説明

容積型流体機械

【課題】内周面と摺接部およびガイドと第1ベーンおよび第2ベーンの側部摺接面との摺動抵抗を軽減して、容積型流体機械の入力効率と耐久性の向上を図る。
【解決手段】ロータ2の径方向へ摺動自在に配置される第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに作用する遠心力によって発生する内周面11と摺接部31a,31b,31c,31d、との過剰な摺接圧力と、第1ベーンおよび第2ベーンに作用する作動流体の圧力によって発生するロータの回転向きと逆向きのモーメントとを、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bの牽引力によって打ち消す方向の付勢力を付与して内周面と摺接部およびガイド21a,21b,21c,21dと第1ベーンおよび第2ベーンの側部摺接面との摺動抵抗が緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気または油などの流体を取り扱うロータ自転型の容積型流体機械であって、シリンダ内周面とベーン先端摺接部およびベーンガイドとベーンの側面とに発生するこれら摺接部の摺動に伴うエネルギー損失と磨耗を抑制しようとするものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐久性を向上させたベーン式バキュームポンプとして、ポンプ室の中心軸に対して中心軸を偏心させて配設されるロータの回転駆動に伴って、該ロータの直径方向に移動可能なベーンを円形に形成されるポンプ室の内周面に有し、ベーンがロータ2の直径方向に沿って一方側と他方側とに突出するように配置される2つのベーンが内周面に対して常に摺接可能とされ、少なくとも一方のベーンがロータ2に直接支持され、ガイド部材を配設せずに構成できるため、ガイド部材の端部がポンプ室の内周面と接触することもなく、従来のポンプに比して耐久性を向上させることができ、さらに、内周面を円形としていることから、例えば、内周面を楕円形とする場合に比してポンプ室の製造が容易となると共にベーンの端部を摺動させる内周面が滑らかとなるためベーンの耐摩耗性を向上させることができ、ポンプの耐久性を向上させることができる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−257357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の図2にみられる形態において、ロータによって逆時計回りに回転駆動され、膨張行程にある作動室に臨むベーンの右側側面には負圧が作用している。この負圧は、ベーンに時計回りのモーメントを与える。このモーメントは、ロータに形成されるベーン溝の右側摺接面とベーンの右側摺接面とに過剰な押圧力を発生させている。(ここでいう過剰な押圧力とは、作動室の摺動部が流体のシールを維持するのに必要とされる押圧力を超える無用な力をいう。)このため、必要以上に大きな力で摺動部が押し付けられながら摺動している状態となっている。
【0005】
一方、圧縮行程にある作動室に臨むベーンの左側側面には圧縮された流体の圧力が作用している。この圧力はベーンに時計回りのモーメントを与える。このモーメントは、ベーン溝の右側摺接面とベーンの右側摺接面とに過剰な押圧力を発生させている。このため、ベーンにはさらなる大きなモーメントが作用し、過剰な押圧力を及ぼしている。そして、該、図にみられる形態において、ベーン摺接面はベーン溝の一部によって、この大きなモーメントを支持しながら摺動しており、ベーン溝の右側摺接面とベーンの右側摺接面は過剰な力で押圧されながら摺動している。
【0006】
また、入れ子式のこれらのベーンは、ロータが回転駆動される速度に従う遠心力によって、内周面とベーン先端部とで形成される作動室のシールに必要とされる押圧力が賄われている。自動車のブレーキブースタ等に使用されるベーン式バキュームポンプは、通常、カムシャフトに連結されロータの回転速度はエンジンの回転速度に比例する。したがって、エンジンアイドリング時においても作動室に十分な負圧を発生させるのに必要な摺接力、すなわち遠心力が得られるようにベーンの質量が設定されている。このためエンジンが通常の回転速度(高速)で運転される状態におけるそれぞれのベーンには過剰な遠心力、すなわち過剰な押圧力が発生している。
【0007】
さらに、ポンプ室を円形に形成することにより内周面の加工精度の向上及び製造コストの軽減が実現されるものの、ベーン本体とベーン本体間の摺動が増加すると共に、ベーン本体部の(18・・・凹部)とベーン本体の(20b・・・元部)との間に形成される圧力室によって、圧縮と膨張が繰り返される作動流体によるエネルギーの浪費と、これらの作動流体によってベーン本体のスムーズな出没動作が妨げられベーンジャンピングの発生によるポンプ効率の低下等に伴う入力損失および上記摺動部の早期摩耗などが懸念される。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、シリンダ内周面とベーン先端摺接面およびベーンガイド摺接面とベーン側面摺接面との摺動抵抗の軽減を図り、入力効率と耐久性を高めようとする容積型流体機械の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく、本発明の容積型流体機械は、略円形の内周面11を有し吸入口12と吐出口13を配設したシリンダ1と、前記シリンダ1の内周面11内の偏心した位置で回転するロータ2と、前記ロータ2内にロータ2の径方向へ往復摺動可能に収容されたベーン3を備え、回転するロータ2の周面から前記ベーン3の一端及び他端が突出してシリンダ1の内周面11内を複数の作動室R1,R2,R3に区画するものであって、以下(1)〜(7)の特徴を備える。
【0010】
(1)上記容積型流体機械において、前記ベーン3は、シリンダ1の内周面11への摺接部31a,31b,31c,31dを有したプレート状の第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bを、それぞれ前記一端及び他端側に備え、これら第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bはそれぞれ、ロータ2内に備えた第1弾性材4A、第2弾性材4Bによって、各ベーンの前記プレート側面を該側面からずらした方向に弾性支持され、ロータ2の停止時には、前記第1弾性材4A、第2弾性材4Bがそれぞれ第1ベーン3A及び第2ベーン3Bをロータ2の径内方に引き寄せることで前記摺接部31a,31b,31c,31dをシリンダ1の内周面11から離間させ、ロータ2の回転時には、前記第1弾性材4A、第2弾性材4Bがそれぞれ、シリンダ1の内周面11に摺接した第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bをロータ2の径内方に引き戻す方向、およびベーン3によって区画される作動室R1,R2,R3間の圧力差に基づく第1ベーン3A及び第2ベーン3Bへのモーメントを打ち消す方向の付勢力を付与することを特徴とする。
【0011】
上記(1)の発明によれば、ベーン3の先端は、ロータ停止時には内周面から離間しており、ロータ回転の始動後、回転によって生じた遠心力により内周面に接触する。このため始動時のロータの回転トルクが小さくてすみ、余分なエネルギーの消費を防ぐことができる。また第1、第2弾性材は、第1ベーン3A、第2ベーン3Bの各プレート側面を該側面からずらした方向に弾性支持することで、第1、第2ベーン3A,3Bのそれぞれをロータ2の径内方に引き戻して摺接部31a,31b,31c,31dの内周面11への過剰な摺接力を抑制することができる。また、隣接する作動室(R1,R2,R3)間の圧力差に基づくモーメントを打ち消し、圧力差によって生じる第1、第2ベーン3A,3Bの各側面とロータ2との接触部に発生する過剰な摺接圧力を抑制して、前記接触部における摺動抵抗および磨耗を抑制することができる。
【0012】
(2)上記(1)記載の容積型流体機械において、前記第1ベーン3A及び第2ベーン3Bはそれぞれ、先端側の摺接部31a,31b,31c,31dと基端側の対向部33b,33cとを有し、前記摺接部31a,31b,31c,31dを有する先端側が、前記対向部33b,33cを有する基端側よりも大きい質量に形成されることが好ましい。
【0013】
第1ベーン3A及び第2ベーン3Bを、ロータ2から突出する先端部寄りに偏質量形成することで、第1ベーン3A、第2ベーン3Bそれぞれに係る遠心力の作用を効率的に作用させ、ロータ2の回転数に応じてベーン3と内周面への接触圧をより大きくすることで、隣接する作動室間の機密性を高めることができる。
【0014】
(3)上記(1)または(2)記載の容積型流体機械において、ベーン3の形状として、前記第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bはそれぞれ、プレート状部の先端側に、少なくとも一方のプレート側面へ側方膨出した摺接部31a,31dが形成されてなり、前記摺接部31a,31d同士が離間しかつ膨出方向のプレート内側面同士が対向するように、第1ベーン3Aと第2ベーン3Bが重ね合わせて配置され、前記各プレート内側面が相互にロータ2の径方向へ往復摺動可能に構成されることが好ましい。
【0015】
上記(3)の発明によれば、第1ベーン3A、第2ベーン3B同士を往復摺動可能に組み合わせて構成することで、摺接部31a,31b,31c,31dのロータ2からの突出入機構の機械的安定性、耐久性に優れた構造となる。
【0016】
(4)上記(3)記載の容積型流体機械において、ロータ2は中空部を有し、第1弾性材4A及び第2弾性材4Bは、前記ロータ2の中空部内に対向配設された牽引バネからなると共に、牽引バネの各一端が、第1ベーン3A、第2ベーン3Bの側面に各々形成された2つの係止部34a,34Bにそれぞれ係止され、牽引バネの各他端が、ロータ2内に形成された2つの係止部24a,24Bにそれぞれ係止されることが好ましい。
【0017】
上記(4)の発明によれば、第1弾性材4A及び第2弾性材4Bとして、係止孔と固定部へ両端固定する牽引バネを使用することで、簡易な機構によって弾性支持構造を得ると共に、バネの伸長角度や伸長度の加減により容易に弾性反力の作用方向や大きさを調整することができる。特に他端側へ重心偏向させたコイルばねを使用することで、コイル部分自体にロータ2の径外方へ向かう遠心力が作用し、回転速度に応じたバネ反力を第1弾性材及び第2弾性材4Bに効率的に付加することができる。
【0018】
(5)上記(4)記載の容積型流体機械において、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bには、プレート状部の各々を厚さ方向に貫通する長孔35a,35bが形成されると共に、重ね合わされて対向するプレート内側面であってこの長孔35a,35bの先側に係止部34B,34aが各々形成され、ロータ2内には、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの重ね合わされたプレート状部外方であって前記長孔35a,35bの先側に係止部24B,24aが各々形成され、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bは、牽引バネの各一端が、前記長孔35b,35aをそれぞれ挿通してその先側にある前記係止部34B,34aにそれぞれ係止されると共に、牽引バネの各他端が、ロータ2内の前記係止部24a,24Bにそれぞれ係止されることで、ベーン3の往復摺動方向に対し傾斜して配置されることが好ましい。これは後述の第1実施例のベーン付勢形態に相当する。
【0019】
上記(5)の発明によれば、第1弾性材4A、第2弾性材4Bの各一端を他のベーン3B,3Aへ対向する一のベーン3A,3Bの内側面に設け、他のベーン3B,3Aの貫通孔35内を挿通して係止接続することで、牽引弾性力の作用が対向するベーン3A,3Bのプレート状部同士を引き寄せるように作用することで、ベーン3全体の挙動が安定する。またベーンの往復摺動方向に対して斜め方向に配置しているため、直交させて配置する場合と比べて第1弾性材4A、第2弾性材4Bの距離が増加し、大きな牽引力を得ることが可能となる。
【0020】
(6)或いは上記(4)記載の容積型流体機械において、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bには、重ね合わされたプレート状部の各外側面に係止部34a,34Bが各々形成され、ロータ2内には、第1ベーン3A及び第2ベーン3Bの重ね合わされたプレート状部外方であって前記係止部34a,34bよりもずれた位置に係止部24a,24bが各々形成され、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bは、牽引バネの各一端が、重ね合わされたプレート状部の各外側面の前記係止部34a,34bにそれぞれ係止されると共に、牽引バネの各他端が、ロータ2内の前記係止部24a,24bにそれぞれ係止されることで、ベーン3の往復摺動方向に対し傾斜して配置されることが好ましい。これは後述の第2実施例のベーン付勢形態に相当する。
【0021】
上記(6)の発明によれば、第1弾性材4A、第2弾性材4Bの各一端を、互いに離反方向を向く第1ベーン3A、第2ベーン3Bそれぞれの外側面に係止接続することで、牽引弾性力の作用が対向するベーン3A、3Bのプレート状部同士を斜めに引き離すように作用することで、ベーン3への牽引弾性力を第1ベーン3A、第2ベーン3Bそれぞれの突出量に応じて作用させることができる。また第1弾性材4A、第2弾性材4Bをそれぞれ斜めに配置することで、第1ベーン3A、第2ベーン3Bに対して直交させて配置する場合と比べて第1弾性材4A、第2弾性材4Bの距離が増加し、大きな牽引力を得ることが可能となる。
【0022】
(7)或いは上記(4)記載の容積型流体機械において、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bには、プレート状部の各々を厚さ方向に貫通する長孔38a,38bが形成されると共に、重ね合わされて対向するプレート内側面であってこの長孔38a,38bの先側に係止部34B,34aが各々形成され、前記長孔38b,38aに断面略L字状の支持部材39a,39bが挿通され、各支持部材39a,39bの挿通された一端部が、プレート内側面の前記係止部34a,34Bにそれぞれ挿入固定され、ロータ2内には、第1ベーン3A及び第2ベーン3Bの重ね合わされたプレート状部外方であって前記各支持部材39a,39bの他端部側に係止部24a,24Bが各々形成され、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bは、牽引バネの各一端が、前記各支持部材39a,39bの他端部にそれぞれ係止されると共に、牽引バネの各他端が、ロータ2内の前記係止部24a,24Bにそれぞれ係止されることで、ベーン3の往復摺動方向に対して並行配置されることが好ましい。これは後述の第3実施例のベーン付勢形態に相当する。
【0023】
上記(7)の発明によれば、第1弾性材4A、第2弾性材4Bの牽引弾性力がベーン3全体の往復摺動方向と並行して作用することで、ロータ2から突出した第1、第2ベーン3A,3Bを引き戻すように安定して作用する。また第1弾性材4A、第2弾性材4Bを断面略L字状の支持部材39a,39bを介して配置することで、第1、第2ベーン3A,3Bをプレート側面方向により大きな力で付勢することができる。
【発明の効果】
【0024】
上記発明によれば、ロータ2の回転に伴う遠心力の大きさにしたがって第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに備える摺接部31a,31b,31c,31dはシリンダ内周面11に離間、摺接する。これにより、ロータ2の始動トルクは軽減される。さらに、ロータ2の回転時には、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに作用する遠心力の大きさと、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの内周面11側への突出量に干渉されることなく、シリンダ内周面11と摺接部31a,31b,31c,31dとの摺接圧力が常に良好な状態に保たれるため、作動室からの流体漏洩と、ベーンチャタリングの発生を抑制してポンプ効率を高め、かつ、ベーン軸からずらした位置に配置される第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bによって牽引される第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの側部摺接面とベーンガイドであるガイド21a,21b,21c,21dとの摺動抵抗が軽減され、これら摺動部の磨耗とエネルギー損失が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施例の容積型流体機械Pの軸縦断面図。
【図2】第1実施例の容積型流体機械Pの斜視図。
【図3】第1実施例の容積型流体機械Pの分解斜視図。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図。
【図6】図5の状態からロータが45°回動した始動状態における第1実施例の容積型流体機械Pの軸横断面図。
【図7】図5の状態からロータが90°回動した運転状態における第1実施例の容積型流体機械Pの軸横断面図。
【図8】第2実施例の容積型流体機械Pのベーン及び弾性支持材の分解斜視図。
【図9】第2実施例の容積型流体機械Pのロータ停止状態における軸横断面図。
【図10】図9の状態からロータが90°回動した始動状態における第2実施例の容積型流体機械Pの軸横断面図。
【図11】図9の状態からロータが90°回動した運転状態における容積型流体機械Pの軸横断面図。
【図12】図9の状態からロータが360°回動した運転状態における容積型流体機械Pの軸横断面図。
【図13】第3実施例の容積型流体装置Pの低速運転状態における軸横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の容積型流体機械Pを、複数の実施例により図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施例において、先の実施例と後の実施例とで実質的に同一の部材、或いは実質的に同一の部分があるときには、互いに同一の符号を用い後の実施例において詳細な説明は省略することとする。
【0027】
「第1実施例の構成」
図1〜図7は本発明の第1実施例を示し、例えば燃料電池のセルに空気を供給するコンプレッサーや冷媒ガス等の圧縮性流体を圧縮する場合に用いられる容積型流体機械Pを示すもので、シリンダ1には吸入口12および吐出口13が配置される。吸入口12には吸入口12と連通する吸入溝12aが形成され、吐出口13内には逆止弁16が配置される。そして、シリンダ1の前方側面を塞ぐようにシリンダ1と一体にフロンとプレート14が形成され、シリンダ1の後方にはリアプレート15がボルト19により固着される。
【0028】
フロントプレート14およびリアプレート15の偏心位置にそれぞれ嵌合されるベアリング17a,17bを介して、ロータ2と一体に形成される駆動軸20の前方端部の内周部に、図示しないエンジン或いはモータの出力軸を連結される例えばスプラインなどのカップリング22を備え、図2,図3および図5にみられるように中空構造のロータ2の一部を径方向へ切り欠くように形成され、ベーン3を摺動自在に支持するガイド21a,21b,21c,21dを備えるロータ2と一体構造の駆動軸20の両端部をベアリング17a,17bに嵌合され回転自在に支持される。このようにロータ2を中空に形成したことにより軽量化されたロータ2の回転に伴う慣性質量が軽減され、原動機始動時の回転慣性負荷が低減され、原動機の小型化および容積型流体機械の軽量化が図られると共に、後述する支持部材39a,39b或いは、第一弾性材4Aおよび第二弾性材4Bを収容するスペースが確保される。
【0029】
図5にみられる形態において、ベーン3は、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bとで構成され、それぞれ矩形のプレレートからなりシリンダ内周面11に先端側を摺接させてロータ2の回転位相に応じて第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3に区画する。図5の下方に示す拡大図にみられるように、第1ベーン3Aは、基端部に第1作動室R1側に向く傾斜面からなる対向部33cを有し、先端側に第3作動室R3側に向く傾斜面からなる対向部33aを備え、先端部に円弧状の摺接面31a,31bが形成されている。そして、第2ベーン3Bは、基端部に第2作動室R2側に向く傾斜面からなる対向部33bを有し、先端側に第2作動室R2側に向く傾斜面からなる対向部33dを備え、先端部に円弧状の摺接部31c,31dが形成される。これらの第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bは互いに対向させ左右対称に重ね合せて配置される。対抗部33aと対向部33b及び対向部33cと対向部33dとで形成される断面略V字状の溝開口部をロータ2の回転方向前方を開口部として配置される。そして、これら対向部33a,33b,33c,33dによって形成される断面略V字状の溝底部がロータ2の回転停止時には、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに遠心力が発生しておらず互いに牽引力が均衡する第一弾性材4Aおよび第二弾性材4Bの牽引力によりロー2の粗中心に引き寄せられ互いに当接部として機能する。これにより、図4に仮想線で示すようにベーン3のロータ2の中心を通る径方向、すなわち長手方向寸法は最縮小化され、図5にみられように内周面11と摺接部31a,31b,1c31dとの間には隙間D1,D2が形成される。
【0030】
図1および図5〜図7にみられるように、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの基端部寄りの部分にはそれぞれ中空部32が形成される。これにより第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの先端部側に重心が偏りこれらの第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの先端側に確実にロータ2の径外方に向く遠心力を発生させる共に、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの軽量化が実現される。
【0031】
さらに、このように軽量化された第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bによれば、後述するロータ2の回転に伴ってガイド21a,21b,21c,21d内を径方向へ往復摺動する第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに作用する往復運動慣性が軽減されジャンピングやチャタリングが抑制されるため、ロータ2のより高速運転が可能となり、第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3の仕事量が増加し容積型流体機械Pの小型軽量化が実現される。
【0032】
図2〜図7にみられるように第1弾性材4A(本実施例ではコイル牽引バネが採用されている)は、その一端部を第2ベーン4Bの表面から裏面に向け穿孔され径方向を長円とする楕円形の長孔からなる貫通孔35bに挿通され第一ベーン4Aに形成される係止孔34aに挿入固定される。図5〜図7にみられるようにロータ2の回転方向後方から前方に向けて斜めに配置され、他方の端部をロータ2の周部から内部に向けて穿孔される係止孔24に挿入固定される。因みに、ロータ側係止孔24a,24Bは穴あけ加工後適宜材料により塞栓される。
【0033】
一方第2弾性材4Bは、その一端部を第1ベーン4Aの表面から裏面に向けて穿孔される径方向を長円とする楕円形の長孔からなる貫通孔35に挿通され第2ベーンBに形成される係止孔34Bに挿入固定され、ロータ2の回転方向後方から前方に向けて斜めに配置され、他方の端部をロータ2の周部から内部に向けて穿孔される係止孔24Bに挿入固定される。このように重ね合わせて配置される第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bのそれぞれは内側面を互いに摺接させながら所定距離の移動が許容されると共に重ね合わせて配置されるこれらの第1ベーン3A,第2ベーン3Bのそれぞれ手前側のベーンを貫通し先側のベーンに第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bのベーン側係止部を係止孔34a,34Bにそれぞれ固定される。これにより後述する第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3に作用する流体圧力および第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bの牽引力を互いに同時に2枚の第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bを牽引され、第1ベーン3A或いは第2ベーン3Bいずれか1枚のベーンを牽引される構成に比べ、ベーン3に作用する作動流体の圧力及び内周面11と摺接部31a,31b,1c31dに発生する摺動抵抗 による曲げ応力に対する強度が粗倍増する。さらに、図7の形態において第1作動室に臨む第2ベーン3Bに第2弾性材4Bの第2ベーン3B側係止部がロータ2の周部より外側に位置しており、第2ベーン3Bに最も大きな流体反力が作用する時、より応力の作用点に近まる位置を第2弾性材4Bによって第2ベーン3Bは牽引されている。これにより該図にみられるような形態を辿り作用するそれぞれの作動行程において、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bへの曲げ応力は軽減される。
【0034】
図4に示すものは、図1のA−A線に沿う断面図で、ロータ2と一体に形成されるリブプレート18である。このリブプレート18は、例えば特許文献1にみられるようにベーン式バキュームポンプの軽量化と製造コストの削減を図るためロータの支持軸および支持部材を入力軸側にのみ配置される、所謂、片持式の片側支持構造に比べ、重量とコストは嵩むものの容積型流体機械Pの鋼性を高めるため両支持形に形成したものであり、図1にみられるベアリング17a、17bにより回転自在に支持される駆動軸20を備え、ロータ2と一体に形成されるリブプレート18は、図1〜図4にみられる開口部23はロータ2の内部空間に配置される第1、第2弾性材4A,4Bの着脱を実施する際の作業用の窓である。また、このリブプレート18をロータ2に着脱可能に構成することにより第1弾性材4A,第2弾性材4Bの着脱作業がさらに容易となる。
【0035】
「第1実施例の作用」
次に、以上のように構成される第1実施例の容積型流体機械Pの作用を説明する。図5にロータ2が停止した状態を示す。この状態では、第1ベーン4Aおよび第2ベーン4Bは弾性材4A及び弾性材4Bによってロータ2の中心部およびガイド21bと21dに向く方向にそれぞれ引き寄せられ、対向部33a,33b,33c,33dによって形成される断面略V字状の溝底部がそれぞれ当接しベーン3のロータ2の径方向寸法は最縮小化されると共に第1弾性材4Aと第2弾性材4Bが互いにロータ2の径内方引き合う力が均衡され第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bはロータ2の中央寄りに位置している。これにより内周面11と摺接部31a,31b,31c,31dの間に隙間D1,D2が形成され、第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3は区画されず連通状態にある。
【0036】
そして、この隙間D1,D2は、ロータ2の回転に伴う遠心力の大きさにしたがって拡大縮小する、ロータ2の始動初期における第1ベーン4Aおよび第2ベーン4Bに作用する遠心力の大きさよりも、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bによって第1ベーン4Aおよび第2ベーン4Bをロータ2の中心に向けて引き寄せる牽引力がそれぞれ上回るように設定されており内周面11と摺接部33a,33bとの隙間D1,D2は確保されており、内周面11と摺接部33a,33b,33c,33dとの間に摺動抵抗は発生せず容積型流体機械Pの起動に伴うトルクを軽減できると共に、ロータ2の始動初期における作動室R1,R2,R3は、ポンプ作用を果たさないため第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bへの流体反力による負荷は小さい。したがって容積型流体機械の起動トルクを軽減でき原動機の小型化が実現される。
【0037】
尚、第1実施例における容積型流体機械Pの潤滑手段について述べていないが第1実施例の容積型流体機械Pを構成する各摺動部材を自己潤滑性材料により構成されているものとし、それぞれの摺動部は油膜によって潤滑およびシールがなされているため、潤滑油(液体による)の攪拌抵抗は発生していないものとする。
【0038】
図6にみられる形態において、例えば、図示しない電動モータの出力軸を、図1および図3にみられるカップリング26に連結されロータ2が所定の回転数で駆動され、図5の状態から駆動軸20を時計回りに45°回転させた状態を示し、第1ベーン4Aおよび第2ベーン4Bにそれぞれ遠心力が作用しガイド21a,21b,21c,21dに支持されてロータ2の径外方に突出し、摺接部31a,31b,31c,31dが内周面11に摺接しており第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3はそれぞれ区画され、ロータ2の回転に伴って、それぞれの第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3は、その容積を拡縮する。
【0039】
ここで、以降明細書の簡潔化を図るため、本発明の容積型流体機械Pを構成する各部位、部材に作用する力の向きと大きさを次のような記号で表すこととする。
第1ベーン3Aに作用する小さな遠心力・・(Asc)
第1ベーン3Aに作用する大きな遠心力・・(Alc)
第2ベーン3Bに作用する小さな遠心力・・(Bsc)
第2ベーン3Bに作用する大きな遠心力・・(Blc)
第1ベーン3Aに作用するロータ2の回転向きの小さなモーメント・・(Apsm)
第1ベーン3Aに作用するロータ2の回転向きの大きなモーメント・・(Aplm)
第1ベーン3Aに作用するロータ2の回転向きと逆向きの小さなモーメント・・(Amsm)
第1ベーン3Aに作用するロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント・・(Amlm)
第2ベーン3Bに作用するロータ2の回転向きの小さなモーメント・・(Bpsm)
第2ベーン3Bに作用するロータ2の回転向きの大きなモーメント・・(Bplm)
第2ベーン3Bに作用するロータ2の回転向きと逆向きの小さなモーメント・・(Bmsm)
第2ベーン3Bに作用するロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント・・(Bmlm)
摺接部31aに作用する低い正圧力・・(31alpp)
摺接部31aに作用する高い正圧力・・(31ahpp)
摺接部31aに作用する低い負圧力・・(31almp)
摺接部31aに作用する高い負圧力・・(31ahmp)
摺接部31bに作用する低い正圧力・・(31blpp)
摺接部31bに作用する高い正圧力・・(31bhpp)
摺接部31bに作用する低い負圧力・・(31blmp)
摺接部31bに作用する高い負圧力・・(31bhmp)
摺接部31cに作用する低い正圧力・・(31clpp)
摺接部31cに作用する高い正圧力・・(31chpp)
摺接部31cに作用する低い負圧力・・(31clmp)
摺接部31cに作用する高い負圧力・・(31chmp)
摺接部31dに作用する低い正圧力・・(31dlpp)
摺接部31dに作用する高い正圧力・・(31dhpp)
摺接部31dに作用する低い負圧力・・(31dlmp)
摺接部31dに作用する高い負圧力・・(31dhmp)
第1弾性材4Aの小さな牽引力・・(Ast)
第1弾性材4Aの大きな牽引力・・(Alt)
第2弾性材4Bの小さな牽引力・・(Bst)
第2弾性材4Bの大きな牽引力・・(Blt)
第1弾性材4Aの牽引力が第1ベーン3Aに作用する小さなモーメント・・(Atsm)
第1弾性材4Aの牽引力が第1ベーン3Aに作用する大きなモーメント・・(Atlm)
第2弾性材4Bの牽引力が第2ベーン3Bに作用する小さなモーメント・・(Btsm)
第2弾性材4Bの牽引力が第2ベーン3Bに作用する大きなモーメント・・(Btlm)
対向部33aに作用する低い正圧力・・(33alpp)
対向部33aに作用する高い正圧力・・(33ahpp)
対向部33aに作用する低い負圧力・・(33almp)
対向部33aに作用する高い負圧力・・(33ahmp)
対向部33bに作用する低い正圧力・・(33blpp)
対向部33bに作用する高い正圧力・・(33bhpp)
対向部33bに作用する低い負圧力・・(33blmp)
対向部33bに作用する高い負圧力・・(33bhmp)
対向部33cに作用する低い正圧力・・(33clpp)
対向部33cに作用する高い正圧力・・(33chpp)
対向部33cに作用する低い負圧力・・(33clmp)
対向部33cに作用する高い負圧力・・(33chmp)
対向部33dに作用する低い正圧力・・(33dlpp)
対向部33dに作用する高い正圧力・・(33dhpp)
対向部33dに作用する低い負圧力・・(33dlmp)
対向部33dに作用する高い負圧力・・(33dhmp)
第1弾性材4Aに作用する小さな遠心力・・(eAsc)
第1弾性材4Aに作用する大きな遠心力・・(eAlc)
第2弾性材4Bに作用する小さな遠心力・・(eBsc)
第2弾性材4Bに作用する大きな遠心力・・(eBlc)
【0040】
図6にみられるように、粗最縮小しつつある第1弾性材4Aの小さな牽引力(Ast)によって第1ベーン3Aはロータ2の径内方に向け付勢されている。そして、圧縮行程の初期にあり低い正圧となっている第2作動室R2に晒されている対向部33aに作用する低い正圧力(33blpp)は第1ベーン3Aをロータ2の径内方に向けて付勢している。第1ベーン3Aをロータ2の内方に向けて付勢する、これら(Ast),(33blpp)の合成付勢力を質量が大きい先端側を内周面11側に小さく突出させた第1ベーン3Aに作用する小さな遠心力(Asc)によって、第1ベーン3Aをロータ2の径外方に向かわせている。圧縮行程の終期にある正高圧が作用している第3作動室R3に晒されている対向部33aに第1ベーン3Aをロータ2の外方に向けて押圧する(33ahpp)が作用している。第2ベーン3Bをロータ2の外方へ向けて付勢するこれら(Asc),(33ahpp)の合成付勢力が上回り第1ベーン3Aはロータ2の径外方へ向けて付勢され、摺接部31c,31dを内周面11に摺接させる第1ベーン3Aによって第1作動室R1と第2作動室R2とに区画され、これら第1作動室R1,第2作動室R2はロータ2の回転に伴ってその容積を拡縮する。
【0041】
このようにして摺接部31a,31bを内周面11に摺接させる接触圧は、第1ベーン3Aの質量に比例して第1ベーン3Aに発生する遠心力の大きさ、つまり第1ベーン3Aがロータ2の外方に向かう力の大きさと、第1ベーン3Aをロータ2の内方に引き戻そうとする第1弾性材4Aの牽引力の差によって内周面11に摺接部31a,31bが摺接する押圧力が定まる。このため第1ベーン3Aの偏心質量と第1弾性材4Aの牽引力の大きさが好適に設定され、内周面11に対して摺動する摺接部31a,31bによる過不足のない接触圧力によって、第1作動室R1と第2作動室R2のシール性が確保され圧縮効率が高まると共に、これらの内周面11および摺接部31a,31bの摺動抵抗と磨耗が軽減される。
【0042】
図6の形態にみられるように、第2作動室R2側に晒されている第1ベーン3Aの側面には圧縮行程の初期にあり低い正圧力が作用しており、第1ベーン3Aにはロータ2の回転向きの小さなモーメント(Apsm)が作用している。一方第3作動室R3側に晒されている第1ベーン3Aの側面には圧縮行程の終期にあり高い正圧力が作用しており第1ベーン3Aにはロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント(Amlm)が作用している。この(Amlm)が(Apsm)を上回り、第1ベーン3Aの第2作動室R2側側面をガイド21aに押し付けようとしている。
【0043】
これに対して第1弾性材4Aは大きな牽引力(Alt)を作用させている。この(Alt)は第1ベーン3Aをロータ2の径内方に向けて引き寄せようとする力の成分と、第1ベーン3Aの基端部側および第2ベーン3Bの先端側をガイド21d側に引き付けようとする力の成分を発生している。これにより第2ベーン3Bに作用している最も大きな遠心力(Blc)を適度に減衰させて摺接部31c,31dが内周面11に過剰な押圧力で摺接するのを回避すると共に、上記(Bmsm),(31clmp),(Bmlm),(31dhpp)の合成付勢力によって第2ベーン3Bの第1作動室R1側の側面をガイド21cに強く押し付けられる大きな付勢力を緩和して第2ベーン3Bの第1作動室R1側の側面とガイド21cとの摺動面の摺動抵抗を軽減して、これら摺動面の磨耗とエネルギーの浪費が抑制される。
【0044】
図6にみられるように、粗最伸張しつつある第2弾性材4Bの大きな牽引力(Blt)によって第2ベーン3Bはロータ2の内方に向け付勢されている。そして、圧縮行程の初期にある低正圧となっている第2作動室R2に晒されている対向部33dに作用する(33dlpp)は第2ベーン3Bをロータ2の内方に向けて付勢している。第2ベーン3Bをロータ2の内方に向けて付勢する、これら(Blt),(33dlpp)の合成付勢力を、質量が大きい先端側を内周面11側に大きく突出させている第2ベーン3Bに作用する大きな遠心力(Blc)によって、第2ベーン3Bをロータ2の径外方に向かわせている。そして吸入行程の初期にあり低い負圧が作用している第1作動室R1に晒されている第2ベーン3Bをロータ2の外方へ向かわせる低い負圧力が摺接部31cに(31clmp)が作用している。さらに、圧縮行程の終期にあり正高圧が作用している第3作動室R3に晒されている対向部33bに(33bhpp)が作用しており、第2ベーン3Bをロータ2の径外方に向けて付勢している。第2ベーン3Bをロータ2の径外方へ向けて付勢するこれら(Blc),(31clmp),(33dhpp)の合成付勢力が上回り第2ベーン3Bはロータ2の径外方へ向けて付勢され、摺接部31c,31dを内周面11に摺接させる第2ベーン3Bによって第一作動室1Rと第2作動室R2とに区画され、これら第1作動室R1,第2作動室R2はロータ2の回転に伴ってその容積を拡縮する。
【0045】
そして、摺接部31c,31dを内周面11に摺動させる接触圧は、第2ベーン3Bの質量に比例して第2ベーン3Bに発生する遠心力の大きさにしたがって第2ベーン3Bがロータ2の径外方に向かう力の大きさと、第2ベーン3Bをロータ2の径内方に引き戻そうとする第2弾性材4Bの牽引力の差によって内周面11に摺接部31c,31dが摺接する圧接力が定まる。このため第2ベーン3Bの偏心質量と第2弾性材の牽引力の大きさが好適に選定され、内周面11に対する摺接部31c,31dによる過不足のない接触圧力を得ることが可能になり、この行程における第1作動室R1および第2作動室R2のシール性を確保しながら、かつ摺動抵抗の軽減が図られる。
【0046】
図7にみられるように、吸入行程の中期にあり低い負圧が作用している第1作動室R1側に最突出させ流体が作用する面積も最大となっている側面を第1作動室R1に晒されている第2ベーン3Bの側面にはロータ2の回転向きと逆向きの大きいモーメント(Bmlm)が作用している。さらに吸入行程の中期にあり低い負圧が作用している第1作動室R1に晒されている摺接部31cにも低い負圧が作用しており第2ベーン3Bにロータ2の回転向きと逆向きの小さなモーメント(Bmsm)を発生している。一方、圧縮行程の中期にあり正圧となっている第2作動室R2側に最突出させ、流体が作用する面積も最大となっている第2作動室R2に晒されている第1ベーン3Aは、その突出量が最大となっており第2作動室R2内の流体の圧力が作用する面積は最大となっている。このため第2作動室R2に晒されている第1ベーン3Aの側面にロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント(Amlm)が作用している。この(Amlm)は、第1ベーン3Aの第1作動室R1側側面を介して第2ベーン3Bの第2作動室3B側側面に伝達され、第2ベーン3Bにロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント(Bmlm)を作用させている。
【0047】
さらに圧縮行程の中期にあり正圧となっている第2作動室R2に晒されている摺接部31dは、ロータ2の中心からの距離を最大に位置させた状態で正圧が作用しており、第2ベーン3Bにロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント(Bmlm)を発生している。これら(Bmlm),(Bmsm),(Bmlm),(Bmlm)の合成付勢力は、第2ベーン3Bの第1作動室R1側の側面を、ガイド21cに強く押し付けられ大きな摺動抵抗を発生させようとしている。
【0048】
これに対して第2弾性材4Bは、図7にみられるように、第2ベーン3Bの重心を偏らせるため中実に形成される先端側がロータ2の中心からの距離が最大となっている。この状態において第2ベーン3Bに作用する最も大きな遠心力に抗して最伸張し、最も大きな牽引力(eBlc)を発生している。
【0049】
この(eBlc)は、第2ベーン3Bをロータ2の中心に向けて引き寄せようとする力の成分と、第1ベーン3Aの基端部側および第2ベーン3Bの先端側をガイド21d側に引き付けようとする力の成分を発生している。これにより第2ベーン3Bに作用する最も大きな遠心力を適度に減衰させて摺接部31c,31dが内周面11に過剰な押圧力で摺接するのを回避すると共に、上記合成付勢力(Bmlm),(Bmsm),(Bmlm),(Bmlm)によって第2ベーン3Bの第1作動室R1側の側面をガイド21cに強く押し付けられる大きな付勢力と、上記(eBlc)の第1ベーン3Aの基端部側及び第2ベーン3Bの先端側をガイド21d側に引き付けようとする力の成分とが打ち消し合われ、第2ベーン3Bの第1作動室R1側の摺動面とガイド21cとの摺動面の摺動抵抗を軽減してこれら摺動面の磨耗とエネルギーの浪費が抑制される。
【0050】
また、上記説明は、例えば、主として燃料電池のセルに空気を供給するコンプレッサーとして使用される場合に、回転数が粗一定の電動モータでロータ2を回転駆動される状況を想定して説明したが、例えば自動車のエンジンに連結されて容積型流体機械Pを冷媒ガス圧縮機として用いられる場合に、ロータ2の回転数は、自動車への負荷の変動或いは出力の増減に伴って大きく変動する。このためエンジンの回転速度にしたがうロータ2の回転数に、第1ベーン3A,第2ベーン3B及び第1弾性材4A,第2弾性材4Bに作用する遠心力も比例する。このようにロータ2の回転数の変動が激しい環境で使用される場合の容積型流体機械Pは、次のような機能を有する。
【0051】
図6にみられる形態において、第1ベーン3Aによって区画され、圧縮行程の初期にある第2作動室R2に晒されている摺接部31bには低い正圧力(31blpp)が作用している。そして圧縮行程の終期にある第3作動室R3に晒されている摺接部31aには高い正圧力(31ahpp)が作用している。これらの(31blpp),31ahpp)合成圧力は第1ベーン3Aをロータ2の径内方に向けて押圧し、内周面11から摺接部31a,31bを離間させ、第1ベーン3Aにチャタリングを発生させようとしている。
【0052】
これに対して圧縮行程の終期にある第3作動室R3に晒されている対向部33aには高い正圧力(33ahpp)が作用している。さらに、圧縮行程の初期にある第2作動室R2に晒されている対向部33cには低い正圧力(33clpp)が作用しており、第1ベーン3Aを内周面11に向けて押圧するこれら(33ahpp),(33clpp)の合成圧力は第1ベーン3Aを内周面11に向けて押圧している。
【0053】
そしてこの(31blpp),31ahpp)が作用する受圧面積よりも(33ahpp),(33clpp)が作用する受圧面積が大きく形成されており、第1ベーン3Aは内周面11に向く押圧力が大きく上回り摺接部31a,31bは内周面11に向けて過剰に押し付けられようとしている。この過剰な押圧力を緩和するように第1ベーン3Aをロータ2の径内方に引き戻す第1弾性材4Aが配置される傾斜角と牽引力を最適に設定される。
【0054】
これにより第1ベーン3Aのチャタリングが防止されると共に、内周面11と摺接部31a,31bとの摺動抵抗は低減され、作動室R2,R3のシール性は確保されると共に入力効率と圧縮効率も高まる。
【0055】
図6にみられる形態において、第2ベーン3Bによって区画され、吸入行程にある第1作動室R1に晒されている摺接部31cには低い負圧力(31clmp)と、圧縮行程の初期にある第2作動室R2に晒されている対向部33dには低い正圧力(33dlpp)および圧縮行程の終期にある第3作動室R3に晒されている対向部33bには高い正圧力(33bhpp)が作用している。これら(31clmp),(33dlpp),(33bhpp)の合成圧力は第2ベーン3Bを内周面11に向けて強く押圧している。
【0056】
これに対して圧縮行程の初期にある第2作動室R2に晒されている摺接部31dには低い正圧力(31dlpp)が作用し、第2ベーン3Bをロータ2の径内方に向けて弱く押圧している。このため、第2ベーン3Bは内周面11に向く押圧力が大きく上回り摺接部31c,31dは内周面11に向けて過剰に押し付けられようとしている。この過剰な押圧力を緩和するように第2ベーン3Bをロータ2の径内方に引き戻す第2弾性材4Bの配置される傾斜角と牽引力を最適に設定される。これにより、内周面11と摺接部31c,31dとの摺動抵抗は低減され、作動室R1,R2のシール性は確保され、入力効率と圧縮効率を高める。
【0057】
図6にみられる形態において、圧縮行程の終期にある第3作動室R3に晒されている摺接部31aには高い正圧力(31ahpp)が作用している。そして圧縮行程の初期にある第二作動室R2に晒されている摺接部31bには低い正圧(33blpp)が作用している。そして、圧縮行程の初期にある第二作動室R2に晒されている摺接部31dにも低い正圧(33dlpp)が作用している。これら(31ahpp),(33blpp),(33dlpp)の圧力は、内周面11から摺接部31a,31b,31dを離間させ、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bにチャタリングを発生させようとしている。
【0058】
これに対して、吸入行程にある第1作動室R1に晒されている摺接部31cには低い負圧(31clmp)が作用している。さらに、圧縮行程の終期にある第3作動室R3に晒されている対向部33a,33bには高い正圧(33ahpp),(33bhpp)が作用している。そして、圧縮行程の初期にある第二作動室R2に晒されている対向部33c,33dには低い正圧(33clpp),(33dlpp)が作用している。これらの(31clmp),(33ahpp),(33bhpp),(33clpp),(33dlpp)は内周面11に摺接部31a,31b,31c,31dを押し付けている。これにより、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bのチャタリング発生は回避され、容積型流体機械Pの圧縮効率を高めると共に、第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3の圧力変化に対応して常に内周面11と摺接部31a,31b,31c,31dとの摺接圧力は良好に維持され、内周面11および摺接部31a,31b,31c,31dの摺動抵抗と磨耗が抑制される。
【0059】
図6にみられるように、ロータ2の回転時には離間する対向部33aと33bおよび33cと33dとで形成される断面略V字状の開口部はロータ2の回転方向前方に開口し、ロータ2の回転に伴う摺動部によって発生し、作動室R1,R2,R3内に飛散する磨耗粉等の集容部として機能する。そして、前記傾斜面に付着した磨耗粉の殆どはロータ2の回転に伴う遠心力によって流体と共に吐出口へと排出される。また、遠心力が働き難い比重の小さい磨耗粉は、ロータ2の回転停止直前に第1弾性材4A及び第2弾性材4Bの牽引力によりロータ2の中心に向けて引き寄せられる第1ベーン3Aおよび第ベーン3Bの移動に伴って当接する前記断面略V字状の傾斜面により挟み込み、作動室R1,R2,R3側へ押し出され、容積型流体機械Pの起動時に流体と共に機外へ排出される。
【0060】
図7にみられるように第1ベーン3Aは質量が大きい先端側をロータ2に最收没され第1ベーン3Aの重心とロータ2の中心軸線Cとの距離は最も小さくなっている。したがって第1ベーン3Aに作用する遠心力も最小となっている。この状態における第1弾性材4Aも最収縮しており、第1ベーン3Aをロータ2の内方に引き寄せる牽引力も最小となっている。このようにしてロータ2の中心線Cと第1ベーン3Aの重心位置の距離に連動して第1弾性材4Aの牽引力は増減し自律的に制御され、内周面11と摺接部31a,31bとの摺接圧力はロータ2の回転速度が設定された回転数域のとき良好な状態に保持されるものであるが、ロータ2が低速で回転駆動される場合に内周面11と摺接部31a,31bとの摺接圧力が良好な状態となるように設定されると、ロータ2が高速で回転駆動される場合に第1ベーン3Aの遠心力、すなわち第1ベーン3Aの内周面11に向く付勢力が増大するのに対し、第1弾性材4Aを内周面11の径内方に向かわせる牽引力は増大せず、内周面11と摺接部31a,31bとの摺接圧力が過大となり、これらの内周面11と摺接部31a,31bとの摺動抵抗が増加し入力効率を低下させる。この問題を改善するため第1弾性材4Aに、より大きな遠心力が発生するような向きを選定して配置すると共に第1弾性材4Aのバネ部を大質量化して、ロータ2の回転速度に応じて第1弾性材4Aのバネ部に発生する遠心力を第1弾性材4Aの牽引力に付加され、第1弾性材4Aが有するバネ定数を超える牽引力を第1弾性材4Aに作用させる。これによりロータ2の回転速度の変化に対応させて内周面11と摺接部31a,31bとの摺接圧力は過不足のない好ましい状態に保たれる。
【0061】
一方、第2ベーン3Bは質量が大きい先端側をロータ2から最突出し角速度も最大となっており、この形態における第2ベーン3Bにはロータ2の径外方に向かわせる最も大きな遠心力が作用している。そして第2弾性材4Bは最伸張して最も大きな牽引力を作用させていると共に、係止部24Bと34Bとの距離も最大となっており、バネ部を大質量化された第2弾性材4Bを径外方に撓ませる大きな遠心力が作用している。この大きな遠心力は、第2弾性材4Bの第2弾性材4Bが有する最伸張時のバネ定数を超える牽引力を第2弾性材4Bに作用させ第2弾性材4Bの牽引力をさらに強める。これによりロータ2の回転速度にしたがう第2ベーン3Bに作用する遠心力の大きさに対応して第2弾性材4Bの牽引力が増減され内周面11と摺接部31c,31dとの摺接圧力は好ましい状態に保たれる。
【0062】
因みに、従来広く知られるロータ自転型の容積型流体機械では、ロータの回転に伴ってベーンに作用する遠心力にのみ依存してベーン先端摺接部とシリンダ内周面とのシールに必要な接触圧を賄われる場合に、ロータが低速で回転駆動される状態ではベーンに発生する遠心力が不足しベーン先端摺接部とシリンダ内周面の接触圧不足に起因する圧縮効率の低下が懸念され、逆に高速で運転される場合には、遠心力が過大となりベーン先端摺接部とシリンダ内周面との摺動抵抗の増加に伴う入力効率の低下および摺動部の早期磨耗が懸念されるが、本発明の容積型流体機械Pの上記手段によれば、これらの問題を改善することができる。
【0063】
「第2実施例の構成」
図8は、第2実施例の容積型流体機械Pのベーン部分解斜視図であり、図9から図12には、第2実施例の容積型流体機械Pの要部断面を示すと共にそれぞれの作動状態を示す。第2実施例は、例えば、図示しない車両のブレーキブースタの圧力室内の空気を吸引する真空ポンプとして利用される場合に好適に作動する。
【0064】
図8および図9にみられるように第2実施例では、第1実施例におけるベーン3の配置に対し、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bは、ロータ2の中心を起点にして反転させて配置される。
【0065】
第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの基端部側にそれぞれ形成される長孔36aおよび36bに挿通されるボルト37を介して第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bはそれぞれ長孔36a,36bの長円の径範囲内の移動を許容され、かつ重ね合わされた状態を保ちながらロータ2を中心とする径方向への移動可能に構成される。これにより第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bをボルト37によって連結されず、分離させて配置される場合に比べ、ベーン3への負荷応力を高めることができる。
【0066】
第1弾性材4Aおよび第2弾性材4B側の第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bにそれぞれ形成される係止部34aおよび係止部34Bに第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bがそれぞれ係止され、第1実施例にみられた第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bへの第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bの係止形態に比べ、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bへの第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bの着脱作業が容易となる。
【0067】
対向部33aと33bおよび対向部33dと33dとで形成される断面略V字状の開口部は、第1実施例の形態と逆向き、すなわちロータ2の回転方向後方に向けて形成され、後述する負圧力流体を、これらの対向部33a,33b,33d,33dに有効に作用させることができる。
【0068】
図9は、ロータ2が停止している状態を示し、図示しない潤滑油供給手段によって容積型流体機械Pに注油された潤滑油Loがシリンダ1の内周面11内の底部に溜まっている状態を示している。
【0069】
「第2実施例の作用」
次に、以上のように構成される第2実施例の容積型流体機械Pの停止、始動、運転状態における作用を説明する。図9に示すようにロータ2が停止し、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの側面が水平の状態では、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bの互いに均衡する牽引力によってロータ2の中心部に向けて第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bが引き寄せられ第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bはそれぞれロータ2の中央部に位置している。
【0070】
図9の下方に示す拡大図にみられるように、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの基端部と先端部とに備える対向部33aと33bおよび33cと33dとで形成される断面略V字状の底部がそれぞれ当接し、ベーン3の長手方向寸法は最縮小化され、内周面11と摺接部31a,31b,31c,31dの間に隙間D1,D2が形成されている。
【0071】
図10は、例えば図示しないエンジンのカムシャフトが、図1に示すものと同様のカップリング22に連結され、図9の形態から時計回りに90°ロータ2を回転駆動された始動初期の状態を示している。ロータ2の回転に伴って第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに作用する遠心力の大きさにしたがって隙間D1,D2は拡大縮小する。ロータ2の始動初期における第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに作用する遠心力の大きさよりも、弾性材4A及び弾性材4Bによって第1ベーン3A及び第2ベーン3Bをロータ2の中心に向けて引き寄せる牽引力が上回るように設定されており内周面11と摺接部33a,33bとの隙間D1,D2は確保されており、第1ベーン3Aおよび摺接部31d或いは第2ベーン3Bおよび31aは、潤滑油Loを吐出口13へ一気呵成に移動させることなく、潤滑油Loを攪拌しながら回転位相変化する。
【0072】
ロータ2の回転数上昇に伴って第1ベーン3A,第2ベーン3Bに作用する遠心力の大きさに反比例して隙間D1,D2は除除に小さくなり、ロータ2が所定回転数に達すると、摺接部31a,31b,31c,31dが内周面11に摺接され、第1作動室R1,R2,R3は区画される。潤滑油Loは複数回に分割されて作動流体と共に吐出口へと移動排出される。このようにしてガイド21a,21b,21c,21および第1ベーン3A,第2ベーン3Bに過大な衝撃荷重が加えられることが回避される。このため容積型流体機械Pの始動トルクを軽減でき、原動機およびクラッチ等の駆動力伝達機器の小型化が図れると共に、容積型流体機械Pの回転駆動支持部材の強度を低く設計することが可能になり、容積型流体機械Pの小型軽量化と製造コストを低減することができる。
【0073】
図11は、容積型流体機械Pが所定の回転数で運転されている状態を示し、第1作動室R1は膨張行程にあり、例えば、図示しないブレーキブースタの圧力室から伸びる配管を吸入口12に接続され、膨張行程にある第1作動室R1によって、上記、圧力室内の空気が吸引され、圧縮工程にある第2作動室R2に導かれた空気が逆止弁16および吐出口を介して機外へ排出されている。
【0074】
図11に示すように、吸入行程にある第1作動室R1は負圧となっている。内周面11側に最突出させ、第1作動室R1に晒されている第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの側面にはロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント(Amlm)および(Bmlm)が作用している。そして、圧縮行程にあり、内周面11側に最突出し第2作動室R2側に晒さる面積が最大となっている第1ベーン3Aにロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント(Amlm)を作用させている。これら(Amlm),(Bmlm),(Amlm)の合成モーメントと、ロータ2の回転向きと逆向きのモーメント発生させる内周面11に摺接している摺接部31c,31dの摺接反力とで、第2ベーン3Bのガイド21c側側面をガイド21cに最も大きな力で押し付けようとしている。
【0075】
これに対して第1弾性材4Aは最伸張した状態となっており大きな牽引力(Alt)を発生させていると共に第1弾性材4Aには大きな遠心力(eAlc)が作用している。この(eAlc)は、第1弾性材4Aをロータ2の径外方に撓ませて第1弾性材4Aが有する牽引バネ定数にさらなる牽引力を付加された第1弾性材4Aの(Alt)は、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bをガイド21d側に引き付けようとしている。この牽引力は、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bにロータ2の回転向きの大きなモーメント(Aplm)および(Bplm)を発生している。これにより(Amlm),(Bmlm),(Amsm)の合成モーメントと(Aplm),(Bplm)は打ち消し合われ、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの側面と、ガイド21cおよびガイド21dとの摺動抵抗は緩和され、これら摺動面の磨耗が抑制される。
【0076】
一方、ガイド21bに側面を摺接させて最没入し、圧縮行程にある第2作動室R2側に晒されている第2ベーン3Bの側面および摺接部31b,対向部33a,には、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに、ロータ2の回転向きのモーメントを付与する(Bpsm),(31blpp),(33ahmp)が作用している。そして、ガイド21aに側面を摺接させて最没入し、膨張行程にある第1作動室R1側に晒されている摺接部31aにも第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに、ロータ2の回転向きのモーメントを付与する高い負圧力(31ahmp)が作用している。
【0077】
さらに、最収縮している第2弾性材4Bも第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに、ロータ2の回転向きの小さなモーメントを付与する牽引力(Bst)を発生させている。
このようにしてロータ2の回転向きのモーメントを発生するこれら(Bpsm),(31blpp),(33ahmp),(31ahmp),(Bst)の合成モーメントと、内周面11に摺接しロータ2の回転向きと逆向きのモーメントを第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに発生させる摺接部31a,31bの摺接反力とが互いに打ち消し合われ、ガイド21aおよびガイド21dと第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの側部摺動面との摺動抵抗と磨耗が抑制される。
【0078】
以上に説明した第2実施例の容積型流体機械Pを、例えば、自動車に搭載され、ブレーキブースタの圧力室の空気を吸引する真空ポンプとして用いられる場合に、通常、エンジンのカムシャフトに駆動軸20が連結され、自動車が運転されている間中ロータ2は回転駆動される。一般に、ブレーキの使用頻度が極端に少なくなり負圧力の消費が減少するとされる高速道路を走行中、第1作動室R1および上記圧力室が所定の負圧に達しても容積型流体機械は真空ポンプ作用を継続する。そのため、内周面11と摺接部31a,31b,31c,31dとの間で発生する摩擦により、これら摺接部の磨耗を早めると共に、エンジントルクを浪費し、特にエンジンが高回転で長時間運転される傾向にある高速道路を走行する場合特に燃費を悪化させる要因となっている。そこで、第2実施例の容積型流体機械Pによれば、次のような動作によって、上記問題の解決が図られる。
【0079】
図12は、第2実施例の容積型流体機械Pが所定の回転数で運転されている状態を示し、上述の、例えば、図示しない車両のブレーキブースタの圧力室内の空気が容積型流体機械Pによって吸引され、上記圧力室内の負圧力が所定の基準に達すると、第1ベーン3Aに作用している大きな遠心力(Alc)と、膨張行程の初期にあり高い負圧となっている第1作動室R1に晒され、ロータ2および第1ベーン3Aの回転によって攪拌され、内周面11に張り付き内周面11と摺接部31cとの間に介在する潤滑油Loの油層Llによりその一部を覆われ、高い負圧力が作用する面積を狭められている摺接部31cに作用している(31chmp)および膨張行程の終期にあり低い負圧となっている第2作動室R2に晒され、ロータ2および第2ベーン3Bの回転によって攪拌され、内周面11に張り付き内周面11と摺接部31dとの間に介在する油層Llによりその一部を覆われ、低い負圧力が作用する面積を狭められている摺接部31dに作用する(31dlmp)とによって第1ベーン3Aをロータ2の径外方に向かわせるこれら(Alc),(31chmp),(31dlmp)の合成付勢力よりも、第1弾性材4Aの大きな牽引力(Alt)と対向部33dに作用する高い負圧力(33dhmp)および膨張行程の終期にあり低い負圧となっている第2作動室R2に晒されている対向部33bに作用している低い負圧力(33blmp)のこれら第1ベーン3Aをロータ2の径内方に向かわせる合成付勢力が上回るようになり、内周面11と摺接部31c,31dとの間に油層Llを介在させ、内周面11から摺接部31c,31dは離間した状態で第1ベーン3Aはロータ2の回転に伴って位相変化する。これにより、内周面11と摺接部31c,31dとの摺動抵抗は発生せず、これら摺接部の磨耗とエネルギーの浪費が回避されると共に、第1作動室R1と第2作動室R2は区画されずポンプ作用も行われないため、第1ベーン3Aによる流体の拡縮動作に伴うエネルギーの消費も軽減される。
【0080】
さらに、第2ベーン3Bに作用している大きな遠心力(Blc)と、膨張行程の終期にあり低い負圧となっている第2作動室R2に晒され、ロータ2および第1ベーンの回転によって攪拌され、内周面11に張り付き内周面11と摺接部31cとの間に介在する潤滑油Loの油層Llによりその一部を覆われ、低い負圧力が作用する面積を狭められている摺接部31cに作用している(31blmp)および膨張行程の最終期にあり低い負圧となっている第3作動室R3に晒され、ロータ2および第2ベーン3Bの回転によって攪拌され、内周面11に張り付き内周面11と摺接部31dとの間に介在する油層Llによりその一部を覆われ、低い負圧力が作用する面積を狭められている摺接部31aに作用する(31almp)とによって第2ベーン3Bをロータ2の径外方に向かわせるこれら(Blc),(31bhmp),(31almp)の合成付勢力よりも、第1弾性材4Aの大きな牽引力(Alt)と対向部33aに作用する低い負圧力(33almp)および膨張行程の初期にあり高い負圧となっている第1作動室R1に晒されている対向部33cに作用している高い負圧力(33chmp)のこれら第2ベーン3Bをロータ2の径内方に向かわせる合成付勢力が上回るようになり、内周面11と摺接部31b,31aとの間に油層Llを介在させ、内周面11から摺接部31b,31aは離間した状態で第2ベーン3Bはロータ2の回転に伴って位相変化する。これにより、内周面11と摺接部31b,31aとの摺動抵抗は発生せず、省エネルギー化が実現されると共に、内周面11および摺接部31b,31aの磨耗も回避される。そして、第2ベーン3Bによる第2作動室R2と第3作動室R3は区画されず、第2作動室R2および第3作動室R3によるポンプ作用は行われない。このため、第2ベーン3Bによって流体を拡縮させる動作に伴うエネルギーの消費が軽減される。
【0081】
「第3実施例の構成」
図13は、第3実施例の容積型流体機械Pのロータ2が時計回りに低速で回転駆動されている状態を示す要部の軸横断面図である。第3実施例の容積型流体機械Pは、例えば潤滑油などの非圧縮性流体を圧送するポンプとして用いられる。
【0082】
第3実施例では、第1実施例および第2実施例にみられる吐出口13側に配置されていた逆止弁16は省略され、第2作動室R2および第3作動室R3と吐出口13とに連なる円弧溝13aが形成され、容積型流体機械Pの運転時には非圧縮性流体を間断なく吸入、吐出される。
【0083】
第1弾性材4Aの一端部は、断面略L字状の支持部材39aを第2ベーン3Bに形成される長孔38bを挿通され一端部を第1ベーン3Aの基端部側に形成される係止部34aに挿入固定され、ロータ2の中空部に突出される他端部に係止され、第1弾性材4Aの他端部はロータ2に形成される係止部24aに挿入固定される。第2弾性材4Bの一端部は、断面略L字状の支持部材39bを第1ベーン3Aに形成される長孔38aを挿通され一端部を第2ベーン3Bの基端部側に形成される係止部34Bに挿入固定され、ロータ2の中空部に突出される他端部に係止され、第2弾性材4Bの他端部はロータ2に形成される係止部24Bに挿入固定される第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bのそれぞれはベーン3の側面に対して略平行に配置され、ロータ2の中空部スペースをより有効に活用され、かつ、ベーン3の軸から一側面方向、他側面方向へ支持部材39a,39bの先端部側に係止され、大きくずれた位置から第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bによって第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bがそれぞれ2枚重ね合わせられた状態で弾性支持され、後述する大質量かつ、高圧の非圧縮性流体によりベーン3に作用する曲げ応力およびロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメントに対応可能になる。その他の構成は第1実施例と同様である。
【0084】
「第3実施例の作用」
図13に示す第3実施例の容積型流体機械Pでは、ロータ2が時計回りに低速で回転駆動されている。この状態における第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bをロータ2の径外方に向かわせる小さな遠心力(Asc),(Bsc)よりも、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bをロータ2の径内方に向かわせる第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bの大きな牽引力(Alt),(Blt)が上回り第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bのそれぞれはロータ2の中心に引き寄せられ内周面11と摺接部31a,31b,31c,31dとの間には隙間D1,D2が形成されている。このようにして第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3のそれぞれは区画されず連通状態にあるものの、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bによって質量が大きい作動流体(潤滑油)は、内周面11に沿って攪拌され徐々に遠心力を増大させ、白抜きの矢印で示すように吸入口12および吸入溝12aから吸入された作動流体は第1作動室R1に導かれ第2作動室R2,第3作動室R3に移動され、吐出溝13aおよび吐出口13を介して低圧の作動流体が機外へと排出される。
【0085】
そして、ロータ2の回転数を上昇させると第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに作用する遠心力が、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bの大きな牽引力(Alt),(Blt)を上回り摺接部31a,31b,31c,31dが内周面11に摺接され、第1作動室R1,第2作動室R2,第3作動室R3は区画され(図省略)吸入口12および吸入溝12aから吸入された作動流体は第1作動室R1に導かれ第2作動室R2,第3作動室R3に順次移動され、吐出溝13aおよび吐出口13を介して高圧の作動流体が機外へと排出される。このようにして、第3実施例の容積型流体機械Pによれば、ロータ2の回転数を増減することにより吐出される流体の量と圧力を制御できる。
【0086】
なお、第3実施例における各作動室の作動形態は基本的には、第1実施例の図5〜図7に記載の作動形態と同様であるので、当該第3実施例におけるロータ2の回転位相変化に伴うそれぞれの作動形態図は省略し、図13を代用して説明する。ロータ2が高速で回転駆動される場合に、非圧縮性流体による高圧の流体圧力が作用する第2作動室R2に晒される第1ベーン3Aの基端部側側面にはロータ2の回転向きと逆向きの大きなモーメント(Amlm)が作用している。同様に高い正圧が作用している第2作動室R2に晒される対向部33dには(33dhpp)と摺接部31dにも高い正圧(31dhmp)が作用している。これらロータ2の回転向きと逆向きの(Amlm),(33dhpp),(31dhmp)の合成付勢力は、第2ベーン3Bのガイド21c側側面をガイド21cに強く押し付けようとしている。これに対して、限られたロータ2の中空部を有効に活用して配置され、第2ベーン3Bに大きな対向付勢力を発生させるように、支持部材39bを介して第1ベーン3Aの側面からロータ2の径外方に大きくずれた位置から牽引する第2弾性材4Bの大きな牽引力は、第2ベーン3Bをロータ2の中心に向けて牽引する力の成分よりも、第2ベーン3Bの基端部側を支点とするロータ2の回転向きの大きなモーメントを発生する成分が大きくなり、この大きなモーメントは、第1ベーン3Aに、ロータ2の回転向きの大きなモーメント(Aplm)を付与している。これにより、上記(Amlm),(33dhpp),(31dhmp)の合成付勢力と(Aplm)とが打ち消し合われ第1ベーン3Aのガイド21c側側面とガイド21cの摺動抵抗と磨耗は軽減される。
【0087】
さらに、ロータ2が回転駆動される速度と、ロータ2の中心から径外方に突出する第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの距離と、ロータ2の回転速度にしたがって、ロータ2の径外方へ、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bのバネ部の撓み量は変化する。この撓みは、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bをロータ2の内方に向く牽引力を発生させ、この牽引力は第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bに付加され、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bが有するバネ定数を超える牽引力を第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bに発生させ、その牽引力を増減する。これによりロータ2の回転駆動される速度、すなわち、第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bに作用する遠心力の大きさと、ロータ2の中心から径外方に突出する第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bの距離にしたがって、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bの牽引力は好適に調節され内周面11と摺接部31a,31b,31c,31dおよびガイド21b,21cと第1ベーン3Aおよび第2ベーン3Bのガイド21b,21c側摺接面との摺動抵抗が軽減されると共に磨耗も抑制される。
【0088】
また、上記各実施例において第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bのバネ部は、通常のコイルバネを用いた例を示していているが、ピンセット形のバネ或いはネジリバネまたは第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bのそれぞれにバネ定数を高めることなく、第1弾性材4Aおよび第2弾性材4Bのバネ部の質量を大きくして、バネ部により大きな遠心力を発生させるため、ゴムバネまたはゴム被服バネ或いは線状バネ材の側部断面形状を鎖状または数珠状に形成されるものを用いてもよい。そして、対向部33a,33b,33c,33dによって形成される形状と角度およびこれら対向部33a,33b,33c,33dに流体が作用する面積は適宜の大きさに形成され、対向部33a,33b,33c,33dのそれぞれに発生する付勢力を最適に設定することも可能である。
【0089】
その他本発明は、上述した実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜構成の付加、削除、一部部品の抽出、各実施例間での構成の組み換え、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1:シリンダ、 11:内周面、 12:吸入口、 12a:吸入溝、 13:吐出口、13a:吐出溝、 14:フロントプレート、 15:リアプレート、 16:逆止弁、 17a,17b:ベアリング、 18:リブプレート、 19,37:ボルト、 2:ロータ、 20:駆動軸、 21a,21b,21c,21d:ガイド、 22:カップリング、 23:開口部、 24a,24B:係止孔、 3:ベーン、 3A:第1ベーン、 3B:第2ベーン、 31a,31b,31c,31d:摺接部、 32:中空部、 33a,33b,33c,33d:対向部、 34a,34B:係止孔、 35a, 35b:長孔、39a,39b:支持部材、 4A:第1弾性材、 4B:第2弾性材、 R1:第1作動室、 R2:第2作動室、 R3:第3作動室、 C:中心線、 D1,D2:隙間、 Lo:潤滑油、 Ll:油層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円形の内周面(11)を有し吸入口(12)と吐出口(13)を配設したシリンダ(1)と、前記内周面(11)内の偏心した位置で回転するロータ(2)と、前記ロータ(2)内にロータ(2)の径方向へ往復摺動可能に収容されたベーン(3)を備え、前記ロータ(2)の周面から前記ベーン(3)の一端および他端が突出して内周面(11)内を複数の作動室(R1,R2,R3)に区画する容積型流体機械において、
前記ベーン(3)は、前記内周面(11)への摺接部(31a,31b,31c,31d)を有したプレート状の第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)を、それぞれ前記一端及び他端側に備え、
これら第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)はそれぞれ、ロータ(2)内に備えた第1弾性材(4A)、第2弾性材(4B)によって、各ベーンの前記プレート側面を該側面からずらした方向に弾性支持され、
ロータ(2)の停止時には、前記第1弾性材(4A)、第2弾性材(4B)がそれぞれ第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)をロータ(2)の径内方に引き寄せることで前記摺接部(31a,31b,31c,31d)を前記内周面(11)から離間させ、
ロータ(2)の回転時には、前記第1弾性材(4A)、第2弾性材(4B)がそれぞれ、前記内周面(11)に摺接した第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)をロータ(2)の径内方に引き戻す方向、およびベーン(3)によって区画される作動室(R1,R2,R3)間の圧力差に基づく第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)へのモーメントを打ち消す方向の付勢力を付与することを特徴とする容積型流体機械。
【請求項2】
前記第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)はそれぞれ、先端側の摺接部(31a,31b,31c,31d)と基端側の対向部(33b,33c)とを有し、前記摺接部(31a,31b,31c,31d)を有する先端側が、前記対向部(33b,33c)を有する基端側よりも大きい質量で形成される請求項1記載の容積型流体機械。
【請求項3】
第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)はそれぞれ、プレート状部の先端側に、少なくとも一方のプレート側面へ側方膨出した摺接部(31a,31d)が形成されてなり、前記摺接部(31a,31d)同士が離間しかつ膨出方向のプレート内側面同士が対向するように、第1ベーン(3A)と第2ベーン(3B)が重ね合わせて配置され、
前記各プレート内側面が相互にロータ(2)の径方向へ往復摺動可能に構成される請求項1又は2記載の容積型流体機械。
【請求項4】
ロータ(2)は中空部を有し、第1弾性材(4A)および第2弾性材(4B)は、前記ロータ(2)の中空部内に対向配設された牽引バネからなると共に、牽引バネの各一端が、第1ベーン(3A)、第2ベーン(3B)の側面に各々形成された2つの係止部(34a,34b)にそれぞれ係止され、牽引バネの各他端が、ロータ(2)内に形成された2つの係止部(24a,24b)にそれぞれ係止される請求項3記載の容積型流体機械。
【請求項5】
第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)には、プレート状部の各々を厚さ方向に貫通する長孔(35a,35b)が形成されると共に、重ね合わされて対向するプレート内側面であってこの長孔(35a,35b)の先側に係止部(34b,34a)が各々形成され、ロータ(2)内には、第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)の重ね合わされたプレート状部外方であって前記長孔(35a,35b)の先側に係止部(24b,24a)が各々形成され、第1弾性材(4A)および第2弾性材(4B)は、牽引バネの各一端が、前記長孔(35b,35a)をそれぞれ挿通してその先側にある前記係止部(34b,34a)にそれぞれ係止され、牽引バネの各他端が、ロータ(2)内の前記係止部(24a,24b)にそれぞれ係止されることで、ベーン(3)の往復摺動方向に対し傾斜して配置される請求項4記載の容積型流体機械。
【請求項6】
第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)には、重ね合わされたプレート状部の各外側面に係止部(34a,34b)が各々形成され、ロータ(2)内には、第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)の重ね合わされたプレート状部外方であって前記係止部(34a,34b)よりもずれた位置に係止部(24a,24b)が各々形成され、第1弾性材(4A)および第2弾性材(4B)は、牽引バネの各一端が、重ね合わされたプレート状部の各外側面の前記係止部(34a,34b)にそれぞれ係止され、牽引バネの各他端が、ロータ(2)内の前記係止部(24a,24b)にそれぞれ係止されることで、ベーン(3)の往復摺動方向に対し傾斜して配置される請求項4記載の容積型流体機械。
【請求項7】
第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)には、プレート状部の各々を厚さ方向に貫通する長孔(38a,38b)が形成されると共に、重ね合わされて対向するプレート内側面であってこの長孔(38a,38b)の先側に係止部(34b,34a)が各々形成され、前記長孔(38b,38a)に断面略L字状の支持部材(39a,39b)が挿通され、各支持部材(39a,39b)の挿通された一端部が、プレート内側面の前記係止部(34a,34b)にそれぞれ挿入固定され、ロータ(2)内には、第1ベーン(3A)および第2ベーン(3B)の重ね合わされたプレート状部外方であって前記各支持部材(39a,39b)の他端部側に係止部(24a,24b)が各々形成され、第1弾性材(4A)および第2弾性材(4B)は、牽引バネの各一端が、前記各支持部材(39a,39b)の他端部にそれぞれ係止され、牽引バネの各他端が、ロータ(2)内の前記係止部(24a,24b)にそれぞれ係止されることで、ベーン(3)の往復摺動方向に対し並行して配置される請求項4記載の容積型流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−247199(P2011−247199A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122151(P2010−122151)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【特許番号】特許第4596339号(P4596339)
【特許公報発行日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(590005863)
【Fターム(参考)】