説明

容積型機械を振動させるための駆動装置

【課題】 本発明は、偏心軸(2)と複数のm個のピストンロッドとからなり、ピストンロッドは偏心軸の回転がピストンロッドの振動線形運動を生じるように偏心軸に接続された例えばダイヤフラムポンプ等の容積型機械を振動させるための駆動機構に関する。
【解決手段】 上記欠点を取り除くか、少なくとも減少させる、対応する駆動機構を提供するため、本発明によれば、偏心軸とピストンロッドは摺動ブロックガイドによって互いに接続されることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、偏心軸と複数のピストンロッドとからなるダイヤフラムポンプのような容積型機械を振動させるための駆動機構に関するものであり、ピストンロッドは偏心軸の回転がピストンロッドの振動線形運動を生じるように偏心軸に接続される。
【背景技術】
【0002】
振動式動作機械は通常、直線スラスト推力駆動の原理に基づき構築される。パワーレベルが高い場合、或いは機械の基礎に作用する振動質量力を低く抑えようとする場合、このような機械は通常マルチクランク駆動機構の形をとる。その場合、接続部及びピストンロッドを有する個々の偏心装置は、直列形又は対向ボクサー又は放射状星形のいずれかのような相互に並列の関係に配置され、共通のクランク軸によって駆動され、その偏心装置はそれぞれ互いに同一角度で変位する。
【0003】
この構造の欠点は主に次の通りである。
・複数の相互に並列である偏心装置を備えるクランク軸が高い曲げモーメントに晒され、それに対応して頑強な寸法とする必要がある。
・直列構造では特に、殆どの場合において、クランク軸とクランクケーシングとの間の軸受けに高い力が発生するので、軸受けのコストが高くなる。
・完全な質量バランスは6気筒機械の場合にのみ可能である。
・駆動機構全体の構造が大型であるため、重量が大きくなり、また、製造コストが高くなる。
【0004】
このような欠点を克服するため、ピストンロッドが全て1つの平面内に置かれ、等角度で互いに変位する多気筒機械が既に開発されている。このピストンロッドは、クランク軸が対応してより小さい寸法になるように、単一の偏心軸によって駆動される。この構造原理は、次の二つの異なる設計により可能となる。
a)偏心軸とピストンロッドとの間に力による係止接続のある構造で、ピストンロッドが戻しばねによって偏心軸の摺動面に対して押し付けられるもの。
b)偏心軸とピストンロッドとの間に積極的な係止接続を有する構造で、戻しばねを全てのピストンロッドを支持する戻しブレースに代えたもの。
【0005】
いずれの設計構成にも欠点がある。そのため、戻しばねを用いる際は、その力がロッドの力に追加され、構成部品に追加荷重がかかることになる。ばねが過度に弱い特質のものである場合、接続したピストンが嵌り込んだままとなり、吸引行程が実行されないか、完全に実行されなくなる。
【0006】
戻りブレースは代替物として用いられ、全てのピストンロッドを支持するが、特に大型機械では高価な構成部品であり、また、偏心駆動機構全体にとって大きな構造容積を必要とする。
【0007】
特許文献1には、それぞれが油圧ピストンにより起動可能なダイヤフラムを有する複数のダイヤフラムポンプヘッドを持つ多気筒ダイヤフラムポンプについて記載されている。ここで、ポンプの駆動はロッド−偏心装置接続配置によって実施される。接続ロッドはピストン又はピストンロッドと偏心軸との両方に回転可能に連結され、これにより、駆動機構の製造が高価になる。
【0008】
特許文献2には、3つの油圧シリンダーを持つ対応する配置について記載されており、ここでは、ピストンロッドは戻しばねによって偏心面に付勢される。
【0009】
また、特許文献3には、星形状ピストン−シリンダー配置について記載されており、ここでは、軸は放射方向を向くシリンダーによって取り囲まれ、そのシリンダーの中に偏心装置の接続ロッドにより軸に接続された変位可能なピストンが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第8521520号明細書
【特許文献2】米国特許第5368451号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19626938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述された技術水準を基本的出発点として、本発明の目的は、上述された欠点を回避するか又は少なくとも減少させる対応する駆動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、この目的は、偏心軸とピストンロッドとを摺動ユニットガイドを介して接続することで達成される。摺動ユニットガイドは、スロット、陸部又は溝を有する摺動ユニットと、該摺動ユニットによって積極的に案内される対応する構成の摺動ブロックとからなる。
【発明の効果】
【0013】
摺動ユニットガイドを利用することにより、接続ロッドをなくすことが可能になり、これにより駆動機構のコストを抑えることが出来、また、計量シリンダーに案内されるピストンを接続ロッドを必要とせず偏心軸に直接連結出来るため、例えば、このような駆動機構を備えたダイヤフラムポンプを小さくすることが出来る。
【0014】
好適な実施形態では、全てのピストンロッドを1つの平面に置き、特にピストンロッドを星形状構成に配置することが好ましい。本出願における星形状構成とは、ピストンロッドを偏心軸の周囲方向に互いに等しい間隔をあけて配置することを意味する。言い換えると、隣接するピストンロッドがそれぞれ偏心軸に垂直な面への投射において同じ角度を含む。
【0015】
別の好適な実施形態では、摺動ユニットガイドは、偏心軸とピストンロッドが空間内の第1の方向と、好ましくはそれに対し垂直に配置された空間内の第2の方向に対して積極的な係止関係で接続され、空間内の第1及び第2の方向に対して垂直に配置された空間内の第3の方向に相対移動が可能な構成である。
【0016】
例えば、摺動ユニットはT字状溝の形にすることが出来、摺動ブロックは適切に調和のとれた摺動ブロックの形にすることが出来る。この点において、摺動ユニットはピストンロッド上に配置するのが好ましく、摺動ブロックは偏心軸に固定するのが好ましいことが明らかとなっている。
【0017】
例として、偏心軸は、摺動ユニットまたは摺動ブロックを有する摺動要素に(例えば回転可能に)接続することが出来、摺動ユニット又は摺動ブロックは、n個の角をもつ正多角形の境界面にある。
【0018】
この点について、nはmの整数倍であることが好ましい。n=mであることが最も好ましい。
【0019】
摺動ユニットは硬化鋼製が好ましいことが更に明らかとなっている。摺動ブロックは銅合金、好ましくは青銅から構成され、摺動ユニット内で出来るだけ低摩擦で摺動ブロックが移動出来るようにすることが好ましい。
【0020】
本発明に係るマルチピストン駆動機構は、本明細書の開始部に記載する欠点を取り除き、即ち、圧力工程と吸引行程の両方のピストン力が偏心軸に回転可能に接続された偏心摺動ユニットにより直接個々のピストンロッドに伝達されるため、例えば高価な戻しロッド又は接続ロッド等の追加構成部品がなくなり、それによって駆動機構全体の構造的大きさを大幅に縮小することが出来る。
【0021】
更なる利点、特徴および可能な利用法は、以下の好適な実施形態の記載および下記の関連する図から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に係る偏心摺動ユニット駆動機構の第1の実施形態の断面図を示す。
【図2】図2は、図1の図に垂直なさらなる断面図を示す。
【図3】図3a〜図3cは、本発明に係る駆動機構の3つの変形例を示す。
【図4】図4a及び図4bは、ピストンロッドと摺動要素との間の接続の各種実施形態を示す。
【図5】図5a及び図5bは、ピストンロッドと摺動要素との間の接続の各種実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2に示す実施形態では、駆動機構は3気筒機械を駆動する役割を果たす。そのため、この駆動機構は、1つの平面内にあり、互いに対して120度変位して配置された3本のピストンロッド1を有する。偏心軸2は、偏心摺動ユニットに回転可能且つ移動可能に接続される。偏心軸が軸12の周囲を回転すると、偏心摺動ユニットの中心位置11が、参照番号13で示す円上を移動する。言い換えると、偏心摺動ユニットは並進円運動を行う。摺動要素6は三角形状が好ましく、摺動又は溝ブロックは三角形の三辺に配置され、三辺は摺動面8を有する。ピストンロッド1は、摺動ユニットとして作用する、対応する摺動シュー5を有する。特に図1から判るように、摺動シュー5は摺動要素6の摺動ブロックを支持し、摺動ブロックの摺動面8が摺動ユニットの摺動面7に対向するようにする。そのため、摺動要素6の摺動ブロックは積極的な係止関係で摺動シュー5によって支持される。軸2の回転により、摺動シュー5は摺動ブロックの摺動面8に沿って摺動する。この構造によれば、偏心軸によってピストンロッド1に付加される横力が殆んどなくなる。
【0024】
駆動機構の非常にコンパクトな構造が明確に示されている。
【0025】
図3aから図3cは、本発明の3つの異なる実施形態を示す。図3aは2気筒駆動を示す。従って、この駆動機構は2本しかピストンロッド1を持たない。摺動要素6′はここでは矩形状であり、摺動面を備え、且つピストンロッド1の摺動シュー5に支持される、対応する摺動ブロックは矩形の対向する2辺にのみ配置される。軸の回転により、摺動要素6′の中心位置11は円13に沿って移動する。
【0026】
図3bは図1及び図2により既に示したシリンダー3本の実施形態である。
【0027】
図3cは、4気筒駆動を示す。摺動要素6″は、図3aの実施形態の摺動要素6′に類似だが、この場合、四角形状の摺動要素6″の四辺全てに摺動面11を持つ対応する摺動ブロックが配置され、これら摺動面11は4本のピストンロッド1のうちの1つの摺動シュー5によりそれぞれ支持される。
【0028】
図4及び図5は摺動シュー5の特殊な実施形態を示す。
【0029】
図4a及び図4bは、摺動ユニットガイドの拡大図を示す。ピストンロッド1はその端部に、制約爪14と共に摺動シューを形成する圧力プレート5′を有する。制約爪14は、ねじによって圧力プレート5′に固定される。図4aに示す実施形態では、制約爪14は圧力プレート5′の端面でねじ止めされる。
【0030】
図4bに示す実施形態では、制約爪14はU字形状の構成となっており、摺動ブロックと圧力プレート5′を両方支持するようになっている。固定のために、制約爪14は後ろから、即ち摺動ブロックから遠い側面から圧力プレート5′にねじ止めされる。
【0031】
図5a及び図5bは、制約爪14が圧力プレート5′の周辺に延びる縁にねじ止めされる実施形態を示す。図5bの実施形態では、両制約爪5′はボルト及び適切な取り付けねじ15によって接続される。
【符号の説明】
【0032】
1 ピストンロッド
2 偏心軸
5 摺動シュー
5′ 摺動シュー圧力板
6、6′、6″ 摺動要素
7 摺動ユニットの摺動面
8 摺動ブロックの摺動面
10 円
11 摺動要素の中心位置
12 偏心軸の軸線
13 円
15 制約爪
15 ボルト/取り付けねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心軸(2)と複数のm個のピストンロッドとからなり、該ピストンロッドは前記偏心軸の回転が前記ピストンロッドの振動線形運動を生じるように前記偏心軸に接続された例えばダイヤフラムポンプ等の容積型機械を振動させるための駆動機構において、
前記偏心軸と前記ピストンロッドが摺動ユニットガイドによって接続されることを特徴とする駆動機構。
【請求項2】
前記ピストンロッドの全てが1つの平面に配設されることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構。
【請求項3】
前記ピストンロッドが星形状構成に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動機構。
【請求項4】
前記偏心軸と前記ピストンロッドが、空間内の第1の方向と好ましくはそれに対して垂直に配置された空間内の第2の方向に対して積極的な係止関係で接続され、空間内の第1および第2の方向に対して垂直に配置された空間内の第3の方向に相対移動が可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の駆動機構。
【請求項5】
前記摺動ユニットガイドがT字状溝/溝ブロック接続の形に構成され、好ましくは、前記ピストンロッドがT字状溝を有し、前記溝ブロックが前記偏心軸に固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の駆動機構。
【請求項6】
前記偏心軸がT字状溝又は溝ブロックを有する摺動要素を有し、該T字状溝又は溝ブロックがn個の角をもつ正多角形の縁にあることを特徴とする請求項5に記載の駆動機構。
【請求項7】
nはmの整数倍であり、好ましくは、n=mであることを特徴とする請求項6に記載の駆動機構。
【請求項8】
前記T字状溝が硬化鋼製であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の駆動機構。
【請求項9】
前記溝ブロックが銅合金、好ましくは青銅から構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の駆動機構。
【請求項10】
前記T字状溝は圧力プレートと該圧力プレートに固定された制約爪とから形成されることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の駆動機構。
【請求項11】
前記制約爪は、ボルト又は取り付けねじによって前記ピストンロッドの前記圧力プレートに接続され、前記制約爪は好ましくは前記圧力プレートに回転可能且つ移動可能に接続されることを特徴とする請求項10に記載の駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a)】
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【図4b)】
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【図5a)】
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【図5b)】
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【公表番号】特表2013−501881(P2013−501881A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524199(P2012−524199)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061303
【国際公開番号】WO2011/018393
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(506282506)プロミネント ドジールテヒニク ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】