説明

密閉型洗浄装置

【課題】洗浄液の漏洩ロスや大気の吸引を可及的に低減して、より環境に優しく、安全で経済性を向上する。
【解決手段】洗浄液を用いて被洗浄物の洗浄を密閉可能な容器1中で行う密閉型洗浄装置において、前記容器1に設けられ前記被処理物を出し入れする搬入出口7と、前記搬入出口7に設けられる蓋18と、前記搬入出口7の周囲に沿って配置される気密部材と、前記蓋18を開閉する蓋開閉手段と、前記蓋18が閉状態のとき、前記気密部材を介して前記蓋18を前記搬入出口7の周囲に所定圧力で押圧することにより前記容器1を密閉状態とし、前記押圧を解除することにより前記容器1を非密閉状態とする蓋押圧手段と、前記密閉状態の容器1内の圧力変動を吸収するアキュムレータ8と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密閉型洗浄装置に係り、特に一つの密閉可能な容器中で被洗浄物(ワーク)の液体洗浄、蒸気洗浄、乾燥を行うことが好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の密閉型洗浄装置として、例えば、容器中で被洗浄物を洗浄液により一次洗浄した後、容器から洗浄液を抜き取りその代わりに洗浄用蒸気を導入することで二次洗浄を行う洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−328052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗浄準備時には、容器の蓋を閉めて容器内の洗浄液を加温する際、容器内の上部空間のガス圧力が上昇する。この圧力の上昇したガスが、洗浄物を洗浄装置に投入するために容器の蓋を開閉する際、容器の外に放出されてしまう。
また、一次洗浄時には、容器内の洗浄液より低い温度の洗浄物を洗浄装置に投入する際、容器内の圧力が下降して容器内の洗浄液のガスに、大気中の水分や塵等が吸引されてしまう。
さらに、二次洗浄時には、容器内の洗浄液の蒸気圧の上昇を抑える為に、容器上部に冷却装置を設置しているが、冷却によるガス圧力の制御では容器の密閉を維持できる限界を超えることが多くなる。容器内のガス圧力が限界を超えると容器の蓋の隙間から洗浄液が漏洩する。
上述したように、洗浄液が容器より放出されたり漏洩したりすると洗浄液により外部環境が汚染されるため好ましくない。また漏洩による洗浄液の消費量が増大するため経済的でない。特に、洗浄液として比較的安価なものでなく、高価で洗浄効果の優れたものを用いると、僅かな洗浄液の漏洩によっても大きな損失を蒙ることになる。又、大気中の水分や塵等が容器内の洗浄液に吸引されてしまうと、洗浄力が落ちることになる。
【0005】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、洗浄液の漏洩ロスや大気の吸引を可及的に低減して、より環境に優しく、安全で経済性の高い密閉型洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、洗浄液を用いて被洗浄物の洗浄を密閉可能な容器中で行う密閉型洗浄装置において、前記容器に設けられ前記被処理物を出し入れする搬入出口と、前記搬入出口に設けられる蓋と、前記搬入出口の周囲に沿って配置される気密部材と、前記蓋を開閉する蓋開閉手段と、前記蓋が閉状態のとき、前記気密部材を介して前記蓋を前記搬入出口の周囲に所定圧力で押圧することにより前記容器を密閉状態とし、前記押圧を解除することにより前記容器を非密閉状態とする蓋押圧手段と、前記密閉状態の容器内の圧力変動を吸収するアキュムレータと、を有することを特徴とする密閉型洗浄装置が提供される。
【0007】
この場合、前記密閉可能な容器は、貯留した洗浄液に被洗浄物を浸漬して洗浄する液体洗浄槽と、該液体洗浄槽の上方に配置され前記被洗浄物を前記洗浄液の蒸気で洗浄する蒸
気洗浄槽と、該蒸気洗浄槽の上方に配置され前記蒸気を冷却して凝縮させることにより雰囲気を乾燥させて前記被洗浄物を乾燥させる乾燥槽と、前記蒸気洗浄槽に蒸気を供給する蒸気発生槽とを有することが好ましい。
【0008】
また、前記搬入出口が前記容器の上部に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記搬入出口が前記容器の側部に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記洗浄液から水を分離し、この水を分離した洗浄液を前記液体洗浄槽に戻す水分離器を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記容器に対して気密に設けられ、前記容器の内と外との間で被処理物を移送する移送手段を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記液体洗浄槽が複数設けられていることが好ましい。
【0013】
また、前記洗浄液が臭素系洗浄液であることが好ましい。
【0014】
また、前記被洗浄物を収容するバスケットを備え、前記被洗浄物は前記バスケット毎移送され、かつ洗浄されるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、洗浄液の漏洩ロスや大気の吸引を可及的に低減して、より環境に優しく、安全で経済性の高い密閉型洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る一槽式の密閉型洗浄装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る二槽式の密閉型洗浄装置の蓋の開閉手段を示す説明図であって、(a)は平面図、(b)はb−b矢視断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る二槽式の密閉型洗浄装置の概略構成を示す正面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る二槽式の密閉型洗浄装置の蓋の作動手段を示す説明図であって、(a)は密閉容器の平面図、(b)は密閉容器の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る一槽式の密閉型洗浄装置の概略構成を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
<第1の実施の形態>
図1及び図2を用いて第1の実施の形態の密閉型洗浄装置及び蓋の作動手段を説明する。密閉型洗浄装置は、密閉可能な容器(以下、単に密閉容器という)と、蒸気発生槽と、水分離器と、移送手段と、アキュムレータと、蓋と、蓋開閉手段と、蓋押圧手段とを備える。
まず、図1を用いて密閉容器1、蒸気発生槽2、水分離器10、移送手段21、及びアキュムレータ8について説明する。
【0019】
(密閉可能な容器)
密閉可能な容器1は、洗浄液2aを用いて被洗浄物の洗浄を行う。被洗浄物は、そのま
ま密閉容器1に収容されることもあるが、通常はバスケット12に収容され、バスケット12毎移送され、かつ洗浄される。
【0020】
密閉容器1は、上部が開口し底部が有底の筒体状に形成されている。密閉容器1は、下方に液体洗浄槽3を有する。液体洗浄槽3は、貯留した洗浄液2aに被洗浄物を浸漬して液体洗浄する。液体洗浄槽3の上方に蒸気洗浄槽5が配置されている。蒸気洗浄槽5は、前記被洗浄物に洗浄用蒸気を吹き付けて被洗浄物を洗浄する。洗浄用蒸気には洗浄液2aからなる蒸気が用いられる。蒸気洗浄槽5の上方に乾燥槽6が配置されている。乾燥槽6は、前記洗浄用蒸気を冷却して凝縮させ、乾燥槽6内の雰囲気を乾燥させることにより前記被洗浄物を乾燥させる。上記乾燥槽6は、密閉容器1の上部空間を構成する。
【0021】
密閉容器1は、さらに液体洗浄槽3の側方に蒸気発生槽2を有する。蒸気発生槽2は、蒸気洗浄のための洗浄用蒸気を生成して前記蒸気洗浄槽5に供給する。
【0022】
また、密閉容器1の上部の乾燥槽6内には冷却コイル4が設けられていて、乾燥ゾーンZ1を構成している。また、密閉容器1内の底部の洗浄槽3内は液体洗浄ゾーンZ3を構成しており、密閉容器1内の乾燥槽6と洗浄槽3との中間の蒸気洗浄槽5は蒸気洗浄ゾーンZ2を構成している。
【0023】
液体洗浄ゾーンZ3には、液体洗浄槽3が設けられている。液体洗浄槽3には、被洗浄物を洗浄するために低沸点洗浄液が貯留されている。本実施の形態では、環境基準に適合するため、臭素系洗浄液(例えば、アブゾール(登録商標))、塩素系洗浄液又はふっ素系洗浄液等の低沸点洗浄液が貯留されている。特にアブゾールは、速い乾燥性、低いGWP(温暖化係数)、高いKB値(油脂洗浄力)が得られるので、洗浄液として好ましい。
【0024】
また、効率的な洗浄のため、液体洗浄槽3の底部側に超音波振動子39が設置されている。超音波振動子39を振動させて洗浄液を攪拌すると、洗浄効率が飛躍的に向上するので洗浄時間を大幅に短縮することができる。
【0025】
また、密閉容器1の側壁下部に、洗浄液を回収するための溢流口8aが設けられている。溢流口8aは、洗浄液の回収、洗浄液の蒸気を密閉容器1内に導入させるための配管(以下、洗浄用蒸気導入管という)2cを介して蒸気発生槽2内と連通している。
【0026】
(蒸気発生槽)
蒸気発生槽2は、前記蒸気洗浄槽5に蒸気を供給する。蒸気発生槽2には、液体洗浄槽3と同じ洗浄液が貯留され、洗浄液を加熱して洗浄用蒸気を生成するためヒータが設けられている。この実施の形態では、ヒータとして加熱コイル2bが設けられるが、抵抗加熱式のヒータを設けてもよい。加熱コイル2bは、冷凍機30の冷凍サイクル(図示せず)に凝縮器として接続されている。冷却コイル4も冷凍サイクルの冷凍機30に蒸発器として接続されている。冷凍サイクルに加熱コイル2bと冷却コイル4とを接続すると、冷凍機の効率よい運用が可能となる。
冷却コイル4は密閉容器1の側壁上部の内面に沿わせて設けられており、冷却コイル4の下方に凝縮液受け43が設置される。
【0027】
(水分離器)
水分離器10は、洗浄液から水を分離し、この水を分離した洗浄液を前記液体洗浄槽3に戻す。凝縮液受け43は、配管10hを介して水分離器10の導入口部10eに接続される。水分離器10は、本体である密閉槽10aと、密閉槽10a内に上下方向に蛇行する流路10bを形成することにより、比重差によって洗浄液と水分とに分離する複数のバッフル板10cとから構成されている。水分離器10の凝縮液(洗浄液)の排出口部10
fは、排出管10jを介して下流側の液体洗浄槽3に接続されている。
【0028】
(移送手段)
移送手段21は、密閉容器1の内と外との間で被処理物を移送する。移送手段21は、バスケット12を支持するアーム21bと、アーム21bを移動させる駆動手段21c、及びアーム21bの先端に取り付けられた図示しないフォークとから主に構成される。フォークは密閉容器1内に収容されている。フォークを除いた各部は密閉容器1に気密に連接された移送手段収容部21e内に収容されている。移送手段21のアーム21bの昇降ストロークは、各ゾーンZ1〜Z3にフォークを移動させて配置させることができるよう、各ゾーンZ1〜Z3の位置に基づいて決定されている。なお、移送手段収容部21eもこのようなストロークに対応するように形成されている。
移送手段収容部21eには弁21aを介して空気抜き配管21dが接続され、移送手段収容部21eの空気を抜いて移送手段収容部21e内を密閉容器1と同じ雰囲気にするようになっている。
【0029】
(アキュムレータ)
アキュムレータ8は、ガス給排管84により密閉容器1と連通されている。アキュムレータ8は、密閉容器1に溜まるガスを密閉容器1の内外に出し入れすることにより、密閉容器1内の圧力変動を吸収するようになっている。ガスは大気や洗浄液が気化したガスである。アキュムレータ8は、浮き屋根式貯蔵タンクで構成され、下容器82と蓋容器81とを備える。下容器82は、上部が開口し、下部に前記ガスと反応しない水などの不活性液体85を貯める。蓋容器81は、この下容器82の開口を覆う。蓋容器81は所定の重量を持ち、下容器82の開口に嵌め込まれて不活性液体85上に浮いている。入口配管89が下方から下容器82を通って蓋容器81の内部上方まで達するように挿入されている。前記ガス給排管84は入口配管89に連通しており、蓋容器81内に導かれて、蓋容器81内にガス86が溜まるようになっている。蓋容器81内の空間に溜まるガス圧及び不活性液体85が与える浮力と、蓋容器81の重力とがバランスしてちょうど蓋容器81が不活性液体85上に浮上支持される。密閉容器1内の圧力の変動に応じて、蓋容器81内に溜まるガス量が変化して、蓋容器81が上下動して、密閉容器1内を一定の圧力に保持する。不活性液体85は、バルブ87を介してドレンパイプ88より抜き取る。
アキュムレータ8により、密閉容器1内の圧力変動が吸収されると、密閉容器1内の内圧の変動や上昇が防止され、蒸気ラインLの変動が防止されるので、蓋18と搬入出口7との密閉性をさらに向上させることができる。
【0030】
次に、図2を用いて蓋18、蓋開閉手段40、蓋押圧手段50について説明する。
【0031】
(蓋)
密閉容器1の上部開口1aは、天板61によって覆われている。その天板61に被洗浄物を搬入出するための搬入出口7が設けられる。搬入出口7は、密閉容器1の上部に設けられる。図示例では、搬入出口7は乾燥槽6の上部に設けられる。搬入出口7の開口面は垂直方向を向いている。搬入出口7には蓋18が開閉自在に設けられる。蓋18は、例えば、アクチュエータにより開閉自在なゲート弁から構成することも、ヒンジにより回転自在なハッチ式とすることもできる。ここではゲート弁が採用されている。蓋18をゲート弁で構成した場合は短時間での開閉が可能となるので、密閉容器1の密閉性を向上させることができる。また、装置全高を低くすることができる。
【0032】
蓋18には、搬入出口7を閉じたときに、蓋18と接する搬入出口7の周囲に沿って気密部材18aが設けられる。気密部材としては、例えば、ゴム等の弾性材料で形成されたOリングが好ましいが、その他のシールでもよい。蓋18には、密閉容器1内を観察するための覗き窓18bが設けられる。覗き窓18bは、蓋18の中央部に設けた窓孔18c
と、前記窓孔18cに気密に固着された耐圧ガラス18dとで構成される。また、蓋18には、覗き窓18bの外周に取手18eが取り付けられている。この取手18eは手動で蓋18をスライド開閉するために設けられている。
【0033】
(蓋開閉手段)
蓋開閉手段40は、蓋18を水平方向にスライドして開閉する。蓋開閉手段40は、筐体60の天板61上に互いに平行に水平方向に設けられた2本のガイドレール41、41と、蓋18に取り付けられ、ガイドレール41、41に係合してスライドするスライダ42、42とから構成される。蓋18はガイドレール41、41に沿ってスムーズに水平移動するようになる。蓋18は蓋開閉手段40を用いて手動で開閉することも、自動で開閉することも可能である。手動で開閉する場合には、取手18eをもって蓋18をスライドさせる。自動で開閉する場合には、蓋18に水平方向に伸縮する蓋開閉用のエアシリンダ45を取り付け、この蓋開閉用のエアシリンダ45の伸縮により蓋18を自動で開閉させる。
【0034】
(蓋押圧手段)
蓋押圧手段50は、閉状態の蓋18を搬入出口7の周囲に所定圧力で押圧することにより密閉容器1を密閉状態とし、その押圧力を解除することにより密閉容器1を非密閉状態とする。所定圧力は、例えば0.3MPa〜0.6MPaである。蓋押圧手段50は、エアシリンダやネジ、クランプで構成することができる。図示例では、蓋押圧手段50をエアシリンダ51aで構成している。エアシリンダ51aは、蓋18の周辺部を押さえ付けるために、蓋18の外周に複数設けられる。エアシリンダ51aは、例えば、蓋18の四隅に1個ずつ計4個設けられる。エアシリンダ51aは、そのシリンダ51bを蓋18の外周の天板61に取り付けて、そのロッド51cが蓋18の四隅を押圧できるようにする。ロッド51cの先端にはクッションゴムを設けるのが好ましい。
【0035】
エアシリンダ51aは、蓋18が搬入出口7を閉じているとき作動させる。エアシリンダ51aを蓋の主面に対して垂直方向に下降させることにより、気密部材18aを介して蓋18を搬入出口7に押圧して、密閉容器1を密閉状態とする。エアシリンダ51aを上昇させることにより、蓋18に加わる搬入出口7への押圧力を解除して、密閉容器1を非密閉状態とする。
【0036】
なお、図2に示すように、前述した移送手段21を収容する移送手段収容部21eは、搬入出口7の側部の天板61に密閉容器1と気密になるように取り付けられる。
【0037】
(制御部)
図1に示す制御部9は、密閉容器1、蒸気発生槽2、水分離器10、アキュムレータ8、移送手段21、及び冷凍機30、エアシリンダなどの制御系を制御するようになっている。
【0038】
上述した密閉容器1、蒸気発生槽2、水分離器10、アキュムレータ8、移送手段21、制御部9、冷凍機30、及び移送手段収容部21eなどは筐体60内に収納されている。このようにして密閉型基板洗浄装置が構成されている。
【0039】
次に、上述のように構成された密閉型洗浄装置を用いて行う洗浄工程について説明する。尚、以下の説明において、密閉型洗浄装置を構成する各部の動作は制御部9により制御される。
(洗浄工程)
まず、準備工程として、冷凍機30が作動され、冷却コイル4が冷却され、ヒータとしての加熱コイル2bが加熱される。すると、密閉容器1の乾燥槽6内雰囲気、及び、密閉
容器1の乾燥槽6の側壁が冷却され、密閉容器1の乾燥槽6内に、冷却・凝縮により、被洗浄物の乾燥を行うための乾燥ゾーン(冷却ゾーン)Z1が形成される。
【0040】
また、蒸気発生槽2に設けた加熱コイル2bの加熱により、蒸気発生槽2内に洗浄液の蒸気が生成され、洗浄用蒸気供給管2cを介して密閉容器1内に導入される。乾燥ゾーンZ1は冷却コイル4により冷却されるので、乾燥ゾーンZ1下と液体洗浄ゾーンZ3との間に充満する洗浄用蒸気により蒸気洗浄ゾーンZ2が形成され、結果として、乾燥ゾーンZ1と冷却ゾーンとの間に蒸気ラインLが形成される。蒸気ラインLが形成されると、乾燥ゾーンZ1での冷却、凝縮が安定し、密閉容器1の密閉性が安定する。なお、洗浄用蒸気の温度は、蒸気発生槽2から洗浄蒸気が連続的に供給されることで洗浄液の沸点に保持される。
【0041】
蒸気ラインLが形成されると、蓋開閉手段40を用いて搬入出口7の蓋18を自動で開く。開いた蓋18から被洗浄物がバスケット12に入れられた状態で、移送手段21により液体洗浄槽3中に挿入される。蓋開閉手段40を用いて搬入出口7の蓋18を自動で閉じる。さらに蓋押圧手段50を用いて蓋18を搬入出口7の周囲に押し付けて蓋18を密着させる。このように密閉容器1を密閉した後、被洗浄物の一次洗浄が行われる。液体洗浄槽3の洗浄液は、超音波振動子39により攪拌されるので、短時間で一次洗浄を終了させることができる。
【0042】
一次洗浄が終了すると、移送手段21により被洗浄物はバスケット12毎、蒸気洗浄ゾーンZ2中に引き上げられ、ここで、蒸気洗浄、すなわち、二次洗浄が行われる。二次洗浄の後は、移送手段21により乾燥ゾーンZ1中に引き上げられ、乾燥が行われる。乾燥ゾーンZ1中では、被被洗浄物の表面に付着している洗浄液等の液分は、バスケット12や被洗浄物に蓄積されている蓄熱によって蒸発し、蒸発した洗浄液や水分は、乾燥ゾーンZ1中に拡散し、冷却コイル4の表面、乾燥槽6内の側壁内面で凝縮液となって凝縮液受け43dに捕集される。
【0043】
乾燥の終了後は、蓋押圧手段50を用いて蓋18の搬入出口7への押圧力を解除して蓋18を非密着状態にする。そのうえで、蓋開閉手段40を用いて蓋18をスライド方向に移動して搬入出口7を自動で開く。被洗浄物はバスケット12毎、搬入出口7から外部へと搬出される。
【0044】
凝縮液は、凝縮液受け43の排出口部10iから排出管10hを通じて水分離器10の流路10bに導入される。水分離器10の流路10bは、バッフル板10cにより上下方向に蛇行しており、水分は、洗浄液よりも比重が軽いため、比重差により、流路10bの上流部、すなわち、水分の滞留部に滞留する。下流側のバッフル板10cを溢流した洗浄液は、液体洗浄槽3に還流される。また、流路10bの上流部に滞留した水分は、水分の滞留部に連通する水分の排出管10gから排出される。なお、水分の排出は、排出管10gに設けられた弁35の開閉によって行われる。
【0045】
そして、本実施の形態に係る洗浄部では、このような被洗浄物の液体洗浄、蒸気洗浄、乾燥の繰り返しにより、上流側の液体洗浄槽3から洗浄液が溢流し、溢流した洗浄液が溢流口8a及び蒸気供給管を通じて蒸気発生槽2に回収される。このため回収した洗浄液は、再び、洗浄用蒸気として蒸気洗浄ゾーンZ2へと供給され、洗浄用蒸気として繰り返し使用される。
【0046】
ところで、上述した洗浄準備中、洗浄液が加温されたり、蓋が開閉されたりするため、密閉容器1内の乾燥槽6内のガス圧が変動することになる。また、上記一次洗浄中、水分離器10から密閉容器1内への洗浄剤の液体が供給され、その供給量が変動するため、密
閉容器1内の乾燥槽6内のガス圧が絶えず変動することになる。また、上記二次浄中、蒸気発生槽2から密閉容器1内への蒸気供給が継続するため、密閉容器1内の蒸気量が変動し、冷却コイル4により蒸気の上昇を抑えている密閉容器1内の乾燥槽6では、その乾燥槽6内のガス圧が絶えず変動することになる。
【0047】
密閉容器1内のガス圧が上がると、ガスの一部はガス給排管84を介してアキュムレータ8に流れるため密閉容器1内のガス圧が下がる。アキュムレータ8に流れたガスはアキュムレータ8の蓋容器81を押し上げて、蓋容器81をバランスさせる。反対に、密閉容器1内のガス圧が下がると、バランスを取るため蓋容器81が降下し、蓋容器81内のガスがガス給排管84を介して密閉容器1内に流れて、密閉容器1内のガス圧を上げる。これにより蒸気洗浄時、密閉容器1内の圧力は、密閉容器1内に供給される蒸発量に係わらず、常に一定に調整され、密閉容器1内のガス圧が過度に上昇することがなくなる。したがって、蓋押圧手段50によって密閉容器の蓋18を搬入出口7に押圧して密着させていても、密閉容器1の蓋18の気密を破って、洗浄剤及びその蒸気が漏れることがなくなる。
また、密閉容器1内の圧力は常に一定に調整されるので、一次洗浄時において、洗浄物を洗浄装置に投入するとき、大気中の水分や塵等が容器内に吸引されてしまうこともなくなる。
【0048】
このように、本実施形態に係る密閉型洗浄装置によれば、アキュムレータにより密閉容器内の圧力を安定化させると共に、蓋を搬入出口に密着させる蓋押圧手段を設けることによって、Oリング又はシールを多重に設けることなく、洗浄液の漏洩を有効に防止することができる。したがって、洗浄液の漏洩に起因する外部環境の汚染、消費量の増大を抑制できる。特に、洗浄液に臭素系洗浄液を用いた場合には、CO削減効果が極めて高いので、外部環境の汚染をより有効に抑制できる。また、乾燥ゾーンZ1により密閉性が保持され、高価な臭素系洗浄液が外部に漏出することがないので、経済的であり、環境に影響を及ぼすこともない。
【0049】
また、本実施形態に係る密閉容器は、冷却コイル4により、洗浄液や水分を凝縮させ、凝縮液から水分を分離した液を液体洗浄槽3に戻し、液体洗浄槽3からの溢流液として蒸気発生槽2に戻すことにより、繰り返し利用する構成となっており、高価な洗浄液を使用しながらも低コストで被洗浄物を洗浄することができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る密閉型洗浄装置は、冷却により、凝縮液とするので、蓋18を開いたときに洗浄用蒸気が外部漏出することもない。逆に、大気中の水分や塵埃などが吸引されることもない。よって、密閉性が高く、環境破壊の虞のない環境基準に適合したシステムとなる。
【0051】
なお、本実施の形態では、気密部材にOリングを用いたが、これに限定されない。例えば、Oリング以外のパッキン、またはガスケットでもよい。
また、本実施の形態では、蓋押圧手段にエアシリンダを用いたが、これに限定されない。例えば、液体シリンダ、またはネジやクランプでもよい。また、本実施の形態では、アキュムレータに浮屋根式タンクを用いたが、これに限定されず、気密容器のガス圧変動を吸収するものであればいずれでもよい。また、本実施の形態では、洗浄液にアブゾールなどの臭素系洗浄液を用いたが、これに限定されない。例えば、低沸点洗浄液である塩素系洗浄液、フッ素系洗浄液などでもよい。
また、本実施の形態では、洗浄部が一槽式の場合の密閉型洗浄装置について説明したが、二槽式またはそれ以上の数の洗浄槽を有する多槽式でもよい。また、本実施の形態では、搬入出口が密閉型洗浄装置の上部(天井部)に形成されている場合について説明したが、側部に形成されていてもよい。
【0052】
<第2の実施の形態>
図3は第2の実施の形態に係る密閉型洗浄装置の概略構成を示す正面図である。本実施の形態に係る密閉型洗浄装置は、基本的には図1に示す第1の実施の形態の構成と同じであるので、同一箇所は同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態が図1と異なる点は、洗浄部が一槽式ではなく二槽式となっている点である。
【0053】
すなわち、液体洗浄ゾーンZ3には、2つの液体洗浄槽3、3が設けられている。液体洗浄槽3は、密閉容器1内の底部内に垂直に設けられた隔壁3aによって区画されており、それぞれに被洗浄物を洗浄するために低沸点洗浄液が貯留されている。また、液体洗浄槽3,3間の隔壁3aには溢流堰1cが設けられる。溢流口8aは、側壁下部の溢流堰1cから見て下流側の液体洗浄槽3に設けられている。
【0054】
二槽式の密閉容器1は横幅が一槽式のものよりも大きいので、図4に示すように、蓋18も大きくなる。このため、蓋開閉手段としてのエアシリンダは1本から2本へ、蓋押圧手段としてのエアシリンダは4本から8本へ増加させて大型化に対応している。また、図には顕れていないが、アキュムレータ8も密閉状態の容器内の圧力変動を吸収できるように大型化ないし複数化している。なお、移送手段21は、昇降移動(白抜き矢印で示す縦方向)だけでなく、水平移動(白抜き矢印で示す横方向)できるようになっている。その他の構成は同様であるため説明を省略する。
【0055】
移送手段21を作動させることにより、密閉容器1内でバスケット12に収納された被洗浄物は、密閉容器1内で連続的に2回洗浄される。
【0056】
このように二槽式の密閉型洗浄装置であっても、蓋開閉手段及び蓋押圧手段を大型化に対応させているので、一槽の場合と同様に、洗浄液の漏洩ロスを可及的に低減して、より環境に優しく、安全で経済性の高い洗浄を行うことができる。
【0057】
<第3の実施の形態>
図5は第3の実施の形態に係る密閉型洗浄装置の外観構成図を示す。この密閉型洗浄装置の内部構成は、基本的には図1に示す第1の実施の形態の構成と同じである。本実施の形態が図1と異なる点は搬入出口7が、密閉容器1の上部ではなく、側部に設けられている点である。
【0058】
すなわち、この実施の形態では、密閉容器1の垂直な側部、この側部と接する筐体60の垂直な側壁60a、及び側壁60aを覆う垂直に設けられた天板61の3部材に共通の重なる開口が設けられる。この開口を密閉容器1の搬入出口7としている。この搬入出口7は、開口面が水平方向を向いている。この搬入出口7に蓋18が主面を垂直にして設けられる。蓋18は上下に昇降し、水平方向に押圧されるように蓋開閉手段40及び蓋押圧手段50が天板61に取り付けられる。
【0059】
蓋開閉手段40及び蓋押圧手段50の構成は、基本的には図2に示す第1の実施の形態と同じ構成である。本実施の形態が、第1の実施の形態と異なる点は、蓋開閉手段40及び蓋押圧手段50の取付け姿勢が水平ではなく垂直になっている点である。
蓋開閉手段40は、垂直方向に配設した一対のガイドレール41、41と、蓋18に取り付けられ、ガイドレール41、41にスライド自在にはめ込まれたスライダ42、42と、蓋18を昇降させるエアシリンダ45とから構成される。蓋押圧手段50は、ガイドレール41、41内に配設されて見えないが、複数のエアシリンダ51aで構成される。エアシリンダ5aは、蓋18が閉状態のとき、気密部材を介して蓋18を搬入出口7の周囲に所定圧力で水平方向に押圧することにより密閉容器1を密閉状態とし、押圧を解除す
ることにより密閉容器1を非密閉状態とする。
なお、蓋18の下端から水平方向に突き出した被洗浄物ないしバスケットを載置するテーブル65が設けられている。このテーブルは折り畳み自在に設けられ、折り畳み時は筐体60の側壁60aと平行になる。
【0060】
このような側部開閉式の密閉型洗浄装置によれば、密閉容器の側部に搬入出口を設けることによって、蓋開閉手段及び蓋押圧手段を密閉容器の側部に設けることができるようになるため、密閉容器の上部に移送手段に加えて蓋開閉手段及び蓋押圧手段を設ける場合に比べて、密閉容器の開口を塞ぐ天板部の簡素化を図ることができる。また、搬入出口が密閉容器の側部に設けられていると、上部に設けられている場合に比べて、搬入出口の位置が床から低くなるため、被洗浄物ないしバスケットの密閉容器に対する搬入出も容易になる。さらに、蓋開閉手段及び蓋押圧手段の取り付け位置も低くなるため、これらのメンテナンスも容易になる。
【符号の説明】
【0061】
1 密閉容器
3 液体洗浄槽
5 蒸気洗浄槽
6 乾燥槽
7 搬入出口
8 アキュムレータ
10 水分離器
12 バスケット
18 蓋
21 移送手段
61 天板
Z1 乾燥ゾーン
Z2 液体洗浄ゾーン
Z3 蒸気洗浄ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を用いて被洗浄物の洗浄を密閉可能な容器中で行う密閉型洗浄装置において、
前記容器に設けられ前記被処理物を出し入れする搬入出口と、
前記搬入出口に設けられる蓋と、
前記搬入出口の周囲に沿って配置される気密部材と、
前記蓋を開閉する蓋開閉手段と、
前記蓋が閉状態のとき、前記気密部材を介して前記蓋を前記搬入出口の周囲に所定圧力で押圧することにより前記容器を密閉状態とし、前記押圧を解除することにより前記容器を非密閉状態とする蓋押圧手段と、
前記密閉状態の容器内の圧力変動を吸収するアキュムレータと、
を有することを特徴とする密閉型洗浄装置。
【請求項2】
前記密閉可能な容器は、貯留した洗浄液に被洗浄物を浸漬して洗浄する液体洗浄槽と、該液体洗浄槽の上方に配置され前記被洗浄物を前記洗浄液の蒸気で洗浄する蒸気洗浄槽と、該蒸気洗浄槽の上方に配置され前記蒸気を冷却して凝縮させることにより雰囲気を乾燥させて前記被洗浄物を乾燥させる乾燥槽と、前記蒸気洗浄槽に蒸気を供給する蒸気発生槽とを有する請求項1に記載の密閉型洗浄装置。
【請求項3】
前記搬入出口が前記容器の上部に設けられている請求項1に記載の密閉型洗浄装置。
【請求項4】
前記搬入出口が前記容器の側部に設けられている請求項1に記載の密閉型洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液から水を分離し、この水を分離した前記洗浄液を前記液体洗浄槽に戻す水分離器を備えた請求項1に記載の密閉型洗浄装置。
【請求項6】
前記容器に対して気密に設けられ、
前記容器の内と外との間で被処理物を移送する移送手段を備えた請求項1に記載の密閉型洗浄装置。
【請求項7】
前記液体洗浄槽が複数設けられている請求項1に記載の密閉型洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄液が臭素系洗浄液である請求項1に記載の密閉型洗浄装置。
【請求項9】
前記被洗浄物を収容するバスケットを備え、前記被洗浄物は前記バスケット毎移送され、かつ洗浄される請求項1に記載の密閉型洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−240606(P2010−240606A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93863(P2009−93863)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(390034234)株式会社ワールド機工 (7)
【Fターム(参考)】