説明

密閉型鉛蓄電池用正極板および前記正極板を用いた密閉型鉛蓄電池

【課題】サイクルユース用途で正極の寿命の原因になる活物質の軟化、脱落および正極格子の腐食を抑制した密閉型鉛蓄電池用正極板、および前記正極板を用いた初期容量およびサイクル寿命性能に優れる密閉型鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、残部がPbと不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccである密閉型鉛蓄電池用正極板。前記正極板を含む極板群が電槽内に40〜100kPaの群圧で収容されている密閉型鉛蓄電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深い充放電を繰り返すサイクルユース用の密閉型鉛蓄電池用正極板、および前記正極板を用いた密閉型鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、ニッケル−カドミウム蓄電池と並んで、長い歴史を持ち、その安価さもさることながら、安定した性能からくる高信頼性ゆえに現在でも蓄電池の主流を占めており、自動車のSLI用電源、小型電子機器や電動車に用いられる移動用電源、或いは停電時に作動するコンピュ−タ等のバックアップ据置用電源として広く使用され続けている。
【0003】
この鉛蓄電池では、近年、電解液の補充等を不要としたメンテナンスフリーの密閉型鉛蓄電池が、バックアップ据置用電源などのフロートユース用を始め、ロ−ドレベリングなどを含めたサイクルユ−ス用として急速に普及しつつある。
【0004】
前記密閉型鉛蓄電池の正極格子には、減液が少なくメンテナンスフリーに有利なPb−Ca系合金が主に用いられているが、このPb−Ca系合金格子は活物質が軟化し易いためサイクル寿命が短いという問題がある。
【0005】
前記活物質の軟化を防止する方法として、正極活物質を高密度で充填する方法が提案された(特許文献1)が、正極活物質を高密度で充填すると正極板の多孔度が低下して電解液中の硫酸イオンが拡散し難くなり初期容量が低下するという問題が生じた。
【0006】
正極活物質中にBiを添加して活物質同士および格子と活物質間の密着性を改善する方法(特許文献2)は、サイクル寿命性能を十分には改善することができない。
【0007】
密閉型鉛蓄電池は、正極格子が腐食して細く脆くなり、格子ごと活物質が脱落して寿命に至ることもある。
【0008】
正極格子の腐食を低比重の電解液を使用して抑える方法は、電解液中の純硫酸量が減少するので電池容量が低下するという問題がある。また正極格子を高耐食性かつ高強度の鉛基合金で構成した鉛蓄電池(特許文献3)は、サイクル初期において活物質と格子基板間の密着性が十分に得られないという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開昭56−22046号公報
【特許文献2】特公平08−08103号公報
【特許文献3】特開2003−306733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、サイクルユース用途で正極の寿命の原因になる活物質の軟化、脱落および正極格子の腐食を抑制した密閉型鉛蓄電池用正極板、および前記正極板を用いた初期容量およびサイクル寿命性能に優れる密閉型鉛蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載発明は、Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、残部がPbと不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用正極板である。
【0012】
請求項2記載発明は、Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、さらにAg0.005%以上0.07%以下、Bi0.01%以上0.10%以下、Tl0.001%以上0.05%以下の群から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部が鉛と不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用正極板である。
【0013】
請求項3記載発明は、Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、さらにCu、K、Li、Mg、Na、P、Sb、Se、Teの群から選ばれる少なくとも1種を各0.01%以上0.1%以下含有し、残部が鉛と不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用正極板である。
【0014】
請求項4記載発明は、Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、さらにAg0.005%以上0.07%以下、Bi0.01%以上0.10%以下、Tl0.001%以上0.05%以下の群から選ばれる少なくとも1種を含有し、これにさらにCu、K、Li、Mg、Na、P、Sb、Se、Teの群から選ばれる少なくとも1種を各0.01%以上0.1%以下含有し、残部が鉛と不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用正極板である。
【0015】
請求項5記載発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の密閉型鉛蓄電池用正極板が用いられていることを特徴とする密閉型鉛蓄電池である。
【0016】
請求項6記載発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の密閉型鉛蓄電池用正極板を含む極板群が電槽内に40〜100kPaの群圧で収容されていることを特徴とする密閉型鉛蓄電池である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の正極板は、高耐食性Pb−Ca系合金を用いた正極格子に、Biを適量添加した正極活物質を適正密度で充填したものなので、正極格子と正極活物質間の密着不良による活物質の軟化、脱落が防止される。また前記正極板を用いた密閉型鉛蓄電池は正極活物質の充填密度が適正なため硫酸イオンの拡散が阻害されず、またBiを適量含むので初期容量が優れる。さらに前記正極格子は高耐食性なので腐食して格子ごと活物質が脱落してしまうようなことがない。従ってサイクル寿命が著しく長い。前記正極板を含む極板群を電槽内に40〜100kPaの群圧で収容した密閉型鉛蓄電池は正極活物質の軟化、脱落が群圧により抑止されるので、サイクル寿命が一層長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において、正極活物質に含有させるBiは、活物質同士および格子と活物質間の密着性を改善し、さらに密閉型鉛蓄電池の初期容量を高める。
本発明においてBiの含有量を0.01〜0.10%に規定する理由は、0.01%未満ではその効果が十分に得られず、0.10%を超えて含有させても、その効果が飽和してしまうためである。なお、Biの添加形態は任意であるが、金属Bi、酸化Bi、硫酸Biなどとして添加するのがBiが均一に混合され好ましい。
【0019】
本発明において、正極活物質ペーストの密度を4.4〜4.9g/ccに規定する理由は、4.4g/cc未満では、正極活物質の軟化、脱落防止効果が十分に得られず、4.9g/ccを超えると正極格子への充填性が悪化するうえ、正極板の多孔性が減じて硫酸イオンの拡散が阻害され初期容量が低下するためである。
【0020】
次に、請求項1記載発明で用いる正極格子の合金組成について説明する。
Caは正極格子の機械的強度と耐食性を高める。その含有量を0.02%以上0.05%未満に規定する理由は、0.02%未満ではその効果が十分に得られず、0.05%以上では耐食性が低下するためである。
【0021】
Baは正極格子の機械的強度を高める。その含有量を0.002%以上0.014%以下に規定する理由は、0.002%未満ではその効果が十分に得られず、0.014%を超えると耐食性が急激に低下するためである。
【0022】
Caを0.02%以上0.05%未満、Baを0.002%以上0.014%以下含有するPb−Ca系合金の正極格子は、高耐食性と高強度とを兼備し、さらに活物質との界面が緻密化して、腐食層を介した活物質との間の導電性が長期間良好に維持され或いは向上する。それにより制御弁式鉛蓄電池の長寿命が達成される。
【0023】
Snは、合金の湯流れ性を改善し、機械的強度を高め、さらに電池として使用中に格子界面に溶出して腐食層にドープされ半導体効果を発揮して導電性および耐食性を高める。Snの含有量を0.4%以上4.0%以下に規定する理由は、Snが0.4%未満ではその効果が十分に得られず、4.0%を超えると機械的強度と耐食性のバランスが崩れ、またSnの粒界偏析が増えて腐食し易くなり、さらに融点と凝固点が乖離し鋳造欠陥(焼き折れ)が発生し易くなるためである。なお、Snの含有量が2.5%を超えると結晶粒が粗大化して鋳造基板がハンドリング時に変形し難くなる効果も得られる。
【0024】
Alは優先的に酸化して溶湯中のCaとBaの酸化損失を抑制する。Alの含有量を0.04%以下に規定する理由は、0.04%を超えるとドロスが増加して鋳造性が悪化するためである。
【0025】
Al含有量の下限は、溶解、鋳造時の雰囲気により異なり、大気中で溶解、鋳造するときは、酸化損失抑制のために0.005%以上必要である。一方、非酸化性雰囲気で溶解、鋳造する場合はAlは添加する必要がない。
【0026】
請求項2記載発明は、請求項1記載発明で用いるPb−Ca系合金に、Ag0.005%以上0.07%以下、Bi0.01%以上0.10%以下、Tl0.001%以上0.05%以下の群(第一選択元素群)から選ばれる少なくとも1種を含有させて正極格子の機械的強度および高温での耐クリープ特性を高めた密閉型鉛蓄電池用正極板である。
【0027】
Agは、機械的強度、特に高温での耐クリープ特性を著しく高める。Agの含有量を0.005%以上0.07%以下に規定する理由は、0.005%未満ではその効果が十分に得られず、0.07%を超えると鋳造時にクラックが発生し易くなるためである。特に好ましいAgの含有量は0.01%以上0.05%以下である。
【0028】
Biも正極格子の機械的強度および高温での耐クリープ特性を高める。その効果は前記Agより小さいが、BiはAgより廉価で経済的に有利である。Biの含有量を0.01%以上0.10%以下に規定する理由は、0.01%未満ではその効果が十分に得られず、0.10%を超えると耐食性が低下するためである。特に好ましいBiの含有量は0.03%以上0.05%以下である。
【0029】
Tlも機械的強度を向上させる。また廉価で経済的に有利である。Tlの含有量を0.001%以上0.05%以下に規定する理由は、0.001%未満ではその効果が十分に得られず、0.05%を超えると耐食性が低下するためである。Tlの特に好ましい含有量は0.005%以上0.05%以下である。
【0030】
請求項3記載発明は、請求項1記載発明で用いるPb−Ca系合金に、Cu、K、Li、Mg、Na、P、Sb、Se、Teの群(第二選択元素群)の中から選ばれる少なくとも1種を含有させた正極格子で、前記元素群はSnと金属間化合物を形成し粒子分散強化により機械的強度を向上させる。前記金属間化合物はいずれも均一に分散するので、腐食が均一に進行し、そのため耐食性が向上する。前記機械的強度と耐食性の向上により、耐グロス性が改善される。
【0031】
前記第二選択元素群の含有量を各0.01%以上0.1%以下に規定する理由は、0.01%未満ではその効果が十分に得られず、0.1%を超えると耐食性が低下するためである。
【0032】
請求項4記載発明は、請求項1記載発明で用いるPb−Ca系合金に、前記第一元素群から選ばれる少なくとも1種と前記第二元素群から選ばれる少なくとも1種を含有させた正極格子で、機械的強度および高温での耐クリープ性に加え、耐食性並びに耐グロス性が改善される。
【0033】
本発明において、Pb−Ca系合金は、工業的に不可避な不純物、或いは無害な不純物を含むことが許される。
【0034】
本発明において、Pb−Ca系合金を正極格子に成形するには、重力鋳造法、連続鋳造法、圧延・エキスパンド加工法、押出・エキスパンド加工法、押出・圧延・エキスパンド加工法などが適用できる。
【0035】
請求項5記載発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の密閉型鉛蓄電池用正極板が用いられた密閉型鉛蓄電池で、電池の形式は、ゲル式、リテーナ式、顆粒シリカ式など任意である。
【0036】
請求項6記載発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の密閉型鉛蓄電池用正極板を用いた極板群が電槽内に40〜100kPaの群圧で収容された密閉型鉛蓄電池である。
この発明において、電槽内に極板群を40〜100kPaの群圧で収容する理由は、群圧が40kPa未満では、群圧によるサイクル初期の格子−活物質間の密着改善効果および正極活物質の軟化防止効果が十分に得られない場合があり、100kPaより高いと、極板群を電槽に収容する際に極板が破損したり、また、組立が困難で生産性が低下したりすることがあるためである。特に好ましい群圧は60〜100kPaである。
【実施例1】
【0037】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。
Ca、Sn、Al、Baの各元素を所定量秤量して鉛と共に溶解しこれを鋳造した請求項1規定組成のPb−Ca系合金製正極格子に正極活物質ペーストを充填して正極板を作製し、この正極板に、公知の方法で作製した負極板を、主にガラス繊維を抄造してなるリテーナマットを介して交互に積層して、正極板3枚/負極板4枚構成の極板群を作製し、前記極板群を電槽内に40kPaの群圧で組み込んだ。前記正極活物質ペーストは鉛粉に0.05%のBiが入るようにBiを添加し所定量の水および希硫酸を練合して4.6g/ccの密度に調整した。
【0038】
次に前記極板群の同極性耳群同士を常法にてストラップ溶接し、同時に端子を形成し、次いで電槽と蓋を接着した後、所定量の電解液を注液し封口した後、電槽化成を行って、2V、定格容量7Ahの密閉型鉛蓄電池を作製した。
【0039】
得られた密閉型鉛蓄電池について初期容量およびサイクル寿命性能を調べた。
初期容量は常法により調べ、7.5Ahを超えたものは初期容量が極めて優れる(◎)、7.5〜7.0Ahのものは優れる(○)、7.0Ah未満のものは劣る(×)と判定した。
サイクル寿命性能は、得られた各々の密閉型鉛蓄電池を各水準2個ずつ25℃の恒温槽に入れて、放電:0.25C×2時間(DOD50%)、充電:0.25C(90%)+0.15C(15%)、充電量105%の条件でサイクル試験を行い、100サイクルおきに0.1Cで容量試験を行い、定格容量の70%を切った時点を寿命(2個の平均)とした。サイクル寿命性能は、2100サイクル回以上は良好、2100サイクル回未満は不良と判定した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0040】
実施例1に記載の各元素と第一元素群(Ag、Bi、Tl)から選択した各元素とを所定量秤量し鋳造して得た請求項2規定組成のPb−Ca系合金からなる正極格子を用いた他は、実施例1と同じ方法により密閉型鉛蓄電池を製造し、初期容量およびサイクル寿命性能を調べた。結果を表2に示す。
【実施例3】
【0041】
実施例1に記載の各元素と第二元素群(Cu、K、Li、Mg、Na、P、Sb、Se、Te)から選択した各元素とを所定量秤量し鋳造して得た請求項3規定組成のPb−Ca系合金からなる正極格子を用いた他は、実施例1と同じ方法により密閉型鉛蓄電池を製造し、初期容量およびサイクル寿命性能を調べた。結果を表3乃至表5に示す。
【実施例4】
【0042】
実施例1に記載の各元素と第一および第二元素群から選択した各元素を所定量秤量し鋳造して得た請求項4規定組成のPb−Ca系合金からなる正極格子を用いた他は、実施例1と同じ方法により密閉型鉛蓄電池を製造し、初期容量およびサイクル寿命性能を調べた。結果を表6に示す。
【0043】
比較例1として、Ca、Sn、Al、Baの各元素を本発明規定組成外としたPb−Ca系合金からなる正極格子を用いた他は、実施例1と同じ方法により密閉型鉛蓄電池を製造し、初期容量およびサイクル寿命性能を調べた。結果を表7に示す。
【0044】
表1乃至7から明らかなように、実施例1〜4(本発明例)はいずれも初期容量およびサイクル寿命性能が優れ、高い総合評価を得た。これは、本発明例の実施例1〜4(No.1〜230)はいずれも、正極格子の合金組成、正極活物質のBi含有量、正極活物質ペーストの密度、の3規定をすべて満足したことによる。
なお、表2、表3乃至表5に示す如く、第一選択元素群および第二選択元素群はその組成範囲より少ない場合は、添加効果が殆ど無く、また多く添加しても効果の向上が認められないばかりか低下する。
【0045】
これに対し、比較例1のNo.1はCaが少ないため、No.2はCaが多いため、No.3はSnが少ないため、No.4はSnが多いため、No.5はBaが少ないため、No.6はBaが多いため、いずれもサイクル寿命性能が劣った。
【実施例5】
【0046】
正極活物質ぺーストに含有させるBi量、正極活物質ぺーストの充填密度、極板群の電槽組み込み群圧を本発明規定値内で種々に変化させた他は、実施例1と同じ方法により密閉形鉛蓄電池を製造し、実施例1と同じ調査を行なった。
【0047】
比較例2として、正極活物質ぺーストに含有させるBi量、正極活物質ぺーストの充填密度、極板群の電槽組み込み群圧のいずれか1つを本発明規定値外とした他は、実施例1と同じ方法により密閉形鉛蓄電池を製造し、実施例1と同じ調査を行なった。
実施例5および比較例2の調査結果を表8に示す。
【0048】
表8から明らかなように、本発明例の実施例5(No.231〜239)はいずれも初期容量およびサイクル寿命性能に優れ、高い総合評価を得た。特に、正極活物質のBiが多いもの(No.233)および充填密度が低いもの(No.234)は初期容量が優れた。また群圧が60kPa以上のもの(No.236、237、238)はサイクル寿命が優れた。No.239は群圧が好ましい範囲から外れたためサイクル寿命性能が若干低下した。
【0049】
これに対し、比較例2のNo.7は正極活物質のBiが少ないため、初期容量が低下した。No.8は正極活物質の充填密度が低いため正極活物質が軟化、脱落してサイクル寿命性能が劣った。No.9は活物質ペーストの密度が高かったため硫酸イオンの拡散が抑制されて初期容量が低下した。No.10は活物質ペーストがさらに高密度で硬かったため正極格子に充填することができなかった。No.11は群圧が高過ぎて、電槽内への群挿入が困難であった。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、残部がPbと不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用正極板。
【請求項2】
Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、さらにAg0.005%以上0.07%以下、Bi0.01%以上0.10%以下、Tl0.001%以上0.05%以下の群から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部が鉛と不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用正極板。
【請求項3】
Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、さらにCu、K、Li、Mg、Na、P、Sb、Se、Teの群から選ばれる少なくとも1種を各0.01%以上0.1%以下含有し、残部が鉛と不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用正極板。
【請求項4】
Pb−Ca系合金製の正極格子に活物質ペーストが充填された正極板において、前記Pb−Ca系合金が、Ca0.02%(質量%、以下同じ)以上0.05%未満、Sn0.4%以上4.0%以下、Al0.04%以下、Ba0.002%以上0.014%以下を含有し、さらにAg0.005%以上0.07%以下、Bi0.01%以上0.10%以下、Tl0.001%以上0.05%以下の群から選ばれる少なくとも1種を含有し、これにさらにCu、K、Li、Mg、Na、P、Sb、Se、Teの群から選ばれる少なくとも1種を各0.01%以上0.1%以下含有し、残部が鉛と不可避不純物からなり、前記活物質ペーストにBiが0.01〜0.10%含有されており、前記活物質ペーストの密度が4.4〜4.9g/ccであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用正極板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の密閉型鉛蓄電池用正極板が用いられていることを特徴とする密閉型鉛蓄電池。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の密閉型鉛蓄電池用正極板を含む極板群が電槽内に40〜100kPaの群圧で収容されていることを特徴とする密閉型鉛蓄電池。

【公開番号】特開2006−66283(P2006−66283A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248761(P2004−248761)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】