説明

密閉型圧縮機および冷凍装置

【課題】密閉型圧縮機の吸入管での加熱を防止し、冷媒ガスの冷却効果をより高くし、効率の高い密閉型圧縮機および冷凍装置を実現する。
【解決手段】吸入マフラー151に冷媒ガス105を導入する尾管153を備え、吸入管107と尾管153は、直接または近接して連結する構成を有するとともに、吸入管107には、密閉容器101の外表面201との間に空間202を設けた位置に伝熱防止部材203を備えたもので、エネルギー効率の高い密閉型圧縮機および冷凍装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用冷蔵庫、冷凍空調装置で用いられる密閉型圧縮機の特に、吸入管の温度低減による効率改善を図る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護に対する要求はますます強まってきており、冷蔵庫やその他の冷凍サイクル装置などにおいても、特に高効率化が強く要望されている。
【0003】
従来、この種の密閉型圧縮機としては、密閉容器内外を連通する吸入管と圧縮機の吸入マフラーの吸入口とを可撓性材料でできた管状コネクタで接続して吸入経路を形成し、冷凍装置を循環して戻ってきた低温で密度の大きい冷媒ガスを密閉容器内に開放することなく圧縮室に吸入するとともに、吸入マフラーに均圧チャンバーを備え、吸入経路と密閉容器内空間との圧力差を小さくしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9は、特許文献1に記載された従来の密閉型圧縮機の縦断面図、図10は、同特許文献に記載された従来の吸入マフラーの概略断面図である。
【0005】
図9および図10に示すように、従来の密閉型圧縮機は、密閉容器1の底部に冷凍機油3を貯留するとともに冷媒ガス5が充填され、圧縮機本体7がサスペンションスプリング9によって、密閉容器1内に弾性的に支持されている。
【0006】
圧縮機本体7は、電動要素11と、電動要素11の上方に配設される圧縮要素13とを備え、電動要素11は、ステータ15およびロータ17を有している。
【0007】
圧縮要素13は、偏心軸19と主軸21とを備えたクランクシャフト23と、圧縮室25を形成するシリンダ27を一体に形成したブロック29と、シリンダ27内を往復運動するピストン31と、シリンダ27の端面を封止するバルブプレート33と、バルブプレート33に形成された吸入孔35を開閉する吸入バルブ37と、偏心軸19とピストン31とを連結する連結手段39を備えている。
【0008】
さらに、シリンダ27の端面に取り付けられたバルブプレート33と、バルブプレート33を閉塞するシリンダヘッド41により、吸入マフラー43は狭持されて固定されている。
【0009】
吸入マフラー43は、PBTなどの樹脂で成型されるとともに、消音空間45を形成するマフラー本体47と、マフラー本体47に設けられた吸入口49と、可撓性材料でできた管状コネクタ51とで構成されている。
【0010】
管状コネクタ51は、一端が吸入口49に連通し、他端が密閉容器1に設けられた容器内外を連通する吸入管53の開口部を包囲するように密閉容器1の内壁面に弾性接触するように押圧されている。
【0011】
また、マフラー本体47は、均圧チャンバー55を備え、均圧チャンバー55の一端は、密閉容器1内と連通する開口部57を備えるとともに、他端は消音空間45と連通する均圧孔59を有したオリフィス61を備えている。
【0012】
また、密閉容器と、低温部分との温度差を利用して、発電を行い、エネルギー回収をす
る技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2005−520083号公報
【特許文献2】特許第4300637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来の構成では、吸入される冷媒ガス5の温度を低下させ、体積効率を向上させることによって効率を向上させることはできるが、密閉容器1内に冷媒ガス5が解放される前の段階として、吸入管53と密閉容器1との熱伝達により、吸入管53自体が加熱されてしまう構成である。そのため、吸入管53内を流れる冷媒ガス5は、吸入口49から近接して吸入するにしろ、上記従来例のように、管状コネクタ51で直接接続された吸入経路を形成することにより、直接接続された吸入経路で直接吸入を行う場合にせよ、吸入管53での加熱を回避することはできず、冷媒ガス5の冷却効果が不十分となる課題があった。
【0015】
また、この課題は、冷媒ガス5の流速が遅い条件、例えば、気筒容積が小さい場合や、冷媒ガス5の密度が小さい場合、即ち蒸発温度が低い場合には、より顕著に現れる。
【0016】
さらに、冷媒ガス5の流速を高める方法としては、吸入管53の内径を小さくする方法も容易に考えられるが、内径を小さくすると、通路抵抗が増加し、圧力損失を増大させてしまい、効率低下を発生する課題がある。このことは、通路損失低減の観点から、吸入管53の径を大きくすることと、冷媒ガス5の流速を速くし、熱伝達を低下することには、相反する課題があった。
【0017】
さらに、上記特許文献2に開示されているような、温度差発電素子を用いると、機器自体の構成が複雑化し、実用には向かない課題もあった。
【0018】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、吸入管に伝熱防止部材を備えることにより、冷媒ガスが密閉容器内に入る段階での冷媒の温度上昇を低減でき、また、冷媒密度が高いため、密閉型圧縮機の能力を高くすることが可能となる。これにより、小さな密閉型圧縮機で、大きな冷凍装置、例えば大容量の冷蔵庫を運転することが可能となる。
【0019】
また、冷媒密度が高くなり、体積効率を高くできることで、必要所要動力当たりに対する能力比率が高まり、圧縮機の効率を高くすることを目的とする。
【0020】
さらに、冷媒ガスの流量が低い場合、あるいは、冷凍装置の蒸発温度が低く冷媒密度が低い場合において特に顕著となる冷媒ガスの密閉容器流入時の加熱を抑制することが可能となり、特に、密閉型圧縮機の能力が小さい場合、いわゆる密閉型圧縮機の気筒容積が小さい場合に密閉型圧縮機、および、冷蔵庫などの冷凍装置の効率を高くすることを目的とする。
【0021】
また、本発明によれば、機器は大型化せず、密閉型圧縮機、および、冷凍装置が有するもともとの構成をほぼ維持したままで、目的とする冷媒温度の低減、あるいは、冷熱源のエネルギー回収が可能とすることを目的とする。
【0022】
以上のように本発明の密閉型圧縮機および冷凍装置は、効率が高く、省エネルギーで、環境に優しい特性を、複雑な機器を付加することなく実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型圧縮機は、冷媒ガスが封入された密閉容器内に、電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、また、密閉容器に、一端が密閉容器内空間に連通し、他端が冷凍装置に接続される吸入管と、一端が前記圧縮要素と連通し、他端が冷凍装置に接続される吐出管を備え、前記圧縮要素を、圧縮室を形成するブロックと、前記圧縮室内を往復運動するピストンと、前記圧縮室の端部に配設された吸入バルブと、前記圧縮室に連通する吸入マフラーを備える構成とし、前記吸入マフラーを、少なくとも消音空間を形成するマフラー本体と、前記消音空間と前記圧縮室とを吸入バルブを介して連通する連通管と、前記吸入管と直接または近接して配置され、かつ前記吸入マフラー本体に冷媒ガスを導入する尾管を備える構成とし、さらに、前記吸入管を冷却する冷却装置を備えたものである。
【0024】
これによって、前記吸入管に設けられた冷却装置は、吸入管を冷却する。その結果、前記吸入管の前記密閉容器内への入口部の温度が低減され、前記密閉容器内への冷媒ガスの温度が低下し、冷媒ガスの密度を高く維持できる。したがって、単位容積あたりの冷媒質量が増加し、密閉型圧縮機の体積効率の向上と、効率の向上が可能となる。
【0025】
また、上記構成の密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置は、冷凍装置内を循環する冷媒ガスの質量流量が増加することで、機器の運転率が下がり、インバーター等の商用回転数以下で運転される可変回転数の密閉型圧縮機を用いた冷凍装置にあっては、より低い回転数での運転が可能となり、いずれの場合も、冷蔵庫等の冷凍装置のエネルギー消費量を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の密閉型圧縮機は、吸入管の密閉容器への入口近傍での温度を下げることで、冷媒ガスの密閉容器への入口の温度を低減することができ、密閉型圧縮機の体積効率および効率を向上することができる。
【0027】
また、かかる密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置は、エネルギー効率を向上することができるので、地球環境に優しい、省エネルギーな機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図
【図2】同実施の形態1における密閉型圧縮機の水平断面図
【図3】同実施の形態1における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の模式図
【図4】本発明の実施の形態2における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の模式図
【図5】本発明の実施の形態3における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の模式図
【図6】本発明の実施の形態4における密閉型圧縮機の縦断面図
【図7】同実施の形態4における密閉型圧縮機の水平断面図
【図8】同実施の形態4における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置模式図
【図9】従来の密閉型圧縮機の縦断面図
【図10】同圧縮機の吸入マフラーの概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
請求項1に記載の発明は、冷媒ガスが封入された密閉容器内に、電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、また、密閉容器に、一端が密閉容器内空間に連通し、他端が冷凍装置に接続される吸入管と、一端が前記圧縮要素と連通し、他端が冷凍装置に接続される吐出管を備え、前記圧縮要素を、圧縮室を形成するブロックと、前記圧縮室内を往復運動するピストンと、前記圧縮室の端部に配設された吸入バルブと、前記圧縮室に連通する
吸入マフラーを備える構成とし、前記吸入マフラーを、少なくとも消音空間を形成するマフラー本体と、前記消音空間と前記圧縮室とを吸入バルブを介して連通する連通管と、前記吸入管と直接連結、または近接して配置され、かつ前記吸入マフラー本体に冷媒ガスを導入する尾管を備える構成とし、さらに、前記吸入管を冷却する冷却装置を備えたものである。
【0030】
かかる構成とすることにより、前記冷却装置が吸入管を冷却するため、吸入管を通過する冷媒ガスの温度を低下することができ、密閉型圧縮機の効率を向上することができる。
【0031】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷却装置を、前記密閉容器の外表面との間に空間を介して設けた伝熱防止部材としたものである。
【0032】
かかる構成とすることにより、前記吸入管に設けられた伝熱防止部材は、前記密閉容器の外表面との間に空間があるので、密閉容器外表面からの伝熱を直接受けることがなく、密閉容器の温度より、十分低い温度に維持することが可能となり、前記伝熱防止部材により、吸入管が冷却されることとなる。
【0033】
その結果、前記吸入管の密閉容器内への入口部の温度が低下され、前記密閉容器内への冷媒ガスの温度が低下し、冷媒ガスの密度が高く維持できる。これに伴い、単位容積あたりの冷媒質量が増加し、密閉型圧縮機の体積効率の向上と、効率の向上が可能となる。
【0034】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記伝熱防止部材を、前記密閉容器の前記吸入管の周りに、前記吸入管と隙間を設けて前記密閉容器に固着された第2吸入管とし、前記第2吸入管の前記吸入管との接合部を、前記密閉容器の外表面から離れた位置としたものである。
【0035】
かかる構成とすることにより、前記第2吸入管に伝熱される前記密閉容器の外表面からの熱は、前記吸入管に伝熱する位置が、前記密閉容器から離れているため、吸入管へ伝熱される温度が低下した状態となる。これによって、前記吸入管の密閉容器近傍での温度が低下する。したがって、冷媒ガスの密閉容器への流入時の温度低下をはかることができ、請求項2に記載の効果に加えてさらに、密閉型圧縮機の体積効率、効率の向上をはかることが可能となる。
【0036】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記伝熱防止部材を、前記吸入管の周りに設けた冷却手段としたものである。
【0037】
かかる構成とすることにより、前記冷却手段が、密閉容器の外表面と空間をおいて配設されることに伴い、冷却手段自体が、密閉容器の外表面からの伝熱により加熱されることが抑制され、冷却手段自体の冷却効果は、そのまま吸入管の温度低下に寄与する。その結果、冷媒ガスの密閉容器への流入時の温度低減をはかることができ、密閉型圧縮機の体積効率、効率の向上をはかることが可能となる。
【0038】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記冷却手段を、前記吸入管の外部で、かつ前記密閉容器と隙間を設けて配設され、かつ内部に冷却部材を充填した密閉管部とし、さらに、前記密閉管部に、少なくとも一つ以上の冷却部を設けたものである。
【0039】
かかる構成とすることにより、前記密閉管部の冷却部分により、冷却部材が冷却され、この冷却部材が、前記吸入管を冷却する。この時に、前記密閉容器の外表面から、冷却手段である密閉管部と密閉管部の内部に充填された冷却部材や、冷却部分には、密閉容器か
らの伝熱がないので、冷却部材や、冷却部分が加熱されることはなく、吸入管は効率よく冷却される。これによって、冷媒ガスの密閉容器への流入時の温度低下をはかることができ、密閉型圧縮機の体積効率、効率の向上をはかることが可能となる。
【0040】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記冷却部材を、低沸点冷媒を用い、さらに、放熱部を、連通管を通して前記冷却部と連結し、さらに、前記冷却部を冷却する冷却ファンを備える構成としたものである。
【0041】
かかる構成とすることにより、前記密閉管部の中に充填された低沸点冷媒が蒸発し、冷却部と連通管により連通した放熱部で凝縮して密閉管部と接する吸入管にもどり、吸入管を冷却することを繰り返す。この時、前記密閉管部は、前記密閉容器と隙間があるので、密閉容器の伝熱影響を受けず、密閉容器自体の伝熱による冷却に影響することはない。したがって、前記吸入管と吸入管内部を流れる冷媒ガスを直接冷却することができ、吸入管を効率よく冷却することができる。これによって、冷媒ガスの密閉容器への流入時の温度低下をはかることができ、密閉型圧縮機の体積効率、効率の向上をはかることが可能となる。
【0042】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の密閉型圧縮機の吐出管と吸入管に、凝縮器、膨張器、蒸発器の直列回路を接続して冷凍装置を構成し、前記冷却部分を、前記蒸発器と熱交換可能に配置し、前記冷却部分と前記密閉管部を、断熱された細管によって連結したものである。
【0043】
かかる構成とすることにより、前記冷却部分は、前記蒸発器の冷熱を利用することが可能となり、十分に低い温度を前記密閉管部へ伝達することができる。また、冷凍装置自体は、一定期間での冷熱利用であり、冷凍装置全体として、余剰となった冷熱を吸入管側に還元することで、密閉型圧縮機の効率をあげ、冷凍装置の中の主たる入力部分を占める密閉型圧縮機の入力を低減し、冷凍装置全体のエネルギー効率を高めることができる。
【0044】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記断熱された細管の一端を、前記蒸発器と膨張器の間に接続し、前記細管に開閉弁を設けたものである。
【0045】
かかる構成とすることにより、断熱された細管から、冷凍装置の蒸発器に向かう回路を開閉することが可能となる。これによって、冷凍装置の蒸発器の温度を制御しながら、温度制御で余剰となった冷熱源を、前記吸入管の冷却と、密閉容器内に入る冷媒ガスの冷却に利用することができる。したがって、冷熱を吸入管側に還元することで、密閉型圧縮機の効率をあげ、密閉型圧縮機の入力を低減して冷凍装置全体のエネルギー効率を高めることができる。
【0046】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷却装置を、前記吸入管と該吸入管を囲う外側管の2重管とし、前記外側管を前記密閉容器に固定し、前記外側管と吸入管の接続部を、前記密閉容器の外表面から十分離れた位置とし、前記吸入管と前記外側管の間の空隙に、前記冷媒ガスまたは、低熱伝導部材を充填した構成としたものである。
【0047】
かかる構成とすることにより、前記密閉容器から直接個体間熱伝導を受ける部分は、2重管の外側管となる。外側管に伝熱された熱は、密閉容器の外表面から十分離れ、温度が低下された位置で吸入管に伝熱するので、吸入管への伝熱が低減される。その結果、前記吸入管から密閉容器内に流入する冷媒ガスの温度は、低減され、冷媒ガスの密度が高く維持できることとなる。したがって、単位容積あたりの冷媒質量が増加し、密閉型圧縮機の体積効率の向上と、効率の向上が可能となる。また、冷凍装置を循環する冷媒ガスの質量
流量が増加することで、機器の運転率が下がることや、所謂インバーター等の商用回転数以下で運転される可変回転数の密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置にあっては、より低い回転数での運転が可能となり、いずれの場合も、冷蔵庫等の冷凍装置のエネルギー消費量を低減することが可能となる。
【0048】
請求項10に記載の発明は、請求項7または8に記載の発明において、前記密閉型圧縮機を、少なくとも商用電源周波数の80パーセント以下の周波数で運転されるものである。
【0049】
かかる構成とすることにより、商用周波数の約20パーセント減の能力領域において、冷凍装置における冷媒ガスの流量も20パーセント減少することとなるが、流速が低下し、吸入管での冷媒ガスが促進されてしまう構成において、密閉容器温度から、十分低い温度に維持することが可能となり、吸入管が冷却されることとなる。その結果、吸入管の密閉容器内への入口部の温度が低減され、密閉容器内への冷媒ガスの温度が低下し、冷媒ガスの密度が高く維持できる。その結果、単位容積あたりの冷媒質量が増加し、密閉型圧縮機の体積効率の向上と、効率の向上が可能となる。より具体的には、機器の運転率が下がることや、いわゆるインバーター等で運転される可変回転数の密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置において運転効率を向上することが可能となり、冷蔵庫等の冷凍装置のエネルギー消費量を低減することが可能となる。
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0051】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図、図2は、同実施の形態1における密閉型圧縮機の水平断面図、図3は、同実施の形態1における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の模式図である。
【0052】
図1から図3において、本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機100は、密閉容器101内底部に冷凍機油103を貯留するとともに、冷媒ガス105として例えば地球温暖化係数の低い炭化水素系のR600a等が封入してある。
【0053】
また、密閉容器101は、鉄板の絞り成型によって形成されるとともに、一端が密閉容器101内に連通する開口部106を有し、他端が冷凍装置170の低圧側171に接続される吸入管107を備えている。
【0054】
密閉容器101内には、圧縮要素109と電動要素111を備えた圧縮機本体113がサスペンションスプリング115によって、密閉容器101内に弾性的に支持されて収納されている。
【0055】
圧縮要素109は、クランクシャフト117、ブロック119、ピストン121、連結手段123等で構成されており、クランクシャフト117は、偏心軸125と主軸127とを備えるとともに、冷凍機油103に浸漬される主軸127の下端から偏心軸125上端までを連通し、主軸127表面に設けられた螺旋状の溝等からなる給油機構129を備えている。
【0056】
電動要素111は、ブロック119の下方にボルトによって固定されたステータ131と、ステータ131の内側の同軸上に配置され、主軸127に焼き嵌め固定されたロータ133で構成されている。
【0057】
ブロック119には、圧縮室135を形成するシリンダ137が一体に形成されるとともに、主軸127を回転自在に軸支する軸受部139を備えている。
【0058】
また、シリンダ137の端面には、吸入孔141と吐出孔(図示せず)を備えたバルブプレート143と、吸入孔141を開閉する吸入バルブ145と、バルブプレート143を閉塞するシリンダヘッド147が、ともにヘッドボルト149によって、シリンダ137の端面を封止するように押圧固定されている。さらに、バルブプレート143とシリンダヘッド147により、吸入マフラー151が把持されて固定されている。
【0059】
吸入マフラー151は、主にガラス繊維を添加したPBT等の合成樹脂で成型され、冷媒ガス105を吸入マフラー151内に導く尾管153を一体に成型したマフラー本体157と、吸入マフラー151内の冷媒ガス105を圧縮室135内に導く連通管159を備えたカバー161を組み合わせて一体化し、マフラー本体157内に消音空間163を形成している。
【0060】
尾管153は、一端が消音空間163に連通し、他端に冷媒ガス105を吸入マフラー151内に導入するコネクタ165を備えたマフラー尾管受け口167を有している。
【0061】
コネクタ165は、例えばゴム材等の可撓性材料で形成され、一端が尾管153のマフラー尾管受け口167に固定され、他端が吸入管107の開口部106を包囲するように密閉容器101の内壁面に弾性接触または近接設置されている。コネクタ165は、吸入管107からの冷媒ガス105を直接尾管153へ流入するように連結するものであり、コネクタ165を用いずとも、吸入管107の密閉容器101への開口部106と尾管153の開口部近傍に位置するマフラー尾管受け口167を近接対向させた構成でも同様である。
【0062】
密閉容器101の外表面201には、吐出管108と、この吐出管108から離れた位置に吸入管107が接続されている。吸入管107においては、外表面201から空間202を設けた位置、すなわち、外表面201に接触しない位置に、伝熱防止部材203が、吸入管107に接触して配設されている。
【0063】
伝熱防止部材203は、第2吸入管210が吸入管107に接合部211で接触させた構成であり、第2吸入管210は、冷却手段212を構成する。冷却手段212は、密閉管部213を有し、密閉管部213の内部には、低沸点冷媒214が封入されている。低沸点冷媒214としては、冷媒ガス105に用いられる冷媒であるイソブタンやプロパン、二酸化炭素、HFC冷媒、HFO冷媒等、さまざま冷媒が可能であり、気液混合状態で封入されている。本実施の形態1においては、低沸点冷媒214が冷却部材215に相当する。
【0064】
冷却部材215である低沸点冷媒214は、冷却部分220を有し、本実施の形態1においては、冷却部分220は、密閉管部213に、連通管215aを介して接続された端部に設けられた放熱部216であり、放熱部216に設けられたフィン217とフィンを冷却する冷却ファン230が冷却部231である。
【0065】
次に、冷凍装置170について説明する。
【0066】
図3に示すように、冷凍装置170は、密閉型圧縮機100の吐出管108から吐出された冷媒ガス105が、凝縮器280に入り、放熱と凝縮が行われ、その後、キャピラリーチューブや膨張弁等の膨張器281で減圧され、蒸発器282で膨張し、周囲の熱を吸収することで冷却が行われる構成である。蒸発器282以降の冷媒ガス105は低圧側1
71であり、吸入管107から密閉型圧縮機100にもどる閉サイクルを形成している。
【0067】
以上のように構成された密閉型圧縮機と冷凍装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0068】
密閉型圧縮機100は、ステータ131に電流を流して磁界を発生させ、主軸127に固定されたロータ133を回転させることで、クランクシャフト117が回転し、偏心軸125に回転自在に取り付けられた連結手段123を介して、ピストン121がシリンダ137内を往復運動する。そして、このピストン121の往復運動に伴い、冷媒ガス105は、吸入マフラー151を介して圧縮室135内へ吸入され、圧縮された後、冷凍装置170へ吐出される。
【0069】
次に、密閉型圧縮機100の吸入行程について説明する。
【0070】
ピストン121がシリンダ137の容積を増加する方向に動作すると、圧縮室135内の冷媒ガス105が膨張し、圧縮室135内の圧力が吸入圧力を下回ると、圧縮室135内の圧力と吸入マフラー151内の圧力との差により、吸入バルブ145が開き始める。
【0071】
そして、冷凍装置170から戻った温度の低い冷媒ガス105は、密閉容器101内に拡散することなく、吸入管107から直接コネクタ165を経て、尾管153に流入する。ここで、吸入管107の開口を、コネクタ165を介さずにマフラー尾管受け口167に近接対向させた場合は、密閉容器101内への拡散を抑制した状態で、消音空間163内に導入される。そして、導入された冷媒ガス105は、連通管159を経て、圧縮室135内に流入する。
【0072】
その後、ピストン121の動作が下死点から圧縮室135内の容積が減少する方向に転じると、圧縮室135内の圧力は上昇し、圧縮室135内の圧力と吸入マフラー151内の圧力との差によって、吸入バルブ145は閉じる。
【0073】
ここで、尾管153のマフラー尾管受け口167と吸入管107の開口部106を、コネクタ165によって直接接続するか、コネクタ165を介せずに近接対向させて吸入経路を形成することにより、冷凍装置170から吸入管107を介して戻った低温で密度の大きい冷媒ガス105を、直接的に圧縮室135内に供給でき、体積効率が向上するようにしている。しかし、さらなる吸入温度の低下、換言すると、冷媒ガス105の密度の向上による体積効率向上のためには、吸入管107の密閉容器101接続部近傍であり、冷媒ガス105が、密閉容器101に流入する部分である開口部106での冷媒ガス105の温度を低下しない限り、さらなる高効率化は望めないこととなる。
【0074】
この開口部106における冷媒ガス105の温度の低下をはかるために、本実施の形態1における吸入管107には、密閉容器101の外表面201から空間202をあけた部位に伝熱防止部材203が設けられている。この空間202は、極めて重要であり、伝熱防止部材203が密閉容器101に接触していると、密閉容器101から伝熱を受けてしまい、伝熱防止部材203自体が加熱され、温度飽和してしまう。ところが、空間202を設けることで、密閉容器101から伝熱防止部材203への熱伝達が減少し、伝熱防止部材203から吸入管107の密閉容器101への開口部106で冷却されることにより、冷媒ガス105の温度、密度を低減することが可能となる。
【0075】
本実施の形態1では、伝熱防止部材203として、第2吸入管210が、吸入管107に密閉容器101の外表面201から離間した位置となるように接合部211を設けている。第2吸入管210は、冷却手段212を構成しており、密閉管部213の内部の低沸
点冷媒214、即ち冷却部材215が、吸入管107を冷却した後、加熱され、連通管215aを通って冷却部231に到達し、フィン217が冷却ファン230によって冷却されることにより、冷却部材215の冷却を行うことができるように構成されている。
【0076】
放熱部216の設置は、具体的には、冷凍装置である冷蔵庫を例にとれば、庫内の低温部分や、庫内で霜が発生する場所に設けることができる。これにより、庫内での霜付を抑制する効果も同時に得られ、冷凍装置としてのエネルギー損失も低減することができる。その結果、冷凍装置で余剰、もしくは運転上の弊害となる冷熱を、密閉型圧縮機101の吸入管107の開口部106に到達する冷媒ガス105の冷却に利用でき、密閉型圧縮機100の体積効率、効率を向上することができる。
【0077】
発明者の実験においては、冷蔵庫が通常運転される摂氏25度(以下の温度は、全て摂氏温度)の室温条件に設置した場合の冷媒ガス105の温度を約2から5度低減することができ、これにより、密閉型圧縮機100の効率(COP=冷凍能力Wを入力Wで除した値)を0.01から0.03向上する効果を得た。
【0078】
また、冷凍装置170である冷蔵庫での検討においては、冷凍室と冷蔵室近傍の霜の発生しやすい部分に放熱部分を設置することによって、密閉型圧縮機100の吸入管部の熱量を利用し、霜付を防止するためのヒーター熱量を低減することができる。その結果、ヒーター熱量損失の低減がはかれ、冷凍装置170全体としてのエネルギー効率向上にも寄与することが確認できた。
【0079】
さらに、本実施の形態1では、放熱部216にフィン217と冷却ファン230を設けているが、必ずしも必要ではない。前述の冷蔵庫の具体例でさらに詳しく述べると、冷却ファン230は、もともと冷蔵庫の冷気を循環させるために風路に設けられているファンを用いることで、余分なエネルギーを必要とせず、フィン217についても蒸発器等のもともと薄板のフィンを有する部分や、他の薄板部分を利用することで余分な部品を追加することなく構成することができる。また、冷凍装置170の冷却部分の実際を鑑みると、霜や水滴等の発生しやすい部分は、冷却側の薄板部分であり、このような部分に発生する霜や水は、冷凍装置170の冷却空気側熱伝達係数を阻害するため、冷凍装置170側から見ても、密閉型圧縮機100の効率向上の観点から見ても、省エネルギーを達成できることとなり、エネルギー効率の高い、省エネルギーな密閉型圧縮機と冷凍装置を提供することが可能となる。
【0080】
さらに、密閉型圧縮機100の体積効率が向上するので、冷媒ガス105の質量循環量が増加し、冷却速度の向上になる。また、同一の冷凍装置170を冷却速度の向上なしで用いる場合には、密閉型圧縮機100の気筒容積(いわゆる馬力)を小さくすることも可能となり、このような観点でも省エネルギー、ダウンサイジング等の効果を得ることができる。
【0081】
また、室温が40度を超える、一般的に冷凍負荷の高い環境下においては、密閉型圧縮機100の密閉容器101の温度が上昇し、ひいては、吐出される冷媒ガス105の吐出温度が上昇してしまう。このような条件下では、冷媒ガス105と共に冷凍サイクル内を循環する冷凍機油103がシリンダヘッド147内の吐出空間、圧縮室135等の高温部で劣化が促進されるが、このことも、冷媒ガス105の吸入温度が低減されれば、劣化促進は格段に良化する。
【0082】
冷凍機油103のような有機物の劣化促進は、10度半減説に示されるように、冷媒ガス105の温度が10度低下すれば、半分になり、前述した冷媒ガス105の温度を約5度低減できた結果によれば、劣化促進は良化しており、過酷な条件にさらされた場合にお
いても、十分な信頼性を維持することが可能となる。
【0083】
さらに、冷凍機油103は、粘度グレードで示す40度での動粘度が8以下になると、冷凍機油103の分子量が小さくなり、温度劣化が発生する温度が低下するが、前述した冷媒ガス105の温度低減は、より低粘度の粘度グレードVG8以下の利用をより信頼性高く行えることも意味し、低粘度のグレードの冷凍機油103を用いることで、密閉型圧縮機100の摺動部の損失を低減し、効率COPをさらに向上させることが可能となる。
【0084】
このように、本実施の形態1は、冷凍装置170で考えておかなければならない、通常の低い負荷条件においての効率向上、また、過負荷においての冷凍機油103等の有機物劣化の防止による信頼性向上をはかりながら、密閉型圧縮機100と冷凍装置170の両者のエネルギー効率を高める発明であり、地球環境に優しく、信頼性が高いことから、使用期間を長くとれることで、省資源化にも寄与する。
【0085】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の模式図である。
【0086】
ここでは、実施の形態1と相違する構成を主体に説明し、実施の形態1と同じ構成要件については同一の符号を付して説明する。また、圧縮機の全体構成については、図1、図2を援用して相違分を説明し、冷凍装置の構成は、図3における説明を援用し、相違分を追記説明する。
【0087】
図4において、密閉型圧縮機100は、冷凍装置370に接続されている。冷凍装置370の構成は、図3における冷凍装置170と同一であるが、相違点は、蒸発器282に密閉型圧縮機100の吸入管107を冷却する冷却手段312の密閉管部313に、断熱された細管383の一端が接続され、細管383の他端である放熱部326が、蒸発器282の内部に挿入されている点である。
【0088】
また、他の相違点は、細管の蒸発器382に挿入された部分は、細管383に封入された冷却部材315である低沸点冷媒324や不凍液等により、吸入管307の冷却部分320(密閉管部313)と蒸発器382が熱移動可能に連結されている点である。
【0089】
冷却ファン330は、蒸発器282の冷熱を冷凍装置370の冷却に循環させるとともに、細管383と蒸発器282の熱交換も促進している。
【0090】
以上のように構成された密閉型圧縮機と冷凍装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0091】
密閉管部313の冷却部材315である低沸点冷媒324や不凍液等は、蒸発器282の冷熱を伝達することで、吸入管307を冷却し、冷媒ガス105が冷却される。
【0092】
蒸発器282は、冷却熱の一部を失うことになるが、冷凍装置370の具体例として、たとえば冷蔵庫を例にして説明すると、密閉型圧縮機100が、商用周波数の一定速度で運転されるものにおいては、冷凍能力は、膨張器281であるキャピラリー減圧量で決定されるので、外部室温や密閉型圧縮機100の起動・停止により変化した凝縮・蒸発温度条件で運転されることとなる。したがって、例えば、運転・停止を繰り返す運転サイクルの運転の後期では、蒸発温度は大幅に低下し、冷却温度が下がりすぎることとなる。このような条件における冷熱は、余剰であり、その冷熱を密閉型圧縮機100の吸入管107を冷却する熱として利用し、冷媒ガス105の温度を下げ、密閉型圧縮機100の効率向
上に寄与させることができる。
【0093】
一方、蒸発器282は、冷却温度が下がりすぎた状態を細管383に伝熱することにより、過剰に温度低下することが抑制でき、凝縮・蒸発温度により決定される高圧・低圧の条件からも、蒸発温度、即ち低圧圧力が下がりすぎ、密閉型圧縮機100の圧縮比増加と論理効率が低下する条件での運転を回避し、冷凍装置370である例えば冷蔵庫のエネルギー効率を高めることが可能となる。
【0094】
また、本実施の形態2に具体図は示していないが、細管383の蒸発器282との接触状態や、挿入状態を可変させる構造にすることは容易に実施でき、合わせて冷凍装置370の運転制御と組み合わせれば、蒸発器382の蒸発温度をコントロールすることが可能となる。この制御技術を用いて、さらに、細管383の可動技術や、制御において熱連動させるか否かをコントロールする技術を用いれば、密閉型圧縮機100と共に、冷凍装置370全体のシステム効率を向上させることが可能となる。
【0095】
尚、細管383に低沸点冷媒324を用いて、細管383内の対流伝熱を用いる場合は、細管383の中間部に弁を設け、対流伝熱を制御することも可能である。
【0096】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の模式図である。
【0097】
ここでは、実施の形態1または実施の形態2と相違する構成を主体に説明し、実施の形態1または実施の形態2と同じ構成要件については同一の符号を付して説明する。また、圧縮機の全体構成については、図1、図2を援用して相違分を説明し、冷凍装置の構成は、図3における説明を援用し、相違分を追記説明する。
【0098】
図5において、密閉型圧縮機100は、冷凍装置470に接続されている。冷凍装置470の構成は、図3における冷凍装置170と同一であるが、相違点は、冷却手段412の密閉管部413は、断熱された細管483が弁490を有し、膨張器281と蒸発器282の間に接続されている点である。
【0099】
また、他の相違点は、細管483を、流出管493と流入管492から構成し、密閉管部413に流入する冷媒に、冷凍装置470および密閉型圧縮機100に封入されている冷媒ガス105を冷却部材415として利用している点である。
【0100】
弁490は、膨張器281の後側、蒸発器282の上流側に設けられ、蒸発器282の下流側には、流出管493が接続された構成である。
【0101】
以上のように構成された密閉型圧縮機と冷凍装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0102】
弁490が開かれると、冷媒ガス405は、密閉管部413に流入し、吸入管107を冷却する。これにより、密閉型圧縮機100が吸入する冷媒ガス105の温度低下がはかれ、密閉型圧縮機100の体積効率、効率COPの向上がはかれる動作は、実施の形態1、実施の形態2と同様である。
【0103】
冷凍装置470の効率は、弁490の開閉で変化する。密閉型圧縮機100が運転中に弁490を開放し、過剰な冷媒ガス105を流出させると、余分なエネルギーをロスすることになるため、弁490は、開度が小さいか、あるいは流入管491は絞られているこ
とが適切である。
【0104】
また、密閉型圧縮機100の停止時を用いて、蒸発器282の上流側から温度の低い冷媒ガス105を密閉管部413に流入させ、吸入管107の密閉型圧縮機100への冷媒ガスの吸込み温度を低下させることもできる。
【0105】
さらに、密閉管部413の内部に、第2冷却部材494として例えば蓄熱材を部分充填し、密閉型圧縮機100の停止時に蒸発器282の上流側から流入させた低温の冷媒ガス105の熱を蓄熱しておけば、次の密閉型圧縮機100の運転再開時より長時間の冷熱利用を行うことができる。
【0106】
また、停止時の冷媒ガス105を密閉管部413に流入させることで、停止時の冷媒ガス105が密閉型圧縮機100の内部に流入する量を減少させることが可能となり、冷凍機油103に冷媒ガス105が溶け込む量を抑制して、密閉型圧縮機100の再起動時の冷媒フォーミングによる騒音の抑制をはかることができる。さらに、冷たい冷媒ガス105または冷媒の液として、密閉型圧縮機100に戻ることで、冷凍機油103の温度が低下してしまい、粘度増加による摺動損失増加を起こす現象も再起動時に回避することが可能となる。
【0107】
以上のことから、弁490の制御、流入管492の管径を適切に設定すれば、密閉型圧縮機100の損失を低減することで、冷凍装置470のエネルギー効率を向上することが可能となる。
【0108】
本実施の形態3の基本的な技術思想は、冷凍サイクルで無駄に捨てる冷熱や密閉型圧縮機100に対して、効率を低下させる方向に作用する冷熱、いわゆる余剰熱を有効利用することで、密閉型圧縮機100の効率を冷凍装置470全体の構成の中から引き出すことにある。その結果、効率の向上と共に、前述したような、フォーミング音の低減、また、冷凍機油103の密閉型圧縮機100の起動時における冷凍機油103粘度の極端な低下による摺動部の摩耗も低減でき、エネルギー効率の向上、騒音の低減、信頼性の向上を同時にはかることができる。
【0109】
本発明の実施の形態1から3は、冷凍装置としては、冷蔵庫を主体に説明を行ったが、他の冷凍装置でも同様であり、本発明の技術思想、構成を用いれば、エネルギー効率の高い密閉型圧縮機と冷凍装置が実現できる。
【0110】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における密閉型圧縮機の縦断面図、図7は、同実施の形態4における密閉型圧縮機の水平断面図、図8は、同実施の形態4における密閉型圧縮機を搭載した冷凍装置の模式図である。
【0111】
図6から図8において、本実施の形態4における密閉型圧縮機600は、密閉容器601内底部に冷凍機油603を貯留するとともに、冷媒ガス605として例えば地球温暖化係数の低い炭化水素系のR600a等が封入してある。
【0112】
また、密閉容器601は、鉄板の絞り成型によって形成されるとともに、一端が密閉容器601内に連通する開口部606を有し、他端が冷凍装置670の低圧側671に接続される吸入管607を備えている。
【0113】
密閉容器601内には、圧縮要素609と電動要素611を備えた圧縮機本体613がサスペンションスプリング615によって、密閉容器601内に弾性的に支持されて収納
されている。
【0114】
圧縮要素609は、クランクシャフト617、ブロック619、ピストン621、連結手段623等で構成されており、クランクシャフト617は、偏心軸625と主軸627とを備えるとともに、冷凍機油603に浸漬される主軸627の下端から偏心軸625上端までを連通し、主軸627表面に設けられた螺旋状の溝等からなる給油機構629を備えている。
【0115】
電動要素611は、ブロック619の下方にボルトによって固定されたステータ631と、ステータ631の内側の同軸上に配置され、主軸627に焼き嵌め固定されたロータ633で構成されている。
【0116】
ブロック619には、圧縮室635を形成するシリンダ637が一体に形成されるとともに、主軸627を回転自在に軸支する軸受部639を備えている。
【0117】
また、シリンダ637の端面には、吸入孔641と吐出孔(図示せず)を備えたバルブプレート643と、吸入孔641を開閉する吸入バルブ645と、バルブプレート643を閉塞するシリンダヘッド647が、ともにヘッドボルト649によって、シリンダ637の端面を封止するように押圧固定されている。また、バルブプレート643とシリンダヘッド647により、吸入マフラー651が把持されて固定されている。
【0118】
吸入マフラー651は、主にガラス繊維を添加したPBT等の合成樹脂で成型され、冷媒ガス605を吸入マフラー651内に導く尾管653を一体に成型したマフラー本体657と、吸入マフラー651内の冷媒ガス605を圧縮室635内に導く連通管659を備えたカバー661を組み合わせて一体化し、マフラー本体657内に消音空間663を形成している。
【0119】
尾管653は、一端が消音空間663に連通し、他端に冷媒ガス605を吸入マフラー651内に導入するコネクタ665を備えたマフラー尾管受け口667を有している。
【0120】
コネクタ665は、例えばゴム材等の可撓性材料で形成され、一端が尾管653のマフラー尾管受け口667に固定され、他端が吸入管607の開口部606を包囲するように密閉容器601の内壁面に弾性接触または近接設置されている。コネクタ665は、吸入管607からの冷媒ガス105を直接尾管153へ流入するように連結するものであり、コネクタ665を用いずとも、吸入管607の密閉容器601への開口部606と尾管653の開口部近傍に位置するマフラー尾管受け口667を近接対向させた構成でも同様である。
【0121】
密閉容器601の外表面699には、吐出管608と、この吐出管608から離れた位置に吸入管607が接続されている。吸入管607は、密閉容器601との接合部において2重管構造となっている。この2重管構造は、外側管700と吸入管本体701より構成され、外側管700は、密閉容器601に接合されるとともに、吸入管本体701との接続部703は、密閉容器601の外表面699から十分離れた位置にある。
【0122】
吸入管607は、密閉容器601の近傍では、2重管構造であるので、外側管700と吸入管本体701との間には、空隙704が設けられており、冷媒ガス605あるいは、たとえばプラスチックフォーミング材や、ガラスウール等の低熱伝導部材705が充填されている。
【0123】
次に、冷凍装置670について説明する。
【0124】
図8に示すように、冷凍装置670は、密閉型圧縮機600の吐出管608から吐出された冷媒ガス605が、凝縮器680に入り、ここで放熱と凝縮が行われ、その後、キャピラリーチューブや膨張弁等の膨張器681で減圧され、蒸発器682で膨張し、周囲の熱を吸収することで冷却が行われる構成である。
【0125】
蒸発器682以降の冷媒ガス605は、低圧側671であり、吸入管607から密閉型圧縮機600にもどる閉サイクルを形成している。
【0126】
密閉型圧縮機600は、ステータ631に電流を流して磁界を発生させ、主軸627に固定されたロータ633を回転させることで、クランクシャフト617が回転し、偏心軸625に回転自在に取り付けられた連結手段623を介して、ピストン621がシリンダ637内を往復運動する。そして、このピストン621の往復運動に伴い、冷媒ガス605は、吸入マフラー651を介して圧縮室635内へ吸入され、圧縮された後、冷凍装置670へ吐出される。
【0127】
次に、密閉型圧縮機600の吸入行程について説明する。
【0128】
ピストン621がシリンダ637の容積が増加する方向に動作すると、圧縮室635内の冷媒ガス605が膨張し、圧縮室635内の圧力が吸入圧力を下回ると、圧縮室635内の圧力と吸入マフラー651内の圧力との差により、吸入バルブ645が開き始める。
【0129】
そして、冷凍装置670から戻った温度の低い冷媒ガス605は、密閉容器601内に拡散することなく、吸入管607から直接コネクタ665を経て、尾管653に流入する。ここで、吸入管607の開口を、コネクタ665を介さずにマフラー尾管受け口667に近接対向させた場合は、密閉容器601内への拡散を抑制した状態で、消音空間663内に導入される。そして、導入された冷媒ガス605は、連通管659を経て、圧縮室635内に流入する。
【0130】
その後、ピストン621の動作が下死点から圧縮室635内の容積が減少する方向に転じると、圧縮室635内の圧力は上昇し、圧縮室635内の圧力と吸入マフラー651内の圧力との差によって、吸入バルブ645は閉じる。
【0131】
ここで、尾管653のマフラー尾管受け口667と吸入管607の開口部606を、コネクタ665によって直接接続するか、コネクタ665を介せずに近接対向させて吸入経路を形成することにより、冷凍装置670から吸入管607を介して戻った低温で密度の大きい冷媒ガス605を、直接的に圧縮室635内に供給でき、体積効率が向上するようにしている。しかし、さらなる吸入温度の低下、換言すると、冷媒ガス605の密度の向上による体積効率向上のためには、吸入管607の密閉容器601接続部近傍であり、冷媒ガス605が密閉容器601に流入する部分である開口部606での冷媒ガス605の温度を低下しない限り、さらなる高効率化は望めないこととなる。
【0132】
この開口部606の冷媒ガス605の温度の低減をはかるために、本実施の形態4における吸入管607を、2重管構造としている。具体的には、外側管700が密閉容器601の外表面699に溶接等によって接続している。
【0133】
したがって、密閉容器601からの伝熱を受けるのは、外側管700であり、吸入管本体701に密閉容器601からの熱伝導が伝えられるのは、接続部703になる。この接続部703が密閉容器601の外表面699から十分離れているので、吸入管607への伝熱を低減することができる。
【0134】
発明者の実験によれば、密閉容器601が約50度であり、室温が約25度の条件下において、接続部703を外表面699から約20cm離間させることによって、接続部では、室温に近い温度まで減少し、吸入管607への伝熱が大幅に低減されることを確認した。
【0135】
この結果として、吸入される冷媒ガス605の密閉容器601内に流入する時の温度は、約3度から5度低減できており、冷凍装置670として冷蔵庫を例にとり、室温摂氏25度(以下の温度は、全て摂氏温度)での運転条件を近似させた時、密閉型圧縮機600の効率、COPを+0.02から0.03高効率化する結果が得られた。
【0136】
さらに、吸入管607への熱伝導の低減と共に、冷媒ガス607の密閉容器601への吸い込み部近傍の温度を、外側管700の放熱効果で得ることができるので、外側管の面積拡大を行うと、さらに効率が向上する効果を得ている。
【0137】
一方、この効果は、室温がより低い条件である、一般家庭での平均的な使用温度25度以下の条件において、吸入管607周りの温度と密閉容器601の温度差がより大きくなることから、顕著な効果として現れるとともに、平均的な使用温度25度以下での運転が一般家庭の年間の大半を占めることから、省エネルギー効果も大きく、冷凍装置670の省エネルギー化に寄与することができる。
【0138】
また、密閉型圧縮機600の体積効率が向上することから、より小さい気筒容積仕様の密閉型圧縮機600の利用が可能になる。さらに、インバーターによる商用運転周波数を低くできる密閉型圧縮機600を用いる場合、商用運転周波数の80%、即ち約20%低い能力以下で運転する場合においては、冷媒ガス605の流速も低下するので、より伝熱影響が顕著になるため、前述した本実施の形態4の構成が大きな高効率効果をもたらすこととなる。
【0139】
さらに、室温が40度になるような過酷な条件が過渡的に発生した場合においては、前述した冷媒ガス605の冷却効果は、冷媒ガス605と共に冷凍装置670を循環する冷凍機油603の劣化促進を抑制する効果を有するので、密閉型圧縮機600および冷凍装置670の信頼性の向上もはかることができる。
【0140】
さらに、過渡的に発生するような、室温が高い条件での信頼性向上がはかれることは、冷凍機油603の高粘度品と比較して熱的劣化促進を起こしやすいVG8グレード以下の低粘度の冷凍機油603の使用をはかれることとなる。冷凍機油603の粘度グレードを低下できることは、摺動部を潤滑する粘性抵抗による損失の低減にもつながり、このような観点からも密閉型圧縮機600の効率を高めることができる。
【0141】
また、2重管構造の外側管700と吸入管本体701の空隙704の空隙寸法の設定や、さらには、内部に低熱伝導部材705として例えば、グラスウール、プラスチック材、発泡プラスチック素材等を充填することにより、熱伝導の抑制とともに、密閉容器601の内部空間体積を増加が抑制でき、冷凍装置670の冷媒ガス605の全質量を極力増やすことがなくなる。
【0142】
本実施の形態4によれば、密閉型圧縮機600の高効率化、高信頼性化がはかれ、部材としても、大幅な追加部品や複雑な構造を必要としないため、省エネルギー、省資源の両面から地球環境に優しい密閉型圧縮機と冷凍装置を提供できることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
以上のように、本発明にかかる密閉型圧縮機は、吸入管から密閉容器に戻る冷媒ガスの温度を効率よく低減することで、密閉型圧縮機と冷凍装置のエネルギー効率を高めることができ、さまざまな冷凍システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0144】
100、600 密閉型圧縮機
101、601 密閉容器
103、603 冷凍機油
105、605 冷媒ガス
107、607 吸入管
108、608 吐出管
109、609 圧縮要素
111、611 電動要素
119、619 ブロック
121、621 ピストン
135、635 圧縮室
145、645 吸入バルブ
151、651 吸入マフラー
153、653 尾管
157、657 マフラー本体
159、659 連通管
163、663 消音空間
170、370、470、670 冷凍装置
201、699 外表面
202 空間
203 伝熱防止部材
210 第2吸入管
211 接合部
212、312、412 冷却手段
213、313、413 密閉管部
214、324 低沸点冷媒
215、315、415 冷却部材
216、326 放熱部
220 冷却部分
230、330 冷却ファン
231 冷却部
280、680 凝縮器
281、681 膨張器
282、682 蒸発器
383、483 細管
490 弁
700 外側管
703 接続部
704 空隙
705 低熱伝導部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスが封入された密閉容器内に、電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、また、密閉容器に、一端が密閉容器内空間に連通し、他端が冷凍装置に接続される吸入管と、一端が前記圧縮要素と連通し、他端が冷凍装置に接続される吐出管を備え、前記圧縮要素を、圧縮室を形成するブロックと、前記圧縮室内を往復運動するピストンと、前記圧縮室の端部に配設された吸入バルブと、前記圧縮室に連通する吸入マフラーを備える構成とし、前記吸入マフラーを、少なくとも消音空間を形成するマフラー本体と、前記消音空間と前記圧縮室とを吸入バルブを介して連通する連通管と、前記吸入管と直接連結、または近接して配置され、かつ前記吸入マフラー本体に冷媒ガスを導入する尾管を備える構成とし、さらに、前記吸入管を冷却する冷却装置を備えた密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記冷却装置を、前記密閉容器の外表面との間に空間を介して設けた伝熱防止部材とした請求項1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記伝熱防止部材を、前記密閉容器の前記吸入管の周りに、前記吸入管と隙間を設けて前記密閉容器に固着された第2吸入管とし、前記第2吸入管の前記吸入管との接合部を、前記密閉容器の外表面から離れた位置とした請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記伝熱防止部材を、前記吸入管の周りに設けた冷却手段とした請求項2または3に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
前記冷却手段を、前記吸入管の外部で、かつ前記密閉容器と隙間を設けて配設され、かつ内部に冷却部材を充填した密閉管部とし、さらに、前記密閉管部に、少なくとも一つ以上の冷却部を設けた請求項4に記載の密閉型圧縮機。
【請求項6】
前記冷却部材を、低沸点冷媒を用い、さらに、放熱部を、連通管を通して前記冷却部と連結し、さらに、前記冷却部を冷却する冷却ファンを備える構成とした請求項5に記載の密閉型圧縮機。
【請求項7】
請求項5に記載の密閉型圧縮機の吐出管と吸入管に、凝縮器、膨張器、蒸発器の直列回路を接続して冷凍装置を構成し、冷却部分を、前記蒸発器と熱交換可能に配置し、前記冷却部分と前記密閉管部を、断熱された細管によって連結した冷凍装置。
【請求項8】
前記断熱された細管の一端を、前記蒸発器と膨張器の間に接続し、前記細管に開閉弁を設けた請求項7に記載の冷凍装置。
【請求項9】
前記冷却装置を、前記吸入管と該吸入管を囲う外側管の2重管とし、前記外側管を前記密閉容器に固定し、前記外側管と吸入管の接続部を、前記密閉容器の外表面から十分離れた位置とし、前記吸入管と前記外側管の間の空隙に、前記冷媒ガスまたは、低熱伝導部材を充填した構成とした請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項10】
前記密閉型圧縮機を、少なくとも商用電源周波数の80パーセント以下の周波数で運転されるものとした請求項7または8に記載の冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−197765(P2012−197765A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63794(P2011−63794)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】