持を行うために、再度反転させて元の状態に戻さなければならないが、この実施例のグリッパ106は、前面側と後面側が同一の構成なので、どちらの面からも樹脂製ボトル8を挿入することができ、180度回転させた場合も再度反転させて元に戻す必要がない。つまり、電子線の照射区間Aの第1の領域B(図3参照)で照射面12aを向いていた樹脂製ボトル8の一方の面を、第2領域Cで反転させて、第3領域Dでは前記面と逆側の面を照射面12a側に向けていた場合でも、反転させて元に戻す必要がなく、そのままの状態で樹脂製ボトル8を排出し、次の樹脂製ボトル8を保持することができる。なお、回転手段としてサーボモータ170を用いたこの実施例でも、前記第1実施例と同様のグリッパ6を用いても良いことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】容器殺菌装置の殺菌チャンバー内(上半分)を示す平面図である。(実施例1)
【図2】前記容器殺菌装置に設けられた容器搬送装置の要部の縦断面図である。
【図3】グリッパを回転させる回転手段および進退動させる進退動手段の駆動部を示す平面図である。
【図4】進退動手段の一部を構成するガイドローラ組立体の縦断面図である。
【図5】第2の実施例に係る容器殺菌装置に設けられた容器搬送装置の要部の縦断面図である。(実施例2)
【図6】第2の実施例のグリッパを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
A 照射区間
6 グリッパ
8 容器(樹脂製ボトル)
12a 照射面
14 回転体
18 進退動手段(進退動ロッド)
50 進退動手段(進退動用カム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の外周に設けられて容器を保持するグリッパと、前記回転体を回転させる駆動手段と、平面状の照射面を有し、前記グリッパによって保持されて搬送される容器に電子線を照射する電子線照射手段と、前記グリッパを照射面に対して進退動させる進退動手段とを備え、
前記照射面から電子線を照射する照射区間における、照射面と前記容器の被照射面との距離をほぼ一定に維持するようにしたことを特徴とする容器殺菌装置。
【請求項2】
前記グリッパを回転体に対して回転させる回転手段を設け、前記照射区間に、前記照射面と前記容器の被照射面とが一定の方向で対向するように、前記グリッパを回転させる領域を形成したことを特徴とする請求項1に記載の容器殺菌装置。
【請求項3】
前記照射区間で、前記グリッパをほぼ180度回転させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の容器殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−132506(P2009−132506A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310413(P2007−310413)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】