説明

密封装置

【課題】回転側密封要素2のシールフランジ22の回転による振り切り作用によってシールを行う密封装置において、回転側密封要素2とこの回転側密封要素2が取り付けられる回転部材102との嵌着部から侵入する泥水等による不具合を防止する。
【解決手段】静止部材101に取り付けられ第一リップ12及び第二リップ13を有する静止側密封要素1と、静止部材101の内径側の回転部材102に嵌着されるスリーブ21及びその端部から延びて第一リップ12と摺動可能に密接されるシールフランジ22を有する回転側密封要素2を備え、第二リップ13が回転部材102に摺動可能に密接され、スリーブ21が回転部材102に第二リップ13との密接摺動部S2より外側かつ内径側に位置して形成された筒状面102cに嵌着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や一般機械、産業機械等におけるベアリング等へダストや泥水が侵入するのを防止する密封装置において、回転側密封要素の振り切り作用によってシールを行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のベアリングを密封する密封装置の一種として、回転側密封要素を有するものがある。図8は、この種の密封装置の典型的な従来技術を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図であり、図9は、回転側密封要素に磁気エンコーダの多極着磁円盤を設けた密封装置の典型的な従来技術を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【0003】
図8又は図9に示される密封装置は、例えばベアリング100の外輪101(静止側)の内周に装着される静止側密封要素110と、前記ベアリング100の内輪(回転側)102の外周に嵌着されるスリーブ121及びその一端から延びるフランジ122からなる金属製の回転側密封要素120とを備え、静止側密封要素110に設けられたスラストリップ111が、回転側密封要素120のフランジ122に摺動可能に密接され、静止側密封要素110にスラストリップ111の内周側に位置して設けられたラジアルリップ112及びグリース用リップ113が、回転側密封要素120のスリーブ121の外周面に摺動可能に密接されている。
【0004】
また、図9に示される密封装置では、回転側密封要素120のフランジ122の外側面に、磁性体の微粉末を混合したゴム材料又は合成樹脂材料で円盤状に成形されると共に円周方向所定ピッチでN極とS極が交互に着磁された多極着磁円盤(パルサーリング)130が一体に設けられている。この多極着磁円盤130は、その外側に非回転状態で対向配置された不図示の磁気センサと共に磁気エンコーダを構成するものである。
【0005】
そして図8又は図9に示される密封装置は、回転側密封要素120のフランジ122とスラストリップ111の密接摺動部において、内輪102と一体的に回転するフランジ122の遠心力による振り切り作用によって、ベアリング100の外部Aからのダストや泥水等の侵入を阻止するものである。また、フランジ122とスラストリップ111の密接摺動部からその内周側へダストや泥水等が僅かに通過しても、これらは回転側密封要素120のスリーブ121とラジアルリップ112の密接摺動部においてシールされ、フランジ122の遠心力による振り切り作用によって、スラストリップ111の外周側へ押し戻される。また、図9に示される密封装置の場合は、このようなシール機能に加えて、多極着磁円盤130に対向配置された不図示の磁気センサが、その前面を回転によってN極とS極が交互に通過することによる磁界の変化に対応した波形のパルス信号を発生し、回転を検出するものである(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−83543号公報
【特許文献2】特開2008−168665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術によれば、回転側密封要素120のスリーブ121が、内輪102の外周面に金属同士で接触しているため、外部Aの泥水などが、スリーブ121と内輪102との嵌合面間の微小隙間からベアリング100の内部空間Bへ浸入するおそれがあった。
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、回転側密封要素のシールフランジの回転による振り切り作用によってシールを行う密封装置において、回転側密封要素とこの回転側密封要素が取り付けられる回転部材との嵌着部から侵入する泥水等による不具合を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る密封装置は、静止部材に取り付けられ第一リップ及び第二リップを有する静止側密封要素と、前記静止部材の内径側の回転部材に嵌着されるスリーブ及びその端部から延びて前記第一リップと摺動可能に密接されるシールフランジを有する回転側密封要素を備え、前記第二リップが前記回転部材に摺動可能に密接され、前記スリーブが前記回転部材に前記第二リップとの密接摺動部より外側かつ内径側に位置して形成された筒状面に嵌着されたものである。
【0010】
また、請求項2の発明に係る密封装置は、請求項1に記載の構成において、シールフランジが、第一リップ及び第二リップの密接摺動部とスリーブの嵌着部の間で回転部材の端面と当接されるものである。
【0011】
また、請求項3の発明に係る密封装置は、請求項1又は2に記載の構成において、シールフランジの外径部と静止部材が近接対向した非接触シール部が形成されたものである。
【0012】
また、請求項4の発明に係る密封装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成において、シールフランジの外側面に、多極着磁円盤が一体に設けられたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係る密封装置によれば、回転部材と回転側密封要素のスリーブの嵌着面から外部の流体等が侵入しても、この侵入流体は静止側密封要素の第二リップと回転部材との密接摺動部でそれより内部への侵入が阻止されると共に、回転側密封要素のシールフランジの回転による振り切り作用によって静止側密封要素の第一リップと前記シールフランジの密接摺動部の外側へ排出されるので、優れたシール効果を奏する。
【0014】
請求項2の発明に係る密封装置によれば、回転部材と回転側密封要素のスリーブの嵌着面から外部の流体等が侵入しても、この侵入流体はシールフランジと回転部材の端面との当接部でシールされ、静止側密封要素の第二リップと回転部材との密接摺動部へ到達しにくくなるので、請求項1による効果に加え、一層優れたシール効果を奏する。
【0015】
請求項3の発明に係る密封装置によれば、シールフランジの外径部と静止部材との間の非接触シール部によって、外部の流体等が静止側密封要素の第一リップと回転側密封要素のシールフランジの密接摺動部へ侵入しにくくなるので、請求項1又は2による効果に加え、一層優れたシール効果を奏する。
【0016】
請求項4の発明に係る密封装置によれば、シールフランジの径方向幅が大きいので、その外側面に設けられた多極着磁円盤の着磁面積を大きくすることができ、請求項1〜3による効果に加え、優れた回転検出精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る密封装置の好ましい第一の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図2】本発明に係る密封装置の好ましい第二の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図3】本発明に係る密封装置の好ましい第三の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図4】本発明に係る密封装置の好ましい第四の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図5】本発明に係る密封装置の好ましい第五の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図6】本発明に係る密封装置の好ましい第六の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図7】本発明に係る密封装置の好ましい第七の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図8】従来の技術に係る密封装置の一例を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図9】従来の技術に係る密封装置の他の例を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る密封装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、第一の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す断面図である。
【0019】
図1において、参照符号100は、車輪のハブ用ベアリングで、外輪101と、内輪102と、その間に転動可能に配置された多数の鋼球103からなり、このベアリング100を密封する密封装置は、外輪101の内周に取り付けられる静止側密封要素1と、内輪102に取り付けられる回転側密封要素2を備える。なお、外輪101は請求項1に記載された静止部材に相当するものであり、内輪102は請求項1に記載された回転部材に相当するものである。
【0020】
詳しくは、静止側密封要素1は、外輪101の内周面に取り付けられる金属製の取付環11と、この取付環11にゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)によって一体に成形された第一リップ12、第二リップ13、第三リップ14及び固定シール15を有する。
【0021】
静止側密封要素1における取付環11は、金属板の塑性加工等により製作されたものであって、ベアリング100の外輪101の内周面に圧入嵌着される円筒状の外周圧入部11aと、その外端部に適宜小径に絞って形成されたガスケット支持部11bと、前記外周圧入部11aの内端部から内径方向へ延びる内向きフランジ11cからなる。そして前記外周圧入部11aは、ベアリング100の外輪101の内周面に適当な締め代をもって圧入されるように、外径が、外輪101の内周面より僅かに大径に形成されている。
【0022】
静止側密封要素1における第一リップ12は、取付環11の内向きフランジ11cにおける外部を向いた面にゴム状弾性材料で形成された基部弾性層16から、先端が大径となるような円錐筒状をなして延びており、第二リップ13は、第一リップ12の内周側に位置して、基部弾性層16の内周端部から先端が小径となるような円錐筒状をなして延びており、第三リップ14は、基部弾性層16の内周端部から第二リップ13と反対側(ベアリング内部側)へ向けて、先端が小径となるような円錐筒状をなして延びており、固定シール15は、基部弾性層16の一部が取付環11におけるガスケット支持部11bの外周へ廻り込んで山形の断面形状に形成されている。
【0023】
回転側密封要素2は金属板の塑性加工等により製作されたものであって、回転部材である内輪102に固定されるスリーブ21と、その外端部から円盤状に展開するシールフランジ22を有する。ベアリング100の内輪102の外側端面102aには円周方向へ連続した溝102bが形成されており、回転側密封要素2のスリーブ21は、この溝102bの内径の筒状面102cに圧入嵌着されている。
【0024】
そして、静止側密封要素1の第一リップ12は、回転側密封要素2のシールフランジ22の内側面(ベアリング100の内部空間B側を向いた面)に摺動可能に密接され、第二リップ13及び第三リップ14は、ベアリング100の内輪102の外周面に摺動可能に密接され、固定シール15は、ベアリング100の外輪101の内周面に適当なつぶし代をもって密接されるものである。
【0025】
回転側密封要素2におけるシールフランジ22の外側面(ベアリング100の外部A側を向いた面)には、その全域に、フェライトや希土類等の磁性体微粉末を混合したゴム材料又は合成樹脂材料で円盤状に成形されると共に円周方向所定ピッチでN極及びS極が交互に着磁された多極着磁円盤(パルサーリング)3が一体に設けられている。この多極着磁円盤3は、その外側に非回転状態で対向配置された不図示の磁気センサと共に磁気エンコーダを構成するものである。
【0026】
また、回転側密封要素2におけるシールフランジ22及び多極着磁円盤3は、外径端部が、静止側密封要素1における取付環11のガスケット支持部11bの内周面を覆うゴム層と隙間G1を介して径方向に近接対向しており、前記シールフランジ22の内側面は、第一リップ12及び第二リップ13の密接摺動部S1,S2とスリーブ21の嵌着部S3との間の位置が、ベアリング100の内輪102の端面(溝102bの外周側の端面)102aと隙間G2を介して軸方向に近接対向している。
【0027】
以上の構成によれば、外部Aから飛来してシールフランジ22及び多極着磁円盤3と静止側密封要素1との隙間G1を通過したダストや泥水等の侵入は、ベアリング100の内輪102と一体回転する回転側密封要素2のシールフランジ22と、非回転の静止側密封要素1における第一リップ12との密接摺動部S1において、遠心力によるシールフランジ22の振り切り作用によって阻止される。そして、ダストや泥水等が、前記密接摺動部S1からその内周側へ僅かに通過することがあっても、これらは前記内輪102の外周面と第二リップ13の密接摺動部S2においてシールされるので、ベアリング内部空間Bへ侵入することはできず、結局、シールフランジ22の回転による振り切り作用によって、第一リップ12の密接摺動部S1の外側へ排出される。また、第三リップ14は、ベアリング内部空間Bからのグリースの流出を防止するものである。
【0028】
一方、ベアリング100の内輪102と回転側密封要素2のスリーブ21の嵌着部S3は、金属同士の嵌合であるため、この嵌着部S3は外部Aの泥水等の侵入を完全に遮断するものではない。しかしながら上記構成によれば、内輪102とスリーブ21の嵌着部S3から外部Aの泥水やダスト等が侵入しても、スリーブ21の外径側は狭い隙間G2によるラビリンスシールが形成されており、さらにその外周側には静止側密封要素1の第二リップ13と前記内輪102との密接摺動部S2が存在するため、前記泥水やダスト等がベアリング内部空間Bへ侵入することはできず、シールフランジ22の回転による振り切り作用によって第一リップ12の密接摺動部S1の外側へ排出されるので、優れたシール効果を奏する。
【0029】
また、多極着磁円盤3が回転側密封要素2のシールフランジ22と一体に回転するため、不図示の磁気センサの検出面の正面を、多極着磁円盤3のN極とS極が回転方向へ交互に通過することになり、これによる磁界の変化に対応した波形のパルス状の信号が前記磁気センサから出力されるので、このパルスのカウントによって、回転を計測することができる。なお、多極着磁円盤3は、その円周方向1箇所に、着磁ピッチの異なる部分(不図示)などを設けることによって、エンジンの点火時期制御等の目的で、例えばピストンの上死点(TDC)等の特定のポジションを検出するための原点とすることもできる。
【0030】
そして上記構成によれば、回転側密封要素2のスリーブ21をベアリング100の内輪102の外周面に嵌着する従来構造のものと比較すると、スリーブ21の嵌着位置が内輪102の外周面よりも内径側へ位置する分、シールフランジ22の径方向幅が大きくなるので、その外側面に設けられた多極着磁円盤3の径方向幅も大きくすることができ、その着磁面積を大きくすることができる。したがって、例えば多極着磁円盤3の外径側と内径側に、位相間隔が同じで、かつその位相間隔より小さな角度だけ互いに異なる位相をもって複数の着磁トラックを形成するといった、マルチトラック形式の着磁パターンとすることによって、回転数や回転角のほか、回転方向も検出可能としたり、回転検出精度を向上させたりすることができる。
【0031】
次に図2〜図7は、本発明に係る密封装置の好ましい他の形態を、軸心Oを通る平面で切断して示す片側断面図である。
【0032】
このうち図2に示される第二の形態は、回転側密封要素2のスリーブ21が、ベアリング100の内輪102に形成された円周方向へ連続した溝102bの外径の筒状面102dに圧入嵌着されるものである点のみが、上述した第一の形態と異なるものであり、第一の形態とほぼ同様の効果を実現することができる。
【0033】
また、図3に示される第三の形態は、回転側密封要素2のシールフランジ22の内側面が、第一リップ12及び第二リップ13の密接摺動部S1,S2とスリーブ21の嵌着部S3との間の位置で、ベアリング100の内輪102の端面(溝102bの外周側の端面)102aと当接している点のみが、先に説明した第一の形態と異なる。この構成によれば、外部Aの泥水やダスト等が内輪102とスリーブ21の嵌着部S3から溝102b内へ侵入しても、その外周側には内輪102とシールフランジ22との接触部S4が形成されているので、図1のような隙間G2によるラビリンスシールに比較して、泥水やダストを一層確実に遮断することができる。しかも第一の形態と同様、さらにその外周側には静止側密封要素1の第二リップ13と前記内輪102との密接摺動部S2が存在するため、前記泥水やダスト等がベアリング内部空間Bへ侵入することはできず、シールフランジ22の回転による振り切り作用によって第一リップ12の密接摺動部S1の外側へ排出される。
【0034】
また、図4に示される第四の形態は、第二の形態と同様、回転側密封要素2のスリーブ21が、ベアリング100の内輪102に形成された円周方向へ連続した溝102bの外径の筒状面102dに圧入嵌着されると共に、第三の形態と同様、回転側密封要素2のシールフランジ22の内側面が、第一リップ12及び第二リップ13の密接摺動部S1,S2とスリーブ21の嵌着部S3との間の位置で、ベアリング100の内輪102の端面(溝102bの外周側の端面)102aと当接しているものである。その他の部分は、第一の形態と同様に構成されている。
【0035】
次に、図5に示される第五の形態は、回転側密封要素2におけるシールフランジ22の外径部22aが、静止側密封要素1における取付環11のガスケット支持部11b(ガスケット支持部11bを覆うゴム層)の端面の外側を外径側へ延び、このガスケット支持部11bの端面及びベアリング100の外輪101の端面101aに、隙間G3,G4を介して軸方向に近接対向することによって、シールフランジ22と第一リップ12の密接摺動部S1の外径側に隙間G3,G4からなる非接触シール部を形成したものである。その他の部分は、第一の形態と同様に構成されている。
【0036】
この形態によれば、シールフランジ22の外径部22aがベアリング100の外輪101の端面101aと軸方向に対向する位置まで延びているため、外輪101との間に径方向に長い隙間G3,G4からなる非接触シール部が形成され、シールフランジ22の外径部22aが大径になることによって遠心力による振り切り作用が増大するばかりでなく、顕著な動圧も発生するため、外部Aから飛来するダストや泥水が一層侵入しにくいものとなる。
【0037】
しかも、スリーブ21の嵌着位置が内輪102の外周面よりも内径側へ位置することによって、シールフランジ22の径方向幅が内径側へ拡張されるのに加え、シールフランジ22の外径部22aがベアリング100の外輪101の端面101aと軸方向に対向する位置まで延びることによって、シールフランジ22の径方向幅が外径側へも拡張されているので、多極着磁円盤3の着磁面積を一層増大させることができる。
【0038】
さらに、図6に示される第六の形態は、上述した第五の形態におけるシールフランジ22の外径部22aに、多極着磁円盤3の外径端部から軸方向へ延びてベアリング100の外輪101の外周面と狭い隙間G5を介して径方向に近接対向する(包囲する)筒状部31を設け、これによって、シールフランジ22と第一リップ12の密接摺動部S1の外径側に、隙間G3,G4及びG5からなる非接触シール部を形成したものである。その他の部分は、第一の形態と同様に構成されている。なお、筒状部31は多極着磁円盤3とは独立したゴム材料又は合成樹脂材料で成形することもできる。
【0039】
また、図7に示される第七の形態は、上述した第五の形態におけるシールフランジ22の外径部22aから、軸方向へ延びてベアリング100の外輪101の外周面と狭い隙間G5を介して近接対向する(包囲する)筒状部23を形成し、これによって、シールフランジ22と第一リップ12の密接摺動部S1の外径側に隙間G3,G4及びG5からなる非接触シール部を形成したものである。その他の部分は、第一の形態と同様に構成されている。
【0040】
第六及び第七の形態によれば、第五の形態による効果に加え、非接触シール部がベアリング100の外輪101の外周側まで延長されるため、外部Aから飛来するダストや泥水がさらに侵入しにくいものとすることができる。
【0041】
なお、図5,図6,図7(第五〜第七の形態)では、ベアリング100の内輪102に対する回転側密封要素2のスリーブ21の嵌着部S3を図1と同様に構成し、シールフランジ22と内輪102の端面102aを図3と同様に当接させた構成としたが、これは、図2あるいは図4と同様に構成しても良いことはもちろんである。
【0042】
また、上述した各実施の形態では、回転側密封要素2のシールフランジ22に多極着磁円盤3を一体に設けたものについて説明したが、多極着磁円盤3を設けないものについても同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 静止側密封要素
11 取付環
12 第一リップ
13 第二リップ
14 第三リップ
15 固定シール
2 回転側密封要素
21 スリーブ
22 シールフランジ
23,31 筒状部
3 多極着磁円盤
100 ベアリング
101 外輪(静止部材)
102 内輪(回転部材)
102c,102d 筒状面
A 外部
B 内部空間
G1〜G5 隙間
S1,S2 密接摺動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部材に取り付けられ第一リップ及び第二リップを有する静止側密封要素と、前記静止部材の内径側の回転部材に嵌着されるスリーブ及びその端部から延びて前記第一リップと摺動可能に密接されるシールフランジを有する回転側密封要素を備え、前記第二リップが前記回転部材に摺動可能に密接され、前記スリーブが前記回転部材に前記第二リップとの密接摺動部より外側かつ内径側に位置して形成された筒状面に嵌着されたことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
シールフランジが、第一リップ及び第二リップの密接摺動部とスリーブの嵌着部の間で回転部材の端面と当接されることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
シールフランジの外径部と静止部材が近接対向した非接触シール部が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項4】
シールフランジの外側面に、多極着磁円盤が一体に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−102843(P2012−102843A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253842(P2010−253842)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】