説明

容量性負荷駆動回路

【課題】電源電圧を超えた電圧の駆動信号を発生させることが可能で、しかも環境温度や
部品の製造ばらつきの影響を受けることなく安定した駆動信号を発生させることが可能な
技術を提供する。
【解決手段】容量性負荷に印加すべき駆動信号の基準となる駆動波形信号を、パルス変調
することによって変調信号を生成し、得られた変調信号を電力増幅した後、平滑フィルタ
ーを用いて駆動信号を復調する。また、こうして得られた駆動信号を負帰還させることに
よって、平滑フィルターの共振ピークを抑制する。このとき、ピークを完全に抑制するの
ではなく、比較的広い周波数帯域でゲインが一定以上(たとえば2以上)となるようにす
ることで、電源電圧を超えた電圧の駆動信号を安定して発生させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量成分が変動する容量性負荷を駆動する技術や、あるいは容量成分が異な
る複数の容量性負荷を切り換えて駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターに搭載されている噴射ヘッドなどのように、所定の駆動信号
を印加することによって液体を噴射するなどの動作を行うアクチュエーターは数多く存在
する。アクチュエーターの動作は印加される電圧に依存するため、アクチュエーターの性
能を十分に引き出すためには、高い電圧まで印加可能であることが望ましい。そこで、ア
クチュエーターへ印加する駆動波形信号を電力増幅してアクチュエーターに印加すること
が行われる。
【0003】
駆動波形信号を電力増幅する方法としては、たとえばD級増幅器を用いる方法が知られ
ている(特許文献1など)。この方法では、駆動波形信号をパルス変調してパルス波状の
変調信号に変換した後に電力増幅を行う。パルス変調の方式としては、パルス幅変調(M
COM)方式またはパルス密度変調(PDM)方式の何れも適用可能であるが、パルス幅
変調されることが通常である。そして、得られたパルス波状の変調信号を電力増幅するこ
とによって、電源電圧とグランドとの間で変化するパルス波状の変調信号(電力増幅変調
信号)に変換した後、平滑フィルターを用いて変調成分を取り除くことによって、電力増
幅された駆動波形信号(駆動信号)を生成する。
【0004】
また、無線周波数帯域(RF)での電力増幅に用いられるE級増幅器も知られている。
E級増幅器では、誘導性素子のインダクタンスと容量性負荷が有するキャパシタンスとの
間で生じる共振現象を利用して電力増幅を行うため、電源電圧を超えた電圧を発生させる
ことも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−329710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術では、駆動波形信号を電源電圧以上の電圧に増幅して駆動
信号を生成し、しかも環境温度や素子温度、製造ばらつきの影響を受けることなく安定し
て駆動信号を生成することができないという問題がある。たとえばD級増幅器では、パル
ス波状の変調信号のデューティー比を変化させることによって電圧を変化させているので
、グランドに相当するデューティー比0%から、電源電圧に相当するデューティー比10
0%までの間でしか電圧を変化させることができない。しかも、パルス幅変調でデューテ
ィー比100%を実現しようとすると、無限に狭い幅のパルスが必要となるが、出力可能
なパルス幅には限界があるので、実際には電源電圧まで増幅することも不可能である。ま
た、パルス密度変調した場合は、電源電圧まで増幅することが可能となるが、パルスの発
生周波数が低い部分が発生して、この部分では平滑フィルターでパルス成分を十分に除去
することができないため、得られる駆動信号が歪んでしまう。
【0007】
更に、E級増幅器では、誘導性素子のインダクタンスLと容量性負荷が有するキャパシ
タンスCとの間で生じる共振現象(LC共振)を利用して電力増幅を行うが、共振が発生
する周波数(共振周波数)は、環境温度や、素子の温度変化、あるいは素子の製造ばらつ
きの影響で変化する。そして、LC共振はQ値が高いため、共振周波数が変化すると増幅
率が大きく変化してしまう。このため、駆動波形信号を安定して電力増幅して駆動信号を
生成することができない。
【0008】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになさ
れたものであり、電源電圧を超えた電圧の駆動信号を発生させることが可能で、しかも環
境温度や部品の製造ばらつきなどの影響を受けることなく安定した駆動信号を発生させる
ことが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の容量性負荷駆動回路は次の
構成を採用した。すなわち、
容量成分を有する容量性負荷に対して所定の駆動信号を印加することによって、該容量
性負荷を駆動する容量性負荷駆動回路であって、
前記駆動信号の基準となる駆動波形信号を出力する駆動波形信号出力回路と、
前記駆動波形信号と、前記容量性負荷に印加された駆動信号から生成された帰還信号と
の差分を取ることによって誤差信号を生成する演算回路と、
前記誤差信号をパルス変調することによって変調信号を生成する変調回路と、
前記変調信号を電力増幅することにより、パルス波状の電力増幅変調信号を生成するデ
ジタル電力増幅回路と、
前記デジタル電力増幅回路と前記容量性負荷とを接続して、該デジタル電力増幅回路か
らの前記電力増幅変調信号を前記駆動信号として該容量性負荷に供給する誘導性素子と、
前記誘導性素子からの前記駆動信号に対して、位相を進ませる補償である位相進み補償
を行った後、得られた信号を前記帰還信号として前記演算回路に負帰還させることにより
、前記電力増幅変調信号に対する前記駆動信号のゲインが1.5倍以上から5倍以下の範
囲に収まるように、前記誘導性素子と前記容量性負荷との間で生じる共振特性を抑制する
位相進み補償回路と
を備えることを要旨とする。
【0010】
こうした本発明の容量性負荷駆動回路においては、次のようにして容量性負荷に駆動信
号を印加する。先ず、駆動信号の基準となる駆動波形信号と、実際に容量性負荷に印加さ
れた駆動信号から生成された帰還信号との差分を取ることによって誤差信号を生成する。
次に、誤差信号をパルス変調することによって変調信号を生成し、得られた変調信号を電
力増幅して、パルス波状の電力増幅変調信号を生成する。そして、この電力増幅変調信号
を、誘導性素子を介して容量性負荷に供給することによって、容量性負荷に駆動信号を印
加する。誘導性素子は、容量性負荷と組み合わされることによって平滑フィルターを構成
するから、パルス波状の電力増幅変調信号を、誘導性素子を介して容量性負荷に供給する
ことで、電力増幅変調信号の変調成分が取り除かれて、電力増幅された信号成分(駆動波
形信号)が駆動信号として容量性負荷に印加される。また、誘導性素子と容量性負荷とが
組み合わされると共振回路が形成されるので、誘導性素子のインダクタンスと、容量性負
荷のキャパシタンスとによって決定される共振周波数では、容量性負荷に印加される駆動
信号の電圧が、誘導性素子に供給した電力増幅変調信号よりも大きくなる。そこで、誘導
性素子に印加される駆動信号に対して位相を進ませる補償(位相進み補償)を行った後、
得られた信号を帰還信号として演算回路に負帰還させることによって、誘導性素子と容量
性負荷との間の共振特性を抑制する。但し、共振特性を完全に抑制してしまうのではなく
、電力増幅変調信号に対する駆動信号のゲインが1.5倍以上から5倍以下の範囲に収ま
る程度に、共振特性を抑制する。
【0011】
誘導性素子と容量性負荷とによって形成される共振回路は、誘導性素子のインダクタン
スと容量性負荷のキャパシタンスとによって決まる共振周波数の近傍で、鋭い共振ピーク
を発生させる。そして、誘導性素子のインダクタンスや容量性負荷のキャパシタンスは、
環境温度の変化や素子の製造ばらつきによって変動する。従って、これらの影響によって
共振周波数が変動するので、電力増幅変調信号に対する駆動信号のゲインは大きく変動す
る。また、誘導性素子や容量性負荷は、使用中の電力損失によって温度が上昇するから、
容量性負荷の駆動中にゲインが大きく変動することも起こり得る。これに対して本発明の
容量性負荷駆動回路では、誘導性素子に印加された駆動信号に対して位相進み補償を行っ
た後に負帰還させることで、共振特性を抑制しているので、共振周波数の周辺でゲインが
大きく変動することがない。このため、環境温度の変化や素子の製造ばらつきによって共
振周波数が変動しても、電力増幅変調信号に対する駆動信号のゲインは大きく変動するこ
とがない。ここで、ゲインの変動を抑制する観点からすれば、共振特性をできるだけ抑制
することが望ましい。一方、電力増幅変調信号に対してできるだけ大きな駆動信号を生成
する観点からすれば、共振特性はできるだけ抑制しないことが望ましい。すなわち、ゲイ
ンの変動を抑制することと、大きなゲインを確保することとは、互いに二律背反する関係
にある。経験上からは、電力増幅変調信号に対する駆動信号のゲインが、1.5倍以上か
ら5倍以下の範囲に収まるように共振特性を抑制すると、電力増幅変調信号に対する駆動
信号のゲインの変動を抑制しながら、ある程度のゲインを確保することが可能となる。そ
の結果、電力増幅変調信号の電圧を超えた電圧を有する駆動信号を発生させることが可能
で、しかも環境温度や部品の製造ばらつきなどの影響を受けることなく安定した駆動信号
を発生させることが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の容量性負荷駆動回路においては、容量性負荷に対して並列に接
続された容量性素子を備えることとしてもよい。
【0013】
上述したように、本発明の容量性負荷駆動回路は、誘導性素子と容量性負荷との間に発
生する共振現象を利用することによって、電力増幅変調信号に対して駆動信号を増幅して
いる。従って、こうした効果が得られるのは、共振回路の共振周波数の周辺の周波数範囲
となる。ここで、共振周波数は誘導性素子のインダクタンスと容量性負荷のキャパシタン
スとによって決定されるが、容量性負荷のキャパシタンスは、容量性負荷の大きさや特性
などによってある程度まで決まってしまう。従って、望ましい共振周波数を得るためには
誘導性素子のインダクタンスを大きくしなければならず、大きな誘導性素子が必要になっ
てしまう場合も起こり得る。このような場合には、容量性負荷に対して容量性素子(コン
デンサーなど)を並列に接続することで、容量性負荷のキャパシタンスはそのままでも、
誘導性素子からは、容量性負荷と容量性素子との合成キャパシタンスを有する容量性負荷
が接続されているように見える。このため、大きな誘導性素子を搭載する必要がなくなる
ので、容量性負荷駆動回路が大きくなってしまうことを回避することが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の容量性負荷駆動回路においては、誤差信号をパルス変調して変
調信号を生成するに際して、誤差信号に応じてパルス幅を異ならせるいわゆるパルス幅変
調することとしてもよい。
【0015】
パルス幅変調は、極めて簡単な回路で実現することができるので、コンパクトな容量性
負荷駆動回路を容易に実現することが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明の容量性負荷駆動回路においては、誤差信号をパルス変調して変
調信号を生成するに際して、誤差信号に応じてパルスの密度(発生頻度)を異ならせるい
わゆるパルス密度変調することとしてもよい。
【0017】
詳細なメカニズムについては後述するが、パルス密度変調を用いれば、電源電圧の変動
などによる影響が抑制されるようにパルス変調することができる。このため、たとえ何ら
かの理由で電源電圧の変動などが生じても、こうしたことによる影響を受けることなく、
安定した駆動信号を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例の容量性負荷駆動回路を搭載した液体噴射装置を例示した説明図である。
【図2】本実施例の容量性負荷駆動回路の回路構成を示した説明図である。
【図3】本実施例の容量性負荷駆動回路の周波数応答特性を解析するためのブロック線図である。
【図4】本実施例の容量性負荷駆動回路の周波数応答特性を示すボード線図である。
【図5】本実施例の容量性負荷駆動回路が駆動波形信号から駆動信号を生成する様子を示した説明図である。
【図6】第1変形例の容量性負荷駆動回路で用いられる変調回路およびデジタル電力増幅回路の回路構成を示した説明図である。
【図7】第1変形例の容量性負荷駆動回路が駆動波形信号から駆動信号を生成する様子を示した説明図である。
【図8】第2変形例の容量性負荷駆動回路の一部を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.装置構成:
B.容量性負荷駆動回路の回路構成:
C.容量性負荷駆動回路の動作:
D.変形例:
D−1.第1変形例:
D−2.第2変形例:
【0020】
A.装置構成 :
図1は、本実施例の容量性負荷駆動回路200を搭載した液体噴射装置100の構成を
示した説明図である。図示されているように液体噴射装置100は、大きく分けると、液
体を噴射する噴射ユニット110と、噴射ユニット110から噴射される液体を噴射ユニ
ット110に向けて供給する供給ポンプ120と、噴射ユニット110および供給ポンプ
120の動作を制御する制御ユニット130などから構成されている。
【0021】
噴射ユニット110は、金属製のフロントブロック113に、同じく金属製のリアブロ
ック114を重ねてネジ止めしたような構造となっており、フロントブロック113の前
面には円管形状の液体通路管112が立設され、液体通路管112の先端には噴射ノズル
111が挿着されている。フロントブロック113とリアブロック114との合わせ面に
は、薄い円板形状の液体室115が形成されており、液体室115は、液体通路管112
を介して噴射ノズル111に接続されている。また、リアブロック114の内部には、積
層型圧電素子によって構成されたアクチュエーター116が設けられている。供給ポンプ
120は、噴射しようとする液体(水、生理食塩水、薬液など)が貯められた液体タンク
123から、チューブ121を介して液体を吸い上げた後、チューブ122を介して噴射
ユニット110の液体室115内に供給する。このため、液体室115は液体で満たされ
た状態となっている。
【0022】
そして、制御ユニット130から駆動信号をアクチュエーター116に印加すると、ア
クチュエーター116が伸張して液体室115が押し縮められ、その結果、液体室115
内に充満していた液体が、噴射ノズル111からパルス状に噴射されるようになっている
。アクチュエーター116の伸張量は、駆動信号として印加される電圧に依存する。従っ
て、アクチュエーター116の能力を十分に引き出すためには、大きな電圧振幅を出力可
能でしかも精度の良い駆動信号を生成して、アクチュエーター116に印加する必要があ
る。そこで、このような駆動信号を生成するために、制御ユニット130内には、以下に
説明するような本実施例の容量性負荷駆動回路200が搭載されている。
【0023】
B.容量性負荷駆動回路の回路構成 :
図2は、本実施例の容量性負荷駆動回路200の回路構成を示した説明図である。図示
されているように、容量性負荷駆動回路200は大きく分けると、駆動信号の基準となる
駆動波形信号(以下、WCOM)を出力する駆動波形信号発生回路(駆動波形信号出力回
路)210と、駆動波形信号発生回路210から受け取ったWCOMと後述する帰還信号
(以下、dCOM)とに基づいて誤差信号(以下、dWCOM)を出力する演算回路22
0と、演算回路220からのdWCOMをパルス変調して変調信号(以下、MCOM)に
変換する変調回路230と、変調回路230からのMCOMをデジタル的に電力増幅して
電力増幅変調信号(以下、Vs)を生成するデジタル電力増幅回路240と、デジタル電
力増幅回路240からVsを受け取って変調成分を取り除いた後、駆動信号(以下、CO
M)として噴射ユニット110のアクチュエーター116に供給するコイル250(誘導
性素子)と、コイル250からアクチュエーター116に供給されたCOMに対して位相
を進ませる補償を加えて、dCOM(帰還信号)を生成する位相進み補償回路270とを
備えている。
【0024】
このうち、駆動波形信号発生回路210は、WCOMのデータを記憶した波形メモリー
や、D/A変換器を備えており、波形メモリーから読み出したデータをD/A変換器でア
ナログ信号に変換することによって、WCOM(駆動波形信号)を生成する。こうして出
力されたWCOMは、演算回路220の非反転入力端子に入力される。また、位相進み補
償回路270からのdCOM(帰還信号)は演算回路220の反転入力端子に入力される
。その結果、WCOMとdCOMとの差分に相当する信号が、dWCOM(誤差信号)と
して演算回路220から出力される。
【0025】
続いて、dWCOMを一定周期の三角波(以下、Tri)と比較して、dWCOMの方
が大きければHigh状態(変調回路230の動作電圧)、Triの方が大きければLo
w状態(グランド電圧)となるようなパルス波状のMCOM(変調信号)を生成する。そ
して、得られたMCOMは、デジタル電力増幅回路240に入力される。デジタル電力増
幅回路240は、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素子(MOSFETなど)と
、電源と、これらスイッチ素子を駆動するゲートドライバーとを備えている。MCOMが
High状態の場合は、ハイサイド側のスイッチ素子がON状態になり、ローサイド側の
スイッチ素子がOFF状態になって、電源の電圧VddがVsとして出力される。また、
MCOMがLow状態の場合は、ハイサイド側のスイッチ素子がOFF状態になり、ロー
サイド側のスイッチ素子がON状態になってグランドの電圧がVsとして出力される。従
って、変調回路230の動作電圧とグランドとの間でパルス波状に変化するMCOMを、
電源の電圧Vddとグランドとの間でパルス波状に変化するVsに電力増幅することがで
きる。
【0026】
また、この増幅では、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素子のON/OFFを
切り換えているだけなので、アナログ波形を増幅する場合に比べて電力損失を大幅に抑制
することが可能である。その結果、電力効率を向上させることが可能となるだけでなく、
放熱のために大きなヒートシンクを設ける必要もなくなるので、回路を小型化することも
可能となる。
【0027】
こうして電力増幅されたVs(電力増幅変調信号)を、コイル250を通した後、CO
M(駆動信号)としてアクチュエーター116に印加する。詳細には後述するが、コイル
250は、アクチュエーター116の容量成分と組み合わされることによって平滑フィル
ター260を構成しており、Vs中の変調成分が平滑フィルター260によって減衰する
結果、Vsの中の信号成分が取り出されてCOMとして復調される。加えて、本実施例の
容量性負荷駆動回路200では、Vsをコイル250に通して変調成分を減衰させるだけ
でなく、Vs中の信号成分を増幅(1.5倍以上から5倍以下の範囲、代表的には2倍程
度に増幅)している。このため、デジタル電力増幅回路240では、電圧Vddまでしか
電力増幅できないにも拘わらず、電圧Vdd以上の電圧を含んだCOMを出力することが
可能となる。こうしたことが可能となる理由についても、後ほど詳しく説明する。
【0028】
また、アクチュエーター116に印加されるCOMを負帰還させてフィードバック制御
系を構成するが、コイル250を通過したCOMは、平滑フィルター260の位相特性に
よって、WCOMに対して位相が遅れている。そこで、COMを単純に負帰還させるので
はなく、コンデンサーChと抵抗Rhとによって構成された位相進み補償回路270を通
して位相を進ませる補償を行い、得られた信号をdCOMとして演算回路220の反転入
力端子に入力することによって負帰還させるようになっている。
【0029】
C.容量性負荷駆動回路の動作 :
図3は、本実施例の容量性負荷駆動回路200の周波数応答特性を解析するためのブロ
ック線図である。先ず、駆動波形信号発生回路210からのWCOM(駆動波形信号)は
、演算回路220で位相進み補償回路270からのdCOM(帰還信号)が減算されて、
dWCOM(誤差信号)を生成する。このdWCOMは、変調回路230でMCOM(変
調信号)に変換された後、デジタル電力増幅回路240で増幅されてVs(電力増幅変調
信号)に変換され、平滑フィルター260で復調されてCOM(駆動信号)として出力さ
れる。こうして出力されたCOMは、位相進み補償回路270で位相進み補償が施された
後、dCOMとしてWCOMに対して負帰還されることによって、全体としてフィードバ
ック制御系を構成している。
【0030】
ここで、コイル250のインダクタンスをL、アクチュエーター116(圧電素子)の
キャパシタンスをCpとすると、平滑フィルター260の伝達関数F(s)は、図3(b
)に示した式で与えられる。また、位相進み補償回路270の伝達関数β(s)は、図3
(c)に示した式で与えられる。ここで、Chは、位相進み補償回路270を構成するコ
ンデンサーのキャパシタンスを表しており、Rhは位相進み補償回路270を構成する抵
抗の抵抗値を表している。従って、容量性負荷駆動回路200の全体の伝達関数H(s)
は、デジタル電力増幅回路240で電力増幅する際のゲインをGとすると、図3(d)に
示した式で与えられる。
【0031】
図4は、容量性負荷駆動回路200の全体の伝達関数H(s)の周波数応答特性を表す
ボード線図である。図4(a)にはゲイン線図が示されており、図4(b)には位相線図
が示されている。また、ゲイン線図および位相線図には、容量性負荷駆動回路200全体
の伝達関数H(s)の特性に加えて、デジタル電力増幅回路240を含めた平滑フィルタ
ー260の伝達関数G・F(s)の特性や、位相進み補償回路270の伝達関数β(s)
の特性も示されている。
【0032】
図4(a)のゲイン線図中に破線で示されているように、コイル250の誘導成分は、
アクチュエーター116(圧電素子)の容量成分と共に共振回路を形成するので、図中に
示された計算式で定まる共振周波数f0の付近で、ゲインの鋭いピークが現れる。そこで
、COMを負帰還させることによって、ピークの鋭さ(Q値)を抑制する。但し、図4(
b)に示されるように、平滑フィルター260の位相特性によって、COMは共振周波数
f0よりも高い周波数領域で位相が180度遅れるから、COMをそのまま負帰還させた
のでは制御ユニット130が不安定となる虞がある。そこで、図4中に一点鎖線で示した
特性の位相進み補償回路270を用いて位相を進ませる補償を行った後、dCOM(帰還
信号)として負帰還させる。こうすれば、制御ユニット130を不安定にすることなく、
COMを負帰還させることが可能となり、その結果、図4(a)中に実線で示したように
ゲイン線図に現れるピークの鋭さ(Q値)を抑制することが可能となる。
【0033】
ここで、本実施例の容量性負荷駆動回路200では、ゲインのピークを完全に抑制する
のではなく、ある程度のピークを残している。このため、共振周波数f0の周辺の周波数
領域では、デジタル電力増幅回路240のゲインGよりも大きなゲインが得られるように
なっている。もちろん、COMを負帰還させているので、デジタル電力増幅回路240お
よび平滑フィルター260の伝達関数G・F(s)に比べると、ゲインの変化はなだらか
となっている。このため、環境温度や、アクチュエーター116の温度変化、あるいはコ
イル250やアクチュエーター116の製造ばらつきの影響で、共振周波数が変化しても
、そのことによってゲインが大きく変化することはない。その結果、デジタル電力増幅回
路240で電力増幅した以上の電圧を含むCOM(駆動信号)を出力可能でありながら、
環境温度や部品の製造ばらつきなどの影響を受けることなく安定したCOMを発生させる
ことが可能となる。
【0034】
尚、以上の説明から明らかなように、ゲインの変動を抑制する観点からすれば、共振特
性をできるだけ抑制することが望ましい。一方、Vs(電力増幅変調信号)に対してでき
るだけ大きなCOM(駆動信号)を生成する観点からすれば、共振特性はできるだけ抑制
しないことが望ましい。すなわち、ゲインの変動を抑制することと、大きなゲインを確保
することとは、互いに二律背反する関係にある。経験上からは、Vsに対するCOMのゲ
インが、1.5倍以上から5倍以下の範囲に収まるように(代表的にはゲインが2倍程度
となるように)共振特性を抑制すると、ある程度のゲインを確保しながら、安定したCO
Mを発生させることが可能となる。
【0035】
図5は、本実施例の容量性負荷駆動回路200が、WCOM(駆動波形信号)から実際
にCOM(駆動信号)を生成する動作を例示した説明図である。図5(a)中に示した太
い実線は、駆動波形信号発生回路210から出力されるWCOMを表している。また、図
5(a)中に示した破線は、位相進み補償回路270からのdCOM(帰還信号)を表し
ている。図2を用いて前述したように、WCOMは演算回路220の非反転入力端子に入
力され、dCOMは演算回路220の反転入力端子に入力されるので、演算回路220か
らは、WCOMからdCOMを減算した差分の信号が、dWCOM(誤差信号)として出
力される。そして、このdWCOMが、変調回路230でMCOM(変調信号)にパルス
変調される。
【0036】
図5(b)には、変調回路230でdWCOMをMCOMに変換する様子が示されてい
る。変調回路230では、図5(b)中に太い実線で表されたdWCOMと、細い破線で
表されたTri(三角波)とを比較する。そして、dWCOMの方が大きければ、変調回
路230の動作電圧を出力し(High状態)、Triの方が大きければ、グランド電圧
を出力する(Low状態)。その結果、グランド電圧と、変調回路230の動作電圧との
間で、パルス波状に電圧が変化する変調信号(MCOM)が生成される。図5(c)には
、こうして得られたMCOMが示されている。
【0037】
続いて、MCOMをデジタル電力増幅回路240で電力増幅する。図2を用いて前述し
たように、デジタル電力増幅回路240は、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素
子(MOSFETなど)の接続状態をMCOMによって切り換えることにより、図5(d
)に示したような、電源の電圧Vddとグランド電圧とに切り換わるパルス波形、すなわ
ちVs(電力増幅変調信号)を生成する。そして、このVsをコイル250に通すことに
よって変調成分が除かれて、信号成分が復調される。
【0038】
こうして復調された信号成分は、デジタル電力増幅回路240でMCOMが電力増幅さ
れていることに対応して、元になった信号(WCOM)よりも最大電圧が大きくなってい
る。加えて、図4(a)を用いて前述したように、伝達関数H(s)のゲインがデジタル
電力増幅回路240のゲインGよりも大きくなっているので、Vsから復調された信号成
分の最大電圧は、Vsの最大電圧(電圧Vdd)よりも大きくなる。更に、伝達関数H(
s)のゲインは、平滑フィルター260の共振周波数f0を含んだ比較的広い周波数領域
でなだらかに変化しているので、Vsに含まれる信号成分を復調する際に波形を歪ませる
こともない。その結果、図5(e)に例示したように、駆動波形信号発生回路210から
出力されたWCOMが、Vsの最大電圧(電圧Vdd)よりも更に大きな電圧Vcomを
含んだCOM(駆動信号)を得ることが可能となる。
【0039】
また、平滑フィルター260の共振周波数f0は、コイル250のインダクタンスLと
、アクチュエーター116(圧電素子)のキャパシタンスCpによって決まるから、環境
温度の変化や、コイル250やアクチュエーター116(圧電素子)の製造ばらつきの影
響によって共振周波数f0は変化する。しかし、図4(a)を用いて前述したように、伝
達関数H(s)のゲインは、平滑フィルター260の共振周波数f0を含んだ比較的広い
周波数領域でなだらかに変化していることから、たとえ共振周波数f0が変化したとして
も、そのことによってゲインが大きく変化することはない。その結果、環境温度の変化や
、コイル250やアクチュエーター116(圧電素子)の製造ばらつきの影響を受けるこ
となく、Vsの最大電圧(電圧Vdd)よりも更に大きな電圧Vcomを含んだCOM(
駆動信号)を、安定して発生させることが可能となる。
【0040】
D.変形例 :
上述した本実施例の容量性負荷駆動回路200には、いくつかの変形例が存在する。以
下では、これら変形例について簡単に説明する。尚、以下の変形例においては、上述した
本実施例と同様な構成部分については、本実施例と同様の符番を付すこととして、詳細な
説明を省略する。
【0041】
D−1.第1変形例 :
上述した実施例では、変調回路230が、いわゆるパルス幅変調(PWM)と呼ばれる
方法を用いて、dWCOMをパルス変調するものとして説明した。しかし、パルス変調す
る方式はパルス幅変調方式に限られるものではなく、たとえばパルス密度変調(PDM)
と呼ばれる方式を用いてパルス変調することも可能である。以下では、PDMと呼ばれる
方式で変調する第1変形例について説明する。
【0042】
図6は、第1変形例の容量性負荷駆動回路200で用いられる変調回路235、および
デジタル電力増幅回路240の回路構成を示した説明図である。第1変形例の変調回路2
35は、dWCOM(誤差信号)と、デジタル電力増幅回路240からのVs(電力増幅
変調信号)を抵抗Rsおよび抵抗Rgで分圧した信号との差分を積分する積分器236と
、積分器236で得られた積分信号(以下、Vt)をパルス変調するヒステリシスコンパ
レーター237から構成されている。ここでヒステリシスコンパレーター237とは、出
力がLow状態からHigh状態に切り換わるための閾値th1と、High状態からL
ow状態に切り換わるための閾値th2(th1>th2)とが異なる値に設定されたコ
ンパレーターである。
【0043】
図7は、第1変形例の容量性負荷駆動回路200が、WCOM(駆動波形信号)からC
OM(駆動信号)を生成する動作を例示した説明図である。図7(a)中に示した太い実
線は、駆動波形信号発生回路210から出力されるWCOMを表しており、図7(a)中
に示した破線は、位相進み補償回路270からのdCOM(帰還信号)を表している。第
1変形例の容量性負荷駆動回路200においても、WCOMからdCOMを減算すること
によってdWCOM(誤差信号)を生成する。そして、このdWCOMを、図6に示した
変調回路235に入力することによってパルス変調する。
【0044】
図7(b)には、変調回路235の中の積分器236の動作が表されている。図6に示
したように積分器236は、dWCOM(誤差信号)と、デジタル電力増幅回路240か
らのVs(電力増幅変調信号)を抵抗Rsおよび抵抗Rgで分圧した信号との差分を積分
して、Vt(積分信号)を生成する。従って、差分が大きければVtは速やかに変化し、
逆に差分が小さければVtはゆっくりと変化することとなって、結局、図7(b)中に細
い破線で示した三角波形となる。そして、このVtをヒステリシスコンパレーター237
によってパルス変調することにより、図7(c)に示したMCOMを得ることができる。
【0045】
こうしてMCOMが得られたら、得られたMCOMをデジタル電力増幅回路240で電
力増幅することによって、図7(d)に示すVs(電力増幅変調信号)を生成した後、こ
のVsをコイル250に通すことによって信号成分を復調する。こうすれば、図7(e)
に示すように、電力増幅されたCOMを得ることができる。
【0046】
以上に示した第1変形例においても、平滑フィルター260の共振周波数f0を含んだ
周波数領域では、Vsに対するCOMのゲインを、1.5倍以上から5倍以下の範囲に設
定しておくことで、デジタル電力増幅回路240の電源電圧Vddよりも高い電圧を有す
るCOMを発生させることが可能となる。また、伝達関数H(s)のゲイン線図から明ら
かなように、Vsに対するCOMのゲインはなだらかに変化しているので、Vsから信号
成分を復調してCOMを生成する際に波形が歪むこともない。更に、環境温度の変化や、
コイル250やアクチュエーター116(圧電素子)の製造ばらつきの影響を受けること
なく、デジタル電力増幅回路240の電源電圧Vddよりも大きな電圧を含んだCOM(
駆動信号)を、安定して発生させることができる。
【0047】
加えて、上述したように変形例のようにPDM方式でパルス変調した場合、前述のPW
M方式でパルス変調した場合に比べて、次のような利点も得ることができる。先ず、デジ
タル電力増幅回路240で得られるVsは、グランド電圧と、電源電圧Vddとの間で電
圧値が切り換わるパルス波形となる。従って、何らかの理由で電源電圧Vddが変動する
と、Vsの振幅が変化する。このため、PWM方式でパルス変調した場合には、デジタル
電力増幅回路240の電源電圧Vddの変動やトランジスターの特性のばらつきなどが、
そのままCOMに影響を与えてしまう。ところが、PDM方式でパルス変調した場合には
、以下の理由から、デジタル電力増幅回路240の電源電圧Vddの変動や、トランジス
ターの特性のばらつきが、COMに与える影響を抑制することが可能となる。
【0048】
先ず、PDM方式では、ヒステリシスコンパレーター237に入力されるVt(積分信
号)は、演算回路220からのdWCOMと、デジタル電力増幅回路240からのVsを
分圧した値との差を積分することによって得られる。従って、デジタル電力増幅回路24
0の電源電圧Vddが低下すると、Vtの立下りの傾きは緩やかとなる。その結果、ヒス
テリシスコンパレーター237から出力されるMCOMがHigh状態となる期間が長く
なる。また、デジタル電力増幅回路240の電源電圧Vddが上昇すると、Vtの立下り
の傾きは急になる。その結果、ヒステリシスコンパレーター237から出力されるMCO
MがLow状態となる期間が長くなる。
【0049】
すなわち、何らかの理由でデジタル電力増幅回路240の電源電圧Vddが低下すると
、MCOMはHigh状態の期間が長めの信号となり、逆に電源電圧Vddが高くなると
、MCOMはLow状態の期間が長めの信号となる。そして、MCOMのHigh状態の
期間が長めとなれば、平滑フィルターに通した後に得られる電圧は高めとなり、MCOM
のLow状態の期間が長めとなれば、平滑フィルターに通した後に得られる電圧は低めと
なる。結局、デジタル電力増幅回路240の電源電圧Vddが変動しても、その影響がC
OMに現れないようにMCOMが変化する。このため、PDM方式を用いてパルス変調し
た場合には、電源電圧Vddの変動の影響を受けることなく、常に安定したCOM(駆動
信号)を生成することが可能となる。
【0050】
D−2.第2変形例 :
以上に説明した本実施例あるいは変形例では、コイル250とアクチュエーター116
(圧電素子)とによって平滑フィルター260が構成されるものとして説明した。しかし
、アクチュエーター116に対して並列に接続されるようにコンデンサーを設けておき、
このコンデンサーと、コイル250と、アクチュエーター116とによって平滑フィルタ
ー260を構成するようにしても良い。
【0051】
図8は、このようにして構成された第2変形例の容量性負荷駆動回路200の一部を例
示した説明図である。図示されるように、第2変形例の容量性負荷駆動回路200では、
アクチュエーター116に対して並列に接続されるように、コンデンサー252(容量性
素子)が設けられている。このような構成では、コイル250のインダクタンスLと、ア
クチュエーター116のキャパシタンスCpと、コンデンサー252のキャパシタンスC
cとによって共振回路が形成される。そして、互いに並列に接続されたアクチュエーター
116のキャパシタンスCpと、コンデンサー252のキャパシタンスCcとは、合成キ
ャパシタンス(大きさは、Cp+Cc)として取り扱うことができるから、この共振回路
の共振周波数は、コイル250のインダクタンスLと、合成キャパシタンスCp+Ccと
によって決まる周波数となる。
【0052】
容量性負荷駆動回路200の駆動負荷であるアクチュエーター116のキャパシタンス
Cpは、多くの場合、決まっている。従って、仮にコンデンサー252がなかったとする
と、共振周波数を所望の周波数に設定しようとするためにはコイル250のインダクタン
スLで調整する必要がある。その結果、場合によっては、大きなコイル250が必要にな
って、容量性負荷駆動回路200が大きくなってしまうことがある。ところが、このよう
な場合でも、アクチュエーター116に並列にコンデンサー252を接続してやれば、コ
ンデンサー252のキャパシタンスを適切に設定することで、コイル250を大きくする
ことなく、共振周波数を所望の周波数に設定することが可能となる。
【0053】
以上、本実施例および変形例の容量性負荷駆動回路について説明したが、本発明は上記
すべての実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲におい
て種々の態様で実施することが可能である。例えば、薬剤や栄養剤を内包するマイクロカ
プセルを形成することに用いる流体噴射装置など、医療機器を含む様々な電子機器に本実
施例の容量性負荷駆動回路を適用することで、電力効率が良く小型化の電子機器を提供す
ることができる。また、インクジェットプリンターに搭載されて、インクを噴射する噴射
ノズルを駆動するための容量性負荷駆動回路に対しても、本発明を好適に適用することが
可能である。
【符号の説明】
【0054】
100…液体噴射装置、 110…噴射ユニット、 111…噴射ノズル、
112…液体通路管、 113…フロントブロック、 114…リアブロック、
115…液体室、 116…アクチュエーター、 120…供給ポンプ、
121…チューブ、 122…チューブ、 123…液体タンク、
130…制御ユニット、 200…容量性負荷駆動回路、
210…駆動波形信号発生回路、 220…演算回路、
230…変調回路、 235…変調回路、 236…積分器、
237…ヒステリシスコンパレーター、 240…デジタル電力増幅回路、
250…コイル、 252…コンデンサー、 260…平滑フィルター、
270…位相進み補償回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量成分を有する容量性負荷に対して所定の駆動信号を印加することによって、該容量
性負荷を駆動する容量性負荷駆動回路であって、
前記駆動信号の基準となる駆動波形信号を出力する駆動波形信号出力回路と、
前記駆動波形信号と、前記容量性負荷に印加された駆動信号を用いて生成された帰還信
号との差分を取ることによって誤差信号を生成する演算回路と、
前記誤差信号をパルス変調することによって変調信号を生成する変調回路と、
前記変調信号を電力増幅することによって、パルス波状の電力増幅変調信号を生成する
デジタル電力増幅回路と、
前記デジタル電力増幅回路と前記容量性負荷とを接続して、該デジタル電力増幅回路か
らの前記電力増幅変調信号を前記駆動信号として該容量性負荷に供給する誘導性素子と、
前記誘導性素子からの前記駆動信号に対して、位相を進ませる補償である位相進み補償
を行った信号を前記帰還信号として前記演算回路に負帰還させることによって、前記電力
増幅変調信号に対する前記駆動信号のゲインが1.5倍以上から5倍以下の範囲に収まる
ように、前記誘導性素子と前記容量性負荷との間で生じる共振特性を抑制する位相進み補
償回路と
を備える容量性負荷駆動回路。
【請求項2】
前記容量性負荷に対して並列に接続された容量性素子を備える請求項1に記載の容量性
負荷駆動回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の容量性負荷駆動回路であって、
前記変調回路は、前記誤差信号をパルス幅変調することによって前記変調信号を生成す
る回路である容量性負荷駆動回路。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の容量性負荷駆動回路であって、
前記変調回路は、前記誤差信号をパルス密度変調することによって前記変調信号を生成
する回路である容量性負荷駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−105241(P2012−105241A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254581(P2010−254581)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】