説明

密閉式混練機の運転方法

【課題】密閉式混練機の冷却機構を有効に利用して、混練材料の混練工程の後、短時間で混練材料を所定温度まで冷却することができる密閉式混練機の運転方法を提供すること。
【解決手段】混練材料Mの混練工程の終了後、加圧蓋2を上昇させてロータ3、3を回転させることによって混練材料Mを攪拌して放熱する放熱工程を行い、その後、加圧蓋2を下降させて混練材料Mに接触させ、ロータ3、3を停止して、冷却機構4により混練材料Mを冷却する冷却工程と、加圧蓋2を上昇させてロータ3、3を回転させることによって混練材料Mを攪拌する攪拌工程とを混練材料Mの温度が所定温度以下になるまで繰り返して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム、プラスチック等の高粘度の材料の混練を行うための密閉式混練機の運転方法に関し、特に、混練材料を短時間で冷却することができる密閉式混練機の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム、プラスチック等の高粘度の材料の混練を行うための密閉式混練機として、図2に示すような密閉式混練機が実用化されている。
この密閉式混練機は、混練材料Mを収容するチャンバ1と、このチャンバ1の上部を閉鎖する加圧蓋2と、チャンバ1内に回転可能に取り付けられたロータ軸31にロータ翼32を有する一対のロータ3、3とを備えている。
ところで、この種の密閉式混練機を用いて高粘度の材料の混練を行った場合、混練材料Mに付与されるせん断力によって混練材料Mが発熱する。
これに対処するため、この種の密閉式混練機においては、冷却機構として、チャンバ1及び加圧蓋2、さらには、ロータ3、3をジャケット構造とし、このジャケット構造のジャケットJ1、J2、J3内に冷却水等の冷却媒体を送ることによって、混練時の混練材料Mの昇温を抑制するようにしている。
【0003】
しかしながら、このように冷却機構を設けても、ゴム等の高粘度の材料に混練初期から加硫剤等の架橋剤(本明細書において、「架橋剤」という。)を添加すると混練材料Mと配合剤が十分に混合する前にスコーチ(焼け)が発生するという問題があった。
このため、通常、架橋剤を投入せずに行う混練工程の後、一旦混練材料Mをチャンバ1から排出し、冷却して再びチャンバ内に投入し、架橋剤を添加して混練する第2の混練工程を行うという2工程に分けた運転方法が採用されているが、トータルの混練時間が長くなり、作業効率が著しく低下するという問題があった。
【0004】
これに対処するために、混練材料Mをチャンバから排出することなく、架橋剤を添加する前の混練工程の後に、加圧蓋2を上昇させてチャンバ1を開放状態とし、ロータ3、3を低速で回転させることによって、混練材料Mを所定温度まで冷却し、その後、架橋剤を添加して第2の混練工程を行う密閉式混練機の運転方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第3665225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記密閉式混練機の運転方法では、ロータ3、3を低速で回転させ続けることによって、チャンバ1内の混練材料Mが、ロータ3、3から浮き上がり、また、チャンバ1の内壁面とも離間しやすくなる。
このため、ロータ3、3やチャンバ1との接触面からの伝熱による冷却効率が低下し、冷却効果が十分に得られないという問題があった。
【0007】
また、架橋剤を添加しない場合においても、混練材料Mの温度が高いと、混練材料Mがチャンバ1から排出されにくく、作業性が悪いため、混練材料Mの温度が低下するまで作業を中断しなければならず、このため、生産性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の密閉式混練機の運転方法の有する問題点に鑑み、密閉式混練機の冷却機構を有効に利用して、混練材料の混練工程の後、短時間で混練材料を所定温度まで冷却することができる密閉式混練機の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の密閉式混練機の運転方法は、混練材料を収容するチャンバと、チャンバに収容された混練材料を加圧する加圧蓋と、混練材料を混練するロータと、混練材料を冷却する冷却機構とを備えた密閉式混練機の運転方法において、混練材料の混練工程の終了後、加圧蓋を上昇させてロータを回転させることによって混練材料を攪拌して放熱する放熱工程を行い、その後、加圧蓋を下降させて混練材料に接触させ、ロータを停止して、冷却機構により混練材料を冷却する冷却工程と、加圧蓋を上昇させてロータを回転させることによって混練材料を攪拌する攪拌工程とを混練材料の温度が所定温度以下になるまで繰り返して行うことを特徴とする。
ここで、「混練材料を攪拌する攪拌工程」とは、混練材料の放熱面を最低限反転させることによって、混練材料の放熱面が、攪拌工程の前後で変わるようにするものである。
【0010】
この場合において、前記冷却機構を、少なくとも、前記チャンバ及び加圧蓋をジャケット構造とし、該ジャケット構造のジャケット内に冷却媒体を送ることにより冷却工程を行うことができる。
【0011】
また、混練材料の温度が所定温度以下になった後、混練材料に架橋剤を添加して第2の混練工程を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の密閉式混練機の運転方法によれば、混練材料の混練工程の終了後、加圧蓋を上昇させてロータを回転させることによって混練材料を攪拌して放熱する放熱工程を行い、その後、加圧蓋を下降させて混練材料に接触させ、ロータを停止して、冷却機構により混練材料を冷却する冷却工程と、加圧蓋を上昇させてロータを回転させることによって混練材料を攪拌する攪拌工程とを混練材料の温度が所定温度以下になるまで繰り返して行うことにより、特に、冷却工程における、混練材料を加圧蓋、ロータ及びチャンバ内壁面と接触させることによって混練材料の熱を加圧蓋、ロータ及びチャンバ内壁面に伝熱させて冷却し、短時間で混練材料を冷却することができ、これにより、架橋剤を投入してもスコーチが発生しない温度まで混練材料を冷却して、直ちに、架橋剤を添加して第2の混練工程に移行したり、架橋剤を添加しない場合には、温度が高いとチャンバから排出されにくい作業性の悪い混練材料でも、そのまま混練材料の排出を行うようにすることができ、これにより、生産性を向上することができる。
【0013】
また、前記冷却機構を、少なくとも、前記チャンバ及び加圧蓋をジャケット構造とし、該ジャケット構造のジャケット内に冷却媒体を送ることにより冷却工程を行うことにより、混練材料を、チャンバ内壁面及び加圧蓋によって効率よく冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の密閉式混練機の運転方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に、本発明の密閉式混練機の運転方法の一実施例のフロー図を示す。
この密閉式混練機の運転方法に使用する密閉式混練機は、従来の密閉式混練機と同様、ゴム等の高粘度の材料の混練を行うためのもので、混練材料Mを収容するチャンバ1と、チャンバ1に収容された混練材料Mを加圧する加圧蓋2と、混練材料Mを混練するロータ3、3と、混練材料Mを冷却する冷却機構4とを備えている。
加圧蓋2は、チャンバ1の上部開口部に上下方向に移動可能に挿入され、その底面をロータ3、3の回転軌跡となるように形成し、その上部に配設した加圧シリンダSによって、図2に示すように、下限位置まで押圧され、ロータ3、3の回転によって、細かく上下動(振動)しながら混練材料Mを混練するようにしている。
【0016】
冷却機構4は、特に限定するものではないが、本実施例においては、チャンバ1、加圧蓋2及びロータ3、3を、図2〜図3に示すように、ジャケット構造とし、このジャケット構造のジャケットJ1、J2、J3内に冷却媒体を送る冷却媒体供給手段5とから構成するようにしている。
【0017】
冷却媒体供給手段5は、混練材料Mの温度等によって適正な温度に調整された冷却媒体を、制御機構6によって制御される冷却媒体供給管5aに配設した流量制御アクチュエータA1、A2、A3から、供給口J1a、J2a、J3aを介して各ジャケットJ1、J2、J3内に送り、混練材料Mが接触するチャンバ1、加圧蓋2及びロータ3、3の各伝熱面によって混練材料Mの熱を奪い、排出口J1b、J2b、J3bを介して冷却媒体排出管5bに戻り、冷却装置(図示省略)によって冷却され、再循環するようにしている。
【0018】
以下、上記構成の密閉式混練機を用いた本発明の密閉式混練機の運転方法を説明する。
【0019】
まず、加圧蓋2を上昇させ、混練材料M及び配合剤をチャンバ1内に投入し、架橋剤を添加することなく加圧蓋2を下降させ、ロータ3、3を回転させることによって、混練工程を開始する。
この場合、混練材料Mの種類によっては、配合剤を投入することなく混練材料Mのみを投入して行う素練り工程を行う場合もある。
そして、ロータ3、3の回転速度を、例えば、30rpm程度とし、混練材料Mが配合剤と混練されて所定の混合状態になるまで混練を続ける。
混合状態は、ロータ3、3の負荷状態によって知ることができ、本実施例においては、ロータ3、3を回転させる電動機(図示省略)の電流値の変動によって判断するようにしている。そして、電動機の電流値が所定値となったときに混練工程を終了する。
【0020】
次いで、加圧蓋2を上昇させ、ロータ3、3を回転させることによって混練材料Mを攪拌して放熱する放熱工程を行う。
混練工程を終えた混練材料Mは、その種類によって異なるものの、架橋剤を添加して行う第2の混練工程に移行するには、架橋剤を添加してもスコーチを起こさない、例えば、100℃以下程度、好ましくは、70℃以下程度まで冷却する必要がある。
この場合、ロータ3、3を回転させるのは、混練材料Mをロータ3、3を回転させることによって攪拌し、放熱させることが目的であり、このため、混練材料Mの放熱面(外気に曝される面)を最低限反転させればよく、低速、例えば、3rpm程度で回転させるようにする。また、冷却時間も1分間程度行えばよい。
なお、この場合、冷却機構4は、稼働させても、稼働させなくてもよい。
【0021】
次に、加圧蓋2を下降させて混練材料Mに接触させ、ロータ3、3を停止して所定時間保持する冷却工程を行う。
冷却工程での加圧蓋2の位置は、加圧蓋2の底面が混練材料Mに接触する位置であればよく、図2に示すように、加圧蓋2の底面がロータ3、3のロータ翼32の回転軌跡に沿う下限位置とすることが好ましいが、混練材料Mがチャンバ1内でロータ3、3の上方に多く偏っている場合には、図2に示す位置よりも若干上側となっても構わない。
この場合、加圧蓋2を上昇位置から下降させる際に、ロータ3、3を低速で回転させることもでき、これによって、混練材料Mがチャンバ1内で攪拌され、加圧蓋2が下限位置まで下降しやすくなる。
【0022】
そして、このように、ロータ3、3を停止し、加圧蓋2を加圧シリンダSによって加圧し、混練材料Mに加圧蓋2の底面(伝熱面)を接触させた状態を持続させるとともに、冷却機構4を稼働させることによって、混練材料Mが接触している、ジャケットJ1、J2、J3内を流通する冷却媒体により冷却されているチャンバ1、加圧蓋2及びロータ3、3の伝熱面で混練材料Mの熱を奪い、混練材料Mを冷却する。
【0023】
冷却工程の時間は、特に限定されるものではないが、混練材料Mを外気に曝して放熱させる放熱工程との兼ね合いで決定され、発明者らの実験によると、放熱工程をロータ回転数3rpmで1分間行った場合、冷却工程は20〜60秒、好ましくは30秒程度が好ましいことを確認した。
【0024】
次に、放熱工程と同様に、加圧蓋2を上昇させてロータ3、3を回転させることによって混練材料Mを攪拌する攪拌工程を行う。
【0025】
攪拌工程のロータ3、3の回転速度と冷却時間は放熱工程と同程度の回転速度及び時間とすることが好ましい。
すなわち、この攪拌工程は、混練材料Mの放熱面(チャンバ1、加圧蓋2及びロータ3、3の伝熱面に接する面)を最低限反転させることによって、混練材料Mの放熱面が、攪拌工程の前後で変わるようにする(一種の「天地替え」)ことを主目的とするものである。
【0026】
そして、混練材料Mが架橋剤を投入してもスコーチを起こさない所定温度(混練材料Mによって異なるものであるが、上述したように100℃以下程度、好ましくは、70℃以下程度)になるまで冷却工程と攪拌工程とを繰り返した後、架橋剤を添加して行う第2の混練工程に移行する。
【0027】
第2の混練工程は、架橋剤を添加する以外、先の混練工程と同様で、混練終了の目安は、ロータ3、3を回転させる電動機(図示省略)の電流値の変動によって判断するようにしている。
【0028】
なお、本実施例においては、架橋剤を添加して第2の混練工程に移行する例について説明したが、架橋剤を添加しない場合には、温度が高いとチャンバから排出されにくい作業性の悪い混練材料でも、冷却工程と攪拌工程とを繰り返すことによって、短時間でそのまま混練材料の排出を行うことができる。
【0029】
以上、本発明の密閉式混練機の運転方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の密閉式混練機の運転方法は、密閉式混練機の冷却機構を有効に利用して、混練材料の混練工程の後、短時間で混練材料を所定温度まで冷却することができるという特性を有していることから、架橋剤を添加する混練材を混練する密閉式混練機の運転方法に好適に適用することができるほか、温度が高いとチャンバから排出されにくい作業性の悪い混練材料を混練する密閉式混練機の運転方法等にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の密閉式混練機の運転方法を示すフロー図である。
【図2】密閉式混練機を示す説明図である。
【図3】密閉式混練機の冷却媒体の循環経路を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 チャンバ
2 加圧蓋
3 ロータ
4 冷却機構
5 冷却媒体供給手段
J1 ジャケット
J2 ジャケット
J3 ジャケット
M 混練材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練材料を収容するチャンバと、チャンバに収容された混練材料を加圧する加圧蓋と、混練材料を混練するロータと、混練材料を冷却する冷却機構とを備えた密閉式混練機の運転方法において、混練材料の混練工程の終了後、加圧蓋を上昇させてロータを回転させることによって混練材料を攪拌して放熱する放熱工程を行い、その後、加圧蓋を下降させて混練材料に接触させ、ロータを停止して、冷却機構により混練材料を冷却する冷却工程と、加圧蓋を上昇させてロータを回転させることによって混練材料を攪拌する攪拌工程とを混練材料の温度が所定温度以下になるまで繰り返して行うことを特徴とする密閉式混練機の運転方法。
【請求項2】
前記冷却機構を、少なくとも、前記チャンバ及び加圧蓋をジャケット構造とし、該ジャケット構造のジャケット内に冷却媒体を送ることにより冷却工程を行うことを特徴とする請求項1記載の密閉式混練機の運転方法。
【請求項3】
混練材料の温度が所定温度以下になった後、混練材料に架橋剤を添加して第2の混練工程を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の密閉式混練機の運転方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−166453(P2009−166453A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10226(P2008−10226)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(595057720)株式会社モリヤマ (26)
【Fターム(参考)】