説明

容器

【課題】内容物に対する保冷性を備えるとともに、ポリ乳酸樹脂の生分解性を損なうことなく、装飾性を備える容器を提供する。
【解決手段】容器1,41は、充填剤非含有のポリ乳酸樹脂に、該ポリ乳酸樹脂に対して非反応性である超臨界状態の流体を含有させ、該ポリ乳酸樹脂を射出成形してなり、内部に発泡体層2,42を備えるとともに、表面に発泡体層2,42と一体に形成された非発泡体層3,43を備え、発泡体層2,42の気泡4が、射出された該ポリ乳酸樹脂の流動した痕跡を示し、非発泡体層3,43が無色透明であり、非発泡体層3,43を介して透視される気泡4,44からなる装飾を備える。前記流体が二酸化炭素の場合には、気泡4は、0.1〜10mmの範囲で、射出方向の上流側から下流側に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備える。前記流体が窒素の場合には、気泡44が、0.5〜50μmの範囲である平均直径を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂の射出成形品からなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合成樹脂からなる廃棄物による環境に対する負荷を軽減するために、ポリ乳酸樹脂等のように廃棄後、土中等で細菌等の微生物の働きにより分解される生分解性樹脂が提案されている。前記ポリ乳酸樹脂は、例えば射出成形により各種形状を備える成形体とすることができる。
【0003】
従来、前記ポリ乳酸樹脂の射出成形品であって、カップ、トレー等の中空の成形体からなる食品容器として、ポリ乳酸と、充填剤として1〜150nmの平均粒子径の粉体とを含む樹脂組成物の射出成形品であって、全体が中実体からなるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、前記食品容器は、全体が中実体であるために熱伝導性が高いので、収容された飲食物の温度維持が困難であるという不都合がある。
【0005】
また、前記食品容器は、その色が前記粉体の色に支配されることから単色であるので、装飾として単調にならざるを得ない。そこで、食品容器の表面に塗装を施すことにより、装飾性を付与することが考えられる。
【0006】
しかしながら、表面に塗装が施された前記食品容器は、塗装の種類によってはポリ乳酸樹脂の生分解性が妨げられるという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−204143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、内容物に対する保冷性を備えるとともに、ポリ乳酸樹脂の生分解性を損なうことなく、装飾性を備える容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、充填剤非含有のポリ乳酸樹脂に、該ポリ乳酸樹脂に対して非反応性である超臨界状態の流体を含有させ、該ポリ乳酸樹脂を射出成形してなり、内部に発泡体層を備えるとともに、表面に該発泡体層と一体に形成された非発泡体層を備える容器であって、該発泡体層の気泡が、射出された該ポリ乳酸樹脂の流動した痕跡を示し、該非発泡体層が、無色透明であり、該非発泡体層を介して透視される該気泡からなる装飾を備えることを特徴とする。尚、前記「超臨界状態」とは、ガスの種類により定まる温度及び圧力(臨界点)を超えて、気体の拡散性と液体の溶解性とを併せ持つ状態をいう。
【0010】
本発明の容器は、充填剤を含有していないポリ乳酸樹脂に前記超臨界状態の流体が含有され、該ポリ乳酸樹脂がシリンダーから金型に向けて射出成形されることにより形成される。このとき、射出されたポリ乳酸樹脂は、金型により冷却され、金型に接する表面領域から内部へ向かって固化していく。また、金型内部がシリンダー内部よりも低圧であることにより、射出されたポリ乳酸樹脂中の前記超臨界状態の流体は、該ポリ乳酸樹脂が固化していない内部領域で非超臨界状態となって気泡を生じる。この結果、内部に発泡体層を備えるとともに、表面に該発泡体層と一体に形成された非発泡体層を備える容器が形成されることとなる。発泡体層は、互いに独立する気泡と、該気泡を囲む非発泡部とで構成される。
【0011】
したがって、本発明の容器は、内部に発泡体層を備えることにより、従来の中実体からなる容器と比較して熱伝導性が低くなり、内容物の温度を維持するための保冷性を得ることができる。
【0012】
また、射出されたポリ乳酸樹脂中で生じた気泡は、該ポリ乳酸樹脂が表面領域から内部へ向かって固化していくために、該表面領域へ移動することができず、固化していない内部領域で、該ポリ乳酸樹脂の流動に伴って射出方向の上流側から下流側に向かって移動する。そして、前記気泡は、射出されたポリ乳酸樹脂の内部領域の固化に伴って、前記発泡体層を形成するとともに、ポリ乳酸樹脂の流動した痕跡を示すこととなる。
【0013】
また、前記非発泡体層は、ポリ乳酸樹脂が充填剤を含有していないことにより、無色透明に形成される。
【0014】
したがって、本発明の容器は、無色透明である非発泡体層を介して、前記気泡を透視することができ、該気泡により装飾性を得ることができる。
【0015】
また、前記装飾は前記気泡が示す前記痕跡により得られたものであり、生分解性樹脂以外のものを用いて得られたものではないので、本発明の容器は、生分解性を確保することができる。
【0016】
ところで、前記流体が二酸化炭素の場合には、射出された前記ポリ乳酸樹脂中で生じた複数の気泡が一体化して、大きな直径を備える気泡が生じる傾向にある。
【0017】
そこで、本発明の容器は、前記流体が二酸化炭素の場合には、前記気泡が、0.1〜10mmの範囲で、射出方向の上流側から下流側に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備えるものを得ることができる。
【0018】
本発明の容器においては、射出された前記ポリ乳酸樹脂中で生じた複数の気泡が、該ポリ乳酸樹脂の流動に伴って射出方向の上流側から下流側に向かって移動しながら一体化することにより、前記範囲で射出方向の上流側から下流側に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備える気泡が形成される。
【0019】
前記気泡は、前記範囲の平均直径を備えることにより、肉眼で見ることができ、光を乱反射させることがない。この結果、容器全体が透明となる。また、前記気泡は、射出方向の上流側から下流側に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備えることにより、恰も水底から水中に気泡が上昇しているような印象を呈する。
【0020】
したがって、本発明の容器によれば、無色透明な非発泡体層を介して、前記印象を呈する気泡を見ることができ、涼感を備える装飾性を得ることができる。
【0021】
前記流体が二酸化炭素である本発明の容器において、前記気泡が0.1mm未満の平均直径を備える場合には、該気泡を肉眼で見ることができないことができないことがある。また、前記流体が二酸化炭素である本発明の容器において、前記気泡が10mmの平均直径を超える場合には、破泡により該気泡を維持することができないことがある。
【0022】
一方、前記流体が窒素の場合には、射出された前記ポリ乳酸樹脂中で生じた複数の気泡が小さな直径を備える傾向にある。
【0023】
そこで、本発明の容器は、前記流体が窒素の場合には、前記気泡が、0.5〜50μmの範囲である平均直径を備えるものを得ることができる。
【0024】
本発明の容器においては、射出された前記ポリ乳酸樹脂中で生じた複数の気泡が、該ポリ乳酸樹脂の流動に伴って射出方向の上流側から下流側に向かって移動し、前記範囲の平均直径を備える気泡が形成される。
【0025】
前記気泡は、前記範囲の平均直径を備えることにより、肉眼で見ることができず、光を乱反射させる。この結果、本発明の容器全体が白色として認識されることとなる。また、前記気泡は、射出されたポリ乳酸樹脂の射出方向の上流側から下流側に向かって移動することにより、該射出方向に沿って配置される。そして、前記気泡は、光を乱反射させることにより、ポリ乳酸樹脂の射出方向に沿って筋状に白く光って見える痕跡を示す。
【0026】
したがって、本発明の容器によれば、無色透明な非発泡体層を介して、前記筋状に白く光って見える気泡を見ることができ、涼感を備える装飾性を得ることができる。
【0027】
前記流体が窒素である本発明の容器において、前記気泡が0.5μm未満の平均直径を備える場合には、該気泡がポリ乳酸樹脂の射出方向に沿って筋状に白く光って見える痕跡を示さないことがある。また、前記流体が窒素である本発明の容器において、前記気泡が50μmの平均直径を超える場合には、該気泡が肉眼で見ることができる領域に近づき光を乱反射しなくなるために、筋状に白く光って見える気泡を見ることができないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態の食品容器を示す斜視図。
【図2】図1に示す食品容器の断面図。
【図3】図1に示す食品容器の製造に用いられる射出成形装置の説明的断面図。
【図4】第2の実施形態の食品容器を示す斜視図。
【図5】図4に示す食品容器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は第1の実施形態の食品容器を示す斜視図であり、図2は図1に示す食品容器の断面図である。図3は、図1に示す食品容器の製造に用いられる射出成形装置の説明的断面図である。図4は第2の実施形態の食品容器を示す斜視図であり、図5は図4に示す食品容器の断面図である。
【0030】
ポリ乳酸樹脂の射出成形品からなる第1の実施形態の食品容器1は、冷却されたジュース、アイスクリーム等の飲食物を収容するものであり、例えば図1に示すように、椀状の有底筒状体からなる。
【0031】
本実施形態の食品容器1は、充填剤を含有しないポリ乳酸樹脂に、該ポリ乳酸樹脂に対して非反応性である超臨界状態の流体としての二酸化炭素を含有させ、該ポリ乳酸樹脂を射出成形してなる射出成形品であり、図2に示すように、内部に発泡体層2を備えると共に、表面に非発泡体層3を備えている。発泡体層2及び非発泡体層3はいずれもポリ乳酸樹脂からなり、非発泡体層3は、発泡体層2と一体に形成されている。前記非発泡体層3は、非晶質となっている。
【0032】
発泡体層2は、不規則形状の気泡4と、該気泡4を囲む非発泡体部5とからなる。図1に示すように、気泡4は、0.1〜10mmの範囲で、射出方向の上流側から下流側(図1の下から上)に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備えている。
【0033】
本実施形態の食品容器1は、内部に発泡体層2を備えることにより、従来の中実体からなる食品容器と比較して熱伝導性が低くなり、内容物を賞味に適した温度を維持する保冷性を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態の食品容器1において、気泡4が、前記範囲の平均直径を備えることにより、肉眼で見ることができ、光を乱反射させることがない。この結果、食品容器1全体が透明となる。また、気泡4は、射出方向の上流側から下流側に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備えることにより、恰も水底から水中に気泡が上昇しているような印象を呈する。
【0035】
したがって、本実施形態の食品容器1によれば、無色透明な非発泡体層3を介して、前記印象を呈する気泡4を見ることができ、涼感を備える装飾性を得ることができる。
【0036】
また、本実施形態の食品容器1は、発泡体層2及び非発泡体層3がいずれもポリ乳酸樹脂からなるので、使用時には容易に分解されず、廃棄後には容易に生分解されるという効果を奏することができる。また、前記装飾は気泡4が示す前記痕跡により得られたものであって、生分解性樹脂以外のものを用いて得られたものではないので、食品容器1は生分解性を確保することができる。
【0037】
本実施形態の食品容器1は、例えば図3に示す射出成形装置11により製造することができる。射出成形装置11は、ポリ乳酸樹脂を金型12に向けて搬送するシリンダー13と、シリンダー13内に配設された回転軸部14と、回転軸部14を回転駆動するモータ15とを備えている。シリンダー13は、金型12と反対側の端部付近にポリ乳酸樹脂をシリンダー13内に供給するホッパー16を備えると共に、ホッパー16の下流側でシリンダー13の中央部付近に超臨界状態の流体をシリンダー13内に供給する超臨界流体供給部17を備えている。超臨界流体供給部17は超臨界状態の流体を発生させる超臨界流体発生装置18と、超臨界流体発生装置18で発生された超臨界状態の流体をシリンダー13に向けて搬送する流体導管19と、流体導管19の途中に介装された計量装置20とを備える。流体導管19は遮断弁21を介してシリンダー13に接続されている。
【0038】
また、シリンダー13は金型12側の先端にノズル22を備えると共に、外周面に複数の加熱装置23aを備える。ノズル22は、外周面に加熱装置23bを備えると共に、遮断弁24を介して金型12に接続されている。
【0039】
回転軸14は、金型12と反対側の端部でモータ15に接続されると共に、外周面に設けられた螺旋状のスクリュー25と、金型12側の最先端部に設けられたスクリューヘッド26とを備えている。スクリュー25は、モータ15側の端部から、ホッパー16の下部を通って超臨界流体供給部17の下部の手前までの部分に設けられた基端側連続スクリュー25aと、超臨界流体供給部17の下方部分に設けられた不連続スクリュー25bと、スクリューヘッド26と不連続スクリュー27bとの間に設けられた先端側連続スクリュー25cとからなる。不連続スクリュー27bは、回転軸14の周方向に沿って複数の不連続部を備えている。
【0040】
金型12は、食品容器1の外側形状に沿う形状の凹部27を備える固定型12aと、食品容器1の内側形状に沿う形状の凸部28を備える可動型12bとからなり、凹部27と凸部28との間にキャビティ部29が形成される。キャビティ部29は、固定型12aに設けられたスプルー30を介して射出成形装置11のノズル22に接続されている。
【0041】
次に、射出成形装置11を用いて本実施形態の食品容器1を製造する方法について説明する。射出製造装置11では、まず、ホッパー16からシリンダー13内に充填剤非含有のポリ乳酸樹脂を投入する。前記充填剤非含有のポリ乳酸樹脂として、例えば、ユニチカ株式会社製のテラマック(登録商標)TE−2000を挙げることができる。
【0042】
前記ポリ乳酸樹脂は、シリンダー13内で加熱装置23aの加熱下に連続スクリュー25aで攪拌されることにより溶融し、形成された溶融樹脂が金型12方向に搬送される。
【0043】
次に、超臨界流体供給部17から、前記溶融樹脂に、ポリ乳酸樹脂に対して非反応性である超臨界状態の流体としての二酸化炭素が供給される。このとき、超臨界流体供給部17の下方部分には不連続スクリュー25bが設けられているので、前記超臨界状態の二酸化炭素は不連続スクリュー25bにより攪拌され、前記溶融樹脂と十分に混合される。この結果、スクリューヘッド26とノズル22との間のシリンダー13内に、前記溶融樹脂に前記超臨界状態の二酸化炭素が混合されて含浸された単相溶液としてのポリ乳酸樹脂が形成される。但し、前記単相溶液は、発泡のための核が未形成の状態にある。このとき、前記超臨界状態の二酸化炭素の前記ポリ乳酸樹脂に対する含浸量は、例えば0.01〜0.3重量%の範囲とすることができる。
【0044】
次に、前記溶融樹脂に前記超臨界状態の二酸化炭素が含浸されたポリ乳酸樹脂が、ノズル22からスプルー30を介して、金型12のキャビティ部29に射出される。このとき、ノズル22内はシリンダー13内に比較して圧力が降下する領域となっており、この領域を通過する間に前記ポリ乳酸樹脂に発泡のための核が形成される。
【0045】
前記ポリ乳酸樹脂の射出は、例えば、シリンダー温度190〜230℃、射出圧力120MPa、射出速度20mm/秒、キャビティ部29に対する充填時間は3秒、保圧時間12秒とすることができる。
【0046】
また、金型12のキャビティ部29における表面温度は30℃とすることができる。通常、表面が結晶化された射出成形品を得るためには、結晶化の核として作用する充填剤を含有するポリ乳酸樹脂を、表面温度が結晶化温度(110℃)以上のキャビティ部29に射出する必要があり、該ポリ乳酸樹脂に超臨界状態の流体を含浸させた場合であっても、該表面温度を僅かに下げることしかできない。ところが、本実施形態では、射出するポリ乳酸樹脂が充填剤を含まず、表面の非発泡体層3を結晶化させる必要がないため、前記表面温度を30℃と低くすることができ、成形サイクルを短くすることができる。
【0047】
次に、キャビティ部29に射出された前記ポリ乳酸樹脂は、キャビティ部29にその先端部まで充填され、金型12により冷却される。前記冷却時間は、例えば70秒とすることができる。
【0048】
このとき、キャビティ部29に射出された前記ポリ乳酸樹脂は、金型12に接する表面領域から内部へ向かって固化していく。また、キャビティ部29がシリンダー12内部よりも低圧であることにより、射出された前記ポリ乳酸樹脂中の超臨界状態の二酸化炭素は、該ポリ乳酸樹脂が固化していない内部領域で非超臨界状態となって気泡を生じる。
【0049】
前記ポリ乳酸樹脂中で生じた気泡は、該ポリ乳酸樹脂が表面領域から固化していくために、該表面領域へ移動することができず、固化していない内部領域で、該ポリ乳酸樹脂の流動に伴って射出方向の上流側から下流側に向かって移動する。複数の前記気泡は、移動しながら一体化して、0.1〜10mmの範囲で、射出方向の上流側から下流側に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備える気泡4になる。そして、気泡4は、射出された前記ポリ乳酸樹脂の内部領域の固化に伴って、発泡体層2を形成するとともに、前記範囲で射出方向の上流側から下流側に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備えることにより、恰も水底から水中に気泡が上昇しているような印象を呈する。また、前記ポリ乳酸樹脂において射出方向の下流側で生じた気泡は、他の気泡と一体化する前に該ポリ乳酸樹脂が固化した場合には、小さな直径の気泡4となる。
【0050】
また、射出された前記ポリ乳酸樹脂の表面領域には、非発泡体層3が形成され、該ポリ乳酸樹脂が充填剤を含有していないことにより、非発泡体層3は無色透明に形成される。
【0051】
以上により、内部に発泡体層2を備えるとともに、表面に該発泡体層2と一体に形成された非発泡体層3を備え、無色透明な非発泡体層3を介して、前記印象を呈する気泡4を見ることができ、涼感を備える装飾性を備える射出成形品を得ることができる。
【0052】
前記射出成形品は、金型12を開き、脱型することにより、製品としての食品容器1として取り出すことができる。
【0053】
次に、第2の実施形態のポリ乳酸樹脂の射出成形品からなる食品容器41について説明する。食品容器41は、食品容器1と同様に、冷却されたジュース、アイスクリーム等の飲食物を収容するものであり、例えば図4に示すように、椀状の有底筒状体からなる。
【0054】
本実施形態の食品容器41は、充填剤を含有しないポリ乳酸樹脂に、前記超臨界状態の流体としての窒素を含有させ、該ポリ乳酸樹脂を射出成形してなる射出成形品であり、図5に示すように、内部に発泡体層42を備えると共に、表面に非発泡体層43を備えている。発泡体層42及び非発泡体層43はいずれもポリ乳酸樹脂からなり、非発泡体層43は、発泡体層42と一体に形成されている。食品容器41は、食品容器1と同様に、内部に発泡体層42を備えることにより、内容物を賞味に適した温度を維持する保冷性を備えている。
【0055】
発泡体層42は、真球状の気泡44と、該気泡44を囲む非発泡体部45とからなる。図4に示すように、気泡44は、0.5〜50μmの範囲である平均直径を備えている。
【0056】
また、本実施形態の食品容器41において、気泡44が、前記範囲の平均直径を備えることにより、肉眼で見ることができず、光を乱反射させる。この結果、食品容器41全体が白色として認識されることとなる。また、気泡44は、ポリ乳酸樹脂の射出方向に沿って筋状に白く光って見える痕跡を示す。
【0057】
したがって、本実施形態の食品容器41によれば、無色透明な非発泡体層43を介して、前記筋状に光って見える気泡44を見ることができ、涼感を備える装飾性を得ることができる。また、前記装飾は気泡44が示す前記痕跡により得られたものであって、生分解性樹脂以外のものを用いて得られたものではないので、食品容器41は生分解性を確保することができる。
【0058】
本実施形態の食品容器41は、食品容器1と同様に、例えば図3に示す射出成形装置11により製造することができる。このとき、前記ポリ乳酸樹脂の射出条件及び冷却条件は、超臨界状態の流体としての二酸化炭素に代えて窒素を用いる点を除き、食品容器1と同一条件とすることができる。前記超臨界状態の窒素の前記ポリ乳酸樹脂に対する含浸量は、例えば0.01〜0.3重量%の範囲とすることができる。
【0059】
キャビティ部29に射出された前記ポリ乳酸樹脂が金型12により冷却される際、該ポリ乳酸樹脂が金型12に接する表面領域から内部へ向かって固化していくとともに、該ポリ乳酸樹脂中の超臨界状態の窒素は、該ポリ乳酸樹脂が固化していない内部領域で非超臨界状態となって気泡を生じる。
【0060】
前記ポリ乳酸樹脂中で生じた気泡は、該ポリ乳酸樹脂が表面領域から固化していくために、固化していない内部領域で、該ポリ乳酸樹脂の流動に伴って射出方向の上流側から下流側に向かって移動し、0.5〜50μmの範囲である平均直径を備える気泡44になる。そして、気泡44は、射出された前記ポリ乳酸樹脂の射出方向に沿って配置され、該ポリ乳酸樹脂の内部領域の固化に伴って、発泡体層42を形成する。
【0061】
以上により、内部に発泡体層42を備えるとともに、表面に該発泡体層42と一体に形成された非発泡体層43を備える食品容器41を得ることができる。また、食品容器41においては、気泡44が、前記範囲の平均直径を備えることにより、肉眼で見ることができず、光を乱反射させる。この結果、本実施形態の食品容器41全体が白色として認識されることとなる。また、気泡44が、前記ポリ乳酸樹脂の射出方向に沿って配置されていることにより、該ポリ乳酸樹脂の射出方向に沿って筋状に白く光って見える痕跡を示し、本実施形態の食品容器41は、涼感を備える装飾を得ることができる。
【0062】
以上、本実施形態の食品容器1,41として、椀状の有底筒状体からなるものについて説明したが、椀状の有底筒状体に限定されるものではなく、例えば、マグカップのように、有底筒状体に取手を備えるものであってもよい。
【0063】
また、本実施形態では、食品容器1,41について説明したが、容器は食品容器に限定されず、例えば、花瓶等の装飾用容器とすることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…食品容器、 2…発泡体層、 3…非発泡体層、 4…気泡、 41…食品容器、 42…発泡体層、 43…非発泡体層、 44…気泡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填剤非含有のポリ乳酸樹脂に、該ポリ乳酸樹脂に対して非反応性である超臨界状態の流体を含有させ、該ポリ乳酸樹脂を射出成形してなり、内部に発泡体層を備えるとともに、表面に該発泡体層と一体に形成された非発泡体層を備える容器であって、
該発泡体層の気泡が、射出された該ポリ乳酸樹脂の流動した痕跡を示し、
該非発泡体層が、無色透明であり、該非発泡体層を介して透視される該気泡からなる装飾を備えることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記流体が二酸化炭素であり、
前記気泡が、0.1〜10mmの範囲で、射出方向の上流側から下流側に向かうにつれて次第に大きくなる平均直径を備えることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記流体が窒素であり、
前記気泡が、0.5〜50μmの範囲である平均直径を備えることを特徴とする請求項1記載の容器。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−111437(P2010−111437A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236499(P2009−236499)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業委託研究、産業活力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504418028)
【出願人】(396002460)株式会社豊栄工業 (2)
【Fターム(参考)】