説明

容量制御弁

【課題】可変容量型圧縮機の起動時の圧縮機負荷の制御を容易に行えるようにする。
【解決手段】容量制御弁33は、電磁ソレノイド34と、電磁ソレノイド34によって駆動される駆動力伝達体49と、感圧室44内の圧力に応じて駆動力伝達体49の移動方向に伸縮する感圧体45を有する感圧手段とを備えている。排出通路の一部である弁孔571における通過断面積を調整する第1弁体54が感圧体45に設けられており、供給通路の一部である弁孔40の通過断面積を調整する第2弁体38に駆動力伝達体49が連結されている。感圧体45は、感圧室44内において駆動力伝達体49の移動方向に移動可能であり、感圧室44は、制御圧室121に連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給通路を介して吐出圧領域の冷媒が制御圧室に供給されると共に、排出通路を介して前記制御圧室の冷媒が吸入圧領域に排出されて前記制御圧室内の調圧が行われ、前記制御圧室内の調圧によって吐出容量が制御される可変容量型圧縮機に用いる容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
傾角可変に斜板を収容する制御圧室を備えた可変容量型圧縮機においては、制御圧室の圧力が高くなると斜板の傾角が小さくなり、制御圧室の圧力が低くなると斜板の傾角が大きくなる。斜板の傾角が小さくなると、ピストンのストロークが小さくなって吐出容量が小さくなり、斜板の傾角が大きくなると、ピストンのストロークが大きくなって吐出容量が大きくなる。
【0003】
制御圧室の圧力の調整には、例えば特許文献1に開示される容量制御弁が用いられる。特許文献1に開示の容量制御弁は、吸入室圧力またはクランク室圧力を感知するベローズの伸縮に応答して開閉されてクランク室から吸入室に至る通路の開度を調整する第1の弁機構を備えている。又、特許文献1に開示の容量制御弁は、第1の弁機構の開閉に連動して吐出室からクランク室に至る通路の開度を調整し、かつ第2の弁体の弁座との当接側と反対側の面にクランク室圧力または吸入室圧力を受け、第2の弁体の両面の受圧面積を調整することにより第2の弁体の開閉方向への吐出室圧力の影響を実質的に排除した第2の弁機構を備えている。さらに、ベローズを第1の弁機構の閉弁方向に付勢する付勢ばねがベローズを収容する弁ケーシングとベローズとの間に介在されている。
【0004】
容量制御弁は、第2の弁機構が吐出圧の影響を受けないようにクランク室又は吸入室の圧力を弁体の背圧部にも掛かるようにし、且つ吐出圧自体も弁体で圧力を調整し、全体として吐出圧が掛からないようになっている。又、吸入室圧力が上昇してベローズが収縮してもベローズがバネにより付勢されているので第1の弁体が閉じ、さらに、第2の弁体が開弁状態を維持するので、電磁ソレノイドにおける電流値がゼロになっても常時最小容量が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−280660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の弁体は、弁孔閉じ位置に向かうようにベローズが付勢ばねによって付勢されている。付勢ばねの付勢力は、吸入室圧力が上昇してベローズが収縮しても第1の弁体が閉じた状態を維持できるほど大きく設定されている。従って、第1の弁体を電磁ソレノイドにより開弁状態に付勢する際、付勢ばねの付勢力に応じて、大きな電流値を電磁ソレノイドに流す必要がある。また、第1の弁体を閉弁状態に維持する最小容量でクランク室圧力が上昇した場合、クランク室圧力がガイドを付勢し、第1の弁体を開弁しようとする。付勢ばねの付勢力がクランク室圧力に対して小さい場合、第1の弁体が開弁してしまう。
【0007】
このように従来の構造では、第1の弁体を閉弁状態に維持する最小容量で、クランク室圧力が上昇した場合、第1の弁体が開弁してしまい、最小容量を維持することができず、圧縮機の動力消費を抑制することができない。
【0008】
本発明は、可変容量型圧縮機の最小容量運転を確実に維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、供給通路を介して吐出圧領域の冷媒が制御圧室に供給されると共に、排出通路を介して前記制御圧室の冷媒が吸入圧領域に排出されて前記制御圧室内の調圧が行われ、前記制御圧室内の調圧によって吐出容量が制御される可変容量型圧縮機に用いる容量制御弁であって、前記容量制御弁は、電磁ソレノイドと、前記電磁ソレノイドによって駆動される駆動力伝達体と、前記制御圧室に連通した感圧室内の圧力に応じて前記駆動力伝達体の移動方向に伸縮する感圧体を有する感圧手段とを備えている容量制御弁を対象とし、請求項1の発明では、前記排出通路における通過断面積を調整する第1弁体が前記感圧体に設けられており、前記供給通路における通過断面積を調整する第2弁体と前記駆動力伝達体とが連結されており、前記感圧体は、前記感圧室内において前記駆動力伝達体の移動方向に移動可能であり、前記感圧体は、前記第1弁体が閉弁する方向に前記制御圧室の圧力によって付勢されている。
【0010】
第1弁体を弁孔閉じ位置に配置した状態で制御圧が上昇したとしても、制御圧が感圧体を縮小させた状態で、感圧体の第1弁体を有する面と感圧体の移動方向で反対側の面に制御圧を受け、弁孔を閉じる方向に感圧体は制御圧によって付勢される。従って、第1弁体を弁孔閉じ位置に配置した状態で制御圧が上昇したとしても、第1弁体が開弁せず、可変容量型圧縮機の最小容量運転を確実に維持することができる。
【0011】
好適な例では、前記第1弁体によって開閉される前記排出通路の一部となる弁孔の断面積は、前記感圧体の有効受圧面積と同じである。
第1弁体によって開閉される弁孔の断面積と感圧体の有効受圧面積との同一化は、制御圧と吸入圧との差圧と電磁ソレノイドの駆動力とのバランスによる容量制御をもたらす。
【0012】
好適な例では、前記駆動力伝達体の移動方向に前記感圧体の移動を案内する案内手段が設けられている。
感圧体の傾きが防止され、駆動力伝達体の移動方向への感圧体の移動が円滑に行なわれる。
【0013】
好適な例では、前記感圧体は、前記第1弁体が閉弁する方向に付勢ばねによって付勢されている。
付勢ばねは、電磁ソレノイドが消磁状態において第1弁体を閉じ位置に確実に保持する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の容量制御弁は、可変容量型圧縮機の最小容量運転を確実に維持できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態を示す実施形態を示す圧縮機全体の側断面図。
【図2】OFF運転時の部分拡大側断面図。
【図3】ON運転時の部分拡大側断面図。
【図4】(a),(b)は、OFF運転時のベローズに掛かる力の釣り合いを説明するための説明図。
【図5】ON運転時のベローズに掛かる力の釣り合いを説明するための説明図。
【図6】制御圧、吸入圧、吐出容量の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、クラッチレスの可変容量型圧縮機に本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、シリンダブロック11の前端にはフロントハウジング12が連結されている。シリンダブロック11の後端にはリヤハウジング13がバルブプレート14、弁形成プレート15,16及びリテーナ形成プレート17を介して連結されている。シリンダブロック11、フロントハウジング12及びリヤハウジング13は、可変容量型圧縮機10の全体ハウジングを構成する。
【0017】
制御圧室121を形成するフロントハウジング12とシリンダブロック11とには回転軸18がラジアルベアリング19,20を介して回転可能に支持されている。制御圧室121から外部へ突出する回転軸18は、図示しない外部駆動源E(例えば車両エンジン)から回転駆動力を得る。
【0018】
回転軸18には回転支持体21が止着されている。又、回転軸18には斜板22が回転支持体21に対向するように支持されている。斜板22は、回転軸18の軸方向へスライド可能かつ傾動可能に支持されている。
【0019】
回転支持体21に形成されたガイド孔211には斜板22に設けられたガイドピン23がスライド可能に嵌入されている。斜板22は、ガイド孔211とガイドピン23との連係により回転軸18の軸方向へ傾動可能かつ回転軸18と一体的に回転可能である。斜板22の傾動は、ガイド孔211とガイドピン23とのスライドガイド関係、及び回転軸18のスライド支持作用により案内される。
【0020】
斜板22の径中心部が回転支持体21側へ移動すると、斜板22の傾角が増大する。斜板22の最大傾角は、回転支持体21と斜板22との当接によって規制される。図1に実線で示す斜板22は、最小傾角状態にあり、鎖線で示す斜板22は、最大傾角状態にある。斜板22の最小傾角は、0°よりも僅かに大きくしてある。
【0021】
シリンダブロック11に貫設された複数のシリンダボア111内にはピストン24が収容されている。斜板22の回転運動は、シュー25を介してピストン24の前後往復運動に変換され、ピストン24がシリンダボア111内を往復動する。
【0022】
リヤハウジング13内には吸入圧領域である吸入室131及び吐出圧領域である吐出室132が区画形成されている。バルブプレート14、弁形成プレート16及びリテーナ形成プレート17には吸入ポート26が形成されており、バルブプレート14及び弁形成プレート15には吐出ポート27が形成されている。弁形成プレート15には吸入弁151が形成されており、弁形成プレート16には吐出弁161が形成されている。シリンダボア111、弁形成プレート15、ピストン24により圧縮室112がシリンダブロック11内に区画形成されている。
【0023】
吸入室131内の冷媒は、ピストン24の復動動作〔図1において右側から左側への移動〕により吸入ポート26から吸入弁151を押し退けて圧縮室112内へ流入する。圧縮室112内へ流入した冷媒は、ピストン24の往動動作〔図1において左側から右側への移動〕により吐出ポート27から吐出弁161を押し退けて吐出室132へ吐出される。吐出弁161は、リテーナ形成プレート17上のリテーナ171に当接して開度規制される。
【0024】
制御圧室121内の圧力が下がると、斜板22の傾角が増大して吐出容量が増え、最大傾角となると最大容量となり、制御圧室121内の圧力が上がると、斜板22の傾角が減少して吐出容量が減り、最小傾角となると最小容量となる。
【0025】
吸入室131と吐出室132とは、外部冷媒回路28で接続されている。外部冷媒回路28上には、冷媒から熱を奪うための熱交換器29、膨張弁30、及び周囲の熱を冷媒に移すための熱交換器31が介在されている。膨張弁30は、熱交換器31の出口側のガス温度の変動に応じて冷媒流量を制御する温度式自動膨張弁である。吐出室132から外部冷媒回路28に至る途中には循環阻止手段32が設けられている。循環阻止手段32が開いているときには、吐出室132内の冷媒は、外部冷媒回路28へ流出して吸入室131へ還流する。
【0026】
制御圧室121と吸入室131とは、シリンダブロック11に貫設された通路59と、リテーナ形成プレート17、バルブプレート14及び弁形成プレート15,16に貫設された絞り通路60とを介して、吸入室131に連通している。通路59及び絞り通路60は、制御圧室121と吸入室131とを常に連通している常開通路61を構成する。
【0027】
リヤハウジング13には電磁式の容量制御弁33が組み付けられている。
図2に示すように、容量制御弁33の電磁ソレノイド34を構成する固定鉄心35は、コイル36への電流供給による励磁に基づいて可動鉄心37を引き付ける。可動鉄心37には第2弁体38が止着されている。電磁ソレノイド34は、図示しない制御コンピュータの電流供給制御(本実施形態ではデューティ比制御)を受ける。
【0028】
容量制御弁33を構成するバルブハウジング41には隔壁42が形成されている。隔壁42は、バルブハウジング41内を弁室43と感圧室44とに区画している。弁室43には第2弁体38の先端側が配設されており、感圧室44には感圧体45が配設されている。感圧室44は、通路47を介して制御圧室121に連通している。バルブハウジング41には蓋48が感圧室44を閉鎖するように嵌入して固定されている。
【0029】
隔壁42には弁孔40が貫設されている。第2弁体38は、隔壁42に接離して弁孔40を開閉可能である。電磁ソレノイド34の電磁力は、ばね39のバネ力に抗して、弁孔40を閉じる位置に向けて第2弁体38を付勢する。
【0030】
感圧体45は、ベローズ52と、ベローズ52の一端に結合された受圧体53と、ベローズ52の他端に結合された第1弁体54と、ベローズ52内で受圧体53と第1弁体54とを互いに遠ざける方向に付勢する付勢ばね56とを備えている。蓋48の内端面には段付き凹部481が形成されており、段付き凹部481の小径部482には付勢ばね55が収容されている。付勢ばね55は、受圧体53を第1弁体54に近づける方向に付勢する。受圧体53は、段付き凹部481の大径部483に嵌入されている。大径部483は、受圧体53(感圧体45)を駆動力伝達体49の移動方向へ案内する案内手段である。
【0031】
ベローズ52内において受圧体53にはストッパ531が一体形成されており、ベローズ52内において第1弁体54にはストッパ541がストッパ531と接離可能に一体形成されている。ストッパ531とストッパ541とは、伸縮するベローズ52の最短長を規定する。
【0032】
感圧室44内においてバルブハウジング41の内周面には筒形状の弁座57が嵌合して止着されている。弁座57に接離可能な第1弁体54は、感圧室44内を第1感圧室441と第2感圧室442とに区画する。大径部483の内周面と受圧体53の外周面との間には、第1感圧室441と段付き凹部481の小径部482とを連通させる連通路62が設けられており、小径部482は、第1感圧室441に連通している。第2感圧室442は、弁座57内の弁孔571、弁孔571に通じる通口572及び通路58を介して吸入室131に連通している。通路47、第1感圧室441、弁孔571、第2感圧室442、通口572及び通路58は、制御圧室121から吸入室131に至る排出通路を構成する。第1弁体54は、排出通路における通過断面積を調整する。
【0033】
ベローズ52は、感圧室44の圧力に応じて駆動力伝達体49の移動方向に伸縮する。感圧体45及び感圧室44は、感圧手段を構成する。第1感圧室441の圧力を受圧体53の小径部482側の面で受けることによって、第1弁体54が排出通路の一部である弁孔571を閉じる閉弁方向に感圧体45は付勢されている。
【0034】
駆動力伝達体49は、小径部491と大径部492とから構成されており、大径部492が弁孔40を貫通して第2感圧室442内に突出している。大径部492の先端部は、第1弁体54に接離可能である。大径部492は、第2感圧室442と弁室43とを遮断しており、小径部491の周りには環状の間隙401が残されている。間隙401は、通路51を介して吐出室132に連通している。弁室43は、弁孔40を介して吐出室132に連通可能である。通路51、弁孔40、弁室43及び通路46は、吐出室132から制御圧室121に至る供給通路を構成する。第2弁体38は、供給通路における通過断面積を調整する。
【0035】
容量制御弁33の弁孔40における開閉具合、即ち容量制御弁33における第1弁体54の弁開度は、電磁ソレノイド34で生じる電磁力、ばね39のばね力、感圧手段の付勢力のバランスによって決まる。容量制御弁33は、電磁力を変えることによって容量制御弁33における第1弁体54の弁開度を連続的に調整可能である。電磁力を増大すると、容量制御弁33における第1弁体54の弁開度は、減少方向に移行する。
【0036】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
図2は、容量制御弁33の電磁ソレノイド34に対する電流供給が停止されている状態(デューティ比が0であり、以下においてはOFF運転という)を示し、容量制御弁33における第1弁体54の弁開度は、最大になっている。斜板22の最小傾角は0°よりも僅かに大きく、斜板22の傾角が最小傾角の場合にもシリンダボア111から吐出室132への吐出は行われている。斜板22の傾角が最小である状態では、循環阻止手段32が閉じて外部冷媒回路28における冷媒循環が停止する構成で、最小容量運転となっている。シリンダボア111から吐出室132へ吐出された冷媒の一部は、容量制御弁33の弁孔40、弁室43及び通路46を経由して制御圧室121へ流入する。
【0037】
図4(a),(b)は、電磁ソレノイド34に対する電流供給が停止されている状態(OFF運転)におけるベローズ52に掛かる力の釣り合いを説明するための説明図である。
【0038】
図4(a)における矢印Q1は、第1感圧室441内の制御圧Pcとベローズ52における有効受圧面積S(ベローズ52の伸縮方向の有効受圧面積)との積Pc×Sで表される力の方向を示す。有効受圧面積Sは、弁孔571の断面積と同じにしてある。力Pc×Sは、受圧体53を第1弁体54の閉弁方向に向けて付勢する。矢印Q2は、付勢ばね55による力Fspの方向を示す。力Fspは、受圧体53を第1弁体54の閉弁方向に向けて付勢する。矢印R1は、第2感圧室442内の吸入圧Psとベローズ52における有効受圧面積Sとの積Ps×Sで表される力の方向を示す。力Ps×Sは、第1弁体54を受圧体53に向けて付勢する。矢印B1は、付勢ばね56による力Fbの方向を示し、矢印B2は、付勢ばね56による力Fbの方向を示す。矢印B1で示す方向の力Fbは、受圧体53を第1弁体54から離れる方向へ付勢し、矢印B2で示す方向の力Fbは、第1弁体54を受圧体53から離れる方向へ付勢する。
【0039】
付勢ばね56による力Fbは、Fsp+Pc2×Sの大きさに設定されている。Pc2は、電磁ソレノイド34に通電が行なわれている(以下においてはON運転という)ときの制御圧Pcの上限値(Pc2≧Pc)である。ベローズ52は、縮小方向にFsp+Pc×Sの力を受けている。
【0040】
図4(a)の状態は、制御圧Pcが上限値Pc2を超えている状態であり、ベローズ52を縮小させる方向の力Fsp+Pc×Sは、ベローズ52を伸長させる方向の付勢ばね56の力Fb=Fsp+Pc2×Sを上回る。そのため、ストッパ531,541同士が当接した状態にベローズ52が縮小されると共に、第1弁体54が力Fsp+(Pc−Ps)×S(Pc>Ps)で弁座57に押し付けられる。その結果、弁孔571が閉じられ、制御圧室121内の冷媒は、常開通路61のみから吸入室131へ流出する。これにより、斜板22が最小傾角の状態で回転し、可変容量型圧縮機10は、吐出容量が最小となる最小容量運転を行なう。この場合、循環阻止手段32は閉じられるので、冷媒が外部冷媒回路28を循環することはない。
【0041】
図4(b)の状態は、制御圧Pcが上限値Pc2より小さい状態であり、ベローズ52を縮小させる方向の力Fsp+Pc×Sは、ベローズ52を伸長させる方向の付勢ばね56の力Fb=Fsp+Pc2×Sより小さい。そのため、ストッパ531,541同士が当接しない状態にベローズ52が縮小されるが、第1弁体54は、力Fb−Ps×Sで弁座57に押し付けられる。その結果、弁孔571が閉じられ、制御圧室121内の冷媒は、常開通路61のみから吸入室131へ流出する。これにより、斜板22が最小傾角の状態で回転し、可変容量型圧縮機10は、吐出容量が最小となる最小容量運転を行なう。この場合、循環阻止手段32は閉じられるので、冷媒が外部冷媒回路28を循環することはない。
【0042】
図3は、容量制御弁33の電磁ソレノイド34に対する電流供給が行なわれている状態(デューティ比が0より大きく、以下においてはON運転という)を示し、制御圧室121内の冷媒の一部は、通路47、感圧室44及び通路58を経由して吸入室131へ流入する。
【0043】
図5は、ON運転におけるベローズ52に掛かる力の釣り合いを説明するための説明図である。
矢印Q3は、受圧体53が段付き凹部481の段差484に当接しているときの段差484から受圧体53への反力Fnの方向を示している。反力Fnは、Fb−Fsp−Pc×Sの大きさである。矢印R2は、制御圧Pcと吸入圧Psとの差(Pc−Ps)と、駆動力伝達体49の大径部492の断面積Srodとの積(Pc−Ps)×Srodで表される力の方向を示す。弁室43内は、制御圧雰囲気にあり、力Pc×Srodは、第2弁体38を矢印R2の方向へ付勢している。第2感圧室442内は、吸入圧Ps雰囲気にあり、力Ps×Srodは、第2弁体38を矢印R2とは反対の方向へ付勢している。矢印R3は、電磁ソレノイド34への通電によって生じる電磁力Fsoの方向を示す。
【0044】
図5の状態は、制御圧Pcが上限値Pc2を超えていない状態であり、ストッパ531,541同士が当接しない状態でベローズ52が縮小しており、受圧体53が力Fnで段差484に押接されている。又、第1弁体54は、Fso+(Pc−Ps)×Srod+Ps×S−Fb=0で示すバランスによって、弁孔571を開き、第1弁体54の弁開度が安定する。その結果、制御圧室121内の冷媒は、常開通路61から吸入室131へ流出すると共に、通路47、第1感圧室441、弁孔571、第2感圧室442、通口572及び通路58という排出通路を経由して吸入室131へ流出する。この状態では、斜板22の傾角は、最小傾角より大きくなり、可変容量型圧縮機10は、斜板22の傾角が最小傾角より大きくなる中間容量運転を行なう。この場合、循環阻止手段32は開き、冷媒が外部冷媒回路28を循環する。
【0045】
図6のグラフにおけるDoは、電磁ソレノイド34への通電量の変化(電磁力の変化)を表す。曲線Ecoは、波形Doの推移に応じた制御圧Pcの変化の一例を示し、曲線Esoは、波形Doの推移に応じた吸入圧Psの変化の一例を示す。曲線Yoは、波形Doの推移に応じた吐出容量の変化の一例を示す。波形Doで示す通電量のデューティ比は、デューティ比100%より小さいデューティ比である。
【0046】
予め設定された(Pc−Ps)の上限(Pc−Ps)maxと有効受圧面積Sとの積(Pc−Ps)max×Sで表される力を起動時の電磁力Fsoとすると、差圧(Pc−Ps)が上限(Pc−Ps)maxを超えると、第2弁体38が弁孔40をさらに開いて急激な容量増加が妨げられる。例えば、電磁ソレノイド34への通電が開始されると、弁孔40における弁開度が小さくなり、制御圧Pcが低下して吐出容量が増大するが、吸入圧Psが制御圧Pcよりもさらに大きく低下する。この制御圧Pcと吸入圧Psとの差圧(Pc−Ps)の増大により、弁孔40における弁開度が増大し、吐出室132から制御圧室121への冷媒流量が増える。そのため、制御圧室121の制御圧が上昇し、差圧(Pc−Ps)がさらに増大する。しかし、差圧(Pc−Ps)が上限(Pc−Ps)maxを超えると、弁孔40における弁開度がさらに増大し、吐出室132から制御圧室121への冷媒流量がさらに増える。そのため、制御圧室121の制御圧がさらに上昇し、斜板22の傾角の増大が鈍化して吐出容量の急激な増大が回避される。又、吐出容量の増大に伴って吸入圧Psが上昇し、差圧(Pc−Ps)が減少する。これにより、弁孔40における弁開度が減少し、吐出容量が増加する。
【0047】
曲線D1で示す通電は、デューティ比100%の場合である。曲線Ec1は、曲線D1で示す通電の場合の制御圧の変化を示す。曲線Es1は、曲線D1で示す通電の場合の吸入圧の変化を示す。曲線Y1は、曲線D1で示す通電の場合の吐出容量の変化を示す。
【0048】
曲線Eco,Esoと曲線Ec1,Es1との比較から明らかなように、波形Doで示す通電の場合のON運転初期の制御圧及び吸入圧の変化は、曲線D1で示す通電の場合の制御圧及び吸入圧の変化よりも緩やかである。又、波形Doで示す通電の場合のON運転初期の曲線Yoで示す吐出容量の変化は、曲線D1で示す通電の場合の曲線Y1で示す吐出容量の変化よりも緩やかである。
【0049】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)電磁ソレノイド34が消磁状態では第1弁体54の弁開度が最大となっており、制御圧室121の圧力(制御圧)が高くなっている。制御圧室121の圧力を受圧体53の小径部482側の面で受けることによって、第1弁体54が排出通路の一部である弁孔571を閉じる閉弁方向に感圧体45は付勢されている。従って、制御圧室121の圧力が高くなったとしても、第1弁体54を閉弁した状態を維持でき、可変容量型圧縮機10の最小容量運転を確実に維持することができる。
【0050】
(2)吸入圧が制御範囲を超えている場合には、吸入圧より高い制御圧がベローズ52を最短に縮小させた状態で第1弁体54を弁孔閉じ位置に配置する。このような状態(OFF運転)から電磁ソレノイド34が励磁(ON運転開始)されると、第2弁体38の弁開度が小さくなって吸入圧が制御圧よりも先に低下してゆくが、この際の吸入圧と制御圧との差圧は、電磁ソレノイド34の励磁状態を制御することによって容易に制御できる。その結果、可変容量型圧縮機10の起動時(OFF運転からON運転への切り換え時)の圧縮機負荷の制御、起動時の容量の急激な増加を抑制する制御を容易に行なうことができる。
【0051】
(3)第1弁体54によって開閉される弁孔571の断面積とベローズ52の有効受圧面積との同一設定は、制御圧と吸入圧との差圧と電磁ソレノイド34の電磁駆動力とのバランスによる容量制御をもたらす。
【0052】
(4)受圧体53が凹部481の大径部483に嵌入されてガイドされるため、感圧体45の傾きが防止され、駆動力伝達体49の移動方向への感圧体45の移動が円滑に行なわれる。
【0053】
(5)付勢ばね55は、感圧体45を弁座57に向けて付勢しており、第1弁体54は、弁孔571を閉じる位置に向けて付勢ばね55のばね力によって付勢されている。そのため、第1弁体54は、電磁ソレノイド34が消磁状態(OFF運転状態)において付勢ばね55によって閉じ位置に確実に保持される。その結果、制御圧室121の冷媒が弁孔571を経由して吸入室131へ流出することはなく、斜板22の傾角が最小傾角に確実に保持される。
【0054】
(6)弁座57は、嵌合位置を変えられるため、ベローズ52の最大伸縮量を調整することができる。これは、感圧体45におけるばね特性の微妙な調整を可能にする。
本発明では以下のような実施形態も可能である。
【0055】
○OFF運転からON運転への切り換えの際に、電磁ソレノイド34への通電電流の大きさを通電開始時の初期の短時間(瞬間)には可動鉄心37の吸引に充分な大きさ(デューティ比100%)とし、その後は第1の実施形態のように小さくするようにしてもよい。この場合にも、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
○連通路62は、大径部483の内周面と受圧体53の外周面との間隙により構成してもよい。
○本発明の容量制御弁を電磁クラッチ付きの可変容量型圧縮機に用いてもよい。
【0057】
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
(イ)前記第1弁体に対する前記弁孔は、弁座に形成されており、前記弁座は、前記第1弁体54を収容するバルブハウジングに前記駆動力伝達体の移動方向へ嵌合位置調整可能に嵌合されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の容量制御弁。
【符号の説明】
【0058】
10…可変容量型圧縮機。121…制御圧室。131…吸入圧領域である吸入室。132…吐出圧領域である吐出室。33…容量制御弁。34…電磁ソレノイド。38…第2弁体。44…感圧手段を構成する感圧室。45…感圧手段を構成する感圧体。46,51…供給通路を構成する通路。47,58…排出通路を構成する通路。49…駆動力伝達体。492…案内手段を構成する大径部。52…感圧体を構成するベローズ。53…感圧手段を構成する受圧体。54…感圧体を構成する第1弁体。55…付勢ばね。571…弁孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給通路を介して吐出圧領域の冷媒が制御圧室に供給されると共に、排出通路を介して前記制御圧室の冷媒が吸入圧領域に排出されて前記制御圧室内の調圧が行われ、前記制御圧室内の調圧によって吐出容量が制御される可変容量型圧縮機に用いる容量制御弁であって、前記容量制御弁は、電磁ソレノイドと、前記電磁ソレノイドによって駆動される駆動力伝達体と、前記制御圧室に連通した感圧室内の圧力に応じて前記駆動力伝達体の移動方向に伸縮する感圧体を有する感圧手段とを備えている容量制御弁において、
前記排出通路における通過断面積を調整する第1弁体が前記感圧体に設けられており、
前記供給通路における通過断面積を調整する第2弁体と前記駆動力伝達体とが連結されており、
前記感圧体は、前記感圧室内において前記駆動力伝達体の移動方向に移動可能であり、
前記感圧体は、前記第1弁体が閉弁する方向に前記制御圧室の圧力によって付勢されている容量制御弁。
【請求項2】
前記第1弁体によって開閉される前記排出通路の一部となる弁孔の断面積は、前記感圧体の有効受圧面積と同じである請求項1に記載の容量制御弁。
【請求項3】
前記駆動力伝達体の移動方向に前記感圧体の移動を案内する案内手段が設けられている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の容量制御弁。
【請求項4】
前記感圧体は、前記第1弁体が閉弁する方向に付勢ばねによって付勢されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の容量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108364(P2013−108364A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251820(P2011−251820)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】