説明

密閉式混練機及びその監視方法

【課題】ドア及びラッチ部材の接触部分の磨耗状態を容易に把握できる、密閉式混練機及びその監視方法を提供する。
【解決手段】密閉式混練機1は、材料排出口2hが形成されたケーシング2と、材料排出口2hを塞ぐドロップドア(ドア)3と、ラッチ機構4と、ケーシング2の外側に設けられた表示装置5と、を有する。ラッチ機構4は、(a)ピストンロッド41bと、(b)油圧シリンダ42と、(c)リニアセンサ43と、を備える。表示装置5は、ストロークの測定値に基づき、ストローク変化量(ラッチ部材変位情報)を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ機構を備えた密閉式混練機及びその監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の密閉式混練機の一例が、特許文献1に開示されている。この技術においては、ケーシングの内部に混練室が形成されており、この混練室内には、混練用ロータが配置されている。ドロップドアは、材料の混練時に、混練用ロータの軸方向に延びるように形成された排出口を塞ぎ、材料の流出を防ぐ。また、混練された材料を排出する時には、ドロップドアを回転させて下方に開く。
【0003】
ラッチ装置(ロック機構)は、ラッチと油圧シリンダ(リニアアクチュエータ)とを含み、ラッチは、ドロップドアに対して進退可能(スライド移動可能)に設置されている。そして、ラッチの接触面をドロップドアの接触面に対して押し付けることにより、ドロップドアがロックされ、混練室内の密閉性が保たれる。また、ラッチを後退させると、ドロップドアが開放可能な状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−220456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の装置においては、ドアの開閉動作が繰り返されると、ドロップドア及びラッチの接触部分(例えば、ドア側:コンタクトプレート、ラッチ側:ラッチストライカ)において、磨耗が生じる。そのため、従来は、作業者が、ラッチ装置を目視できる場所まで行って、接触部分(消耗部品)の磨耗状態を目視確認している。
【0006】
また、従来は、基台(ベース部)に、目盛り板を設置しておき、ピストンロッドに目印となる部材を取り付け、この目印部材の位置を、目盛り板の目盛りと見比べて、接触部分の磨耗状態を目視確認している。
【0007】
そのため、部品の磨耗状態を確認したり、必要に応じて部品交換を行なったりする際には、目盛りの読み取り作業や、目盛り板位置の再調整作業が必要となっている。
【0008】
しかし、通常、油圧シリンダは、混練作業中における、混練機のオペレータの作業場所から離れた位置にあるため、オペレータにとって、混練作業中に上記の確認を行なうことは煩雑である。また、目盛り板は、通常、集塵カバーなどによって覆われているため、確認作業、又は、上記の再調整作業を行なうことは容易ではない。
また、集塵カバーについては、スイッチ(安全装置)が設けられている場合もある。この場合には、混練機の運転中に集塵カバーを開くと、混練機の運転が停止するので、運転中に、上記の確認作業を行なうことは困難である。
【0009】
また、機械構造的には、上記の確認作業(又は再調整作業)が可能であったとしても、集塵が必要となる作業環境においては、目盛り板が汚れてしまうため、やはり確認作業は難しい。したがって、確認作業については、混練機の運転が停止しているタイミングを見計らって行なわれるのが一般的である。
【0010】
また、混練機の運転サイクルによっては、磨耗状態の確認(目盛り板などの確認)が遅れることがある。その間、上記の接触部分の磨耗を放置しておくと、例えば、ラッチ機構がトグル式である場合には、ケーシングにおける、ドアとのコンタクト部分(下部排出口の縁の薄肉部分;図5のK部分参照)が変形してしまうなど、機械部品に損傷が生じる。
ラッチ機構がスライド式である場合にも同様に、ドア及びラッチの接触部分において磨耗が生じる。また、その交換時期を逃すと、耐久部品であるケーシング(ハウジング)などにも損傷が生じる。
なお、ラッチ機構におけるこれらの接触部分については、通常、磨耗状態の連続的な把握が困難であるため、その交換時期の予測は難しい。
このように、ラッチ機構が、トグル式及びスライド式の両方の場合において、接触部分の磨耗状態の放置は、機械部品に損傷を与える原因となる。
【0011】
また、接触部分に、消耗部品(交換部品)が設けられていない場合には、一部分の磨耗が原因で、その部分を含む部品全体の交換が必要になる。この場合には、その部品の製作に長い時間が必要となり、その制作期間中は生産(混練)運転ができなくなるため、生産量が低下してしまう。
【0012】
なお、リミットスイッチ(近接スイッチ)を追加して、油圧シリンダの使用限界位置を監視することも可能だが、スイッチを設置するスペースが狭いために、設置のみならず、調整作業自体も非常に難しい。そのため、正確な調整には多大な労力が必要となる、又は、正確な調整は困難であると考えられる。
【0013】
以上のように、従来の磨耗状態の確認方法では、ドア及びラッチ部材の接触部分の磨耗状態の把握が困難である。
【0014】
そこで、本発明の目的は、混練機運転中における、ドア及びラッチ部材の接触部分の磨耗状態を容易に把握できる、密閉式混練機及びその監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)上記の課題を解決するために、本発明に係る密閉式混練機は、混練された材料を排出するための材料排出口が形成されたケーシングと、軸を中心に回転して開閉し、前記材料排出口を塞ぐドアと、(i)混練作業時には、前記ケーシングに対して前記ドアを押し付けることにより、ラッチ状態(前記ドアが開かない状態)にし、(ii)混練された材料の排出時には、前記ラッチ状態を解除するラッチ機構と、前記ケーシングの外側に設けられた表示装置と、を有する。
前記ラッチ機構は、(a)前記ドアに接触するラッチ部材と、(b)前記ドアへ向かう動力を前記ラッチ部材に供給するリニアアクチュエータと、(c)当該リニアアクチュエータの直線動作距離を測定するリニアセンサと、を備え、前記表示装置は、前記直線動作距離に基づき、ラッチ部材変位情報を表示する。
【0016】
この構成では、ケーシングの外側に設けられた表示装置に、リニアセンサにおける測定値(直線動作距離の値)に基づいて、ラッチ部材変位情報、すなわち、リニアアクチュエータのストロークに関する情報を表示させることができる。そのため、オペレータは、混練機の運転中のラッチ部材変位情報より、ドア及びラッチ部材の接触部分における磨耗状態の情報を容易に把握できる。
また、混練機の運転中に、接触部分の磨耗状態を確認できるので、磨耗部材の交換時期を知ることができる。
また、接触部分の磨耗状態をモニタリングしておくことにより、使用限界を超えて部材を使用し続けることにより生じる、材料排出口における、ケーシング内壁の縁部分の変形を未然に防止できる。
【0017】
なお、本発明において、密閉式混練機とは、ゴム、プラスチックなどの材料を混練するものである。
ケーシングとは、内部に混練室が形成された収容部材のことである。ケーシング内部の混練室では、混練ロータによって、材料の混練が行なわれる。
ドアとは開き戸のことであり、回転軸を中心にして、弧を描いて開閉する。
【0018】
リニアアクチュエータは、入力されたエネルギーを直線運動に変換する作動装置であり、例えば、油圧シリンダ、空気圧シリンダ、ボールスクリュ機構等を利用できる。
リニアアクチュエータの直線動作距離とは、リニアアクチュエータにおいて直線運動をする部材が、直線に沿って移動する距離のことであり、例えば、油圧シリンダの場合には、ピストンの移動距離に相当する。
【0019】
ラッチ機構は、スライド式(ラッチ部材が直線運動をするタイプ)であってもよいし、トグル式(ラッチ部材が、回転運動をするタイプ)であってもよい。すなわち、ラッチ部材がリニアアクチュエータによって供給される動力の方向は、リニアアクチュエータの直線動作に沿った方向であってもよいし、他の方向(例えば、ラッチ部材の回転動作の方向)であってもよい。
【0020】
また、ラッチ機構においては、リニアアクチュエータにラッチ部材が固定されており、アクチュエータがラッチ部材に対して直接動力を供給してもよいし、リニアアクチュエータとラッチ部材との間に別部材(リンク部材)が設けられており、この別部材を介して、リニアアクチュエータの動力がラッチ部材に対して間接に伝えられてもよい。また、リニアアクチュエータとラッチ部材とが一体的に形成されており、アクチュエータがラッチ部材に対して直接動力を供給してもよい。すなわち、リニアアクチュエータにラッチ部材が含まれていてもよい。
【0021】
リニアセンサ(リニアエンコーダ;リニアポテンショメータ)とは、リニアアクチュエータの、直線運動の動作距離を測定するセンサである。リニアセンサとしては、磁歪式、レーザ式、ワイヤー式などのセンサを利用できる。リニアセンサは、デジタル出力を行なうものであってもよいし、アナログ出力を行なうものであってもよい。
【0022】
ラッチ部材変位情報とは、ラッチ状態における、ラッチ部材の位置又はその変化量に関する情報であって、リニアアクチュエータのストロークを直接又は間接に示す情報である。オペレータは、この情報により、ドア及びラッチ部材の接触部分における磨耗状態を把握することができる。
【0023】
ラッチ部材変位情報(表示装置に表示される情報)に関しては、リニアアクチュエータの直線動作距離の値(測定値)を、そのままラッチ部材変位情報として使用してもよいし(ラッチ機構が、スライド式、又は、トグル式の場合)、リニアアクチュエータの直線動作距離の値を、ラッチ部材の回転角度の値に変換したものをラッチ部材変位情報として使用してもよい(トグル式のラッチ機構の場合)。
また、ラッチ部材変位情報については、初期位置に対する相対位置を示す値(例えば、初期ストロークに対する変化量の値)としてもよいし、絶対的な位置の変化を示す値(例えば、ストロークの測定値の変化量の値)としてもよい。
【0024】
表示装置における表示に関しては、例えば、直線動作距離の値を、リアルタイムで逐一表示してもよいし、トグル式の場合には、直線動作距離をラッチ部材の回転角度に変換した値を表示してもよい。
【0025】
表示装置は、遠隔表示(ラッチ機構から離れた位置での表示)が可能なものであって、ケーシングの近傍に設置されている操作盤の運転モニタ用のディスプレイであってもよいし、ケーシングから離れた位置に設置されている集中管理システムの操作用ディスプレイ(操作端末画面)であってもよい。
また、表示装置における表示形態については、例えば、ラッチ部材変位情報の数値を直接表示してもよいし、ラッチ部材変位情報の数値をグラフ表示(棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフなどで表示)してもよい。
表示装置としては、液晶ディスプレイ、ブラウン管、プラズマディスプレイ、LEDなどを利用できる。
【0026】
ドアにおいては、ラッチ部材との接触部分に、消耗部品(交換部品;例えばコンタクトプレート)が設けられていてもよいし、このような消耗部品はなくてもよい。
また、ラッチ部材においても、ドアとの接触部分に、消耗部品(交換部品;例えばラッチストライカ)が設けられていてもよいし、このような消耗部品はなくてもよい。
【0027】
(2)本発明に係る密閉式混練機は、設定値が格納された記憶装置と、(i)前記ラッチ状態におけるラッチ部材変位情報、及び、(ii)前記設定値、を比較して、当該ラッチ部材変位情報が前記設定値に達したときにアラームを発するアラーム手段と、を有していてもよい。
【0028】
この構成では、リニアセンサにおける測定値に基づく、ラッチ部材変位情報の値が、記憶装置に格納された任意の設定値(磨耗部材の交換時期や使用限界などに相当する、基準となる値)に達したときにアラームが発せられるので、磨耗状態をより確実に把握できる。
【0029】
なお、アラームは、表示装置などに表示される警告表示であってもよいし、警報装置から発せられる警報音であってもよい。警告表示は、警告文字の表示、警報ランプの点灯、表示装置に表示されたラッチ部材変位情報の表示形態の変更、表示画面の背景色の変更などにより行なうことができる。警報音に関しては、サイレン音や警鐘音などを発生する発振回路を用いて警報音を発してもよいし、メモリに記録された警報音の出力波形を読み込んで、スピーカを用いて警報音を発してもよい。
【0030】
記憶装置としては、上記の操作盤や上記の集中管理システムにおけるRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブなどを利用できる。
【0031】
アラーム手段と表示装置とは別の装置であってもよいし、アラーム手段と表示装置とが同一の装置であってもよい。
【0032】
また、本構成において、設定値と比較される「ラッチ部材変位情報」は、表示装置に表示される情報(表示値)と同一の情報であってもよいし、表示値とは異なる情報であってもよい。
【0033】
(3)本発明に係る密閉式混練機では、前記記憶装置において、前記設定値を、一つの前記リニアセンサに対して、少なくとも二段階に設定できてもよい。
【0034】
この構成では、測定値(ラッチ状態における直線動作距離の値)に対応する基準値として、二つ以上の設定値を設定することにより、磨耗部材の磨耗状態を段階的に監視できる。
例えば、この構成により、(i)磨耗部材の交換時期における事前アラームと、(ii)磨耗部材の磨耗限界(使用限界)におけるアラームと、を発することができる。これにより、使用限界を超えて磨耗部材を使用することが防止されるので、機械部品を保護できる。さらに、消耗部品の準備期間の確保、工事計画などを効率的に行なうことができる。
【0035】
(4)本発明に係る密閉式混練機において、前記アラームは、前記表示装置に表示されてもよい。
【0036】
この構成によると、ラッチ部材変位情報を表示する表示装置にアラームが表示され、且つ、オペレータがアラームを視覚的に認識できるので、(i)磨耗部材の磨耗状態の把握と、(ii)磨耗状態が、磨耗部材の交換時期や使用限界に達しているかどうかの判断と、を容易に行なうことができる。
【0037】
(5)本発明に係る密閉式混練機において、前記アラーム手段は、前記ラッチ部材変位情報の表示形態を変更することにより、前記アラームの表示が行なわれるように構成されていてもよい。
【0038】
この構成では、オペレータが、ラッチ部材変位情報とアラームとを、視覚的に且つ同時に認識できるので、(i)磨耗部材の磨耗状態の把握と、(ii)磨耗状態が、磨耗部材の交換時期や使用限界に達しているかどうかの判断と、を容易且つ同時に行なうことができる。
【0039】
なお、「ラッチ部材変位情報の表示形態の変更」とは、表示装置の画面上における、ラッチ部材変位情報(数値、グラフ)の「点滅」、「表示色(文字色又は背景色)の反転、変更」、「色彩の変更(全体的又は部分的な変更)」などにより行なうことができる。
【0040】
(6)また、上記の課題を解決するために、本発明に係る密閉式混練機の監視方法は、混練された材料を排出するための材料排出口が形成されたケーシングと、軸を中心に回転して開閉し、前記材料排出口を塞ぐドアと、(i)混練作業時には、前記ケーシングに対して前記ドアを押し付けることにより、ラッチ状態(前記ドアが開かない状態)にし、(ii)混練された材料の排出時には、前記ラッチ状態を解除するラッチ機構と、を有する密閉式混練機を監視する方法である。
前記ラッチ機構は、(a)前記ドアに接触するラッチ部材と、(b)前記ドアへ向かう動力を前記ラッチ部材に供給するリニアアクチュエータと、を備える。
そして、本発明に係る監視方法は、リニアセンサを用いて前記リニアアクチュエータの直線動作距離を測定する測定工程と、前記直線動作距離に基づき、前記ケーシングの外側に設けられた表示装置に、ラッチ部材変位情報を表示する表示工程と、を有する。
【0041】
この構成では、ケーシングの外側に設けられた表示装置に、リニアセンサにおける測定値に基づいて、ラッチ部材変位情報(ラッチ部材の位置又はその変化量)を表示させることができる。そのため、オペレータは、混練機の運転中におけるラッチ部材変位情報より、ドア及びラッチ部材の接触部分における磨耗状態の情報を容易に把握できる。
また、混練機の運転中に、接触部分の磨耗状態を確認できるので、磨耗部材の交換時期を知ることができる。
また、接触部分の磨耗状態をモニタリングしておくことにより、使用限界を超えて部材を使用し続けることにより生じる、材料排出口における、ケーシング内壁の縁部分の変形を未然に防止できる。
【0042】
(7)本発明に係る密閉式混練機の監視方法は、(i)前記ラッチ状態におけるラッチ部材変位情報、及び、(ii)予め設定された設定値、を比較して、当該ラッチ部材変位情報が前記設定値に達したときに、アラーム手段を用いてアラームを発するアラーム工程を有していてもよい。
【0043】
この構成では、リニアセンサにおける測定値に基づく、ラッチ部材変位情報の値が、設定値(磨耗部材の交換時期や使用限界などに相当する、基準となる値)に達したときにアラームが発せられるので、磨耗状態をより確実に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係る密閉式混練機の全体構成を示す正面概略図である。
【図2】図1のB部分を拡大して示す概略図である。
【図3】リニアセンサの動作原理を説明するための斜視概略図である。
【図4】表示装置における表示形態を示す概略図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る密閉式混練機の全体構成を示す正面概略図である。
【図6】図5のC部分を拡大して示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る密閉式混練機の全体構成を示す正面概略図である。図2は、図1のB部分(破線円部分)を拡大して示す概略図である。図3は、リニアセンサの動作原理を説明するための斜視概略図である。図4は、表示装置における表示形態を示す概略図である。
【0046】
(全体構成)
まず、図1を用いて、密閉式混練機1の全体構成について説明する。密閉式混練機1は、ケーシング2と、二つのロータ2rと、ドロップドア3と、ラッチ機構4と、表示装置5と、記憶装置6と、支持台7とを有する。また、本実施形態に係る密閉式混練機1は、二軸のバッチ式ミキサであり、例えば、ゴム原料の混練に用いられる。
【0047】
混練される原料は、ケーシング2の上部に形成された材料供給口2jから、ホッパー内に昇降可能となるように設けられたフローティングウェイト(図示せず)によって、ケーシング2の内部へ供給される。ケーシング2の内部には、金属材料から成る二つのロータ2rが配置されている。二つのロータ2rは、混練用のロータであって、図示しないモータから動力を与えられて回転する(図1の矢印方向参照)。
【0048】
混練後の材料は、ケーシング2の下部に形成された材料排出口2hから排出される。材料排出時には、ドロップドア(ドア)3が下降して、材料排出口2hが開放され、材料を排出できる状態になる(図1の破線部参照)。
【0049】
また、混練作業時には、ラッチ機構4の機能により、ドロップドア3が開かない状態(ラッチ状態)になる。材料排出時には、ラッチ状態を解除することにより、ドロップドア3を開放できる状態になる。
【0050】
また、表示装置5を用いて、ラッチ部材変位情報(後述)の表示、及び、警告表示が可能となっている。以下、各部の詳細について説明する。
【0051】
(ケーシング)
ケーシング2は、密閉式混練機1の本体部であり、金属材料から成る。ケーシング2は、金属製の支持台7によって支持されている。ケーシング2の内部には二つの混練室2sが形成されている。それぞれの混練室2sは、円筒状に形成されている。また、上記のように、ケーシング2の上部には、混練される材料を供給するための材料供給口2jが形成されており、ケーシング2の下部には、混練された材料を排出するための材料排出口2hが形成されている。材料排出口2hは、ロータ2rの軸方向に沿って伸びるように形成されている。
そして、ケーシング2の内部では、材料供給口2j、二つの混練室2s、及び、材料排出口2hが、互いに通じている。
【0052】
(ドロップドア)
ドロップドア(ドア)3は、金属材料から成り、ケーシング2の材料排出口2hを塞ぐ蓋部材として機能する。ドロップドア3は、回転軸3sを中心にして回転できるように配置されている。具体的には、回転軸3sは、ドロップドア3に固定されており、また、回転軸3sは、回転可能な状態で、支持台7によって支持されている。回転軸3sの軸方向は、ロータ2rの軸方向に平行である。
【0053】
ドロップドア3には、先端部3vと、突出部3tとが形成されている。先端部3vは、ケーシング2の内部に向けて突出した部分である。先端部3vは、ロータ2rの軸方向に沿って伸びるように形成されている。
ドロップドア3が閉じられた状態(ドロップドア3が材料排出口2hを塞いだ状態)では、先端部3vが、材料排出口2hの内部に入り込み、また、先端部3vの二つの表面3rが、ケーシング2の内面と共に、二つの混練室2sの壁面を構成する。
【0054】
ドロップドア3において、二つの表面3rよりも下方には、二つの接触面3wが形成されている。ドロップドア3が閉じられた状態では、二つの接触面3wは、材料排出口2hの内壁面に接触する。
【0055】
突出部3tは、後述するピストンロッド41b(ラッチ部材41)に接触する部分であり、ドロップドア3が閉じられた状態において、ピストンロッド41bに向かって突出するように形成されている。
【0056】
突出部3tは、金属製のコンタクトプレート3bを含む(図1及び図2参照)。コンタクトプレート3bは、突出部3tの先端(ピストンロッド41bに最も近い部分)に配置されている。コンタクトプレート3bの表面は、曲面として形成されており、具体的には、球面の一部として形成されている。また、コンタクトプレート3bは、突出部3tの本体部に対して、図示しないボルトを用いて固定されている。
なお、コンタクトプレート3bは合成樹脂製であってもよい。また、コンタクトプレート3bはなくてもよい。
【0057】
(ラッチ機構)
ラッチ機構4は、混練作業時には、ラッチ部材41を用いて、ケーシング2に対してドロップドア3を押し付けることにより、密閉式混練機1をラッチ状態(ドロップドア3が開かない状態)にする。また、ラッチ機構4は、混練された材料の排出時には、ラッチ状態を解除する。
【0058】
ラッチ機構4は、油圧シリンダ42と、リニアセンサ43とを有する。油圧シリンダ(リニアアクチュエータ)42は、ピストンロッド41b(ラッチ部材41)と、ピストン41pと、筒状体45とを有する。ピストンロッド41b及びピストン41pは、筒状体45の内部に設置されている。
【0059】
筒状体45は、油圧シリンダ42全体の支持体であるとともに、ピストンロッド41bの先端を、その軸方向に案内するものである。また、筒状体45は、ベース4Bに固定されている。ベース4Bは、支持台7と一体的に形成されている。すなわち、油圧シリンダ42は、ケーシング2の位置に対して、移動しないように固定されている。
なお、油圧シリンダと、支持台とは、同じ基部に設置されていればよく、ベース4Bと支持台7とは、分離した別部材であってもよい。
【0060】
ラッチ部材41は、ドロップドア3のコンタクトプレート3bに接触する部材であり、本実施形態において、ラッチ部材41は、ピストンロッド41bに相当する。ピストンロッド41bは棒状部材であり、油圧シリンダ42の内部において、ピストンロッド41bには、ピストン41pが取り付けられている。ピストン41pは、環状に形成されており、ピストンロッド41bの外周に固定されている。なお、ピストンロッド41bとピストン41pとは一体形成されていてもよい。
【0061】
油圧シリンダ42は、油圧の作用により、ピストンロッド41b(ラッチ部材41)に対して、ドロップドア3へ向かう動力を供給する。そして、ピストンロッド41b及びピストン41pは、ピストンロッド41bの軸方向(図1の矢印D方向参照)に沿って往復移動する。すなわち、ピストンロッド41b及びピストン41pは、ドロップドア3に対して進退移動する。
【0062】
油圧シリンダ42には、図示しない油圧回路が接続されている。そして、油圧シリンダ42内部の、ピストン41pを挟んで両側に形成された油圧室に、作動油が供給される。具体的には、ラッチ動作時には、ピストン41pの左側の油圧室(ヘッド側室)に作動油が供給され、ラッチ状態を解除するときには、ピストン41pの右側の油圧室(ロッド側室)に作動油が供給される。
【0063】
リニアセンサ43は、油圧シリンダ42の直線動作距離、すなわち、ピストンロッド41bの直線移動距離(軸方向Dに沿った移動の距離)を測定する。ラッチ状態における直線動作距離、すなわち、直線動作距離の最大値は、油圧シリンダ42のストローク(ドロップドア3が閉じた状態において、ピストン41pが一端から他端まで移動する距離)に相当する。
油圧シリンダ42の「ストローク」(行程)とは、図1を用いて説明すると、ピストンロッド41bが、左端(一端)から、右端(他端;ラッチ状態の位置)まで移動する距離のことである。
【0064】
なお、本実施形態においては、油圧シリンダ42の構成部品であるピストンロッド41bがラッチ部材41となっており、油圧シリンダ(リニアアクチュエータ)42にラッチ部材41が含まれているが、ラッチ部材は、リニアアクチュエータとは別の部材として設けられていてもよい(後述の第2実施形態参照)。
【0065】
ピストンロッド41bの先端(ドロップドア3側の端部)には接触部41sが形成されている(図1及び図2参照)。接触部41sは、先細状になっており、ピストンロッド41bの軸方向に沿って突出している。また、接触部41sにおいては、軸方向Dに垂直な断面における直径が、ドロップドア3側の先端に向かうにつれて小さくなっている。
接触部41sの側面は、円錐面になっており、また、接触部41sの先端の表面は、球面の一部として曲面状になっている。そして、接触部41sの上面には、傾斜部41zが形成されており、傾斜部41zにおいては、ドロップドア3の方へ向かうにつれて、軸方向Dに沿った中心線(図2の一点鎖線J参照)からの距離が低くなっている(図2参照)。
【0066】
ピストンロッド41bは交換部品であり、コンタクトプレート3bとの接触により、接触部41sが磨耗した場合には、ピストンロッド41bだけを新たな部品と交換すればよい。
【0067】
ピストンロッド41bの、シリンダ内部側の端部(ドロップドア3側とは反対側の端部)には、永久磁石41mが配置されている。なお、永久磁石41mは、ピストンロッド41bではなく、ピストン41pに取り付けられていてもよい。
【0068】
油圧シリンダ42の内部には、磁歪線(センサープローブ)44が配置されている。磁歪線44は、油圧シリンダ42に対して位置が固定されており、また、ピストンロッド41bの軸方向Dに沿って配置されている。ピストンロッド41bの中心部には、軸方向Dに沿ってガイド孔が形成されており、磁歪線44が、このガイド孔の内部に挿入された状態で、ピストンロッド41bのストローク動作が行なわれる。すなわち、油圧シリンダ42におけるストローク動作中には、位置が固定された磁歪線44に対して、永久磁石41mの位置が変化する。磁歪線44は、ニッケル合金から成る金属線である。
なお、磁歪線の材料は、Wiedemann効果を生じる金属材料(強磁性材料)であればよく、鉄、コバルト、ガドリニウムなどを含む合金であってもよい。
【0069】
リニアセンサ43は、磁歪線44に対して電気的に接続されている。また、リニアセンサ43は、油圧シリンダ42の、ヘッド側の端部(ドロップドア3側とは反対側の端部)に取り付けられている。
なお、油圧シリンダ42にリニアセンサ43が一体的に取り付けられているため、混練機運転中におけるセンサの位置ずれの心配がない(このような位置ずれは、位置調整できるようにリミットスイッチを設ける場合に発生し得る)。
【0070】
次に、図3を用いて、リニアセンサ43における直線動作距離の測定原理について説明する。磁歪線44には電流(電流パルス)が流される。この電流は、磁歪線44の始端側(リニアセンサ43側)から矢印A方向へ流れる。このときに、磁歪線44には、円周方向に沿った磁場が生じる。
【0071】
ピストンロッド41bの永久磁石41mは、磁歪線44に対して、図のような位置にある。永久磁石41mの近傍では、軸方向Dに沿った磁場が生じる。
そして、永久磁石41mが磁歪線44に接近すると、磁歪線44における、永久磁石41mの近傍部分では、円周方向磁場と軸方向磁場との合成により、点線で示すような斜めの磁場が生じる。この斜めの磁場に起因して、磁歪線44の永久磁石41m近傍部分には、ねじり歪みが発生する(この現象をWiedemann効果という)。このねじり歪みは、超音波振動(又は音波信号)として、金属である磁歪線44上を伝播する。リニアセンサ43においては、この超音波(又は音波)の伝播時間を測定することにより、永久磁石41mの位置を特定している。
【0072】
リニアセンサ43からの出力信号(永久磁石41mの位置を示す信号)は、A/Dコンバータ(図示せず)を経て、カウンタ(図示せず)において数値(すなわち、直線動作距離の値)として処理される。リニアセンサ43の出力電流は、4〜20mAである。
なお、リニアセンサ43を、A/Dコンバータを介して、プログラマブルコントローラや、マイクロプロセッサなどに接続してもよい。この場合には、ピストンロッド41bを、任意位置で減速・停止できる。
【0073】
(表示装置)
表示装置5は、液晶ディスプレイであり、ケーシング2の外側であって、且つ、ケーシング2の近傍に配置された操作盤(図示せず)に設けられている。表示装置5には、表示部(表示画面)5dが設けられており、各種情報は、この表示部5dに表示される。
【0074】
表示装置5は、リニアセンサ43において測定された直線動作距離に基づき、ストローク変化量(ラッチ部材変位情報)を表示する(図4参照)。また、後述するように、表示装置5は、アラーム手段としても機能する。なお、表示装置とアラーム手段とは別の装置であってもよい。
【0075】
また、表示装置5には、中央処理装置(CPU)5sが含まれている。この中央処理装置5sは、制御装置と演算装置とを有しており、記憶装置6及びリニアセンサ43に対して電気的に接続されている。そして、中央処理装置5sは、ラッチ状態におけるリニアセンサ43での測定値(ストローク)と、記憶装置6内の設定値と、を比較し(演算処理)、また、測定値が設定値に達したときには、表示部5dに対して警告表示を行なうよう命令する(制御処理)。
【0076】
(記憶装置)
記憶装置6は、RAM(Random Access Memory)であり、上記の操作盤内に設けられている。記憶装置6には、予め、複数の設定値が格納されている。「設定値」とは、油圧シリンダ42のストローク(直線動作距離の最大値)に対応する値として設定された値であり、後述する警告表示を行なう際の基準値である。
【0077】
また、設定値については、複数段階で設定できるようになっている。すなわち、複数のストローク値のそれぞれを、設定値として記憶装置6に格納できる。
なお、記憶装置6への設定値の入力については、オペレータが、操作盤に設けられたキーボードを用いて、任意の設定値を入力するようにしてもよいし、予め、メーカー推奨の設定値が、記憶装置6に格納されていてもよい。また、記憶装置6においては、一つの設定値のみが格納されてもよい。
【0078】
また、記憶装置6には、磨耗状態監視用ソフトウェアが格納されている。このソフトウェア(プログラム)は、密閉式混練機1に、測定工程、表示工程、及び、アラーム工程を実行させる。
【0079】
(ラッチ状態について)
次に、密閉式混練機1のラッチ状態について説明する。ラッチ状態とは、ドロップドア3が開かないように、ラッチ機構4によってドロップドア3がロックされた状態のことである。
【0080】
当初、ピストンロッド41bは、筒状体45の内側に収まっており(左端に位置しており)、接触部41sは、筒状体45から突出していない。この状態では、ドロップドア3は、接触部41sに接触せず、回転軸3sを中心にして自由に回転移動できる。
【0081】
ドロップドア3を回転させて、先端部3vを材料排出口2hの内部に挿入すると、ドロップドア3が閉じられた状態になり、材料排出口2hがドロップドア3によって塞がれる。
【0082】
ドロップドア3が閉じた状態で、ラッチ機構4を作動させると、ラッチ状態になる。ラッチ状態では、油圧シリンダ42のピストン41pに、ヘッド室側の油圧が作用することにより、ピストンロッド41bには、ドロップドア3の方向に向かう力が与えられる(図2の矢印D1方向参照)。そして、図1及び図2に示すように、ピストンロッド41bの接触部41sの上部(傾斜部41z)と、ドロップドア3のコンタクトプレート3bとが接触する。この状態では、ピストンロッド41bの、ドロップドア3に向かう力が、コンタクトプレート3bに対して作用する。
【0083】
ピストンロッド41bは、コンタクトプレート3bの下方に進入する。このときに、ドロップドア3の突出部3tには、上方に持ち上げられる方向の力が与えられる(図2の矢印G方向参照)。その結果、ドロップドア3の二つの接触面3wは、材料排出口2hの内壁面に押し付けられる(図1参照)。また、ドロップドア3が開かないように、ピストンロッド41bによって、ドロップドア3が下方から支持される。
【0084】
以上のように、ラッチ状態では、ドロップドア3がラッチ機構4によってラッチされ、ドロップドア3が材料排出口2hを塞いだ状態で、ドロップドア3が開かないようにロックされる。これにより、混練室2sの密閉性が保たれる。
【0085】
密閉式混練機1においては、ドロップドア3とピストンロッド41bとの接触部分に、コンタクトプレート3b及びピストンロッド41bが設けられている。そして、コンタクトプレート3b及びピストンロッド41bは消耗部品(交換部品)であり、これらは、ドロップドア3の開閉動作を繰り返すほど、磨耗していく。すなわち、コンタクトプレート3b及びピストンロッド41bは、磨耗部材である。
【0086】
(警告表示について)
表示装置5は、アラーム(警報;警告表示)を発するアラーム手段としても機能する。以下、表示装置5における、ラッチ部材変位情報の表示、及び、警告表示について説明する。記憶装置6には、ストローク(直線動作距離の最大値)の基準値として、二つの設定値が格納されている。また、具体的には、設定値が、「52.0 mm」(設定値A)、「53.0 mm」(設定値B)の二段階に設定されているものとする。また、この二段階の設定値は、一つのリニアセンサ43に対応して設定されている。
【0087】
設定値Aは、磨耗部材の交換時期(メーカー推奨交換時期)の基準値であり、ストロークの値が設定値Aに達したときに磨耗部材を交換することにより、密閉式混練機1を、より確実且つ安全に運転できる。
設定値Bは、磨耗部材の使用限界を示す基準値であり、ストロークの値が設定値Bに達したときに密閉式混練機1の運転を中止すれば、密閉式混練機1に大きな損傷が生じることを防止できる。なお、設定値の値及び設定方法は、このようなものには限られない。
【0088】
当初(磨耗発生前;新品使用時)のストロークが50 mmであるとする。ストローク変化量は、この数値からの変化量である。表示装置5においては、以下に示す複数の表示形態で、ストローク変化量(ラッチ部材変位情報)を表示できる。なお、これらの表示形態については、操作盤での操作により変更できるようになっている。
【0089】
第一の表示形態においては、図4(a)に示すように、表示部5dには、現在のストローク変化量(ラッチ部材変位情報)が、数値として表示される。表示部5dの「1.0 mm」という表示は、初期ストロークに対する変化量が、+1.0 mmであることを示している。すなわち、この状態では、接触部分(コンタクトプレート3b及び接触部41s)の磨耗により、油圧シリンダ42のストロークが、1.0 mm分だけ増大し、51.0 mmになっている。この状態では、まだストロークが設定値に達していない。
【0090】
そして、ストローク変化量が +2.0 mmに達すると、すなわち、ストロークが52.0 mm(設定値A)に達すると、表示部5dの背景色が、より濃い色に(明度が小さくなるように)変化する(図4(b)参照)。これが事前アラームである。
【0091】
また、ストローク変化量が +3.0 mmに達すると、すなわち、ストロークが53.0 mm(設定値B)に達すると、表示部5dの背景色がさらに濃い色に変化する(図4(c)参照)。これが二段階目のアラームである。
【0092】
以上のように、表示装置5においては、以下の三つの範囲のストローク変化量(単位:mm)に関連して、背景色は三段階で変化する。
(i) 0.0 〜 +1.9
(ii) +2.0 〜 +2.9
(iii)+3.0以上
【0093】
この表示形態においては、「ラッチ状態における測定値が設定値に達したときに、図4(a)の状態から背景色が変化すること」が、アラーム(警告表示)に相当する。すなわち、この形態においては、アラームが表示装置5に表示されている。また、この形態では、表示装置5における、ラッチ部材変位情報の表示形態の変更が、アラームとして機能している。
【0094】
次に、第二の表示形態について説明する。この表示形態では、ストローク変化量がグラフ表示される。具体的には、ストローク変化量が棒グラフで表示され、図4(d)、図4(e)、及び図4(f)に示すように、ストローク変化量の値が大きくなるに連れて、ストローク変化量を示す着色部5cの面積が大きくなる。当初(ストローク変化量が0のとき)は、枠5f内は着色されていない。また、着色部5cの面積は、表示された枠(枠5f)内で増大し、枠5f全体が着色されると、ストロークが設定値Bに達する。また、着色部5cの面積が増大するにつれて、非着色部5tの面積が減少していく。
【0095】
図4(d)は、ストロ−ク変化量が +1.0 mmのとき、すなわち、ストロークが51.0 mmのときの表示画面を示している。表示部5dには、ストローク変化量が、着色部5cとして棒グラフで表示されている。
【0096】
ストローク変化量が +2.0 mmに達すると、すなわち、ストロークが52.0 mm(設定値A)に達すると、着色部5cの面積が増大し、着色部5cの右先端位置が、2.0 mmを示す位置に到達する。また、この状態では、着色部5cの色が、より濃い色に(明度が小さくなるように)変化する(図4(e)参照)。これが事前アラームである。
【0097】
また、ストローク変化量が +3.0 mmに達すると、すなわち、ストロークが53.0 mm(設定値B)に達すると、着色部5cの色がさらに濃い色に変化する(図4(f)参照)。また、枠5fの内部全体が着色部5cとなる。これが二段階目のアラームである。
【0098】
この表示形態においても、「ラッチ状態における測定値が設定値に達したときに、図4(d)の状態から、着色部5cの色が変化すること」が、アラーム(警告表示)相当する。すなわち、この形態においても、アラームが、表示装置5に表示されている。また、この形態においても、表示装置5における、ラッチ部材変位情報の表示形態の変更が、アラームとして機能している。
【0099】
なお、本実施形態においては、記憶装置6に格納する設定値を、ラッチ状態におけるストローク(直線動作距離の最大値)に対応する値としており、表示装置(アラーム手段)5においては、設定値と、ラッチ状態における測定値とを比べているが、このような形態には限られない。例えば、記憶装置6に格納する設定値を、ラッチ状態におけるストローク変化量(すなわちラッチ部材変位情報;表示値)に対応する値とし、この設定値と、ストローク変化量(すなわちラッチ部材変位情報;表示値)とを比較してもよい。この場合には、上記の例で説明すると、設定値Aが「2.0 mm」となり、設定値Bが「3.0 mm」となる。そして、表示装置においては、この設定値と、表示値である「ストローク変化量」とが比較される。
【0100】
(監視方法)
次に、本実施形態に係る密閉式混練機の監視方法について説明する。
まず、ドロップドア3を閉めて、ドロップドア3によって材料排出口2hを塞ぐ(閉扉工程)。そして、ラッチ機構4を作動させて、ラッチ状態(ピストンロッド41bが、コンタクトプレート3bを下方から支持することにより、ドロップドア3の下降が制限され、ドロップドア3が開かない状態)にする(ラッチ工程)。
【0101】
そして、リニアセンサ43を用いて、油圧シリンダ42におけるピストンロッド41bの直線動作距離を測定する(測定工程)。この工程は、密閉式混練機1の運転中、常に繰り返して行なわれるものとする。なお、測定工程を常に実施せず、必要な場合にのみ実施するようにしてもよい。
【0102】
次に、測定された直線動作距離に基づき、表示装置5に、ストローク変化量(ラッチ部材変位情報)を表示する(表示工程)。ラッチ状態にある場合には、表示工程は、測定工程が行なわれる度に実施される。そのため、密閉式混練機1の運転中、表示装置5には、常に、現在のストローク変化量の値が表示される。なお、表示工程については、必要な場合にのみ実施するようにしてもよい。
【0103】
そして、ラッチ状態における直線動作距離の値(測定値)と、設定値(設定値A及び設定値B)とを比較し、測定値(ラッチ状態における直線動作距離)が設定値に達したときに、表示装置(アラーム手段)5を用いて警告表示を行なう(アラーム工程)。この工程(比較及び警告表示)は、密閉式混練機1の運転中、常に繰り返して行なわれるものとする。
【0104】
上記のように、密閉式混練機1では、電気信号により、油圧シリンダ42のストロークを確認できる。そして、オペレータは、混練作業(密閉式混練機1の運転)を行ないながら、磨耗部材の磨耗状態について把握できる。また、オペレータは、表示装置5の表示を監視することにより、必要に応じて密閉式混練機1の運転を停止できる。なお、測定値が、設定値A又は設定値Bに達したときに、密閉式混練機の運転が停止するようになっていてもよい。
【0105】
(効果)
次に、本実施形態に係る密閉式混練機1及びその監視方法により得られる効果について説明する。
(1)密閉式混練機1は、混練された材料を排出するための材料排出口2hが形成されたケーシング2と、回転軸(軸)3sを中心に回転して開閉し、材料排出口2hを塞ぐドロップドア(ドア)3と、(i)混練作業時には、ケーシング2に対してドロップドア3を押し付けることにより、ラッチ状態(ドロップドア3が開かない状態)にし、(ii)混練された材料の排出時には、ラッチ状態を解除するラッチ機構4と、ケーシング2の外側に設けられた表示装置5と、を有する。
ラッチ機構4は、(a)ドロップドア3に接触するピストンロッド41b(ラッチ部材41)と、(b)ドロップドア3へ向かう動力をピストンロッド41bに供給する油圧シリンダ(リニアアクチュエータ)42と、(c)当該油圧シリンダ42の直線動作距離を測定するリニアセンサ43と、を備え、表示装置5は、直線動作距離の測定値に基づき、ストローク変化量(ラッチ部材変位情報)を表示する。
【0106】
この構成では、ケーシング2の外側に設けられた表示装置5に、リニアセンサ43における測定値(直線動作距離の値)に基づいて、ラッチ部材変位情報(ラッチ部材の位置又はその変化量)、本実施形態においては、油圧シリンダ42のストロークに関する情報(位置又はその変化量)を表示させることができる。そのため、オペレータは、混練機の運転中のラッチ部材変位情報より、ドロップドア3及びラッチ部材41の接触部分(コンタクトプレート3b及び接触部41s)における磨耗状態の情報を容易に把握できる。
また、混練機の運転中に、接触部分の磨耗状態を確認できるので、磨耗部材の交換時期を知ることができる。
また、接触部分の磨耗状態をモニタリングしておくことにより、使用限界を超えて部材を使用し続けることにより生じる、材料排出口2hにおける、ケーシング内壁の縁部分の変形を未然に防止できる。
【0107】
(2)また、密閉式混練機1は、複数の設定値(設定値A及び設定値B)が格納された記憶装置6と、(i)ラッチ状態における測定値(直線動作距離)、及び、(ii)設定値、を比較して、測定値(ラッチ状態における直線動作距離)が設定値に達したときにアラームを発するアラーム手段(表示装置5)と、を有する。
【0108】
この構成では、リニアセンサ43における測定値に基づく、ラッチ部材変位情報の値(ラッチ状態における直線動作距離の値)が、記憶装置6に格納された任意の設定値(磨耗部材の交換時期や使用限界などに相当する、基準となる値)に達したときにアラームが発せられるので、磨耗状態をより確実に把握できる。
【0109】
(3)また、密閉式混練機1では、記憶装置6において、設定値を、一つのリニアセンサ43に対して、少なくとも二段階に設定できる。
この構成では、測定値(ラッチ状態における直線動作距離の値)に対応する基準値として、二つ以上の設定値を設定することにより、磨耗部材の磨耗状態を段階的に監視できる。
具体的には、本実施形態では、(i)磨耗部材の交換時期における事前アラームと、(ii)磨耗部材の磨耗限界(使用限界)におけるアラームと、を発することができる。これにより、磨耗した磨耗部材を使用することが防止されるので、排出口の開口縁の薄肉部に対して、その耐久限界を超えた力が作用することを抑止でき、その結果として、機械部品を保護できる。さらに、消耗部品の準備期間の確保、工事計画などを効率的に行なうことができる。
【0110】
(4)また、密閉式混練機1において、アラームは、表示装置5に表示される。
この構成によると、ラッチ部材変位情報を表示する表示装置5にアラームが表示され、且つ、オペレータがアラームを視覚的に認識できるので、(i)磨耗部材の磨耗状態の把握と、(ii)磨耗状態が、磨耗部材の交換時期や使用限界に達しているかどうかの判断と、を容易に行なうことができる。
【0111】
(5)また、密閉式混練機1において、アラーム手段(表示装置5)は、ラッチ部材変位情報の表示形態を変更することにより、アラームの表示が行なわれるように構成されている。この構成では、オペレータが、ラッチ部材変位情報とアラームとを、視覚的に且つ同時に認識できるので、(i)磨耗部材の磨耗状態の把握と、(ii)磨耗状態が、磨耗部材の交換時期や使用限界に達しているかどうかの判断と、を容易且つ同時に行なうことができる。
【0112】
(6)また、本実施形態に係る密閉式混練機の監視方法は、混練された材料を排出するための材料排出口2hが形成されたケーシング2と、回転軸3sを中心に回転して開閉し、材料排出口2hを塞ぐドロップドア3と、(i)混練作業時には、ケーシング2に対してドアを押し付けることにより、ラッチ状態(ドロップドア3が開かない状態)にし、(ii)混練された材料の排出時には、ラッチ状態を解除するラッチ機構と、を有する密閉式混練機を監視する方法である。
ラッチ機構4は、(a)ドロップドア3に接触するピストンロッド41b(ラッチ部材41)と、(b)ドロップドア3へ向かう動力をピストンロッド41bに供給する油圧シリンダ(リニアアクチュエータ)42と、を備える。
そして、本監視方法は、リニアセンサ43を用いて油圧シリンダ42の直線動作距離を測定する測定工程と、直線動作距離の測定値に基づき、ケーシング2の外側に設けられた表示装置5に、ストローク変化量(ラッチ部材変位情報)を表示する表示工程と、を有する。
【0113】
この構成では、ケーシング2の外側に設けられた表示装置5に、リニアセンサ43における測定値(直線動作距離の値)に基づいて、ラッチ部材変位情報(ラッチ部材の位置又はその変化量)、本実施の形態においては、油圧シリンダ42のストロークに関する情報を表示させることができる。そのため、オペレータは、混練機の運転中におけるラッチ部材変位情報より、ドロップドア3及びラッチ部材41の接触部分(コンタクトプレート3b及び接触部41s)における磨耗状態の情報を容易に把握できる。
また、混練機の運転中に、接触部分の磨耗状態を確認できるので、磨耗部材の交換時期を知ることができる。
また、接触部分の磨耗状態をモニタリングしておくことにより、使用限界を超えて部材を使用し続けることにより生じる、材料排出口における、ケーシング内壁の縁部分の変形を未然に防止できる。
【0114】
(7)また、本実施形態に係る密閉式混練機の監視方法は、(i)ラッチ状態における測定値(直線動作距離)、及び、(ii)予め設定された複数の設定値(設定値A及び設定値B)、を比較して、測定値(ラッチ状態における直線動作距離)が設定値に達したときに、アラーム手段(表示装置5)を用いてアラームを発するアラーム工程を有する。
【0115】
この構成では、リニアセンサ43における測定値に基づく、ラッチ部材変位情報の値(ラッチ状態における直線動作距離の値)が、設定値(磨耗部材の交換時期や使用限界などに相当する、基準となる値)に達したときにアラームが発せられるので、磨耗状態をより確実に把握できる。
【0116】
また、上記のように構成された密閉式混練機1、及び、密閉式混練機の監視方法によると、オペレータは、密閉式混練機1の操作位置から離れることなく、その操作位置から離れた場所にある磨耗部材の状態をモニタリングできる。また、操作位置から離れることなく、混練運転中における、油圧シリンダ42のストロークを確認できる。
【0117】
また、集塵カバーが確認位置に取り付けられている場合であっても、集塵カバーを外す作業が不要となる。また、確認位置に集塵カバーを取り付けた場合には、ストローク確認作業における作業環境が大きく改善される。
【0118】
また、リニアセンサの測定値のログデータを解析することによって、消耗部品の寿命を予測できる。具体的には、作成した解析用ソフトウェアを用いて、得られたデータから消耗状態を確認することにより、消耗部品の寿命予測が可能となる。
【0119】
また、リニアセンサ43からの測定値は、電気信号のデータであるので、運転記録としての保存が容易になる。
【0120】
また、ストローク変化量の値(又はストロークの値)については、運転モニタ用のディスプレイ、集中管理システムの操作用ディスプレイへの表示や、データとしての記録が容易となる。
【0121】
また、磨耗部材(コンタクトプレート3b及びピストンロッド41b)を、容易且つ確実にメンテナンスできる。また、磨耗部材の消耗状態を、容易且つ確実に確認できるので、消耗部品の交換機会を逃すことがなくなり、密閉式混練機1におけるダメージの発生が抑制される。
【0122】
また、リニアセンサ43を用いるため、消耗部品を交換した後における、目盛りの再調整作業も不要となる。
【0123】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、上記の第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、上記の実施形態と同様の部分については、図に同一の符号を付してその説明を省略する。図5は、本発明の第2実施形態に係る密閉式混練機の全体構成を示す正面概略図である。図6は、図5のC部分を拡大して示す概略図である。また、図5及び図6において、符号101、102、102h、102j、102s、103、103b、103r、103s、103v、103w、104、104B、141b、142、107を付した部分は、それぞれ、図1及び図2において、符号1、2、2h、2j、2s、3、3b、3r、3s、3v、3w、4、4B、41b、42、7を付した部分に相当する。
【0124】
また、ドロップドア103には、先端部103vが形成されている。また、ドロップドア103は、金属製のコンタクトプレート103bを含む(図5及び図6参照)。コンタクトプレート103bは、閉じられた状態のドロップドア103において、ラッチストライカ141s(後述)に最も近い部分に配置されている。コンタクトプレート103bの下部には、傾斜面103zが形成されている(図6参照)。傾斜面103zにおいては、油圧シリンダ142の方向に向かうにつれて、基部からの高さが高くなっている。
【0125】
ラッチ機構104は、油圧シリンダ142(リニアアクチュエータ)と、リニアセンサ43と、ラッチ部材141とを有する。油圧シリンダ142は、シリンダロッド141bと、図示しないピストンと、筒状体145とを有する。ピストン及びシリンダロッド141bは、筒状体145の内部に配置されている。
【0126】
密閉式混練機101では、油圧シリンダ142が、中間トラニオン支持形式により、ベース104Bに対して取り付けられている。そして、油圧シリンダ142は、回転軸145sを用いて、ベース104Bに対して取り付けられている。具体的には、筒状体145に回転軸145sが固定されており、回転軸145sは、回転可能な状態で、ベース104Bによって支持されている。すなわち、油圧シリンダ142は、回転軸145sを中心に回転できるようになっている。
【0127】
ラッチ部材141は、ドロップドア103のコンタクトプレート103bに接触する部材であり、ラッチ部材141は、本体部141vと、二つのフランジ部141cと、ラッチストライカ141sとを有する。ラッチストライカ141sは、本体部141vの上部に取り付けられており、コンタクトプレート103bに接触する。また、ラッチストライカ141sの表面は、曲面として形成されており、具体的には、円柱(軸方向が回転軸103sの軸方向と平行な円柱)の側面の一部として形成されている(図6参照)。また、ラッチストライカ141sは、本体部141vに対して、図示しないボルトを用いて固定されている。
【0128】
本体部141vは、回転軸141dを用いて、ベース104Bに対して取り付けられており、本体部141vは、回転軸141dを中心に回転できる。具体的には、ベース104Bに設けられた、二つの支持フランジ141jの間に、本体部141vが挟まれており、回転軸141dは、二つの支持フランジ141j及び本体部141vを貫通している。なお、図5では、一方の支持フランジ141jのみ図示している。
【0129】
また、二つのフランジ部141cは、本体部141vから油圧シリンダ142の方へ向かって伸びている。フランジ部141cと、シリンダロッド141bの先端部とは、回転軸141fを用いて連結されており、本体部141v及びシリンダロッド141bのそれぞれは、回転軸141fを中心に回転できるようになっている。具体的には、二つのフランジ部141cの間に、シリンダロッド141bの先端部が挟まれており、回転軸141fは、二つのフランジ部141c及びシリンダロッド141bの先端部を貫通している。なお、図5では、一方のフランジ部141cのみ図示している。
【0130】
このように、ラッチ機構104はトグル構造を有しており、ラッチ機構104においては、三つの回転軸(回転軸145s、回転軸141d、回転軸141f)を用いて、各部材が、固定・連結されている。なお、回転軸145s、回転軸141d、及び回転軸141fの軸方向は、回転軸103sの軸方向に平行である。
【0131】
本実施形態では、油圧シリンダ142が回転軸145sを中心に回転するため、シリンダロッド141bの軸方向(往復移動の方向)は、上記の第1実施形態とは異なり、固定された一方向には定まらない。具体的には、図5の状態における、シリンダロッド141bの軸方向は、矢印E方向として表わされているが、この方向Eと、水平方向とが成す角度(図の角度θ2参照)は、ラッチストライカ141s及びコンタクトプレート103bの磨耗に伴い、小さくなる。
【0132】
密閉式混練機101においては、ドロップドア103が閉じた状態で、ラッチ機構104を作動させると、ラッチ状態になる。ラッチ状態では、油圧シリンダ142内のピストンに、ヘッド室側から油圧が作用することにより、シリンダロッド141bがドロップドア103側へ移動し、それにより、本体部141vには、ドロップドア3へ向かって倒れる方向の力が与えられる(図6の矢印H方向参照)。そして、ラッチストライカ141sは、コンタクトプレート103bの下方に進入する。このときに、ドロップドア103の、コンタクトプレート103bには、上方へ持ち上げられる方向の力が与えられる(図6の矢印G方向参照)。その結果、ドロップドア103の二つの接触面103wは、材料排出口102hの内壁面に押し付けられる。
【0133】
また、本実施形態においては、コンタクトプレート103bと、ラッチストライカ141sとが、消耗部品(交換部品)となる。
【0134】
油圧シリンダ142の内部構造、リニアセンサ143による磁石位置の検出原理、及び、表示装置5における表示については、上記の第1実施形態と同様である。
【0135】
また、このようなトグル式のラッチ機構においては、本体部141vの長手方向(回転軸141dとラッチストライカ141sとを結ぶ方向)と、法線(ラッチストライカ141sとコンタクトプレート103bとの接点における法線)とが成す角度(図5の角度θ1参照)が、180度に近付くほど、ラッチ部材141によってドロップドア103に作用する力が大きくなる。そして、この場合には、ケーシング102における、ドロップドア103とのコンタクト部分(材料排出口102hの縁の薄肉部分;図5の破線で囲ったK部分参照)が大きく変形してしまう。密閉式混練機101においては、磨耗部品の磨耗状態をモニタリングしておくことにより、このような損傷を未然に防ぐことができる。
【0136】
本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、リニアアクチュエータである油圧シリンダ142のシリンダロッド141bは、本体部141v(ラッチ部材141)とは別の部材として設けられている。
【0137】
(他の実施形態について)
本発明の実施の形態は、上記の実施形態には限られない。例えば、ドロップドア及びピストンロッドの接触部分には、消耗部品(交換部品)はなくてもよい。具体的には、コンタクトプレート3b(又はコンタクトプレート103b)はなくてもよく、ラッチ部材は、ドロップドアの本体部に対して直接接触してもよい。また、ラッチストライカ141sはなくてもよく、ドロップドアは、ラッチ部材の本体部に対して直接接触してもよい。このような場合には、ドロップドア全体、及び、ラッチ部材全体が交換部品となる。
【0138】
上記のラッチ部材41においては、接触部41sが、ピストンロッドの本体と一体的に形成されているが、接触部41sとピストンロッドの本体とは、分離した別部材になっていてもよい(この場合、接触部41sと、ピストンロッド本体とは、接着やネジ止めなどにより固定される)。この場合には、接触部41sがラッチ部材となり、リニアアクチュエータとラッチ部材とは別の部材になる。また、この場合には、接触部41sが交換部品になる。
【0139】
ケーシング2の近傍には、操作盤の代わりに、PC(パーソナルコンピュータ)が配置されていてもよい。この場合には、ディスプレイが表示部5dに相当し、本体部のHDDが記憶装置6に相当する。また、この場合には、上記の表示装置5の中央処理装置5sは、PC内部のCPUに相当する。また、表示装置、記憶装置、又はアラーム手段は、ケーシングから離れた位置(遠隔位置)にあってもよい。
【0140】
本発明は、ラッチ部材とドロップドアとの間に、スライド部材(ラッチ部材及びドロップドアのそれぞれに形成された傾斜面の傾斜方向に沿ってスライドする中間部材)が設けられているタイプ(特開平9−220456号公報参照)のラッチ機構にも適用できる。
【符号の説明】
【0141】
1 密閉式混練機
2 ケーシング
2h 材料排出口
2j 材料供給口
2r ロータ
3 ドア
3b コンタクトプレート(磨耗部品)
3r 表面
3s 回転軸
3t 突出部
3v 先端部
3w 接触面
4 ラッチ機構
41 ラッチ部材
41b ピストンロッド
41m 磁石
41p ピストン
41s 接触部
41z 傾斜部
42 油圧シリンダ(リニアアクチュエータ)
43 リニアセンサ
44 磁歪線
45 筒状体
5 表示装置(アラーム手段)
5c 着色部
5d 表示部
5f 枠
5s 中央処理装置
5t 非着色部
6 記憶装置
7 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練された材料を排出するための材料排出口が形成されたケーシングと、
軸を中心に回転して開閉し、前記材料排出口を塞ぐドアと、
(i)混練作業時には、前記ケーシングに対して前記ドアを押し付けることにより、ラッチ状態(前記ドアが開かない状態)にし、(ii)混練された材料の排出時には、前記ラッチ状態を解除するラッチ機構と、
前記ケーシングの外側に設けられた表示装置と、を有し、
前記ラッチ機構は、(a)前記ドアに接触するラッチ部材と、(b)前記ドアへ向かう動力を前記ラッチ部材に供給するリニアアクチュエータと、(c)当該リニアアクチュエータの直線動作距離を測定するリニアセンサと、を備え、
前記表示装置は、前記直線動作距離に基づき、ラッチ部材変位情報を表示することを特徴とする密閉式混練機。
【請求項2】
設定値が格納された記憶装置と、
(i)前記ラッチ状態におけるラッチ部材変位情報、及び、(ii)前記設定値、を比較して、当該ラッチ部材変位情報が前記設定値に達したときにアラームを発するアラーム手段と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の密閉式混練機。
【請求項3】
前記記憶装置においては、前記設定値を、一つの前記リニアセンサに対して、少なくとも二段階に設定できることを特徴とする、請求項2に記載の密閉式混練機。
【請求項4】
前記アラームは、前記表示装置に表示されることを特徴とする請求項2又は3に記載の密閉式混練機。
【請求項5】
前記表示装置は、前記ラッチ部材変位情報の表示形態を変更することにより、前記アラームの表示が行なわれるように構成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の密閉式混練機。
【請求項6】
混練された材料を排出するための材料排出口が形成されたケーシングと、軸を中心に回転して開閉し、前記材料排出口を塞ぐドアと、(i)混練作業時には、前記ケーシングに対して前記ドアを押し付けることにより、ラッチ状態(前記ドアが開かない状態)にし、(ii)混練された材料の排出時には、前記ラッチ状態を解除するラッチ機構と、を有する密閉式混練機の監視方法であって、
前記ラッチ機構は、(a)前記ドアに接触するラッチ部材と、(b)前記ドアへ向かう動力を前記ラッチ部材に供給するリニアアクチュエータと、を備え、
リニアセンサを用いて前記リニアアクチュエータの直線動作距離を測定する測定工程と、
前記直線動作距離に基づき、前記ケーシングの外側に設けられた表示装置に、ラッチ部材変位情報を表示する表示工程と、を有することを特徴とする密閉式混練機の監視方法。
【請求項7】
(i)前記ラッチ状態におけるラッチ部材変位情報、及び、(ii)予め設定された設定値、を比較して、当該ラッチ部材変位情報が前記設定値に達したときに、アラーム手段を用いてアラームを発するアラーム工程を有することを特徴とする、請求項6に記載の密閉式混練機の監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−162692(P2010−162692A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4242(P2009−4242)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】